説明

土練装置

【課題】混練室からの排気を容易に行うことができ、また混練時に粘土に含まれる空気を効率よく除去することができる土練装置を提供する。
【解決手段】土練装置は、円筒内周面を有する混練室13と、前記混練室内に配置される回転体32と、前記回転体を回転させる駆動部と、前記回転体の端部の外周を覆い、前記駆動部から離れる方向に向かって縮径する円錐内周面を有する吐出部21と、減圧部と、前記混練室内に開口する排気開口523と前記減圧部とを連絡する排気流路260と、を備え、前記回転体が、前記駆動部により回転するシャフト321と、スクリュー324を含む押出部材372と、混練部材371と、を備え、前記排気開口が、前記混練部材の前記押出部材側の部位、および/または、前記押出部材の前記混練部材側の部位と、中心軸を中心とする径方向に対向する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘土を混練する土練装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、粘土を混練して陶器等の製造に適した状態にする土練装置が用いられている。陶器等の製造に使用される粘土では、内部に空気が残存すると、素焼きの段階でひびや割れが生じてしまう。そのため、土練装置では、様々な工夫がなされている。例えば、特開平7−214537号公報の土練機では、真空吸引装置を用いて混練室から空気が吸引される。また、図6では、粘土を効率よく循環させるために、吸引パイプが蓋の頂上よりも後方側に備えられる。
【0003】
米国特許第5,716,130号明細書の土練装置では、筒状容器に真空室が接続される。シャフトは、真空室から筒状容器に向かって配置される。シャフトは、真空室と筒状容器との間の壁の開口に挿入され、シャフトと壁との間には間隙が設けられる。シャフトには複数のブレードが取り付けられ、シャフトの先端に螺旋部が設けられる。複数のブレードは軸方向において互いに重なる。稼働時には、シャフトが回転すると混練室内で材料が混ぜられる。一定時間後、真空室から壁の開口を介して真空引きが行われる。その後、シャフトが反対方向に回転することにより、螺旋部により押出成型部から粘土が押し出される。
【特許文献1】特開平7−214537号公報
【特許文献2】米国特許第5,716,130号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、混練室内では粘度が高い粘土が大きな力で混練されるため、粘土は混練室内の様々な箇所に付着する。したがって、真空引きする開口への粘土の付着を防止するには、特開平7−214537号公報の装置のように混練室を上方に大きく形成する必要がある。しかし、このような構造では土練装置が大型化してしまう。また、米国特許第5,716,130号明細書の装置では、シャフトの周囲に複雑な機構を設ける必要があり、さらに、真空室に進入した粘土を容易に除去することができない。
【0005】
一方、大きなブレードで粘土を攪拌する場合、粘土が細かく裁断されないため、粘土から空気を速やかに除去することができない。
【0006】
なお、螺旋状のスクリューを用いて混練後の粘土を吐出する際には、スクリューの回転の影響を受けて粘土が回転しながら吐出される。このような吐出は、吐出口に、円形以外に粘土を成型する成型部を取り付ける場合に、ねじられた状態で粘土が吐出されてしまう。
【0007】
以上のことから、混練装置では、混練室からの排気を容易に行うことが求められている。また、混練時に粘土に含まれる空気を効率よく除去することが求められている。さらに、吐出時の粘土のねじれを抑制することが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一の側面に係る例示的な土練装置は、中心軸が水平方向を向く略円筒状の円筒内周面を有する混練室と、前記中心軸方向の一方の端部が支持されて前記混練室内に配置される回転体と、前記回転体の前記一方の端部に接続され、前記中心軸を中心に前記回転体を回転させる駆動部と、前記回転体の他方の端部の外周を覆い、前記駆動部から離れる方向に向かって縮径する円錐内周面を有し、先端に吐出口を有する吐出部と、減圧部と、前記混練室内に開口する排気開口と前記減圧部とを連絡する排気流路と、を備え、前記回転体が、前記中心軸に沿って配置され、前記駆動部により回転するシャフトと、前記他方の端部において前記シャフトに配置され、前記中心軸を中心とする周方向に対して一方向に傾斜するスクリューを含む押出部材と、前記シャフトの前記押出部材よりも前記一方の端部側に配置された混練部材と、を備え、前記混練部材が、前記シャフトから前記円筒内周面に向かって延びる複数のアームと、前記複数のアームの先端に配置され、前記周方向に対して前記一方向に傾斜する複数のブレードと、を備え、前記排気開口が、前記混練部材の前記押出部材側の部位、および/または、前記押出部材の前記混練部材側の部位と、前記中心軸を中心とする径方向に対向する。
