説明

土壌処理装置及び土壌処理方法

【課題】石灰系処理材と混合処理された処理土のpHを効果的に低下させることができる土壌処理装置及び土壌処理方法を提供する。
【解決手段】生石灰又は生石灰を主成分とする添加材である石灰系処理材と混合処理した処理土のpHを低下させる土壌処理装置において、処理土を撹拌する撹拌装置19と、撹拌装置19の外壁部に設けた通気孔101と、炭酸ガス又は炭酸ガスを主成分とする混合ガスであるpH調整ガスの供給源であるガスボンベ200と、ガスボンベ200と通気孔101とを接続しガスボンベ200からのpH調整ガスを撹拌装置19内に導入するガス導入路300と、撹拌装置19の外壁面に設けた排気孔102とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、石灰系処理材と混合処理した処理土のpHを低下させる土壌処理装置及び土壌処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、軟弱地盤の強化、汚染物質を含む汚染土壌の浄化、或いは汚染土壌中の汚染物質の封じ込め等、様々な目的で処理対象の土砂に生石灰(酸化カルシウム)を主成分とする石灰系の処理材(以下、純粋な生石灰を含めて石灰系処理材と記載する)を混合する処理が広く施工されている。しかし、石灰系処理材を混合処理した処理土(以下、単に処理土と記載する)は混合前の土砂に対して一般にpHが上昇する。これは生石灰(CaO)と土砂の水分(H2O)が反応して水酸化カルシウム(Ca(OH)2)が生じることに起因する。このようにしてpHの上昇した処理土を埋め戻した土壌では、暫くの間、植物の生育が抑制されたり土壌に接した地下水や表流水のpHが上昇したりする現象が散見される。
【0003】
そこで、処理土に炭酸ガス(CO2)を含むpH調整ガスを接触させ、pH調整ガス中の炭酸ガスを反応させて処理土の水酸化カルシウムを炭酸カルシウム(CaCO3)にすることで処理土のpHを下げる方法が提唱されている(特許文献1等参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2002−201472号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、土砂の性状や水分の分布等によっては処理土中の石灰系処理材の分布が一様でない場合もあり、未反応の生石灰が処理土中に団粒状に残留することもある。炭酸ガスは生石灰とは反応しないため、処理土中の生石灰は炭酸ガスと接触しても反応することなくそのまま残存する。こうして処理土中に残存する生石灰の未反応分が多いと、ただ処理土に炭酸ガスを通気しても処理土のpHはなかなか低下し難い。
【0006】
そこで、本発明は石灰系処理材と混合処理された処理土のpHを効果的に低下させることができる土壌処理装置及び土壌処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)上記目的を達成するために、本発明は、生石灰又は生石灰を主成分とする添加材である石灰系処理材と混合処理した処理土のpHを低下させる土壌処理装置であって、前記処理土を撹拌する撹拌装置と、前記撹拌装置の外壁部に設けた通気孔と、炭酸ガス又は炭酸ガスを主成分とする混合ガスであるpH調整ガスの供給源としてのガス供給源と、前記ガス供給源と前記通気孔とを接続し前記ガス供給源からのpH調整ガスを前記撹拌装置内に導入するガス導入路と、前記撹拌装置の外壁面に設けた排気孔とを備えたことを特徴とする。
【0008】
本発明においては、撹拌装置にpH調整ガスを供給しながら、その撹拌装置内で処理土を撹拌する。例えば処理土の山にパイプを差し込んでパイプを介してpHガスを処理土に通気しても、一旦“通り道”ができ大部分のpH調整ガスがその通り道を通るようになってしまうと、炭酸ガスと接触しない水酸化カルシウムが多く生じてしまうが、本発明の場合、撹拌中の処理土にpH調整ガスを通気することにより、処理土中に空気の通り道が生じることもなく、処理土中に散在する水酸化カルシウムにpH調整ガスを効果的に接触させることができる。これにより、石灰系処理材に含まれる生石灰との反応により生成した水酸化カルシウムを効率良くpH調整ガスに接触させ炭酸カルシウムにすることができる。
【0009】
