説明

固液2相循環法を利用した有機物処理方法

固相反応槽内物質の洗浄速度を最適にし、液相反応槽への有機物負荷を小さくし、凝集化による固相反応停止を防止する有機物処理方法を提供する。有機物及びその分解生成物の一部を陸上微生物によって分解する固相反応槽と水中微生物によって分解する液相反応槽とを順次通過せしめる固液2相循環法を利用して処理する。固相反応槽にて処理されている固相反応槽内物質の一部を固相反応槽外(洗浄・固液分離部)に移し、固相反応槽外に移された固相反応槽内物質の内の液相に溶解する成分を洗浄液で洗浄し、洗浄された固相反応槽内物質を固相反応槽に移し、洗浄した洗浄液を液相反応槽に移し、液相反応槽において生成する固体状物質を液相反応槽から固相反応槽に移す。固相反応槽内物質の洗浄について、1日に投入される新規な有機物1kgにつき、250〜1000mlを洗浄する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は有機物、とりわけ有機性廃棄物を処理する有機物処理方法に関し、特に、有機物及びその分解生成物の少なくとも一部を、陸上微生物によって分解する固相反応槽と、水中微生物によって分解する液相反応槽とを順次通過せしめる固液2相循環法を利用した有機物処理方法に関する。
【背景技術】
有機物、とりわけ有機性廃棄物(住宅、病院、ホテル、給食センター等の施設から排出される生ゴミ等の有機物、動物の死骸等の有機物、港湾施設、船舶等に付着する生物等の有機物、水中で分解されない汚泥等の有機物等を含み、以後単に生ゴミ等とも称する。)を微生物を利用して処理する有機物処理方法には、処理の安定性、処理の持続性、臭気の発生などの問題点が指摘されている。
これらの問題点を解消・改善しようとする提案が様々な切り口から多数なされており、代表的なものをいくつか列記する。
特開平7−124538号公報に記載の有機物処理方法では、生ゴミから蒸発した水分を周囲に排出しないで回収し、液体浄化装置によって浄化する機能と固形有機物を粉砕する機能を有することによって高速分解を可能にしている。また加温機能を強化し、水分調整剤を利用せずに未熟コンポストの排出量を低減する、固形有機物の処理装置を提供している。
特開2000−37683号公報に記載の有機物処理方法では、固相の処理槽内で生成した悪臭ガスを水で脱臭する機能を備え、その水は同時に固相の処理槽内で陸上微生物の処理によって蓄積した高粘性生成物を洗い流し、処理槽底部をなすパンチングメタルを介し、貯水槽へ溶かした有機物を落下させ、貯水槽で水中微生物によって浄水することによって処理を行う処理装置を提供している。
しかし、特開平7−124538号公報に記載の有機物処理方法では、廃棄物を処理したときに発生する未熟コンポスト等の残滓(固相有機物分解過程の最後に処理機内に残存し、取出して排出しなければならない蓄積産物を指す。特に従来の生ゴミ処理機では未熟コンポストを指す。)の軽減することを考慮しながらも、処理の持続性の問題を抱えており、結果的に未熟コンポストを排出することになる。つまり有機性廃棄物の処理においては生ゴミ等の有機性廃棄物を消滅させる代わりに未熟コンポスト等の生成物を増量させるという物体の形状を変換したものにすぎなかった。
また特開2000−37683号公報に記載の有機物処理方法では、未熟コンポストの排出量は低減できる代わりに、逆に水中の微生物によって大量に汚泥が排出される問題を抱えていた。
この点に関して特開2000−189932号公報に記載の有機物処理方法では、第一の反応槽に投入された生ゴミ、汚泥などの有機性廃棄物が、多孔質微生物処理媒質中に好気性及び嫌気性の微生物が共存することで、これを攪拌しながらばっ気を行えば、好気性微生物によって、好気性微生物が栄養源とする有機性廃棄物が消化さればっ気と攪拌を停止すれば、嫌気性微生物によって、嫌気性微生物が栄養源とする有機性廃棄物が分解され消化することとなり、さらに第二の反応槽以降において同様の処理を行うことによって生ゴミ、汚泥などの有機性廃棄物を消滅する装置を提供している。
