説明

固液分離装置

【課題】固形物の付着、水漏れ防止を図った固液分離装置を提供する。
【解決手段】複数の円形リング体7を間隙をおいて積層して形成した円筒状のストレーナ6と、前記ストレーナ6を回転駆動する回転駆動手段5と、前記ストレーナ6を回転自在に収納する容器4と、前記リング体7間の各間隙に先端が突入するスクレーパ12と、前記ストレーナ6の外側に位置して前記容器4内に開口した固液流入口1と、前記ストレーナ6内に臨み前記容器4に開口した液体排出口2と、前記スクレーパ12に対して前記ストレーナ6の回転方向上流側の前記容器の一部位に形成した固形物排出通路3とを具備し、前記固形物排出通路3の長さは、前記スクレーパ12で掻き取られた固形物が順次圧縮されたのち排出される値に設定したものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は破砕された生ごみ等の固形物が混ざった固液を固形物と液体とに分離する固液分離装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の固液分離装置は台所等で発生する生ごみを水道水と共に破砕し、脱水する生ごみ処理装置に使われている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図6は従来の固液分離装置を示すもので、一側壁に固液流入口101と液体排出口102を、周壁の上部に固形物排出口103をそれぞれ形成した横長略円筒状の容器104の内部には、駆動源で駆動される回転軸105に連係する円筒状のストレーナ106が回転自在に収納してある。
【0004】
前記ストレーナ106は、円形リング体107を小間隔をおいて連結して構成したもので、それら円形リング体107には前記回転軸105に連結されるように複数のアーム108が設けてある。
【0005】
また、前記各円形リング体107の外周からは回転に応じて容器104の内周面を摺動する突出部109が形成してある。
【0006】
容器104における固形物排出口103の形成部位であって、かつストレーナ106の回転方向下手側には、隣接する円形リング体107の間に突入し、これら円形リング体107に付着する固形物を掻き取る複数のスクレーパ110が固定してある。
【0007】
さらに、固形物排出口103の上部に軸111を介して配置した変位自在な蓋体112はスプリング113を介してこの固形物排出口103を閉じる方向に付勢してある。
【0008】
前記の構成において、先ず、水道などからの水で生ごみを破砕機(図示せず)に導き、ここで破砕し、次に、処理した固液は固液流入口101から容器104に流入する。
【0009】
ここで、回転しているストレーナ106の突出部109が固形物(破砕された生ごみなど)を掻き揚げ、その後、突出部109に引っ掛かったり、円形リング体107の外面に付着した固形物はスクレーパ110により剥離されて、固形物排出口103から排出されて乾燥やバイオの処理手段に回収される。
【0010】
特に、固形物はスクレーパ110と蓋体112との間で脱水され、液体成分はスクレーパ110の間隙から容器14に戻る。勿論、容器104に流入した固液内の大部分液体は直ちに円形リング体107間の間隙を通過して液体排出口102から排液される。
【特許文献1】特許第3600474号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上記従来の構成では、蓋体112を押し開いた固形物は、スクレーパ110の上部面を移動して自重で処理手段に落下、排出されるが、一部固形物はその粘性によりスクレーパ110の上部面に付着し、その後乾燥して固着してしまうものであった。
【0012】
この結果、後続の固形物が固着した固定物に邪魔されて動けず、回収が困難になるもの
であった。
【0013】
他方、固液流入口101から排水能力を上回る大量の固液が流入した場合、容器104内の水位が上昇して蓋体112に達する。その時に、蓋体112とスクレーパ110との間に固形物が挟まっていると、蓋体112とスクレーパ110との間に間隙が形成され、液体がこの間隙から処理手段に排水されてしまうという課題を有していた。
【0014】
