説明

土壌代替材及びその製造方法

【課題】本発明の目的は、木や草花を植栽する場所に敷くものとして、通常の土壌に代わり、優れた吸水性、保水性及び透水性を有する土壌代替材及びその製造方法を提供する。
【解決手段】少なくとも、チップフォームと、繊維と、界面活性剤と、バインダーと、吸水ポリマーと、を含む土壌代替材及びその製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植栽に用いられる通常の土に代わる保水性、吸水性及び透水性に優れた軽量の土壌代替材及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、地球環境の保護および改善のため、都市においても緑化推進が叫ばれている。植栽を行うことにより緑を増やすことは、視覚的に人々の心に潤いを与えることができるのみならず、排気ガス、燃料消費に起因する炭酸ガス等による空気汚染を浄化する作用をも有する。したがって、現在では都市のあらゆる場所において、できる限りの緑化が望まれている。
【0003】
しかし、植栽をするためには土壌が必要であるが、必要な分の土壌をビルの屋上等に敷くこととすると、その質量から自ずと限界がある。また、コンクリートで固められた環境下においては、土壌の温度が高くなりやすく乾燥しやすい。そして、土壌が乾燥すると、草木の生育に影響があることは勿論のこと、風により土埃と化して飛散し、近隣の環境悪化にも繋がる。勿論、作業により手が汚れたり、床面が汚れたりすることは避けられない。
【0004】
土壌の乾燥を防ぐためには、大量の土壌に多くの水を散布することとなるが、ますます質量増加につながり、現実には、土壌の量を増やさずに水を散布する頻度を増やしたり、乾燥に強い木や草花を植える等で対応している。そのため、手入れに多大な労力を要したり、植栽する木や草花の種類が限られる等の問題があった。
【0005】
かかる課題を解決するために特許文献1が提案されている。しかしながら、ここに提案されている技術は、少なくともウレタンフォームを含む土壌であり、そのウレタンフォームは単に土壌中に混在しているだけのものである。当該文献によれば、確かに、課題の一部は解決したものの、根本的な解決にはなっていないのが現状である。
【0006】
更に、上述の課題を解決するために特許文献2が提案されている。しかしながら、ここで提案されている技術は、ウレタンチップフォームを用いた培養土壌であり、技術的には、ウレタンチップフォームをバインドする方法が提案されているだけであって、全く土を用いない土壌代替材としては水分の吸水性、保水性が充分でない。このように土壌代替材には吸水性や保水性が良好であることが求められる。
【0007】
また、保水性の向上を目的とした土壌代替材としては、下記特許文献3が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002−335757号公報
【特許文献2】特許第4156877号公報
【特許文献3】特開2010−154849号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述の特許文献3に記載の土壌代替材は、保水性が高く軽量であり、作業中に手が汚れることなく、更に、風によっても土埃を生じないものである。しかし、吸水性、透水性及び保水性の観点から未だ改良の余地がある。特に親水性チップとしてチップパルプを用いた場合には、土壌代替材を一度乾燥させてしまうと、吸水性が低下してしまう場合もある。
【0010】
上述の課題を解決すべく、本発明は、吸水性、保水性及び透水性に優れた土壌代替材及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の土壌代替材は、少なくとも、チップフォームと、繊維と、界面活性剤と、バインダーと、吸水ポリマーと、を含む。
【0012】