【0009】
本発明の他の側面に係る例示的な土練装置は、中心軸が水平方向を向く略円筒状の円筒内周面を有する混練室と、前記中心軸方向の一方の端部が支持されて前記混練室内に配置される回転体と、前記回転体の前記一方の端部に接続され、前記中心軸を中心に前記回転体を回転させる駆動部と、減圧部と、前記混練室と前記減圧部とを連絡する排気流路と、とを備え、前記回転体が、前記中心軸に沿って配置され、前記駆動部により回転するシャフトと、前記シャフトに配置された混練部材と、を備え、前記混練部材が、前記シャフトから前記円筒内周面に向かって延びる複数のアームと、前記複数のアームの先端に配置され、前記中心軸を中心とする周方向に対して一方向に傾斜する複数のブレードと、を備え、前記複数のブレードの少なくとも一部が、混練時に粘土が通過する複数の貫通孔または複数のスリット、を有する。
【0010】
本発明のさらに他の側面に係る例示的な土練装置は、混練室と、中心軸方向の一方の端部にて支持されて前記混連室内に配置される回転体と、前記回転体の前記一方の端部に接続され、前記中心軸を中心に前記回転体を回転させる駆動部と、前記回転体の他方の端部の外周を覆い、前記駆動部から離れる方向に向かって縮径する円錐内周面を有し、先端に吐出口を有する吐出部と、とを備え、前記回転体が、前記中心軸に沿って配置され、前記駆動部により回転するシャフトと、前記他方の端部において前記シャフトに配置され、前記中心軸を中心とする周方向に対して一方向に傾斜するスクリューを含む押出部材と、前記シャフトの前記押出部材よりも前記一方の端部側に配置された混練部材と、を備え、前記吐出部が、前記円錐内周面から前記吐出口に向かって延びる第1吐出内周面と、前記第1吐出内周面と前記吐出口の間に位置する第2吐出内周面と、をさらに有し、前記第1吐出内周面が、前記中心軸に平行に延び、かつ、前記周方向に配列された複数の凹部または複数の凸部、を有し、前記第1吐出内周面の最内径が、前記第2吐出内周面の内径以上である。
【発明の効果】
【0011】
請求項1ないし9の発明によれば、混練室内の減圧を容易に行うことができる。請求項10の発明によれば、混練時に粘土に含まれる空気を効率よく除去することができる。請求項11ないし14の発明によれば、吐出される粘土のねじれを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、土練装置の正面図である。
【図2】図2は、土練装置の平面図である。
【図3】図3は、土練装置の右側面図である。
【図4】図4は、土練装置の斜視図である。
【図5】図5は、本体蓋部を開けた状態の土練装置の斜視図である。
【図6】図6は、土練装置の断面図である。
【図7】図7は、回転体の正面図である。
【図8】図8は、回転体の右側面図である。
【図9】図9は、回転体の斜視図である。
【図10】図10は、回転体の回転軌跡を示す概略図である。
【図11】図11は、中間室近傍の断面図である。
【図12】図12は、吐出先端部の断面図である。
【図13】図13は、ブレードの他の例を示す図である。
【図14】図14は、回転体の回転軌跡の他の例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、本発明の例示的な一の実施形態に係る土練装置1の正面図、図2は平面図、図3は右側面図、図4は斜視図、図5は本体蓋部を開けた状態の斜視図である。
【0014】
土練装置1は、基台11と、操作部12と、混練室13と、吐出部14と、を含む。基台11は箱状であり、内部に土練装置1の駆動に必要な機構および電気回路を含む。基台11の下部には車輪111が設けられる。これにより、土練装置1を容易に移動することができる。操作部12には、電源スイッチ、回転方向スイッチ、回転速度ダイヤル等が設けられる。後述するように、混練室13および吐出部14内には水平方向を向く軸を中心に回転する回転体が設けられる。以下、回転体の回転の中心軸を、単に、「中心軸」という。中心軸は、図1における左右方向を向き、図1および図4に、中心軸の延長線上の位置に符号J1を付す。操作部12での操作により、回転体の回転方向および回転速度が操作される。
【0015】
混練室13は、中心軸J1を中心とする円筒状の内周面を含む。混練室13の上部には、開閉自在な本体蓋部131が設けられる。以下、混練室13の本体蓋部131以外の部位を「混練室本体132」と呼ぶ。図5に示すように、本体蓋部131は、混練室本体132のヒンジを介して接続され、ヒンジを中心として回転するようにして開く。
