説明

土壌及び地下水改質のための現場でのpH調節

【課題】地表下処理ゾーンのpHを高めるために使用できる組成物及び方法を提供する。
【解決手段】少なくとも一つの圧密化されていない物質又は亀裂の入った岩石を含む処理ゾーンにおける、汚染された地表下物質を改善するための組成物であって、該組成物は、MgO、Mg(OH)2、MgCO3、CaO、Ca(OH)2、及びCaCO3、及びこれらの任意の組合せからなる群から選択される固体アルカリ性物質からなる第一の成分;ポリアクリレート、ポリスルホネート、脂肪酸又は脂肪酸の塩、植物油、ポリソルベート、ソルビタンエステル、レシチン、鉄塩、シリケート、ホスフェートからなる群から選択される第二の成分;及び水からなる第三の成分を含む粒子懸濁液を含み、該懸濁液は、0.1〜5μmなる範囲の平均粒径を持つ。該組成物は、前記汚染された地表下物質のpHを選択されたレベルに調節する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願との相互引照)
本件特許出願は、2007年5月4日付で出願された、「土壌及び地下水改質のための現場でのpH調節(IN SITU pH ADJUSTMENT FOR SOIL AND GROUNDWATER REMEDIATION)」と題する米国特許出願第11/800,266号の一部継続出願である。該米国特許出願の開示事項全体を、参照することによりここに組入れるものとする。
【0002】
本発明は、地表下の物質のpHを、改質性を高める値に調節し、かつ維持するための、アルカリ性固体を含む組成物を用いた、汚染された該地表下の物質の改質に関するものである。
【背景技術】
【0003】
汚染された地表下の物質の改質のために、多数の技術が利用されている。この浄化のメカニズムは、物理的、化学的又は生物学的なものであり得る。通常の物理的改質法は、汚染された土壌の採掘及び廃棄、並びに汚染地下水のポンプによる汲み上げ及び処理を含む。
【0004】
汚染された地表下物質の現場における処理は、該汚染物質の物理的な除去の必要性を排除するので、しばしばあまり経費のかからないやり方である。通常の現場における処理方法は、好気的及び嫌気的な生物学的改質、化学的な酸化及び還元、土壌内蒸気の抜取り、空気分散、及び現場での安定化、即ち、固定化法を含む。全てではないにしても殆どの現場での処理法は、該処理法に対する最適のpHを有している。多くの生物学的な改質方法は、必要とされる微生物の最適な成長及び汚染物質の生物分解にとって、6〜8(標準単位(SU))なる範囲のpHを必要とする。化学的な酸化、還元及び固定化法も、最適pHを必要とする。該pHが過度に低い場合、反応速度が低下するか、あるいは該ターゲット化学物質の溶解度が過度に高くなるか、あるいは過度に低くなる恐れがある。様々な汚染物質に対して使用されている種々の改質法を、以下においてより具体的に論じる。
【0005】
ここにおいて関連技術を論じる際に、しばしば簡潔に過ぎる表示法で言及していることに留意されたい。明確化のために、この「背景技術」の項の末尾に示される文献目録部分を参照することができ、該部分では、論じられる参考文献及び興味深い他の参考文献の完全な引用が、ことごとく明らかにされる。該目録部分及び/又は関連技術のあらゆる議論においてある参考文献が挙げられていることは、このような参考文献の全てが、本発明に関する公知技術であり、あるいは公知技術を構成し得ることを示唆するものではない。何故ならば、幾つかの参考文献は、当技術のより広い理解を得るためにのみ引用され、及び/又は議論されているからである。
【0006】
微生物成長のための最適なpHは、特定の微生物及びその呼吸経路に依存する。好気的な微生物は、しばしば広範囲に及ぶpHに対して耐性であるが、多くの嫌気性微生物は、pHに対して敏感であり、また狭いpH範囲においてのみ効率的に機能する。脱窒作用及びメタン生成細菌による生物分解速度は、通常7〜8SUなる範囲のpHにおいて最適であり、また該分解速度は、6SUなるpH以下においては急速に低下する可能性がある(van den Berg, 1974; US EPA, 1975)。低pHを持つ水は珍しくはないが、多くの水供給帯水層のpHは、6.0〜8.5SUなる範囲内にある(Hem, 1999)。
【0007】
微生物集団は、広い範囲の以pHに耐え得るが、自然に近いpH(6〜8SU)が、嫌気的な脱塩素に必要な、健全かつ多様な微生物集団の成長並びに増殖を最も促進する。低pH条件(<5SU)は、硫酸塩-還元性、メタン生産、及び脱塩素化バクテリアにとって有害である。デハロコッコイデスエテノゲネス(Dehalococcoides ethenogenes)は、パークロロエテン(PCE)及びトリクロロエテンを、無毒の最終生成物エテンに、完全に脱塩素化し得る、唯一の公知の微生物である。しかし、デハロコッコイデスE.は、pHに対して極めて敏感であると思われる。Young及びGossett(1997)は、デハロコッコイデスを含むことが知られている強化培養を用いた一連の実験において、PCEの脱塩素化が、7SUなるpHにおけるよりも、6SUなるpHにおいて4-倍も遅いことを見出した。
【0008】
様々な重金属は、上記帯水層のpHを高めることにより、現場で固定化し得る。バリウム(Ba)、カドミウム(Cd)、クロム(Cr)、鉛(Pb)、及び水銀(Hg)は、アルカリ条件下で低い溶解度を持ち(Dragun, 1988)、その結果これらの金属は、pHを調節することにより、現場で沈殿させることが可能である。ヒ素を含む他の汚染物質は、pHの調節を通して、鉄(Fe)又はマンガン(Mn)の沈殿を促進することにより処理することができる。さらに、重金属の除去は、pHを調節することによって促進され、鉄、マンガン、アルミナ、ケイ素含有酸化物、及びこれらの各含水、無水ヒドロキシ、及びオキシヒドロキシ物質を含む無機表面に対する収着性を高めることができる(Bethkeの米国特許第7141173号, 2006年11月)。
【0009】
重金属は、pH及びレドックス調節の組合せを利用して、さらに還元することができる。Deutsch等(2002)は、酸化剤及びアルカリ性物質の添加により、Fe及びAsの高い除去率を誘発し得ることを記載している。Miller等(2006)は、溶解したNaOHを、酸性地下水のpH(3〜4SUなる範囲のpH)を高める目的で使用するでき、結果的に、溶解したカドミウム、銅(Cu)、鉛、マンガン、ニッケル(Ni)、及び亜鉛(Zn)のレベルを減じることができることを明らかにした。しかし、水酸化ナトリウム(NaOH)との組合せによる、カルシウムポリスルフィド(CPS)の使用が、過酷な状態を処理する上で最も効果的であった。
【0010】
化学的な酸化法は、有機及び無機汚染物質で汚染された地表下の物質及び地下水を処理するために使用できる。これら方法の多くは、該汚染物質の破壊又は固定化のための最適のpHを持つ。例えば、pH調節と組合せた化学的酸化は、鉄、マンガン及びヒ素を沈殿させるために使用できる(Hem, 1999)。高いpHとの組合せにおける過硫酸塩は、塩素化されたエテン、エタン、及びメタン、単核-及び多核-芳香族炭化水素、酸素化生成物、石油系炭化水素、クロロベンゼン、フェノール、殺虫剤、除草剤、ケトン及びポリクロロビフェニル等を包含する、様々な地表化の汚染物質を化学的に酸化する目的で使用できる(FMCエンバイロンメンタルソリューションズ、クロツールアクチベーションケミストリーズ(Environmental Solutions, Klozur Activation Chemistries), 2006;Block等, 2006、米国特許出願第2006/0054570号, ITRC, 2006;Brown等, 2006;White等. 2006;Crimi及びTaylor, 2006)。しかし、10.5SUを越えるpHレベルが、過硫酸塩を活性化し、結果として多くのターゲット化合物の酸化分解を増強するために必要とされる(ITRC 2006; Crimi及びTaylor, 2007)。これら高いpHレベルの達成は、多くの表面下物質の強力な緩衝作用のために、困難となる恐れがある。Block等(2005)は、有機化合物の酸化法を記載しており、そこでは、該有機化合物を、水溶性のパーオキシジャン(peroxygen)と、水溶性のpH調節剤(例えば、水酸化ナトリウム及びカリウム)を含む組成物とを接触させており、ここで該pH調節剤は、該組成物のpHを約10SUを越える値に維持する。しかし、固形アルカリ性物質、例えばCaO又はCa(OH)2は、また該pHを、10SUを越える値にまで高めるのに使用することもできる。
【0011】
化学的な還元法も、有機及び無機汚染物質で汚染された地表下の物質及び地下水を処理するために使用できる。例えば、Boparai等(2006)は、除草剤で汚染された表層土壌及び帯水層の沈殿物は、これらのpHを8.5SUまで高めた場合には、亜ジチオン酸塩で処理することができることを示した。しかし、6.9SUという周囲pHにおいては、該汚染物質の成分変換は起らない。同様な結果は、Lee及びBatchelor(2002)によっても報告されており、彼らは、pHが6.8から8.1に増大した場合における、該TCE脱塩素化速度の増大を報告した。8.1〜8.5SUなる範囲のpHは、Mg(OH)2の懸濁液の注入によって達成し得る。
【0012】
低pH状態を導くことのできる種々の異なる条件があるが、これらは処理工程を阻害する恐れがある。米国東南部においては、多くの土壌及びその下にある帯水層は、元々低pHを有している。嫌気的条件下では、様々な有機物質は醗酵して、さらにpHを低下するのではなく、単鎖脂肪酸(例えば、酪酸、プロピオン酸及び酢酸)を遊離する可能性がある。Frizzell等(2004)は、高-フルクトースコーンシロップとチーズホエーとの混合物の注入が、生物学的活性を高め、結果として4.0以下へのpH降下をもたらすことを見出した。
【0013】
通常、帯水層のpHを高めるための、2種の一般的に受容れられ、利用可能な方法が存在する。その第一の最も普通の方法は、該処理ゾーンを通して、溶解した塩基又はアルカリ性物質を含有する溶液を循環するものである。通常使用される物質は、NaOH、水酸化カリウム(KOH)、炭酸ナトリウム(Na2CO3)、重炭酸ナトリウム(NaHCO3)、及びナトリウムメタシリケート(Na2SiO3)の水性溶液を含む。Arcadis(2002)及びLutes等(2006)は、pHの減衰を調節するために、炭酸塩、重炭酸塩、又はリン酸塩を含有する緩衝溶液を循環する方法を記載している。Cline等(2005)は、帯水層のpHを4.5から6.6SU程度の高い値に高めて、ドライクリーニング店におけるPCEの還元的脱塩素化を増強するための、KOH溶液の注入を記載している。
【0014】
前記処理ゾーンを介するアルカリ溶液の循環は効率的であり得るが、この方法には幾つかの主な欠点がある。該アルカリ溶液が層を介して移動するので、該水中に存在するアルカリ性物質は、酸性無機表面と反応し、その結果消費される。結局、多量のアルカリ性物質が、そのpHを高めるために添加されねばならない。これは、希薄塩基の多数-倍のポアボリュームを、又は少量の極めて濃厚な塩基を注入することにより達成し得る。多数-倍のポアボリュームの注入は実施困難であり、またこれはコストを増大する。極めて濃厚な塩基の注入は、該層のpHを許容できないレベルにまで高め、その場所での作業者の安全性を脅かす恐れがある。
【0015】
該層のpHを高めるための第二の方法は、固形アルカリ性物質を注入するものである。これらの物質は、該地表下の物質に穴をあけ、次いでスラリーを重力の作用下で、又は加圧注入によって注入し得る。この方法において使用し得る固形アルカリ性物質は、酸化マグネシウム(MgO)、水酸化マグネシウム(Mg(OH)2)、炭酸マグネシウム(MgCO3)、酸化カルシウム(CaO)、水酸化カルシウム(Ca(OH)2)、及び炭酸カルシウム(CaCO3)を含む。Deutsch等(2002)は、pHを高め、また鉄及びヒ素を沈殿するためのレドックス能力を高めるために、MgO及びMg(OH)2のスラリーを注入することを記載している。この方法は、多量の物質を迅速に注入できるという点において、水性溶液の注入に勝る利点を持つが、pHにおける有利な増加は、しばしば該注入点付近に隣接する領域に限定される。該処理ゾーン全体のpHを高めるために、該固形アルカリ性物質(「アルカリ性固体」とも呼ばれる)は、該沈殿物と共に物理的に混合され、あるいは該注入点から該穴空間を介して搬送することができる。大型のオーガー又はミキサを、物理的な混合のために使用し得るが、これは典型的に極めて高価であり、また破壊的な装置である。
【0016】