本発明の土壌代替材は、従来親水性チップとして用いられていたチップパルプ等に代えて繊維を用い、更に吸水ポリマーを併用させることで、土壌代替材の吸水性及び保水性を向上させることができる。また、繊維を用いることで、従来の土壌代替材に比して透水性を向上させることができる。更に、本発明の土壌代替材は、土壌代替材が一度乾燥した場合であっても良好な吸水性及び保水性を発揮することができる。
【0013】
本発明の土壌代替材は、前記繊維として、ポリエステル繊維及びアクリル繊維の少なくとも一つを含めることができる。本発明の土壌代替材は、前記繊維としてポリエステル繊維とアクリル繊維とのいずれか一方を単独で又は併用することで、更に吸水性、保水性及び透水性を向上させることができる。また、ポリエステル繊維とアクリル繊維とを併用した繊維を用いると、吸水性と排出性とを調整することが可能となる。
【0014】
本発明の土壌代替材は、前記ポリエステル繊維(x)と前記アクリル繊維(y)とを質量比(x:y)1:0.1〜1:10で含むことができる。
【0015】
本発明の土壌代替材の製造方法(以下、単に「本発明の製造方法」と称する場合がある。)は、少なくともバインダー、界面活性剤及び吸水ポリマーを含むバインダー混合物と、チップフォームと、繊維と、を混ぜ合わせて成型用混合物を得る混合工程と、加熱・加圧下において前記成型用混合物中の前記バインダーを架橋させる成型工程と、を含む。
【0016】
本発明の土壌代替材の製造方法において、前記混合工程は、前記バインダー混合物と前記チップフォームとを混ぜ合わせて混合物を作製し、得られた混合物に前記繊維を混ぜ合わせて前記成型用混合物を得ることができる。
【0017】
本発明の土壌代替材の製造方法において、前記混合工程は、前記チップフォームと前記繊維とを混ぜ合わせて混合物を作製し、得られた混合物に前記バインダー混合物を混ぜ合わせて前記成型用混合物を得ることができる。
【0018】
本発明の土壌代替材の製造方法において、前記混合工程は、前記成型用混合物に、更に、前記バインダー、前記界面活性剤及び前記吸水ポリマーを少なくとも含む混合物を混ぜ合わせることができる。
【0019】
本発明の製造方法によれば、比較的容易な方法によって本発明の土壌代替材を得ることができる。また、本発明の製造方法は、ウレタンフォーム、スチレンフォーム、エチレンフォーム、フォームラバー等又はその端材(未使用材を含む)を粉砕したチップフォームの再利用をも兼ねるものであり、リサイクルという観点から環境性にも優れる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、吸水性、保水性及び透水性に優れた土壌代替材及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の土壌代替材の製造方法の工程を示す概略図である。
【図2】本発明の土壌代替材の製造方法の工程の他の態様を示す概略図である。
【図3】本発明の土壌代替材の態様の一つを示す断面図である。
【図4】本発明の土壌代替材の他の態様を示す断面図である。
【図5】実施例において透水性の評価方法を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
《土壌代替材》
本発明の土壌代替材は、少なくとも、チップフォームと、繊維と、界面活性剤と、バインダーと、吸水ポリマーと、を含む。本発明の土壌代替材は、廃棄物となってしまうチップフォームや未使用材を利用し、これを繊維、界面活性剤、バインダー及び吸水ポリマーと混ぜて用いるものである。本発明の土壌代替材は、バインダーが架橋することによって、チップフォームや繊維等が一体化されていることが好ましい。
【0023】
本発明の土壌代替材は、土壌代替材中の繊維及び吸水ポリマーの存在、並びに、チップフォーム内に界面活性剤が入り込むこみチップフォームが親水性を示すことによって吸水性及び保水性を発揮するものである。即ち、チップフォームの内部を界面活性剤の適用によって親水性とし、かつ、チップフォームの周囲に繊維及び吸水性ポリマーを存在させることにより、従来の土壌代替材に比して水の吸水性及び保水力が向上しており、植えられる植物に好影響を及ぼすものである。更に、本発明の土壌代替材は、繊維を用いることから、透水性に優れ、また一度土壌代替材を乾燥させた場合であっても吸水性及び保水性が低下しにくく、良好な吸水性及び保水性を発揮することができる。