【0016】
吐出部14は、円錐部141と、吐出先端部142と、切断部143と、粘土載置部144と、を含む。円錐部141は、中心軸J1を中心とする略円錐状が好ましく、図1の右側に向かって縮径する。吐出先端部142は略円筒状が好ましく、円錐部141からさらに右へと突出する。吐出先端部142の先端は、吐出口21を含む。吐出口21からは、成型された粘土が吐出される。切断部143は吐出口21近傍に設けられる。
【0017】
切断部143は、図4に示すように、略円弧状のフレーム22と、ワイヤ23と、を含む。ワイヤ23は、フレーム22に弦のように張られる。フレーム22は、中心軸J1に略平行な軸を中心として回転可能である。フレーム22と共にワイヤ23が回転して吐出口21を横切ることにより、図1にて二点鎖線にて示す吐出された粘土9が切断される。粘土載置部144は、円錐部141から吐出先端部142の下方にて吐出方向に向かって延びる。粘土載置部144は、図4に示すように、吐出方向に並べられた複数のローラ25、を含む。各ローラ25は、水平かつ中心軸J1に略垂直な方向を向く軸を中心に回転可能である。複数のローラ25により、吐出された粘土9が滑らかに案内されつつ下方から支持される。粘土載置部144は、円錐部141との接続位置を中心として回転可能である。土練装置1が使用されない間は、粘土載置部144は、円錐部141から下方へと延びている状態となる。これにより、土練装置1の保管スペースを小さくすることができる。
【0018】
操作部12上には真空計26が配置される。図2および図4に示すように、真空計26の接続部261と、本体蓋部131に設けられた接続部262とが、可撓性を有するチューブ263にて接続される。接続部262は、例えばエアフィルタである。真空計26は、基台11内に設けられた減圧部である真空ポンプ27に接続される。真空ポンプ27が駆動されることにより、混練室13および吐出部14内の空間は、大気圧を基準とする真空度0.09MPa以上(すなわち、大気圧を0Paとして−0.09MPa以下)に減圧される。
【0019】
図6は、中心軸J1を含む面にて土練装置1を切断した縦断面図である。基台11および操作部12内には、ギヤ付きモータ31(以下、単に「モータ」という。)が設けられる。回転体32は混練室13内に配置される。回転体32の一方の端部361は、混練室13内にてモータ31の回転軸311に接続されて支持される。以下、端部361を「支持端」と呼ぶ。他方の端部362は、支持されない。以下、端部362を「自由端」と呼ぶ。回転体32を中心軸J1を中心に回転させる駆動部は、モータ31には限定されず、熱機関等の他の機構であってもよい。
【0020】
図7は回転体32の正面図、図8は右側面図、図9は斜視図である。回転体32は、シャフト321と、複数のアーム322と、複数のブレード323と、スクリュー324と、羽根部325と、を含む。シャフト321は、中心軸J1に沿って配置される。シャフト321はモータ31により中心軸J1を中心として回転する。アーム322はシャフト321から図6に示す混練室13の円筒状の内周面33(以下、「円筒内周面」という。)に向かって延びる。中心軸J1は円筒内周面33の中心軸でもある。ブレード323は、アーム322の先端からアーム322の延びる方向に略垂直な方向に延びる。本実施形態では、アーム322およびブレード323の組み合わせの数は3である。
【0021】
ブレード323には、多数の貫通孔41が設けられる。図8に示すように、ブレード323を中心軸J1に略平行な方向に投影した場合、ブレード323の先端は円弧状である。ブレード323のシャフト321側のエッジは直線状である。このように、ブレード323はシャフト321から離れている。ブレード323の先端は、円筒内周面33に近接する。具体的には、約1〜5mmの距離に位置し、本実施形態では約3mmである。各ブレード323は、アーム322の先端側から見て中心軸J1を中心とする周方向(以下、単に「周方向」という。)から反時計回りに傾斜している。また、中心軸J1方向(以下、単に「軸方向」という。)において、ブレード323の先端の存在範囲は連続する。すなわち、ブレード323の軸方向の存在範囲は、軸方向において互いに僅かに重なる。
【0022】
スクリュー324は軸方向に連続する螺旋状である。スクリュー324の外径は、シャフト321の自由端に向かって、すなわち、駆動部から離れる方向に向かって漸次減少する。スクリュー324の外縁は、シャフト321の自由端、すなわち、回転体32の自由端362からモータ31側の支持端361に向かって時計回りに向かう。換言すれば、スクリュー324は、周方向に対してブレード323と同方向に傾斜する。図6に示す吐出部14の内周面34は吐出口21に向かって、すなわち、駆動部から離れる方向に向かって径が漸次減少する。吐出部14は、回転体32の自由端362に配置されたスクリュー324の外周を覆う。以下、吐出部14の内周面34を「円錐内周面」という。スクリュー324の外縁は、円錐内周面34に近接する。