このとき、水酸化カルシウムと炭酸ガスが反応することにより、炭酸カルシウムとともに水が生成される。本発明では、この反応を利用して処理土中に水を生じさせて未反応のまま残存する生石灰と反応させる。処理土は撹拌装置により撹拌されているので、水酸化カルシウムと炭酸ガスの反応により生成した水は処理土中にまんべんなく分散され、未反応の生石灰と反応して生石灰を水酸化カルシウムにする。そして、生成された水酸化カルシウムと炭酸ガスとの反応により再び炭酸カルシウムと水が生成される。
【0010】
このように、本発明では、水酸化カルシウムと炭酸ガスの反応、生石灰と水分の反応を連鎖的・相互的に起こさせ、処理土中の生石灰及び水酸化カルシウムの残存量を抑制し、石灰系処理材と混合処理された処理土のpHを効果的に低下させることができる。しかも、生石灰と水分の反応に加えて、ほぼ同量の発熱量を伴う水酸化カルシウムと炭酸ガスの反応を誘起することにより、全体に得られる発熱量が増加し処理を促進させることができる。
【0011】
(2)上記(1)において、好ましくは、前記ガス導入路の途中に設けたpHガス一時貯留用のガス槽と、前記排気孔に接続し前記撹拌装置からの排気を大気放出する排気路と、前記排気路から分岐して前記ガス槽に接続し前記撹拌装置からの排気を前記ガス槽内に循環させる循環路と、前記排気路と前記循環路の分岐部に設けられ前記撹拌装置からの排気を大気放出するか前記ガス槽内に循環させるかを切り換える切り換えバルブとを備えたことを特徴とする。
【0012】
(3)上記(2)において、好ましくは、前記排気路を流れる排気中の炭酸ガス濃度を測定する測定手段と、この測定手段からの測定値を基に前記切り換えバルブを制御する制御装置とを備え、前記制御装置が、前記測定手段からの測定値を入力する入力部と、前記撹拌装置からの排気の炭酸ガス濃度に対して予め設定したしきい値を格納した記憶部と、前記入力部を介して入力した測定値を前記記憶部から読み出したしきい値と比較し、排気中の炭酸ガス濃度の測定値が前記しきい値以上のとき、前記切り換えバルブを前記循環路側に切り換える指令信号を生成する演算処理部と、前記演算処理部で生成された指令信号を前記切り換えバルブの駆動部に出力する出力部とを備えていることを特徴とする。
【0013】
(4)上記目的を達成するために、また本発明は、生石灰又は生石灰を主成分とする添加材である石灰系処理材と混合処理した処理土のpHを低下させる土壌処理方法であって、炭酸ガス又は炭酸ガスを主成分とする混合ガスであるpH調整ガスを前記処理土に通気しながら前記処理土を撹拌することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、石灰系処理材と混合処理された処理土のpHを効果的に低下させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に図面を用いて本発明の実施の形態を説明する。
【0016】
図1は本発明の第1の実施の形態に係る土壌処理装置の要部を抽出して表した図である。
図1に示した土壌処理装置は、処理対象土壌の土砂を石灰系処理材と混合処理して得られた処理土のpHを低下させる装置である。ここで言う石灰系処理材とは、純粋な生石灰を含め、生石灰を主成分とする添加材を意味する。また、後述するpH調整ガスは、炭酸ガス、若しくは炭酸ガスを主成分とする混合ガスを意味する。
【0017】
図1に示したように、土壌処理装置は、処理土を撹拌する撹拌装置19と、pH調整ガスの供給源であるガスボンベ200と、ガスボンベ200からのpH調整ガスを撹拌装置19内に導入するガス導入路300と、撹拌装置19に供給するpHガスを一時的に貯留するためのガス槽400と、撹拌装置19からの排気を大気放出する排気路500と、撹拌装置19からの排気をガス槽400内に循環させる循環路600と、撹拌装置19からの排気を大気放出するかガス槽400内に循環させるかを切り換える切り換えバルブ700と、排気路500を流れる排気中の炭酸ガス濃度を測定する炭酸ガスセンサ800と、炭酸ガスセンサ800により測定された排気中の炭酸ガス濃度に応じて切り換えバルブ700を切り換え制御する制御装置900とを備えている。
【0018】
撹拌装置19は、搬送コンベヤ13から供給される処理土を受け入れて撹拌するものであり、撹拌装置19から排出された処理土は排出コンベヤ26により順次搬出される。各何装置100の詳細構造についてはまた後で説明する。
【0019】
ガス導入路300は、撹拌装置19の外壁部に設けた通気孔101(後述の図3参照)とガスボンベ200とを接続し、炭酸ガスを撹拌装置19に導入する。ガス導入路300の途中には、上記ガス槽400が設けられている。ガス槽400は適当な容積の密閉容器である。