【0024】
(チップフォーム)
本発明において「チップフォーム」とは、ウレタンフォーム、スチレンフォーム、エチレンフォーム、フォームラバー等又はその端材を用いることができる。土壌代替材の品質安定性の観点からは、未使用のもの(未使用材)を用いることが好ましい。また前記チップフォームとしては上記材料を粉砕したものを用いることができる。中でも軟質又は硬質ウレタンフォームが好ましく、取り扱い性の観点からは軟質ウレタンフォームが特に好ましい。また、前記ウレタンフォームとしては、加水分解が生じにくいとの観点から、ポリエーテル系ウレタンフォームが好ましい。
【0025】
チップフォームの形状としては、特に限定されるものではなく、例えば、球形、立方体形、多面体形、円柱形、円錐形、綿状,不定形等いずれでもよい。通常、ブロック状のウレタンフォームを、所望の大きさ・形状のチップに粉砕して用いられる。また、ウレタンフォーム等の粉砕の方法としては、カッター等の裁断具により裁断する方法や、回転刃式粉砕機を用いる方法等が挙げられる。
【0026】
チップフォームの粒径は、取り扱い性や植栽した後の草木の安定性の観点から、好ましくは1〜50mm、更に好ましくは5〜25mmである。また、チップフォームの密度は、好ましくは0.01〜0.50g/cm、更に好ましくは0.015〜0.20g/cmである。尚、上記「粒径」とは、各粒子の投影像における円相当径(同一面積の円における直径)を意味する。
【0027】
(繊維)
前記繊維は、どのような繊維であってもよいが、親水性を有する繊維(親水性繊維)であることが好ましい。また、本発明の土壌代替材は、前記繊維の毛細管現象によって保水性及び吸水性向上が促進されているものと推測される。前記繊維は耐水性を有していることが好ましい。前記繊維としては、親水性繊維に加えて疎水性繊維を用いることができ、更に、疎水性繊維に親水性を付与した繊維も用いることができる。親水性を付与した疎水性繊維については、例えば、疎水性樹脂に対してアクリル酸やメタクリル酸などビニルモノマーのグラフト重合処理、スルホン化処理、フッ素ガス処理、界面活性剤処理、放電処理、親水性樹脂の付着処理などを施すことで、疎水性繊維に親水性を付与することができる。
【0028】
前記親水性繊維の具体例としては、例えば、ポリアミド繊維、メタ型若しくはパラ型の芳香族ポリアミド繊維、ポリアミドイミド繊維、芳香族ポリエーテルアミド繊維、ポリベンツイミダゾール繊維、アクリル繊維、ポリウレタン繊維、ポリクラール繊維、ビニロン繊維などの有機系繊維が挙げられる。また、前記疎水性繊維としては、ポリエステル繊維、ポリプロピレン繊維やポリエチレン繊維などのポリオレフィン繊維、ポリ塩化ビニル繊維、ビニリデン繊維、ベンゾエート繊維などの有機系繊維が挙げられる。これら疎水性繊維は上述のように親水性を付与して用いることもできる。また。シリカアルミナ繊維、ガラス繊維、シリカ繊維、アルミナ繊維、ロックウールなどの無機酸化物を主成分とする繊維も適宜用いることができる。これらの中でも、吸水性、透水性(特に一度乾燥させた後)及び保水性の向上の観点からは、アクリル繊維が好ましく、透水性の観点からはポリエステル繊維が好ましい。
【0029】
前記繊維としては、上述のものを単独又は複数組合せて用いることができる。前記繊維の組合せとしては、ポリエステル繊維(例えば、ポリエチレンテレフタレート)とアクリル繊維(例えば、アクリロニトリル系共重合体)との組合せが好ましい。前記ポリエステル繊維とアクリル繊維とを組み合わせて用いると、土壌代替材の保水性、吸水性及び透水性を効果的に向上させることができる。
前記ポリエステル繊維とアクリル繊維とを併用する場合、前記ポリエステル繊維(x)と前記アクリル繊維(y)との質量比(x:y)が、1:0.1〜1:10であることが好ましい。