Stanforth等(米国特許第5,202,033号)は、リン酸塩、炭酸塩、又は硫酸第一鉄安定化剤及びMgO、Mg(OH)2、CaO及びCa(OH)2を含むアルカリ性物質と混合することにより、土壌又は固体廃棄物中の重金属を固定化する方法を教示している。該安定化剤及びアルカリ性物質は、該土壌とその表面において物理的に混合し、あるいは注入ウエル又は注入ノズルを用いて、溶液又はスラリーとして注入することができる。Stanforthは、該物質と、該沈殿物とを物理的に混合する様々な方法を教示しており、該方法は、中空-ステム(hollow-stem)オーガーを用いた耕運及びその場での機械的な混合処理を含む。Stanforthは、帯水層の孔空間を介する固形アルカリ性物質の搬送方法について何も述べておらず、あるいはこの搬送メカニズムが、可能であることを何等述べていない。
【0017】
該帯水層の孔空間を介するアルカリ性固体の搬送に関連する幾つかの主な課題があり、これらの課題は、沈降による粒子の除去、負に帯電した土壌表面による正に帯電したアルカリ性固体粒子の捕獲、及び搬送性を減じ、また場合により孔の閉塞に導く樹枝状粒子の生成をもたらす、粒子-粒子間衝突を含む。
【0018】
固形アルカリ性粒子の搬送性は、該帯水層の孔空間内での該粒子の沈降によって減じられる。沈降による固体粒子の除去は、該粒子の比重、水性相の粘度、沈降距離、及び粒子径に比例する(Fair等, 1968)。本発明者等が現時点において気付いている全ての有用なアルカリ性固体は、迅速な沈降をもたらす可能性のある、2を越える比重を持つ。該地表下において、粒子除去効率は、粒子が帯水層の孔内で沈降しなければならない距離が極めて小さいことから、極めて高いであろう。沈降による粒子の捕獲率は、粘度を高める目的で該注入流体に増粘剤を添加することにより、減じられる恐れがある。しかし、流体粘度のこの増加は、注入をより困難なものとする(Cantrell等, 1997)。沈降による粒子の除去率は、極めて小さな粒子の使用により低下する恐れがある。しかし、粒子径の減少に伴って、ブラウン運動は、粒子-帯水層間の衝突頻度が増大し、これは除去率を高める(Tratnyek及びJohnson, 2006)。結果として、沈降及びブラウン運動による粒子間衝突頻度を最小化する、最適の粒子径が存在するであろう。
【0019】
Borden及びLee(US 6398960Bl)は、該帯水層の孔における引留め(straining)捕獲率を減じるために、沈殿物のメディアン径よりも小さな平均液滴径を持つオイルエマルションを用いて、汚染された帯水層を改質する方法を教示している。Coulibaly及びBorden(2004)は、様々な沈殿物に関する孔径分布を提示しており、そこで、そのメディアン孔径は35〜<100μmなる範囲で変動し、このことは、該エマルションの平均液滴径が、30μm未満である必要があることを示している。Borden等(米国特許第6398960号)は、オイルの液滴は、水よりも幾分低密度であることから、該地表下におけるエマルション搬送に及ぼす重要な調節因子として、沈降を述べておらず、また沈降が、エマルションの搬送に有意な影響を与えることがないことを何等述べていない。
【0020】
有用なアルカリ性固体(MgO、Mg(OH)2、MgCO3、CaO、Ca(OH)2、及びCaCO3を含む)に関するゼロ電荷点は、8〜12なる範囲で変動し(Pechenyuk, 1999; Parks, 1965; Pokrovsky等, 1999)、従ってこれらの固体は、周囲条件下で正の表面電荷をもつであろう。これらと同様な条件下で、殆どの帯水層表面は、正味の負の電荷を持つ。結果として、アルカリ性固体は、強力に保持される。Seaman等(米国特許第5846434号)は、汚染された帯水層を介して、カチオン性界面活性剤、好ましくは四級アルキルアンモニウム界面活性剤を含む溶液でフラッシングすることにより、該汚染された帯水層からのコロイド状金属酸化物を集める方法を教示している。該カチオン性界面活性剤は、負に帯電したフィロ珪酸塩クレイの表面に吸着され、正に帯電した表面を生成し、該金属水酸化物の捕獲率を減じる。Seaman等は、該移動粒子の表面電荷の変更し、若しくは該地表下における沈降速度を調節して、粒子の移動度を改善することについて何ら言及していない。しかし、Seaman等は、抽出された水にアルカリ性物質を添加して、該抽出された地下水から該コロイド状金属酸化物を沈降させることについては記載している。沈降性を増強するための、Seamanのアルカリ性物質の添加は、該地表下物質における固形アルカリ性物質の分布に係る問題を例示するものである。というのは、これらの物質は、上記帯水層の孔空間内で迅速に沈降してしまい、また如何なる有意な距離も搬送されないであろうからである。
【0021】
粒子-粒子間衝突は、しばしば、搬送性を減じ、また孔の閉塞をもたらす樹枝状物質の生成へと導く(Soo及びRadke, 1985;Rege及びFogler, 1988;及びSahimi及びImdakm, 1991)。様々な異なる研究者が、粒子-粒子間衝突及び樹枝状物質の生成を減じるために、様々な被膜及び安定化剤を用いて、ナノ及びミクロンサイズを持つ粒子の搬送性を改善することを試みている(He等, 2005; Hydutsky等, 2007; Quinn等, 2005; Saleh等, 2007; Schrick等, 2004)。しかし、これら方法の何れも、満足なものとはいえなかった。Gavaskar等は、一連の現地(フィールド)テストの結果をまとめたが、そこでは、効果的なナノ粒子の分配は、成功しなかった。
上記議論に関連して、以下に列挙する参考文献を参照することができ、これら参考文献の開示事項を、参照することにより明確に本明細書に組入れる。
米国特許文献
【0022】
【表1】

【0023】
【表2】

【0024】
その他の刊行物
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Arcadis, 2002:塩素化された脂肪族炭化水素の増強還元的脱塩素化のための、炭水化物を使用する技術的プロトコール(Technical Protocol for Using Carbohydrates to Enhance Reductive Dechlorination of Chlorinated Aliphatic Hydrocarbons), ESTCPのために準備された報告書(Report prepared for ESTCP), (契約番号F41624-99-C-8032)。
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Boparai H.K., P.J. Shea, S.D. Comfort及びD.D. Snow, 2006:亜ジチオン酸塩-処理された帯水層沈殿物及び表層土壌による、クロロアセトアニリド除草剤の脱塩素化(Dechlorinating chloroacetanilide herbicides by dithionite-treated aquifer sediment and surface soil)。Environmental Science and Technology, 40, 3043-3049.
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【発明の概要】
【0025】
本発明によれば、地表下の処理ゾーンのpHを高めるために使用できる、安全で低コストの、効果的な組成物及び方法が提供され、これらは、ある範囲に及ぶ処理プロセスの有効性を高める。該組成物は、一態様においては、固形アルカリ性物質、安定化剤及び他の物質からなり、ここで該組成物の平均粒径は0.1〜5μmなる範囲にあり、該組成物は、2,000cP未満の粘度を有し、また帯水層固体による粒子保留性は、該粒子の有効表面電荷を変更することにより減じられる。本発明の方法は、好気的及び嫌気的な生物学的改質、化学的酸化及び還元、並びに安定化/固定化を包含する、広範囲に及ぶ様々な現場での処理プロセスを、改質性増強のためにpHを調節することによって強化する。該組成物は、圧密化されていない物質又は亀裂の入った岩石中の、汚染された土壌又は地下水、様々な構造を持ち、透過性で反応性のバリヤー(PRB)及び広い面積を持つ被覆面を含む地下水面の上又は下に添加することができる。該組成物の特徴は、その注入点から遠く離れた位置での、アルカリ性固体の改善された分布を可能とすることである。
本発明及びその様々な態様に係る他の特徴並びに利点は、添付図を参照しつつ説明される以下の詳細な開示から、より一層十分に明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】図1は、実験室における研究の結果を示すチャートであり、ここでは、変動する量のMg(OH)2が、帯水層沈殿物に添加され、またそのpHが、24時間の平衡化の後に測定された。結果は、沈殿物1kg当たりの塩基当量で表されている。
【図2】図2は、注入ウエル、パイロットテスト監視ウエル、及びアップグラジエント(upgradient)-未処理監視ウエルにおけるpHの変化を示すチャートである。該pHは、860日と880日との間における、該Mg(OH)2/大豆油懸濁液の注入に伴って、還元的脱塩素化にとっての最適範囲まで上昇した。
【図3】図3は、ポアボリューム(PV)の4倍の脱イオン水、PVの4倍のMg(OH)2懸濁液、及びPVの4倍のDI水を注入する際における、実験用土壌カラムの流出液のpHにおける変化を示すグラフである。
【0027】
【図4】図4は、該実験的カラムへの注入量、該カラム流出液中の量及び該実験の完了後に該土壌によって保持されていた量夫々の間に観測された、Mg(OH)2によるアルカリ度の分布を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明は、地表下処理ゾーンのpHを高くし又は維持するために使用できる、安全で低コストの、効果的な組成物及び方法を提供する。
【0029】
(基本的な態様)
本発明の最も基本的な態様において、上記方法は、アルカリ性固体物質の懸濁液を注入しかつ分配させることにより実施され、ここで該懸濁液の平均粒径は該地表下物質のメディアン孔径又は亀裂開口よりも小さい。該ゾーンのpHを選択された範囲内で高めることにより、幾つかの異なる処理プロセスの効力は増強され、ここで該処理プロセスは、嫌気性生物学的改質法、好気性生物学的改質法、化学的酸化法、化学的還元法、及び固定化法を包含する。これらの異なる処理プロセスは、従って有機化合物、無機化合物、金属及び放射性核種を含む様々な汚染物質の破壊及び/又は固定化能を増強するために使用できる。本発明のこの態様に従う好ましい方法は、上記懸濁液を調製し、また地下水面の上又は下の圧密化されていない物質又は亀裂の入った岩石におけるターゲット処理ゾーン全体に渡り、該懸濁液を分配することを含む。
【0030】
該態様において、該ゾーンのpHは、懸濁液形状で処方された固形アルカリ性物質の導入により高められ、ここでは、該懸濁液粒子の粒径、表面電荷、凝集の程度、及び沈降速度が制御されて、該処理ゾーン全体に渡るその輸送及び分配能が高められる。該懸濁液の理想的な諸特性は以下に列挙する特性を含む:1) 懸濁粒子のメディアン粒径は、該地表下物質のメディアン孔径又は亀裂開口部のサイズよりも小さい;2) 懸濁粒子は、負に帯電した表面による取込みを減じるために、負の表面電荷をもつ;3) 上記孔内にトラップされる恐れのある、大きなフロックの生成を回避するために、該懸濁液は非-凝集性のものである;及び4) 注入中の分離性を減じ、かつ該地表下における輸送性を高めるために、緩慢な沈降速度を持つ。上記アルカリ性固体の理想的な特徴は以下に列挙するものを含む:1) 低コストであり;2) 該物質の単位質量当たりの高い酸中和能力;3) 低毒性で、しかも有害な不純物を含まず;4) 緩慢乃至穏やかな溶解速度を有していて、溶解前にかなりの距離に渡り搬送でき;また5) 適切な範囲の平衡pHを有していて、上記処理目的の達成を可能とする。
【0031】
この第一の態様において、本発明を適用する典型的なプロセスは、以下の諸段階を含む:1) 該処理ゾーンの寸法を決定する段階;2) 該処理目的の達成に必要なpHを選択する段階;3) 該pHを所望の範囲に高めるに要するアルカリ性物質の量を決定する段階;4) 前記アルカリ性懸濁液を調製する段階;及び5) 該アルカリ性懸濁液を前記地表下に注入する段階。
【0032】
本態様の該処理ゾーンのサイズ及び寸法は、該処理目的及びサンプリングした土壌及び/又は地下水の分析結果に基いて決定される。例えば、目的が、水源域の処理である場合、地表下物質(土壌、帯水層沈殿物又は岩石)のサンプルを、数か所の異なる場所及び深さにおいて集め、分析して、その汚染物質濃度が上記許容レベル以上であるか否かを決定する。これらの分析結果をマップ又は断面図にプロットし、処理を要するゾーンを確認するのに利用する。該目的が、透過性かつ反応性のバリアを形成することによる地下水水柱の処理である場合、地下水サンプルを、監視ウエル又はダイレクトプッシュポイント(direct-push point)から集め、汚染物質の濃度が許容レベルを越えているゾーンを明示する。
