圧力センサを用いた光学的容量性の親指コントロール
【解決手段】 スマートフォンまたはモバイルインターネットデバイス(MID)を制御するように設計されている小型センサ面を提供する。センサ面は、デバイスの側面の、ユーザが手にデバイスを持つとユーザの親指または指が自然に当たる位置に装着されているとしてよい。センサ面は、凹形状および凸形状を同時に持ち、センサ面を利用する際に視覚的および物理的な手掛かりとなる。センサは、親指による操作を解釈してデバイスを制御するための容量感知機能、光感知機能、および、圧力感知機能を含むとしてよい。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、ハンドヘルド型コンピューティングプラットフォーム用の入力装置に関する。特に、圧力センサおよび任意で光センサを用いた親指コントロール装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ハンドヘルド型の無線装置、例えば、携帯電話、携帯情報端末(PDA)、そして、より最新型装置としては新世代のモバイルインターネットデバイス(MID)およびスマートフォンが普及しつつある。市場での競争力を高め、消費者の需要に応えるべく、サービスプロバイダは提供する一連のサービスおよび特徴の一層の拡大に努めている。
【0003】
PDA、より一般的に、ハンドヘルド型コンピュータは本来、メモ、住所録、カレンダー等を記録するための個人用の手帳として利用されるべく設計されていた。現在の世代のMIDハンドヘルド装置は、無線セルラー方式技術がさらに組み込まれており、音声通信用の電話としても機能する。また、多くのハンドヘルド装置によれば、ユーザは、さまざまな情報を入手することが可能となり、さまざまなサービスおよび特徴を利用することができるようになる。例を挙げると、インターネット閲覧、グローバルポジショニングシステム(GPS)に基づく地図および運転案内、その場での株式情報の参照、娯楽案内、電子メールサービス、および、さまざまなマルチメディア機能、例えば、音楽および動画の録音/撮影および再生機能といったサービスおよび特徴が利用可能となる。
【0004】
このようなハンドヘルド装置は基本的に小型であるので、コマンド入力が課題となっていた。初期の世代のハンドヘルド装置では、データおよびコマンドを打ち込むために物理的なキーを利用していた。近年になって、非常に高品質のタッチ画面が開発された。しかし、物理的なキーであろうと、画面上の仮想的なキーであろうと、キーが小型になる傾向があり、操作が難しい場合があった。場合によっては、ユーザの指が大き過ぎたり、不器用で正確にキーを打てない場合には、スタイラスまたはその他のポインティングスティックを用いることもある。また、キーボードおよびタッチ画面は、基本的な機能を入力するに過ぎない場合であっても、片手のみで持って操作するのが困難な場合がある。このため、モバイルデバイス用の入力装置をより操作し易い構成とすることが求められている。
【図面の簡単な説明】
【0005】
上記の内容および本発明は、以下に記載する構成および実施形態例についての詳細な説明、ならびに、請求項を、添付図面と共に参照することによって明らかとなるであろう。図面は全て、本発明の開示内容の一部を成すものとする。上記および下記で説明および図示する開示内容では本発明の構成および実施形態例を開示することに重点を置くが、開示内容は本発明を説明するための例に過ぎず、本発明を限定するものではないと明確に理解されたい。
【図1A】本発明に係る親指センサを備えるモバイルインターネットデバイス(MID)を示す正面図である。
【図1B】本発明に係る親指センサを備えるモバイルインターネットデバイス(MID)を示す側面図である。
【図2A】本発明に係る親指センサの一実施形態を示す正面展開図である。
【図2B】本発明に係る親指センサの一実施形態を示す背面展開図である。
【図3A】光センサを備える本発明の別の実施形態を示す正面図である。
【図3B】光センサを備える本発明の別の実施形態を示す側面図である。
【図3C】光センサを備える本発明の別の実施形態を示す背面図である。
【図4】図3Aから図3Cに示したデバイスの正面展開図である。
【図5】図3Aから図3Cに示したデバイスの背面展開図である。
【図6】親指センサのための調整ボードおよびセンサ入力の一実施形態を説明するためのブロック図である。
【図7】親指または指によるセンサ表面の被覆領域に対する、光センササブシステム、容量センササブシステム、および、統合ハイブリッド型システムの性能を比較したグラフである。
【図8A】光学的開口の有無が任意である、楕円形状の容量電極がハチの巣状に配置されている放射状センサパターンを示す平面図である。
【図8B】光学的開口の有無が任意である、楕円形状の容量電極がハチの巣状に配置されている放射状センサパターンを示す平面図である。
【図8C】光学的開口の有無が任意である、楕円形状の容量電極がハチの巣状に配置されている放射状センサパターンを示す平面図である。
【図8D】光学的開口の有無が任意である、楕円形状の容量電極がハチの巣状に配置されている放射状センサパターンを示す平面図である。
【図9A】光学的開口の有無が任意である、放射状に複数のセクタに分割されると同時に、複数の同心円の円周に沿って分割されている放射状センサパターンを示す平面図である。
【図9B】光学的開口の有無が任意である、放射状に複数のセクタに分割されると同時に、複数の同心円の円周に沿って分割されている放射状センサパターンを示す平面図である。
【図9C】光学的開口の有無が任意である、放射状に複数のセクタに分割されると同時に、複数の同心円の円周に沿って分割されている放射状センサパターンを示す平面図である。
【図9D】光学的開口の有無が任意である、放射状に複数のセクタに分割されると同時に、複数の同心円の円周に沿って分割されている放射状センサパターンを示す平面図である。
【図10A】光学的開口の有無が任意である、多角形状の電極プレートがインターリーブされている放射状センサパターンを示す平面図である。
【図10B】光学的開口の有無が任意である、多角形状の電極プレートがインターリーブされている放射状センサパターンを示す平面図である。
【図10C】光学的開口の有無が任意である、多角形状の電極プレートがインターリーブされている放射状センサパターンを示す平面図である。
【図10D】光学的開口の有無が任意である、多角形状の電極プレートがインターリーブされている放射状センサパターンを示す平面図である。
【図10E】電極プレートの特定の配置方法を詳細に説明するための図10Aから図10Dの補足図面である。
【図10F】電極プレートの特定の配置方法を詳細に説明するための図10Aから図10Dの補足図面である。
【図11A】光学的開口の有無が任意である、軸線に沿ってセンサ領域が分割されている格子状センサパターンを示す平面図である。
【図11B】光学的開口の有無が任意である、軸線に沿ってセンサ領域が分割されている格子状センサパターンを示す平面図である。
【図11C】光学的開口の有無が任意である、軸線に沿ってセンサ領域が分割されている格子状センサパターンを示す平面図である。
【図11D】光学的開口の有無が任意である、軸線に沿ってセンサ領域が分割されている格子状センサパターンを示す平面図である。
【図12A】光学的開口の有無が任意である、斜体楕円形状の電極プレートを備える格子状センサパターンを示す平面図である。
【図12B】光学的開口の有無が任意である、斜体楕円形状の電極プレートを備える格子状センサパターンを示す平面図である。
【図13A】光学的開口の有無が任意である、ひし形格子状センサパターンを示す平面図である。
【図13B】光学的開口の有無が任意である、ひし形格子状センサパターンを示す平面図である。
【図14A】親指センサを示す図であり、より高度な位置情報を取得するための親指または指の3次元配向感知方式を示す図である。
【図14B】親指センサを示す図であり、より高度な位置情報を取得するための親指または指の3次元配向感知方式を示す図である。
【図14C】親指センサを示す図であり、より高度な位置情報を取得するための親指または指の3次元配向感知方式を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
スマートフォンまたはモバイルインターネットデバイス(MID)を制御するべく設計されている小型センサを説明する。センサ表面は、ハンドヘルドデバイスの側面の、ユーザが手に当該ハンドヘルドデバイスを持つとユーザの親指が自然に当たる位置に装着されているとしてよい。センサ表面は、センサ表面を利用する際に視覚的および物理的な手掛かりとなるように、凹型であってよい。センサは、ポインティング、選択および制御のための操作が直感的で疲れにくいような構成となっている。
【0007】