【0030】
前記繊維の繊維径は特に限定されるものではないが、例えば、繊維径10μm以下の繊維が好ましく、繊維径5μm以下が更に好ましく、繊維径が3μm以下の繊維であることが特に好ましい。また、繊維径の下限としては、繊維径が0.01μm以上であることが好ましい。また、異形断面形状を有する繊維の場合には、この異形断面の面積と同じ面積を有する円の直径を繊維径とする。また、前記繊維の繊維長も特に限定されるものではないが、例えば、0.1〜200mm程度の繊維を適宜選定して使用することができる。
【0031】
また、繊維の使用形態は特に限定されるものではないが、前記繊維を用いて不織布を形成してチップ状とし本発明の土壌代替材に用いてもよい。この際、前記繊維からなるチップをチップフォームで形成される層の間に挟まれた状態でバインダーにて複合一体化して土壌代替材を構成することもできる。尚、前記繊維で形成されるチップの大きさ(長さ)は、好ましくは0.1〜50mm、更に好ましくは5〜30mmである。
【0032】
得られた土壌代替材にあって、チップフォームの周囲に前記繊維が存在することにより、水の浸透は縦方向のみならず混入された繊維に沿って広がる。このため、保水力がアップし、植えられる植物に好影響を及ぼすものとなる。即ち、水の浸透は土壌代替材の上下方向のみならず、前記繊維に沿って左右にも広がることから、植物の成長に好影響をもたらすものである。そして、以下に説明する界面活性剤との共働により、吸水性及び保水性が確保されることとなる。
【0033】
(界面活性剤)
界面活性剤は、チップフォームに親水性を与えるものであるが、植物の生育に対して使用した界面活性剤がその成長を阻害しないように選択されることが好ましい。係る観点からすると、本発明における界面活性剤としては、吸水性能を有する分子量500〜1000のものを好ましく用いることができる。このような界面活性剤の具体例としては、ジオレイン酸ポリエチレングリコール(分子量880のペグノール24−O:東邦化学(株)製)が挙げられる。例えば、界面活性剤の分子量が小さい場合、上述の特許文献2(特許第4156877号公報)に記載される分子量200程度のものにあっては、発芽した植物が生育せずに枯れてしまう場合もあり得る。この現象は、界面活性剤の分子量が小さいことから植物の内部に浸透して植物の生育を阻害するものと考えられる。一方、分子量が大きすぎる場合には、粒状化が起こりやすく、土壌代替材の成型性が悪くなるケースがある。
【0034】
(バインダー)
本発明の土壌代替材に用いられるバインダーは、適宜公知のバインダーから選定することができる。使用されるバインダーは、特に制限されるものではないが、例えば、ウレタン系プレポリマー(トルエンジイソシアネート系(TDI系)のウレタンプレポリマーや/ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI系)のウレタンプレポリマー)が好ましい。
【0035】
(吸水ポリマー)
本発明の土壌代替材に用いられる吸水ポリマーは、一般に高吸水性高分子(Super Absorbent polymer(SAP))、吸収性ポリマー、高吸水性樹脂又は高分子吸収体と称されるポリマーであって、高い水分保持性能を有するように設計されたポリマーである。
【0036】
前記吸水ポリマーとしては、水溶性樹脂の少なくとも一部を架橋して水不溶化したものを用いることができ、例えば、陰イオン性重合体、又は非イオン性重合体、陽イオン性重合体、両性イオン性重合体等を用いることができる。具体的には、例えば、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、イタコン酸及びそれらの無水物及び塩;フマル酸及びその塩(例えば、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩及びアンモニウム塩);(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロニトリル、並びにビニルアセテート及びその加水分解生成物;ビニルピロリドン、ビニルピリジン、ビニルスルホン酸並びにそのエステル及びアミドを挙げることができる。前記吸水ポリマーとしては、アクリル酸重合体の部分塩架橋物を挙げることができ、例えば、市販品の「サンフレッシュ GT−1」三洋化成(株)製等を用いることができる。