【0033】
本態様における処理目的を達成するに要するpHは、実施すべき該処理プロセスに基いて決定される。好気的及び嫌気的処理プロセスのための最適pHは、典型的には約6〜約8SUなる範囲内にある。他の処理プロセスのための最適pHは、各処理プロセスに関する従来技術から公知である。該最適pHは、また簡単な実験室テストにより決定することができ、そこでは、a) 前記地表下物質のpHは、通常の酸又は塩基を使用して、指定された範囲内に調節され;b) 該処理プロセスが適用され;またc) 汚染物質の分解又は固定化が、標準的な化学的アッセイを利用して監視される。次いで、このテストを、該処理に対する最適pHが決定されるまで、異なるpHに対して繰返す。
【0034】
本態様において所望の範囲まで該pHを高めるために必要な前記アルカリ性物質の量は、前記処理ゾーン内の数か所から、地下水及び固形地表下物質のサンプルを集めることにより決定される。等しい量の地下水及び固形地表下物質を含むスラリーを調製し、変動する量のNaOH又は他のアルカリ性物質で改善する。次いで、該スラリーを、24時間に渡り平衡状態に至らせ、次いでそのpHを測定する。次いで、該pHを異なるレベルまで高めるのに要する該塩基の当量を示す、グラフを作成する。結果は、典型的には、pHに対する該固形地表下物質の単位質量当たりの塩基当量としてプロットされる。必要とされる該アルカリ性物質の量は以下の式に従って決定される:
所要アルカリ物質量=処理体積×嵩密度×所要塩基当量×lb(0.454kg)/塩基当量
【0035】
該処理ゾーンの体積は、上記の如く決定される。該地表下物質の嵩密度は、標準的なテスト手順により決定され、また典型的には約1,604〜約2,005kg/m3(100〜125lb/ft3)なる範囲で変動する。ターゲットpHを達成するのに要する該塩基当量は、上記した実験室テストにより決定される。以下の表1は、本発明のこの態様において使用し得る通常の固形アルカリ性物質に関する、平衡pH値及び単位塩基当量当たりの、純アルカリ性物質の量(kg(lb))を示す。
【0036】
【表3】

【0037】
本態様のプロセスにおいて使用する該アルカリ性物質は、以下の基準に基いて選択される:a) 平衡pH;b) 単位塩基当量当たりに要するアルカリ性物質の量(kg(lb));及びc) 該アルカリ性物質の単位量(kg(lb))当たりのコスト。該最適のアルカリ性物質は、該処理プロセスの所望pHよりも僅かに高い平衡pHを持つであろう。アルカリ性物質の混合物を使用することも可能である。
【0038】
本態様の該アルカリ性懸濁液は、微細粒状アルカリ性物質から調製される。使用可能な固形アルカリ性物質はMgO、Mg(OH)2、MgCO3、CaO、Ca(OH)2、CaCO3を含む。これらの物質は、微細な粒状形態として又は該地表下物質のメディアン孔径又は亀裂開口よりも小さな、メディアン粒径を与えるように特別に粉砕されたものとして購入し得る。特定のアルカリ性物質の選択は、該物質のコスト及びターゲットpHに基いている。例えば、MgO及びMg(OH)2の懸濁液は、生物学的改質用途において有用であるが、その理由は、これらの物質が、生物学的改質のための該ターゲットpHよりも僅かに高く、またこれらが、単位アルカリ量(kg(lb))当たりの大きな塩基当量を与えるからである。CaO及びCa(OH)2は、化学的処理プロセスにおける緩衝剤としてより有用である。というのは、これらの物質がより高いpH値をもたらすからである。CaO及びCa(OH)2は、生物学的改質用途においてはあまり有用ではないかもしれない。というのは、これらの物質によってもたらされる高いpH値が、微生物に対して悪影響を及ぼす恐れがあるからである。炭酸塩(MgCO3、CaCO3)は、現場での沈殿プロセスにおいて有用であり得る。しかし、その使用は、層の透過性に望ましからぬ影響を伴う、過度のガス生成をもたらす恐れがある。幾つかの場合において、該懸濁液は、付随的なアルカリ性又はより広いpH範囲を与えるように、液状又は溶解された塩基で改善することができる。ここで、添加することのできる液状又は溶解されたアルカリ物質は、NaOH、KOH、Na2CO3、NaHCO3、水酸化アンモニウム(NH40H)、炭酸アンモニウム((NH4)2CO3)、トリポリリン酸ナトリウム(NasP3O10)、二塩基性リン酸ナトリウム(Na2HPO4)及びリン酸三ナトリウム(Na3PO4)を含む。アンモニア又はリン酸塩を含む物質は、また無機栄養源として、生物学的改質用途において有益である。
【0039】
多くの場合において、本態様のための濃厚なアルカリ懸濁液は、当業者には周知の従来法で、製造設備において調製される。該懸濁液中の水の量は、輸送コストを減じるために最小化される。しかし、十分な量の水を与えて、該懸濁液を水和させ、また通常利用し得るポンプ及びミキサを用いたポンプ輸送及び混合処理を可能とすべく十分に低い粘度を維持する。この懸濁液は、また化学薬剤(アニオン性、カチオン性、及び両性/双性イオン性界面活性剤及び凝固剤)で改善して、該粒状物質の表面電荷を調節し、また凝集性を減じることができる。化学薬剤は、また該分散相の粘度を高める目的で添加して、該粒状物質の凝集及び/又は沈降を減じることも可能である。該粘度を高めるのに使用できる薬剤は、寒天、リグニン、アルギン酸塩、アロールート、カラギーナン、コラーゲン、コーンスターチ、デンプン、ゼラチン、グリセロール、カタクリ、ペクチン、タピオカ、アラビアゴム、グアーガム、ローカストビーンガム、キサンタンガム、デンプン誘導体及びセルロース誘導体を包含する。
【0040】
固体又は液体電子ドナー、電子アクセプタ、微生物成長因子、化学的酸化剤、化学的還元剤、及び安定剤を含む、その他の物質を該懸濁液に添加して、現場での処理プロセスの能力を増強し、結果的に現場での改質プロセスの能力を強化することができる。上記電子ドナーとして使用し得る有機物質は、短鎖、中鎖及び長鎖脂肪酸、糖、炭水化物、タンパク質、固形脂肪、液状オイル、乳化された油脂、及び他の生分解性有機物質を含む。上記電子アクセプタは、パーオキサイド、硝酸塩、亜硝酸塩及び/又は硫酸塩を含む。前記微生物成長因子は、無機栄養物、ビタミン、微量ミネラル、及びアミノ酸を含む。上記化学的酸化物は、水素、金属過酸化物、パーオキシジェン、過硫酸塩、過マンガン酸塩、及び他の酸化性化合物を含む。上記化学的還元剤は、反応性金属、モノスルフィド、ポリスルフィド、亜ジチオン酸塩及び他の還元性化合物を含む。上記化学的安定剤は、リン酸塩、化学的酸化剤及び化学的還元剤を含む。
【0041】
この態様に関連して、典型的には、粗製の懸濁液を、タンク又は反応釜内で一緒に上記物質を混合することにより調製する。その初期混合工程を促進するために、熱を適用することができる。次いで、この粗製懸濁液を、高エネルギー混合デバイスに通して、あらゆる液状又は固体粒子の粒径を減じる。利用可能な混合デバイスは、高剪断ミキサ、コロイドミル及び高圧ホモジナイザーを含む。該粒子径を減じるために、該混合デバイスに多数回に渡って通すことが必要とされる。一旦調製した後に、該濃厚な懸濁液は、ドラム、搬送用容器又は他の適当な容器に入れ、現場に搬送される。
【0042】
現場では、本態様によるこの濃厚な懸濁液は、注入に先立って水で希釈される。該濃厚な懸濁液の量は、該処理層のpHを、所定範囲まで高めて、現場での処理プロセスの能力を増強するのに十分なアルカリ性を与えるように選択される。該希釈に要する水の量は、該ターゲット処理ゾーン全体に渡り該懸濁液を分配し得るように選択される。好ましい一態様において、濃厚なアルカリ性懸濁液は、実際の使用に先立って、製造設備において調製され、次いで現地において水で希釈される。しかし、望ましい場合には、希薄又は濃厚な懸濁液は、現地にて製造することもできる。
【0043】
一旦該アルカリ懸濁液を調製した後、これを該地表下に注入する。該希薄懸濁液を、低圧下で注入して、該注入点から遠方に該懸濁液を、容易に分散することができる。該懸濁液を先ず水で希釈することにより、より少ない注入点を用いて、より広い区域及びより広範な影響領域を得ることができる。アルカリ物質の懸濁液は、ダイレクトプッシュロッドの端部を介して、一時的な約2.54cm(1インチ)ダイレクトプッシュウエルを介して、又は一時的な若しくは永続的な約5.08cm(2インチ)又は約10.2cm(4インチ)の従前の如く掘削されたウエルを介して注入することができる。該懸濁液は、また空気圧式又は油圧式破砕法を利用して注入することもできる。
【0044】
多数の製造業者等が、一時的な約2.54cm(1インチ)ダイレクトプッシュウエルの据付又はプローブロッドを介して該アルカリ物質の懸濁液を直接注入するために利用し得る、ダイレクトプッシュ式装置を提案している。1835 ウォールストリート,サリナ,カンザス67401(Wall St., Salina, Kansas 67401)に住所のあるジオプローブシステムズ(Geoprobe Systems)社は、改質製品の注入のための道具を製造販売している。この道具は、またアルカリ物質の懸濁液を注入するのに使用することもできる。該ジオプローブプレッシャー-アクチベーテッドインジェクションプローブ(GeoprobeTM Pressure-Activated Injection Probe)は、「トップダウン」又は「ボトムアップ」注入用の、約3.81cm(1.5インチ)又は約3.18cm(1.25インチ)プローブロッドの何れかを用いて、利用することができる。ジオプローブシステムズ社は、また注入用の該プローブロッドに封止接続を生成するための手段を与え、一方で該プローブロッドを引込める注入用プルキャップス(Pull Caps)を市販している。もう一つの方法は、消耗性駆動点チップ(expendable drive point tip)を用いた、該ジオプローブロッドを介して、該アルカリ物質の懸濁液を「ボトムアップ」方式で注入するものである。
【0045】
この態様に対する一時的対永続的注入点の選択は、サイト-特異的条件に依存し、該サイト-特異的条件は、水の深さ、掘削コスト、注入すべき流体の注入点当たりの流量及びその体積を包含する。注入計画は、最大の注入流量を与え、かつ該掘削コストを最小化するように、最適化されるべきである。
【0046】
再循環(地下水の回収及び再注入)を利用して、混合のための(飲料)水の利用可能な供給量に対する必要性を排除又は減じることができる。実施者は、地下水の再利用は、多くの州により規制を受けており、またその処理及び/又は取扱いに関する特定の要件が必要とされる可能性があることに注意すべきである。それにも拘らず、この態様における最も普通の方法は、1又はそれ以上のウエルから地下水をポンプで汲み上げて、1又はそれ以上の注入ウエルに、前記アルカリ性物質の懸濁液と共に、該地下水を注入することである。上記設計体積が達成され、あるいは現地でのpH測定が、該アルカリ性物質の懸濁液が該処理ゾーン全体に渡り分配されたことを示すまで、該注入プロセスを継続する。
【0047】
より低い透過性の層においてこの態様を利用する場合、油圧(水圧)式及び空気圧式亀裂生成法を利用して、該注入点から遠方にまで及ぶように、該アルカリ懸濁液の分配性を高めることができる。油圧式の亀裂は、流体が短期間(時間)に渡り高圧下で、ウエルにポンプ式に送込まれた場合に生成され、結果的に該層に割れを生成し、又は亀裂を生じるのに十分なダウンホール(downhole)圧を発生する。該懸濁液又は幾つかの特別な高い粘度を持つ流体添加剤を含む水を、該高圧流体として使用できる。ポンプ圧を解除した際の該亀裂の閉塞を防止するために、砂又は他の粗製粒状物質等の支持剤を、該層にポンプ式に送込んで、高い透過性を持つ砂の面を生成することができ、またこの面を介して流体を流動させることが可能である。このプロパガント(propagant)は、一度該油圧が解除されると所定位置に留まる。これは、該亀裂を開放状態に維持することを可能とし、また上記地表下における流れを増強する。
【0048】
この態様を空気圧式亀裂生成において利用する場合、ガスを、短期間(時間)に渡り高圧下で、ウエルにポンプ式に送込んで、該層に割れを生成し、又は亀裂を生じるのに十分なダウンホール圧を発生させる。該ガスは、土壌/岩石界面に存在する自然なその場での圧力を越える圧力、及び該地表下物質の自然な透過度を越える流動体積にて、該地表下物質に注入される。
【0049】
本発明は、水源域処理、水柱処理、及び透過性で反応性のバリヤ(PRB)構成を含む、該地表下における様々な構成において実施し得る。本発明のこの態様を利用する水源域及び水柱処理は、上記アルカリ懸濁液を分配させかつ該水源域又は水柱の一部における関連する矯正を行って、汚染物質を分解し、及び/又はその移動度を減じることを含む。PRBは、一般的に、地下水の流れに対して垂直になるように、アルカリ性固体を分布させることにより生成し得る。地下水は該PRBを通過するので、そのpHは増大し、該汚染物質の分解及び/又は固定化を増強する。
【0050】
