説明

土壌洗浄装置及び土壌洗浄方法

【課題】洗浄処理によって分離した高汚染濃度の汚染土壌粒子を高精度かつ高効率で除去し効率的な洗浄処理を行うことができる土壌洗浄装置及び土壌洗浄方法を提供する。
【解決手段】汚染物質を含有した汚染土壌を洗浄処理する土壌洗浄装置において、洗浄液及び汚染土壌を受け入れるための処理槽53と,この処理槽53内に設けられ、汚染土壌を攪拌し回転速度に応じて所定粒度の汚染土壌粒子を洗浄液中に舞い上げるパドルミキサ58と,パドルミキサ58により舞い上げられた汚染土壌粒子を含む洗浄液を排水するストレーナ402とを有する処理機15を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汚染物質を含有する汚染土壌を洗浄処理する土壌洗浄装置及び土壌洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
石油系油類等の汚染物質を含有する汚染土壌を浄化処理する方法の一つに、処理槽内に供給した洗浄液中で汚染土壌を攪拌して土壌中の汚染物質を洗浄液中に移行させる洗浄処理がある。洗浄処理の工程は、分級処理工程と併せて実施されることが多く、一般に洗浄処理工程で比較的剥離し易い汚染物質を土壌から剥離させ、分級処理工程で汚染濃度の高い汚染物質の細粒分を除去する。この洗浄処理工程とともに分級処理工程を実施する洗浄処理方法の一つに、回転篩装置(トロンメル)内に汚染土壌を投入し洗浄液を散布することにより回転篩装置で汚染土壌を攪拌し洗浄処理しつつ、分離した懸濁水を排出し土壌中に含まれる細粒分を除去する方法が知られている(特許文献1等参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2000−202422号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の記載技術のような回転篩装置では、篩の目の大きさ程度の粒度の土粒子が篩上に常時存在するので目詰まりが起こり易く十分な分級の効果が得られ難い。
【0005】
本発明は、上記の事柄に鑑みてなされたものであり、その目的は、洗浄処理によって分離した高汚染濃度の汚染土壌粒子を高精度かつ高効率で除去し効率的な洗浄処理を行うことができる土壌洗浄装置及び土壌洗浄方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、第1の発明は、汚染物質を含有した汚染土壌を洗浄処理する土壌洗浄装置において、洗浄液及び汚染土壌を受け入れるための処理槽と,この処理槽内に設けられ、汚染土壌を攪拌し回転速度に応じて所定粒度の汚染土壌粒子を洗浄液中に舞い上げる攪拌手段と,前記攪拌手段により舞い上げられた汚染土壌粒子を含む洗浄液を排水する排水口とを有する処理機を備えたことを特徴とする。
【0007】
第2の発明は、第1の発明において、前記攪拌手段は、前記処理槽内に配置された回転軸と、この回転軸に間欠的に設けた複数の攪拌羽根とを有し、前記処理槽の底面部は、内壁面が前記攪拌手段の回転軌跡に沿って円弧状に形成されていることを特徴とする。
【0008】
第3の発明は、第1又は第2の発明において、前記攪拌手段の上方を覆うように前記処理槽内に設けた網状部材をさらに備えたことを特徴とする。
【0009】
第4の発明は、第1乃至第3の発明のいずれかにおいて、前記排水口から前記処理槽内の洗浄液を積極的に吸引する吸引手段を備えたことを特徴とする。
【0010】
第5の発明は、第1乃至第4の発明のいずれかにおいて、前記処理槽内に供給される洗浄液は、汚染土壌よりも比重が小さいことを特徴とする。
【0011】
第6の発明は、汚染物質を含有した汚染土壌を洗浄処理する土壌洗浄方法において、処理槽内に洗浄液及び汚染土壌を供給し、前記処理槽内に供給した汚染土壌を攪拌し所定粒度の汚染土壌粒子を洗浄液中に舞い上げ、洗浄液中に舞い上げられた汚染土壌粒子を含む洗浄液を排水することで汚染濃度が所定値以上の汚染土壌粒子を選別して前記処理槽から除去し、汚染濃度が所定値以下の汚染土壌を効果的に洗浄処理する。
【0012】
第7の発明は、第6の発明において、前記処理槽から除去すべき汚染土壌の粒度に応じて洗浄液中での汚染土壌の攪拌速度を調整することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、汚染土壌を攪拌し回転速度に応じて所定粒度の汚染土壌粒子を洗浄液中に舞い上げ、舞い上げた汚染土壌粒子を付近の洗浄液とともに排水することにより、高汚染濃度の汚染土壌粒子を高精度かつ高効率で除去し効率的な洗浄処理を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面を用いて本発明の実施の形態を説明する。
図1は本発明の一実施の形態に係る土壌洗浄装置の全体構成を示す側面図である。なお、以下の説明において、図1中の左・右に相当する方向を、一方・他方又は土壌洗浄装置の前・後方向と適宜記載する。
この図1において、1は自力走行を可能とする走行手段としての走行体で、この走行体1は、トラックフレーム2と、このトラックフレーム2の前後両端部に設けた駆動輪3及び従動輪4と、駆動輪3に直結した走行用の駆動装置5と、駆動輪3及び従動輪4に掛け回した無限軌道履帯6とで構成されている。油圧ショベル等によって汚染土壌が間欠的に投入される場合等を想定し、本実施の形態においては土壌投入時の衝撃荷重等により機体が不安定になることを防止するために、このように履帯6を備えたクローラ式の走行手段を用いる例を挙げたが、例えばコンベアを用いて連続的に土壌が投入される場合等においては、いわゆるホイール式の走行手段に代えても良い。
【0015】
7は各種の機構及び機器を支持するためにトラックフレーム2の上部に設けた本体フレームで、この本体フレーム7の長手方向一方側には支持ポスト8,9を介して支持ビーム10が、長手方向他方側には支持ポスト11,12を介して板状の支持フレーム13がそれぞれ支持されている。また、本体フレーム7の長手方向一方側には汚染土壌及び洗浄液の供給部14が、また長手方向ほぼ中央部には処理機15が設けられており、さらに処理機15の下方位置から後方に向けて排出部16が設けてある。処理機15の処理槽53内に供給される洗浄液には、水等といった汚染土壌よりも比重が小さい液体が採用される。
