説明

土壌改良工法及び土壌改良材

【課題】アルカリ土壌の透水性を向上させると共に、建設発生土等のアルカリ土壌を建設現場において短期的に緑化土壌に改良することができる土壌改良工法及び土壌改良材を提供する。
【解決手段】植物が生育困難な程度に高濃度の塩化ナトリウムを含み、且つコロイド粒子を含むアルカリ性の土壌を通水により脱塩し、これを緑化土壌として再利用するための土壌改良工法であって、土壌にリン酸供給源及びカルシウム供給源を含有する中和剤を混合し、これらの混合物に通水処理を施す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物が生育困難な程度に高濃度の塩化ナトリウムを含み、且つコロイド粒子を含むアルカリ性の土壌(例えば、建設発生土等)を通水により脱塩し、これを緑化土壌として再利用するための土壌改良工法及び土壌改良材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高濃度の塩化ナトリウムを含み、且つコロイド粒子を含むアルカリ性の土壌(以下、単に「アルカリ土壌」という)については、これを緑化土壌として再利用する要請が高い。このように再利用することができれば、アルカリ土壌の廃棄量が減少して廃棄物の削減に寄与するとともに、緑化土壌が増加して環境改善が図れる。
【0003】
ところが、アルカリ土壌に含まれるアルカリ成分は植物の生育阻害を招くため、これを緑化土壌として再利用するには、pHを中性にする必要がある。そこで、アルカリ土壌に中和剤を添加することにより、緑化に適した土壌に改善するための技術がある(例えば、特許文献1等参照)。このような技術によれば、アルカリ成分による植物の生育阻害を緩和することが可能となる。
【0004】
また、アルカリ土壌には、高濃度の塩化ナトリウムが含まれているため、アルカリ土壌を中和するだけでは、これを緑化土壌として再利用するには不十分である。すなわち、高濃度の塩化ナトリウムは植物の生育阻害を招くため、アルカリ土壌を緑化土壌として再利用するには、アルカリ土壌に含まれる塩化ナトリウムを除去する必要がある。そこで、リーチング等の通水により、土壌に含まれる塩化ナトリウムを除去(脱塩)するための技術がある。このような技術によれば、塩化ナトリウムによる植物の生育阻害を緩和することが可能となる。
【0005】
さらに、アルカリ土壌には、コロイド粒子も含まれているため、リーチング等の通水を行うだけでは、これを緑化土壌として再利用するには不十分である。すなわち、アルカリ土壌に通水処理を施すと、土壌の透水性が低下してしまい、土壌に含まれる塩化ナトリウムの除去が不十分となる。従って、塩化ナトリウムによる植物の生育阻害を十分に緩和することができない。そこで、従来、アルカリ土壌の透水性を向上させるために、リーチングの際に改良補助剤として石膏を土壌に添加する技術がある。
【特許文献1】特開2000−119651号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このような従来の技術では、塩化ナトリウムを除去するには大量の通水を行う必要があり、アルカリ土壌の改良に長時間を要する。また、排水用の暗渠等のように常時水を流すことができる施設が必要となり、このような施設のない建設現場で発生した建設発生土を緑化土壌に再利用するには適していない。
【0007】
そこで、本発明者は、これらの問題がアルカリ土壌を通水により脱塩する際に土壌の透水性が低下してしまうことに起因することに鑑み、その原因を探求すると共に、その原因を除去することにより、アルカリ土壌の透水性を向上させることができる中和剤について研究開発を行った。その結果、アルカリ土壌を通水により脱塩する際に、アルカリ土壌に含まれるコロイド粒子が分散、膨潤し、土壌の間隙を塞いでしまうことが原因であることがわかった。すなわち、アルカリ土壌を通水により脱塩すると、塩化ナトリウムの濃度が低下すると共に、土壌は強アルカリ性を呈するようになり、アルカリ土壌に含まれるコロイド粒子が分散、膨潤し、土壌の間隙が塞がれて土壌の透水性が低下することがわかった。
