説明

園芸農業用ビニールハウス向け空調機

【課題】除湿運転の際に送風量を低減しないでハウス内の室温を均一に空調することができる園芸農業用ビニールハウス向け空調機を提供する。
【解決手段】園芸農業用ビニールハウス向け空調機において、室内側熱交換器9の送風経路下流側に配置された再熱用熱交換器14と、圧縮機4から吐出されたガス冷媒の一部を再熱用熱交換器14に導入し、この再熱用熱交換器14で液化した液冷媒を膨張弁8と室内側熱交換器9との間の冷媒流路に合流させる再熱用冷媒回路と、この再熱用冷媒回路における再熱用熱交換器14の下流側に設けられ、その開度によって冷媒流量を調整する再熱用膨張弁15と、再熱用熱交換器14の送風経路下流側に配置され、空気温度を検出する温度センサ18と、除湿運転を行う場合、温度センサ18で検出された空気温度が予め設定された目標値となるように、再熱用膨張弁15の開度を可変制御する制御装置3とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、園芸農業用ビニールハウス向け空調機に関する。
【背景技術】
【0002】
園芸農業用ビニールハウスでは、夏季にはハウス内の栽培物に適した室温となるように冷房し、冷房が必要でない夏季の夜間や中間期にはハウス内の栽培物を病虫害から防ぐために除湿を行う必要がある。このような園芸農業用ビニールハウス向け空調機としては、一般に、汎用パッケージエアコンが用いられている(例えば、特許文献1参照)。そして、冬季にはこの汎用パッケージエアコンによる暖房を行い、さらに暖房能力が必要な場合には燃焼系機器による暖房を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−30号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
園芸農業用ビニールハウス向け空調機は、ハウス内の室温を均一に空調するために大きな送風量が必要となる。しかしながら、汎用パッケージエアコンによる一般的な除湿運転では、送風量を減少させて冷凍サイクルの蒸発器における冷媒の蒸発温度を下げることにより除湿を行っている。そのため、除湿運転の際に送風量が少なくなることから、ハウス内の室温にムラが生じ、ハウス内の室温を均一に空調することができない。
【0005】
本発明の目的は、除湿運転の際に送風量を低減しないでハウス内の室温を均一に空調することができる園芸農業用ビニールハウス向け空調機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)上記目的を達成するために、本発明は、圧縮機、四方弁、室外側熱交換器、膨張弁、及び室内側熱交換器からなる冷凍サイクルを有する園芸農業用ビニールハウス向け空調機において、前記室内側熱交換器の送風経路下流側に配置された再熱用熱交換器と、前記圧縮機と前記四方弁との間の冷媒流路から分岐されて前記圧縮機から吐出されたガス冷媒の一部を前記再熱用熱交換器に導入し、前記再熱用熱交換器で液化した液冷媒を前記膨張弁と前記室内側熱交換器との間の冷媒流路に合流させる再熱用冷媒回路と、前記再熱用冷媒回路における前記再熱用熱交換器の下流側に設けられ、その開度によって冷媒流量を調整する再熱用膨張弁と、前記再熱用熱交換器の送風経路下流側に配置され、空気温度を検出する温度センサと、除湿運転を行う場合、前記温度センサで検出された空気温度が予め設定された目標値となるように、前記再熱用膨張弁の開度を可変制御する制御装置とを備える。
【0007】
(2)上記(1)において、好ましくは、前記再熱用冷媒回路における前記再熱用熱交換器の上流側に設けられた開閉弁を備え、前記制御装置は、冷房運転を行う場合に前記開閉弁を閉じ、除湿運転を行う場合に前記開閉弁を開くように制御する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、除湿運転の際に送風量を低減しないでハウス内の室温を均一に空調することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施形態における園芸農業用ビニールハウス向け空調機の冷凍サイクルを表す概略図である。