本明細書では「一実施形態」または「ある実施形態」という表現を何度も用いるが、この表現は、当該実施形態に関連付けて説明している特定の特徴、構造または特性が、本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれていることを意味する。このため、本明細書では繰り返し「一実施形態において」または「ある実施形態によると」といった表現が見られるが、必ずしも全てが同じ実施形態を指しているわけではない。また、1以上の実施形態において特定の特徴、構造または特性を適宜組み合わせるとしてもよい。
【0008】
図1Aおよび図1Bはそれぞれ、本発明に係る親指センサ102の一実施形態を備えるモバイルインターネットデバイス(MID)100を説明するための正面図および側面図である。MID100は、タッチ画面であるディスプレイ画面104、ならびに、電話機能用のスピーカ106およびマウスピース108等の構成要素を備えるとしてよい。言うまでもなく、MIDにはこれ以外にも機能があるが、必ずしも全てを説明するものではない。
【0009】
親指センサ102は、MID100の右上側面に位置するものとして図示されている。言うまでも無く、一部の実施形態では、親指センサ102は、左利きユーザに便利なようにMIDのうち別の側面に配置されるとしてよい。図示した位置にある場合、ユーザがデバイス100を手に持つとユーザの親指は自然にセンサ102に当たることになる。
【0010】
親指センサ102は、MID100に対するさまざまな形態の制御を可能とするとしてよい。第一に、ユーザは、センサ102の表面上で親指を摺動させることによってのみ、「ポインティング」を制御することができる。このポインティングは、言うまでもなく、一部の動作、例えば、カーソル105をディスプレイ画面104上で移動させること、に対応するとしてよい。
【0011】
第二に、ユーザは、ポインタ、カーソルまたはキャレットの位置に対応付けられた「選択」機能を利用することができる。選択機能は、物理的に親指でセンサ102を押下することによって、または、センサ表面で軽くタップする操作を実行することによって実現される。
【0012】
最後に、ユーザは、垂直方向または水平方向に「フリック」を実行することができる。フリック動作は、電子メールパッケージ、ウェブブラウザ、または、ドキュメントビューワ/エディタの制御にマッピングされ得る。
【0013】
センサ102の「ポインティング」機能の用途の例をさらに挙げると、表示を垂直方向および水平方向にスクロールまたは回転させること、ドキュメントまたはウェブページをスクロールすること、選択カーソルまたは編集キャレットをテキスト内またはウェブドキュメント内で移動させること、ビデオゲームまたは仮想環境等において3D表示を回転させること、精細な実物または仮想的なカメラのパン、チルト、およびズームを精密に制御すること、インタラクティブ型の地図において精密にパンおよびズームを制御すること、または、デジタル写真のパンおよびズームを精密に制御すること、が挙げられる。
【0014】
フリック操作の利用例を他にも具体的に挙げると、水平方向および垂直方向にカテゴリー化されて整理されている画像群を反転させること、所定の度数間隔でユーザインターフェース要素を回転させること、または、アプリケーションまたはウィンドウを切り替えること、が挙げられる。
【0015】
フリック操作を検出方法の1つとして、以下の方法がある。センサ上およびセンサ近傍において親指がある時間にわたって移動すると、3次元で操作経路を形成するべくこの移動を追跡および記録するとしてよい。フリック操作は、設定可能なしきい値と相対的に所与の全移動経路の速度を測定することによって、アルゴリズムを用いて精密位置制御とは区別するとしてよい。この移動経路は、3次元移動経路の空間分析に基づいて終端に到達したと見なされるとしてよい。特に、フリック操作の開始条件および終了条件が満たされているか否かに基づいて判断するとしてよい。フリック操作の開始条件および終了条件は、表面へのタッチに続いて移動が検出され、その後にタッチが離れたことを検出することを含むとしてよい。設定可能な速度しきい値よりも所与の方向に所与の量だけ大きい場合には、この移動操作は、指向性の強いフリック操作と見なされるとしてよい。移動の強さは、ユーザインターフェース要素をどの程度で制御するかにマッピングされている。例えば、3次元のユーザインターフェースオブジェクトの回転速度を変調する。
【0016】
当該システムにおいて操作を検出する別の方法として、トレーニングされたデータセットおよびパターン分類技術を利用する方法がある。この方法の一実施形態として、特定用途向けに構成されたサポートベクターマシン(SVM)がある。この方法では、操作および移動が行なわれる空間を、SVMへの入力で定義されるN空間内の一連のハイパー平面でパーティション化する。例えば、SVMは、最初のセンサ値、最後のセンサ値、中間センサ値、平均速度、最大速度、「圧力」RMSを追跡して、6空間での分類を算出するとしてよい。上記のようなSVMはさらに、既に書き込まれており変更できないセンサデータを利用するのではなく、(上記の引数を拡張することによって)状態空間の一環として、光学データを利用することができる。
【0017】
SVM認識装置を直接利用することができ、検出精度を向上させるべく、帰納的ブースティングおよび帰納的特徴削除(Recursive Feature Elimination :RFE)を同様に利用することができる。トレーニングされたデータを操作エンジンで利用するということは、例外的なユーザをサポートするように再トレーニングされ得る。
【0018】
操作を検出する方法はどの方法についても、単独で利用するとしてもよいし、または、他の方法と組み合わせて、ハイブリッド方式の操作検出方法として利用されるとしてもよい。
【0019】
ポインティングデータおよび追跡データは通常、ソフトウェア取得チェーンの複数のポイントにおいて処理される。具体的な実施形態はさまざまであるが、通常の例を挙げると、プリフィルタ、主要フィルタ、および、副次(または、出力)フィルタを含む。プリフィルタの目的は通常、生データサンプルを主要フィルタで利用できるように準備することであり、センサの特徴を決定すると共に、生のセンサの基準フレームから主要フィルタが利用している基準フレームへと変換するための簡単な変換を適用する。主要フィルタは、各サンプルからノイズを除去するように設計されている。最後に、出力フィルタは通常、主要フィルタの出力に変換を適用して、データを直接利用により適したものとする。
【0020】
本発明の実施形態がハイブリッド型で光学センサおよび容量センサを用いる場合、光学データおよび容量データを同じ座標系に書き換え出来ないように書き込む必要がある。これは、センサ装置の具体的な実施形態に応じて、フィルタチェーンのさまざまなポイントにおいて対応するとしてよい。一実施形態によると、光学データについては容量フィルタとは別のプリフィルタが設けられており、主要フィルタの間のみ容量データとハイブリッド化される。
【0021】
主要フィルタの一実施形態は、適応型の無限インパルス応答(IIR)フィルタであり、デバイスの絶対的な追跡位置は、親指または指の移動が低速で慎重になるほどに精密に制御され得る。同じポインタ位置を大きく弧を描くように移動させることも同様に可能である。適応型のフィルタは、センサ表面での動きの速度を測定した結果に基づいてフィルタリングの程度を動的に調節する。フィルタリング後の絶対位置Pnewは、フィルタリング前の絶対位置Praw、フィルタリング後の先行位置Pprevious、および、フィルタ係数fが与えられると、Pnew=f*Praw+(1−f)*Ppreviousに従って、IIRフィルタで算出することができる。
【0022】
フィルタ係数fは、常に0と1との間で変動し、追跡対象の移動をどの程度フィルタリングまたは抑制するかに影響を与える。fが1または1に近い値の場合、フィルタリングはディセーブルされて、移動は高速化し、ノイズが増加する。fが0または0に近い値の場合、フィルタリングは最大または略最大で、ノイズは低減され、移動は低速化または停止させられる。
【0023】
フィルタ係数fは、相対速度減衰関数Fの出力に応じて変わる。この減衰関数Fは概して、高速なユーザの指または親指の移動を低いfの値とマッピングしており、低速なユーザの移動を高いfの値にマッピングしている。fの値は、親指または指が移動を低速化または停止させると、時間と共に指数関数的に減衰して、最終的には1または1の近傍の値に落ち着く。一方、追跡の対象となっているユーザの実際の移動(Praw)が比較的高速な場合には、Fの出力が1に近くなるか、または、1になるので、フィルタリングを低減またはディセーブルにするとしてもよい。fは、加速および減速する、抑制された点質量物理系における位置として取り扱われる。この系では、ユーザの高速の移動は、位置表現fが1に向けて加速することに対応し、ユーザの低速の移動は、加速効果を低減またはゼロとする。fの位置表現は、0に向かう恒常的な減速の影響を受ける。この系において、0に向かう減速は、動きを高速化または低速化することによってユーザが制御可能な時間依存性関数である。fの値が0の近傍にある場合には、フィルタリングの程度が高くなるという効果が見られ、これに対応してユーザは、徐々に移動の高速化幅を細かくしていくことがしやすくなる。fの値が1または1の近傍にある場合には、IIRフィルタの効果が低減されるか、または、IIRフィルタがディセーブルされる。フィルタリングが低減またはディセーブルされると、大きなまたは高速の移動が可能である。また、フィルタリングを低減すると、ノイズが増加するが、一般的に動きが大きくなると小さくて慎重な移動の場合よりもノイズが目立ちにくいので、実際には、パラメータを適切に調整することでノイズをユーザには分からないようにすることができる。調整可能な関数パラメータは、編集キャレットのテキスト本体における文字間での、または、ポインタの画面画素間での意図的且つ高精度の移動が、ディスプレイ画面における大きな移動を大幅に劣化させることなく、当該デバイスで可能となるように、調整されるとしてよい。