【0020】
また、ガスボンベ200の吐出路、すなわちガス導入路300におけるガスボンベ200とガス槽400との間の部分には、ストップバルブ301が設けられている。ストップバルブ301は、ガス導入路300の流路を開閉し、ガスボンベ200から撹拌装置19に炭酸ガスを供給したり炭酸ガスの供給を遮断したりする。ストップバルブ301に流量調整機能を持たせて炭酸ガスの供給量を調整できる構成としても良い。また、ストップバルブ301の流量調整機能が確保できない場合、ストップバルブ301とは別に、ガス導入路300に流量調整弁を追加しても良い。
【0021】
排気路500は、一端が撹拌装置19の外壁面に設けた排気孔102(後述の図3参照)に接続し他端が大気開放されており、撹拌装置19からの排気を大気放出する。上記の炭酸ガスセンサ800は、排気路500の途中、好ましくは撹拌装置19と切り換えバルブ700の間の位置に設けられている。切り換えバルブ700は、排気路500と循環路600の分岐部に設けられている。
【0022】
循環路600は、排気路500から分岐してガス槽400に接続している。特に図示していないが、ガス槽400→ガス導入路300→撹拌装置19→排気路500→切り換えバルブ700→循環路600→ガス槽400というループ状の流れを作り出すのに必要な場合には、この環状流路のどこか(例えば循環路600)にポンプを設ける。ポンプは手動運転式でも良いが、例えば切り換えバルブ700の切り換え状態に応じて上記制御装置900により運転制御される構成としても良い。例えば、切り換えバルブ700が循環路600側に排気を循環させる位置に切り換わっているときにはポンプを運転し、切り換えバルブ700が大気放出側に切り換わっているときにはポンプを停止させる。
【0023】
ガス導入路300や排気路500、循環路600は、管路を構成するものであれば特に限定されないが、例えば鋼管やゴム管、ビニル管、樹脂管等が利用できる。
【0024】
制御装置900は、切り換えバルブ700の制御手順のプログラムや必要な定数を格納する記憶部(ROM等)901、各種演算処理を実行する演算処理部(CPU等)902、炭酸ガスセンサ800からの測定値を入力しディジタル信号に変換するA/D変換器903、演算処理部902による演算結果や演算途中の数値を一時的に記憶する一時記憶部(RAM等)904、ディジタル信号をアナログ信号に変換するD/A変換器905、D/A変換器905からの信号を増幅し切り換えバルブ700の図示しない駆動部に出力する増幅器906を備えている。
【0025】
制御装置900では、炭酸ガスセンサ800からの測定値が入力されると、測定値はA/D変換器903によってディジタル信号化され一時記憶部904に記憶される。同時に、演算処理部902は、記憶部901から読み出したプログラムに従って、A/D変換器903を介して入力された測定値を記憶部901から読み出した前出のしきい値と比較し、比較結果を基に切り換えバルブ700への指令信号を生成する。具体的には、排気中の炭酸ガス濃度の測定値がしきい値以上のとき、切り換えバルブ700を循環路600側に切り換える指令信号を生成し、排気中の炭酸ガス濃度の測定値がしきい値未満のとき、切り換えバルブ700を大気開放側に切り換える指令信号を生成する。ここで言うしきい値とは、例えば撹拌装置19からの排気の炭酸ガス濃度に対して予め設定した値であり、例えば一般的な大気中の炭酸ガス濃度に基づいて設定された値である。演算処理部902で生成された指令信号は、D/A変換器905でアナログ信号化され、増幅器906を介して切り換えバルブ700の図示しない駆動部に出力される。これにより、排気中の炭酸ガス濃度がしきい値以上のときはガス槽400に排気を循環させ、排気中の炭酸ガス濃度がしきい値未満のときは排気が大気に放出されるようになっている。
【0026】
なお、制御装置900では、炭酸ガスセンサ800の検出信号を炭酸ガス濃度の測定値としてしきい値と比較するが、炭酸ガスセンサ800の検出信号を基に演算した炭酸ガス濃度の演算値を、当該測定値として相応のしきい値と比較するようにしても良い。
【0027】
図2は本発明の一実施の形態に係る土壌処理装置として利用可能な土質改良機の一構成例の全体構造を表す側面図である。図2中の図1と同様の部分又は同様の役割を果たす部分には同符号を付す。