【0016】
上記供給部14は、投入された土壌を処理機15に供給する土壌供給部17、及び処理機15に洗浄液を供給する洗浄液供給部18で構成されている。次にまず土壌供給部17の構成について説明する。
【0017】
図2は本発明の土壌洗浄装置を構成する土壌供給部17の詳細構造を示す側面図である。この図2において、図1と同様の部分には同符号を付し説明を省略する。
図2に示すように、土壌供給部17は、投入された土壌を粒度に応じて選別する篩装置19、この篩装置19によって選別された投入土壌を受け入れるホッパ20、及びホッパ20内に受け入れられた土壌を処理機15に搬送する搬送コンベア21から構成されている。
【0018】
篩装置19の構成を説明すると、22は篩装置19の本体を成す支持枠体で、この支持枠体22は、上記支持ビーム10上に設けたべース23,24(図1参照)の上部にばね25を介して振動可能に支持されており、図示しない駆動装置(加振装置)によって加振されるようになっている。26は支持枠体22内に装着した格子で、油圧ショベル等によって篩装置19に投入された土壌のうち、格子26の目よりも小さな土壌成分が下方へと導かれ、コンクリート・岩石・金属等といった格子26の目よりも大きな固形異物が除去される。この選別によって格子26上に残存した固形異物は、格子26の傾斜に沿って前方に移動し落下する。27は放出される異物をガイドするシュートである。
【0019】
上記ホッパ20について説明すると、このホッパ20は、上下が開口した上方拡開形状の枠体によって形成されており、篩装置19と搬送コンベア21の上流側(図2中左側)との間に位置するように、上記支持ビーム10及び支持ポスト8,9(図1参照)を介し本体フレーム7から支持されている。ホッパ20の上部開口28は篩装置19の支持枠体22の下部開口と同じ程度かそれよりも僅かに大きく、下部開口29の幅は、搬送コンベア21の搬送ベルト35(後述)の幅と同じ程度かそれよりも僅かに狭くなっている。また、ホッパ20の下流側側壁30には、搬送ベルト35に対向して土壌切出口(図示せず)が切り欠いて設けられている。
【0020】
搬送コンベア21について説明すると、31は搬送コンベア21の本体を成すコンベアフレームである。このコンベアフレーム31は、下流側(図2中右側)に向かって上り傾斜となるように、上記支持ポスト8,9(図1参照)及びこれらに設けたビーム32(図1参照)を介して本体フレーム7から支持されている。これにより、図1に示すように、搬送コンベア21は、一方端側がホッパ20の下方に位置し、他端側が上記処理機15の導入口55(後述、図1参照)に臨んでいる。
【0021】
33,34はそれぞれコンベアフレーム31の両端に回転自在に支持された従動輪及び駆動輪、35はこれら従動輪33及び駆動輪34に掛け回された搬送ベルトである。36は搬送コンベア21の駆動装置(搬送用油圧モータ、電動でも良い)で、この駆動装置36は、駆動輪34に直結しており、駆動輪34を回転駆動させることによって、従動輪33と駆動輪34との間で搬送ベルト35を循環駆動させるようになっている。37は搬送ベルト35の搬送面を支持する複数の支持ローラで、これら支持ローラ37は、搬送ベルト35の搬送面の裏側に当接するよう、コンベアフレーム31の長手方向に所定の間隔で配置されている。搬送コンベア21は、このような構成により、ホッパ20内で搬送ベルト24上に載置された土壌を、上記土壌切出口を介しホッパ20外に切出し処理機15に導入するようになっている。この土壌搬送量は、ホッパ20の土壌切出口の開口面積と搬送ベルト35の搬送速度により定まるので、搬送用駆動装置36の回転速度を制御することにより調整可能である。
【0022】
38はベルト張力調整装置で、このベルト張力調整装置38は、従動輪33のコンベアフレーム31における前後方向位置を調節し、搬送ベルト35の張調整を行うようになっている。39はホッパ20の下流側部分において搬送ベルト35の幅方向両側を覆う規制板で、この規制板39によって、処理機15に向かって搬送される土壌が搬送ベルト35からこぼれ落ちることを防止している。
【0023】
図3は本発明の土壌洗浄装置を構成する洗浄液供給部18の詳細構造を示す側面図、図4はその平面図、図5はその液体タンクの詳細を示す側面図である。この図3、図4、図5において、図1及び図2と同様の部分には同符号を付し説明を省略する。
これらの図に示すように、洗浄液供給部18は、洗浄液の液体タンク40、及びこの液体タンク40内の洗浄液を処理機15に供給する液体供給部41で構成されている。
【0024】
液体タンク40は、タンクローリ等による洗浄液の供給が容易となるように土壌供給部17の下方にて本体フレーム7の長手方向一方側に支持されている。42は液体タンク40の給水口、43はこの給水口42のキャップで、液体タンク40に洗浄液を貯留する際には、キャップ43を取り外して給水口42から洗浄液を補給する。液体タンク40の上面部には、天板400と図示しないメンテナンス用上扉が設けられている。メンテナンス用上扉はボルト等により固定されている。
【0025】
液体タンク40の上部には、処理機15の処理槽53(後述)内の洗浄液を液体タンク40に流入させる流入管路401が設けられ、処理槽53内に設けた複数のストレーナ(排水口)402を介し、液体吸引部403により洗浄液を上記液体タンク40内に吸引流入させている。ストレーナ402は、処理槽53の洗浄液水位よりも僅かに下部側の位置に設けられ、後述するパドルミキサ58により舞い上げられた汚染土壌粒子を含む洗浄液を処理槽53から排水する役割を果たす。但し、処理中に洗浄液の水位は上下するため、洗浄液水位がストレーナ402よりも下部側に低下する場合もある。本実施の形態において、液体吸引部403は、ストレーナ402から処理槽53内の洗浄液を積極的に吸引する吸引手段として機能するものであり、例えば渦巻ポンプで構成される。この場合、後述する渦巻ポンプ44,419と同様のものが採用できる。流入管路401の経路の途中にはインペラ式の流量計404及び止水バルブ405が設けてある。流量計404は液体タンク40に流入する洗浄液の流量を検出し、その検出結果に基づき凝集剤(後述)の供給量が決定される。止水バルブ405は、例えば、上記したメンテナンス用上扉より液体タンク40内のメンテナンス等の際に液体タンク40に流入する洗浄液を止水するときに用いられる。特に図示していないが、液体タンク40の側面には小窓が設けてあり、液体タンク40内の様子を監視できるようになっている。
