説明

固液混合材料の製造方法

【課題】 液体材料と粉末状固体材料との親和性が小さい場合や、粉末状固体材料の粒子径が小さく凝集性を有する場合においても、粉末状固体材料を液体材料中に高精度に分散混合させることができる固液分散材料の製造方法を提供する。
【解決手段】 液体材料中に粉末状固体材料を分散混合させてなる固液混合材料の製造方法であって、(a)浮遊化のための容器5中で粉末状固体材料を空気中に浮遊させた状態とする浮遊化工程と、(b)混合装置8内に収容した液体材料を循環させて噴霧媒体とし、上記浮遊化させた粉末状固体材料を上記混合装置内に設置された噴霧装置9中に供給し前記噴霧媒体とともに噴霧ノズルにより液体材料中に噴霧する噴霧工程と、を有することを特徴とする、固液混合材料の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固液混合材料の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
固体と液体など、異なる形態の材料を混合して組成物を調製することはあらゆる分野において広く行われており、従来様々な手法、装置が開発、実用化されている。近年、特にナノテクノロジーに代表される新素材の分野では、用いられる材料の微粒子化が進み、基体となる材料にこのような微粒子材料を混合することにより付与される効果の発現が期待されている。
【0003】
このような固液混合材料を調製する際には、粉末状固体材料として液体材料と親和性を有するものを用いて分散性を向上させたり、両者の分散混合に際して大きなエネルギーを付与したりする手法が採られることがある(例えば、特許文献1参照)。
しかし、液体材料と粉末状固体材料との親和性が小さい場合や、粉末状固体材料の粒子径が小さく凝集性を有する場合などにおいては、通常の攪拌手段では高精度な分散混合が困難であった。
【0004】
【特許文献1】特開平11−246729号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、液体材料と粉末状固体材料との親和性が小さい場合や、粉末状固体材料の粒子径が小さく凝集性を有する場合においても、粉末状固体材料を液体材料中に高精度に分散混合させることができる固液分散材料の製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような目的は、以下の本発明(1)〜(3)によって達成される。
(1)液体材料中に粉末状固体材料を分散混合させてなる固液混合材料の製造方法であって、
(a)粉末状固体材料を空気中に浮遊させた状態とする浮遊化工程と、
(b)混合装置内に収容した液体材料を循環させて噴霧媒体として、上記浮遊化させた粉末状固体材料を上記混合装置内の液体材料中に噴霧する噴霧工程と、
を有することを特徴とする、固液混合材料の製造方法。
(2)上記(b)工程において、上記噴霧媒体は旋回流を伴って吐出されるものである上記(1)に記載の固液混合材料の製造方法。
(3)上記粉末状固体材料は、一次粒子の平均粒子径が5〜100nmである上記(1)又は(2)に記載の固液混合材料の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明の製造方法によれば、液体材料と粉末状固体材料との親和性が小さい場合や、粉末状固体材料の粒子径が小さく凝集性を有する場合においても、粉末状固体材料を液体材料中に高精度に分散混合させた固液分散材料を簡易に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の固液混合材料の製造方法について詳細に説明する。
本発明の固液混合材料の製造方法(以下、単に「製造方法」ということがある)は、
(1)液体材料中に粉末状固体材料を分散混合させてなる固液混合材料の製造方法であ
って、
(a)粉末状固体材料を空気中に浮遊させた状態とする浮遊化工程と、
(b)混合装置内に収容した液体材料を循環させて噴霧媒体として、上記浮遊化させた粉末状固体材料を上記混合装置内の液体材料中に噴霧する噴霧工程と、
を有することを特徴とする。
【0009】
本発明の製造方法は、液体材料中に粉末状固体材料を分散混合させてなる固液混合材料の製造方法に関するものである。
本発明の製造方法で用いられる粉末状固体材料としては特に限定されないが、例えば、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂などの樹脂、硬化剤、硬化促進剤などの硬化系添加剤、無機充填材、有機充填材などの充填材のほか、各種添加剤など、いずれも粉末状に調製できる固形材料であればいかなるものにも適用することができる。