【0008】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、アルカリ土壌の透水性を向上させると共に、建設発生土等のアルカリ土壌を建設現場において短期的に緑化土壌に改良することができる土壌改良工法及び土壌改良材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明は、植物が生育困難な程度に高濃度の塩化ナトリウムを含み、且つコロイド粒子を含むアルカリ性の土壌を通水により脱塩し、これを緑化土壌として再利用するための土壌改良工法であって、土壌にリン酸供給源及びカルシウム供給源を含有する中和剤を混合し、これらの混合物に通水処理を施すことを特徴とする。このような構成によれば、アルカリ土壌に含まれるコロイド粒子の分散、膨潤を抑制することができるようになるため、アルカリ土壌の透水性を向上させることが可能となる
上記のリン酸供給源として、過リン酸石灰、重過リン酸石灰、苦土過リン酸石灰、硫リン安系資材、リン硝安系資材のうち少なくとも1種以上を含有する化学肥料を用いることが好ましい。また、上記のカルシウム供給源として、石膏、硫酸カルシウム、貝殻、鉱滓のうち少なくとも1種以上を含有する化学肥料を用いることが好ましい。
【0010】
また、本発明は、土壌に該土壌粒子よりも粒径が大きく、保水性及び透水性が高い多孔質の無機質材を混合することとしてもよく、かかる無機質材として、例えば、パーライト、粘土焼成品のうち少なくとも1種以上を用いることが好ましい。このような構成によれば、 中和剤のみを単独で土壌に混合する場合と比べると、アルカリ土壌の透水性をよりいっそう向上させることが可能となる。
【0011】
また、本発明は、土壌に保水性及び保肥性が高い有機質材を混合することとしてもよく、かかる有機質材として、例えば、ミズコケが風化した泥炭、草炭、または、落ち葉、刈敷き、枝葉等の有機質が腐熟して完熟した堆肥のうち少なくとも1種以上を用いることが好ましい。このような構成によれば、中和剤や無機質材により土壌の透水性を向上させたとしても、植物の生育に必要な水分や栄養分は土壌から流れ出すことはなく土壌中に保持されるため、よりいっそう緑化土壌に適したものに改良することが可能となる。
【0012】
また、本発明は、植物が生育困難な程度に高濃度の塩化ナトリウムを含み、且つコロイド粒子を含むアルカリ性の建設発生土を通水により脱塩し、これを緑化土壌として再利用するための建設発生土の土壌改良工法であって、建設発生土に、リン酸供給源及びカルシウム供給源を含有する中和剤と、該建設発生土の土壌粒子よりも粒径が大きく、保水性及び透水性が高い多孔質の無機質材と、保水性及び保肥性が高い有機質材とを添加し、これらをミキサー、トラクター、バックホウ等を用いて攪拌混合する工程と、この工程により中和剤、無機質材及び有機質材と均質的に混合された建設発生土を雨水、河川水等の自然水によって通水する工程と、を有することを特徴とする。このような構成によれば、通水施設や混合プラント等の施設がない建設現場においても、アルカリ土壌である建設発生土を短期的に緑化土壌に改良することが可能となる。
【0013】
また、本発明は、植物が生育困難な程度に高濃度の塩化ナトリウムを含み、且つコロイド粒子を含むアルカリ性の土壌を、通水により脱塩し、これを緑化土壌として再利用する際に用いられる土壌改良材であって、リン酸供給源及びカルシウム供給源を含有する中和剤を含むことを特徴とし、さらに、土壌粒子よりも粒径が大きく、保水性及び透水性が高い多孔質の無機質材と、保水性及び保肥性が高い有機質材とを含むことを特徴としてもよい。このような構成によれば、アルカリ土壌に含まれるコロイド粒子の分散、膨潤を抑制することができるようになるため、アルカリ土壌の透水性を向上させることが可能となる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、アルカリ土壌の透水性を向上させることができると共に、建設発生土等のアルカリ土壌を建設現場において短期的に緑化土壌に改良することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0016】