【0037】
前記吸水ポリマーは、水に対する吸水倍率(20℃)が100〜800g/g程度であることが好ましい。また、吸水ポリマーの使用形態は特に限定されないが、粉砕された吸水ポリマーを用いるのが好ましい。粉砕された吸水ポリマーを用いると、吸水ポリマーとバインダーとが混ざりやすく、加工性が向上する。また、粉砕された吸水ポリマーを用いると、水が土壌代替材均一に拡散しやすくなる。本発明の土壌代替材における、吸水ポリマーの量及び粒度の分布は均一であってもよいし、異なっていてもよい。
前記吸水性ポリマーとしては粒子状の吸水性ポリマーを用いることが好ましい。この際、ポリマーの粒径としては、0.01mm〜0.20mmが好ましい。尚、上記「粒径」とは、各粒子の投影像における円相当径(同一面積の円における直径)を意味する。
【0038】
(ゼオライト)
本発明の土壌代替材においては、更にゼオライトを混合することができる。ゼオライトは、バインダー中に、或いはバインダーとチップフォーム、バインダーとチップフォームと繊維とが混合される工程で投入することができる。ゼオライトには植物の生育に欠かせない元素が全て含まれていることから、これが加えられた土壌代替材は、植物の生育基盤として充分なものとなる。
【0039】
(配合比)
本発明の土壌代替材における好ましい配合比率(部数)は、質量換算でチップフォーム100、繊維100(好適な範囲:10〜500)、バインダー15(好適な範囲:5〜50)、界面活性剤3.5(好適な範囲:10以下)、吸水ポリマー3.7(好適な範囲:10以下)、ゼオライト10(好適な範囲:0〜50)である。
【0040】
《土壌代替材の製造方法》
本発明の製造方法は、少なくともバインダー、界面活性剤及び吸水ポリマーを含むバインダー混合物と、チップフォームと、繊維と、を混ぜ合わせて成型用混合物を得る混合工程と、加熱・加圧下において前記成型用混合物中の前記バインダーを架橋させる成型工程と、を含む。本発明の製造方法について図1及び図2を用いて説明する。図1は、本発明の土壌代替材の製造方法の工程を示す概略図である。図2は、本発明の土壌代替材の製造方法の工程の他の態様を示す概略図である。
【0041】
図1に示すように、チップフォーム1と繊維2とはそれぞれ別にストックしておく。また、別途、バインダー3と界面活性剤4と吸水ポリマー5とを混合してバインダー混合物(図1における“6”)とする。図1に示される本発明の製造方法においては、混合工程において、まず、バインダー混合物とチップフォームとを混ぜ合わせて混合物(混合物B)を作製し(第1の工程)、次いで、得られた混合物に繊維を混ぜ合わせて成型用混合物を作製する(第2の工程)。このように、第1の工程は、少なくともバインダー、界面活性剤及び吸水ポリマーを含むバインダー混合物と、チップフォームとを混ぜ合わせて混合物Bを得る工程である。即ち、図1に示すように、チップフォーム1に、バインダー等を含むバインダー混合物を投入し攪拌して混合し、図示を省略する混合物Bを得る。
【0042】
第2の工程は、前記混合物Bと繊維とを混ぜ合わせて成型用混合物を得る工程である。概述したように、第1の工程において得られた混合物Bに繊維を投入して攪拌し、図示を省略する成型用混合物を得る。
【0043】
