説明

土嚢

【課題】 吸水ポリマーを使用する土嚢で、水を吸水して膨張すのに時間を要するため土嚢がながされてしまい、思った場所に積み上げることができない、使用後の産業廃棄物としての処分が面倒であるなどの問題を解決すること。
【解決手段】 麻袋2に、膨潤材3として鉋屑状の長さ4mm〜8mmで厚さ0.4mm〜0.6mmの間伐材チップ細片と、コンニャク芋の澱粉を、容積比で間伐材チップ細片が40〜80%、コンニャク芋の澱粉が60〜20%の割合で混合したものに錘効果を発揮させるための重量材として比重1.2以上の乾燥川砂4を加えて混合させたものを土嚢充填材として、約52×35×10(cm)の土嚢1外袋に収納する。収納する土嚢混合物の(設計)重量は、上記土嚢について約4〜4.5Kgである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は天然材料のみで、構成された土嚢に関するものであり、河川の溢水、洪水や土砂崩れなどの災害対策時において、現地において、集積あるいは、土嚢相互を連結して堤状構造物、壁状構造物を構築し、溢水流や土砂流をせき止めあるいはその方向を転換させて保全しようとする地域への災害を防止するために、使用するものである。
【0002】
本発明の特徴は、吸水前の土嚢重量が4〜4.5Kgと軽量であって、人手で容易に運べ、敷設することができる。しかしながら、土嚢を充填物の吸水による体積膨張速度が極めて大きく、数十秒で所定の目的とする土嚢形状に迄、膨潤・膨張し安定重量のある土嚢を形成する。また、間伐材チップを大量に使用することにより、廃棄物の有効利用が図れると共に、さらに天然材料のみを使用材料とすることにより使用後の生分解的処理が容易なものである。
【背景技術】
【0003】
保管や使用現場への持ち運びの便宜のために土を使用しない土嚢が各種提案されている。例えば、水分の吸収材の主材として吸水性ポリマーや、製紙した紙の破砕紙片と澱粉などの植物性高分子重合体を使用したものがある。
【0004】
一方、杉や檜を初め各種樹木の間伐材は毎年大量に発生しているが、なかなか適切な再利用法がなく、また大量に付加価値を付けて再利用できる分野も未だ開発されておらず、廃棄処分に困っているのが現状である。
【特許文献1】特許第3440065号公報
【特許文献2】特開2004−197418号公報
【特許文献3】特開2001−34852号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
吸水性ポリマーを使用するものは軽くて取扱には便利であるが、一方水を吸水して膨張するのに時間を要するため安定重量で錘効果のある土嚢としての効果を発揮するまでに時間を要し、流速が大きい河川流で使用すると比重が水より軽いことが災いして、水を吸水して土嚢が重くなる前に水の流れによって土嚢が流されてしまい、なかなか思った場所に土嚢を積み上げることができないという問題点があった。さらに、化学物質を使用しているので、使用後に簡単に焼却処分などができず、産業廃棄物として適切に処理する必要があり使用後の処分が面倒であった。
【0006】
また、製紙した紙の破砕紙片と澱粉などの植物性高分子重合体を使用したものは、水の保水力が弱くて膨潤材と使用した場合に土嚢としての効果を発揮するほど十分吸収せず、したがって膨張しても圧力をかけたり持ちあげたりすると保水されない水が抜け落ちてしまう問題点があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで、この発明に係る土嚢は上記課題を解決するために、麻袋に、間伐材チップと澱粉を混合した膨潤材及び錘用重量材を収納したものである。
【0008】
また、上記土嚢において膨潤材の混合割合は容積比で、間伐材チップが40〜80%、澱粉が60〜20%としたものである。そして、澱粉としては穀物の澱粉やコンニャク芋の澱粉を単独で又は併用して使用する。
【0009】
さらに、間伐材チップは鉋屑状の細片とし、その細片は長さ4mm〜8mmで、厚さ0.4mm〜0.6mmとしたものである。
【0010】