ここで用いられる粉末状固体材料の粒径としては特に限定されないが、一次粒子の平均粒径が5〜100nmであるものを用いると、本発明の製造方法の効果をより高く発現させることができる。
【0010】
本発明の製造方法で用いられる液体材料としては特に限定されないが、例えば、水、及び、水に可溶な材料を水に溶解させた各種水溶液、有機溶剤、及び、有機溶剤に可溶な材料を有機溶剤に溶解させた各種溶液などのほか、液状樹脂などの各種液状化合物、異なる液体材料が混合したエマルジョン形態のものを用いることもできる。また、粉末状固体材料との親和性を向上させるために、カップリング剤や界面活性剤などを添加することもできる。
本発明の製造方法で用いられる液体材料としては、このほか、本発明の製造方法などにより得られた固液混合材料を用いることもできる。すなわち、粉末状固体材料を例えば1種類用いて、これを液体材料中に分散混合させてなる固液混合材料を得て、さらに、別の粉末状固体材料を分散混合させる場合には、上記で得られた固液混合材料を液体材料として用いることができる。
【0011】
本発明の製造方法では、まず、
(a)粉末状固体材料を空気中に浮遊させた状態とする浮遊化工程、
を有する。
【0012】
上記(a)浮遊化工程は、例えば、所定の空間容積を有した容器内において、上記粉末状固体材料を空気中に浮遊させる方法などにより実施することができる。ここで、所定の空間容積を有した容器としては特に限定されず、粉末状固体材料が浮遊化するのに充分な空間容積を有したものであれば使用することができる。
【0013】
上記容器内において、粉末状固体材料を空気中に浮遊させた状態とする方法としては特に限定されないが、例えば、容器内に攪拌羽根などの攪拌装置を設置して、空気とともに粉末状固体材料を攪拌して浮遊化させる方法、容器内に流動床装置等を設置して、これにより粉末状固体材料を浮遊化させる方法、などを適用することができる。
なお、上記容器内には、粉末状固体材料を連続的に供給することもできるし、予め所定量の粉末状固体材料を投入しておくこともできる。
【0014】
上記(a)工程を実施することにより、例えば粉末状固体材料が凝集性を有したものであっても、この凝集を解離して空気中に分散させることができ、粉末状固体材料を液体材料中に混合するのに好適な形態とすることができる。
【0015】
次に、本発明の製造方法においては、
(b)混合装置内に収容した液体材料を循環させて噴霧媒体として、上記浮遊化させた粉
末状固体材料を上記混合装置内の液体材料中に噴霧する噴霧工程、
を有する。
【0016】
本発明の製造方法において用いられる液体材料は、予め所定の混合装置内に収容しておくことができる。そして、上記(b)工程においてはこれを循環させて、粉末状固体材料を液体材料中に噴霧して分散混合する際の噴霧媒体として用いる。
なお、ここでいう液体材料とは、(b)工程において液体材料中に粉末状固体材料が混合された後は、粉末状固体材料が混合された液体材料のことを指すものとする。
以下、循環される液体材料あるいは粉末状固体材料が混合された液体材料を、「循環液体材料」と呼称することがある。
【0017】
上記噴霧工程においては、噴霧媒体として循環液体材料を用いる。そして、上記浮遊化させた粉末状固体材料を噴霧材料として、これを空気とともに上記混合装置内の液体材料中に噴霧する。
上記噴霧工程は、噴霧装置を用いて好適に実施することができる。具体的には、噴霧装置の噴霧媒体入口から循環液体材料を導入するとともに、噴霧材料入口から浮遊化させた粉末状固体材料を空気とともに導入して、噴霧媒体が吐出される際に発生する負圧により、粉末状固体材料を混合装置内の液体材料中に噴霧することができる。
【0018】
ここで用いられる噴霧装置としては特に限定されないが、噴霧媒体が旋回流を伴って吐出されるものであることが好ましい。
これにより、粉末状固体材料に旋回流のエネルギーを付与できるので、上記(a)工程で浮遊化させた段階よりも、粉末状固体材料をさらに細かい粒子とすることができる。また、循環液体材料が噴霧媒体として用いられる際にも、液体材料中の粉末状固体材料に剪断力を作用させることができる。これにより、粉末状固体材料が凝集するのを防ぐ効果をより高めることができる。
【0019】
このように、噴霧媒体が旋回流を伴って吐出されるような噴霧方法としては特に限定されないが、噴霧媒体の流路にらせん形状のフィンを設け、噴霧媒体の吐出口において旋回流を発生させる方法、噴霧媒体の吐出口を円周状に多数箇所設け、各々所定の角度で吐出させることにより、噴霧媒体に旋回流を発生させる方法、などが挙げられる。