この装置は、特開平7−124538号公報や特開2000−37683号公報で提供されたと同様の生ゴミ等の処理方法を、設置された反応部の数だけを繰り返すことによって、有機性廃棄物を消滅する装置である。しかし、好気性微生物から嫌気性微生物へ微生物相が変換するまでには時間がかかり、処理分解速度が極めて遅くなる問題があり、また反応部を多段につなげることは装置が大型化して設置に困難性が伴うことが懸念される。
しかし、上記の各有機物処理方法は、陸上微生物と水中微生物を単独もしくは別々の分解処理として利用しているに過ぎなかった。
そこで、陸上微生物と水中微生物の両者を利用して有機性廃棄物の処理の安定性及び持続性を高めることによって生ゴミ等の有機物を低減させることができる有機物処理方法が国際公開第02/64273号パンフレットに開示されている。
しかしながら、上記の国際公開第02/64273号パンフレットに記載の有機物処理方法においては、固液物質循環装置により固相反応槽物質を液相反応槽に移送して固相反応槽において生成される高粘性生成物を洗浄により除去しているが、毎日新規な有機物を投入し続ける場合に、1日に投入される新規な有機物の量に対して固相反応槽内から取り出して洗浄する量の割合(以下、1日あたりの洗浄量という意味で洗浄速度とも称する)の最適な値は知られていなかった。
洗浄速度が高すぎると、液相反応槽で処理することが課せられる有機物負荷が必要以上に大きくなり、液相反応槽のサイズを大きくすることが必要となるため、有機物処理装置の大型化を招く。また、洗浄速度が低すぎると高粘性生成物が十分に除去しきれなくなり、固相反応槽物質が凝集化して固相反応が停止してしまう。
従って、液相反応槽への有機物負荷をできるだけ小さくし、かつ、凝集化による固相反応の停止を防止できるような最適な洗浄速度において処理を行う必要がある。
【発明の開示】
本発明は上記の問題に鑑みてなされたものであり、従って本発明の目的は、固相反応槽内物質の洗浄速度を最適に設定して、液相反応槽への有機物負荷をできるだけ小さくし、かつ、凝集化による固相反応の停止を防止して有機性廃棄物の処理の安定性及び持続性を高めることができる有機物処理方法を提供することである。
上記の目的を達成するため、本発明の有機物処理方法は、有機物及びその分解生成物の少なくとも一部を、陸上微生物によって分解する固相反応槽と、水中微生物によって分解する液相反応槽とを順次通過せしめる固液2相循環法を利用して有機物を処理する有機物処理方法であって、前記固相反応槽にて処理されている固相反応槽内物質の一部を前記固相反応槽外に移す工程と、前記固相反応槽外に移された前記固相反応槽内物質の内の液相に溶解する成分を洗浄液で洗浄する工程と、洗浄された前記固相反応槽内物質を前記固相反応槽に移す工程と、前記固相反応槽内物質と合流するように、前記固相反応槽または前記固相反応槽外において分解処理の対象である新規な有機物を投入する工程と、前記液相に溶解する成分を洗浄した洗浄液を前記液相反応槽に移す工程と、前記液相反応槽において生成する固体状物質を前記液相反応槽から取り出し、前記固相反応槽に移す工程とを有し、前記固相反応槽内物質の一部を前記固相反応槽外に移す工程と前記洗浄する工程において、1日に投入される前記新規な有機物1kgにつき、250〜1000mlの前記固相反応槽内物質を前記固相反応槽外に移し、洗浄する。
上記本発明の有機物処理方法は、好適には、前記固相反応槽外が洗浄部である。
上記本発明の有機物処理方法は、好適には、前記洗浄部は、固形物を洗浄後、前記洗浄部を構成する容器の底面に前記固相反応槽内物質を通過させない程度の開口を有し、前記容器内に固体を残して液体を前記容器外に排出する固液分離機能を有する。
上記本発明の有機物処理方法は、好適には、前記液相反応槽が前記液相反応槽において生成する固体状物質を沈殿させるための沈殿槽を有し、前記固体状物質を前記液相反応槽から取り出す工程においては、前記沈殿槽の沈殿部から前記固体状物質を含有する液相反応槽内液体を取り出す。
上記本発明の有機物処理方法は、有機物及びその分解生成物の少なくとも一部を、陸上微生物によって分解する固相反応槽と、水中微生物によって分解する液相反応槽とを順次通過せしめる固液2相循環法を利用して処理する。
ここで、固相反応槽にて処理されている固相反応槽内物質の一部を固相反応槽外に移し、固相反応槽外に移された固相反応槽内物質の内の液相に溶解する成分を洗浄液で洗浄し、洗浄された固相反応槽内物質を固相反応槽に移す。