【0024】
適応型フィルタは、親指センサシステムに本質的に存在する問題を解決するように設計されている。この問題とは、親指または指と、センサ表面とを比較した場合にサイズが異なることに関連した問題である。動的選択方式ではなくフィルタリングレベルとして1つのレベルを選択する場合、画素またはテキストにおける精細なカーソル位置決定に最適なように値を選択すると、画面全体または長いテキストにわたってカーソルを動かすための大きな移動については遅過ぎる場合がある。同様に、大きな移動に最適なように係数を選択すると、精細な制御を行う場合には利用できなくなってしまう場合がある。フィルタリングパラメータを動的に制御する場合の利点としてさらに、ユーザの移動が軽くて高速な場合に、不適切にフィルタリングの程度を高くすることによって移動を抑制してしまう事態を避けることができる。このような適応型フィルタリング方式の出力は、ユーザインターフェース全体で利用され、位置の移動に関連する全ての用途において制御感度を改善することができる。
【0025】
別の実施形態に係る主要フィルタは、多極多タップ有限インパルス応答フィルタ(FIR)を利用する。本実施形態によれば、IIRを利用する実施例に比べて、センサの周波数選択性がより明確になり、IIRを利用する実施例の不安定性の問題が解決される。FIRを利用するフィルタ実施例では、システムの信号特性/ノイズ特性を測定した結果に基づいて係数を算出する。
【0026】
FIRを利用する実施形態では、IIRフィルタ方式と同様の拡張方法に基づき、適応型フィルタシステムを形成することができる。
【0027】
上記以外の主要フィルタ実施形態も利用可能であるとしてよい。貴重な特性を持つ一部の実施形態は、一般的に予測フィルタ、およびカルマン/拡張カルマンフィルタ、具体的には粒子フィルタである。このような実施形態では、予測移動モデルを用いて、状態の算出に役立たせるため、および、応答遅延を低減させるために、基礎となるシステムに情報を与える。これは、光学データおよび容量データのハイブリッド化にも有用である。
【0028】
主要フィルタに加えて、例えば、マウスのような画面ポインタの利用モデルの場合にカーソル追跡の安定性を改善するために、副次フィルタを適用するとしてよい。フィルタリングされたポイントには、別の加速曲線をさらに適用するとしてよい。この曲線は、主要フィルタでフィルタリングされたポインタ速度Vを調整後のポインタ速度V´にマッピングしている。ポインタ入力システムの特性として望ましいのは、ユーザ入力に対する応答が線形性を持つことである。線形性を実現するためには、移動に応じた加速を実現しつつ2つの線形セグメントを統合する曲線を利用するとしてよい。
【0029】
副次フィルタの一実施形態では、低速時および高速時の2種類の速度マッピング値を表す2つの線形加速部分を円滑に接続するべく、ベジエ曲線を利用する。複数の線形部分を接続して用いることによって、あらゆる箇所で曲折している速度空間で空間的に操作するようにユーザに求める通常のマウス加速曲線が持つ望ましくない特性を回避する。これは、ボールの表面に直線を引くようにユーザに求めることと同じである。この第2層目のフィルタリングは、画面画素またはその他の精細な要素の上でカーソルポインタを安定化させる上で重要である。
【0030】
別の実施形態に係る副次フィルタは、双極正接(またはその他の円滑な微分可能関数)の弾道曲線である。他の曲線を用いて、平坦な速度空間を、ユーザが高精度および低精度のポインタ制御の両方を行えるように設計されている曲線状の速度空間にマッピングするこの機能をサポートするとしてもよい。
【0031】
システムのプリフィルタまたは生データの一部として追跡の対象である親指または指のポイントのフィルタリング前の値を算出するが、これは複数の独特のアルゴリズムを用いて行なうとしてよい。第1のアルゴリズムでは、各電極プレートを空間内のポイントと見なして、各ポイントを当該ポイントの容量測定値で乗算した結果を重み付けした値を算出する。物理的なシステムと同様に、容量は質量の測定結果として取り扱われ、各電極センサは離散したポイントでの質量のサンプル値を表す。この類似例では、質量中心または電荷中心は、電磁界が存在する場合に当該電磁界に影響を与える指または親指等の大きな物体の位置を良好に近似している。
【0032】
この質量中心の算出の変形例では、特定の選択された電極対の相互容量の測定結果を用いることを含むとしてよい。このような電極対は、順番に選択するとしてよい。そして、測定結果を合計して、指または親指等の物体が存在する場合の容量場の空間マップを形成するとしてよい。電極対によって、その間に直接置かれている物体の存在によって最も強い影響を受ける容量測定結果を得る。親指センサ102の全表面の範囲が、電極対の間の空間の一部によって形成されるように空間的に配置されている複数の電極対において複数の測定結果を得ることができる。指または親指等の物体の存在および位置のより詳細な3次元マッピングは、複数の連続した電極対の一連の測定結果を組み合わせることによって得られるとしてよい。センサ表面102と近接した位置にある物体のサイズ、形状および体積についてより多くの情報があれば、従来のタッチパッドアルゴリズムでは問題となるさまざまな場合を考慮して、デバイスは全体的により良好に位置を判定することができる。
【0033】
第2の変形例では、質量中心の算出に同様の方法を利用するが、細かい位置変化を強調して小さいセンサ領域をより良く利用するために、距離係数として逆二乗の法則を利用する。
【0034】
プリフィルタはさらに、各センサプレートの感度または応答性の差異を自動で追跡するように設計されているバイアス除去方法を含むとしてよい。任意の数のさまざまなバイアス除去アルゴリズムまたはバイアス除去方法を利用するとしてよい。
【0035】
バイアス除去アルゴリズムの一例として、行列バイアス除去が挙げられる。この方法では、容量プレートを、プレート毎に、各チャネルの最低観測値(iをチャネル番号とするとBi)、各チャネルのBi値を超える最大値Maxi、任意の特定の読出群のグローバル最小値M、および、グローバル正規化定数Mnormを追跡することによって正規化する。センサを読み出す度に、Biを更新して、元の測定値から減算してWiを算出した後に、Maxiを更新する。この時点で、読出群のうちバイアス除去後の測定値の最小値でMを更新して、Wi/Maxiの比が最小値を取るようにMnormを更新する。そして、Wiまたは正規化した(Wi/Maxi)−Mnormの一方を用いて重心算出方法の1つに基づきポイントの位置を算出する。
【0036】
一部の容量式タッチパッドアルゴリズムでは、容量センサアレイ表面に対して親指または指が平坦になるケースの対応に重点を置いていない。このように平坦な、または、広い物体がセンサ表面に接触する場合には、位置情報が不正確またはあいまいになってしまう。接触面面積は従来の容量方式タッチパッドアルゴリズムの位置算出において非常に重要なパラメータであるので、センサ表面に接触している広い物体または平坦な物体が転がったりずれたりして、誤差が大きくなったり、意図せず動いたりしてしまう場合があるとしてよい。これは、従来のタッチパッド装置での問題と見なされており、親指センサ装置102ではよくある問題である。この問題は、統合ハイブリッド型光学的容量性システムで解決され得る。任意であるが、容量方式のみを採用した親指センサシステムは、問題となるケースを明確に識別するべく親指または指に関してより高次のデータを取得する新型のアルゴリズムを利用するとしてもよい。新型のアルゴリズムでは、3次元で、センサ表面に対する親指または指の体積配向を分析するとしてよい。この場合、従来のタッチパッドシステムが抱える問題となるケースでの誤差または不正確さは、このより高次のデータを解釈することで回避され得る。
【0037】