【0023】
図8および図9に示すように、スクリュー324の最もブレード323側の部位には、切り欠き部42が設けられる。切り欠き部42が存在する部位では、スクリュー324の外径が減少する。スクリュー324のうち切り欠き部42が存在する部位は、混練室13内に位置する。
【0024】
スクリュー324は、後述するように、粘土を吐出口21から押し出す機能を有する。一方、アーム322およびブレード323は、混練室13内で粘土を混練する機能を有する。粘土を押し出すためにスクリュー324以外の構成が加えられてもよく、このような機能を有する部位全体を、以下「押出部材372」と呼ぶ。同様に、粘土を混練するためにアーム322やブレード323以外の構成が加えられてもよく、このような機能を有する部位全体を、以下「混練部材371」と呼ぶ。押出部材372は、シャフト321の自由端に配置される。混練部材371は、シャフト321の押出部材372よりも支持端361側に配置される。
【0025】
軸方向におけるスクリュー324の存在範囲と、スクリュー324に最も近いブレード323の存在範囲とは連続する。すなわち、スクリュー324に最も近いブレード323の吐出口21側の端部は、スクリュー324の最もモータ31側の端部よりも吐出口21側に位置する。これにより、回転体32を回転させた際の軌跡の外周面は、軸方向に連続する。図10は、円筒内周面33、円錐内周面34、並びに、混練部材371および押出部材372の回転軌跡を示す概略図である。図10に示すように、回転軌跡の外周面430は、切り欠き部42が存在する部位431を除いて円筒内周面33および円錐内周面34に近接する。
【0026】
図6に示すように、回転体32の支持端361は、混練室13内に位置する。モータ31の回転軸311は、パッキン等を介して混練室13内に突出する。この突出部に支持端361がボルト等を用いて固定される。回転体32の自由端362は、支持されることなく吐出口21と対向する。このような構造により、土練装置1では、メンテナンスの際に、混練室13内で回転体32をモータ31から容易に分離することができ、かつ、回転体32の取り外しの際にモータ31と混練室13との間のパッキン等のシール構造を損傷してしまうことが防止される。さらに、土練装置1では、吐出部14が混練室13から分離可能であり、混練室13自体を取り外すことなく内部の清掃を容易に行うことができる。
【0027】
次に、土練装置1の動作について説明する。まず、図5に示す投入口133を塞ぐ本体蓋部131が開かれ、投入口133から、粘土、または、粘土の材料および水を、混練室13内に供給する。粘土の材料は、粉末状の原料には限定されず、陶器製造時に出る削りかす、どべ、放置されて乾燥してしまった粘土等でもよい。乾燥した粘土を最初に混練室13に供給して、供給された粘土を混練室13内で破砕してから、水を供給してもよい。このように、土練装置1は、粘土再生機としても利用可能である。
【0028】
粘土の供給が完了すると、本体蓋部131が閉じられ、操作部12を操作することにより回転体32が回転する。回転体32は、吐出口21から見て反時計回りに回転する。粘土は、ブレード323により混練室13内のモータ31側の壁に向かうように力を受ける。その結果、図10中に矢印91にて示すように、粘土は、円筒内周面33に沿ってモータ31側の壁35へと向かい、壁35にて中心軸J1へと向かってシャフト321とブレード323との間からシャフト321の自由端に向かって移動する。ただし、矢印91は、粘土の全体的な動きの概略を示しているにすぎず、実際には、粘土は混練室13内で複雑に練り混ぜられる。回転体32の支持端361の羽根部325は、粘土が壁35に付着することを抑制し、円滑な混練を行う。
【0029】
混練開始から所定時間が経過すると、真空ポンプ27が稼動され、混練室13および吐出部14内が減圧される。このとき、吐出口21は別途用意されたキャップにて閉塞されている。既述のようにブレード323には多数の貫通孔41が設けられており、混練中は、粘土が貫通孔41を通過し、細かく分断されるようにして混練される。これにより、粘土に含まれる空気が効率よく除去される。
【0030】
なお、減圧前に回転体32の回転を一旦停止させて本体蓋部131を開け、ブレード323を通過した粘土の様子を確認することにより、粘土の状態を容易に確認することができる。具体的には、粘土の混練が不十分な場合は粘土が貫通孔41を通過せず、混練が十分に行われると貫通孔41を通過したひも状の粘土が現れる。これにより、粘土の柔らかさを把握することができる。