【0026】
なお本実施の形態では、処理槽53内へ洗浄液を積極的に流入させる手段として液体吸引部403を用いたが、処理槽53内の洗浄液液面と液体タンク40との水位差を利用した構成としても良い。つまり、図示した構成では処理槽53内の洗浄液液面が液体タンク40よりも高くなっているので、液体吸引部403を省略しても水位差によって処理槽53から液体タンク40に洗浄液が流入する。液体吸引部403を設ける場合、液体タンク40を処理槽53内の洗浄液液面よりも高位置に配置しても良い。
【0027】
液体タンク40の底板46は略四角錐形状をなし、液体タンク40内の固形物が底板46に付設された筒体406を介し、回収ケース407に回収される構成となっている。回収ケース407の上面はフランジ形状をなし、筒体406の対向部に付設されたフランジ408に対して図示しないシールを介しボルトで締結されている。筒体406にはバタフライバルブ409が設けられ、このバタフライバルブ409によって筒体406と回収ケース407との間を止水できる構成となっている。バタフライバルブ409は、ハンドル410によりハンドル軸を回転させると、ウォームギヤユニットにより減速された回転力がバルブ軸411に伝達されバタフライバルブ409の弁体が開閉する。回収ケース407にはボールバルブ412が設けられており、このボールバルブ412を開くと液体タンク40及び回収ケース407内の洗浄液が機外へ排出される。
【0028】
また、液体タンク40内には攪拌装置413が設けられている。この攪拌装置413は凝集剤と洗浄液とを攪拌し、洗浄液中の細粒分を凝集して沈殿させる機能を果たしている。攪拌装置413は、攪拌翼414と回転軸415とを備え、その回転軸415は天板400に取り付けた軸受(図示せず)により回転自在に保持されている。攪拌翼414を回転させる攪拌用駆動装置416はブラケット417を介して天板400の上部に固定され、その出力軸は回転軸415の上端部と直結している。液体タンク40内にはまた、液体タンク40内の洗浄液液面に浮上した油を回収する油回収装置418が設けられている。
【0029】
図6は油回収装置418の詳細構造を示す側面図、図7はその平面図である。
流入管路401から流入する洗浄液に含まれる汚染土壌の細粒分及び油のうちの細粒分については凝集剤により凝集されるが、油に関しては比重が小さいために瞬時に液体タンク40内の液面に浮上する。油回収装置418は、洗浄液液面の浮上油分を回収する油回収部421、及び油回収部418を洗浄液液面に保持するフロート422を備えている。フロート422は油回収部421の周囲に複数個(本例では3個)取り付けられている。すなわち、洗浄液液面に浮上した油は油回収装置418の油回収部421から自然流入することにより回収され、油回収部421に接続した管路500を介して汚染物質である油を貯留しておく油貯留タンク420(図1参照)へ送られる。油回収部421から貯留タンク420への油の移送は渦巻ポンプ419(図1参照)により積極的に行われる。
【0030】
前述したように油回収装置418には複数のフロート422が装備されており、フロート422の浮力により液体タンク40内の液面の変動に油回収装置418が追従し油回収部421への油の自然流入を定量化している。油回収部421の上面は開口されている。この開口部は図6に示すような円周波型形状に形成されており、液面より上部に位置している部分と下部に位置している部分とが交互に連続している。このように油回収部421への流入面積を調整することにより液面付近の洗浄液や油が必要以上に回収されない構成となっている。但し、油回収装置はこのような構成に限定されず、公知の構成のものを用いても良い。
【0031】
図3〜図5に戻り、液体タンク40内には上面の高さがタンク内の洗浄液液面よりもやや低い隔壁409が設けられ、隔壁409を越えて流入する上澄み液が液体供給部41へ移送される。
【0032】
図3及び図4を用いて液体供給部41の構成を説明すると、44は液体タンク40内の洗浄液を処理機15に送り込むポンプ、45はポンプ44と液体タンク40の底板46に設けた排水口(図示せず)とを接続する吸込管、47はポンプ44の吐出口(図示せず)に接続する送水管である。送水管47は、継手48を介し2本の送水管49に分岐している。これら送水管49は、処理機15の処理槽53の幅方向両側側面の下部に配置され、その側面には、処理槽53内に臨む複数の送水孔50が所定のピッチで設けられている。また、処理槽53の側面にも上記送水孔50と同位置に小孔(図示せず)が設けてある。ポンプ44は公知の構成のもの(渦巻ポンプ等)であり、直結した駆動装置(電動モータ等)52によって駆動され、吸込管45からの洗浄液はポンプ44によって送水管47に吐出され、さらに送水管49及びその送水孔50を介して処理槽53内に供給される。
【0033】
図3及び図5に示すように、液体タンク40の天板400の上部にはスタンド422を介して凝集剤供給部421が設けられている。凝集剤供給部421は、凝集剤タンク423、電磁弁付きコック424、液体タンク40内に凝集剤を導くチューブホース425及び図示しないインペラ式の流量計を備えている。流量計の回転数によって凝集剤タンク423から流下する凝集剤の流量が検出され、電磁弁付きコック424の励磁時間を制御することで凝集剤の滴下量が制御される。凝集剤の滴下量は上記した流入管路401に設けた流量計404により検出した液体タンク40内への洗浄液流入量により決定される。
【0034】
図8は本発明の土壌洗浄装置を構成する処理機15の詳細構造を表す縦断側面図、図9は図8中のIX−IX矢視断面図、図10は図8中のX−X矢視断面図である。これら図8乃至図10において、先の各図と同様の部分には同符号を付し説明を省略する。