図2に示した土壌処理装置は、例えば油圧ショベルのバケット等の作業具或いは図示しないコンベヤにより供給される処理土を受け入れるホッパ12、ホッパ12に受け入れた処理土を撹拌し下方へ排出する撹拌装置19、ホッパ12内の処理土を搬送し撹拌装置19に供給する搬送コンベヤ13、撹拌装置19から排出された処理土を機外(図2中右側)に搬出する排出コンベヤ26、自力走行をするための走行体1、土壌処理装置を構成する各機器の動力源等を内蔵した動力装置21を有している。また、処理土に炭酸ガスを通気する上では使用しないので省略しても構わないが、図2の構成例では添加材を供給するための添加材供給装置14も備えられている。
【0028】
走行体1は、左右一対の走行装置2、及び走行装置2の上部にほぼ平行に延設した一対の本体フレーム3で構成されている。走行装置2のトラックフレーム4は、本体フレーム3の下部に連設している。トラックフレーム4の前後両端には従動輪(アイドラ)5及び駆動輪6が回転自在に支持されており、従動輪5及び駆動輪6には履帯(無限軌道履帯)7が掛け回してある。履帯7は駆動輪6に直結した駆動装置8により駆動輪6及び従動輪5の間を循環駆動し、これにより土壌処理装置が走行する。また、本体フレーム3の上部には支持ポスト9a,9bが立設されており、これら支持ポスト9a,9bによって支持フレーム10,11が支持されている。
【0029】
ホッパ12は、上下が開口した上方拡開形状の枠型の部材であり、支持フレーム10を介して本体フレーム3の長手方向一方側(図2中左側)に支持されている。搬送コンベヤ13は、ホッパ12の下方から本体フレーム3の長手方向ほぼ中央上に設けた撹拌装置19の入口(図示せず)上方にかけて延在している。
【0030】
添加材供給装置14は、搬送コンベヤ13上の搬送物に添加材を添加する役割を果たすもので、支持フレーム11を介し本体フレーム3のほぼ中央位置上に配設されている。この添加材供給装置14は、添加材を貯留する貯留タンク15、貯留タンク15の下部に設けた貯留タンク15内の添加材を下方に導出するためのフィーダ16、貯留タンク15内の添加材をフィーダ16にガイドするシュート17を備えている。
【0031】
本例ではフィーダ16としてスクリューコンベヤが設けられているが、例えば複数の羽根を有するロータを円筒状のケース内に収容し、ロータを動力回転させることにより羽根間に入り込んだ添加材を下方に導出する、いわゆるロータリフィーダに代えても良い。なお、搬送コンベヤ13の下流側から撹拌装置19の入口(図示せず)部分までの空間はカバー20に覆われ、このカバー20によりフィーダ16の添加材の導出口が包囲されており、フィーダ16からの添加材の飛散が抑制される。
【0032】
動力装置21は、本体フレーム3の長手方向他方側(図2中右側)の端部上に支持部材22を介して支持されている。動力装置21の前方側(図2中左側)には、走行装置2を操作する操作レバー24等が配置された運転席23が設けられている。また、運転席23の下方には、走行装置2を除く各機器(撹拌装置19等)を操作する操作盤25が設けられている。
【0033】
排出コンベヤ26は、上流側部分(図2中左側部分)が本体フレーム3から吊り下げ支持されており、撹拌装置19の下方から機外(この例では図2中右側)に向かって所定距離だけほぼ水平に延在した後、動力装置21の下方付近から上り傾斜に延在している。排出コンベヤ26の中間部及び下流側部分(図2中右側部分)は、動力装置21の後方(図1中右側)に設けたアーム28により支持部材29,30を介して支持されている。
【0034】
図3は図2中のIII−III断面による撹拌装置19の断面図である。
図3に示した撹拌装置19の箱状のハウジング40は、特に図示していないが長手方向一方側(図2中左側)の上部に入口(入口筒体)を、他方側(図2中右側)の下部に改良土の出口を備えている。ハウジング40の内部には、4本のパドルミキサ43が設けられている。但しパドルミキサ43の本数は限定されず、3本以下でも良いし5本以上設けても良い。各パドルミキサ43は、回転軸44に複数のパドル45を設けた構成であり、ハウジング40の長手方向(図3中の紙面直交方向)に延在し互いにほぼ平行に配設されている。各パドル45は、パドルミキサ43の矢印で示した回転方向の前方側を向くように所定角度傾斜している。また、ハウジング40の底部内壁面は、パドル45の回転軌跡に沿う円弧状に形成されている。特に図示していないが、ハウジング40は、内部のメンテナンスがし易いように上蓋が開閉自在に構成されている。
