説明

土壌の浄化方法および浄化装置

【課題】 汚染物質を含有する土壌の領域全体について、地盤を乱すことなく繰り返し土壌の洗浄を行うことで簡易、かつ、確実に浄化を行うことを可能とした土壌の浄化方法および浄化装置を提案する。
【解決手段】 揚水手段10による汚染地下水W1を揚水と、揚水した汚染地下水W1の浄化プラント20による浄化と、汚染地下水W1を浄化してなる浄化水W2の磁場処理機30による磁場処理と、浄化水W2を磁場処理してなる磁場処理水W3の水路40を介した地盤Gへの供給と、汚染地下水W1の揚水により低下した地下水位を揚水を一時的に停止することにより所定の高さにまで上昇させることと、を繰り返し行うことにより汚染物質を含有する土壌を洗浄する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汚染物質を含有する土壌を浄化する土壌の浄化方法および浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば硝酸性窒素は、農業活動において重要な肥料として使用されているが、多量に摂取すると中毒症状を引き起こす有害物質(汚染物質)であることが知られている。
ところが、肥料として繰り返し投入されることや生活廃棄物(生活排水を含む)や畜産廃棄物等に含まれていることなどにより土壌に蓄積された硝酸性窒素は、地下水に溶出することで、広域に汚染する場合があるとともに、汚染物質を含有した地下水が井戸等に流入することで人的な被害を引き起こす場合がある。
【0003】
同様に工場や廃棄物処分場等から流出して土壌に浸透した油分や揮発性有機化合物等も汚染物質として被害をもたらすことが知られている。
このように、多数の分野により引き起こされる土壌汚染が問題となっている。
【0004】
このような汚染物質を含有する土壌の浄化方法として、例えば、(1)原位置にて浄化材を汚染土壌に添加し、撹拌混合する方法(例えば、特許文献1参照)、(2)汚染土壌を掘削して洗浄した後、埋め戻す方法(例えば、特許文献2参照)、(3)汚染地下水を地中または地上において浄化した後、この浄化水を地中に注水することで地下水を循環させて汚染土壌を洗浄する方法(例えば、特許文献3参照)等、さまざまな技術が開発されており、実用化にいたっている。
【特許文献1】特開2004−313997号公報([0009]−[0012]、図1−図3)
【特許文献2】特開2005−040764号公報([0014]−[0019]、図1)
【特許文献3】特開2003−181436号公報([0012]−[0016]、図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、原位置において浄化材を添加し撹拌混合する方法は、撹拌混合により地盤を乱し、地盤の強度を低下させるため、跡地の利用に弊害をもたらす場合があるという問題点を有していた。
また、汚染領域が広域にわたる場合、全汚染領域に対する撹拌混合作業に手間がかかり、時間と費用が嵩むという問題点も有していた。
【0006】
また、掘削した土壌を洗浄する方法は、土量が多量な場合、作業に手間がかかるという問題点を有しているとともに、一旦掘削した土壌を埋め戻すことから、地盤の強度が低下し、跡地の利用に弊害をもたらす場合があるという問題点を有していた。
【0007】
さらに、汚染地下水を浄化した後、地中に注水する、いわゆる揚水処理法では、循環される地下水が、同一の水みちを通ってしまい、地下水が浸透しにくいという問題がある。その結果、汚染物質が溶出されず、土壌の洗浄が不完全となる部分が発生する場合や、完全に土壌を洗浄するために多大な時間を要する場合があるなどの問題点を有していた。