【図2】本発明の一実施形態における園芸農業用ビニールハウス向け空調機の制御装置を関連機器とともに表すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態を、図1及び図2を参照しつつ説明する。
【0011】
本実施形態の園芸農業用ビニールハウス向け空調機は、室外側ユニット1と、室内側ユニット2と、制御装置(コントローラ)3とを備えている。室外側ユニット1は、圧縮機4、四方弁5、室外側熱交換器6、室外側送風機7、及び膨張弁(電子膨張弁)8を備えている。室内側ユニット2は、室内側熱交換器9及び室内側送風機10を備えている。そして、圧縮機4、四方弁5、室外側熱交換器6、膨張弁8、及び室内側熱交換器9は、図示のようにガス冷媒配管11及び液冷媒配管12で接続されて、冷凍サイクルを構成している。
【0012】
また、室外ユニット1は、開閉弁(電磁弁)13を備えており、室内側ユニット2は、室内側熱交換器9の送風経路下流側に配置された再熱用熱交換器14と、その開度によって冷媒流量を調整する再熱用膨張弁(電子膨張弁)15とを備えている。そして、開閉弁13、再熱用熱交換器14、及び再熱用膨張弁15は、図示のように再熱用ガス冷媒配管16及び再熱用液冷媒配管17で接続されて再熱用冷媒回路を構成している。詳しく説明すると、再熱用ガス冷媒配管16は、開閉弁13が介在するとともに、一端が圧縮機4と四方弁5との間から分岐接続され、他端が再熱用熱交換器14の冷媒入口に接続されている。再熱用液冷媒配管17は、再熱用膨張弁15が介在するとともに、一端が再熱用熱交換器14の冷媒出口に接続され、他端が膨張弁8と室内側熱交換器9との間に合流接続されている。
【0013】
また、室内側ユニット2は、再熱用熱交換器14の送風経路下流側に配置され、空気温度(すなわち、ハウス内への吹出し温度)を検出する温度センサ18を備えている。この温度センサ18は、検出した空気温度を制御装置3に出力するようになっている。
【0014】
制御装置3には、例えば図示しない操作装置がケーブルを介して接続されており、この操作装置によって空調運転(詳細には、冷房運転、除湿運転、及び暖房運転)の切換えやハウス内室温の目標値等が設定入力されるようになっている。なお、空調運転の切換えは、設定入力されたタイマースケジュールによって自動的に切換えられるようにしてもよい。そして、制御装置3は、例えば除湿運転を行う場合、温度センサ18で検出された空気温度が予め設定された目標値となるように、再熱用膨張弁15の開度を可変制御するようになっている。
【0015】
次に、本実施形態の園芸農業用ビニールハウス向け空調機の運転動作を説明する。
【0016】
冷房運転を行う場合に、制御装置3は、四方弁5を冷房・除湿運転位置(図1中実線で示す経路)とし、開閉弁13を閉じ状態とする。これにより、圧縮機4から吐出された高温高圧のガス冷媒は、四方弁5を経由して室外側熱交換器6に供給され、室外側送風機7から送風された空気で冷却され、凝縮(液化)して液冷媒となる。この液冷媒は、膨張弁8にて減圧された後、室内側熱交換器9に供給され、室内側送風機10から送風された空気で暖められ(言い換えれば、空気は室内側熱交換器9で冷却され)、蒸発(気化)して低温低圧のガス冷媒となる。このガス冷媒は、四方弁5を経由して圧縮機4に戻される。そして、室内側熱交換器9で冷却された空気がダクト(図示せず)を介しハウス内に供給されて、ハウス内が冷房される。
【0017】
除湿運転(いわゆる再熱除湿運転)を行う場合に、制御装置3は、四方弁5を冷房・除湿運転位置とし、開閉弁13を開き状態とする。これにより、圧縮機4から吐出された高温高圧のガス冷媒の一部は、室外側熱交換器6に供給されて、上記同様の流れとなる。一方、圧縮機4から吐出された高温高圧のガス冷媒の残りは、再熱用熱交換器14に供給され、室内側熱交換器9で冷却された空気で冷却され(言い換えれば、空気は再熱用熱交換器14で暖められ)、凝縮して液冷媒となる。この液冷媒は、再熱用膨張弁15にて減圧され、膨張弁8からの液冷媒と合流する。そして、室内側熱交換器9で冷却され再熱用熱交換器14で暖められた空気がダクトを介しハウス内に供給されて、ハウス内が除湿される。