図8乃至図10において、53は処理機15の本体を成し洗浄液及び汚染土壌を受け入れるための処理槽で、この処理槽53は、支持部材54を介し本体フレーム7の長手方向ほぼ中央上に略水平に支持されている。55はこの処理槽53の前方側上部に設けられ、搬送コンベア21からの土壌を導入する導入口、56は処理槽53の後方側下部に設けられた排出口で、処理槽53は、これら導入口55及び排出口56を除いて水密構造となっており、図10に示すように、底面部の内壁がパドルミキサ58(後述)の回転軌跡に沿ってほぼ円弧状の断面に形成されている。57はこの処理槽53の内壁に設けられ、処理槽53内に貯留された洗浄液の水位を検出する水位センサである。
【0035】
パドルミキサ58は、処理槽53の長手方向(図8中の左右方向)にほぼ水平に挿通され処理槽53内に配置された回転軸59、及び回転軸59に間欠的に設けた複数のパドル(攪拌羽根)61を備えている。この構成によって、パドルミキサ58は、処理槽53内に供給された洗浄液中で汚染土壌を攪拌する攪拌手段として機能すると同時に、回転速度に応じて所定粒度の汚染土壌粒子を掻き上げ洗浄液中に舞い上げる掻上手段としても機能する。本実施の形態において、パドルミキサ58は、処理槽53内にほぼ平行に2本設けてあるが、1本又は3本以上でも良い。パドル61は、回転軸59に間欠的に植設したパドル座60に対しボルト等で固定されており、磨耗又は破損したとき等に交換が容易な構成となっている。これらパドル61の長さや回転軸59,59間の距離は、回転時、各パドル61が、隣り合うパドルミキサ58の回転軸59に触れない程度に設定されている。また、各パドル61は、図示したように、回転方向に対し所定角度傾斜して取り付けられており、これによって、パドルミキサ58は、処理槽53内の土壌を解砕し攪拌すると同時に、排出口56方向に移送する役割をも果たす。
【0036】
62は処理槽53の前方側外壁面に設けた駆動部ハウジングで、この駆動部ハウジング62内には、回転軸59の一方側端部付近を回転自在に支持する軸受63が収容され固定されている。64は回転軸59の後方側端部を回転自在に支持する軸受で、この軸受64は、支持部材65を介し処理槽53の後方側外壁面に固定されている。66はパドルミキサ58を回転駆動させる駆動装置(混合用油圧モータ、電動でも良い)で、この駆動装置66の出力軸(図示せず)は、回転軸59の一方側端部に図示しないカップリングを介して連結されている。このとき、両パドルミキサ58,58は、図示した通り互いの回転軌跡が一部重なり合っており、互いにほぼ同一回転数で逆回転させなければ、互いのパドル61同士が干渉してしまう。パドルミキサ58,58をほぼ同一回転数で回転駆動させるためには、互いの駆動装置66,66にほぼ同流量の作動油を供給しなければならないが、駆動部ハウジング62内において回転軸59,59に設けた伝達ギア67,67が相互に噛合することによって、両パドルミキサ58,58が、強制的にほぼ同一回転数で逆回転する。
【0037】
68は処理槽53から排出部16への土壌の漏出を防止する排出扉の役割を果たす排出弁で、本実施の形態において、この排出弁68は、ロータリバルブで構成されており、この排出弁68を介し処理槽53の排出口56と前述の排出部16の入口76とを接続している。特に図示していないが、処理槽53の排出口56及び排出部16の入口76に対する排出弁68の取り付け部は、パッキン等でシールが施され、洗浄液が外部へ溢出しないように配慮されており、これによって処理槽53及び排出部16が水密接続されている。69は排出弁68の駆動装置(電動モータ等)で、この駆動装置69によって複数の隔壁70を放射状に備えたロータ71を回転駆動させることにより、処理槽53内の土壌を排出部16にほぼ一定量ずつ排出する。
【0038】
なお、前述した通り、処理槽53は導入口55及び排出口56を除いてほぼ水密構造となっているが、何らかの要因で処理槽53内に混入した固形異物等が噛み込みパドルミキサ58の円滑な作動を阻害する可能性がないとは言えない。さらに、パドル61は、長期間使用すると摩耗すること等から適宜補修又は交換する必要が生じる。以上のことから、処理槽53の内部点検又は修理のために、処理槽53の上面にはメンテナンス扉(図示せず)が設けられており、ボルト等によって着脱できるようになっている。72は処理槽53の前方側壁面の下部に設けたメンテナンス用の排水口で、メンテナンスの際等には、例えば、ボールバルブ等を用いた開閉弁73を操作してこのメンテナンス用の排水口72を開放し、処理槽53内の土壌(細粒分)や懸濁した洗浄液を積極的に排出可能な構成となっている。
【0039】
また、高濃度の汚染土壌を処理する際は、処理槽53内の液面に汚染物質である油が大量に浮上する場合がある。その場合、特に図示はしていないが、液体タンク40内に設けた油回収装置418と同様の油回収装置を設け、図示しない渦巻ポンプ及びホースを介して油貯留タンク420へ送るようにしてもよい。
【0040】
上記構成により、処理機15においては、駆動装置66によってパドルミキサ58を回転駆動させ、汚染土を洗浄液中で攪拌し洗浄処理しつつ排出側に移送するとともに、適宜排出弁68を駆動させることによって、排出口56を介して洗浄処理された土壌を排出部16に導出するようになっている。またこうした洗浄処理工程に加え、この処理機15では、パドルミキサ58で攪拌することによって回転速度に応じた所定粒度以下の汚染土壌粒子を洗浄液中に舞い上げ、ストレーナ402を介して処理槽53から汚染濃度の高い細粒分を積極的に排出するといった分級処理工程も併せて行われる。
【0041】
図11は排出部16の詳細構造を示す側面図で、この図において、先の各図と同様の部分には同符号を付し説明を省略する。
排出部16は、処理機15から排出された土壌を機外に排出するための排出手段であって、本実施の形態においてはスクリュコンベア74が用いられている。75はスクリュコンベア74の本体を成す概略円筒形状のケーシングで、このケーシング75の移送方向上流側(図11中左側)には、前述のように、処理槽53の排出口56に排出弁68を介し水密接続した上向きの入口76が、下流側(図11中右側)には下向きの出口77が設けられている。このとき、ケーシング75は、出口77の高さ位置が処理槽53内の洗浄液水位(図中記号▽)よりも高位置となるように、処理機15の下方位置から土壌移送方向(図11中右方向)に向かって上り傾斜に配設されている。