該懸濁液及び他の添加剤の注入が完了した後、「本発明」は、更なる操作及びメンテナンスなしに作用する。該アルカリ性固体は、徐々に溶解して、pHを好ましい範囲に高め、かつ汚染物質の分解及び/又は固定化能を増強する。様々な地表下処理プロセスの能力を増強するための、本発明のこの態様の様々な実施形態を、以下に説明する。
【0051】
上記層のpHを約8〜約9.5SUなる範囲の値に高めるために、5μm未満、好ましくは3μm未満のメディアン粒径を持つ微細粒状Mg(OH)2を含有する濃厚な懸濁液を調製するが、これは、約40〜約60%なる範囲のMg(OH)2、約0.2〜約2.0%なる範囲のキサンタンガム、及び約0.1〜約1.0%なる範囲のナトリウムカルボキシメチルセルロースを含み、またその残部は、水で構成される(全ての%は、該懸濁液全質量を基準とする質量%である)。物理的に解凝集するために、1〜10回、好ましくは3回に渡り、約6.89〜約34.5MPa(1000〜5000psi)なる範囲、好ましくは約17.2MPa(2500psi)なる圧力下で、該懸濁液を、APVゴーリンホモジナイザー(APV Gaulin Homogenizer)に通す。この生成した懸濁液を、ドラム、搬送容器又は他の容器に入れ、使用のために野外現場に輸送する。該野外現場において、1容量部の濃厚な懸濁液を約4〜約40部の水で希釈し、この希釈された懸濁液を、上記地表下物質に注入する。該最終的な希薄懸濁液における該濃厚懸濁液対水の比は、上記pHを高めるのに要する塩基当量を決定するために、既に上で述べた計算に基いて決定される。該層のpHを約9.5〜約11SUなる範囲の値まで高めるためには、Mg(OH)2の代わりに、Ca(OH)2を用いて該懸濁液を調製する。一旦該層が十分な懸濁液で処理されて、そのpHが所望レベルに高められたら、徹底的に該汚染物質を処理するために、好気的生物学的改質、嫌気的生物学的改質、化学的な酸化、化学的な還元、固定化又は必要により他の適当な方法等の、その後の改質技術を適用する。
【0052】
pHを調節し、かつ本態様に従って有機物質で改善することにより、嫌気的生物分解性を刺激するために、約5μm未満、好ましくは約3μm未満のメディアン粒径を持つ微細な粒状のMg(OH)2を含み、また約40〜約60%なる範囲の量のMg(OH)2、約0.2〜約2.0%なる範囲の量のキサンタンガム、及び0.1〜1.0%なる範囲のナトリウムカルボキシメチルセルロースを含み、その残部が、水からなる濃厚な懸濁液を調製する(ここで、全ての百分率は、該懸濁液の全質量を基準とする値である)。該濃厚懸濁液と、約60%の大豆油、約4%のラクテート又は乳酸、10%の乳化剤、約2%のアミノ酸抽出物を含み、残部が水である、調製された乳化オイル濃厚物とブレンドする(ここで、全ての百分率は、該懸濁液の全質量を基準とする値である)。生物学的改質用の大豆油エマルションの製造方法は、エマルション製造技術の当業者には公知であり、またBorden&Lee (米国特許第6398960号)によって記載されている。約60容量%の大豆油エマルションと、約40容量%のMg(OH)2懸濁液とをブレンドする。このエマルション-懸濁液混合物を、1〜10回、好ましくは3回、コロイドミル又は高圧ホモジナイザーに通す。得られた懸濁液をドラム、搬送用容器又は他の容器に入れ、使用のために野外の現地に輸送する。該野外の現地において、1容積部の該濃厚懸濁液を、約4〜約40部の水で希釈し、得られた希薄懸濁液を上記地表下物質に注入する。注入すべきMg(OH)2の全量は、該pHを所望の範囲まで高めるに要する塩基の当量によって決定される。追加の有機基質が必要とされる場合には、該濃厚なエマルション-懸濁液混合物を、該現地における追加のエマルション濃厚物で希釈することができ、あるいは第二回目の注入を行って、追加の基質を供給することができる。
【0053】
本発明のこの態様の特徴は、以下の実施例を参照することによって、より一層明確に理解されるであろう。ここで、以下の実施例は、本発明又はその任意の態様を限定するためのものではない。
実施例1:帯水層のpHの緩衝作用に関する現地での立証
【0054】
パイロット研究を行って、典型的な水源域におけるトリクロロエチレン(TCE)の生物学的改質のための、乳化されたオイル基質(EOSTM)の使用につき評価した。該サイトにおける地下水までの深さは、地表下(bgs)約1.83m(6ft)であった(ft bgs)。該サイトにおける該地表下物質は、約1.53m〜約2.44m(5〜8ft)なる範囲のシルト質砂を含むクレイからなり、その下部には約2.44m〜約3.05m(8〜10ft)なる範囲のシルト質の砂があり、高密度のクレイが、約4.88m(16ft) bgsの下部封止層(lower confining layer)として機能している。この領域の水圧勾配は低く(約0.001cm/cm(ft/ft))、また地下水の速度も低かった(約1.53m/年(yr)(約5ft/年))であった。水の伝導率(透過係数)は約30.5〜91.5cm/d(1〜3ft/d)なる範囲で変動した。TCEの嫌気的生物分解性を刺激する目的で、乳化オイル単独の使用による効果を評価するために、フィールドパイロットテストを、このサイトにおいて以前行った。しかし、以前のこのパイロットテストは、その処理ゾーンのpHが低いことから不首尾であった。最初の該乳化オイル注入の15カ月後に集められた地表下物質サンプルのpHは、4.2〜5.2SUなる範囲で変動することが分かったが、これは還元的脱塩素化に対する最適値に満たない値である。
【0055】
次いで、この態様に従う本発明を、該サイトにおいて使用して、この低pHの問題を軽減し、しかも追加の有機基質を供給して、TCE生物分解性を刺激した。様々なアルカリが上記帯水層のpHを高めるものと考えられ、該アルカリは、Ca(OH)2、Mg(OH)2、NaOH、NaHCO3、及びNa2CO3を含む。好ましいアルカリ性物質は、約0.454kg(1 lb)当たりかなりのアルカリ性を与えるであろうが、該注入点近傍の過度に高いpHをもたらすことはない。Ca(OH)2、NaOH及びNa2CO3は、12又はそれ以上の最大pHを持ち、該注入点近傍の極めて高いpHのために毒性をもたらす。これとは対照的に、NaHCO3は、最適値近傍(7〜8)のpHに緩衝するであろうが、NaHCO3は、約0.454kg(1 lb)当たり最も低いアルカリ性をもたらす。また、酸性帯水層へのNaHCO3の添加は、多量のCO2の放出をもたらし、これは。該帯水層の閉塞を引起すであろう。
【0056】
各薬剤の諸特性に基いて、Mg(OH)2が、pH緩衝剤として選択された。純粋なMg(OH)2のpHは約10SUであり、従って該帯水層の大部分のpHは、6〜8なる範囲で変動するものと予想され、これは生物分解にとって最適な値である。また、Mg(OH)2の添加は、より少量の注入すべき物質を必要とし、またCO2の放出をもたらすことはないであろう。
【0057】
上記パイロットテストサイト由来の帯水層の沈降物を、変動する量のMg(OH)2によって修正し、また24時間に渡り平衡化して、該pHを様々な値に高めるのに必要な塩基の当量を決定した。図1は、Mg(OH)2の量を高めることにより達成されるpHを示す図である。これらの結果は、沈降物1Kg当たりの塩基の当量で示されている。これらの結果に基いて、該パイロットテスト領域のpHを高めるのに要するMg(OH)2の量を算出した。
【0058】
約1,602kg/m3(100 lb/ft3)なる沈降物嵩密度を持つ、約6.1m×約6.1m×約3.05m(20ft×20ft×10ft)なる処理体積全体の均一な混合状態を仮定して、約16,000塩基当量が、該パイロットテスト領域のpHを約7〜8SUなる範囲の値まで上げるのに必要とされるであろう。これは、約454kg(1,000 lb)の純粋なMg(OH)2に等価である。該サイトにおける元の乳化オイル注入時点以来約2年が経過した時点で、追加の乳化オイル注入を行って、還元的脱塩素化のために利用し得る有機炭素量を高めるべきであることが決定された。
【0059】
以下の2種の処方物を調製した:
1. 大豆油、水、乳酸、乳酸ナトリウム、酵母抽出物及び食品グレードの界面活性剤を一緒に混合して、粗製エマルションを製造した。次いで、このエマルションを、コロイドミルに通して、小さく均一な液滴を含む微細なエマルションを生成した。次に、このエマルションを、3μmなるメディアン粒径を持つMg(OH)2スラリー製品(62質量%のスラリー)と、60容量%の大豆油エマルション:40容量%のMg(OH)2スラリーなる比にて混合した。次いで、この混合物を、コロイドミルに繰返し通し、一方で粒径及び懸濁液の諸特性における変化について監視した。該コロイドミルに5回通した後、安定な懸濁液が得られ、また該混合エマルション-懸濁液を、輸送用のドラムに詰めた。この物質は、最終pH9.3及び1,130kg/m3なる密度を有していた。
2. 1μmなるメディアン粒径を持つ粉末化Mg(OH)2を、数日間に渡り、水(即ち、1部の粉末対2部の水なる割合で)で水和させた。次いで、該水和された粉末を、上記の如くして調製した大豆油エマルションと混合した。次に、この混合物を繰返しコロイドミルに通し、一方で粒径及び懸濁液の諸特性を監視した。該コロイドミルに5回通した後、安定な懸濁液が得られ、また該混合エマルション-懸濁液を、輸送用のドラムに詰めた。この物質は、最終pH9.3及び1,099kg/m3なる密度を有していた。
【0060】
該Mg(OH)2/大豆油懸濁液を、19か所に及ぶダイレクトプッシュ注入点(IP)を介して注入した。該注入点は、以前の不首尾に終わったパイロット研究の際に使用した注入点間のほぼ中央部に位置していた。該注入は、約3.175cm(1.25インチ)プローブロッドを備えた、ジオプローブ(GeoprobeTM)プレッシャー-アクチベーテッドインジェクションプローブ(Pressure-Activated Injection Probe)を通して行った。該濃厚な懸濁液を、先ず大きなタンク内で、水道水を用いて、約1部の濃厚物対4部の水なる比にて、希釈した。次いで、該希釈された懸濁液を、消耗型駆動点チップを用いて、ジオプローブ(GeoprobeTM)ロッドを介して5「ボトム-アップ」から、加圧下で注入した。
【0061】
注入は、約4.88m bgs(16ft bgs)まで掘削し、上記混合物を直接該ジオプローブロッドを介して注入することにより行った。最初のプランは、10の標準的なゾーン[約1.83m〜約4.88m bgs(6〜16ft bgs)]に渡り均一に分布した流体となるように、全体で約82.5L(22gal)の該混合物を、次いで約75.8〜約303.2L(20〜80gal)なる範囲のチェースウォータを注入することであった。しかし、地下水は、該混合物との置換により、モニタウエル及び地表から押出されることが観測された。このために、各点において注入することのできる該混合物の量は変動し、また該注入は2つの別々の段階で行われた。該第二の段階中に、該注入物の多くは、水の伝導率(透過係数)が最大となる深さにおいてのみ起り、これは、殆どの注入点に対して、約3.97〜約4.88m bgs(13〜16ft bgs)なる範囲であった。
【0062】
以下の表2及び3は、各点において注入された混合物及びチェースウォータの量に関する詳細を示す。
【0063】
【表4】

【0064】
【表5】

【0065】
約1,236L(約326 gal(3,050 lb))のMg(OH)2/大豆油懸濁液を、約3,220L(850 gal)の水と共に、約454kg(約1,000 lb)の純Mg(OH)2を含む帯水層に注入した。土壌の掘削物を、上記最初の注入前及びその3カ月後に、速やかに集めて、どの程度良好に、該Mg(OH)2/大豆油懸濁液が該帯水層に緩衝作用を及ぼすかを決定した。
以下の表4は、注入前後に各深さにおいて集めたサンプルにおける平均pHを示す。注入前には、該pHは、該処理ゾーンの80%において5.5未満であった。この低いpHは、極めて適切にTCEの還元的脱塩素化を阻害した。注入後に、該pHは、該処理間隔の80%において、還元的脱塩素化にとっての最適pH範囲である、6.4〜8.0なる範囲まで増大した。該処理間隔の上部20%において、該pHは、0.5〜0.6pH単位だけ増大した。しかし、これは依然として最適範囲以下であった。このゾーンにおける注入は、あまり有益な効果を示さなかったが、それは、この深さにおける土壌の低い透過性が、十分な物質の注入を阻止したからである。
【0066】
【表6】

【0067】
該モニタウエル及び該パイロットテスト領域内の注入ウエル及び3か所のアップグラジエント(upgradient)の未処理ウエルにおける平均pHは、図2に示されている。該テストの最初の400日間に渡り、該モニタウエルにおけるpHは、約6であり、一方で該注入ウエル内のpHは、5又はそれ以下であった。しかし、約700日目までに、該モニタウエルにおけるpHはほぼ5まで低下し、また該注入ウエルにおける平均のpHは、4未満であった。860日目と880日目との間において、該Mg(OH)2/大豆油懸濁液を注入したところ、該注入ウエルにおいては、6までのpHにおける明確な増加をもたらし、また該モニタウエルにおける8を越えるpHは、該パイロットテスト領域内で、還元的脱塩素化のための良好な条件を生出した。