【0035】
このとき、図3に示したように、撹拌装置19のハウジング40の外壁部の上部の幅方向(図3中の左右方向)の両端部には通気孔101が、ハウジング40の上部の幅方向(図3中の左右方向)のほぼ中央部には排気孔102が設けられている。通気孔101には前出のガス導入路300(図1も参照)が、排気孔102には前出の排気路500(図1も参照)がそれぞれ接続されている。通気孔101及び排気孔102は、それぞれハウジング40の長手方向(図3中の紙面直交方向)に複数並べて設けてあり、ハウジング40を長手方向から見た図3では、排気孔102は2箇所、排気孔102は1箇所図示されている。
【0036】
次に、上記構成の本実施の形態の土壌処理装置の動作を説明する。
図1において、油圧ショベル等によりホッパ12に改質対象となる処理土を投入すると、ホッパ12に受け入れられた処理土が搬送コンベヤ13により撹拌装置19に向かって搬送される。搬送コンベヤ13上の処理土は撹拌装置19に供給され、撹拌装置19内でパドルミキサ43によって撹拌されつつ出口側に移送される。撹拌装置19で撹拌処理された処理土は、排出コンベヤ26上に排出され、この排出コンベヤ26によって機外に搬出される。
【0037】
この間、撹拌装置19のハウジング40内にはガスボンベ200からのpH調整ガスがガス槽400及びガス導入路300を介して導入されているので、撹拌装置19内で処理土はpH調整ガスと接しながら攪拌混合されることとなる。このように処理土全体がpH調整ガスと接触することにより、処理土中に残留している生石灰(Ca(OH)2)とpH調整ガス中の炭酸ガス(CO2)との次式(1)で表される反応が促進される。
Ca(OH)2+CO2→CaCO3+H2O+68.63[kJ/mol]・・・(1)
これにより、本実施の形態によれば、石灰系処理材と混合処理された処理土のpHを効果的に低下させることができる。
【0038】
なお、撹拌装置19内に通気されて処理土中の水酸化カルシウムと反応したpH調整ガスは、排気孔102を介して撹拌装置19から排出され、排気路500を流通する。その際、炭酸ガスセンサ800により測定された排気中の炭酸ガス濃度を基に、制御装置900は切り換えバルブ700を切り換え制御する。具体的には、処理土中にまだ水酸化カルシウムが多く残存しpH調整ガスの炭酸ガスの多くが水酸化カルシウムとの反応に費やされている間、炭酸ガス濃度の測定値は低い。その後、水酸化カルシウムの大部分が炭酸カルシウムに変化すると、水酸化カルシウムと反応せずに撹拌装置19から排出される炭酸ガスが急増し、炭酸ガス濃度の測定値が急激に上昇する。これを利用して、制御装置900は、炭酸ガス濃度の測定値があるしきい値と比較し、炭酸ガス濃度がしきい値以上の場合は排気をガス槽400に循環させ、炭酸ガス濃度がしきい値未満の場合は排気を大気放出する。排気を大気放出するかガス槽400へ戻すかの判断基準は現場の状況にもよるが、例えば大気中の炭酸ガス濃度(300〜400ppm)をしきい値に設定し、排気を大気放出しても大気中の炭酸ガス濃度の上昇に働かないようにすることが1つの目安である。
【0039】
ここで、本実施の形態において如何にして処理土のpHが低下するかについて説明を加える。
まず、撹拌装置19に供給される処理土の中には、混合された石灰系処理材中の生石灰(CaO)が土砂の水分(H2O)との反応により水酸化カルシウム(Ca(OH)2)となって存在している。生石灰と水分の反応は次式(2)で表される。
CaO+H2O→Ca(OH)2+65.15[kJ/mol]・・・(2)
この反応により生じた水酸化カルシウムが処理土のpHを高くする要因となっているが、前述したように水酸化カルシウムは炭酸ガスと接触することにより炭酸カルシウムとなり中性化される。
【0040】
しかしながら、処理土に混合された石灰系処理材中の生石灰は、その全てが水酸化カルシウムに変化している訳ではなく、通常、土砂中の水分と接触することなく処理土中に残留する未反応分も存在する。未反応の生石灰は処理土のpHを高くする要因となるが、炭酸ガスと接触しても何ら反応しない。そのため、処理土にpH調整ガスを通気しても生石灰はそのまま処理土中に残存してしまい、処理土は十分に中性化されない。
【0041】