【0042】
78,79はそれぞれケーシング75の両端に設けたエンドブラケット、80,81はエンドブラケット78,79にそれぞれ支持部材82,83を介して取り付けた軸受である。84はケーシング75内に設けた中空(中実でも構わない)の回転軸で、この回転軸84の両端は、軸受80,81に回転自在に支持されている。85は回転軸84の外周に螺旋状に設けたスクリュ(オーガ)である。86はスクリュコンベア74の駆動装置(排出用油圧モータ、電動でも良い)で、この駆動装置86は、筒状の支持部材83を介しエンドブラケット79に支持されている。87は支持部材83内で駆動装置86の出力軸と回転軸84とを連結するカップリングで、このカップリング87を介して駆動装置86の駆動力が回転軸84に伝達され、スクリュ85が回転する。
【0043】
上記構成により、スクリュコンベア74は、処理槽53内の洗浄液を漏出させることなく、洗浄処理された処理機15からの土壌のみを脱水しながら搬送し、出口77を介し機外へ排出するようになっている。
【0044】
図1に戻り、88は本発明の土壌洗浄装置の動力装置(パワーユニット)で、この動力装置88は、支持ポスト11,12及び支持部材13を介し本体フレーム7の長手方向他方側に支持されている。動力装置88内には、動力源となるエンジン、エンジンにより駆動する少なくとも1つの油圧ポンプ、油圧ポンプから吐出される作動油を各駆動装置に切り換え供給する複数のコントロールバルブ等が収容されている。特に図示していないが、動力装置88の後方側には、スクリュコンベア74のケーシング75を吊り下げ支持する支持部材が設けてある。
【0045】
89は操作者が搭乗する運転席で、この運転席89は、支持部材13上における動力装置88の前方側の領域に設けられている。90は運転席89に配置された走行操作用の操作レバーで、この操作レバー90の操作に応じ、走行用駆動装置5に作動油を切り換え供給する動力装置88内のコントロールバルブが切り換え操作される。
【0046】
91は本土壌洗浄装置の運転に関わる各種設定や操作を行う操作盤で、この操作盤91は、本体フレーム7の長手方向他方側に直接支持されている。この操作盤91の内部には、本土壌洗浄装置の作動制御等を司る制御装置が設けられている。制御装置は、土壌洗浄装置各所に設けられたセンサ類からの検出信号や操作盤91からの操作に対応した操作信号を入力し、走行用の駆動装置5を除く各油圧駆動装置に対応したコントロールバルブやその他の電動の駆動装置に対し、入力信号に応じた指令信号を出力する。
【0047】
次に、上述した土壌洗浄装置の動作及び作用を説明する。
油圧ショベル等により、処理対象土壌すなわち石油系油類等を含有する汚染土壌を掘削し篩装置19に投入すると、投入された土壌は、篩装置19の上下の振動により格子26の目よりも大きな異物等が除去され、格子26の目よりも小さな土壌成分がホッパ20内に一時貯留される。ホッパ20内で搬送コンベア21の搬送ベルト35上に載置された土壌は、循環駆動する搬送ベルト35によってホッパ20外へ切り出され、処理槽53に供給される。
【0048】
処理槽53内には洗浄液供給部18から供給された洗浄液が予め貯留されている。この処理槽53内の洗浄液の水位は、水位センサ57により検出され、その検出信号が制御装置に入力される。図示しない制御装置は、水位センサ57からの検出信号を基に処理槽53内における洗浄液の水位を演算する。そしてこの演算結果を設定水位と比較することにより制御装置は洗浄液の過不足を判断し、洗浄液の水位が設定水位よりも低い場合には、洗浄液供給部18の駆動装置52に指令信号(駆動信号)を出力し、処理槽53内の洗浄液が設定水位に復帰するまでポンプ44を駆動させ、送水管47,49を介し液体タンク40内の洗浄液を処理槽53内に補給する。
【0049】
処理槽53内においては、上記のようにして設定水位に保たれた洗浄液中で、パドルミキサ58によって土壌が攪拌され洗浄処理される。適宜パドルミキサ58を逆転させるようにすると、より高い洗浄効果が得られる。処理槽53内で洗浄処理された土壌は、排出口56側に移送され、排出弁68を介してスクリュコンベア74内に導出され、このスクリュコンベア74によって脱水されつつ排出される。このとき、処理槽53内では、パドルミキサ58による攪拌洗浄によって土壌の粗粒分から離散した汚染濃度の高い土壌の細粒分が洗浄液中に懸濁した状態で浮遊する。処理槽53とスクリュコンベア74との間は水密接続されており、なおかつスクリュコンベア74の出口77が洗浄液の水位よりも高位置に設けてあるため、洗浄液が処理槽53外に漏出することはない。つまりスクリュコンベア74により機外に排出されるのは、十分なレベルに洗浄処理された土壌の粗粒分のみとなる。したがって、汚染濃度が高い細粒分が機外に排出されることはなく、流入管路401を介して液体タンク40内へ洗浄液と共に流入する。
【0050】
このとき、本実施の形態においては、処理槽53内に洗浄液及び汚染土壌を供給し処理槽53内に供給した汚染土壌を攪拌することにより、パドルミキサ58における掻き上げ作用により所定粒度の汚染土壌粒子を洗浄液中に舞い上げる。洗浄液中に舞い上げられストレーナ402付近まで達した汚染土壌粒子(細粒分等)を含む洗浄液は、ストレーナ402を介して処理槽53から排水され液体タンク40に導入される。このように、汚染濃度が所定値以上の汚染土壌粒子(汚染濃度が高い所定粒度以下の細粒分等)を選別して処理槽53から除去し、処理槽53に残存した汚染濃度が所定値以下の汚染土壌をパドルミキサ58にて攪拌することにより、効果的な洗浄処理が施される。
【0051】
ここで、汚染土壌粒子の大きさは様々であり、粒子によって重量も異なる。したがって洗浄液中での沈降速度等も粒子の大きさによって異なり、パドルミキサ58により洗浄液中に掻き上げられる場合にその掻き上げ高さ(洗浄液中で舞い上がる高さ)や洗浄液中での浮遊時間が相違する。つまり、汚染濃度が高い粒度の小さな汚染土壌粒子ほど、パドルミキサ58により形成される洗浄液の上昇流に同伴して高く浮上し易く、なおかつ沈降速度が遅いために上昇流に逆らって沈降し難く浮遊時間も長くなる。したがって、粒度の小さな土壌粒子ほどストレーナ402から排水され易くなる。