【0008】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであり、汚染物質を含有する土壌の領域全体について、地盤を乱すことなく繰り返し土壌の洗浄を行うことで簡易、かつ、確実に浄化を行うことを可能とした土壌の浄化方法および浄化装置を提案することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、地下水を利用して汚染物質を含有する土壌を洗浄する土壌の浄化方法であって、汚染領域の地下水を揚水して地下水の水位を低下させた後、前記地下水の揚水により低下した地下水の水位を上昇させることを繰り返し行うことを特徴としている。
【0010】
かかる土壌の浄化方法によれば、地下水の揚水により地下水の水位(以下、単に「地下水位」という場合がある)を低下させることと、例えば揚水の量を調整する等により地下水の水位を上昇させることとを繰り返し行うことで、水位を上昇させるたびに地下水がまんべんなく汚染領域全体にいきわたり、汚染物質を含有する土壌を含む領域(以下、本明細書において「汚染領域」と称する場合がある)にある汚染物質を地下水に溶出させて回収するため、確実に土壌の浄化を行うことが可能となる。
また、この土壌の浄化方法によれば、揚水により地下水位を調整するのみで、確実に汚染物質を含有する土壌を洗浄することが可能であるため、施工性に優れている。さらに、地盤を乱すこともないため、跡地の利用の際に特別な処理工法(地盤改良工等)を要することがなく、全体として、経済性に優れている。
【0011】
また、前記土壌の浄化方法において、例えば注水井を利用するなどして、汚染領域に水分を供給すれば、揚水により地下水の水量が減少することがなく、周辺地域の地下水の流域を変化させることがないため、地盤沈下や井戸枯れなどの弊害が生じることがなく、現況の自然体系を維持することができ、好適である。
また、水分を汚染領域の地盤に積極的に供給することにより、地下水位の上昇の速度を調整することで、揚水時に土壌の間隙を流れる地下水の水みちを変化させることが可能となり、故に、土壌の洗浄を確実、かつ、早期に行うことが可能となる。
【0012】
また、前記土壌の浄化方法において汚染領域への水分の供給が、地表面から浸透させることにより行われれば、地下水位よりも上位の領域にある汚染物質もこの水分に溶出させて洗い流すことができるため、汚染領域の土壌の洗浄を確実に行うことが可能となる。
【0013】
また、前記土壌の浄化方法において汚染領域に浸透させる水分が、揚水された地下水を浄化した浄化水であれば、新たに水道水や海水等を採取する必要がなく、あるいは採取する量を削減することができるため、その設備や採取に要する費用を削減することができ、好適である。
【0014】
さらに、前記土壌の浄化方法において、地中に浸透させる水分に、表面張力低下処理を施してあれば、地中への地下水の浸透を早めること、および、深く浸透させることが可能となり、好適である。
【0015】
また、請求項6に記載の発明は、地下水を利用して汚染物質を含有する土壌を洗浄する土壌の浄化方法であって、汚染領域の地下水を揚水するとともに、地表面から前記汚染領域に水分を浸透させることを特徴としている。
【0016】
かかる土壌の浄化方法によれば、地下水を、汚染物質を含有する領域内において地下水を積極的に流動させることにより、この地下水に汚染物質を溶出させて回収するため、土壌の洗浄を確実に行うことが可能となり、好適である。また、汚染領域への水分の供給は、地表面から浸透させることにより行うため、地下水位よりも上位の領域にある汚染物質に関しても、この水分に溶出させて洗い流すことができ、好適である。
【0017】
また、前記土壌の浄化方法における水分が、前記揚水された地下水を浄化した浄化水であれば、地下水を循環させることで、地下水の流域を維持し、周辺地域の生態系等に影響を及ぼすことがないため、好適である。
【0018】
さらに、前記水分が、表面張力低下処理が施された後、地中に浸透されれば、浸透性に優れており、土壌の洗浄速度を早めるとともに汚染領域全体に地下水を浸透させて汚染物質を回収するため、早期、かつ、確実に土壌の浄化を行うことが可能となり、好適である。
【0019】