本発明は上記課題を解決するもので、固形物の付着、水漏れ防止を図った固液分離装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記従来の課題を解決するために、本発明の固液分離装置は、複数の円形リング体を間隙をおいて積層して形成した円筒状のストレーナと、前記ストレーナを回転駆動する回転駆動手段と、前記ストレーナを回転自在に収納する容器と、前記リング体間の各間隙に先端が突入するスクレーパと、前記ストレーナの外側に位置して前記容器内に開口した固液流入口と、前記ストレーナ内に臨み前記容器に開口した液体排出口と、前記スクレーパに対して前記ストレーナの回転方向上流側の前記容器の一部位に形成した固形物排出通路とを具備し、前記固形物排出通路の長さは、前記スクレーパで掻き取られた固形物が順次圧縮されたのち排出される値に設定したものである。
【0016】
固形物排出通路は、固形物自体の粘性と排出通路そのものの濡れ縁が長い分通路抵抗が大きくなり、同排出通路を通過する速度が遅くなる。
【0017】
したがって、固形物排出通路へ移動してきた固形物は先の固形物に邪魔されて、同排出通路内に充満した後に排出される。これにより、固形物排出通路を移動する過程で確実に脱水され、また、固形物排出通路に充満した固形物が栓の役目をし、液体が固形物排出通路から不用意に排水されるのを防止することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の固液分離装置によれば、固形物の圧縮、脱水が確実になされ、固液分離効果を著しく高めることができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
第1の発明は、複数の円形リング体を間隙をおいて積層して形成した円筒状のストレーナと、前記ストレーナを回転駆動する回転駆動手段と、前記ストレーナを回転自在に収納する容器と、前記リング体間の各間隙に先端が突入するスクレーパと、前記ストレーナの外側に位置して前記容器内に開口した固液流入口と、前記ストレーナ内に臨み前記容器に開口した液体排出口と、前記スクレーパに対して前記ストレーナの回転方向上流側の前記容器の一部位に形成した固形物排出通路とを具備し、前記固形物排出通路の長さは、前記スクレーパで掻き取られた固形物が順次圧縮されたのち排出される値に設定したものである。
【0020】
したがって、固形物(破砕された生ごみ)は回転するストレーナに掻き上げられてスクレーパへ運ばれ、その過程で固形物に付着した液体は自重によりストレーナの間隙を通過して液体排水口から排出されるものであり、その後、固形物はスクレーパによりストレーナから剥離して固形物排出通路へ移動する。
【0021】
続いて、固形物排出通路を通過する固形物は固形物自身の粘性と固形物排出通路の濡れ縁が長い分通路抵抗が大きいので、固形物が固形物排出通路を通過する速度が遅い。その結果、ストレーナから剥離して固形物排出通路へ移動してきた新たな固形物は先の固形物
に邪魔されるので、固形物排出通路内に充満した後、つまり、圧縮、脱水されてから排出されることとなる。
【0022】
他方、容器内に排水能力を上回る大量の固液や液体が流入した場合、容器内の液位が上昇して固形物排出通路に達するが、固形物排出通路内に充満した固形物が栓の役目をするので、液体が固形物排出通路から排水されることを防止できる。
【0023】
第2の発明は、特に、第1の発明において、固形物排出通路を排出方向側が上位となる傾斜状に構成して、同固形物排出通路での通路抵抗を大きくできるものである。
【0024】
第3の発明は、特に、第1または第2の発明において、固形物排出通路の排出端面を略垂直壁に形成して、固形物の排出を確実としたものである。
【0025】
第4の発明は、特に、第1の発明において、固形物排出通路の排出端側に閉方向に付勢された蓋体を配置して、固形物排出通路での通路抵抗を一層大きくしたものである。
【0026】
第5の発明は、特に、第4の発明において、蓋体の途中を軸支し、固形物排出通路の排出端側に対応しない一端に付勢手段を作用させるようにして固液分離装置を小型化したものである。
【0027】
第6の発明は、特に、第4の発明において、樹脂材料で成形され蓋体に金属材料からなる変形防止材を設けて、蓋体を軽く、しかも摺動性のよいものとし、同時に変形防止部により変形を防止したものである。
【0028】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0029】
(実施の形態1)
