説明

園芸鉢の受器

【課題】 本発明は、床上部分でも園芸鉢に存分に潅水できてその水切りもできること、溜り水が見えないこと、その溜り水を棄てる必要も殆どないこと、蚊の発生源とならないこと、これらを実現する、シンプルな構造の園芸鉢の受器を提供することを課題とする。
【解決手段】 天板と台脚から成る中空の置台を天板より適度に口幅が広くて出縁のある外箱中央に収め、置台天板には水切口を台脚下部には通水口を設けて外箱と置台の内部に貯水が共通するようにし、外箱と置台の間の空隙と天板の水切口から水分の蒸発を計る。
外箱の胴深と同高とする天板の上に水分蒸発と防蚊の用をなす有隙防蚊材を敷設する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、園芸鉢(草花や植木を植えた鉢)の置台の役割と、その園芸鉢への潅水時に鉢底から滴る余水を受ける役割をする、園芸鉢の受器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
十分な潅水と、その後の水切りは、容器園芸の基本である。
プランターと称する横長容器は、大抵、水切り用の底敷と栓付の排水孔を備えている。
鉢類に関しても、水切り構造に関する考案の開示は見受けるが、製品・商品としては、鉢底に排水穴を開けただけのものしか見受けず、これを玄関、廊下、部屋などに置く時、潅水時に滴る余水受けとして、プラスチック製や陶磁器製などの受皿を使用していた。
この受皿が深いと、溢水を気にせず十分に潅水できるが、鉢底部が溜り水に浸ることになりがちなため、鉢物が、根腐れ、空気不足、肥料分流失などの湿害を起こしやすいので水嵩に注意する必要があり、受皿が浅いと、溢水を気にして、潅水量を控えがちだった。
【0003】
そこで、ただの受皿ではなく、園芸鉢の底が潅水時の溜り水よりも上になるようにして水切りがなされるようにする、園芸鉢の(受器)に関する考案が数多く開示されている。
例えば、カバー器内に受台を据える実開昭54−10859号、水切りのある仕切板で貯水部を分ける実開昭60−162436号、全体を箱状の受台としてその上面に縁枠と網付の水切口を設ける実開平2−100437号など、種々のアイデアがある。(参照)
【0004】
受皿や受器内の溜り水は、湿害や汚れや次の潅水で溢れるのが気になるものであるが、濡れて重い園芸鉢を動かすのは大変だし、汚れる、ということで、放置する場合が多い。
そこで、[園芸鉢を動かさずとも溜り水を処理できる受皿・受器]の考案開示もある。
例えば、車輪付きの受皿の側面に排水パイプを設ける実開昭59−36959号とか、吊下式受皿の底に排水チューブを設ける実開昭59−196063号、また、脚の付いた受皿の下に引出し自在な余水受箱を設置する登録実案第3050028号など。(参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、蚊は産卵後三日ほどでボウフラになり十日も経つと羽化するので、園芸鉢の受皿や外のシート、容器などに溜り水がないように保健所などが注意を呼び掛けている。
本来は飛来できないマンションの高層階に蚊が多くいるという事例が数多く報告され、調べると、蚊は、人に付いて共にエレベーターで高層階まで昇り、ベランダに設置された園芸鉢の受皿に残った溜り水を繁殖手段としていた、という07年のテレビ報道もある。
夏場、二週間以上残った溜り水は、それがわずかでも蚊の発生源になり得るのである。
【0006】
一連の園芸鉢の受器・受皿に関するアイデアに、防蚊まで考慮したものを見受けない。
実開平2−100437号(前記)は、閉鎖的な構造なので結果的に蚊が侵入できないかもしれないが、製作しにくい構造であり、また、水分の蒸発がしにくい構造でもある。
防虫網で受皿を被覆する、特開2002−34346号(参照)のアイデアもあるが、これは、べつに、園芸鉢の水切り、排水、棄水に役立つ機能を備えているものではない。
また、[園芸鉢を動かさずに溜り水を処理できる]という受皿・受器類のアイデアも、溜り水の棄水作業は必要であり、不断の注意を怠ると、蚊の発生源となこともあり得る。
【0007】
本発明は、溢水を気にせず十分に潅水ができること、その水切りが完全にできること、溜り水が見えないこと、溜り水を棄てる必要があまりないこと、蚊の発生源にはならないこと、これらをシンプルな構造で実現する園芸鉢の受器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
天板と台脚から成る中空の置台を天板より適度に口幅が広く出縁のある外箱に収める。
台脚には外箱への通水口があるものとし、外箱と置台の隙間からの水分の蒸発を目す。
この天板上から外箱出縁に渉り、水分蒸発と防蚊の効果のある有隙防蚊材を敷設する。
【発明の効果】
【0009】
この受器は、防蚊材があり、溜り水の蒸発もスムーズなので、蚊の発生源とならない。
この受器は、貯水容積が大きいので、溢水の心配が少なく、頻繁な棄水の必要もない。
この受器は、水切りの機能と多少の湿気をもたらす作用があり、植物の健康に益する。
この受器は、溜り水や器体内の水垢などの汚ない部分が見えないので、清潔感がある。
この受器は、潅水余水の視認や処理が大変な鉢カバー内に使用して有効・有用である。
この受器は、シンプルな構造なので、製作しやすく、分解・清掃するのも容易である。
この受器は、床の上で園芸鉢を管理する者に潅水とディスプレイの楽しさをもたらす。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1は、本発明の受器の実施例1を表わす縦断面図である。