そこで、本実施の形態のように、撹拌装置19内で処理土を撹拌しながらpH調整ガスを処理土に通気すると、上式(1)の反応で生成された水分が未反応のまま残存する生石灰と即座に反応し生石灰が水酸化カルシウムとなり(上式(2)の反応うぃ誘起させる)、さらに、生成された水酸化カルシウムが炭酸ガスと反応して炭酸カルシウムとなって土壌は中性化される(上式(1)の反応を誘起させる)。
【0042】
このようにして上式(1)(2)の反応を相互に連鎖させて処理土中の未反応の生石灰と水酸化カルシウムをなくしていくことにより、本実施の形態においては、石灰系処理材と混合処理された処理土のpHを効果的に低下させることができる。
【0043】
また、処理土を撹拌しながらpH調整ガスを通気するのではなく、例えば処理土の山にパイプを差し込んでパイプを介してpHガスを通気したとしても、一度ガスの“通り道”ができて大部分のpH調整ガスがその通り道を通るようになってしまうと、炭酸ガスと接触しない水酸化カルシウムが多く生じてしまう。団粒化した土塊内部に水酸化カルシウムが存在しpH調整ガスが土塊内部に侵入できない場合も、処理土中の水酸化カルシウムに炭酸ガスが十分に接触できないケースである。
【0044】
それに対し、本実施の形態の場合、撹拌中の処理土にpH調整ガスを通気することにより、処理土中に空気の通り道が生じることもなく処理土中に散在する水酸化カルシウムにpH調整ガスを効果的に接触させることができる。
【0045】
加えて、循環路600を通して未反応の炭酸ガス(排気)をガス槽400に導き再利用するため、温室効果ガスである炭酸ガスを不用意に大気に放出することを回避できる。また、未反応の炭酸ガスを再利用することで炭酸ガスのロスが抑制され処理コストも抑えられる。
【0046】
また、上式(1)(2)とも同等の発熱を伴う発熱反応であり、これらの反応を相互に起こさせ反応を促進させることによって発熱量を増加させることができるので、処理の促進(例えば処理土の養生期間短縮)の効果も期待することができる。
【0047】
図4は本実施の形態の土壌処理装置を用いて構成した土壌処理システムの一構成例の要部を抽出して表した図である。
図4では、例えば図2に示したような土質改良機A,Bを2台タンデム(縦列)に配置し、前段の土質改良機Aで対象土壌に石灰系処理材を混合し、その処理土に後段の土質改良機BでpH調整ガスを通気する。後段の土質改良機Bは本実施の形態の土壌処理装置であり、これ以降、土壌処理装置Bと記載する。土壌処理装置Bの制御装置900は図4では図示省略されている。
【0048】
土質改良機Aは、ガスボンベ200、ガス導入路300、ストップバルブ301、ガス槽400、排気路500、循環路600、切り換えバルブ700、炭酸ガスセンサ800を省略した土壌処理装置Bとほぼ同様の構成である。したがって、土質改良機Aにおいて土壌処理装置Bとほぼ同様に構成された部分には、土壌処理装置Bの対応部位の符号に添え字Aを付した符号を付して構成の説明を省略する。
【0049】
本実施の形態のシステムでは、まず土質改良機Aにおいて、油圧ショベル等によりホッパ(図示せず)に対象土砂が投入されると、そのホッパに受け入れられた土砂が搬送コンベヤ13Aにより搬送される。搬送中、添加材供給装置14Aによって搬送コンベヤ13A上の土砂に石灰系処理材が供給され、土砂は石灰系処理材とともに混合装置19Aに供給される。混合装置19Aに導入された土砂及び石灰系処理材は、パドルミキサ(図示せず)によって混合処理されつつ出口側に移送される。混合装置19Aで混合処理された処理土は、排出コンベヤ26A上に排出され、排出コンベヤ26Aによって土壌処理装置Bのホッパ12(図2参照)に投入される。
【0050】
土壌処理装置Bでは、ホッパ12(図2参照)に受け入れられた処理土が搬送コンベヤ13により撹拌装置19に向かって搬送される。搬送コンベヤ13上の処理土は撹拌装置19に供給され、撹拌装置19内でパドルミキサ43によって撹拌されつつpH調整ガスを通気される。撹拌装置19で撹拌処理された処理土は、排出コンベヤ26上に排出され機外に搬出される。
【0051】
なお、図4のシステムは一例であり、例えば土質改良機Aと土壌処理装置Bの間にコンベヤを配置して、土質改良機Aからの処理土をコンベヤにより土壌処理装置Bに搬送する場合もある。また、図4のように石灰系処理材との混合処理とpH調整ガスの通気の処理を連続的に施工するのではなく、土質改良機Aからの処理土を一旦養生し、養生後に土壌処理装置Bに投入することも考えられる。
【0052】
図5は本発明の第2の実施の形態に係る土壌処理装置の要部を抽出して表した図である。図5で前出の各図と同様の部分には同符号を付して説明を省略する。