また、請求項9に記載の発明は、汚染物質を含有する土壌の浄化装置であって、汚染物質を含有する土壌を含む領域に配置された揚水手段と、前記揚水手段により揚水された地下水を浄化する浄化手段と、前記水分に表面張力低下処理を施す表面張力低下手段と、前記表面張力低下手段により表面張力低下処理が施された水分を地盤に供給する水分供給手段とを備えることを特徴としている。
【0020】
かかる土壌の浄化装置は、水分供給手段により供給された水分により土壌を洗浄するため、地盤を乱すことなく土壌が含有する汚染物質を回収し、浄化することを可能としており、好適である。
【0021】
さらに、前記土壌の浄化装置において、水分供給手段が、地表面に形成された水路や、地表面に前記水分を散布する散布手段であれば、広域に水分を供給することが可能となり、好適である。また、上方(地表面)から水分を浸透させることで、地下水位よりも上方における汚染物質を含有した土壌に関しても洗浄することを可能としており、好適である。
【発明の効果】
【0022】
本発明の土壌の浄化方法および浄化装置によれば、汚染物質を含有する土壌の領域全体について、地盤を乱すことなく繰り返し土壌の洗浄を行うことで簡易、かつ、確実に浄化を行うことが可能となる
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明の好適な実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、説明において、同一要素には同一の符号を用い、重複する説明は省略する。
ここで、図1は、第1の実施の形態に係る土壌の浄化装置を示す図であって、(a)は平面図、(b)は縦断面図、(c)は同土壌の浄化装置に係る水路の詳細を示す拡大断面図である。また、図2の(a)〜(c)は、それぞれ第1の実施の形態に係る土壌の浄化方法による各段階を示す縦断面図である。
また、図3は、第2の実施の形態に係る土壌の浄化装置を示す縦断面図であり、図4は、第3の実施の形態に係る土壌の浄化装置を示す縦断面図である。
【0024】
<第1の実施の形態>
第1の実施の形態(以下、単に「第1実施形態」という場合がある)に係る土壌の浄化装置1は、図1(a)および(b)に示すように、例えば硝酸性窒素からなる汚染物質を含有する土壌を含む領域(以下、単に「汚染領域」という場合がある)に配置された揚水手段10と、この揚水手段10により揚水された地下水W1を浄化する浄化プラント(浄化手段)20と、水分に表面張力低下処理を施す磁場処理機(表面張力低下手段)30と、表面張力低下処理が施された水分を地盤に供給する水分供給手段である水路40とを備えている。なお、浄化対象となる汚染物質は、硝酸性窒素に限定されるものではない。
【0025】
揚水手段10は、汚染領域に形成されて汚染地下水W1を揚水する揚水井11と、揚水井11の上端から浄化プラント20まで揚水した汚染地下水W1を流下可能に配管された汚染水管12と、汚染地下水W1を揚水するために揚水井11に吸引力を付与する揚水ポンプ13と、から構成されている。
【0026】
揚水井11は、汚染領域を通過して汚染物質を含有する汚染地下水W1を全て回収することが可能となるように汚染領域内または汚染領域周辺において複数本(本実施形態では9本)配置するものとする。また、揚水井11は、公知の手段により構築すればよく、その構造は限定されるものではないが、本実施形態では、汚染領域の地盤G内に鉛直方向に削孔された縦孔に浄化材が充填された有孔管を配置してなる。
【0027】
揚水井11の上端には汚染水管12が接続されており、揚水井11の上端の汚染水管12との接続部は図示しないパッカーにより遮蔽されている。
汚染水管12は、浄化プラント20まで配管されており、また、汚染地下水W1を取水するための吸引力を付与するための揚水ポンプ13が接続されている。
【0028】
浄化プラント20は、揚水手段10により揚水された汚染地下水W1を無害化処理して浄化水W2とするものであって、その構成は限定されるものではなく、汚染地下水W1(汚染土壌)が含有する汚染物質の種類や汚染領域の規模などに応じて適宜設定すればよい。