===土壌改良工法及び土壌改良材の基本構成===
まず、土壌改良工法及び土壌改良材の基本構成について説明する。本実施形態における土壌改良工法は、アルカリ土壌を通水により脱塩し、これを緑化土壌として再利用するための土壌改良工法である。この土壌改良工法は、アルカリ土壌に、リン酸供給源及びカルシウム供給源を含有する中和剤(以下、単に「中和剤」という)と、保水性及び透水性が高い多孔質の無機質材(以下、単に「無機質材」という)と、保水性及び保肥性が高い有機質材(以下、単に「有機質材」という)とを混合し、これらの混合物に通水処理を施すという構成を有する。また、本実施形態における土壌改良材は、このような中和剤、無機質材及び有機質材を含有する。
【0017】
上記構成の本実施形態において、アルカリ土壌は、植物が生育困難な程度に高濃度の塩化ナトリウムと、コロイド粒子とを含む土壌であり、アルカリ性を呈する。
【0018】
また、上記の中和剤は、リン酸供給源である過リン酸石灰と、カルシウム供給源である硫酸カルシウムとを含有している。そして、過リン酸石灰は、可溶性のリン酸塩を多く含んでおり、短時間でアルカリ土壌を中性化し、このアルカリ土壌に含まれるコロイド粒子の分散、膨潤を抑制することにより、透水性を向上させる。一方、硫酸カルシウムは、徐々に溶け出す性能を有するため、中和作用の持続性を向上させる。
【0019】
なお、リン酸供給源は、リン酸イオンを供給する物質であり、上記の過リン酸石灰に限定されるものではなく、例えば、可溶性のリン酸塩等であってもよい。このようなリン酸供給源としては、特に、重過リン酸石灰、苦土過リン酸石灰、硫リン安系資材、リン硝安系資材が好ましい。また、カルシウム供給源は、カルシウムイオンを供給する物質であり、上記の硫酸カルシウムに限定されるものではなく、例えば、可溶性のカルシウム塩であってもよい。このようなカルシウム供給源としては、特に、石膏、貝殻、鉱滓が好ましい。
【0020】
また、上記の無機質材は、保水性及び透水性の永続性を保つために生分解性がなく、完全無機系のパーライトを含有している。無機質材は、アルカリ土壌(特に、粒径の不均一な建設発生土)の粒径を調節する作用を有しており、この無機質材を土壌に混合することにより、土壌の粒径分布を物理的に変えることができる。これにより、土壌の透水性が向上し、中性化されたコロイド粒子や塩類が土壌中で移動しやすくなり、塩化ナトリウムは速やかにアルカリ土壌から除去される。なお、無機質材としては、パーライトに限定されるものではなく、例えば、粘土焼成品等の材料であってもよい。
【0021】
また、上記の有機質材は、ミズコケが風化した泥炭であるピートモスと、落ち葉、刈敷き、枝葉等の有機質が腐熟して完熟した堆肥とを含有している。ピートモスの品質については、保水性及び保肥性を高くするために腐植質が多いものを用いることとし、堆肥の品質については、土壌微生物が含まれており、且つ保肥性を保つために腐熟が十分なものを用いることとする。このようなピートモス及び堆肥を土壌に混合することにより、透水性が向上したとしても、植物の生育に必要な水分及び栄養分は土壌から流出してしまうことはないので、通水により脱塩すれば、これを緑化土壌としてそのまま再利用することが可能となる。なお、有機質材としては、ピートモスや堆肥に限定されるものではなく、例えば、草炭等の材料であってもよい。
【0022】
===建設発生土の土壌改良工法===
次に、建設発生土の土壌改良工法について説明する。本実施形態における建設発生土の土壌改良工法は、上記の土壌改良材を用いてアルカリ土壌である建設発生土を通水により脱塩し、これを緑化土壌として再利用するためのものである。この建設発生土の土壌改良工法は、次のような第1工程及び第2工程からなる。すなわち、第1工程においては、建設発生土に、土壌改良材を添加し、これらをミキサー、トラクター、バックホウ等を用いて攪拌混合すると共に、第2工程においては、第1工程により土壌改良材と均質的に混合された建設発生土を雨水、河川水等の自然水によって通水する。上記の土壌改良材は、可溶性のリン酸塩及びカルシウム塩を含有する中和剤と、建設発生土の土壌粒子よりも粒径が大きく、保水性及び透水性が高い多孔質の無機質材と、保水性及び保肥性が高い有機質材とを含有する。