【0018】
また、制御装置3は、温度センサ18で検出された空気温度、すなわちハウス内への吹出し温度が予め設定された目標値となるように、再熱用膨張弁15の開度を可変制御する。これにより、ハウス内の室温の安定性が高められる。
【0019】
暖房運転を行う場合に、制御装置3は、四方弁5を暖房運転位置(図1中点線で示す経路)とし、開閉弁13を開き状態とし、再熱用膨張弁15を全開とする。これにより、圧縮機4から吐出された高温高圧のガス冷媒の一部は、四方弁5を経由して室内側熱交換器9に供給され、室内側送風機10から送風された空気で冷却され(言い換えれば、空気は室内側熱交換器9で暖められ)、凝縮して液冷媒となる。この液冷媒は、膨張弁8にて減圧された後、室外側熱交換器6に供給され、室外側送風機7から送風された空気で暖められ、蒸発してガス冷媒となる。このガス冷媒は、四方弁5を経由して圧縮機4に戻される。一方、圧縮機4から吐出された高温高圧のガス冷媒の残りは、再熱用熱交換器14に供給され、室内側熱交換器9からの空気で冷却され(言い換えれば、空気は再熱用熱交換器14で暖められ)、凝縮して液冷媒となる。この液冷媒は、再熱用膨張弁15にて減圧され、室内側熱交換器9からの液冷媒と合流する。そして、室内側熱交換器9及び再熱用熱交換器14で暖められた空気がダクトを介しハウス内に供給されて、ハウス内が暖房される。
【0020】
以上のように本実施形態においては、いわゆる再熱除湿運転を行うので、除湿運転の際に送風量を低減しないでハウス内の室温を均一に空調することができる。また、暖房運転の際に再熱用熱交換器を凝縮器として利用するので、暖房能力を高めることができ、燃焼系機器による暖房負荷を軽減することができる。
【符号の説明】
【0021】
3 制御装置
4 圧縮機
5 四方弁
6 室外側熱交換器
8 膨張弁
9 室内側熱交換器
13 開閉弁
14 再熱用熱交換器
15 再熱用膨張弁
18 温度センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機、四方弁、室外側熱交換器、膨張弁、及び室内側熱交換器からなる冷凍サイクルを有する園芸農業用ビニールハウス向け空調機において、
前記室内側熱交換器の送風経路下流側に配置された再熱用熱交換器と、
前記圧縮機と前記四方弁との間の冷媒流路から分岐されて前記圧縮機から吐出されたガス冷媒の一部を前記再熱用熱交換器に導入し、前記再熱用熱交換器で液化した液冷媒を前記膨張弁と前記室内側熱交換器との間の冷媒流路に合流させる再熱用冷媒回路と、
前記再熱用冷媒回路における前記再熱用熱交換器の下流側に設けられ、その開度によって冷媒流量を調整する再熱用膨張弁と、
前記再熱用熱交換器の送風経路下流側に配置され、空気温度を検出する温度センサと、
除湿運転を行う場合、前記温度センサで検出された空気温度が予め設定された目標値となるように、前記再熱用膨張弁の開度を可変制御する制御装置とを備えたことを特徴とする園芸農業用ビニールハウス向け空調機。
【請求項2】
請求項1記載の園芸農業用ビニールハウス向け空調機において、前記再熱用冷媒回路における前記再熱用熱交換器の上流側に設けられた開閉弁を備え、前記制御装置は、冷房運転を行う場合に前記開閉弁を閉じ、除湿運転を行う場合に前記開閉弁を開くように制御することを特著とする園芸農業用ビニールハウス向け空調機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2011−97896(P2011−97896A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−256056(P2009−256056)
【出願日】平成21年11月9日(2009.11.9)
【出願人】(399048917)日立アプライアンス株式会社 (3,043)
【Fターム(参考)】