体積データセットを解釈する方法では、数値最適化を利用して、親指または指を表現する最良適合数学モデルを体積に与えるとしてよい。この数学モデルは、2つの焦点を持ち、そのうち1つが親指または指の先端と見なされるような3次元楕円の場合のように、はっきりとした関節点を持つとしてよい。別のモデルでは、円筒または管を近似させるために用いるとしてよく、管の一端を、親指または指の幅と一致する所定の半径だけ内側にオフセットして、親指または指の先端と見なすとしてよい。楕円形に近似される平坦な親指または指であっても、このように親指または指の先端と現される上側焦点は、従来のタッチパッドシステムに比べると、ユーザの親指または指の先端の位置により一致した一定の位置に留まる。
【0038】
従来のタッチパッドシステムでは、親指または指が平坦になったり転がったりする場合には、検出される位置のバラツキが非常に大きく、ユーザの意図した制御ポイントが親指または指の先端またはその近傍であっても、センサ表面に対する親指または指の面接触のポイントまたは面積に完全に依存してしまう。このように、従来のセンササブシステムで測定して得られる容量データについて体積アルゴリズム方式または3次元アルゴリズム方式を用いることは、親指センサ装置の主流構成の総合的な有用性において重要な点である。
【0039】
図1Bならびに図14A、図14Bおよび図14Cを参照して、親指または指の3次元配向を感知および識別して高度な位置情報を導出するアルゴリズム方式を説明する。図14Aは、通常の容量センサの配置方法を示す図である。同図に示す例では、センサ電極の配置方法を変更することもできるが、平面1400として図示している親指センサ表面102に、放射状のハチの巣状に複数の容量電極プレート1401が配置されている。図14Bは、容量センサの測定データの一例を、各容量電極1401の位置にそれぞれ対応するセンサ表面空間1400の内部または上部に位置する体積回転楕円体1403として可視化した図である。この回転楕円体は、指または親指等の、センサ表面上またはセンサ表面近傍にある物体までのおよその距離を測定した結果を表している。この距離は、平行プレートキャパシタシステムにおいて、距離、面積および容量の関係に関する従来の数式に基づいて算出する。この数式はC=A/dである。このように、距離の項は、各センサ電極からおよその値が取得されるとしてよい。図14Cは、楕円形、管、関連付けられ結合された複数の回転楕円体を有する連結集合体、または、親指または指を表すと共にそれと同様のその他の幾何学的物体としてモデル化されている、親指または指の幾何学的モデル1404のおよその配向を導出する方法を図示した説明図である。数値適合方法を利用して、幾何学的親指モデル1404の3次元的な位置および角度配向は、センサ測定結果から導出された回転楕円体1403の集合体によって画定されるマニホルドに重ねて配置されるとしてよい。親指または指の幾何学的モデルのおよその3次元的な位置および配向を数値適合方法に基づいて取得する場合、ユーザインターフェース内の代表ポイントとして機能する、この幾何学的モデル内またはこの幾何学的モデル近傍の任意のポイントを指定するとしてよい。同様に、角度または距離に関する情報も、この幾何学的モデルから推定され得る。親指または親指の一部を表すものとして楕円形を選択する場合、この楕円形の焦点1405のうちの1つが、ユーザインターフェース内の代表ポイントとして選択されるとしてよい。このポイントは、親指または指の先端または指標に関して、従来のタッチパッドアルゴリズムで導き出される、およその位置が1406であるポイントよりもはるかに直感的である。このように精度が改善された代表ポイント1405は、後段のフィルタに入力されるか、または、数値適合系の後続サイクルにおいて初期推定結果として用いられるとしてよい。この新しい方法では、容量センサフィールドに対して親指または指が平坦になった場合に発生する問題の多くについて、センサ表面102に対する接触面積の2次元的な重心または2次元的な接触点に関する従来の分析ではなく、3次元で空間分析を実行することによって対処している。図14Aから図14Cに図示した具体的な構成に限定されるものではなく、各電極プレート1401は、通常の配置方法で楕円形状でも、距離であるセンサ測定結果を近似した結果が改善され、一連の回転楕円体として表すことが可能となる。このような特定のアルゴリズムは、放射状、格子状等を始めとしたさまざまなセンサ構成で利用することができると理解されたい。
【0040】
上述したアルゴリズムの変形例では、3つの手根部を2つの関節部で接続した骨格系としてモデル化された親指を表す。これらの手根部は、親指または指の系の動きを、人間の親指または指の関節に固有の関節限界から導き出される限界に制限するアルゴリズムリンクによって接続された複数の楕円形または回転楕円形で近似するとしてよい。上述した3次元体積分析はさらに、関節を完全に模倣した幾何学的モデルを採用することによって高度化されるとしてよく、センサ表面102に対する親指または指の配向に関してさらに情報を供給する。この情報は、従来のタッチパッドシステムで見られたエラーまたは測定不能の問題について位置データを安定化させるためには肝要であるとしてよい。
【0041】
図2Aおよび図2Bはそれぞれ、一実施形態に係る親指センサの正面展開図および背面展開図である。親指センサでは、センサ基板200にプリント配線基板(PCB)202または調整ボードが着座しているとしてよい。PCB202には、PCB202からの電気信号をルーティングするための可撓性コネクタリード線204が設けられているとしてよい。センサカバー206は一般的に、長円形状で人間の親指の指球が快適に収容される凹面を持つとしてよい。一実施形態によると、組立時にカバー206をセンサ基板200に固定するクリップ208が設けられるとしてよい。センサカバー206は、親指の移動および運動を感知する複数のセンサ210を有するとしてよい。一実施形態によると、複数のセンサ210は、上述したように、アレイ状に配置された複数の容量センサであってよい。
【0042】
1以上の触覚スイッチまたはドームスイッチ212をさらに設けるとしてよい。一実施形態によると、2つのドームスイッチが設けられるとしてよく、一方はセンサカバー206の上部の近傍に配置され、他方は底部の近傍に配置される。スイッチ自体に十分な跳ね返り力がない場合には、パッドを元の位置に戻すためにバネを追加するとしてよい。センサからの信号は、ゼブラストリップコネクタ214等の中央コネクタにルーティングされるとしてよい。ゼブラストリップコネクタ214は一般的に、プリント配線基板202上の電子素子を短時間でアラインメント可能とするパッケージングデバイスである。ゼブラストリップコネクタ214は、小さいゴム製の長尺状部材の周囲に沿って炭素の帯状部材が設けられているとしてよく、長尺状部材は、いずれかの帯状部材が両側で選択されることによってプリント配線基板上のパッドからセンサ210上のパッドへの接触を可能とする。ゼブラコネクタ支持部216は、支持力を高めるために、PCB202の反対側に設けられるとしてよい。チップ218は、可撓性コネクタ204を介して、デバイス外処理のためのセンサデータを整理するために設けられているとしてよい。
【0043】
容量センサパッド210は、センサの親指面の内側に配設されるとしてよい。容量センサは、利用されるべく選択されたアルゴリズムに応じて容量場を最適化するように設計されたさまざまな新しいパターンで配置されている複数の容量センサを利用する。触覚スイッチまたはドームスイッチ212をこの面の下方に取着している。このため、ユーザは、動かして適切なタイミングで圧力を加えることで一度の動きで素早く「ポインティングおよびクリック」を行なうことができる。
【0044】
図1Aおよび図1Bを参照しつつ上述したように、MID100には、好ましくは当該デバイスの長い方の端縁(つまり、上向きで持った場合のデバイスの左側または右側)に沿ってセンサが適合しているとしてよい。ユーザは、親指または指を、センサ102の表面を横切るように沿わせることによって、2次元入力(つまり、x−y入力)を供給して、例えば、ディスプレイ104上でのカーソル105の位置を制御する。タッチ面102にはさらに、圧力感知機構が設けられているとしてもよい。圧力感知機構は少なくとも、ユーザが加えた圧力が所定のしきい値より高いか低いかを判断する。親指インターフェースはこのため、2つの次元(xおよびy)のスカラー入力および第3の次元のブール入力から形成される、「2.5D」入力を供給する。
【0045】
ブール入力を用いて「クリック」(例えば、選択)または「入力/承認/次」機能を提供するとしてよい。ブール入力の長さを監視することによって、デバイスは、「クリック」と「長押し」とを区別することができる。制御方式の1つによると、1回のタップでデバイスを省電力状態から起こす。起きた後は、シングルクリックでオブジェクトを選択して、ダブルクリックで当該オブジェクトの選択を解除するとしてよい。長押しによって、強調処理を確定するとしてよい。続いてx−y入力が為されると強調領域を確定して、2回目の長押しで強調処理を終了させる。
【0046】