【0068】
現地モニターのデータは、pHの増大に従い、また該増大の結果として、所望の生分解反応が、効果的なレベルで起ることを示した。
実施例2:危険な廃棄物サイトにおける、現場での好気性及び嫌気性の生物学的改質能を改善するためのpH調節
【0069】
大きく危険な廃棄物サイトは、芳香族炭化水素(ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン)、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン異性体、アセトン、メチルエチルケトン、4-メチル-2-ペンタノン、1,1,1-トリクロロエタン、cis-1,2-ジクロロエテン、クロロホルム、1,2-ジ-クロロエタン、1,1-ジ-クロロエタン、塩化メチレン、テトラクロロエテン、及びトリクロロエテンを包含する有機汚染物質の複雑な混合物により汚染されていた。実験室的な小領域の研究は、これらすべての汚染物質が、連続した好気的-嫌気的処理プロセスを利用して、生物分解することができることを立証した。しかし、該好気的段階中に、該小領域のpHは5又はそれ以下に低下し、生物分解が低下した。
【0070】
該沈降物のメディアン孔径よりも小さなメディアン粒径を持つMg(OH)2懸濁液を、該サイトに注入して、該帯水層のpHを7〜8なる範囲に高めることによって、生物分解プロセスを、該サイトにおいて増強することができた。次いで、固形酸素放出物質(カルシウム又はマグネシウムパーオキサイド)の注入、溶解酸素又は過酸化水素を含む水性溶液の再循環、空気散布、脱水とこれに続くバイオベンティング(bioventing)を含む様々な方法によって、酸素を供給することができる。一旦、該好気的に生物分解可能な汚染物質が、減じられた後には、嫌気的生物分解プロセスは、液状有機基質又は乳化されたオイルを注入することにより増強された。
実施例3:石油放出地域における、増強された減衰作用を得るためのpH調節
【0071】
ガソリン及び他の石油放出物に関連する通常の地下水汚染物質は、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン(BTEX)、1,2,4-及び1,3,5-トリメチルベンゼン、n-ブチルベンゼン、n-プロピルベンゼン及びナフタレンを含む。これら化合物全てが、好気的及び/又は嫌気的条件の下で、容易に生物分解され得ることは公知である(Borden, 1994)。多くの実験室及び現地での研究が、これらの汚染物質が「自然減衰(Natural Attenuation)」と呼ばれる過程を通して、ヒトの介在なしに生物分解可能であることを示している。しかし、低pH条件は、この自然減衰を緩慢にし、若しくは停止させる恐れがある。
【0072】
自然減衰過程は、上記帯水層に低溶解度のアルカリ固体を注入して、そのpHを高め、結果として石油を由来とする炭化水素の生物分解に対してより適した条件を与えることにより増強できた。該固体は長期間に渡り徐々に溶解するので、長寿命のアルカリ源を与え、そのため中性又は弱アルカリ性pHをもたらし、しかも該生物分解過程を強化するであろう。十分な量のアルカリ固体を注入して、該地下水の水柱の全寿命に渡り持続させれば、如何なる追加処理の必要性も排除されるであろう。該アルカリ固体は、該帯水層物質のメディアン孔径よりも小さなメディアン粒径を持つ、水性懸濁液として調製され、また一連の永続的な又は一時的なウエルに注入されるであろう。これらのウエルは、上記汚染物質源の領域内に又は地下水の流れに対して直交する汚染物質を含む水柱を横切るバリヤ形状で位置するものであり得る。
実施例4:水源領域及びバリヤにおける金属の固定化
【0073】
鉄(Fe)、マンガン(Mn)、チタン(Ti)、バナジウム(Va)、クロム(Cr)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、モリブデン(Mo)、銅(Cu)、銀(Ag)、亜鉛(Zn)、カドミウム(Cd)、水銀(Hg)、及び鉛(Pb)を含む様々な金属が、望ましからぬ濃度にて地下水中に存在する可能性がある。これら物質は、金属加工作業、酸性鉱山由来の排液、天然鉱物の溶解及び多数の他の源を含む様々な源から地下水に入り込む可能性がある。これら金属は、低pHの酸性条件下で、最も移動性が高い。しかし、中性乃至塩基性pHにおいて、これら金属は、不溶性の金属水酸化物、金属炭酸塩の生成及び/又は金属酸化物表面上での収着を通して、溶液から除去される可能性がある。結果として、これら金属に関連する移動性及び危険性は、アルカリ性固体を添加してpHを高め、かつ高いpHを維持するための長期間作用するアルカリ源を与えることにより、減じることができる。
【0074】
地下水面の上下における源領域は、その沈殿物のメディアン孔径よりも小さなメディアン粒径を持つCa(OH)2の水性懸濁液を調製することにより処理することができる。この懸濁液を、キサンタンガム及びナトリウムカルボキシメチルセルロースで改良して、該分散相の粘度を、3〜10cPなる範囲の値まで高める。この粘度における増加は、Ca(OH)2粒子の迅速な沈降を防止し、一方で殆どの地質層への注入を容易にするのに十分な低い粘度を維持するのに十分なものである。該水性懸濁液は、次いで約17.23MPa(2,500psi)なる圧力にて、高圧ホモジナイザーに3回通して、該懸濁液を解膠させた。次に、この懸濁液を、一連の永続的又は一時的注入ウエルを介して上記地表下に注入した。
【0075】
該注入すべき水の量は、該処理ゾーンの寸法及び該地質層の有効多孔率に基いて決定される。該注入すべきCa(OH)2の量は、この態様においては、以下の方法によって選択される。先ず、該改質法のターゲットpHは、不溶性金属水酸化物の沈殿及び天然に産する無機物質に対する高い収着により、該金属の濃度を許容レベルまで減じるように選択される。第二に、地下水及び層のサンプルを、NaOHによって滴定して、該ターゲットpHに至るのに必要な、塩基のミリ当量で表された量を決定する。第三に、該ミリ当量で表されたNaOHの量を、必要とされるCa(OH)2の量に変換する。追加のCa(OH)2を与えて、該処理法の設計寿命に渡り、該処理ゾーンにもたらされる酸性度を評価する。Ca(OH)2対水の比は、この態様においては、通常1:100〜1:10なる範囲にある。しかし、この範囲外の比も、該水及び地質物質の酸性度に依存して必要とされる可能性がある。上記方法の有効性を高める目的で使用し得る、水酸化物(Ca(OH)2及びMg(OH)2)及び炭酸塩(NaHCO3、CaCO3及びMgCO3)の混合物の注入を含む様々な改良がある。
【0076】
望ましからぬレベルの金属を含有する地下水の溶解した水柱は、透過性で反応性のバリヤを形成することにより、その場で処理することができる。この方法において、一群の一時的又は永続的なウエルは、地下水の流れに対して垂直にかつ該水柱を横切って伸びるように設けられる。アルカリ性固体と水との懸濁液を、各ウエルを介して注入する。該アルカリ性固体は、流動する水によって該ウエルから遠方に搬送され、また該層全体に渡り分配され、高いpHを持つゾーンを与える。地下水がこの高pHゾーンを介して流動する際に、上記金属は不溶性金属水酸化物、炭酸塩として沈殿し、又は自然界に存在する無機物質の表面に収着する。注入される該水の量は、前記注入ウエルの回りの、所望の影響を受ける領域の半径全体に、該懸濁液を分配するように選択される。該アルカリ性固体の量は、該地質層及び該バリヤを介して流動する任意の地下水のpHを、該系の設計寿命に渡り調節するように選択される。
実施例5:高pHで活性化された化学的酸化
【0077】
高いpHとの組合せで過硫酸塩を使用して、広範囲に及ぶ有機化学的な汚染物質を、その場で処理することができる。該汚染物質は、塩素化されたエテン、エタン、及びメタン、単核-及び多核-芳香族炭化水素、酸素処理物質、石油炭化水素、クロロベンゼン、フェノール、殺虫剤、除草剤、ケトン及びポリクロロ化ビフェニルを含む(FMC, 2006; Block等, 2006, 米国特許出願第2006/0054570号)。しかし、前記地表下における高いpHの達成は、多くの地表下物質の強力な緩衝能力のために困難である可能性がある。
【0078】
汚染された地表下ゾーンは、本発明の本態様に従って、2-段階法を用いて処理することができた。先ず、該ゾーンの沈降物のメディアン孔径よりも小さなメディアン粒径を持つCa(OH)2の水性懸濁液を該処理ゾーン全体に渡り分配させた。十分なCa(OH)2を注入して、該pHを少なくとも10.5まで高めた。次いで、モノ過硫酸塩及び/又はジ過硫酸塩を含む溶液を、同一のウエルを用いて分布させる。該Ca(OH)2により発生するこの高いpHは、該過硫酸塩を活性化し、結果として該ターゲット汚染物質の迅速な酸化を伴って、サルフェートラジカルを生成する。汚染物質の濃度が、経時に伴って再度上昇した場合には、追加の過硫酸塩を、追加のCa(OH)2添加を必要とすることなしに、注入することができる。
実施例6:金属過酸化物処理ゾーンのその場での生成
【0079】
Looney等(2007, 米国特許第7160471号)は、金属過酸化物のその場での製造方法を記載しており、そこでは、天然に産する又は人工的なアルカリ土類金属が、強力な酸化性遊離基によって処理される。該金属過酸化物は、次に経時的に徐々に分解して、酸素を放出し、結果的に好気的生物分解過程を刺激し、及び/又は該過酸化物は、酸化条件を維持して、幾つかの種の金属を固定化する(Koenigsberg等, 1993, 米国特許第5264018号)。
【0080】
現場における処理ゾーンは、本態様によれば、Looney等(2007)により記載された方法の一態様を利用して生成することができ、ここでは、該ゾーンの沈降物のメディアン孔径よりも小さなメディアン粒径を持つCa(OH)2の水性懸濁液を、先ず該処理ゾーン全体に渡り分布させて、該ゾーンのpHを少なくとも10.5まで高める。次いで、モノ過硫酸塩及び/又はジ過硫酸塩を含有する溶液を、同一のウエルを用いて分布させる。該Ca(OH)2により発生するこの高いpHは、該過硫酸塩を活性化し、結果としてサルフェートラジカルを生成する。これらのサルフェートラジカルは、該Ca(OH)2及び他のアルカリ土類系物質を酸化し、結果として金属過酸化物及び他の酸化された無機物を生成する。これらの金属過酸化物及び酸化された無機物は、結果的に長期間に渡り作用する酸素源を与え、好気的生物分解過程を強化し、また幾つかの種の金属を固定化する。Looney等(2007)の発明を越える、この方法の重要な利点の一つは、該Ca(OH)2によってもたらされた該高いpHが、該金属過酸化物の分解速度を減じて、該処理ゾーンの稼働寿命を長くすることである。
(さらなる態様)
【0081】
上で述べた如く、本発明の態様は、安全で、低コストかつ効果的な組成物を提供するものであり、該組成物は、地表下処理ゾーンのpHを高め又は維持するために使用できる。これから論じるであろう態様の組成物は、固形アルカリ性物質、安定化剤及びその他の物質からなる。この組成物は、有機化合物、無機化合物、金属及び放射性核種の処理用の、広範囲に渡るその場での方法の性能を改善するのに利用でき、このような方法は、好気的及び嫌気的な生物学的改質、化学的酸化及び還元、及び安定化/固定化法を含む。該組成物は、圧密化されていない物質又は亀裂の入った岩石中の、汚染された土壌又は地下水、様々な構造を持ち、透過性で反応性のバリヤー(PRB)及び広い面積を持つ被覆面を含む地下水面の上又は下に添加することができる。
【0082】
本態様の組成物は、アルカリ性固体物質及び安定化剤を含み、ここで該組成物の平均、又はメディアン粒径は、0.1〜5μmなる範囲にある。好ましくは、該組成物は、2,000cP未満の粘度を持ち、また上記帯水層固体による粒子の保持率は、該粒子の有効表面電荷を変更することによって減じられる。
【0083】
前記ターゲット処理ゾーンのpHを選択された範囲内に高めることにより、数種の異なる処理プロセスの効力を高めることができ、このような処理プロセスは、嫌気性の生物学的改質、好気性の生物学的改質、化学的酸化、化学的還元、及び固定化を含む。これら異なる処理プロセスは、従って有機化合物、無機化合物、金属及び放射性核種を包含する様々な汚染物質の破壊及び/又は固定化能を増強するために利用することができる。本発明の好ましい方法は、該懸濁液を調製し、圧密化されていない物質又は亀裂の入った岩石中の、地下水面の上又は下における該ターゲット処理ゾーン全体に渡り、該懸濁液を分配することを含む。
【0084】