ここで、第2の工程においては、図1に示すように“※2”のタイミングにおいてバインダー7と界面活性剤8と吸水ポリマー9とを含む混合物A’ (図1における“10”)を更に成型用混合物に混ぜ合わせてもよい。この際、混合物A’中のバインダー7、界面活性剤8及び吸水ポリマー9は、バインダー混合物中のバインダー3、界面活性剤4及び吸水ポリマー5と同じ材料であってもよいし異なる材料であってもよい。即ち、本発明の製造方法においては、バインダー等を含む混合物を、第1の工程において一度にチップフォームに混合してもよいし、これに加えて、第2の工程において、繊維を混合物Bに混合した後又は繊維を混合物Bに導入するタイミングと同時にバインダーを含む混合物を更に投入してもよい。
【0044】
成型工程においては、加熱・加圧下において前記成型用混合物中のバインダーを架橋させる。具体的には、第2の工程によって得られた成型用混合物を成型器内に充填し、加熱・加圧下で水蒸気をあててバインダー3を架橋させて土壌代替材を得ることができる。成型工程において、成型用混合物中のバインダーを架橋させるための加熱・加圧条件は、用いる材料に応じて適宜選定することができるが、例えば、温度条件としては100〜110℃が好ましく、加圧条件としては25〜50kNが好ましい。
本発明の土壌代替材の製造方法にあって、チップフォーム、繊維、バインダー、界面活性剤等は、前記したものがそのまま使用されることは勿論であるが、バインダーはウレタン系プレポリマーが好ましく用いられることから、その架橋はイソシアネートと反応するHO(水)を用いることが好ましい。この際、バインダーの架橋は好ましくは10〜300秒、通常は60秒〜120秒程度水蒸気を当てることによって行われる。
【0045】
また、本発明の製造方法においては、成型工程後、所望に応じて図1に示すように乾燥工程を設けてもよい。
【0046】
尚、ゼオライトを用いる場合、ゼオライトは、例えば、バインダー混合物又は混合物A’に加えバインダー等と共に導入してもよいし、図1における“※1”及び“※3”の各タイミングで投入することも可能である。
【0047】
本発明の製造方法の他の態様について図2を用いて説明する。図2で示す本発明の製造方法において、図1と共通する内容については同様の符号を付す。
図2で示される本発明の製造方法は、混合工程において、まず、前記チップフォームと前記繊維とを混ぜ合わせて混合物を作製し(第1の工程)、次いで、得られた混合物に前記バインダー混合物を混ぜ合わせて前記成型用混合物を得る(第2の工程)点で、図1に示す本発明の製造方法と異なる。尚、他の点(加熱・加圧条件やゼオライトを導入するタイミング等)については図1に示す本発明の製造方法と同様である。
【0048】
図3は、本発明の土壌代替材の態様の一つを示す断面図である。本発明の土壌代替材は、図3に示すように、チップフォーム1の周囲に繊維2が絡みつく形態となっており、図示を省略するバインダーによって一体化されていることが好ましい。また、界面活性剤及び吸水ポリマーはバインダーと共にチップフォーム1及び繊維2間の空隙やチップフォーム1の内部の孔構造中に浸透している。このように、本発明の土壌代替材は、全く土が使われておらず、作業時に手や床を汚すことがない。更に、屋外に設置された場合でも、風などによって飛散することはなく、周囲の環境に与える影響が少ない。
【0049】
吸水性、保水力についていえば、単なるウレタンフォームのブロック体の土壌代替材の場合には、保水力はあるものの、取り込まれた水はブロック体の底部近傍にのみ集まり、ブロック体の上部には水分が保持されないウレタンフォームのチップ材もこれとほぼ類似の挙動をとる。更に、上述の特許文献2に記載のウレタンフォームのチップ材をバインダーにて架橋・一体化した土壌代替材ものもほぼ同様である。
【0050】
しかし、本発明の土壌代替材の場合には、良好な吸水性、保水性及び透水性を発揮させる目的で繊維と界面活性剤と吸水ポリマーとが充填され、かつ、チップフォーム1の周囲を繊維2や吸水ポリマーが絡みつく形態となってバインダーにて一体化されていることから、吸水力及び保水力は上記のものよりも格段に優れている。即ち、吸水性のある界面活性剤の使用により保水性が良好になったのみならず、チップフォーム1の周囲に絡みついた繊維2や吸水ポリマーの存在により更に吸水性・保水性が向上し、水が上下・左右に自由に移動することができるため、土壌代替材のほぼ上部にまで充分に水を保持することができる。このため、植生される植物の成長に好ましい材料となったものである。更に、本発明の土壌代替材は繊維及び吸水ポリマーを用いているため、一度乾燥した後にも良好な吸水性、透水性及び保水性を発揮することができ、繰り返し使用することができる。