【0031】
減圧下における混練が所定時間行われると、回転体32の回転方向が反転する。脱気済みの粘土は、ブレード323によりスクリュー324へと導かれ、スクリュー324および吐出先端部142により、成型されつつ吐出口21から吐出される。キャップは、吐出される粘土に押されるようにして吐出口21から外れる。混練時と吐出時とでは回転体32の回転方向が逆であることから、混練時に吐出部14内に粘土が滞留することが抑制される。また、既述のように、ブレード323およびスクリュー324の軸方向における存在範囲が重なるため、回転体32の回転軌跡の外周面430は、軸方向に連続する。これにより、吐出後に混練室13内に残存する粘土の量を減少させることができる。
【0032】
次に、土練装置1の減圧に係る構成について説明する。既述のように、真空ポンプ27は本体蓋部131に間接的に接続され、図2および図6に示すように、この接続位置に中間室45が設けられる。図11は、中間室45近傍を拡大して示す断面図である。中間室45は、底部451と、周壁部452と、蓋部453と、を含む。底部451は、本体蓋部131において円筒内周面33を構成する部位の一部である。周壁部452は、平面視した際に略矩形状を成し、底部451から上方に延びる。蓋部453は、透明なアクリル製の板部材が好ましい。蓋部453の中央には貫通孔51が設けられる。貫通孔51に接続部262が接続される。
【0033】
周壁部452の吐出部14側の部位52には、排気孔521が設けられる。以下、部位52を「前方壁部」と呼ぶ。混練室本体132は、前方壁部52に対向する壁部53を含む。本体蓋部131の全周にはフランジ54が設けられ、フランジ54の一部が、前方壁部52の上端から吐出部14に向かって延びる。フランジ54と混練室本体132との間には、パッキン55が配置される。前方壁部52と壁部53との間の隙間522は、円筒内周面33に開口する。以下、円筒内周面33における隙間522の開口523を「排気開口」と呼ぶ。換言すれば、隙間522は排気開口523から上方に延びる。隙間522の上端は、フランジ54により塞がれる。隙間522を構成する部位、排気孔521を構成する部位、中間室45、接続部262、チューブ263、真空計26等により、排気開口523と真空ポンプ27とを連絡する排気流路260が構成される。
【0034】
図5に示すように、前方壁部52には、複数の排気孔521が設けられる。複数の排気孔521の流路面積の合計は、隙間522の流路面積よりも小さい。ここでの「流路面積」は、空気が流れる方向に垂直な方向における流路の断面積を指す。中間室45における流路面積は、排気孔521の流路面積の合計よりも大きい。したがって、土練装置1が稼働中に、粘土が隙間522に入り込んでさらに排気孔521に進入したとしても、中間室45内に滞留し、接続部262へと流入することが防止される。蓋部453は、ねじ56により本体蓋部131から分離可能、すなわち、開閉可能であり、中間室45に進入した粘土を容易に除去することができる。蓋部453は透明であることから、中間室45に粘土が進入したか否かを容易に確認することができる。
【0035】
さらに、排気孔521の数が複数であることから、排気孔521の位置で排気流路260が詰まってしまうことが抑制される。隙間522は、本体蓋部131と混練室本体132との間に設けられるため、図5に示すように本体蓋部131を開けることにより、隙間522に進入した粘土を容易に除去することができる。加えて、排気孔521が前方壁部52に設けられることから、本体蓋部131を開けることにより排気孔521が露出し、排気孔521に詰まった粘土も容易に除去することができる。
【0036】
一方、図10を参照して説明したように、回転体32の回転軌跡の外周面430には、円筒内周面33から離れている部位431が設けられる。スクリュー324の切り欠き部42の軸方向における存在範囲である部位431の存在範囲は、排気開口523の軸方向の存在範囲を含む。換言すれば、スクリュー324の混練部材371側の端部が、排気開口523の下方に位置し、かつ、切り欠き部42によりスクリュー324の外周部が円筒内周面33から離れている。これにより、回転体32が排気開口523に粘土を押し込むことが抑制される。その結果、混練室13および吐出部14内の減圧を容易に行うことができる。外周面430は、中心軸J1方向における排気開口523の位置を除いて円筒内周面33および円錐内周面34に近接する。したがって、切り欠き部42が混練および吐出に与える影響が最小限に抑えられる。
【0037】