【0029】
また、磁場処理機30は、浄化プラント20により無害化処理が施された浄化水W2に磁場処理を施すことにより、浄化水W2の表面張力を低下して地盤Gに浸透しやすい磁場処理水W3を生成するものである。なお、第1実施形態では、表面張力低下手段として、磁場処理機30を採用するものとしたが、水分の表面張力を低下させて、地盤Gへの浸透力を高めることが可能であれば、表面張力低下手段の構成は限定されるものではない。
【0030】
水路40は、磁場処理機30により磁場処理が施された磁場処理水W3を地盤Gに供給するものであって、図1(c)に示すように、汚染領域の地表面において形成された溝41と、溝41内に配管された有孔管である供給管42と、溝41内において溝41と供給管42との隙間(供給管42の周囲)に充填された砕石43とにより構成されている。
水路40は、汚染領域の全体への磁場処理水W3の供給が可能となるように形成するものとし、第1実施形態では、図1(a)に示すように、井桁状に形成する。
【0031】
次に、第1実施形態に係る土壌の浄化方法について、図2を参照して説明する。
【0032】
第1実施形態に係る土壌の浄化方法は、(1)汚染領域の汚染地下水W1を揚水する揚水工と、(2)揚水工により揚水された汚染地下水W1を浄化する浄化工と、(3)浄化工において浄化された浄化水W2に磁場処理を施す表面張力低下工と、(4)磁場処理が施された磁場処理水W3を地中に浸透させる注水工と、(5)汚染地下水W1の揚水により低下した地下水位WLを所定の高さまで上昇させる地下水位上昇工とから構成されている。
【0033】
(1)揚水工
揚水工では、揚水手段10により地盤G内から汚染地下水W1の揚水を行い、図2(a)に示すように、地盤Gの地層や地下水水量により一定の高さに保たれた自然の地下水位WLが、図2(b)に示す地下水位WLのように、所定の高さに低下するまで連続して行う。
【0034】
(2)浄化工
浄化工では、揚水工により地盤Gから取水(揚水)された汚染地下水W1を浄化プラント20により浄化する。
揚水工により揚水された汚染地下水W1は、図2(a)および(b)に示すように、汚染水管12を介して浄化プラント20へと圧送される。そして、浄化プラント20では、汚染地下水W1に無害化処理を施して、浄化水W2を生成する。
【0035】
(3)表面張力低下工
表面張力低下工では、浄化工により生成された浄化水W2に磁場処理機30により磁場処理(表面張力低下処理)を施す(図2(a)および(b)参照)。
浄化工において無害化処理が施された汚染地下水W1である浄化水W2は、磁場処理機30に流下されて磁場処理が施される。磁場処理が施された浄化水W2である磁場処理水W3は、表面張力が低下されており、土壌の間隙に浸透しやすい、いわゆる高浸透水である。
【0036】
(4)注水工
注水工では、表面張力低下工により生成された磁場処理水W3を、水分供給手段(水路40)により地盤Gに浸透させる(図2(a)および(b)参照)。
ここで、浄化工、表面張力低下工および注水工は、揚水工と並行して行うものとするが、第1実施形態では、揚水手段10による汚染地下水W1の揚水量が、注水工による磁場処理水W3の浸透水量よりも多いため、図2(b)に示すように、地下水位WLが低下する。また、第1実施形態では、注水工により地盤Gに浸透させる水分として揚水工により揚水された汚染地下水W1を、浄化した後、磁場処理を施した磁場処理水W3を使用するものとしたが、地盤Gに浸透させる水分の供給源は限定されるものではなく、例えば、水道水や河川、湖、海等から採取した水を使用してもよい。
【0037】
(5)地下水位上昇工
揚水工により所定の高さまで地下水位WLが低下されたら、揚水手段10による汚染地下水W1の揚水を一旦停止することにより、地盤処理水W3および自然に流入してきた地下水により、図2(c)に示すように地下水位WLを上昇させる。なお、地下水位上昇工では、必ずしも揚水手段10による揚水を停止する必要はなく、例えば、汚染地下水W1の揚水量を低下させて、地盤Gに浸透させる磁場処理水W3の水量を揚水量に比べて多くすることにより地下水位WLを上昇させてもよい。