本発明の組成物は、表面電荷、凝集の程度及び沈降速度を調節して、圧密化されていない物質又は亀裂の入った岩石中の、地下水面の上又は下における地表下の処理ゾーンを介する該組成物の搬送及び分配を強化するように、処方される。該組成物の特徴及びこれらの特徴が、現時点において該組成物の性能を効率的に改善すると考えられる理由は、以下の通りである:1) メディアン粒径は、0.1〜5μmなる範囲にあって、孔空間を介する搬送中の沈降を減じ、しかもブラウン運動による前記地表下固体との衝突頻度を減じ;2) 該固体粒子表面は、該粒子と該地表下物質の負に帯電した表面との間の引力を減じるように処理され;3) 該組成物中の粒子は、該孔を閉塞する樹枝状物質を生成する恐れのある、大きなフロックを生成せず;4) 該組成物は粒子の沈降を減じ、結果的に該地表下物質中の搬送性を高めるように製造され;5) 該組成物は、貯蔵、輸送及び注入中の分離を減じるように製造され;しかも6) 該流体の粘度は、2,000cP未満であって、注入中の背圧が減じられる。該組成物の付随的に有利な特徴は以下に列挙するものを含む:1) 低コストであること;2) 単位質量当たりの酸中和能が大きいこと;3) 毒性が低いこと;4) 溶解前にかなりの距離に及ぶ搬送を可能とすべく、緩慢乃至穏やかな溶解性を持つこと;及び5) 処理目的を達するべく、適切な範囲に平衡pHを持つこと。
【0085】
ここで使用している用語としての平均粒径(メディアン粒径とも呼ばれている)の好ましい測定方法は、該粒子の50質量%がある小さな体積等価径(volume equivalent diameter)を持ち、かつ該粒子の50質量%が、ある大きな体積等価径を持つような、体積基準の(volume-weighted)メディアンを使用することである。メディアン孔径は、当業者には明らかなように、等価な方法で決定される。この方法は、例えばCoulibaly & Borden(2004)において示されており、該文献において、例えば表1は、この方法により算出されたD50を示しており、また図1は、積算質量を示しており、さらに該積算質量の50%に当たる点はこの算出法に基いて決定されたメディアン粒径であり、図2は、沈降物の孔の積算体積分率を示し、さらにその50%に当たる点は、この算出法に基いて決定されたメディアン孔径であるものと思われ、またエマルション液滴の積算体積分率を示す図5において、液滴全てが同一密度を持つ(真であると推定される)ものと仮定すると、結果として該積算体積分率は、積算重量分率と同等であり、またその50%に当たる点は、この算出法に基いて決定されたメディアン粒径であると考えられる。(これに対して、表3において簡単に言及されているメディアン値は、体積平均というよりも寧ろ算術平均であり、このことが、体積分率のグラフが、該文献の図5にプロットされている理由である)。本発明者は、この好ましい方法で、メディアン粒径を基にして測定された懸濁液が、本発明の目的にとって最適の結果を与えていることを確認した。
【0086】
本発明は、さらに前記組成物を上記の地表下物質に導入することにより、そのpHを高める方法をも含む。本発明を適用する典型的な方法は、以下の諸段階を含む:1) 処理ゾーンの寸法を決定する段階;2) 該処理目的を達成するのに必要なpHを選択する段階;3) 該pH値を該所定の範囲まで高めるのに必要なアルカリ性物質の量を決定する段階;4) アルカリ性懸濁液を製造する段階;及び5) 該地表下に該アルカリ懸濁液を注入する段階。
【0087】
該処理ゾーンのサイズ、即ち寸法は、該処理目標及び土壌及び/又は地下水サンプリングの結果に基いて決定される。例えば、該目的が水源領域を処理することである場合、地表下物質(土壌、帯水層沈降物又は岩石)のサンプルを、幾つかの異なる位置及び深さにおいて集め、これらを分析して、その汚染物質の濃度が許容レベルを越えているか否かを決定する。これら分析結果を、マップ又は断面図にプロットし、処理を必要とするゾーンを同定するのに使用する。該目的が、透過性で反応性のバリアを形成することにより、地下水水柱を処理することである場合、地下水のサンプルを、監視用ウエル又はダイレクト-プッシュ点から集めて、汚染物質濃度が許容レベルを越えているゾーンを定める。
【0088】
該処理目的を達成するのに必要なpHは、実施すべき処理プロセスに基いて決定される。好気的及び嫌気的処理プロセスのための最適なpHは、典型的に約6〜約8SUなる範囲にある。他の処理プロセスの最適pHは、各処理プロセスに関する公知技術から知ることができる。該最適pHは、また簡単な実験室テストで決定することも可能であり、該テストでは、a) 該地表下物質のpHを、通常の酸又は塩基を用いて、指定された範囲内の値に調節し;b) 該処理プロセスを適用し;及びc) 該汚染物質の破壊又は固定化能を、標準的な化学的アッセイを用いて監視する。次いで、このテストを異なるpHに対して、該処理の最適pHが決まるまで繰返す。
【0089】
該pHを所望の範囲まで高めるのに要する該アルカリ性物質の量は、好ましくは該処理ゾーン内の数か所に及ぶ位置から、地下水及び固形地表下物質のサンプルを集めることにより決定される。等価な部の地下水及び固形地表下物質で構成されるスラリーを調製し、変動する量のNaOH又は他のアルカリ性物質で改善する。次いで、該スラリーを、24時間かけて平衡状態とし、次にそのpHを測定する。次に、該pHを異なるレベルまで高めるのに要する該塩基の当量を示すグラフを作成する。これらの結果は、典型的には固形地表下物質の単位質量当たりの塩基の当量としてプロットされる。
【0090】
該組成物は、微粒子状の固形アルカリ性物質と安定化剤とから調製される。ここで使用できる該固形アルカリ物質はMgO、Mg(OH)2、MgCO3、CaO、Ca(OH)2、及びCaCO3を含む。これらの物質は、該組成物のメディアン粒径が、5μm未満となるように、微粒子形状として又は特別に粉砕された形状で購入することができる。このようなサイズを持つ粒子の使用は、保存、注入及び上記沈降物孔空間を介する輸送中の沈降性を減じるように作用する。これら固形アルカリ性物質の全ては、2を越える比重を持ち、このことは、適当な方法を用いて沈降を制御しない場合には、該沈降物孔内での該粒子の迅速な沈降をもたらす。
【0091】
特定のアルカリ性物質の選択は、該物質の価格及び前記ターゲットpHに依存するであろう。以下の表5は、平衡pH、塩基の単位当量当たりの純アルカリ性物質の量(g(lb))、及び本発明において使用し得る通常の固形アルカリ性物質の比重を示すものである。MgO及びMg(OH)2は、生物学的改質用途において有用である。というのは、これらの物質は該生物学的改質のターゲットpHよりも僅かに高い平衡pHを有し、またこれらは、アルカリの単位質量(lb)当たり、大きな塩基当量を与えるからである。CaO及びCa(OH)2は、化学的な処理プロセスにおいてより有用である。というのは、これらの物質が、より高いpHをもたらすからである。CaO及びCa(OH)2は、生物学的改質用途においてはあまり有用ではない。というのは、これらの物質によってもたらされる高いpHが、微生物に対して悪影響を及ぼす恐れがあるからである。カーボネート(MgCO2、CaCO2)は、その場での沈殿プロセスにおいて有用であり得る。しかし、これらの使用は、層の透過性に望ましからぬ影響を与える、過度のガスの生成をもたらす恐れがある。
【0092】
【表7】

【0093】
該組成物を製造するのに使用した該固形アルカリ性物質は、以下の基準に基いて選択される:a) その平衡pH;b) 単位塩基当量当たりの該アルカリ性物質の量(g(lb));及びc) 該アルカリ性物質の単位質量(lb)当たりの価格。最適なアルカリ性物質は、前記地表下物質において達成すべき、必要とされるpHよりも幾分高い平衡pHを持つであろう。アルカリ性物質の混合物も使用することができる。
【0094】
幾つかの場合において、該組成物は、液状又は溶解された塩基で改善して、付随的なアルカリ性を与え、あるいはより広いpH範囲を与えることができる。添加可能な該液状又は溶解されたアルカリ物質は、NaOH、KOH、Na2CO3、NaHCO3、水酸化アンモニウム(NH4OH)、炭酸アンモニウム((NH4)2CO3)、トリポリリン酸ナトリウム(Na5P3O10)、二塩基性リン酸ナトリウム(Na2HPO4)及びリン酸三ナトリウム(Na3PO4)を含む。アンモニア又はリン酸塩を含む物質は、また生物学的改質用途において、無機栄養分の源として有用である。
【0095】
該組成物は、その粒径、表面電荷、凝集の程度及び沈降速度が、圧密化されていない物質又は亀裂の入った岩石中の、地下水面の上又は下における地表下の処理ゾーンを介する該組成物の搬送及び分配を強化するように処方される。該組成物の特徴は、以下の通りである:1) 該固体粒子表面は、該粒子と該地表下物質の負に帯電した表面との間の引力を減じるように処理され;2) 該組成物中の粒子は、該孔内にトラップされる恐れのある、大きなフロックを生成せず;及び3) 該組成物は粒子の沈降を減じ、結果的に該地表下物質中の搬送性を高めるように製造される。
【0096】
殆どの場合において、該組成物は、当業者には周知の従来法に従って、製造設備において製造される。該組成物中の水の量は、輸送コストを節減するために最小化される。しかし、該懸濁液を水和するために、十分な水を供給し、また通常使用されるポンプ及びミキサを用いた、ポンプによる汲出し及び混合を可能とするために、十分に低い粘度を維持する。前記アルカリ性固体は、1又はそれ以上の化学薬剤で改善して、a) 該アルカリ性粒子と地表下物質の負に帯電した表面との間の引力;及びb) 該組成物中の異なるアルカリ性粒子間の引力を減じる。これら目的両者の達成は困難である。というのは、該粒子と負に帯電した表面との間の引力を減じるための改善が、しばしば2種のアルカリ性粒子間の引力の増大を招くからである。以下に述べる方法は、これらの競合する目的を達成する上で効果的である。
【0097】
Mg及びCaを含む該アルカリ性固体は、該固体を、少なくとも10個の炭素原子を含む脂肪酸又は脂肪酸の塩、好ましくは16個の炭素原子を含むナトリウム又はカリウムオレエートで処理することにより安定化される。Mg及びCaオレエート両者は、極めて低い水溶性を持ち、従って該オレエートは、該アルカリ性固体表面で沈殿して、疎水性の表面を生成する。該オレエートで処理したアルカリ性固体の懸濁液は、次いでモノ-グリセライド、ジ-グリセライド、ポリソルベート、ソルビタンエステル、及びレシチンを包含する、当業者には周知の界面活性剤を使用して、安定化することができる。
【0098】
該アルカリ性固体を、植物オイルの層で被覆し、また水中油型エマルションとして製造して、該粒子の有効比重を、好ましくは1.4未満まで減じることにより、該固体の沈降性を減じる。該粒子の平均比重は、高密度のアルカリ性固体対該低密度のオイルの比を変更することにより調節される。粒子の平均比重は、該アルカリ性固体の体積分率×該アルカリ性固体の比重 + 該オイルの体積分率×該オイルの比重に等しい。例えば、2.0μmなるメディアン粒径を持つMg(OH)2アルカリ性固体は、4.83μmなるメディアン粒径を持つオイルの液滴中に封入して、7容量%のMg(OH)2及び93%の植物油からなり、1.00なる比重を持つ粒子を生成することができ、ここで該粒子は、前記沈降物孔空間内で浮遊することもあるいは沈降することもない。このエマルションは、当業者には周知の乳化剤で安定化され、またその所定のメディアン粒径が得られるまで、ホモジナイザー、高剪断ミキサ又はコロイドミルに通される。該オイル層の平均の厚みは、該組成物中のMg(OH)2固体対オイルの比によって調節される。
【0099】
該アルカリ性固体は、Ca(OH)2又はMg(OH)2の懸濁液に、マンガン、鉄又はアルミニウム金属の酸性溶液を添加することにより、これら金属の酸化物又は水酸化物の層で被覆される。これらの金属は該アルカリ性固体表面に沈殿して、アルカリ性条件下で負の表面電荷をもつ薄い表面層を生成する。この負の表面電荷は、粒子-粒子間衝突頻度、凝集及び沈降を減じる。同時に、該負の表面電荷は、天然に存在するマンガン、鉄及びアルミニウム酸化物及び水酸化物との衝突頻度を減じ、前記地表下物質の孔を介する搬送性を高める。この搬送性は、ポリリン酸塩の添加によってさらに高められ、結果として分散性及び搬送性が改善される。
【0100】
該アルカリ性固体は、ポリアクリレート及びポリスルホネート、好ましくは紙の製造中に製造されるリグノスルホネートを用いて安定化することができる。リグノスルホネートは、表面に多数のアニオン性の基を持つ、大きな有機物分子である。これらリグノスルホネートは、正に帯電した該アルカリ性固体表面に緩く結合して、該粒子の有効水和半径を増大し、また該結合したリグノスルホネート-アルカリ性粒子の有効比重を低下し、さらに負の表面電荷をもつ、新たな混合粒子を生成する。この負の表面電荷は、粒子-粒子間衝突頻度、凝集及び沈降性を減じる。同時に、該負の表面電荷は、天然に存在するマンガン、鉄及びアルミニウム酸化物及び水酸化物との衝突頻度を減じ、該地表下物質の孔を介する搬送性を高める。