次に、吐出先端部142の構造について説明する。図12は、吐出先端部142を拡大して示す断面図である。吐出先端部142は、第1吐出内周面61と、第2吐出内周面62と、を含む。第1吐出内周面61は、円錐内周面34から吐出口21に向かって延び、中心軸J1を中心とする略円筒状である。第2吐出内周面62は、第1吐出内周面61から吐出口21に向かってさらに延び、端部が吐出口21となっている。すなわち、第2吐出内周面62は、第1吐出内周面61と吐出口21との間に位置する。第2吐出内周面62は、円筒状である。
【0038】
第1吐出内周面61は、複数の凹部611、を含む。複数の凹部は、周方向に配列される。各凹部611は、中心軸J1に略平行に延びる。凹部611は、円錐内周面34から第1吐出内周面61と第2吐出内周面62との間の境界63の近傍まで延び、境界63から離れている。
【0039】
土練装置1では、本実施形態では回転体32が1つであり、中心軸J1に沿って粘土が吐出されるため、吐出時に粘土に回転する力が作用して粘土がねじれ易い。しかし、凹部611が粘土の回転に抵抗を与え、粘土のねじれが抑制される。このような効果は、凹部611が円錐内周面34と繋がっていることにより、より効果的に得ることができる。また、粘土のねじれをさらに抑制するために、第1吐出内周面61の面粗度は、第2吐出内周面62の面粗度よりも大きい。すなわち、第1吐出内周面61は意図的に粗く仕上げられる。
【0040】
第1吐出内周面61の最内径は、第2吐出内周面62の内径よりも大きい。これにより、第1吐出内周面61の凹凸が吐出される粘土に残ってしまうことが抑制される。
【0041】
なお、凹部611に代えて凸部が設けられてもよい。この場合も、凸部は、円錐内周面34から吐出口21に向かって延びることが好ましい。第1吐出内周面61が周方向に凹凸であることにより、吐出される粘土のねじれが抑制される。ただし、凸部が設けられる場合、中心軸J1から凸部までの距離は、第2吐出内周面62の内径以上であることが好ましい。これにより、第1吐出内周面61の凹凸の跡形が吐出される粘土に現れることを抑制することができる。一般的に表現すれば、第1吐出内周面61の最内径が、第2吐出内周面62の内径以上であることが好ましく、第2吐出内周面62の内径よりも大きいことがより好ましい。
【0042】
第1吐出内周面61および第2吐出内周面62の内径は、一定である必要はなく、例えば、吐出口21に向かって僅かに縮径してもよい。この場合、第1吐出内周面61の最内径と比較される第2吐出内周面62の内径は、第1吐出内周面61と第2吐出内周面62との間の境界63における内径を指す。
【0043】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。
【0044】
円筒内周面33は、完全な円筒面である必要はなく、およそ円筒であれば土練装置1の小型化が実現される。また、円筒内周面33が略円筒状であることにより、円滑に混練することができる。例えば、円筒内周面33の断面は、略U字状であってもよく、混練部材371の上方において混練部材371と円筒内周面33との間に空間が設けられてもよい。円錐内周面34もおよそ円錐面であればよく、例えば、中心軸J1に垂直な水平方向の幅が、上下方向の幅よりも大きい扁平な円錐面であってもよい。
【0045】
複数のブレード323は、繋がっていてもよい。すなわち、混練部材371では、実質的に複数のブレードとみなせる部位が存在すればよい。ブレード323には、貫通孔41に変えて図13に示すように複数のスリット41aが設けられてもよい。ブレード323は、アーム322の両側に延びる必要はなく、一方側のみに延びてもよい。
【0046】
スクリュー324には、切り欠き部42以外の形状が設けられてもよい。例えば、スクリュー324の外径が、混練部材371側の端部にて略一定であってもよい。これにより、図14に示すように、回転体32の自由端362から支持端361に向かって、回転体32の回転軌跡の外周面430の外径が漸次増大した後、部位432にて一定となり、混練部材371と押出部材372との境界で再度拡径する。図14では、排気開口523は吐出部14の混練室13近傍に設けられる。スクリュー324の外径が一定の部位により、外周面430は排気開口523の位置にて排気開口523から離れる。
【0047】
なお、外周面430は、排気開口523から離れた位置においても円筒内周面33や円錐内周面34から部分的に離れてもよい。一般的に表現すれば、回転体32の回転軌跡の外周面430は、排気開口523の位置において、排気開口523の軸方向両側、すなわち、回転体32の支持端361側および自由端362側よりも、円筒内周面33および/または円錐内周面34から離れている。これにより、排気開口523に粘土が詰まることが抑制される。
【0048】