【0052】
本実施の形態では、こうした原理を利用し、処理槽53から除去すべき汚染土壌の目的粒度(言い換えれば除去すべき汚染土壌の汚染濃度)に応じて、例えば処理槽53内での汚染土壌粒子の浮遊状態を目視する等してパドルミキサ58による洗浄液中での汚染土壌の攪拌速度を調整することにより、除去対象となる汚染土壌粒子を粒度選別することができる。またパドルミキサ58の回転速度に限らず、洗浄液の排出量(具体的には液体吸引部403の駆動速度)を調整することによっても、粒度選別が可能である。勿論、パドルミキサ58及び液体吸引部403の双方の駆動速度を調整するようにしても良い。
【0053】
液体タンク40内に流入した洗浄処理後の洗浄液中の油は、液体タンク40の洗浄液の液面上に浮上し、油回収装置418によって捕捉され回収される。また液体タンク40内には、洗浄処理後の洗浄液中に細粒分が含まれることがあるが、この細粒分は、凝集剤タンク423から供給される凝集剤と攪拌装置413による攪拌とによって凝集されて沈殿し回収ケース407に回収される。こうした浄化作用により、油、細粒分を除去された洗浄液は、吸込管45を通して、再び処理機15の処理槽53に循環供給され再利用される。
【0054】
本実施の形態によれば、このように洗浄処理によって分離した汚染濃度の高い汚染土壌粒子を効率的に除去することができるので、処理槽53に残留した比較的汚染濃度の低い汚染土壌粒子を洗浄処理することで効率的な洗浄処理ができ、高い洗浄効果を得ることができる。しかも、パドルミキサ58の回転速度を調節し除去対象となる汚染土壌粒子をストレーナ402に向かって舞い上げ、除去する必要のない比較的汚染濃度の低い土壌粒子を必要以上に舞い上げないようにすることができる。つまり、パドルミキサ58によって舞い上げられた時点である程度の粒度選別がなされるため、汚染土壌を全て投入して篩等で粒度選別する場合のように目詰まりするようなこともなく、精度及び効率の面でも高い分級効果が期待できる。
【0055】
また、処理槽53は前述したようにほぼ水密状態が保たれるため、必要以上に洗浄液が排水されることがなく、洗浄液を一定の水位に保つことも容易であり、高い洗浄効果を確保することもできる。しかも、処理機15としては、単にパドルミキサ58とストレーナ402を備えた処理槽53を設けただけの簡易な構成で、パドルミキサ58による土壌粒子の舞い上がり具合又は液体吸引部403による排水量を調整することによって、こうした高い洗浄及び分級の効果が得られることも大きな利点である。また、パドルミキサ58を用いることにより、処理槽53において汚染土壌をパドル61で解砕しつつ十分に攪拌することができるので、十分な洗浄効果が発揮される。
【0056】
また実施の形態によれば、汚染土壌の供給部14や処理機15、排出部16等を構成する各機器を本体フレーム7上に集約配置することにより、一般に固定式の設備であった洗浄処理設備を走行体1上に搭載することができ、これにより掘削現場内を自力走行することができることもメリットである。但し、高い洗浄及び分級の効果を得るには固定式の設備であっても構わないので、本発明の目的を達成する限りにおいては、走行体1上に各機器を集約配置する必要は必ずしもない。本発明の目的を達成する限りにおいては、処理機15のみがあれば、他の設備は別途用意する構成としても構わない。この場合も同様の効果を得ることができる。
【0057】
図12は本発明の他の実施の形態に係る土壌洗浄装置を構成する処理機15の詳細構造を表す縦断側面図、図13は図12中のXIII−XIII矢視断面図である。これの図において先の各図と同様の部分には同符号を付し説明を省略する。
本実施の形態は、パドルミキサ58の上方を覆うように処理槽53内に設けた網状部材100をさらに備えたものであり、その他の構成については前述した本発明の一実施の形態に係る土壌洗浄装置と同様である。
【0058】
図12及び図13に示すように、網状部材100の前後方向(長手方向)は、処理槽53の導入口55の前後幅寸法程度だけ処理槽53の前後方向(長手方向)の内壁間寸法よりも短く設定されている。網状部材100の前後方向から見た断面は、図13に示すように、処理槽53の底部と同様にパドルミキサ58の回転軌跡に沿うように円弧状に形成されている。網状部材100の目開きの大きさは土壌粒子の粒度よりも十分に大きく設定されている。または目の大きさの異なる複数種類の網状部材100を用意しておき、除去しようとする土壌粒子の目的の粒度に応じ、目的粒度の土壌粒子が通過する程度の目の大きさの網状部材100を取り付けるようにしても良い。
【0059】
この網状部材100が処理槽53の後方側の内壁に当接するように設けられているため、導入口55の下方の領域を除いてパドルミキサ58の上方が網状部材100に覆われていることになる。したがって、導入口55から導入された汚染土壌は網状部材100を介することなく処理槽53の底部に蓄積され、その後パドルミキサ58の移送機能によって網状部材100の下方空間に導入される。
【0060】
本実施の形態においては、前の実施の形態と同様の効果に加え、次のような効果が得られる。すなわち、前に述べた通り洗浄液中に舞い上げられる汚染土壌粒子の粒度は主にパドルミキサ58の回転速度に依存するため、除去する汚染土壌粒子の粒度を小さく(例えば75μm程度)する場合、パドルミキサ58の回転速度を遅くしなければならない。パドルミキサ58の回転速度を遅くすると、汚染土壌の処理量を十分に確保することができず処理時間が長くなってしまう。このような場合、本実施の形態のように、パドルミキサ58の上方に網状部材100を設けることにより、パドルミキサ58の回転速度によらず分級精度を確保することができる。
【0061】
つまり、パドルミキサ58の上方に網状部材100を設けることにより、パドルミキサ58の回転により生じる洗浄液の流れを網状部材100の上方において整流することができる。また比較的粒度が大きな土壌粒子は網状部材100の格子に衝突して網状部材100を通過し難い。したがって、目的粒度よりも粒度の大きな土壌粒子までもが舞い上がるような回転速度でパドルミキサ58を駆動しても、粒度の大きな土壌粒子は網状部材100を通過し難い。これにより、除去対象の土壌粒子の粒度を小さくする場合であっても、ある程度の攪拌速度を確保し効率的な処理を行いつつ、目的の粒度の土壌粒子を精度良く除去することができる。