【0051】
本発明の土壌代替材について図3を用いて説明したが、本発明の態様は上述の記載に限定されるものではなく、他の態様であってもよい。本発明の他の態様について図4を用いて説明する。図4は、本発明の土壌代替材の他の態様を示す断面図である。図4に示す土壌代替材は、バインダー等と混ぜ合わされたチップフォーム1を複数層となし、この間に第3のチップ材(この例では、タバコのフィルターチップ11)を挟み、複合一体化したものである。タバコのフィルターチップ11には、予め同様のバインダーを混ぜておくのが良いが、タバコのフィルターチップ11の層が薄い場合には、チップフォーム1に混合したバインダーで充分複合一体化が可能である。
【実施例】
【0052】
以下、本発明について実施例において具体的に説明する。
【0053】
(実施例1及び2,比較例1)
図1に示す本発明の製造方法に従い下記表1に示す組成で各土壌代替材を作製した。具体的には、まず、チップフォームに各材料を含む添加材及びバインダーの混合物(バインダー混合物)を混合し、混合物Bとした。次いで、混合物Bに複合剤を混合して成型用混合物とし、その後、成型用混合物を加圧成型器内に充填し、100℃の水蒸気を90秒間加圧成型器内に通してバインダーを架橋させた。その後結果物を乾燥して、各土壌代替材を作製した。尚、当該工程においては、バインダー及び添加剤の混合は第一の工程のみでおこなった。
【0054】
【表1】

【0055】
上記表1における各材料の詳細は以下の通りである。
・チップフォーム(TTJ):エーテル系の軟質ウレタンフォームからなるチップフォーム材(粒径8mm、密度0.02g/cm
・ペーパー:ティッシュペーパーからなるチップパルプ材(粒径8mm)
・アクリル綿(アクリル繊維):(製品名「ボンネル&ファンクル(ダル)」三菱レイヨン(株)製)直径8μm
・PET(ポリエステル繊維):ポリエチレンテレフタレート(製品名「H38F」ユニチカ(株)製、カット長51mmの繊維)
・バインダー:TDI系ウレタンプレポリマー(製品名「リボンデックスT60M」トーケン樹脂化学(株)製)
・界面活性剤:ジオレイン酸ポリエチレングリコール(分子量880:製品名「ペグノール24−O」東邦化学(株)製)
・吸水ポリマー:アクリル酸重合体の部分塩架橋物(製品名「サンフレッシュ GT−1」三洋化成(株)製)
【0056】
(吸水性)
得られた土壌代替材をサイズ100×100×100(mm)に裁断して試験片とした。次いで、計量スプーン一杯(約2.5ml)の水を試験片に滴下し、吸水するまでの時間を測定した。結果を下記表2に示す。
【0057】
(繰返し吸水時間)
得られた土壌代替材をサイズ100×100×100(mm)に裁断して試験片とした。次いで、得られた試験片を水槽に入れ60分間浸水させ、試験片に十分な水分を吸収させた。その後、試験片を水槽から取り出し完全に乾燥させた。次いで、計量スプーン一杯(約2.5ml)の水を試験片に滴下し、吸水するまでの時間を測定した。結果を下記表2に示す。
【0058】
(保水性)
得られた土壌代替材をサイズ100×100×100(mm)に裁断して試験片とし、得られた試験片の乾燥質量を測定した。次いで、試験片を水槽に入れ60分間浸水させ、試験片に十分な水分を吸収させた。その後、試験片を水槽から取り出し30分間放置して試験片の質量を測定し、満水時の保水量とした。更に、試験片を高温槽に投入し、30℃・相対湿度60%の条件下で、24時間経過後の質量と48時間経過後のそれぞれの質量とを測定した。保水性(保水率)は、試験片(1000cm)の乾燥質量に対するそれぞれ含水後の質量の増加率とした。結果を下記表2に示す。
【0059】
(透水性)