また、スクリュー324に切り欠き部42を設けずに、ブレード323に切り欠き部を設けてもよい。一般的に表現すれば、排気開口523は、混練部材371の押出部材372側の部位、および/または、押出部材372の混練部材371側の部位と、中心軸J1を中心とする径方向に対向する。好ましくは、排気開口523は、混練部材371の押出部材372側の端部、および/または、押出部材372の混練部材371側の端部と、中心軸J1を中心とする径方向に対向する。ただし、回転体32の製造コストを削減するために、ブレード323は全て略同形状であることが好ましく、スクリュー324を変形することにより、回転軌跡の外周面430を排気開口523から離れることが好ましい。
【0049】
軸方向における混練部材371および押出部材372の存在範囲は、軸方向において不連続でもよい。この場合、この不連続な位置に排気開口523が位置する。
【0050】
さらに、投入される粘土の量が少ない場合、回転体32の回転軌跡の外周面430全体が、円筒内周面33および円錐内周面34に近接してもよい。すなわち、スクリュー324から切り欠き部42が省かれてもよい。この場合であっても、排気開口523が混練室13と吐出部14との間の境界近傍に位置するため、排気開口523に粘土が進入することを抑制することができ、混練室13内の減圧を容易に行うことができる。排気開口523は混練室13または吐出部14の上部に設けられる必要はなく、側部や下部に設けられてもよい。
【0051】
中間室45は本体蓋部131以外の位置に設けられてもよい。例えば、排気孔521にチューブが接続され、このチューブに本体蓋部131から独立した中間室が設けられてもよい。中間室45の蓋部453は、不透明でもよい。この場合、土練装置1の稼働前に内部に粘土が詰まっていないか確認される。排気孔521は、円筒内周面33または円錐内周面34に直接開口してもよい。この場合、排気孔521自体が排気開口523となる。隙間522は、前方壁部52と吐出部14との間に設けられてもよい。すなわち、前方壁部52と吐出部14との間に混練室本体132の一部が存在しなくてもよい。
【0052】
吐出される粘土のねじれを抑制する技術は、混練部材が他の様々な形状である土練装置1に利用することができる。例えば、反転機能を有さないもの、減圧機能を有さないもの、混練部材と押出部材とが1つのスクリューであるものに応用可能である。
【0053】
第1吐出内周面61と第2吐出内周面62とは最内径が等しくてもよい。この場合、第1吐出内周面61と第2吐出内周面62との間の境界63は適宜定められてよい。第1吐出内周面61に設けられる複数の凹部または凸部は中心軸に完全に平行である必要はない。
【0054】
上記実施形態および各変形例における構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わされてよい。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明に係る土練装置は、様々な種類の粘土、さらには、粘土と捉えることができる材料の混練(および成型)に利用することができる。また、粘土の使用時に生じる不要粘土の再生に利用することもできる。
【符号の説明】
【0056】
13 混練室
14 吐出部
21 吐出口
27 真空ポンプ
31 モータ
32 回転体
33 円筒内周面
34 円錐内周面
41 貫通孔
41a スリット
42 切り欠き
45 中間室
52 前方壁部
61 第1吐出内周面
62 第2吐出内周面
63 (第1吐出内周面と前記第2吐出内周面との間の)境界
131 本体蓋部
132 混練室本体
133 投入口
260 排気流路
321 シャフト
322 アーム
323 ブレード
324 スクリュー
361 支持端
362 自由端
371 混練部材
372 押出部材
430 (回転軌跡の)外周面
453 蓋部
521 排気孔
522 隙間
523 排気開口
611 凹部
J1 中心軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心軸が水平方向を向く略円筒状の円筒内周面を有する混練室と、
前記中心軸方向の一方の端部が支持されて前記混練室内に配置される回転体と、
前記回転体の前記一方の端部に接続され、前記中心軸を中心に前記回転体を回転させる駆動部と、
前記回転体の他方の端部の外周を覆い、前記駆動部から離れる方向に向かって縮径する円錐内周面を有し、先端に吐出口を有する吐出部と、
減圧部と、
前記混練室内に開口する排気開口と前記減圧部とを連絡する排気流路と、
を備え、
前記回転体が、
前記中心軸に沿って配置され、前記駆動部により回転するシャフトと、
前記他方の端部において前記シャフトに配置され、前記中心軸を中心とする周方向に対して一方向に傾斜するスクリューを含む押出部材と、