【0038】
そして、地下水位WLが所定の水位にまで上昇したら、揚水手段10による揚水を再開する。この作業を繰り返し行うことにより、汚染領域における地下水位WLの低下と上昇とを繰り返し、汚染物質を含有する土壌の洗浄を行う。
【0039】
なお、第1実施形態では、揚水井11に吸引力を付与する揚水ポンプ13と連動させることなく、水路40に水分を流下させる構成とすることで、地下水位上昇工において揚水を一旦停止しても、連続して汚染領域への水分の供給を行う(水分を汚染領域に供給する)構成とする。このとき、水路40に供給される水分は、揚水手段10の揚水力と磁場処理水W3の地盤Gへの浸透力により生じる水量の差により図示しない地上の貯水槽に貯留された浄化水W2(磁場処理水W3)や別途採取した水分を使用するものとする。
ここで、揚水ポンプ13と浄化プラント20、磁場処理機30および水路40とを連動させることで、揚水の停止とともに、汚染領域への水路40からの水分の供給も停止して、地下水位上昇工は自然に流入してきた地下水により行う構成としてもよいことはいうまでもない。
【0040】
以上、第1実施形態の土壌の浄化方法によれば、汚染地下水W1の揚水と磁場処理水W3の注水とを繰り返し行うため、汚染物質を含有する土壌の洗浄を確実に行うことができ、汚染領域に存在する汚染物質を完全に取り除くことができる。
【0041】
また、揚水量の調整のみで優れた浄化効果を得ることができるため、作業的にも優れている。
【0042】
また、揚水工によって、揚水手段10を介して揚水することにより地下水位WLを低下させた後、地下水位上昇工により再度汚染領域を地下水に浸すため、揚水工において水みちが形成されても、汚染領域全体の汚染物質を地下水に溶出させて、回収することが可能となるため、確実に汚染物質を含有する土壌の洗浄を行うことが可能となる。
【0043】
また、注水工による地盤Gへの磁場処理水W3の供給は、汚染領域全体の表面に形成された水路40を介して行うため、汚染領域の上方から磁場処理水W3(洗浄水)を浸透させることで、地下水位WLよりも上にある領域の汚染物質に関しても洗い流し、汚染物質の回収を確実に行うことが可能となる。
【0044】
また、水路40は、溝41内において供給管42に周囲に砕石43が充填されているため、表面積が広く、浸透水(磁場処理水W3)が含有する鉄分等の酸化が原因による膜が形成されることがなく、地盤Gへの水分の供給が妨げられないため、好適である。なお、水路40の構成は前記のものに限定させるものではなく、例えば、供給管42の周囲をヤシ繊維等により被覆することで同様の効果を得る構成としてもよい。
【0045】
また、浄化装置1の構成は、揚水井11、浄化プラント20、磁場処理機30および水路40のみなため、従来の揚水注水方法と同規模であり、新たな用地を確保する必要がなく、好適である。
【0046】
また、揚水井11に浄化材が充填しているため、汚染地下水W1の揚水とともに浄化効果を得ることができ、浄化プラント20の簡略化または省略が可能となり、故に、浄化装置1の小規模化が可能となる。
【0047】
<第2の実施の形態>
第2の実施の形態(以下、単に「第2実施形態」という場合がある)に係る土壌の浄化装置2は、図3に示すように、汚染物質を含有する土壌を含む領域(以下、単に「汚染領域」という場合がある)に配置された揚水手段10と、この揚水手段10により揚水された地下水W1を浄化する浄化プラント(浄化手段)20と、水分に表面張力低下処理を施す磁場処理機(表面張力低下手段)30と、表面張力低下処理が施された水分を地盤Gに供給する水分供給手段である散水管(散布手段)44とを備えている。
【0048】