また、このような機能を有した市販の噴霧装置を使用することもできる。このような装置としては例えば、アトマックス社製・「アトマックスノズル」などが挙げられる。
【0020】
本発明の製造方法においては、混合装置に収容された液体材料を常温で用いることもできるし、例えば、より低粘度化するために加温したり、液体材料と粉末状固体材料とが反応性を有する場合は、これを抑制するために冷却したりして用いることもできる。
また、混合装置内には、このほか、通常の攪拌装置や、超音波装置などを併設して用いることもできる。
【0021】
上記噴霧工程では、噴霧媒体として循環液体材料を用いるため、液体材料中の粉末状固体材料に繰り返しエネルギーを与えることができる。これにより、両者の分散混合性をより高めることができる。
特に、噴霧媒体が旋回流を伴って吐出される場合には、液体材料中の粉末状固体材料に高い剪断力を付与することができるので、上記作用をより効果的に発現させることができる。
【0022】
次に、本発明の製造方法を、好適な実施の形態に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明の製造方法を適用することができる装置の一例を示す断面側面図である。
【0023】
図1においては、粉末状固体材料Sはホッパ1に貯留されている。ホッパ1内部での粉末状固体材料Sのブリッジ発生を防ぐため、必要に応じて撹拌装置2を用いることができる。
粉末状固体材料Sはロータリーバルブ3により、浮遊化させるための充分な空間容積を有した容器5内に連続的に定量供給される。
容器5は攪拌装置6を有している。粉末状固体材料Sは容器5内に供給された後、攪拌装置6で空気とともに攪拌されることにより、凝集した形態のものでもこれを解離させることができ、一次粒子もしくはこれに近い状態まで分散して容器5内において浮遊化させることができる。
【0024】
一方、液体材料Lは、混合装置8に収容されており、噴霧装置9は液体材料L中に沈設されている。液体材料Lは混合装置8に設けられた循環用吸出口14より、所定量をバルブ15で調整されながら循環ポンプ16により連続的に吸出され、循環される。
【0025】
浮遊化された粉末状固体材料Sは、容器5上部に設けられた吸出口7より吸出された後、噴霧材料供給口10から噴霧装置9に供給される。また、循環された液体材料Lは、噴霧媒体供給口11から噴霧装置9に供給される。
そして、浮遊化された粉末状固体材料Sは、噴霧装置9の噴霧ノズル12より、循環された液体材料Lを噴霧媒体として、旋回流13を伴って液体材料L中に噴霧される。
【0026】
このようにして、浮遊化された粉末状固体材料Sが、混合装置8内に収容された液体材料L中に、連続的に噴霧されるとともに、液体材料Lを循環して噴霧媒体として用いることにより、液体材料と粉末状固体材料とが高精度に混合した固液混合材料を得ることができる。
なお、図1においては、混合装置8には攪拌装置17が設置されているが、このような攪拌羽根のほか、例えば超音波装置などを用いることもできる。
【0027】
以上に説明したように、本発明の製造方法によれば、粉末状固体材料を液体材料中に高い精度で分散混合させてなる固液混合材料を簡易に製造することができる。
本発明の製造方法によれば、粉末状固体材料として、粒径が小さく、凝集性を有するものを用いた場合でも、(a)浮遊化工程、及び、(b)噴霧工程、において、粉末状固体材料の凝集解離を促進させることができるので、液体材料中で粉末状固体材料がダマになることを抑制し、粉末状固体材料が液体材料中に高精度に分散された固液混合材料を簡易に製造することができる。
本発明の製造方法は、粉末状固体材料と液体材料との親和性が小さい場合、あるいは、液体材料の粘度が高い場合でも適用することができるものである。
【実施例】
【0028】
以下、本発明を実施例により詳細に説明する。
【0029】
1.材料
(1)粉末状固体材料:ヒュームドシリカ(トクヤマ社製・「MT−10」 一次粒子の平均粒径が15nm、二次粒子の平均粒径が100nm)を用いた。
(2)液体材料:メチルエチルケトン(MEK)を用いた。
【0030】
2.固液混合材料の製造
<実施例>
図1に示した装置を用いて行った。
粉末状固体材料を容器内に供給し、攪拌装置により浮遊化させた。また、混合装置内には液体材料を収容し、これを循環させながら噴霧媒体として用い、上記浮遊化させた粉末状固体材料を混合装置内の液体材料中に噴霧した。