【0062】
また、主に下から網状部材100に土壌粒子が衝突してくること、洗浄液中であること等から、通常の分級工程も用いられる篩と比べると網状部材100に土壌粒子が付着し難い。しかも、粒度の大きな土壌粒子が網状部材100を通過する確率を著しく低下させるには、網状部材100の目の大きさは除去すべき汚染土壌粒子の目的粒度より十分に大きくても構わない。したがって、網状部材100の目詰まりは極めて生じ難い。
【0063】
さらに、網状部材100を設けることにより、汚染濃度が低い粒度の大きな土壌粒子に対し、網状部材100と処理槽53の底部で形成されるパドルミキサ58の周囲の空間内に留める拘束力がある程度作用する。したがって、舞い上がらずにパドルミキサ58の周囲に滞留した比較的低汚染濃度の汚染土壌(洗浄処理対象の土壌)がパドルミキサ58や網状部材100、処理槽53の内壁面、或いは他の汚染土壌粒子と衝突する機会が飛躍的に増し、土壌粒子間における擦り洗い又は揉み洗いの効果が向上する。これにより、洗浄効果の向上の効果も期待できる。
【0064】
図14は本発明のさらに他の実施の形態に係る土壌洗浄装置の要部を抽出して表す図で、この図14において、先の各図と同様の部分には同符号を付し説明を省略する。
図14において、本実施の形態が前述した各実施の形態と相違する点は、汚染土壌がスラリー化する程度の水位の洗浄液を湛えた処理槽内で汚染土壌を攪拌し、汚染土壌から汚染物質をより積極的に剥離させる汚染物質剥離機能部を設けた点にある。
【0065】
すなわち、本実施の形態においては、汚染物質剥離機能部として機能する前段の処理機15Aとは別に主に汚染物質分離機能部として機能する後段の処理機15Bが設けられている。汚染物質分離機能部である処理機15Bの構成は、前述した各実施の形態における処理機15と同様で良い。処理機15B内の洗浄液水位も前述の各実施の形態と同様で良く、汚染土壌から分離した油や細粒分等が、浮上して汚染土壌から十分に離間することができる程度に確保する。
【0066】
一方、前段の処理機15Aでは、十分に土壌粒子間の摩擦が確保されるように汚染土壌がスラリー化する程度の洗浄液を汚染土壌に供給すれば良い。処理機15Aへの洗浄液の供給量は処理機15Bに対するそれよりも少量である。処理機15Aにおいては、洗浄液の水位を調整しても良いが、本実施の形態では処理機15Aの処理槽53Aの高さをパドルミキサ58Aの回転軌跡に近接する程度に設定し、内部容積を極力小さくすることにより構造的に多量の洗浄液を受け入れられないようにしてある。処理機15Aのその他の構成については、洗浄液を回収する機構が接続されていない点を除いて処理機15Bとほぼ同様である。処理機15Aにおける処理槽53Aの排出口56Aは、排出弁68Aを介して処理機15Bの処理槽53Bの導入口55Bに接続している。
【0067】
このような構成により、図示省略した篩装置19、ホッパ20を介して搬送コンベア21上に導かれた汚染土壌は、導入口55Aを介して処理槽53A内でパドルミキサ58Aによって攪拌され、これにより汚染土壌から油が剥離される。油が剥離した汚染土壌は、排出弁68Aを介して処理槽53Bに導入され、処理槽53B内でパドルミキサ58Bによって攪拌される。その結果、剥離した油が洗浄液液面付近に浮上して汚染土壌から分離される。油と分離された汚染土壌は、排出口56B、排出弁68Bを介して排出部16に導出され、機外に排出される。本実施の形態においては、以上のような機構を本体フレーム上に集約し走行装置上に搭載しても良いし、固定式の設備とすることも勿論可能である。
【0068】
本実施の形態においても、処理機15Bにおいてパドルミキサ58Bの回転速度を調整し効率的に除去対象の汚染土壌粒子を処理槽53Bから排出することができ、図1乃至図11で説明した本発明の一実施の形態に係る土壌洗浄装置と同様の効果が得られる。なお本実施の形態においては、強い摩擦を作用させて効率的に油を剥離させるために処理機15Aにおけるパドルミキサ58Aは後段のパドルミキサ58Bよりも高速回転させることが好ましい。
【0069】
さらに、本実施の形態によれば、前段の処理機15Aにおいて、前述したように汚染土壌がスラリー化する程度の水位の洗浄液中で汚染土壌を攪拌するので、パドルミキサ58Aを高速回転させた場合でも、汚染土壌粒子が洗浄液中に舞い上がってパドルとの接触頻度が低下することがなく効果的に汚染土壌を揉み洗いして汚染物質を剥離することができる。また、後段の処理機15Bでは処理機15Aよりも高水位の洗浄液中で必要以上に土壌粒子が舞い上がらないように攪拌することにより、剥離した油や除去対象の土壌粒子(細粒分)を汚染土壌から分離させて洗浄液液面付近に浮上させることができる。よって、本実施の形態によれば、前述した各実施の形態に比してもより効率的に汚染土壌を洗浄処理することができる。
【0070】
なお、図15に示したように、図12及び図13で説明した実施の形態を組み合わせ、処理機15Bの処理槽53B内に網状部材100を設けることにより、図12及び図13で説明した実施の形態の効果を相乗的に得ることができることは言うまでもない。
【0071】
なお、以上で説明した各実施の形態の土壌洗浄装置は、その運転方法によって連続処理もバッチ処理も可能なものである。汚染土壌を洗浄処理するには、一般に汚染土壌の状態によって洗浄液の種類や攪拌速度、洗浄時間等の処理条件を事前に検討しておき、処理対象となる汚染土壌に適した処理条件を選定する必要がある。汚染度合いや土壌の性状によって、処理対象の汚染土壌が比較的容易に洗浄処理できる場合には、スクリュコンベア74、排出弁68、パドルミキサ58、搬送コンベア21、篩装置19、液体供給部41、液体吸引部403を全て駆動させた状態で土壌を順次投入することにより、汚染土の供給、洗浄処理、清浄土の排出が順次行われ、連続処理を行うことができる。それに対し、所定量の汚染土壌が処理槽53に導入されたら、スクリュコンベア74、排出弁68、搬送コンベア21、篩装置19を停止した状態で、パドルミキサ58、液体供給部41、液体吸引部403を駆動させることによって、所定量ずつの汚染土壌をバッチ処理することも可能である。