前記シャフトの前記押出部材よりも前記一方の端部側に配置された混練部材と、
を備え、
前記混練部材が、
前記シャフトから前記円筒内周面に向かって延びる複数のアームと、
前記複数のアームの先端に配置され、前記周方向に対して前記一方向に傾斜する複数のブレードと、
を備え、
前記排気開口が、前記混練部材の前記押出部材側の部位、および/または、前記押出部材の前記混練部材側の部位と、前記中心軸を中心とする径方向に対向する、土練装置。
【請求項2】
前記混練部材および前記押出部材の回転軌跡の外周面が、前記排気開口の位置において、前記排気開口の前記一方の端部側および前記他方の端部側よりも、前記円筒内周面および/または前記円錐内周面から離れている、土練装置。
【請求項3】
前記回転軌跡の前記外周面が、前記中心軸方向に連続し、かつ、前記中心軸方向における前記排気開口の位置を除いて前記円筒内周面および前記円錐内周面に近接する、請求項1または2に記載の土練装置。
【請求項4】
前記排気流路が、開閉可能な蓋部を備える中間室、をさらに備える、請求項1ないし3のいずれかに記載の土練装置。
【請求項5】
前記蓋部が透明である、請求項4に記載の土練装置。
【請求項6】
前記混練室が、
混練室本体と、
前記混練室本体の上部に設けられた投入口を塞ぐ本体蓋部と、
を備え、
前記本体蓋部の前記吐出部側の壁部と、前記混練室本体または前記吐出部との間に、前記排気開口から上方に延びる隙間が設けられ、
前記排気流路が、前記蓋部本体の前記壁部に設けられた排気孔を構成する部位、を含む、請求項1ないし5のいずれかに記載の土練装置。
【請求項7】
前記排気孔の数が複数である、請求項6に記載の土練装置。
【請求項8】
前記スクリューの前記混練部材側の端部が、前記排気開口の下方に位置し、かつ、外周部が前記円筒内周面から離れている、請求項1ないし7のいずれかに記載の土練装置。
【請求項9】
前記回転体と前記駆動部とが、前記混練室内にて分離可能である、請求項1ないし8のいずれかに記載の土練装置。
【請求項10】
中心軸が水平方向を向く略円筒状の円筒内周面を有する混練室と、
前記中心軸方向の一方の端部が支持されて前記混練室内に配置される回転体と、
前記回転体の前記一方の端部に接続され、前記中心軸を中心に前記回転体を回転させる駆動部と、
減圧部と、
前記混練室と前記減圧部とを連絡する排気流路と、
とを備え、
前記回転体が、
前記中心軸に沿って配置され、前記駆動部により回転するシャフトと、
前記シャフトに配置された混練部材と、
を備え、
前記混練部材が、
前記シャフトから前記円筒内周面に向かって延びる複数のアームと、
前記複数のアームの先端に配置され、前記中心軸を中心とする周方向に対して一方向に傾斜する複数のブレードと、
を備え、
前記複数のブレードの少なくとも一部が、混練時に粘土が通過する複数の貫通孔または複数のスリット、を有する、土練装置。
【請求項11】
混練室と、
中心軸方向の一方の端部にて支持されて前記混連室内に配置される回転体と、
前記回転体の前記一方の端部に接続され、前記中心軸を中心に前記回転体を回転させる駆動部と、
前記回転体の他方の端部の外周を覆い、前記駆動部から離れる方向に向かって縮径する円錐内周面を有し、先端に吐出口を有する吐出部と、
とを備え、
前記回転体が、
前記中心軸に沿って配置され、前記駆動部により回転するシャフトと、
前記他方の端部において前記シャフトに配置され、前記中心軸を中心とする周方向に対して一方向に傾斜するスクリューを含む押出部材と、
前記シャフトの前記押出部材よりも前記一方の端部側に配置された混練部材と、
を備え、
前記吐出部が、
前記円錐内周面から前記吐出口に向かって延びる第1吐出内周面と、
前記第1吐出内周面と前記吐出口の間に位置する第2吐出内周面と、
をさらに有し、
前記第1吐出内周面が、前記中心軸に平行に延び、かつ、前記周方向に配列された複数の凹部または複数の凸部、を有し、
前記第1吐出内周面の最内径が、前記第2吐出内周面の内径以上である、土練装置。
【請求項12】
前記複数の凹部または前記複数の凸部が、前記円錐内周面から前記吐出口に向かって延びる、請求項11に記載の土練装置。
【請求項13】
前記第1吐出内周面が前記複数の凹部を有し、前記複数の凹部が、前記第1吐出内周面と前記第2吐出内周面との間の境界から離れている、請求項11または12に記載の土練装置。
【請求項14】
前記第1吐出内周面の面粗度が、前記第2吐出内周面の面粗度よりも大きい、請求項11ないし13のいずれかに記載の土練装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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