また、固相反応槽内物質と合流するように、固相反応槽または固相反応槽外において分解処理の対象である新規な有機物を投入する。
また、液相に溶解する成分を洗浄した洗浄液を液相反応槽に移し、液相反応槽において生成する固体状物質を液相反応槽から取り出し、固相反応槽に移す。
ここで、固相反応槽内物質の一部を固相反応槽外に移し、洗浄するときに、1日に投入される前記新規な有機物1kgにつき、250〜1000mlの固相反応槽内物質を固相反応槽外に移し、洗浄する洗浄速度とする。
【図面の簡単な説明】
図1は、本発明の実施形態に係る有機物処理方法を実施するための有機物処理装置の模式構成図である。
図2は、実施例1において固相反応槽内の総有機物量(kg)を実験日数(日)に対してプロットした図である。
図3は、実施例2において固相反応槽内の総灰分量(kg)を実験日数(日)に対してプロットした図である。
図4は、実施例3において固相反応槽における反応速度係数(g−VM/VM/日)を実験日数(日)に対してプロットした図である。
【発明を実施するための最良の形態】
以下に、本発明の有機物処理方法の実施の形態について、図面を参照して説明する。
図1は本実施形態に係る有機物処理方法を実施するための有機物処理装置の模式構成図である。
図1に示す有機物処理装置は、固相反応槽10、液相反応槽20及び洗浄・固液分離部30を有し、それらの間は物質を循環させる物質循環系により接続されている。
本実施形態に係る有機物処理方法及び有機物処理装置は固液2相循環法を利用している。即ち、処理すべき有機物及びその分解生成物の少なくとも一部が、固相反応槽10と液相反応槽20とを順次通過して分解処理される。
処理すべき有機物及びその分解生成物を順次通過するとは、順序、回数、速度、期間等を、それぞれ有機性廃棄物の状態や量の多少に応じて適宜好適条件に選択して、固相反応槽と液相反応槽を通過することを言う。この際、処理すべき有機物及びその分解生成物の全体が全て通過することでなく、その一部分であっても目的効果が達せられる条件があれば良い。
固相反応槽10においては、処理すべき有機物及びその分解生成物の少なくとも一部が陸上微生物によって分解される。
ここで、固相反応槽10内での固相の分解プロセスにおいて、水溶性の高粘性生成物が生成される。高粘性生成物は、処理すべき有機物、分解過程中の有機物、基質、陸上微生物などの固相反応槽10内の固体の処理物質(以下、固相反応槽内物質との称する)を結びつけるバインダーの役割を果たし、固相反応槽内物質の凝集化を発生させる。凝集化した固相反応槽内物質においては固相の分解プロセスが進行しなり、分解処理が停止してしまう。
現時点でバインダーの役割を果たす高粘性生成物の成分の特定はされていないが、おそらく腐食質と呼ばれるフルボ酸、フミン酸等の無定型のコロイド状高分子物質群であると推測される。
そこで、矢印Aで示すように、固相反応槽10にて処理されている固相反応槽内物質の少なくとも一部が固相反応槽外に設けられた洗浄・固液分離部30に移され、洗浄・固液分離部30において固相反応槽内物質が洗浄液により洗浄される。これにより、上記の高粘性生成物を含む固相反応槽内物質の内の液相に溶解する成分は洗浄液に溶解して洗浄除去される。
洗浄液としては、矢印Bに示すように、液相反応槽20から取り出された液体、あるいは水道水などを適宜用いることができる。
洗浄・固液分離部30は、これを構成する容器の底面が例えばパンチングメタルなどからなり、固相反応槽内物質を通過させない程度の微小な開口を有している。従って、容器内に固体の物質を残して容器外に液体を排出する固液分離機能を有し、固相反応槽内物質の内の液相に溶解する成分を洗浄した洗浄液と、容器内に残留する固体の固相反応槽内物質に分離する。この時の固液分離および洗浄方法は、水などの液体が満たされた洗浄水タンクに、洗浄する固相反応槽内物質を投入・洗浄し、その後、メッシュおよびパンチングメタルなどを用いて固液分離を行ってもよい。
洗浄・固液分離部30で液体から分離された固相反応槽内物質は、矢印Cで示すように固相反応槽に移され、再び固相反応による分解に供せられる。
一方、洗浄・固液分離部30において液相に溶解する成分を洗浄した洗浄液は、矢印Dに示すように液相反応槽20に移される。