これに代えて、ユーザは、所定のしきい値を超える接触圧力を、強調領域を画定するための移動中はずっと維持することによって、つまり、「ドラッグ」操作によって領域を強調するとしてもよい。また、ダブルタップを用いて、階層構造のメニューを「戻る」ための操作とする。圧力感知機構が、加えられた圧力について正しいスカラー測定値を供給する場合には、完全な3D制御を実行することができる。この場合、測定される圧力入力値は任意の数の機能にマッピングされているとしてよい。例えば、表示されているコンテンツの拡大、ズーム、または、3次元画像の深さ方向の次元での操作等にマッピングされているとしてよい。
【0047】
別の実施形態によると、本発明はさらに、サムホイール制御に適用されるとしてもよい。回転するサムホイールに機械的に結合されている接触型スイッチまたは力センサによって、上述したのと同様に利用され得る1.5D入力または2D入力が生成される。
【0048】
図3A、図3Bおよび図3Cはそれぞれ、本発明の別の実施形態に係る、光感知をさらに行なう親指センサを示す正面図、側面図および背面図である。言うまでも無く、この構成は図1Aおよび図1Bに示したMIDにも利用され得る。上記のように、親指センサは、凹形状および凸形状を同時に持つ長円状、または、「鞍」形状のカバー206を含むとしてよく、上記と同様の容量センサアレイ210を含むとしてよい。また、光センサ300を実現するために、ウィンドウまたは開口を設けるとしてよい。一実施形態によると、光センサ300は、発光ダイオード(LED)302またはレーザ等の光源を含むとしてよい。また、光検出回路304を設けて、検出された光の変化を監視して親指の動きを判断するとしてよい。選択される光スペクトル範囲には、可視光または赤外光を含む任意の波長が含まれるとしてよい。
【0049】
図4および図5はそれぞれ、図3Aおよび図3Bに示した親指センサの正面展開図および背面展開図である。同図に示すように、カバー206は、容量センサ210と、光センサ用のウィンドウ300とを有する。ホルダ400は、ウィンドウ300に対して所定の角度で光源302を保持するとしてよい。ホルダは、プリズム301を有するとしてよい。光検出部304は同様に、センサ表面のカバー206を横切るような親指の移動を検出するべく、ホルダ400の後方に着座するとしてよい。
【0050】
親指で操作するタッチセンサを設計する上で問題が発生し得るのは、親指とセンサとの間の接触用パッチが、センサの絶対寸法と比較して大きいためである。容量センサ210は、ユーザの指に容量によって(静電力によって)結合される表面電極アレイを組み込むとしてよい。1つの感知回路を、電極アレイ内に通常多数設けられている素子の間で、電子的に切り替えて、指が存在することによる影響が最も大きい電極の箇所を特定するべくそれぞれの容量を測定して、指の位置を推定する。しかし、物理的に小さい多くの素子から形成されるアレイを備える親指センサの場合、親指は素子の大半に対して同様の影響を与える。このため、電極の数が多いのは概して、有用ではない場合がある。
【0051】
近接性または1次元の横方向の位置についてのアナログ出力を生成するより簡単な構成の容量性感知装置が何十年間にもわたって利用されてきた。このような装置は、相互容量、正弦波による電極励起、および、同期検出に基づいた構成となっていることが多い。このような構成では多数の電極の多重化を行なう必要がないので応答速度が改善されるが、センサの空間分解能が低下し得る。
【0052】
これとは対照的に、光タッチセンサは分解能を向上させることができる。しかし、光センサは、実際に接触しているのか、近接しているのかを容易に区別することができない。タッチ感知面の非常に近いところに指が位置していても、光センサが操作されてしまう場合がある。最も大きい問題はおそらく、1つの光センサで追跡可能な動きの範囲は、親指接触用のパッチのサイズの約2倍に限定されてしまう点が挙げられる。
【0053】
容量方式および光学方式を組み合わせたハイブリッド型センサを図4および図5に示すが、利点を利用して、各方式センサの弱点を克服するセンサ統合方式である。具体的には、ハイブリッド型センサは、実際に接触しているか否かを検出して、十分な大きさの追跡範囲にわたって細かい単位で動きを追跡する。
【0054】
本発明に係る処理は、4つの基本概念に基づいているとしてよい。
1.容量センサ測定および光センサ測定を組み合わせる。
2.電極構成では、1つの感知電極の周囲に複数の同時に動作する駆動電極を設ける。
3.多重周波数の正弦波による励起、または、符号分割方式のデジタル励起。
4.センサ電極とユーザの親指との間に弾性絶縁層を設ける。
【0055】
センサの構成として可能なものを1つ挙げると、4つの駆動電極D1−D4が、1つの感知電極Sの周囲に設けられており、感知電極は光センサと同位置に設けられている。互いに近接して設けられている駆動電極はそれぞれ、円形状の感知電極の周囲を取り囲む環状部の約4分の1だけ延伸している。
【0056】
これら複数の駆動電極は、別々の信号で同時に励起させ、これらの信号の合計値を重み付けして、感知電極に結合する。そして、感知電極からの信号を増幅して復調して、4つの結合パラメータ(相互容量)(D1;S)、(D2;S)、(D3;S)および(D4;S)を抽出する。
【0057】
寄生容量が大きいので、親指が存在する旨を示す信号は、大きい信号における小さな変化であり、増幅段および復調段においてダイナミックレンジに関連した問題が発生する可能性がある。この問題は、全ての相互容量が等しい場合に互いに打ち消し合う逆相駆動信号を用いることによって、抑制し得る。
【0058】
このため、親指の位置は、対称性からの逸脱として現れる差分信号によって表される。
【0059】
例えば、4つの駆動信号は以下のようになる。
D1=sin(ω1t)+sin(ω2t)+0.01sin(ω3t)
D2=sin(ω1t)−sin(ω2t)+0.01sin(ω3t)
D3=−sin(ω1t)+sin(ω2t)+0.01sin(ω3t)
D4=−sin(ω1t)−sin(ω2t)+0.01sin(ω3t)
【0060】
周波数ω1で動作している同期復調器はy軸の親指の位置に応答し、周波数ω2で動作している同期復調器はx軸の親指の位置に応答する。周波数ω3では、システムが(差分方式ではなく)シングルエンド方式のシステムであるが、信号レベルは100という因数で低減されて、増幅器のダイナミックレンジの問題を解決する。周波数ω3で動作している同期復調器は、親指の近接性に応答する。これら3つの復調器は全て、1つのセンサ入力で同時に動作し(つまり、多重化は必要ない)、センサデータレートは、信号雑音比によってのみ制限され、非常に高く(例えば、キロヘルツレベル)することが可能である。
【0061】
上述したようなアナログの正弦波による励起に代えて、直交バイナリコードによる駆動を採用する。この場合には、各駆動信号はデジタル(オン/オフ)パルス列である。同期復調器に代えて相関関係検出器を用いて、適切なコードパターンとコヒーレントなセンサ信号のアナログレベルに比例する出力を生成する。この場合も、寄生容量を無効化するための逆相駆動方法を採用することが可能であるとしてよい。このシステムは、スペクトル拡散方法をサポートし、アナログ駆動構成要素を必要としないので、有益である。外部増幅器およびアナログデジタル変換器を1つのみ備えるフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)で実装されるとしてよい。
【0062】
弾性表面層を設けることによって、親指がデバイスに接触している時に、力に対する感度が高い応答が得られる。適切な閉細胞型の発泡性材料または同様の材料を用いることによって、容量性感知方式に適切な小さなずれに力を変換する。このような圧力情報がさらに得られることによって、制御応答および操作多様性を改善し得る。
【0063】
上述したように、「センサが影に入る」という問題に対処するべく、光学式マウスに設けられているものと同様の光センサ(電極構造の中央に設ける)で容量センサを補完する。光センサによって、デバイスの性能は少なくとも1つの点において改善されるとしてよい。全ての容量センサ電極が完全に親指または指で覆われ(センサが影に入り)、親指または指が完全に平坦な状態で摺動することによって、摺動中は常に電極プレートが完全に親指または指で被覆されたままである場合、容量方式システムでは位置追跡情報を更新することが出来ない場合がある。この場合に、この種の動きを検出および追跡可能な光学システムが現在追跡中の位置の決定処理を引き継ぐ。これは、センサのうち影に入った範囲の大きさに関わらず、親指または指の表面が横方向に摺動すると、開口から見ることができ、光学的な動き追跡を利用可能であるためである。光センサでこのような動きを追跡可能であるので、ユーザは、より広い範囲にわたって移動させて、インターフェースの制御を高精細化および高ロバスト化できる。
【0064】