用いた装置の運転条件等は以下の通りである。
【0031】
2.1 粉末状固体材料側
(1)供給速度:5g/時間
(2)浮遊化する容器の大きさ:φ100mm×高さ150mm
(3)攪拌装置:スリーワン攪拌装置
(4)攪拌装置の回転数:600rpm
【0032】
2.2 液体材料側
(1)混合装置内に収容された液体材料の量:1000g
(2)混合装置の大きさ:φ120mm×高さ200mm
(3)循環液体材料の循環量:1500ml/分
(4)循環ポンプ:Cole Parmer Instrument Company製・「MASTER Flex I/P model7591−50」
(5)攪拌装置:スリーワン攪拌装置
(6)攪拌装置の回転数:600rpm
【0033】
2.3 噴霧装置
(1)アトマックス社製・「アトマックスノズル BN−90」
(2)粉末状固体材料の噴霧量:5g/時間
【0034】
上記条件で、60分間運転し、液体材料1000g中に粉末状固体材料5gが分散混合した固液混合材料を得た。
得られた固液混合材料中の粉末状固体材料の平均粒径を、島津製作所社製・「レーザー回折式粒度分布測定装置 SALD−7000」を用いて測定したところ、47nmであった。
【0035】
<比較例1>
液体材料、粉末状固体材料とも、実施例と同じものを用いた。
1000gの液体材料中に、5gの粉末状固体材料を入れ、乳化分散装置(エム・テクニック社製・クレアミックス「CLM−0.8S」 運転条件:15000rpm)を用いて60分間処理を行った。
得られた混合材料中の粉末状固体材料の平均粒径を、実施例1と同じ装置を用いて測定したところ、1.5μmであった。
【0036】
<比較例2>
液体材料、粉末状固体材料とも、実施例と同じものを用いた。
1000gの液体材料中に、5gの粉末状固体材料を入れ、スリーワン攪拌装置(運転条件:600rpm)を用いて60分間処理を行った。
得られた混合材料中の粉末状固体材料の平均粒径を、実施例1と同じ装置を用いて測定したところ、50.5μmであった。
【0037】
実施例は、本発明の製造方法により得られた固液混合材料であり、従来の分散混合方法である比較例1、2と比較して、粒径が小さく凝集性の高い粉末状固体材料を、液体材料中に高精度に分散混合させることができた。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明の製造方法によれば、液体材料と粉末状固体材料との親和性が小さい場合や、粉末状固体材料の粒子径が小さく凝集性を有する場合においても、粉末状固体材料を液体材料中に高精度に分散混合させた固液分散材料を簡易に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の製造方法を適用した装置の一例(概略側断面図)
【符号の説明】
【0040】
S 粉末状固形材料
L 液体材料
1 ホッパ
2 攪拌装置
3 ロータリーバルブ
4 粉末状固形材料供給配管
5 浮遊化のための容器
6 攪拌装置
7 浮遊化した粉末状固形材料の吸出口
8 混合装置
9 噴霧装置
10 噴霧材料供給口
11 噴霧媒体供給口
12 噴霧ノズル
13 旋回流
14 液体材料の循環用吸出口
15 循環量調節用バルブ
16 液体材料循環用ポンプ
17 攪拌装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体材料中に粉末状固体材料を分散混合させてなる固液混合材料の製造方法であって、(a)粉末状固体材料を空気中に浮遊させた状態とする浮遊化工程と、
(b)混合装置内に収容した液体材料を循環させて噴霧媒体として、前記浮遊化させた粉末状固体材料を前記混合装置内の液体材料中に噴霧する噴霧工程と、
を有することを特徴とする、固液混合材料の製造方法。
【請求項2】
前記(b)工程において、前記噴霧媒体は旋回流を伴って吐出されるものである請求項1に記載の固液混合材料の製造方法。
【請求項3】
前記粉末状固体材料は、一次粒子の平均粒子径が5〜100nmである請求項1又は2に記載の固液混合材料の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2006−239596(P2006−239596A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−59760(P2005−59760)
【出願日】平成17年3月4日(2005.3.4)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】