図1〜図3において、固液流入口1と、それよりも若干下位に位置する液体排出口2を一側壁に、固形物排出通路3を周壁の上部にそれぞれ形成した横長略円筒状の容器4の内部には、ギヤードモータなどの駆動源5で駆動される回転軸5aに連係した円筒状のストレーナ6が回転自在に収納してある。
【0030】
前記ストレーナ6は、多数の円形リング体7を、例えば0.5mm程度の小間隔をおいて連結して構成したもので、より具体的には、各円形リング体7の側面に形成したスペーサ用凸部8で前記小間隔が特定され、同スペーサ用凸部8を貫通する連結軸9で各円形リング体7が円形状に固定されるようにしてある。
【0031】
前記それぞれの円形リング体7のいくつかには前記回転軸5aに連結されるように複数のアーム10が一体的に設けてある。すなわち、前記円形リング体7は、図3に示すように3種類の円形リング体7a、7b、7cからなり、そのうちの一つの円形リング体7cにアーム10が一体形成されている。
【0032】
また、前記各円形リング体7の外周からは回転に応じて容器4の内周面を摺動する複数の突出部11が90度の周方向間隔をおいて形成してある。
【0033】
容器4における固形物排出通路3の形成部位であって、かつストレーナ6の回転方向下手側には、隣接する円形リング体7間の小間隔に突入し、これら円形リング体7に付着する固形物を掻き取る複数のスクレーパ12が固定してある。
【0034】
前記容器4とストレーナ6との空間13は固液流入口1に対応する部分が最も大きくなるように、また隣接する突出部11間の容器4とストレーナ6との間隔14はストレーナ6の回転方向へ次第に小さくなるようにそれぞれ設定してある。
【0035】
そして、複数のスクレーパ12の支持壁15が固形物排出通路3の下路壁を構成するものである。
【0036】
以上のように構成された固液分離装置において、次にその動作を説明する。
【0037】
先ず、生ごみが破砕機に投入され、かつ水道水が流し込まれると、制御部が破砕機と駆動源5の駆動を開始する。
【0038】
破砕機で破砕された生ごみなどの固形物は水道水と混合されて固液流入口1から容器4の空間13に分散し、同時に、駆動源5の動力がストレーナ6を回転させる。
【0039】
そして、空間13に広がった固形物はストレーナ6の外面に引き摺られてその回転方向に沿って上方へ移動を開始する。その際、間隔14が徐々に狭くなるので、固形物は円形リング体7の小間隔から内部に入り込むこととなる。
【0040】
この結果、固形物が固液流入口1の近傍に留まることを防止できる。
【0041】
また、固形物に付着した液体(水道水や生ごみの汁等)や、容器4に流入した大部分の液体は自重によりストレーナ6の間隙を通過して液体排出口2から排水される。
【0042】
次に、ストレーナ6により運ばれた固形物はスクレーパ31により剥離されて固形物排出通路3へ移動する。
【0043】
固形物排出通路3を通過する固形物は、固形物自身の粘性と固形物排出通路3の濡れ縁が長さとにより抵抗が大きいため、その通過速度が遅い。したがって、ストレーナ6から剥離して固形物排出通路3へ移動してきた固形物は順次圧縮、脱水され、最後にその排出側開口から排出されるものである。
【0044】
他方、排液能力を上回る大量の固液や液体が固液流入口1から流入した場合、容器4内の液位が上昇して、ついには固形物排出通路3に達する。しかし、このとき、固形物排出通路3内に充満した固形物が栓の役目をするので、液体が固形物排出通路3から排出されることを抑制できる。
【0045】
(実施の形態2)
図4は本発明の実施の形態2を示すもので、先の実施の形態1と異なるところは、固形物排出通路3を傾斜状、すなわち排出方向側が上位となるよう5°〜10°の傾斜状とするとともに、固形物排出通路3の下路壁を構成する支持壁15の端面部を垂直壁に設定した点である。なお、図1に示す構成、作用と同一のところには同一符号を付し、その具体的説明は実施の形態1のものを援用する。
【0046】
この構成では傾斜の分、通路抵抗がさらに大きくなり、固形物排出通路3での圧縮、脱水が確実になされるものである。
【0047】
また、この際、固形物排出通路3の下路壁を構成するスクレーパ12の支持壁15の端面部が垂直壁に設定してあるために、固形物の排出が確実に行われることとなる。
【0048】
(実施の形態3)
図5は本発明の実施の形態3を示すもので、先の実施の形態1と異なるところは、固形物排出通路3の排出側開口を開閉するように蓋体16を配設したものである。なお、図1に示す構成、作用と同一のところには同一符号を付し、その具体的説明は実施の形態1のものを援用する。