【0101】
化学薬剤を該組成物に添加して、該分散相の粘度を高め、結果として該粒状物質の沈降傾向を減じることができる。しかし、最大粘度を2,000cP未満に抑制して、注入操作中の圧力における過度の増大を回避する必要がある。該粘度を高めるのに使用できる薬剤は、寒天、リグニン、アルギン酸塩、アロールート、カラギーナン、コラーゲン、コーンスターチ、デンプン、ゼラチン、グリセロール、カタクリ、ペクチン、タピオカ、アラビアゴム、グアーガム、ローカストビーンゴム、キサンタンガム、デンプン誘導体及びセルロース誘導体を含む。
【0102】
その他の物質を該組成物に添加して、その場での処理プロセスの能力を増強することができ、該他の物質は、固体又は液体電子ドナー、電子アクセプタ、微生物成長因子、化学的酸化剤、化学的還元剤、及びその場での改質プロセスの能力を増強する安定化剤を含む。電子ドナーとして添加することのできる有機物質は、脂肪酸、糖、炭水化物、タンパク質、固形脂肪、液状オイル、乳化された油脂、及び他の生物分解性の有機物質を含む。電子アクセプタは、過酸化物、硝酸塩、亜硝酸塩、及び/又は硫酸塩を含む。微生物成長因子は、無機栄養分、ビタミン、微量ミネラル、及びアミノ酸を含む。化学的酸化剤は、水素、金属過酸化物、パーオキシジェン、過硫酸塩、過マンガン酸塩、及び他の酸化性化合物を含む。化学的還元剤は、反応性金属、モノスルフィド、ポリスルフィド、亜ジチオン酸塩及び他の還元性化合物を含む。化学的安定剤は、リン酸塩、化学的酸化剤及び化学的還元剤を含む。
【0103】
典型的に、アルカリ性固体及び安定剤を含む粗製懸濁液は、これら物質をタンク又は反応釜内で一緒に混合することにより製造される。初期混合過程を補助するために、熱を適用することができる。次いで、この粗製懸濁液を、高エネルギー混合デバイスに通して、あらゆる液体又は固体粒子のサイズを減じる。ここで利用可能な混合デバイスは、高剪断ミキサ、コロイドミル及び高圧ホモジナイザーを含む。最終的に得られる組成物のメディアン粒径を、0.1〜5μmなる範囲まで減じるために、該粗製懸濁液を多数回に渡り、該混合デバイスに通すことが必要となる可能性がある。一旦製造した後に、該組成物を、輸送のためのドラム、搬送容器又は他の適当な容器に入れる。
【0104】
現地において、該組成物は、典型的に、注入に先立って水で希釈される。該組成物の量は、注入する層のpHを所定範囲内に高めて、現場での処理プロセスを増強するのに十分なアルカリ性を与えるように選択される。該水の量は、該ターゲット処理ゾーン全体に渡り該組成物を分配できるように選択される。好ましい態様において、該組成物は、予め製造設備内で製造し、次いで所定サイトにおいて水で希釈する。しかし、所望により、該組成物を所定の場所で製造することが可能である。
【0105】
該組成物は、様々な形態で、前記地表下物質に適用することができ、該形態とは、水源領域の処理、水柱の処理、及び透過性で反応性のバリア(PRB)形成を含む。水源領域及び水柱の処理は、該アルカリ性懸濁液及び関連する改良物を、該水源又は水柱の一部に分配して、その処理能力を増強する。PRBは、一般に地下水に対して垂直な一連のウエルを介して、該組成物を分配することにより形成し得る。地下水が該PRBを通過するにつれて、そのpHが増大し、そこに含まれる汚染物質の破壊及び/又は固定化能が強化される。
【0106】
該組成物の注入が完了した後、「本発明」は、更なる作業及びメンテナンスを必要とすることなしに作用する。該組成物中に存在する該アルカリ性固体は、徐々に溶解して、pHが好ましい範囲まで高められ、かつ汚染物質処理能力が増強される。
【0107】
様々な地表下処理プロセスの能力を強化するための本発明の好ましい態様を、以下において説明する。
【0108】
前記層のpHを約8〜約9.5SUまで高めるために、40〜60質量%なる範囲の量の、5μm未満好ましくは3μm未満のメディアン粒径を持つコロイド状Mg(OH)2粉末、及び0.1〜0.5質量%なる範囲の量の、水でペースト状に形成したオレイン酸カリウム、及び残部の水を混合することにより、アルカリ懸濁液からなる組成物を調製する。大きな反応釜内で、25-30℃にて混合し、次いで該懸濁液を、1〜10回好ましくは3回に渡り、約6.89〜約34.5MPa(1,000〜5,000psi)なる範囲、好ましくは約13.8MPa(2,000psi)なる圧力下で、APVゴーリンホモジナイザー(APV Gaulin Homogenizer)に通して、該懸濁液を物理的に解膠させる。この生成した懸濁液を、ドラム、搬送容器又は他の容器に入れ、使用のために現地サイトに搬送する。該現地サイトにおいて、1容量部の濃厚な懸濁液を、約4〜約40容量部の水で希釈し、この希釈された懸濁液を、前記地表下物質に注入する。該最終的な希釈された懸濁液における、該濃厚な懸濁液対水の比は、pHを高めるのに必要な塩基の当量で表した量を決定するために、上述した計算法に基いて決定される。該層のpHを、約9.5〜約11SUなる範囲内の値まで高めるために、Mg(OH)2の代わりにCa(OH)2を使用して懸濁液を調製する。一旦該層を十分な量の懸濁液で処理して、そのpHを所定レベルまで高め、その後の改質技術を適用して、完全に該汚染物質を処理する。ここで該改質技術は、好気的な生物学的改質、嫌気的な生物学的改質、化学的酸化、化学的還元、固定化又は必要とされる他の適当な方法を含む。
【0109】
該pHを調節し、また有機基質で改善することにより、嫌気的な生物分解性を刺激するために、先ず、3μm未満の平均径を持つ、1部のコロイド状Mg(OH)2粉末(MD州、バルチモアのマルチンマリエッタマグネシアスペシャルティーズ(Martin Marietta Magnesia Specialties)から入手できる)と、2〜4部の漂白し、精製された大豆油とをブレンドして混合物(Mix 1)を製造する。次いで、6〜12%の食品グレードのグリセロール、6〜10%のグリセロールモノオレエート、10〜15%のポリソルベート20及び残部を、反応釜内で混合した。次に、徐々に1部のMix 1を、激しく混合しつつ、2〜5部のMix 2に添加した。このエマルション-懸濁液混合物を、生成する組成物が、5μm未満なるメディアン粒径を持つに至るまで、コロイドミル又は高圧ホモジナイザーに1〜10回、好ましくは3回に渡って通す。該生成した懸濁液を、ドラム、搬送用容器又はその他の容器に入れ、使用するための現地サイトに輸送する。該現地サイトにおいて、1容量部の濃厚な懸濁液を、約4〜約40容量部の水で希釈し、この希釈された懸濁液を、上記地表下物質に注入する。注入すべきMg(OH)2の全量は、該地表下のpHを所望範囲まで高めるに要する塩基の当量で表した量によって決定される。追加の有機基質が必要とされる場合には、上記濃厚なエマルション-懸濁液を、現地で、追加のエマルション濃厚物で希釈するか、あるいは第二回目の注入を行って、追加の基質を供給することができる。
【0110】
上記更なる態様の説明に留意し、以下の追加の実施例を参照すると、本発明の特徴は、より一層明確に理解されるであろう。ここで、該追加の実施例は、如何なる本発明の局面をも限定するものと理解すべきではない。
追加の実施例
実施例7:Mg(OH)2懸濁液の調製
【0111】
Mg(OH)2粉末を用いた、アルカリ性懸濁液の1製法をここに説明する。アルカリ性懸濁液からなる組成物を、3μm未満の平均又はメディアン径を持つ、500gのコロイド状Mg(OH)2粉末(MD州、バルチモアのマルチンマリエッタマグネシアスペシャルティーズ(Martin Marietta Magnesia Specialties)から入手できる)と、20mLの40質量%オレイン酸カリウムペースト(MO州、セントルイスのシグマ-アルドリッチ(Sigma-Aldrich)から入手できる)及び500gの加温した水(25-30℃)を混合し、これを高速度にて5分間、卓上式ミキサでブレンドすることにより製造した。次いで、5gのポリソルベート20(イリノイ州、ガーニー(Gurnee)のランベントテクノロジーズ(Lambent Technologies)から入手できる)を添加し、高速度にてさらに5分間混合した。この懸濁液は、室温にて28日間に渡り安定であり、殆ど沈降を起こさず、また5μm未満のメディアン粒径を持つことが観測された。
実施例8:Ca(OH)2懸濁液の調製
【0112】
Ca(OH)2粉末を用いた、アルカリ性懸濁液の1製法をここに説明する。アルカリ性懸濁液からなる組成物を、2μm未満のメディアン径を持つ、500gのコロイド状Ca(OH)2粉末(MO州、セントルイスのミシシッピーライム(Mississippi Lime)社から入手できる)、0.05のノルリグ(Norlig) Aリグノスルホネート(WI州、ロスチャイルド(Rothschild)のボレガードリグノテック(Borregaard LignoTech)社から入手できる)及び500mLの水を混合し、これを高速度にて5分間、卓上式ミキサでブレンドすることにより製造した。この懸濁液は、室温にて28日間に渡り安定であり、殆ど沈降を起こさず、また5μm未満のメディアン粒径を持つことが観測された。
実施例9:Mg(OH)2懸濁液及び植物オイルの調製
【0113】
Mg(OH)2粉末及び植物オイルを用いた、本発明のアルカリ性懸濁液の1製法をここに説明する。アルカリ性懸濁液からなる組成物を数段階で調製した。段階1において、3μm未満の平均径を持つ、150gのコロイド状Mg(OH)2粉末(MD州、バルチモアのマルチンマリエッタマグネシアスペシャルティーズ社から入手できる)を、400gの漂白し、精製した大豆油に、穏やかに混合しつつ、徐々に添加して、混合物1(Mix 1)を製造した。段階2においては、2.36gの食品グレードのグリセロール、25gのグリセロールモノオレエート(イリノイ州、ガーニーのランベントテクノロジーズから入手できる)、及び38gのポリソルベート20(イリノイ州、ガーニーのランベントテクノロジーズから入手できる)を、303mLの水に添加し、卓上式ブレンダーで、高速度にて2分間に渡り混合して、混合物2(Mix 2)を生成した。段階3においては、Mix 1を高速度にて5分間、卓上式ミキサ内で、徐々にMix2に添加した。次いで、この混合物を、そのメディアン粒径が5μm未満となるまで、1又はそれ以上の回数に渡りコロイドミルに通した。得られた最終懸濁液は、室温にて28日間に渡り安定であり、殆ど沈降を起こさず、また5μm未満のメディアン粒径を持つことが観測された。
実施例10:Ca(OH)2懸濁液の調製
【0114】
Ca(OH)2粉末を用いた、本発明のアルカリ性懸濁液の1製法をここに説明する。アルカリ性懸濁液からなる組成物を、500gの、1μm未満のメディアン径を持つ、沈降炭酸カルシウムスラリー(MO州、セントルイスのミシシッピーライム(Mississippi Lime)社から入手できる)及び1gのFeCl3(PA州、ピッツバーグのフィッシャーサイエンティフィック(Fisher Scientific)社から入手できる)を混合し、次いで卓上ミキサ内で低速にて5分間ブレンドすることにより調製した。次に、この混合物を、0.1gのヘキサメタホスフェート(PA州、ピッツバーグのフィッシャーサイエンティフィック社から入手できる)を用いて改良し、高速度にてさらに5分間混合した。得られたこの懸濁液は、室温にて28日間に渡り安定であり、殆ど沈降を起こさず、また5μm未満のメディアン粒径を持つことが観測された。
実施例11:懸濁液輸送性の実験室的評価
【0115】
実験室テストを行って、本発明のアルカリ性懸濁液の輸送特性を決定した。約25.4cm(10in)(長さ)×約2.54cm(1in)(径)の透明なPVCカラムに、0.4mmなるメディアン粒径を持つ砂を詰め、また水で飽和させた。希釈された懸濁液を、4部の水と1部の上記実施例7において記載した濃厚な懸濁液とを混合することにより調製した。140mLの脱イオン(DI)水を、該カラムを介してポンプ輸送し、次いで140mLの該希釈された懸濁液、及び更なる140mLのDI水をポンプ輸送した。このカラムのポアボリュームは、約35mLであり、従ってこれは、4PVのDI水、4PVの懸濁液及び4PVのDI水のポンプ輸送と等価であった。該ポンプ輸送の終了時点において、該カラムを押出して、該カラム入口、中央部及び流出端部から沈降物サンプルを集めた。図3は、この実験全体に渡る該カラム流出物のpHにおける変動を示す。該流出物のpHは、該Mg(OH)2懸濁液の漏出中、ほぼ7から9以上に増大し、該懸濁液の注入が完了した後、十分に高いままである。図4は、該カラム実験全体に渡る、そのアルカリ度の分布を示すものである。全体で113meqなるアルカリ度又は全体の20%が、該懸濁液の注入及びDIの後-注入フラッシュの際に、該カラム流出物中に放出された。これらの結果は、代表的な砂を介する該組成物の極めて効果的な輸送及び該組成物のpH増加における有効性を立証している。
実施例12:塩素化された溶媒で汚染されたサイトにおける現地での応用