液相反応槽20においては、液相において、固相反応槽内物質から洗浄された高粘性生成物を含む処理すべき液体状の有機物及びその分解生成物が水中微生物によって分解され、最終的には浄水されて有機物処理装置の外部へと排出される。
ここで、水中微生物を用いた活性汚泥法により有機物が分解されるので、処理が進むにつれて微生物及びその死骸が蓄積し、汚泥と呼ばれる固体状物質が生成される。生成された固体状物質は液相反応槽20では分解されず、液相反応槽20中に蓄積してしまう。
液相反応槽20には、その一部として沈殿槽21が設けられており、矢印Eで示すように、例えば液相反応槽20からオーバーフローした液体が沈殿槽21へと移され、あるいは他の構成により液相反応槽20内の液体の一部が沈殿槽21へと移される。沈殿槽21内において、固体状物質は沈殿槽21の底部に沈殿して沈殿部21aを形成する。
上記の沈殿槽21に沈殿した固体状物質は、陸上微生物による固相反応によって分解可能であるため、生成する固体状物質を液相反応槽の一部である沈殿槽21から取り出し、固相反応槽10に移す。
本実施形態においては、例えば矢印Fで示すように、沈殿槽21の沈殿部21aから固体状物質を含有する液相反応槽内液体が取り出され、洗浄・固液分離部30へと送られる。このとき、沈殿槽21の沈殿部21aから固体状物質を含有する液相反応槽内液体の一部は、余剰汚泥として液相反応槽20に戻される。
洗浄・固液分離部30においては、固体状物質と液体に分離され、固相反応槽内物質を洗浄する場合と同様に、固体状物質は矢印Gで示すように固相反応槽10へ移され、一方、液体は矢印Hで示すように液相反応槽20に移される。
例えば上述のように液相に溶解する成分を洗浄液で洗浄した固相反応槽内物質が洗浄・固液分離部30の容器内に残存している状態で、これを濾過材として固体状物質を含有する液相反応槽内液体を濾過し、固体状物質を濾過材となった固相反応槽内物質上に残留させながら、濾液を洗浄・固液分離部30の容器から排出して液相反応槽20へと移す構成としてもよい。
濾過により洗浄・固液分離部30内の固相反応槽内物質上に残留した固体状物質は、固相反応槽内物質とともに固相反応槽に移され、固相反応による分解に供せられる。
上記の有機物処置装置において、沈殿槽21における固体状物質を沈殿させた上澄みは、そのまま、あるいは必要に応じて化学的処理などがなされて、矢印Iで示すように、浄水として有機物処理装置の外部に排出される。
本実施形態における有機物処理装置を用いた有機物処理方法では、多くの場合、処理すべき有機物は累積的である。つまり処理分解が終わった後に新たに次の有機物を追加するのではなく、処理分解が完了する以前に、次々と新たな有機物が追加累積される。
例えば、固相反応槽において処理されている固相反応槽内物質の一部または全部を洗浄・固液分離部に移して高粘性生成物を洗浄除去した後、矢印Jに示すように、固相反応槽内物質上に分解処理の対象である新規な有機物を投入し、新規な有機物を固相反応槽内物質に合流させることができる。
あるいは、新規な有機物を直接固相反応槽に投入して固相反応槽内物質に合流させてもよい。
尚、上記の固相反応槽内物質とは、処理すべく投入された有機物及びその分解生成物、水分調整剤として始めに投入されている基質、陸上微生物、高粘性生成物、水分、液相反応槽から運ばれた汚泥等、固相反応槽の内部で攪拌されている全ての物質をさすものとする。
上記の本実施形態における有機物処理装置を用いた有機物処理方法では、毎日新規な有機物を投入し続ける場合に、1日に投入される新規な有機物の量に対して固相反応槽内から取り出して洗浄する量の割合(洗浄速度)の最適な範囲として、下記の実施例から求められるように、1日に投入される新規な有機物1kgにつき、250〜1000mlの固相反応槽内物質を取り出して洗浄する。
以下、1日に投入される新規な有機物1kgにつき、固相反応槽から取り出して洗浄する固相反応槽内物質の体積の単位をml/kg/dayと表記する。上記の最適な範囲は、250〜1000ml/kg/dayとなる。
上記の上限である1000ml/kg/dayを越えて洗浄すると、液相反応槽で処理することが課せられる有機物負荷が必要以上に大きくなり、液相反応槽のサイズを大きくすることが必要となるため、有機物処理装置の大型化を招く。