内部空洞が貯水用空間となる寸胴伏鍋型の置台(1)を口幅が天板(3)よりも適度に広くて胴深が天板(3)と同高の外箱(2)に収めており、置台(1)の天板(3)には余水滴下と水分蒸発を目的として複数箇所の水切口(5)(溝状でも可)を設けている。
寸胴体の台脚(4)下部には複数の通水口(6)を設けて外箱(2)への通水を計る。
外箱(2)の口の上に出縁(7)を設けるが、その横縁の幅と立縁の嵩は任意である。
天板(3)上には出縁(7)に渉って貯水部を覆う有隙防蚊材(8)を敷設している。
置台(1)が外箱(2)の中央に収まるようにズレ止となる突片を4カ所設けている。
突片は、置台(1)と一体として形成しても外箱(2)と一体として形成してもよい。
【0011】
図2は、円形である実施例1の受器の平面図を表わしている。
本発明の受器は、この円形のものだけではなく、方形のものも設定することができる。
【0012】
図3は、本発明の受器の実施例2を表わす縦断面図である。
この実施例2では、置台(1)を椅子型としており、複数ある柱体の台脚(4)の間が通水口(6)となり、斜傾柱体の台脚(4)が外箱(2)と接してズレ止となっている。
【0013】
本発明では、水分の蒸発を促す目的で、置台(1)と外箱(2)との間に適度な空隙ができるようにすることを特徴としており、請求項1にいう(置台を)外箱の中央に収まるようにし、とは、水分蒸発の効率と外見上のバランスを考慮して、空隙が均等になる様、このように、外箱または置台にズレ止のための構造的工夫を施していることを意味する。
【0014】
置台(1)の天板(3)に置いた園芸鉢へ潅水すると、余水は、水切口(5)から置台(1)内部に滴下し、通水口(6)を通って外箱(2)と置台(1)の間の空隙に到る。
置台(1)内部の溜り水は、水切口(5)から有隙防蚊材(8)を通して蒸発するが、空隙部分の溜り水は、蓋となる天板(3)や園芸鉢がない分、蒸発しやすいことになる。
つまり、この受器は、蚊の侵入を閉ざしながら溜り水の蒸発を促す構造となっている。
【0015】
園芸鉢の水切穴がある鉢底というものは、大抵、床面よりも少し上に設置されており、この鉢底と床面との隙間への通気口として、鉢の最下部側面に欠切部が設けられている。
蚊がそこを通り、水切口(5)を潜り抜けて貯水部に到達することも想定されるので、器内全面に渉って蓋のように有隙防蚊材(8)で覆うようにするものであり、有隙防蚊材(8)は、そのままでは見通しになる空隙部の汚い溜り水や水垢を覆い隠す効果もある。
有隙防蚊材は、防虫ネットのようなものでも、微孔パターンのシート材などでもよい。
【0016】
過剰な潅水で溜り水の水位が天板(3)よりも上になった場合は、出縁(7)の立縁が溢水を防ぐ役をし、その情況は視認されるので、それ以上の過分な潅水を停止できる。
そして、この場合、出縁(7)まで来た溜り水を汎用スポンジに吸わせてバケツなどに移すことができるが、濡れて重い園芸容器を動かさずに行えるその作業は容易である。
【0017】
図4は、立縁が上方に開いていることを特徴とする受器の実施例3を表わす縦断面図であるが、この場合は、潅水の飛沫受としては有利となり、全体の幅は嵩むことになる。
外箱の胴部や出縁のデザイン・サイズ、そして、受台の仕様などは、製作性・機能性・デザイン性・安全性などを勘案して、請求項1の範囲で、多種類に渉って設定できる。
【0018】
図5は、本発明の受器に植木鉢を戴置した様子を表わしている。
このように、この受器は、戴供器の三方に似ており、その置台は合成樹脂製にしても、外観となる外箱を陶磁器・ホーローなどとすると、一段と際立つディスプレイができる。
【0019】
図6は、図5の例に鉢カバーを組み合わせた様子を表わしている。
屋内に置く植木鉢は、よく、鉢カバーをして雰囲気を高めるものであるが、鉢カバーを使用すると、底部の溜り水の様子を視認しにくいし、その溜り水の処理も大変だった。
この受器を内設すると、存分な潅水と楽な溜水管理ができて、蚊発生の虞れもない。
つまり、前述のように、この受器は貯水能力が大きいので、溢水を気にせずたっぷりと潅水できるし、立縁まできた溜り水は上から視認できるので、スポンジで排水できる。
【0020】
鉢カバー内に使用をする場合を想定すると、鉢が隠れるように置台の高さは低めの方がよいが、この受器は、出縁が貯水能力に貢献するので、置台に余程の高さは要らない。
【0021】
この受器は、鉢カバー内用や汎用としては、全体合成樹脂製の製品を設定すればよい。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】 実施例1の縦断面図
【図2】 実施例1の円形の平面図
【図3】 実施例2の縦断面図
【図4】 受器の重なり具合を示す縦断面図
【図5】 受器の使用状態を表わす立面図
【図6】 図5の使用例に鉢カバーを組み合わせた状態を表わす立面図
【符号の説明】
【0023】
1 置台
2 外箱
3 天板
4 台脚
5 水切口
6 通水口
7 出縁
8 有隙防蚊材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水切口のある天板と通水口のある台脚で構成される中空の置台を口幅がこの置台よりも適度に大きく胴の深さがこの置台と同じ高さでその頂辺を出縁とする外箱の中央に収まるようにし、この置台から外箱の出縁に渉って有隙防蚊材を敷設して成る、園芸鉢の受器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−19769(P2012−19769A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−171108(P2010−171108)
【出願日】平成22年7月12日(2010.7.12)
【出願人】(592104106)
【Fターム(参考)】