【0023】
上記の建設発生土としては、例えば、干拓地等、海面の埋め立て地盤を掘削した建設発生土等がある。このような建設発生土は、海水に由来する塩化ナトリウム等の塩類を多量に含み、pH8.5以上の高い値を示すこともあり(強アルカリ性)、植物の生育に適していない。さらに、この建設発生土にはコロイド粒子が含まれており、土壌の透水性が低下しているため、通水により脱塩することは容易ではない。従って、通常の方法では、建設発生土を緑化土壌として再利用することは困難である。
【0024】
そこで、建設発生土を緑化土壌として再利用するために、上記の土壌改良材を用いてアルカリ土壌を中性化し、且つ土壌中の塩化ナトリウムを除去する。特に、構造物を建設し、その上部を緑化する場合には、緑化工事は構造物の完成後に実施される。このため、工事期間は数ヶ月しかなく、緑化工事を短期的に行う必要がある。そして、建設現場において改良土壌を製造するためには、土木分野で土質改良に利用する機械を利用し、改良土壌を大量生産することにより、工事期間を短縮する。この際、建設発生土と土壌改良材とが不均質な状態で混合されていると、建設発生土に改良されない部分が残り、改良土壌としての品質が低下してしまう。
【0025】
まず、第1工程においては、建設発生土と土壌改良材とが均質的に混合されるようにする。混合プラント等の施設がない建設現場では、ミキサー、トラクター、バックホウ等を用いて攪拌混合する。これらのうち、均質性を高めるためにはミキサーが好ましいが、ミキサーの代用として、例えば、自走式の土木工事用の土質改良機であり、計量器付きのものを用いてもよい。ミキサーを用いれば、移動と運搬及び設置に時間を要するが、自走式の土質改良機を用いれば、建設現場においても移動・運搬・設置が容易となる。また、土壌改良材を自動的に計量しながら攪拌する機能を備えた計量器付きの土質改良機を用いれば、建設発生土と土壌改良材とを均質的に混合させることが可能となる。なお、荷揚げに必要なミニクレーン機能等を備えた土質改良機を用いれば、建設発生土と土壌改良材とを効率的に混合させることも可能となる。さらに、建設発生土を上記の土壌改良機に搬入する際には、バックホウを用いることが好ましい。この場合、施工効率が高まり、工事期間をより短縮することができるようになる。このように建設現場の機械を利用して攪拌混合すれば、建設現場で掘削した建設発生土を混合プラント等の施設まで運搬する必要もなく、建設現場において建設発生土と土壌改良材とを均質的に混合することが可能となる。
【0026】
次に、第2工程においては、第1工程により土壌改良材と均質的に混合された建設発生土を雨水等によって通水処理を施す。通水施設等がない建設現場では、雨水、河川水等の自然水を用いて通水する。これにより、通水施設等がない建設現場においても、アルカリ土壌である建設発生土を中性化すると共に、この土壌に含まれる塩化ナトリウムを植物が生育可能な程度に除去することが可能となる。さらに、本発明の土壌改良材には、有機質材が含まれているため、改良土壌は植物の生育に適した状態にある。従って、第2工程により改良された改良土壌は、これを緑化土壌として再利用することができる。
【0027】
以下、本発明の実施例について説明する。
【実施例】
【0028】
<改良対象土及び土壌改良材>
本実施例においては、アルカリ土壌である建設発生土を改良対象土とし、さらに、本発明の土壌改良材を用いて、本発明の土壌改良工法を実施した。これらの改良対象土及び土壌改良材の性質・配合等は、次の通りである。
【0029】
===改良対象土(建設発生土)===
図1は、本実施例における建設発生土の粒度分布(粒径加積曲線)を示すグラフである。
【0030】
図1に示すように、本実施例における建設発生土は、粒径0.01mm以下の範囲に約20重量%を占めており、粒径1.0mm以下の範囲に約93重量%を占めている。その詳細な粒度分布は、砂(粒径:2〜0.02mm)が約86重量%であり、シルト(粒径:0.02〜0.002mm)が約5重量%、粘土(粒径:0.002mm以下)が約5重量%であった(但し、粒度分布は国際土壌学会法に準拠する)。