揚水手段10は、汚染領域に形成されて汚染地下水W1を揚水する揚水井11と、揚水井11の上端から浄化プラント20まで揚水した汚染地下水W1を流下可能に配管された汚染水管12と、汚染地下水W1を揚水するために揚水井11に吸引力を付与する揚水ポンプ13と、から構成されている。なお、揚水手段10の詳細は、第1実施形態で説明したものと同様なため、詳細な説明は省略する。
【0049】
浄化プラント20は、揚水手段10により揚水された汚染地下水W1を無害化処理して浄化水W2とするものであって、その構成は限定されるものではなく、汚染地下水W1(汚染土壌)が含有する汚染物質の種類や汚染領域の規模などに応じて適宜設定すればよい。
【0050】
また、磁場処理機30は、浄化プラント20により無害化処理が施された浄化水W2に磁場処理を施すことにより、浄化水W2の表面張力を低下して地盤Gに浸透しやすい磁場処理水W3を生成するものである。なお、第2実施形態に係る磁場処理機30は、第1実施形態で説明したものと同様なため、詳細な説明は省略する。
【0051】
散水管44は、磁場処理機30により磁場処理が施された磁場処理水W3を地盤Gに供給するものであって、汚染領域の地表面上に配管された有孔管から構成されている。
散水管44は、汚染領域の全体への磁場処理水W3の供給が可能となるように配管するものとする。
【0052】
次に、第2実施形態に係る土壌の浄化方法について、図3を参照して説明する。
第2実施形態に係る土壌の浄化方法は、(1)汚染領域の汚染地下水W1を揚水する揚水工と、(2)揚水工により揚水された汚染地下水W1を浄化する浄化工と、(3)浄化工により浄化された浄化水W2に磁場処理を施す表面張力低下工と、(4)磁場処理が施された磁場処理水W3を地中に浸透させる注水工と、から構成されている。
【0053】
(1)揚水工
揚水工では、揚水手段10による汚染領域の汚染地下水W1の揚水を、浄化プラント20による処理能力や、散水管44により散水された磁場処理水W3の地盤Gへの浸透力等に応じた揚水量により連続的に行う。
【0054】
(2)浄化工
浄化工では、揚水工により地盤Gから取水(揚水)された汚染地下水W1を浄化プラント20により無害化する。
揚水工により揚水された汚染地下水W1は、汚染水管12を介して浄化プラント20へと搬送される。浄化プラント20では、汚染地下水W1に無害化処理が施して、浄化水W2を生成する。
【0055】
(3)表面張力低下工
表面張力低下工では、浄化工により生成された浄化水W2に磁場処理機30により磁場処理を施す。
浄化工により無害化処理が施された汚染地下水W1である浄化水W2は、磁場処理機30に流下されて磁場処理が施される。磁場処理が施された浄化水W2である磁場処理水W3は、表面張力が低下されており、土壌の間隙に浸透しやすい、いわゆる高浸透水である。
【0056】
(4)注水工
注水工では、表面張力低下工により磁場処理が施された磁場処理水W3を、散水管44を介して汚染領域の地表面に散布して、地盤G内に浸透させる。
【0057】
揚水工、浄化工、表面張力低下工および注水工は、地下水位WLが維持されるように、並行して行われる。
【0058】
以上、第2実施形態に係る土壌の浄化方法によれば、汚染領域内において、水分(地下水)を循環させることにより、汚染物質を含有する土壌を連続的に洗浄するとともに、地下水に汚染物質を溶出させた後回収するため、確実に土壌の浄化を行うことを可能としている。
【0059】
また、汚染物質を含有した汚染地下水W1は、浄化プラント20において無害化処理がなされた後、随時地盤Gに戻されるため、地下水位が低下することによる地盤沈下等が生じることがない。そのため、生態系に影響を及ぼすことが無く、好適である。
【0060】
また、汚染領域は地下水により常時浸されているため、汚染物質を地下水に溶出されて、完全に除去することが可能となる。
【0061】
また、散水管44による水分(磁場処理水W3)の供給を、地表面から行うため、地下水位WL以高の地盤G内に存在する汚染物質に関しても、この浸透水に溶出させて回収することができ、土壌の浄化を確実に行うことができる。