容量センサで決定できない場合に動き追跡を補完的に実行することに加えて、任意の特定の実施形態では、光学データまたは容量データの精度は、ある種の感知結果については相手よりも高くなるとしてよい。例えば、一実施形態によると、光センサは速度角度の検出には優れているが、速度の検出は比較的性能が劣るとしてよい。この実施形態では、容量データと光学データとを主要フィルタにおいてハイブリッド化する。このような構成にすることによって、光入力または容量入力の一方のみが利用される場合に比べて、良好な結果が得られる。
【0065】
図7は、光センサシステムおよび容量センサシステムの性能上の利点、および、統合ハイブリッド型光学的容量方式親指センサシステムの性能を比較して、親指または指によって被覆されたセンサ面102の割合と関連付けて示すグラフである。
【0066】
本願で提案するハイブリッド方式では、容量センサを主に、タッチ検出および3次元での絶対位置情報の取得に利用する。力および絶対位置に関する情報を得ることで、ユーザは、例えば、瞬時に強く、タッチ感知領域の上側周縁または下側周縁に接触して、ページアップ操作またはページダウン操作を実行可能になるとしてよい。光センサからは、接近している旨を示す情報およびセンサの表面に沿ったより高分解能の測定結果を得る。
【0067】
光センサは、取得遅延を回避するべく、容量センサが検出したタッチに応じて、取得モードにロックされるとしてよい。このように取得時間を短縮することによって、高速な(例えば、カードをリーダに通すような)動きによる操作を検出する性能が改善され得る。
【0068】
上述したように、ユーザの親指で操作する光タッチセンサの性能は、1個のみ用いる場合、当該センサは静止ポイントで光データを取得するということ、および、ユーザの親指の移動範囲は親指の幅よりも大きいということのために、制限されてしまう場合がある。つまり、ユーザが親指の範囲の外側境界に向かって親指を動かすと、センサと親指との間の光学的接触が失われてしまい、親指の動きをそれ以上測定することができなくなってしまう。
【0069】
一実施形態によると、本発明は、複数の光タッチセンサを設けることによって追跡可能な親指移動範囲を拡張する。一の変形例によると、3つのセンサを予測最大移動の方向に沿って(中手骨関節に対応する円弧状の動きに沿って)アレイ状に配置する。隣接するセンサ間の距離は、親指接触パッチの幅よりもわずかに小さいことが好ましい。
【0070】
また、隣接する光センサを重複させることで、冗長に(可能性としてはより正確な)測定を行なうことができ、または、センサ間での測定の「引継ぎ」を容易にすることができる。
【0071】
本発明の別の変形例によると、一の発光部−受光部の対を光学的に分割して、複数のポートで発光および受光を行う。分割は、ビームスプリッタまたはインテグラルイメージングを用いて行なう(つまり、複数の凸状レンズをアレイ状に配置して、「フライアイ」レンズを形成する)。ポートまたはレンズの数および間隔は、上述のように設定するのが好ましい。
【0072】
本発明のいずれの変形例でも、光センサはユーザからバイオメトリクスデータを取得するために用いることも可能である。例えば、センサは、心拍数または体温を測定することができる。
【0073】
容量センサおよび光センサは、親指センサ表面カバーにおいて、多くの異なる形状および構造を取るとしてよい。図8Aから図13Bは、可能性として幾つかの例を挙げたに過ぎない。図8Aから図8Dは、7つのセンサを配置する場合を示した図であり、3つのセンサが中心を通るように並び、残りの4つのセンサが両側に配置されている。図8Aから図13Bに示すセンサは全て、容量センサであってよく、ハイブリッド方式の場合は、中央センサが光センサであるか、複数の光センサを設ける場合には、中心を通る3つのセンサ全てが光センサとなるとしてよい。
【0074】
図8Aから図13Bにおいて、センサ表面102上に設けられている容量電極について特定の形状、寸法、および配置を定めている特定または新規の構成またはパターンがあるとしてよく、光センサ用の開口は設けるとしてもよいし、設けないとしてもよく、設ける場合には親指センサシステムの性能が全体的に高くなり、設けない場合には全体的に低くなる。容量電極の配置はさまざまな形式を取るとしてよく、放射状パターンまたは格子状パターンを含む。
【0075】
放射状パターンは、センサ表面の中央における容量性感度を大きくするように設計されている。放射状パターンでは、複数の電極プレートが集まるポイントが、センサ表面の中央となる。この共通集合ポイントによって、中央連結ポイントにおける感度が高まる。中央連結ポイントでは、複数の電極が、親指または指の先端と、小さい測定領域において接触する。親指または指とセンサとの接触表面が大きくなりセンサの数が増えると、比例して信号強度C=A/dが大きくなり、測定ノイズが低減され、センサの制御装置としての精度が高まる。
【0076】
格子状パターンは、電極位置に対応するサンプリングポイントが一定の間隔で並び、軸とアラインメントされるという利点を持つとしてよい。このような構成は、追跡パターンをより予測しやすくなり、アルゴリズムの大幅な簡略化を促進し得るという点で有用である。
【0077】
図8Aから図13Bを参照しつつ、一連の新規のセンサ構成を説明する。各図において、円形の図形は所与の構成を表し、アスペクト比は正方形として図示する。各図の下半分に示す楕円形の図形は、その真上にある図と同じ構成であるが、センサ表面102に埋設される際の見え方をより実際に近い形状で表すアスペクト比で図示している。円形の図形は、親指センサ表面102を忠実に表現したものではないが、所与のパターンに本質的に見られる対称性を明確に示すものとして図示されている。各センサ構成については、容量方式のみを採用したものと同様に、光方式も採用したハイブリッド型も可能である。各図では、両方の例を並べて図示する。
【0078】
図8Aから図8Dを参照しつつ、新規の放射状構成を説明する。この構成では、一組の6個の導電性で、同サイズのセンサディスク801を、第7の中央センサに接するようにコンパクトに配置している。この構成には、光学方式ハイブリッド型の形態803または容量方式のみを採用した形態851があるとしてよい。光学方式ハイブリッド型では、中央電極プレート852に代えて、光学的開口804を設けている。このセンサ構成からは複数の利点が得られるとしてよい。主軸であるx軸およびy軸を含む、30度の倍数の複数の軸に沿って対称になっているとしてよい。各電極プレートの表面積が比較的大きいことによって、この構成では、より遠くの物体の容量の測定を行なう機能が改善する。このように遠隔測定特性が改善されることによって、3次元アルゴリズムの利用効果が大幅に改善される。容量測定の規模が比較的大きいので、ノイズレベルが抑制される。また、端縁の形状が楕円形であることによって、指または親指がセンサ表面を横切るように摺動する際に電極プレート間の移動がより円滑になる。また、楕円形状とすることによって、質量中心の算出結果を、ディスク状の場合には点で、楕円形状の場合には線分で、より良好に近似することができるようになるので、親指または指の距離推定結果が高精度化される。
【0079】
図9Aから図9Dを参照しつつ、新規の放射状構成を説明する。この構成では、ディスク901を放射状に一定の角度間隔902で複数の扇形に分割している。本例では、6個の扇形を図示しているが、数は増減させ得る。この扇形はさらに、所定の半径に対応するライン903に沿って分割されている。この半径は、内側の扇形904および外側の扇形905の面積が同じになるように選択されるとしてよい。このような構成にすることで、各電極プレートの信号応答が等しくなるとしてよい。光学方式を採用した形態は、同様の構造を持つとしてよいが、適切なサイズの開口を切り抜くとしてよい。電極プレート906および907は、面積が等しくなるように算出されるとしてよい。
【0080】
図10Aから図10Fを参照しつつ、新規の放射状星型構成を説明する。この構成では、幾何学的に正多角形から形成されるN個の先端を持つ「星」型パターンを形成する。この構成の効果としては、隣接する電極プレート間での突然の移動が抑制されること、表面積に起因する容量応答を等しくすること、センサ表面を横切るように摺動する親指または指等の物体の移動の線形性が高まるのでセンサ測定の規則性および予測可能性が向上することが挙げられるとしてよい。境界間での突然の移動が抑制されることによって、データストリームの一貫性が高まるとしてよく、点移動の追跡が全体的により円滑になるとしてよい。本例では6個の先端を持つ星型パターンを図示しているが、先端の数を任意に設定しても上述のような効果が得られるものと理解されたい。この構成における先端の数は、三角対称の数が多くなるように選択されている。
【0081】