【0031】
表1及び表2は、本実施例における建設発生土の性質を示す表であり、表1は建設発生土の物理性を示し、表2は建設発生土の化学性を示す。
【表1】

【表2】

【0032】
表1に示すように、建設発生土の物理性のうち、その粒度分布は、粘土・シルトが約10重量%を占め、砂が約86重量%を占める分布を示した。また、建設発生土の土性は、国際土壌学会の表記でLS(壌質砂土)に区分され、建設発生土の透水係数は、約9.0×10−3m・S−1を示した。
【0033】
一方、表2に示すように、建設発生土の化学性は、pH:8.8、EC:1.03dS・m−1を示した。このことから、本実施例の建設発生土は、一般の森林表土よりもアルカリ性が強く、塩類濃度が高いことがわかる。
【0034】
図2は、本実施例における建設発生土のコロイドに含まれる粘土鉱物のX線回折結果を示すグラフである。
【0035】
図2に示すように、建設発生土には、構成鉱物として、石英、長石、角閃石、メタハロイサイト、雲母粘土鉱物、スメクタイト、ギプサムが含まれていることが確認された。これらのうち、スメクタイトは、エチレングリコール処理により、X線回折のピークが17Å付近に移動することで同定された。そして、処理前の13〜15Åの反射ピークより、Ca型及びNa型が混じるものであると推定された。
【0036】
以上より、本実施例における建設発生土は、アルカリ土壌であること、すなわち、植物が生育困難な程度に高濃度の塩化ナトリウムを含み、且つコロイド粒子を含むアルカリ性の土壌であることがわかった。そこで、このような建設発生土を中和すると共に、通水により脱塩することができれば、これを緑化土壌として再利用することが可能となる。
【0037】
===土壌改良材===
次に、本実施例では、本発明の土壌改良材を用いて、このような建設発生土を通水により脱塩することが可能か否かについて調べた。なお、本実施例における土壌改良材としては、中和剤、無機質材及び有機質材を含有するものを用いた。
【0038】
本実施例の中和剤は、リン酸供給源である可溶性リン酸成分含有の化学肥料(以下、「特殊肥料」という)と、カルシウム供給源である硫酸カルシウム成分含有の化学肥料とを含んでおり、特殊肥料としては、過リン酸石灰と同等品を使用し、硫酸カルシウム成分含有の化学肥料としては、硫酸カルシウム粉未肥料を使用した。
【0039】
一方、本実施例の無機質材は、地力増進法で定められた土質改良材であるパーライトを含んでいる。このパーライトは、毛管間隙の構造を改質して透水生を維持しながら土壌の保水性を高める目的で利用した。具体的には、硬質な真珠岩系品(商品名:キングパールL号,粒径1.5〜7mm、三井金属パーライト(株)製)を使用した。
【0040】
また、本実施例の有機質材は、ピートモスと、堆肥とを含んでおり、ピートモスとしては、腐植化が進んだもの(A級品)を使用し、堆肥としては、広葉樹の枝葉の堆肥である緑葉堆肥(東洋リサイクル(株)製)を使用した。
【0041】
表3は、本実施例における土壌改良材の配合例を示す表であり、(a)は建設発生土と土壌改良材との配合比(容積比)を示し、(b)は土壌改良材の成分を示す。
【表3】

【0042】
表3(a)に示すように、建設発生土と土壌改良材との配合比(容積比)は、8.5:1.5とした。土壌改良材に含まれるパーライト(=無機質材)と、ピートモス(=有機質材)と、緑葉堆肥(=有機質材)との配合比(容積比)は、0.5:0.5:0.5とした。土壌改良材には、上記の中和剤を事前に混合しており、さらに、この中和剤には、改良土壌1mに対する添加量(kg)として、特殊肥料である可溶性リン酸成分含有の化学肥料(過リン酸石灰:23kg/m)と、酸カルシウム成分含有の化学肥料(石膏:5.5kg/m)とを添加している。なお、過リン酸石灰としては、リン酸成分含有量が17%以上のものを用いており、石膏としては、硫酸カルシウム含有量が100%のものを用いた。