さらにまた上記に加え、錘用重量材は、膨潤材及び麻袋の合計重量の1.5倍〜2.5倍を加えることにより、吸水前で土嚢全体の比重を1.15以上に調整する。錘用重量材は比重1.2以上の細砂、細砂利の天然素材とし、例えば乾燥川砂としたものである。
【発明の効果】
【0011】
間伐材チップ細片は速やかに水分を吸収してふやけてその質量を増す。さらに澱粉も速やかに吸水するとともに膨張率も大きい。また特にコンニャク芋の澱粉は保水力が非常に高いので、膨張した体積をある程度の圧力に抗して保持するので、数段以上積み上げて使用する場合に適している。また、錘用重量材の添加により吸水前でも比重が1.15以上あり、流れのあるようなところでも使用可能である。
【0012】
さらに、完全に膨張後には膨潤材が十分に吸水することになり、土嚢全体としての比重は1.15以上となり、流速4m/sの流れにも耐え得るものとなる。なお、国土交通省の基準では、土嚢は、流速70cm/s〜1.0m/sの流れで使用できればよいこととなっているが、洪水の際などにはこの程度のものでは水流に対して抗しきれないのが実情である。
【0013】
そして、土嚢用袋としては自然素材である麻袋を使用し、膨潤材も天然材料のみを使用することにより、使用した土嚢は時間の経過と共に生分解されて自然に還り使用後の後処理が不要となる。
【0014】
また、従来その廃棄処理に困っていた間伐材を有効利用することができ、間伐材を付加価値を付けて再利用することが可能となる。そして、間伐材としてはその地域で発生したものを利用することができるので、輸送経費や保管経費を節約することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
麻袋に、膨潤材として鉋屑状の長さ4mm〜8mmで厚さ0.4mm〜0.6mmの間伐材チップ細片と、コンニャク芋の澱粉を、容積比で間伐材チップが細片が40〜80%、コンニャク芋の澱粉が60〜20%の割合で混合したものと、錘用重量材として乾燥川砂を膨潤材及び麻袋の合計重量の1.5倍〜2.5倍の重量収納して吸水前で土嚢全体の比重を1.15以上に調整する。
【実施例1】
【0016】
次に、本発明にかかる土嚢の製造方法に基づいて説明する。
先ず、間伐材を粉砕機(チッパー)によりチップ化する。チップの大きさとしては長さ4mm〜8mmで、厚さ0.4mm〜0.6mm位の鉋屑状の細片とする。より望ましくは長さ5.0mm〜7.0mmとする。なお、この大きさは使用する間伐材チップが全部この範囲になければならないということではなく、全体の7〜8割がこのような範囲に入っていればよい。
【0017】
次に、高速ミキサーに間伐材チップとコンニャク芋の澱粉と乾燥川砂を入れ適量(前記重量の15%〜20%)の水を噴霧して約1分攪拌混合し、間伐材細片とコンニャク芋の澱粉と川砂を一体化する。そして、5.0cm〜6.0cm程度の厚さにし、瞬時に水分を0.5%以下となるように乾燥させて平板状に形成し、脱脂した麻袋に所定量詰め包装する。
【0018】
なお、膨潤材の混合割合は容積比で、間伐材チップが40〜80%、コンニャク芋の澱粉が60〜20%の範囲とする。より望ましくは、間伐材チップを50〜70%、コンニャク芋の澱粉を50〜30%とする。コンニャク芋の澱粉を多くするとより高い保水力が得られるが、本発明は間伐材を大量に有効再利用することを目的の一つとしていることともに、一般的にコンニャク芋の澱粉は高価な材料であるので、この程度の配合量でもコンニャク芋の澱粉を加えたことによる安定重量がある錘効果は確保できる。
【0019】
また、コンニャク芋の澱粉に代えて、穀物の澱粉や他の芋類の澱粉を使用することにも可能である。また、これらの澱粉とコンニャク芋の澱粉をミックスして使用することも可能である。他の澱粉を使用すると、コンニャク芋の澱粉と比べ多少保水力に劣る面もあるが、使用箇所によっては十分使用可能である。
【0020】