【0062】
<第3の実施の形態>
第3の実施の形態(以下、単に「第3実施形態」という場合がある)に係る土壌の浄化装置3は、図4に示すように、汚染物質を含有する土壌を含む領域(以下、単に「汚染領域」という場合がある)に配置された揚水手段10と、この揚水手段10により揚水された地下水W1を浄化する浄化プラント(浄化手段)20と、水分に表面張力低下処理を施す磁場処理機(図示省略)と、表面張力低下処理が施された水分を地盤Gに供給する水分供給手段である注水井45とを備えている。
【0063】
揚水手段10は、汚染領域に形成されて汚染地下水W1を揚水する揚水井11と、揚水井11の上端から浄化プラント20まで揚水した汚染地下水W1を流下可能に配管された汚染水管12と、汚染地下水W1を揚水するために揚水井11に吸引力を付与する揚水ポンプ13と、から構成されている。なお、揚水手段10の詳細は、第1実施形態で説明したものと同様なため、詳細な説明は省略する。
【0064】
浄化プラント20は、揚水手段10により揚水された汚染地下水W1を無害化処理して浄化水W2とするものであって、その構成は限定されるものではなく、汚染地下水W1(汚染土壌)が含有する汚染物質の種類や汚染領域の規模などに応じて適宜設定すればよい。
【0065】
また、磁場処理機は、浄化プラント20と注水ポンプ46との間に配置されて、浄化プラント20により無害化処理が施された浄化水W2に磁場処理を施すことにより、浄化水W2の表面張力を低下して地盤Gに浸透しやすい磁場処理水を生成するものである。なお、第3実施形態に係る磁場処理機は、第1実施形態で説明したものと同様なため、詳細な説明は省略する。
【0066】
注水井45は、注水ポンプ46を介して圧送された磁場処理機により磁場処理が施された磁場処理水(浄化水W2)を地盤Gに供給する井戸であって、汚染領域に複数形成されている。
なお、注水井45の配置は限定されるものではないが、汚染領域の全体への磁場処理水(浄化水W2)の供給が可能となるように配置するものとする。
【0067】
ここで、第3実施形態に係る浄化装置3を利用した土壌の浄化方法は、第1実施形態に示した土壌の浄化方法と同様なため、詳細な説明は省略する。
また、第3実施形態に係る浄化装置3および土壌の浄化方法により得られる作用効果は、第1実施形態で示した内容と同様なため、詳細な説明は省略する。
【0068】
以上、本発明について、好適な実施形態について説明した。しかし、本発明は、前述の各実施形態に限られず、前記の各構成要素については、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜設計変更が可能であることはいうまでもない。
例えば、第1実施形態において、地下水位の低下および上昇を繰り返す際に、当該地下水位を、毎回変化させることにより、地盤内を流れる地下水の水みちを変化させることにより土壌の洗浄効果を高める構成としてもよい。同様に、汚染地下水の揚水量や磁場処理水の供給量を随時変化させることにより、土壌の洗浄効果を高めるものとしてもよい。
【0069】
また、前記各実施形態において、揚水された汚染地下水は、必ずしも地盤に戻す必要はなく、例えば浄化プラントにより浄化処理を施した後、河川等に放流してもよい。
また、第1実施形態に係る地下水上昇工の地下水位の上昇は、汚染領域に自然に流入してきた地下水により行われることも可能であることはいうまでもない。
【0070】
また、前記各実施形態では、揚水井として、浄化材が充填されたものを使用するものとしたが、揚水井に必ずしも浄化材が充填されている必要はないことはいうまでもない。
また、汚染領域に供給される水分に汚染物質の除去に効果的な物質や薬剤等をあらかじめ混合しておくことにより、土壌の浄化を早める構成にしてもよい。
【0071】
また、前記各実施形態では、水路または散水管と注水井とを個別に設ける形態について説明したが、水分供給手段として、水路または散水管と注水井とを並存させてもよいことはいうまでもない。