図5に示すように、本実施の形態の土壌処理装置は、石灰系処理材との混合処理とpH調整ガスの通気の処理を同時施工することができるように構成されている。構成としては図2の土壌処理装置に実質的に等しく、本例では添加材供給装置14の貯留タンク15に石灰系処理材が貯留しておき、フィーダ16によって搬送コンベヤ13上の土砂に石灰系処理材を添加する。フィーダ16は、本例ではロータリフィーダを採用しているが、図2の土壌処理装置のようにスクリューフィーダであっても構わない。
【0053】
本実施の形態では、油圧ショベル等によりホッパ12に対象土砂が投入されると、ホッパ12に受け入れられた土砂が搬送コンベヤ13により搬送される。搬送中、添加材供給装置14によって搬送コンベヤ13上の土砂に石灰系処理材が供給され、土砂は石灰系処理材とともに撹拌装置19に供給される。撹拌装置19に導入された土砂及び石灰系処理材は、パドルミキサ43によって混合処理されつつ出口側に移送される。その間、撹拌装置19内にはガス槽400からのpH調整ガスが導入され、対象土砂は石灰系処理材と混合されつつpH調整ガスとも接触する。撹拌装置19で撹拌・混合処理された処理土は、排出コンベヤ26上に排出され、排出コンベヤ26によって機外に排出される。
【0054】
このように既に石灰系処理材と混合された処理土にpH調整ガスを通気するのではなく、土砂と石灰系処理材を混合しつつpH調整ガスを通気する構成としても、上式(1)(2)の相互に起こさせて反応の進行を促進させることができるので、第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0055】
なお、以上の各例においては、処理土の搬送速度に特に触れなかったが、例えば炭酸ガスセンサ800による排気中の炭酸ガス濃度の測定値に応じて処理土の搬送速度が制御されるようにしても良い。この場合、例えば排気中の炭酸ガス濃度の測定値がある設定値を超えず、処理土中の水酸化カルシウムの残存量が多いまま撹拌装置19から排出されてしまっていると推定される場合、制御装置900が搬送コンベヤ13、撹拌装置19、排出コンベヤ26の駆動速度を低下させるようにすることが考えられる。制御の結果、排気中の炭酸ガス濃度が設定値を超えたら、搬送コンベヤ13、撹拌装置19、排出コンベヤ26の駆動速度を元に戻す。この制御の判断基準となる炭酸ガス濃度の設定値は、切り換えバルブ700の切り換え制御の判断基準値(前出のしきい値)よりも低く設定する。
【0056】
また、通気孔101や排気孔102を撹拌装置19のハウジング40の上部に設けた例を図3に例示したが、これらの位置は図示した態様に限定されない。例えば、通気孔101はハウジング40の側部に設けても良い。この場合、通気孔101への処理土の進入が懸念されるようであれば、通気孔101にフィルタを設けても良い。さらに、フィルタを設けて通気孔101への処理土の進入抑制措置が十分になされる場合、ハウジング40の底面側に通気孔101を設けても良い。このように通気孔101を排気孔102の対向位置に設けた場合には、処理土へのpH調整ガスの通気効率の向上も期待される。
【0057】
また、通気孔101や排気孔102をハウジング40の長手方向に並べて設けることを例示したが、通気孔101や排気孔102の配列は特に限定されず、ハウジング40へのpH調整ガスの導入効率、通気効率、排気の排出効率を考慮して適当な位置に設ければ良い。
【0058】
さらに、切り換えバルブ700を制御装置900により自動切換えする場合を例示して説明したが、例えば炭酸ガスセンサ800による排気中の炭酸ガス濃度の測定結果を作業者がモニタしつつ、手動操作で切り換えるようにしても良い。
【0059】
また、ストップバルブ301の開閉或いは開度調整について特に説明しなかったが、ガス槽400の圧力、或いはガス導入路30又は排気路500中の炭酸ガス濃度を監視しつつ、ストップバルブ301を操作するようにしても良い。例えばガス槽400の内圧がある値以下に減少したら、ストップバルブ301を開けて(又は開度を上げて)系内のpH調整ガスを補充する。この場合も、作業者の手動操作と制御装置900による自動制御の双方が考えられる。
【0060】