【0049】
前記蓋体16は合成樹脂材料で形成してあって、長さ方向途中に設けたヒンジ17を介して固形物排出通路3の排出側開口側に揺動自在に取付けられており、その一辺が前記固形物排出通路3の排出側開口を開閉する。そして、他辺にスプリングなどの付勢手段18を作用させて前記排出側開口を閉じるようにしてある。
【0050】
合成樹脂材料の蓋体16の補強のために、金属材料からなる変形防止材19が密着状態で取着してある。
【0051】
このように、固形物排出通路3の排出側開口に閉じ方向に付勢された蓋体16を配設しているために、同固形物排出通路3での固形物の圧縮、脱水がより一層確実になされるものである。
【0052】
そして、蓋体16を固形物排出通路3の排出側開口端に配置していること、および付勢手段18がこの固形物排出通路3の外側に位置しているところから、スクレーパ12との関係で固形物が詰まって乾燥固化するようなことがなくなり、これより固形物の圧縮、脱水、排出が確実となるものである。
【0053】
また、蓋体16は樹脂材料なので軽く、固形物排出通路3との摩擦が小さく摺動性がよい。
【0054】
さらに、蓋体16は常に付勢手段18の圧力を受けて変形(クリープ)しようとするが、金属材料からなる変形防止材19がこれを防止するものである。
【0055】
なお、蓋体16を重くする(例えば、変形防止材19を厚くする)ことにより、変形防止材19を不要にできる。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明の固液分離装置によれば、固形物の圧縮、脱水が確実になされ、固液分離効果を著しく高め得るもので、例えば一般家庭の台所などでの生ごみ処理用に使用すれば非常に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の実施の形態1における固液分離装置の構成図
【図2】本発明の実施の形態1における固液分離装置の側面断面図
【図3】本発明の実施の形態1における固液分離装置の部品図
【図4】本発明の実施の形態2における固液分離装置の構成図
【図5】本発明の実施の形態3における固液分離装置の要部拡大構成図
【図6】従来の固液分離装置の構成図
【符号の説明】
【0058】
1 固液流入口
2 液体排出口
3 固形物排出通路
4 容器
5 回転駆動手段(駆動源)
6 ストレーナ
7 円形リング体
12 スクレーパ
16 蓋体
18 付勢手段
19 変形防止材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の円形リング体を間隙をおいて積層して形成した円筒状のストレーナと、前記ストレーナを回転駆動する回転駆動手段と、前記ストレーナを回転自在に収納する容器と、前記リング体間の各間隙に先端が突入するスクレーパと、前記ストレーナの外側に位置して前記容器内に開口した固液流入口と、前記ストレーナ内に臨み前記容器に開口した液体排出口と、前記スクレーパに対して前記ストレーナの回転方向上流側の前記容器の一部位に形成した固形物排出通路とを具備し、前記固形物排出通路の長さは、前記スクレーパで掻き取られた固形物が順次圧縮されたのち排出される値に設定した固液分離装置。
【請求項2】
固形物排出通路は、排出方向側が上位となる傾斜状に構成した請求項1記載の固液分離装置。
【請求項3】
固形物排出通路の排出端面を略垂直壁に形成した請求項1または2記載の固液分離装置。
【請求項4】
固形物排出通路の排出端側に閉方向に付勢された蓋体を配置した請求項1記載の固液分離装置。
【請求項5】
蓋体の途中を軸支し、固形物排出通路の排出端側に対応しない一端に付勢手段を作用させるようにした請求項4記載の固液分離装置。
【請求項6】
樹脂材料で成形され蓋体に金属材料からなる変形防止材を設けた請求項4記載の固液分離装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−106876(P2009−106876A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−282692(P2007−282692)
【出願日】平成19年10月31日(2007.10.31)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】