【0116】
工業用地における土壌及び地下水はトリクロロエチレンで汚染されている。該地下水のpHは5であり、これは、バクテリアによる該汚染物質の生物変換のための最適レベル未満である。濃厚な植物油及びMg(OH)2懸濁液を含むドラムを、上記実施例9に従って調製し、約208L(55-ガロン)容量のドラムに詰めて該サイトまで輸送した。該サイトにおいて、上記濃厚な懸濁液を、1:4及び1:20なる比にて水で希釈し、約1.52m(5ft)〜約6.1m(20ft)なる範囲の距離離れた、径約2.54cm(1in)のダイレクトプッシュウエルを介して、該帯水層に注入した。各ウエルを介して注入された該懸濁液及び水の体積は、該帯水層のpHを上記所定の範囲内に調節し、維持するのに要する、アルカリ性固体の量に基いて決定される。該注入された水の量は、該帯水層の多孔度、注入ゾーンの厚み及びウエルの間隔に基いて決定される。注入に伴って、より望ましいpHに達することにより、バクテリアの活性は高められる。
実施例13:軍用資材で汚染されたサイトにおける現地応用
【0117】
軍用資材製造プラントにおける土壌は、ローヤルデモリーションエクスクローシブ(Royal Demolition Explosive (RDX又はヘキサヒドロ-1,3,5-トリニトロ-1,3,5-トリアジン))で汚染されており、RDXで汚染された水柱を与え、これは、垂直方向の厚み約6.1m(20ft)、幅約45.7m(150ft)であり、RDXは、該帯水層を通してダウングラジエント(downgradient)で移動する。透過性で反応性のバリアを形成して、地下水の流れに対して垂直な中心部に、約4.57m(15ft)間隔で一列に並んだ10個のウエルを設けることにより、該RDXを処理した。Ca(OH)2懸濁液を詰めた40個のドラムを、上記実施例8に従って調製し、約208L(55-ガロン)容量のドラムに詰めて該サイトまで輸送した。該サイトにおいて、濃厚な懸濁液を詰めた4個のドラムを、1部の濃厚な懸濁液対20部の水なる比にて、水で希釈し、各ウエルに注入した。地下水は、該アルカリ性懸濁液-処理ゾーンを移動するので、そのpHは11を越える値にまで増大し、該RDXを、無害な最終生成物にまで分解した。
(更なる好ましい態様)
【0118】
以下の記載は、現時点において同様に好ましいと思われる本発明の態様に関するものである。
a. 少なくとも一つの圧密化されていない物質又は亀裂の入った岩石を含む処理ゾーン中の汚染された地表下物質を改質するための組成物であって、この組成物は、少なくとも以下の3種の成分を含む粒子の懸濁液を含み:ここでその第一の成分は、MgO、Mg(OH)2、MgCO3、CaO、Ca(OH)2及びCaCO3、及びこれらの任意の組合せからなる群から選択される少なくとも1種の固形アルカリ性物質からなり;第二の成分は、ポリアクリレート、ポリスルホネート、少なくとも10個の炭素原子を持つ脂肪酸又は脂肪酸の塩、植物オイル、ポリソルベート、ソルビタンエステル、レシチン、鉄塩、珪酸塩、リン酸塩、及びこれらの任意の組合せからなる群から選択され;及び第三の成分は、本質的に水からなり;該懸濁液は、0.1〜5μmなる範囲の平均粒径を持ち;該懸濁液は、2,000cP未満の粘度を有し;また該組成物は、有効量の懸濁液を含んでいて、該処理ゾーンにおける汚染された地表下物質のpHを選択されたレベルに調節する。
【0119】
b. 上記段落aに記載した組成物であって、該第二成分が、好ましくは該第一成分の0.1〜10質量%なる範囲の量で存在する該組成物。
c. 上記段落aに記載した組成物であって、該懸濁液の該第一成分が、本質的に10〜60質量%なる範囲の量のMg(OH)2からなり;該懸濁液の該第二成分が、本質的に該Mg(OH)2の0.1〜5質量%なる範囲の量の、少なくとも1種のオレイン酸又はオレイン酸の塩からなり、かつ該懸濁液の残部が、本質的に水からなる該組成物。
d. 上記段落aに記載した組成物であって、該懸濁液の該第一成分が、本質的に10〜60質量%なる範囲の量のCa(OH)2からなり;該懸濁液の該第二成分が、本質的に該Ca(OH)2の0.01〜1質量%なる範囲の量のリグノスルホネートからなり;及び該懸濁液の残部が、本質的に水からなる、該組成物。
【0120】
e. 上記段落aに記載した組成物であって、該懸濁液の該第一成分が、本質的に1〜20質量%なる範囲の量のMg(OH)2からなり;該懸濁液の該第二成分が、本質的に10〜50質量%なる範囲の量の植物油からなり;及び該懸濁液の追加の成分が、1〜10質量%なる範囲の量のノニオン性界面活性剤からなり;かつ該懸濁液の残部が、本質的に水からなる、該組成物。
f. 上記段落aに記載した組成物であって、該懸濁液の該第一成分が、本質的に20〜70質量%なる範囲の量のCaCO2からなり;該懸濁液の該第二成分が、本質的に0.2〜2質量%なる範囲の量のヘキサメタリン酸塩からなり;かつ該懸濁液の残部が、本質的に水からなる、該組成物。
【0121】
g. 少なくとも一つの、圧密化されていない物質又は亀裂の入った岩石を含む処理ゾーン内の汚染された地表下物質を改質するための組成物であって、該組成物は、以下に列挙する少なくとも3種の成分を含む、粒子の懸濁液である:その第一成分は、MgO、Mg(OH)2、MgCO3、CaO、Ca(OH)2及びCaCO3及びこれらの任意の組合せからなる群から選択される少なくとも一つの固形アルカリ性物質からなり;第二の成分は、ポリアクリレート、ポリスルホネート、少なくとも10個の炭素原子を持つ脂肪酸又は脂肪酸の塩、植物オイル、ポリソルベート、ソルビタンエステル、レシチン、鉄塩、珪酸塩、リン酸塩、及びこれらの任意の組合せからなる群から選択され;及び第三の成分は、本質的に水からなり;該組成物において、該懸濁液は、0.1〜5μmなる範囲の平均粒径を持ち;該懸濁液は、2,000cP未満の粘度を有し;また該組成物は、有効量の懸濁液を含んでいて、該処理ゾーンにおける汚染された地表下物質のpHを選択されたレベルに調節することを可能とし;該懸濁液の該第一成分対該懸濁液の該第二成分の質量基準の比は、該粒子の平均比重が1.4未満となるように調節されている。
h. ここに添付された特許請求の範囲に開示かつ説明されているようなその他の態様。該特許請求の範囲の全ては、本明細書において完全に記載されているものとして、参考としてここに組入れる。
【0122】
以上本発明を説明してきたが、本発明は、添付した特許請求の範囲からより一層良好に理解されるであろう。該特許請求の範囲を、本発明を非-限定的な様式で提示している本明細書に、参照することにより組入れる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つの圧密化されていない物質又は亀裂の入った岩石を含む処理ゾーンにおける、汚染された地表下物質を改善するための組成物であって、該組成物が、
少なくとも1種の以下に列挙する3種の成分:
MgO、Mg(OH)2、MgCO3、CaO、Ca(OH)2、及びCaCO3、及びこれらの任意の組合せからなる群から選択される少なくとも1種の固形アルカリ性物質からなる第一の成分;
ポリアクリレート、ポリスルホネート、少なくとも10個の炭素原子を含む脂肪酸又は該脂肪酸の塩、植物油、ポリソルベート、ソルビタンエステル、レシチン、鉄塩、珪酸塩、リン酸塩及びこれらの任意の組合せからなる群から選択される第二の成分;及び
本質的に水からなる第三の成分
を含む粒子の懸濁液を含み、
該懸濁液が、0.1〜5μmなる範囲の平均粒径を持ち、
該懸濁液が2,000cP未満の粘度を持ち;かつ
該組成物が、前記処理ゾーンにおける前記汚染された地表下物質のpHを、選択されたレベルに調節するのに有効な量の前記懸濁液を含むことを特徴とする、前記組成物。
【請求項2】
前記懸濁液の前記第一の成分対該懸濁液の前記第二の成分の質量基準での比を、前記粒子の平均比重が1.4未満となるように調節する、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
前記第二の成分が、前記第一の成分を基準として、0.1〜10質量%なる範囲の量で存在する、請求項1記載の組成物。
【請求項4】
さらに、寒天、リグニン、アルギン酸塩、アロールート、カラギーナン、コラーゲン、コーンスターチ、デンプン、ゼラチン、グリセロール、カタクリ、ペクチン、タピオカ、アラビアゴム、グアーガム、ローカストビーンガム、キサンタンガム、デンプン誘導体及びセルロース誘導体からなる群から選択される、前記懸濁液の粘度を高めるのに有効な化学薬剤をも含む、請求項1記載の組成物。
【請求項5】
前記懸濁液が、さらにNaOH、Na2CO3、NaHCO3、NH4OH、(NH4)2CO3、Na5P3O10、Na2HPO4及びNa3PO4からなる群から選択される、少なくとも1種のアルカリ性物質をも含む、請求項1記載の組成物。
【請求項6】
さらに、脂肪酸、糖、アルコール、炭水化物、タンパク質、固形脂肪、液状オイル、乳化された油脂、過酸化物、硝酸塩、亜硝酸塩、及び硫酸塩、無機栄養分、ビタミン、微量ミネラル、及びアミノ酸からなる群から選択される、少なくとも1種の生物分解過程の能力を増強するための、少なくとも1種の電子アクセプタ、ドナー、及び微生物成長因子をも含む、請求項1記載の組成物。
【請求項7】
さらに、過酸化水素、金属過酸化物、パーオキシジェン、過硫酸塩、過マンガン酸塩、モノスルフィド、ポリスルフィド、亜ジチオン酸塩、鉄塩及びリン酸塩からなる群から選択される、少なくとも1種の化学的酸化剤、還元剤及び安定化剤をも含む、請求項1記載の組成物。
【請求項8】
前記懸濁液の前記第一の成分が、本質的に10〜60質量%なる範囲の量のMg(OH)2からなり、
該懸濁液の前記第二の成分が、該Mg(OH)2を基準として0.1〜5質量%なる範囲の量の、少なくとも1種のオレイン酸又はオレイン酸の塩から本質的になり、かつ
該懸濁液の残部が、本質的に水からなる、
請求項1記載の組成物。
【請求項9】
前記懸濁液の前記第一の成分が、本質的に、10〜60質量%なる範囲の量のCa(OH)2からなり、
該懸濁液の前記第二の成分が、該Ca(OH)2を基準として0.01〜1質量%なる範囲の量の、リグノスルホネートから本質的になり、かつ
該懸濁液の残部が、本質的に水からなる、
請求項1記載の組成物。
【請求項10】
前記懸濁液の前記第一の成分が、本質的に、1〜20質量%なる範囲の量のMg(OH)2からなり、
該懸濁液の前記第二の成分が、10〜50質量%なる範囲の量の植物オイルから本質的になり、
該懸濁液の追加の成分が、1〜10質量%なる範囲の量の、ノニオン性界面活性剤から本質的になり、かつ
該懸濁液の残部が、本質的に水からなる、
請求項1記載の組成物。
【請求項11】
前記懸濁液の前記第一の成分が、本質的に、20〜70質量%なる範囲の量のCaCO2からなり、
該懸濁液の前記第二の成分が、0.2〜2質量%なる範囲の量の、ヘキサメタホスフェートから本質的になり、かつ
該懸濁液の残部が、本質的に水からなる、
請求項1記載の組成物。
【請求項12】
地表下物質のpHを高める方法であって、該方法が、懸濁液として処方された固形アルカリ性物質を、該地表下物質のpHを、選択されたレベルまで高めるのに有効な量で、該地表下物質に分配する工程を含み、該懸濁液のメディアン粒径が、5μm未満であることを特徴とする、前記方法。
【請求項13】
地表下物質のpHを高める方法であって、該方法が、
懸濁液を該地表下物質中に注入する工程;
ここで、該懸濁液は、液状オイル液滴、固体Mg(OH)2粒子を含み、かつ
該粒子は、5μm未満の平均粒径を持ち;及び
ターゲット処理ゾーン全体に渡り、該粒子を分配させる工程、
を含むことを特徴とする、前記方法。
【請求項14】
地表下物質のpHを高める方法であって、該方法が、
懸濁液を該地表下物質中に注入する工程;
ここで、該懸濁液は、オイルで被覆した固体Mg(OH)2粒子を含み、かつ
該粒子は、5μm未満の平均粒径を持ち;及び
ターゲット処理ゾーン全体に渡り、該粒子を分配させる工程、
を含むことを特徴とする、前記方法。
【請求項15】
地表下物質のpHを高める方法であって、該方法が、
懸濁液を該地表下物質中に注入する工程;
ここで、該懸濁液は、固体Mg(OH)2粒子又は固体Ca(OH)2粒子の少なくとも1種を含み、
該粒子は、5μm未満の平均粒径を持ち;かつ
該懸濁液は、さらに搬送性を高めるために、界面活性剤をも含み、及び
ターゲット処理ゾーン全体に渡り、該粒子を分配させる工程、
を含むことを特徴とする、前記方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−179595(P2012−179595A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−59355(P2012−59355)
【出願日】平成24年2月28日(2012.2.28)
【出願人】(509295882)ソリューションズ アイイーエス インコーポレイテッド (2)
【Fターム(参考)】