【0043】
また、表3(b)に示すように、土壌改良材の成分は、主成分として、パーライト5%と、ピートモス5%と、緑葉堆肥5%とを含有しており(容積比)、副成分として、石膏(以下、「中和材A」という)と、過リン酸石灰(以下、「中和材B」という)とを含有することがわかる(但し、側定方法は肥料分析法に準拠する)。
【0044】
次に、本実施例の土壌改良材を用いて製造した改良土壌の性質(例えば、透水係数、pH、EC等)について説明する。
【0045】
図3は、本実施例における改良土壌の性質を示すグラフであり、(a)は改良土壌の透水係数、(b)は改良土壌のpH、(c)は改良土壌のEC(電気伝導度)を示す。但し、ケース1〜3(比較例1)では特殊肥料を改良材として用いており、ケース4〜6(比較例2)ではパーライトを改良材として用い、さらに、ケース7〜9(本実施例)では本発明の土壌改良材を改良材として用いている。各ケースにおける改良材の土壌に対する混合割合は、ケース1は1重量%、ケース2は3重量%、ケース3は5重量%とし、ケース4及び7は5容積%、ケース5及び8は10容積%、ケース6及び9は15容積%とした。
【0046】
図3に示すように、建設発生土に特殊肥料を混合させたケースでは(ケース1〜3:比較例1)、透水係数は低下することなく(図3(a)参照)、pH及びECは植物栽培に適した値を示した(図3(b)及び図3(c)参照)。ところが、建設発生土にパーライトのみを混合させたケース(ケース4〜6:比較例2)では、透水係数は一時的に低下し、植物栽培には適さない値を示した。一方、本発明の土壌改良材を混合させたケース(ケース7〜9:本実施例)では、特殊肥料及びパーライトの双方を含んでいるため、透水性は低下することなく、しかもpH及びECは安定し、植物栽培により適した値を示した。
【0047】
表4は、本実施例における改良土壌及び未改良土壌の化学性を示す表である。

【表4】

【0048】
表4に示すように、pHの値は、未改良土壌の場合には、強アルカリ性(pH8.8)の値を示したが、本発明の土壌改良材を用いて改良した改良土壌の場合には、弱酸性(pH6.5)の値を示した。また、EC等の値についても植物栽培に適した値を示した。なお、未改良土壌のpHがやや低く、ECがやや高い値を示したのは、降水などの影響を受けておらず、微細な粒子や塩類を含んでいないからにすぎない。
【0049】
以上より、本発明の土壌改良材によって、建設発生土の透水係数のみならず、pH及びECも改善されており、アルカリ土壌を緑化土壌に適したものに改良することが可能であるといえる。
【0050】
次に、改良土壌における植物の生育状態を調べ、実際に緑化土壌に再利用することができるか否かを調べた。具体的には、改良土壌(斜面)に、タブノキ、シカラシ、ヤブニッケイ、ヤマモモ、ヒサカキ等の植物を移植(移植数7,280本)し、植物の生育状態(樹木の枯死数)を観察した。
【0051】
その観察結果を表5に示す。但し、同表の「左」、「中」、「右」は、斜面最低部から斜面最上部の方向を基準としている。
【表5】

【0052】
表5は、改良土壌における植物の生育状態(移植後1年経過時)を示す表である。
表5に示すように、改良土壌に植物を移植してから1年が経過すると、これらのうち合計42本(最上段:4本、上段・下段:38本)が枯死した。なお、オオシマザクラ等には落葉がみられたが、新芽が生えていたため、生育に問題がないものとした。
【0053】
以上より、移植した植物の枯死率は約0.5%と極めて低く、生存率が約99.5%と高い値を示したことから、改良土壌は植物の生育に適した状態であることがわかる。従って、本発明の土壌改良工法及び土壌改良材によれば、建設発生土等のアルカリ土壌を緑化土壌として再利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本実施例における建設発生土の粒度分布(粒径加積曲線)を示すグラフである。
【図2】本実施例における建設発生土のコロイドに含まれる粘土鉱物のX線回折結果を示すグラフである。