図10Eおよび図10Fは、公知の矩形の「バックギャモン」センサパターン1075と、同じパターンの新規の放射状構成1076とのマッピングを示す図である。このマッピングによると、矩形形態での端縁1078および端縁1079は、放射状形態での端縁1080および端縁1081に対応する。容量電極プレート1083、1084は、一方の端縁1078から他方の端縁1079へと延在する長尺状ポイント1077を介して互いに交互に設けられている。この構成の公知の特徴は、試験物体1082が端縁1078と端縁1079との間を摺動すると、プレート1083および1084上で測定される容量は、試験物体1082が被覆するプレートの表面積に応じて試験物体の位置に線形に比例して変動することにある。
【0082】
この特徴は、新規の放射状構成1076でも同様に実現される。放射状構成1076では、径方向に内向きまたは外向きに摺動する試験物体1085が容量測定値に与える影響は略線形である。このため、星型パターン1076は、バックギャモンパターン1075を放射状に構成したものである。また、この線形性は試験物体1086の角度位置が変動した場合でも維持されることは明らかである。図10Aから図10Dを再度参照すると、星型パターン1000のポイント1002における内側半径は、光学的開口1004の半径と同様に、下半分に示す楕円構成1009に対して、電極プレート1005および1006の表面積が等しくなるように選択されるとしてよい。星型構成1003の内側半径1010は同様に、全ての電極プレート1007、1008の面積が等しくなるように選択されるとしてよい。容量方式1003が持つその他の望ましい特性として、多くの別個の内側電極が集まる共通中央接合部1011が挙げられる。共通中央接合部1011によって、薄型で先端が尖った電極を多数交互に配置する場合に特有である、容量混合特性が得られるとしてよい。
【0083】
図11Aから図11Dを参照しつつ、光学的開口の有無は任意である新規の格子状パターンを説明する。センサ表面102は、一組の直交するライン1101によって分割されており、分割されている各電極プレート1102は、アスペクト比が略正方形であり、各電極プレート1102の面積は等しくなっている。この面積は、センサフィールドの中央に配置されている光学的開口1103を、または、その他の適切な構成の複数の光センサを参照してまたは参照することなく算出するとしてよい。通常の格子状構成は、センサ表面102における各電極プレートの表面積を最大限まで大きくできるという利点がある。表面積が増加すると、一般的に、容量測定値が増加し、ノイズが大幅に抑制され得る。
【0084】
図12Aおよび図12Bを参照しつつ、新規の格子状容量センサ構成を説明する。このパターンは、光学方式ハイブリッド型の実施形態1201、または、容量方式のみを採用した実施形態1204の両方があるとしてよい。光学的開口1203は、楕円電極センサ1202を斜めに複数配置した格子状アレイ構成の中央に配置されるとしてよい。光センサ1204を設けない構成では、光学的開口を省略することにより、電極プレート1205のサイズを大きくすることができ、利用可能な表面積が大きくなるという利点が得られるとしてよい。電極プレート1202、1205の楕円形状によって、容量センサは、遠隔で測定して点状サンプルを近似する機能が改善される。電極の端縁は曲線状になっており、この構成によっても、センサ表面102を横切るように親指または指を摺動させる場合のプレート間の移動がより円滑になるとしてよい。
【0085】
図13Aおよび図13Bを参照しつつ、新規のひし形格子状容量センサ構成を説明する。構成1300では光学的開口1302を設けており、構成1301では省略している。電極1303は、動きの主軸であるX軸およびY軸に対して斜めになるような角度に設けることで、交互に設けやすくなるとしてよい。センサフィールドのX軸に沿って平行にのみ移動する摺動物体は常に、移動境界1304を斜めの角度で当たって横切る。このように移動境界1304が角度を持っているか、または、斜めであることによって、隣接する電極センサ1303の測定結果は、センサ電極を横切る際の移動は階段関数のように急激となる通常の直交格子状構成を利用する場合よりも、より線形に変動するとしてよい。同じことは、アスペクト比を調整することで、X軸と回転対称であるY軸についても言える。多くのユーザインターフェース素子は直交するように配置されているのが主流であるので主軸に平行に動くことが最も一般的なケースとなるが、ひし形パターンは、この場合に、移動境界を線形化し、その結果として測定を円滑化するとしてよい。
【0086】
図12Aおよび図12Bは、センサ表面102の両側に12個の長尺状容量センサ1202が縦方向に並べられており、中央光センサ1203が設けられている様子を示している。一部の実施形態によると、センサは、上述したように互いに重複するとしてもよいし、しなくてもよい。図9Aから図9Dは、放射状に配置されている容量センサを示しており、図13Aおよび図13Bはひし形形状の容量センサを示している。これらの構成はいずれも、言うまでもなく、光センサをさらに含むとしてもよい。
【0087】
図6は、本発明に係る処理の一実施形態を示すブロック図である。PCBまたは調整ボード600は、容量センサアレイ602、機械的ドームスイッチ604、光送信部(LED)606、および、光検出部608との間で、入力を受信して、制御出力を送信するとしてよい。一部の実施形態によると、光学系を任意で設けるとしてよい。容量センサアレイは、上述したように、ゼブラストリップコネクタを介して接続されているとしてよい。全ての信号およびデータ測定結果は、MIDに対する可撓性コネクタを介したデバイス外処理のために、常時測定され、デジタル化され、シリアルデータストリームへと編成されているとしてよい。
【0088】
ソフトウェアは、位置制御を実行するために、例えば、有限インパルス応答(FIR)フィルタによるデータ処理を利用するとしてよい。このデータはさらに、操作制御を実行するための操作認識アルゴリズムを用いて処理される。操作認識は、複雑さのためにMIDのCPUで実行されるとしてよい。CPUは、従来のマイクロプロセッサであってよい。これらに限定されないが、Intel Corporation社のx86(登録商標)ファミリー、Pentium(登録商標)ファミリー、Itanium(登録商標)ファミリー、または、Atom(登録商標)ファミリーのマイクロプロセッサ、Motorolaファミリーのマイクロプロセッサ等、任意の適切なオペレーティングシステムを実行するマイクロプロセッサを含むとしてよい。例えば、本発明の一実施形態では、コンピュータシステム400のオペレーティングシステムとしてMicrosoft Windows(登録商標)を利用する。別の実施形態によると、他のオペレーティングシステム、例えば、これらに限定されないが、Apple社のMacintosh(登録商標)オペレーティングシステム、Linux(登録商標)オペレーティングシステム、Unix(登録商標)オペレーティングシステム、3Com社のPalmオペレーティングシステム等も本発明の教示内容に応じて利用するとしてもよい。
【0089】
本発明の図示した実施形態を上記で説明したが、要約に記載した内容も含め、全ての内容を網羅することを意図したものではなく、開示した実施形態そのものに本発明を限定するものでもない。本明細書では本発明の具体的な実施形態および例を説明のために記載したが、当業者であれば想到するように、本発明の範囲内ではさまざまな均等な変形例が実施可能である。
【0090】
これらの変形例は、上記の詳細な説明を鑑みて本発明に対して為され得る。以下に記載する請求項で用いる用語は、本発明を明細書および請求項で開示する具体的な実施形態に限定するものと解釈されるべきではない。逆に、本発明の範囲は、以下に記載する請求項によってのみ決定されるものであり、請求項は、既に原則が確立されている請求項解釈方法に従って解釈されるものである。
【図1A−1B】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、ハンドヘルド型コンピューティングプラットフォーム用の入力装置に関する。特に、圧力センサおよび任意で光センサを用いた親指コントロール装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ハンドヘルド型の無線装置、例えば、携帯電話、携帯情報端末(PDA)、そして、より最新型装置としては新世代のモバイルインターネットデバイス(MID)およびスマートフォンが普及しつつある。市場での競争力を高め、消費者の需要に応えるべく、サービスプロバイダは提供する一連のサービスおよび特徴の一層の拡大に努めている。
【0003】
PDA、より一般的に、ハンドヘルド型コンピュータは本来、メモ、住所録、カレンダー等を記録するための個人用の手帳として利用されるべく設計されていた。現在の世代のMIDハンドヘルド装置は、無線セルラー方式技術がさらに組み込まれており、音声通信用の電話としても機能する。また、多くのハンドヘルド装置によれば、ユーザは、さまざまな情報を入手することが可能となり、さまざまなサービスおよび特徴を利用することができるようになる。例を挙げると、インターネット閲覧、グローバルポジショニングシステム(GPS)に基づく地図および運転案内、その場での株式情報の参照、娯楽案内、電子メールサービス、および、さまざまなマルチメディア機能、例えば、音楽および動画の録音/撮影および再生機能といったサービスおよび特徴が利用可能となる。