また、上記の下限である250ml/kg/day未満とすると、高粘性生成物が十分に除去しきれなくなり、固相反応槽物質が凝集化して固相反応が停止してしまう。
洗浄速度を上記のような最適な範囲に設定することで、液相反応槽への有機物負荷をできるだけ小さくし、かつ、凝集化による固相反応の停止を防止することができる。
本実施形態に係る有機物処理方法によれば、固相反応槽内物質を洗浄して高粘性生成物を含む液相に溶解する成分を液相反応槽に移して水中微生物による液相反応により分解し、また液相反応槽内に生成する固体状物質(汚泥)を固相反応槽に移して陸上微生物による固相反応により分解することにより、固相反応槽内ではダンゴ化による分解停止が防止でき、また、固相反応槽内物質の洗浄速度を最適に設定して、液相反応槽への有機物負荷をできるだけ小さくし、かつ、凝集化による固相反応の停止を防止して有機性廃棄物の処理の安定性及び持続性を高め、飛躍的な有機性廃棄物の減量化を達成する。
上記の有機物処置装置において、固相反応槽10、液相反応槽20及び洗浄・固液分離部30の間で物質を循環させる物質循環系の構成は特に限定はなく、上記に示すように物質を送る構成となっていればよい。
上記の有機物処置装置は、必要に応じて除湿部や脱臭部が設けられており、上記の固相反応槽10、液相反応槽20、洗浄・固液分離部30及びそれらを接続する物質循環系に接続されている。これら除湿部による除湿条件や脱臭部の構成などについて、例えば国際公開第02/64273号パンフレットに記載の方法や構成を用いることができる。
さらに、固相反応槽10や液相反応槽20などにおける温度、湿度、pHなどの管理条件についても、国際公開第02/64273号パンフレットに記載の方法や構成好ましくを用いることができる。
【実施例1】
上記の本実施形態に係る有機物処理方法を、1日に投入される新規な有機物量に対して固相反応槽内物質を取り出して洗浄する量を種々に変更して、実施した。
具体的には、攪拌式の固相反応槽内に5リットルのおが屑を予め投入しておき、処理すべき新規な有機物として、毎日含有率80%のドッグフードを500g(有機物にして93g−VM(volatile materials))ずつ投入し続けた。
ここで、一日あたりに取り出して洗浄する固相反応槽内物質の量を、0ml、62.5ml、125ml、187.5ml、250mlと種々に変えて、固相反応槽内物質を固相反応槽から取り出し、洗浄部にて洗浄した後、再び固相反応槽内に戻す工程を毎日繰り返した。上記の各固相反応槽内物質の量は、固相反応槽内物質の総量に対して、それぞれ0%、1.25%、2.5%、3,75%、5%に相当する。
上記の洗浄したときの洗浄液は液相反応槽に移して液相反応による分解処理に供したが、発生した固体状物質の量が少なかったため固相反応槽へ移送することは省略した。
図2は、固相反応槽内の総有機物量(kg)を縦軸にとり、実験日数(日)を横軸にとって、固相反応槽内物質を固相反応槽から取り出し、洗浄する量のそれぞれについてプロットした図である。
尚、図中、実線は固相反応槽に投入された有機物負荷(Load)の総量を示しており、毎日一定の量を投入し続けるので直線となる。
図2に示すように、0ml、62.5ml、125ml、187.5ml、250mlのいずれの場合も、有機物負荷(Load)の直線を下回り、有機物の固相反応による処理が行われていることがわかるが、特に125〜250mlの場合には、実験日数がおよそ80日以降となると、総有機物量は実質的に増加しなくなり、定常状態となっているいることを示している。これは、毎日投入する分の有機物が処理されていることを示す。
一方、0mlおよび62.5mlの場合には、80日以降においても総有機物量が増加し続けており、安定な処理がなされてはいない。
従って、1日に投入される新規な有機物500gに対して、125〜250mlの固相反応槽内物質を固相反応槽から取り出し、洗浄することが望ましく、安全係数をかけて、125〜500mlの範囲とする。
これを換算すると、最適な洗浄速度として、1日に投入される新規な有機物1kgにつき、250〜1000mlの固相反応槽内物質を固相反応槽外に移し、洗浄する。上記の最適な洗浄速度を250〜1000ml/kg/dayと表記する。