【0072】
また、以上の各実施の形態において、処理後の土壌の排出手段としてスクリュコンベア74を例に挙げて説明したが、要は処理槽53からの土壌の漏洩がないように処理槽53の排出口56に水密接続でき、なおかつ洗浄液中で攪拌された高含水率の土壌を搬出可能なものであれば、排出手段の態様に特別な限定はない。したがって、例えば、いわゆるバケットコンベアや圧送ポンプ等も適用可能である。この場合も同様の効果を得ることができる。
【0073】
また、振動式の篩装置19を設けた例を説明したが、例えば、異物の混入量が少ない土壌や粘性の低い土壌等、比較的処理し易い性状の土壌を処理対象とする場合等においては、固定式の篩に代えても良いし、不要な場合には省略しても良い。また、投入土壌の受入手段としてホッパ20を例に挙げたが、例えばシュート等を代わりに用いても良い。また、搬送コンベア21をホッパ20から処理機15への土壌の搬送手段として用いたが、例えばスクリュコンベア等を代わりに用いても良い。これらの場合も同様の効果が得られる。
【0074】
さらに、以上においては、油汚染土壌を処理対象とした場合に本発明の土壌洗浄装置を適用した例を説明したが、本発明の土壌洗浄装置は、例えば重金属系の汚染物質を含有する汚染土壌を処理対象とした場合にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明の一実施の形態に係る土壌洗浄装置の全体構成を示す側面図である。
【図2】本発明の一実施の形態に係る土壌洗浄装置を構成する土壌供給部の詳細構造を示す側面図である。
【図3】本発明の一実施の形態に係る土壌洗浄装置を構成する洗浄液供給部の詳細構造を示す側面図である。
【図4】本発明の一実施の形態に係る土壌洗浄装置を構成する洗浄液供給部の詳細構造を示す平面図である。
【図5】本発明の一実施の形態に係る土壌洗浄装置を構成する液体タンクの詳細を示す側面図である。
【図6】本発明の一実施の形態に係る土壌洗浄装置を構成する油回収装置の詳細構造を示す側面図である。
【図7】本発明の一実施の形態に係る土壌洗浄装置を構成する油回収装置の詳細構造を示す平面図である。
【図8】本発明の一実施の形態に係る土壌洗浄装置を構成する処理機の詳細構造を表す縦断側面図である。
【図9】本発明の一実施の形態に係る土壌洗浄装置を構成する処理機の詳細構造を表す図8中のIX−IX矢視断面図である。
【図10】本発明の一実施の形態に係る土壌洗浄装置を構成する処理機の詳細構造を表す図8中のX−X矢視断面図である。
【図11】本発明の一実施の形態に係る土壌洗浄装置を構成する排出部の詳細構造を示す側面図である。
【図12】本発明の他の実施の形態に係る土壌洗浄装置を構成する処理機の詳細構造を表す縦断側面図である。
【図13】本発明の他の実施の形態に係る土壌洗浄装置を構成する処理機の詳細構造を表す図12中のXIII−XIII矢視断面図である。
【図14】本発明のさらに他の実施の形態に係る土壌洗浄装置の要部を抽出して表す図である。
【図15】本発明のさらに他の実施の形態に係る土壌洗浄装置の要部を抽出して表す図である。
【符号の説明】
【0076】
15 処理機
53 処理槽
53B 処理槽
58 パドルミキサ
58B パドルミキサ
59 回転軸
61 パドル
100 網状部材
402 ストレーナ
403 液体吸引部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
汚染物質を含有した汚染土壌を洗浄処理する土壌洗浄装置において、
洗浄液及び汚染土壌を受け入れるための処理槽と,この処理槽内に設けられ、汚染土壌を攪拌し回転速度に応じて所定粒度の汚染土壌粒子を洗浄液中に舞い上げる攪拌手段と,前記攪拌手段により舞い上げられた汚染土壌粒子を含む洗浄液を排水する排水口とを有する処理機を備えたことを特徴とする土壌洗浄装置。
【請求項2】
前記攪拌手段は、前記処理槽内に配置された回転軸と、この回転軸に間欠的に設けた複数の攪拌羽根とを有し、前記処理槽の底面部は、内壁面が前記攪拌手段の回転軌跡に沿って円弧状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の土壌洗浄装置。
【請求項3】
前記攪拌手段の上方を覆うように前記処理槽内に設けた網状部材をさらに備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載の土壌洗浄装置。
【請求項4】
前記排水口から前記処理槽内の洗浄液を積極的に吸引する吸引手段を備えたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の土壌洗浄装置。
【請求項5】
前記処理槽内に供給される洗浄液は、汚染土壌よりも比重が小さいことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の土壌洗浄装置。
【請求項6】
汚染物質を含有した汚染土壌を洗浄処理する土壌洗浄方法において、
処理槽内に洗浄液及び汚染土壌を供給し、前記処理槽内に供給した汚染土壌を攪拌し所定粒度の汚染土壌粒子を洗浄液中に舞い上げ、洗浄液中に舞い上げられた汚染土壌粒子を含む洗浄液を排水することで汚染濃度が所定値以上の汚染土壌粒子を選別して前記処理槽から除去し、汚染濃度が所定値以下の汚染土壌を効果的に洗浄処理することを特徴とする土壌洗浄方法。
【請求項7】
前記処理槽から除去すべき汚染土壌の粒度に応じて洗浄液中での汚染土壌の攪拌速度を調整することを特徴とする請求項6に記載の土壌洗浄方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2006−247480(P2006−247480A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−64977(P2005−64977)
【出願日】平成17年3月9日(2005.3.9)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】