【図3】本実施例における改良土壌の性質を示すグラフであり、(a)は改良土壌の透水係数、(b)は改良土壌のpH、(c)は改良土壌のEC(電気伝導度)を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物が生育困難な程度に高濃度の塩化ナトリウムを含み、且つコロイド粒子を含むアルカリ性の土壌を、通水により脱塩し、これを緑化土壌として再利用するための土壌改良工法であって、
前記土壌に、リン酸供給源及びカルシウム供給源を含有する中和剤を混合し、これらの混合物に通水処理を施すことを特徴とする土壌改良工法。
【請求項2】
前記リン酸供給源として、
過リン酸石灰、重過リン酸石灰、苦土過リン酸石灰、硫リン安系資材、リン硝安系資材のうち少なくとも1種以上を含有する化学肥料を用いることを特徴とする請求項1に記載の土壌改良工法。
【請求項3】
前記カルシウム供給源として、
石膏、硫酸カルシウム、貝殻、鉱滓のうち少なくとも1種以上を含有する化学肥料を用いることを特徴とする請求項1又は2に記載の土壌改良工法。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の土壌改良工法において、
前記土壌に、該土壌粒子よりも粒径が大きく、保水性及び透水性が高い多孔質の無機質材を混合することを特徴とする土壌改良工法。
【請求項5】
前記無機質材として、
パーライト、粘土焼成品のうち少なくとも1種以上を用いることを特徴とする請求項4に記載の土壌改良工法。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載の土壌改良工法において、
前記土壌に、保水性及び保肥性が高い有機質材を混合することを特徴とする土壌改良工法。
【請求項7】
前記有機質材として、
ミズコケが風化した泥炭、草炭、または、落ち葉、刈敷き、枝葉等の有機質が腐熟して完熟した堆肥のうち少なくとも1種以上を用いることを特徴とする請求項6に記載の土壌改良工法。
【請求項8】
植物が生育困難な程度に高濃度の塩化ナトリウムを含み、且つコロイド粒子を含むアルカリ性の建設発生土を、通水により脱塩し、これを緑化土壌として再利用するための建設発生土の土壌改良工法であって、
前記建設発生土に、リン酸供給源及びカルシウム供給源を含有する中和剤と、該建設発生土の土壌粒子よりも粒径が大きく、保水性及び透水性が高い多孔質の無機質材と、保水性及び保肥性が高い有機質材とを添加し、これらをミキサー、トラクター、バックホウ等を用いて攪拌混合する工程と、
該工程により前記中和剤、前記無機質材及び前記有機質材と均質的に混合された前記建設発生土を雨水、河川水等の自然水によって通水する工程と、
を有することを特徴とする土壌改良工法。
【請求項9】
植物が生育困難な程度に高濃度の塩化ナトリウムを含み、且つコロイド粒子を含むアルカリ性の土壌を、通水により脱塩し、これを緑化土壌として再利用する際に用いられる土壌改良材であって、
リン酸供給源及びカルシウム供給源を含有する中和剤を含むことを特徴とする土壌改良材。
【請求項10】
請求項9に記載の土壌改良材において、
前記土壌粒子よりも粒径が大きく、保水性及び透水性が高い多孔質の無機質材と、
保水性及び保肥性が高い有機質材と、
を含むことを特徴とする土壌改良材。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−219604(P2006−219604A)
【公開日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−35154(P2005−35154)
【出願日】平成17年2月10日(2005.2.10)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 2004年12月1日 株式会社大林組東京本社発行の「大林組技術研究所報 No.68 2004」に発表
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)
【出願人】(000220262)東京瓦斯株式会社 (1,166)
【Fターム(参考)】