得られた土壌代替材を円筒状に裁断して(サイズ:φ76mm×44mm)試験片とし、十分に水に浸した。次いで、試験片を円筒(内径φ74mm)にセットした。その後、試験片をセットした円筒を水が入った水槽の中にいれ、更に、円筒に水を注いだ。次いで、円筒に水を注ぎ、一定区間を通過する際の時間を測定した。具体的には、図5に示すように、円筒20にセットされた試験片22に関し、円筒20に水を注ぎ、水面24が円筒20上のライン24’に達するまでの時間、即ち、水面が図5におけるh1からh2まで移動する時間を測定した。
結果を下記表2に示す。
【0060】
【表2】

【0061】
表2から解るように、繊維及び吸水ポリマーを用いた実施例の土壌代替材は、親水材料としてチップパルプ材を用いた比較例に比して、吸水性、繰り返し吸水時間及び保水性のいずれにおいても優れた結果を示した。また、透水性についても比較例と同等の結果を示した。特に、繊維としてアクリル繊維とポリエステル繊維とを併用した実施例1の土壌代替材は、繰り返し吸水時間において著しく優れ、繰り返し使用しても吸水性が劣化しにくいという結果を示した。また透水性も優れるものであった。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明は以上の通りであり、チップフォーム等の再利用が可能となり、得られた土壌代替材の特性も優れたものであり、例えば、ビルの屋上にこれを適用できるだけでなく、その壁面にも充分適用可能であり、その利用価値は極めて大きい。
【0063】
更にいえば、都市の緑化を推進でき、地球環境の改善に寄与するものとなる。又、例えばビルの屋上に豊富な植栽をすることで、ビルの屋上のコンクリート剥き出し部分が低減され、夏場におけるビル内部の高温化を抑制することができ、冷房効率の向上による電気使用量の低減を図ることもできる。
【符号の説明】
【0064】
1 チップフォーム
2 繊維
3,7 バインダー
4,8 界面活性剤
5,9 吸水ポリマー
6 バインダー混合物
10 混合物A’
11 第3のチップ材
20 円筒
22 試験片
24 水面
24’ ライン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、チップフォームと、繊維と、界面活性剤と、バインダーと、吸水ポリマーと、を含む土壌代替材。
【請求項2】
前記繊維が、ポリエステル繊維及びアクリル繊維の少なくとも1つを含む請求項1に記載の土壌代替材。
【請求項3】
少なくともバインダー、界面活性剤及び吸水ポリマーを含むバインダー混合物と、チップフォームと、繊維と、を混ぜ合わせて成型用混合物を得る混合工程と、
加熱・加圧下において前記成型用混合物中の前記バインダーを架橋させる成型工程と、
を含む土壌代替材の製造方法。
【請求項4】
前記混合工程において、前記バインダー混合物と前記チップフォームとを混ぜ合わせて混合物を作製し、得られた混合物に前記繊維を混ぜ合わせて前記成型用混合物を得る請求項3に記載の土壌代替材の製造方法。
【請求項5】
前記混合工程において、前記チップフォームと前記繊維とを混ぜ合わせて混合物を作製し、得られた混合物に前記バインダー混合物を混ぜ合わせて前記成型用混合物を得る請求項3に記載の土壌代替材の製造方法。
【請求項6】
前記混合工程において、前記成型用混合物に、更に、前記バインダー、前記界面活性剤及び前記吸水ポリマーを少なくとも含む混合物を混ぜ合わせる請求項3〜5のいずれか1項に記載の土壌代替材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−42711(P2013−42711A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−183314(P2011−183314)
【出願日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【出願人】(392019145)舞岡フォーム株式会社 (3)
【Fターム(参考)】