さらには、土壌処理装置として利用可能な土質改良機は、図2に示した構成に限定されない。例えば、処理土や土砂から異物を除去する振動式(又は固定式)の篩をホッパ12の上部に設けても良い。さらに篩の上方にいわゆる煽りを設けても良い。また、履帯7を有するクローラ式の走行装置の代わりに、いわゆるホイール式の走行装置を設けても良い。自走機能を省略して固定式のプラントを利用することもできる。さらには、撹拌装置19はパドルミキサ43を有するミキシング方式の混合装置に限らず、他の方式の混合装置に代えても良い。この場合、高速回転するソイルカッタや打撃子により土砂を解砕する方式の混合装置や、セメントを混練する縦軸型の混合装置等、代替可能な混合装置は多種多様である。また、図2のように撹拌装置19が搬送コンベヤ13や排出コンベヤ26とユニット化された装置でなくとも、単に処理土を撹拌しつつpH調整ガスを通気する限りにおいては、撹拌装置19は単体の装置であっても良い。これらの場合も同様の効果を得る。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る土壌処理装置の要部を抽出して表した図である。
【図2】本発明の一実施の形態に係る土壌処理装置として利用可能な土質改良機の一構成例の全体構造を表す側面図である。
【図3】図2中のIII−III断面による撹拌装置19の断面図である。
【図4】本発明の一実施の形態に係る土壌処理装置を用いて構成した土壌処理システムの一構成例の要部を抽出して表した図である。
【図5】本発明の第2の実施の形態に係る土壌処理装置の要部を抽出して表した図である。
【符号の説明】
【0062】
19 撹拌装置
101 通気孔
102 排気孔
200 ガスボンベ
300 ガス導入路
400 ガス槽
500 排気路
600 循環路
700 切り換えバルブ
800 炭酸ガスセンサ
900 制御装置
901 記憶部
902 演算処理部
A 土質改良機
B 土壌処理装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生石灰又は生石灰を主成分とする添加材である石灰系処理材と混合処理した処理土のpHを低下させる土壌処理装置であって、
前記処理土を撹拌する撹拌装置と、
前記撹拌装置の外壁部に設けた通気孔と、
炭酸ガス又は炭酸ガスを主成分とする混合ガスであるpH調整ガスの供給源としてのガス供給源と、
前記ガス供給源と前記通気孔とを接続し前記ガス供給源からのpH調整ガスを前記撹拌装置内に導入するガス導入路と、
前記撹拌装置の外壁面に設けた排気孔と
を備えたことを特徴とする土壌処理装置。
【請求項2】
請求項1の土壌処理装置において、
前記ガス導入路の途中に設けたpHガス一時貯留用のガス槽と、
前記排気孔に接続し前記撹拌装置からの排気を大気放出する排気路と、
前記排気路から分岐して前記ガス槽に接続し前記撹拌装置からの排気を前記ガス槽内に循環させる循環路と、
前記排気路と前記循環路の分岐部に設けられ前記撹拌装置からの排気を大気放出するか前記ガス槽内に循環させるかを切り換える切り換えバルブと
を備えたことを特徴とする土壌処理装置。
【請求項3】
請求項2の土壌処理装置において、
前記排気路を流れる排気中の炭酸ガス濃度を測定する測定手段と、
この測定手段からの測定値を基に前記切り換えバルブを制御する制御装置とを備え、
前記制御装置が、
前記測定手段からの測定値を入力する入力部と、
前記撹拌装置からの排気の炭酸ガス濃度に対して予め設定したしきい値を格納した記憶部と、
前記入力部を介して入力した測定値を前記記憶部から読み出したしきい値と比較し、排気中の炭酸ガス濃度の測定値が前記しきい値以上のとき、前記切り換えバルブを前記循環路側に切り換える指令信号を生成する演算処理部と、
前記演算処理部で生成された指令信号を前記切り換えバルブに出力する出力部と
を備えていることを特徴とする土壌処理装置。
【請求項4】
生石灰又は生石灰を主成分とする添加材である石灰系処理材と混合処理した処理土のpHを低下させる土壌処理方法であって、
炭酸ガス又は炭酸ガスを主成分とする混合ガスであるpH調整ガスを前記処理土に通気しながら前記処理土を撹拌する
ことを特徴とする土壌処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−19377(P2009−19377A)
【公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−181386(P2007−181386)
【出願日】平成19年7月10日(2007.7.10)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】