また、錘用重量材としては比重1.2以上の細砂、細砂利の天然素材を使用する。天然素材を使用するのは土嚢としての使用後の処理対策のためである。また、錘用重量材を使用するのは、膨潤材が軽いため、十嚢全体としての比重を吸水前で1.15以上とし、ある程度の流速のある箇所においても使用できるようにするためである。なお、錘用重量材が多いほど吸水前の設置時において、速い流速に耐えることができるが、一方錘用重量材が多いと吸水後の最終的な膨張率は小さくなってしまうとともに、設置時の持ち運びにも不便である。そこで、通常は吸水前で土嚢全体で比重1.3以上となるように錘用重量材の量を調整する。
【0021】
また、錘用重量材としては天然材料であれば砂や砂利や石などが使用可能であるが、分散性や無公害性の観点からは川砂を使用することが望ましい。但し、海岸などで使用する場合は海砂でもよい。
【実施例2】
【0022】
次に、本発明にかかる土嚢の一実施例を図面に基づいて説明する。
1は本発明の土嚢であり、2は土嚢用袋となる脱脂した麻袋である。麻袋2の大きさは40cm×60cmで、重量は0.3Kgである。
【0023】
3は容積比で檜の間伐材チップとコンニャク芋の澱粉を6:4の割合で混合した膨潤材であり、重量は1.7Kgである。4は、錘用重量材となる乾燥川砂(比重1.6)であり、重量は3.8Kgである。そして、膨潤材3と乾燥川砂4は上記した方法により混合してマット状に成型して麻袋2内に収納してある。よって、土嚢1は吸水前(膨潤前)で5.5Kg(比重1.25)となり、また厚さは約5.5cmとなる。なお、乾燥川砂4を増量することにより、土嚢の比重を1.3〜1.5に高めることができる。
【0024】
なお、上記土嚢1について吸水試験を行ったところ、3分経過でほぼ飽和状態となり、重量は23.5Kgとなり体積も1800ccとなる。すなわち、吸水飽和した時点での土嚢の比重は、約1.3であった。
【0025】
本発明の土嚢は、その使用材料が天然材料のみにより構成されているので、使用後に土中埋蔵することにより生分解的処理を行うことが可能であり、環境への負荷が小さい。
【0026】
また、吸水前でも比重を1.15以上とし、また体積膨潤速度が大きいことから、特に流速の大きい河川における溢水防御用部材として利用することが可能である。
【0027】
さらに上記に加え、間伐材の利用が可能であるとともに、錘用重要材も砂利や砂などを利用することができるので、どこでも容易に製造することができ、山中における土砂災害から海岸における護岸対策までその適用範囲は広いものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発見に係る土嚢の断面図である。
【符号の説明】
【0029】
1 土嚢
2 麻袋
3 膨潤財
4 乾燥川砂

【特許請求の範囲】
【請求項1】
麻袋に、間伐材チップと澱粉を混合した膨潤材及び錘用重量材を収納したことを特徴とする土嚢。
【請求項2】
膨潤材の混合割合は容積比で、間伐材チップが40〜80%、澱粉が60%から20%である請求項1記載の土嚢。
【請求項3】
間伐材チップは鉋屑状の細片である請求項1又は請求項2記載の土嚢。
【請求項4】
間伐材チップの細片は長さ4mm〜8mmで、厚さ0.4mm〜0.6mmである請求項3記載の土嚢。
【請求項5】
錘用重量材は、膨潤材及び麻袋の合計重量の1.5倍〜2.5倍の重量を収納し、吸水前で土嚢充填物の比重を1.15以上とした請求項1又は請求項2記載の土嚢。
【請求項6】
錘用重量材は、比重1.2以上の細砂、細砂利の天然材料である請求項5記載の土嚢。
【請求項7】
錘用重量材は、乾燥川砂である請求項6記載の土嚢。
【請求項8】
澱粉は、穀物の澱粉である請求項1又は請求項2記載の土嚢。
【請求項9】
澱粉は、コンニャク芋の澱粉である請求項1又は請求項2記載の土嚢。

【図1】
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【公開番号】特開2007−92486(P2007−92486A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−307756(P2005−307756)
【出願日】平成17年9月26日(2005.9.26)
【出願人】(505393625)
【Fターム(参考)】