【実施例2】
図3は、実施例1に示した実験において、総有機物量の代わりに総灰分量を測定し、固相反応槽内の総有機物量(kg)を縦軸にとり、実験日数(日)を横軸にとって、固相反応槽内物質を固相反応槽から取り出し、洗浄する量のそれぞれについてプロットした図である。
尚、図中、実線は固相反応槽に投入された有機物負荷(Load)の総量に対する灰分量を示しており、毎日一定の量を投入し続けるので直線となる。
図3に示すように、実施例1と同様、125〜250mlの場合には、実験日数がおよそ80日以降となると、総灰分量は実質的に増加しなくなり、定常状態となっているいることを示している。これは、毎日投入される有機物に含まれている灰分が、洗浄によって液相へ引き抜かれて、固相内の灰分量が増加せずに、定常状態に達していることを示している。
一方、0mlおよび62.5mlの場合には、総灰分量が常に増加し続けており、安定な処理がなされてはいない。
従って実施例1と同様に、1日に投入される新規な有機物1kgにつき、250〜1000mlの固相反応槽内物質を固相反応槽外に移し、洗浄するのが最適な洗浄速度であるという結論が得られる。
【実施例3】
図4は、実施例1に示した実験において、固相反応槽における分解速度を有機物量で割った値であり、分解速度の指標となる反応速度係数(g−VM/VM/日)を求め、これを縦軸にとり、実験日数(日)を横軸にとって、固相反応槽内物質を固相反応槽から取り出し、洗浄する量のそれぞれについてプロットした図である。
図4から、洗浄速度が高くなるにつれて次第に固相反応槽における反応速度係数が高くなってくることがわかる。
【実施例4】
実施例1に示した実験において、固相反応槽内物質の湿重量での密度、乾燥物量での密度、有機物量での密度、灰分量での密度をそれぞれ測定した。
固相反応槽内物質の湿重量での密度は、0.3〜0.7(kg−Wt/L;kg−Wt(wet weight)は湿重量)であった。
固相反応槽内物質の乾燥物量での密度は、0.2〜0.45(kg−DS/L;kg−DS(dry solid)は乾燥物の重量)であった。
固相反応槽内物質の有機物量での密度は、0.16〜0.45(kg−VM/L;kg−VMは有機物の重量)であった。
固相反応槽内物質の灰分量での密度は、0.02〜0.07(kg−Ash/L;kg−Ashは灰分物の重量)であった。
上記のようにように得られた各湿重量での密度、乾燥物量での密度、有機物量での密度、灰分量での密度を用いて、固相反応槽内物質の体積で表現した洗浄速度の最適な範囲(250〜1000ml/kg/day)を換算した。単位はそれぞれ、kg−Wt/kg/day、kg−DS/kg/day、kg−VM/kg/day、kg−Ash/kg/dayとなる。
得られた各数値を表1に示す。
湿重量、乾燥物量、有機物量および灰分量のいずれかに関して、表1に示した洗浄速度の範囲に設定することで、本発明の有機物処理方法において必須となる固相反応槽内物質の体積で表現した洗浄速度範囲に設定することと等価となり、本発明の効果を享受することが可能となる。

本実施形態に係る有機物処理方法によれば、有機性廃棄物の処理にあたり、大量の未熟コンポストを排出していた従来技術と比較し、残滓量を極めて低減することが可能となる。
また、従来技術では極めて不安定であった微生物を用いた有機物処置を実用レベルに安定化したことが本発明の重要な効果といえる。
さらに、悪臭や人体に悪影響を及ぼす病原菌や化学物質を生成することはなく、極めて安全な処理である。
さらに、社会的効果として、ディスポーザーを利用して生ゴミを家庭外に排出することができる為、従来のわずらわしい作業から開放される。
本発明による処理方法は根本的に有機物を無機化することができるため、そこから排水された水からは汚泥が発生することはない。
なお、本発明による有機物処理は、個々の一般家庭ではディスポーザーを利用し、生ゴミに代表される有機物を家庭外に排出し、その後、本発明による処理方法と設備によって数百戸単位で集積され、連続的に処理を行うという利便性の高い利用形態をとることができる。