また、前記各実施形態では、磁場処理機により地盤に浸透させる水分に表面張力低下処理を施す構成としたが、必ずしも水分に表面張力低下処理を施す必要がないことはいうまでもない。
さらに、本発明に係る水分供給手段の構成は、前記各実施形態に示した水路、散水管、注水井に限定されるものではなく、適宜設定すればよい。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】第1の実施の形態に係る土壌の浄化装置を示す図であって、(a)は平面図、(b)は縦断面図、(c)は水路の詳細を示す拡大断面図である。
【図2】(a)〜(c)は、それぞれ第1の実施の形態に係る土壌の浄化方法による各段階を示す縦断面図である。
【図3】第2の実施の形態に係る土壌の浄化装置を示す縦断面図である。
【図4】第3の実施の形態に係る土壌の浄化装置を示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0073】
1,2,3 浄化装置
10 揚水手段
11 揚水井
20 浄化プラント(浄化手段)
30 磁場処理機(表面張力低下手段)
40 水路
44 散水管(散布手段)
45 注水井(水分供給手段)
G 地盤
WL 地下水位
W1 汚染地下水
W2 浄化水
W3 磁場処理水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地下水を利用して汚染物質を含有する土壌を洗浄する土壌の浄化方法であって、
汚染領域の地下水を揚水して地下水の水位を低下させた後、前記地下水の揚水により低下した地下水の水位を上昇させることを繰り返し行うことを特徴とする、土壌の浄化方法。
【請求項2】
前記汚染領域に水分を供給することを特徴とする、請求項1に記載の土壌の浄化方法。
【請求項3】
前記水分を、地表面から浸透させることにより供給することを特徴とする、請求項2に記載の土壌の浄化方法。
【請求項4】
前記水分が、前記揚水された地下水を浄化した浄化水であることを特徴とする、請求項2または請求項3に記載の土壌の浄化方法。
【請求項5】
前記水分に、表面張力低下処理を施すことを特徴とする、請求項2乃至請求項4のいずれか1項に記載の土壌の浄化方法。
【請求項6】
地下水を利用して汚染物質を含有する土壌を洗浄する土壌の浄化方法であって、
汚染領域の地下水を揚水するとともに、地表面から前記汚染領域に水分を浸透させることを特徴とする、土壌の浄化方法。
【請求項7】
前記水分が、前記揚水された地下水を浄化した浄化水であることを特徴とする、請求項6に記載の土壌の浄化方法。
【請求項8】
前記水分に、表面張力低下処理を施すことを特徴とする、請求項6または請求項7に記載の土壌の浄化方法。
【請求項9】
汚染物質を含有する土壌を含む汚染領域に配置された揚水手段と、
前記揚水手段により揚水された地下水を浄化する浄化手段と、
水分に表面張力低下処理を施す表面張力低下手段と、
前記表面張力低下手段により表面張力低下処理が施された水分を前記汚染領域に供給する水分供給手段と、を備えることを特徴とした、土壌の浄化装置。
【請求項10】
前記水分供給手段が、地表面に形成された水路であることを特徴とする、請求項9に記載の土壌の浄化装置。
【請求項11】
前記水分供給手段が、地表面に前記水分を散布する散布手段であることを特徴とする、請求項9に記載の土壌の浄化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−289300(P2006−289300A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−115786(P2005−115786)
【出願日】平成17年4月13日(2005.4.13)
【出願人】(000156204)株式会社淺沼組 (26)
【出願人】(303056368)東急建設株式会社 (225)
【出願人】(591159675)錦城護謨株式会社 (27)
【Fターム(参考)】