本発明の有機物処理方法は「水のよごれや生ゴミという有機物」を「汚泥という他の有機物」に変換するわけでは無く、「無機化」することに着眼点を置いている。すなわち、微生物が分解増殖する過程における無機化反応を液固両相の微生物を用いて最大限に行うことが本発明の処理原理である。そのため、本発明の有機物処理方法により分解され、無機化した物質は地球の物質循環にそのまま流れることとなり、川、海、大気へと地球の生態系にとって無害な形で放出され循環する。
日本における汚泥の発生量は、生ゴミの量の比ではなく、全有機性廃棄物の大部分を占めており、本発明の将来的展望としては、これら汚泥問題を解決することもが挙げられる。
なお、本発明は、本実施の形態に限られるものではなく、任意好適な種々の改変を加えてよい。また、任意好適な種々の対象物を処理対象としてよい。
たとえば、本発明の有機物処理方法は、汚泥の処理などに適用することができる。従来の活性汚泥法による有機物の処理は、水の汚れを汚泥(微生物の死骸)という他の有機物に変換しているに過ぎない。そのため、大量の汚泥が発生し蓄積する問題が生じている。現在この汚泥の処理には莫大な処理費がかかっており、この側面からも生ゴミから汚泥を出さないという本発明による処理方法のコンセプトは重要である。
本発明の有機物処理方法によれば、固相反応槽内物質の洗浄速度を最適に設定して、液相反応槽への有機物負荷をできるだけ小さくし、かつ、凝集化による固相反応の停止を防止して有機性廃棄物の処理の安定性及び持続性を高めることができる。
【産業上の利用可能性】
本発明の有機物処理方法は、汚泥を処理する方法などの、有機性廃棄物などの有機物を処理する方法に適用可能である。
【符号の説明】
10…固相反応槽
20…液相反応槽
21…沈殿槽
21a…沈殿部
30…洗浄・固液分離部
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
分解生成物の少なくとも一部を、陸上微生物によって分解する固相反応槽と、水中微生物によって分解する液相反応槽とを順次通過せしめる固液2相循環法を利用して有機物を処理する有機物処理方法であって、
前記固相反応槽にて処理されている固相反応槽内物質の一部を前記固相反応槽外に移す工程と、
前記固相反応槽外に移された前記固相反応槽内物質の内の液相に溶解する成分を洗浄液で洗浄する工程と、
洗浄された前記固相反応槽内物質を前記固相反応槽に移す工程と、
前記固相反応槽内物質と合流するように、前記固相反応槽または前記固相反応槽外において分解処理の対象である新規な有機物を投入する工程と、
前記液相に溶解する成分を洗浄した洗浄液を前記液相反応槽に移す工程と、
前記液相反応槽において生成する固体状物質を前記液相反応槽から取り出し、前記固相反応槽に移す工程と
を有し、
前記固相反応槽内物質の一部を前記固相反応槽外に移す工程と前記洗浄する工程において、1日に投入される前記新規な有機物1kgにつき、250〜1000mlの前記固相反応槽内物質を前記固相反応槽外に移し、洗浄する
有機物処理方法。
【請求項2】
前記固相反応槽外が洗浄部である
請求項1に記載の有機物処理方法。
【請求項3】
前記洗浄部は、固形物を洗浄後、前記洗浄部を構成する容器の底面に前記固相反応槽内物質を通過させない程度の開口を有し、前記容器内に固体を残して液体を前記容器外に排出する固液分離機能を有する
請求項2に記載の有機物処理方法。
【請求項4】
前記液相反応槽が前記液相反応槽において生成する固体状物質を沈殿させるための沈殿槽を有し、
前記固体状物質を前記液相反応槽から取り出す工程においては、前記沈殿槽の沈殿部から前記固体状物質を含有する液相反応槽内液体を取り出す
請求項1に記載の有機物処理方法。

【国際公開番号】WO2004/087345
【国際公開日】平成16年10月14日(2004.10.14)
【発行日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−504250(P2005−504250)
【国際出願番号】PCT/JP2004/004573
【国際出願日】平成16年3月30日(2004.3.30)
【出願人】(800000080)タマティーエルオー株式会社 (255)
【出願人】(500536375)有限会社シーウェル (2)
【Fターム(参考)】