【0004】
このようなハンドヘルド装置は基本的に小型であるので、コマンド入力が課題となっていた。初期の世代のハンドヘルド装置では、データおよびコマンドを打ち込むために物理的なキーを利用していた。近年になって、非常に高品質のタッチ画面が開発された。しかし、物理的なキーであろうと、画面上の仮想的なキーであろうと、キーが小型になる傾向があり、操作が難しい場合があった。場合によっては、ユーザの指が大き過ぎたり、不器用で正確にキーを打てない場合には、スタイラスまたはその他のポインティングスティックを用いることもある。また、キーボードおよびタッチ画面は、基本的な機能を入力するに過ぎない場合であっても、片手のみで持って操作するのが困難な場合がある。このため、モバイルデバイス用の入力装置をより操作し易い構成とすることが求められている。
【図面の簡単な説明】
【0005】
上記の内容および本発明は、以下に記載する構成および実施形態例についての詳細な説明、ならびに、請求項を、添付図面と共に参照することによって明らかとなるであろう。図面は全て、本発明の開示内容の一部を成すものとする。上記および下記で説明および図示する開示内容では本発明の構成および実施形態例を開示することに重点を置くが、開示内容は本発明を説明するための例に過ぎず、本発明を限定するものではないと明確に理解されたい。
【図1A】本発明に係る親指センサを備えるモバイルインターネットデバイス(MID)を示す正面図である。
【図1B】本発明に係る親指センサを備えるモバイルインターネットデバイス(MID)を示す側面図である。
【図2A】本発明に係る親指センサの一実施形態を示す正面展開図である。
【図2B】本発明に係る親指センサの一実施形態を示す背面展開図である。
【図3A】光センサを備える本発明の別の実施形態を示す正面図である。
【図3B】光センサを備える本発明の別の実施形態を示す側面図である。
【図3C】光センサを備える本発明の別の実施形態を示す背面図である。
【図4】図3Aから図3Cに示したデバイスの正面展開図である。
【図5】図3Aから図3Cに示したデバイスの背面展開図である。
【図6】親指センサのための調整ボードおよびセンサ入力の一実施形態を説明するためのブロック図である。
【図7】親指または指によるセンサ表面の被覆領域に対する、光センササブシステム、容量センササブシステム、および、統合ハイブリッド型システムの性能を比較したグラフである。
【図8A】光学的開口の有無が任意である、楕円形状の容量電極がハチの巣状に配置されている放射状センサパターンを示す平面図である。
【図8B】光学的開口の有無が任意である、楕円形状の容量電極がハチの巣状に配置されている放射状センサパターンを示す平面図である。
【図8C】光学的開口の有無が任意である、楕円形状の容量電極がハチの巣状に配置されている放射状センサパターンを示す平面図である。
【図8D】光学的開口の有無が任意である、楕円形状の容量電極がハチの巣状に配置されている放射状センサパターンを示す平面図である。
【図9A】光学的開口の有無が任意である、放射状に複数のセクタに分割されると同時に、複数の同心円の円周に沿って分割されている放射状センサパターンを示す平面図である。
【図9B】光学的開口の有無が任意である、放射状に複数のセクタに分割されると同時に、複数の同心円の円周に沿って分割されている放射状センサパターンを示す平面図である。
【図9C】光学的開口の有無が任意である、放射状に複数のセクタに分割されると同時に、複数の同心円の円周に沿って分割されている放射状センサパターンを示す平面図である。
【図9D】光学的開口の有無が任意である、放射状に複数のセクタに分割されると同時に、複数の同心円の円周に沿って分割されている放射状センサパターンを示す平面図である。
【図10A】光学的開口の有無が任意である、多角形状の電極プレートがインターリーブされている放射状センサパターンを示す平面図である。
【図10B】光学的開口の有無が任意である、多角形状の電極プレートがインターリーブされている放射状センサパターンを示す平面図である。
【図10C】光学的開口の有無が任意である、多角形状の電極プレートがインターリーブされている放射状センサパターンを示す平面図である。
【図10D】光学的開口の有無が任意である、多角形状の電極プレートがインターリーブされている放射状センサパターンを示す平面図である。
【図10E】電極プレートの特定の配置方法を詳細に説明するための図10Aから図10Dの補足図面である。
【図10F】電極プレートの特定の配置方法を詳細に説明するための図10Aから図10Dの補足図面である。
【図11A】光学的開口の有無が任意である、軸線に沿ってセンサ領域が分割されている格子状センサパターンを示す平面図である。
【図11B】光学的開口の有無が任意である、軸線に沿ってセンサ領域が分割されている格子状センサパターンを示す平面図である。
【図11C】光学的開口の有無が任意である、軸線に沿ってセンサ領域が分割されている格子状センサパターンを示す平面図である。
【図11D】光学的開口の有無が任意である、軸線に沿ってセンサ領域が分割されている格子状センサパターンを示す平面図である。
【図12A】光学的開口の有無が任意である、斜体楕円形状の電極プレートを備える格子状センサパターンを示す平面図である。
【図12B】光学的開口の有無が任意である、斜体楕円形状の電極プレートを備える格子状センサパターンを示す平面図である。
【図13A】光学的開口の有無が任意である、ひし形格子状センサパターンを示す平面図である。
【図13B】光学的開口の有無が任意である、ひし形格子状センサパターンを示す平面図である。
【図14A】親指センサを示す図であり、より高度な位置情報を取得するための親指または指の3次元配向感知方式を示す図である。
【図14B】親指センサを示す図であり、より高度な位置情報を取得するための親指または指の3次元配向感知方式を示す図である。
【図14C】親指センサを示す図であり、より高度な位置情報を取得するための親指または指の3次元配向感知方式を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
スマートフォンまたはモバイルインターネットデバイス(MID)を制御するべく設計されている小型センサを説明する。センサ表面は、ハンドヘルドデバイスの側面の、ユーザが手に当該ハンドヘルドデバイスを持つとユーザの親指が自然に当たる位置に装着されているとしてよい。センサ表面は、センサ表面を利用する際に視覚的および物理的な手掛かりとなるように、凹型であってよい。センサは、ポインティング、選択および制御のための操作が直感的で疲れにくいような構成となっている。
【0007】
本明細書では「一実施形態」または「ある実施形態」という表現を何度も用いるが、この表現は、当該実施形態に関連付けて説明している特定の特徴、構造または特性が、本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれていることを意味する。このため、本明細書では繰り返し「一実施形態において」または「ある実施形態によると」といった表現が見られるが、必ずしも全てが同じ実施形態を指しているわけではない。また、1以上の実施形態において特定の特徴、構造または特性を適宜組み合わせるとしてもよい。
【0008】
図1Aおよび図1Bはそれぞれ、本発明に係る親指センサ102の一実施形態を備えるモバイルインターネットデバイス(MID)100を説明するための正面図および側面図である。MID100は、タッチ画面であるディスプレイ画面104、ならびに、電話機能用のスピーカ106およびマウスピース108等の構成要素を備えるとしてよい。言うまでもなく、MIDにはこれ以外にも機能があるが、必ずしも全てを説明するものではない。
【0009】
親指センサ102は、MID100の右上側面に位置するものとして図示されている。言うまでも無く、一部の実施形態では、親指センサ102は、左利きユーザに便利なようにMIDのうち別の側面に配置されるとしてよい。図示した位置にある場合、ユーザがデバイス100を手に持つとユーザの親指は自然にセンサ102に当たることになる。
【0010】
親指センサ102は、MID100に対するさまざまな形態の制御を可能とするとしてよい。第一に、ユーザは、センサ102の表面上で親指を摺動させることによってのみ、「ポインティング」を制御することができる。このポインティングは、言うまでもなく、一部の動作、例えば、カーソル105をディスプレイ画面104上で移動させること、に対応するとしてよい。
【0011】
第二に、ユーザは、ポインタ、カーソルまたはキャレットの位置に対応付けられた「選択」機能を利用することができる。選択機能は、物理的に親指でセンサ102を押下することによって、または、センサ表面で軽くタップする操作を実行することによって実現される。
【0012】
最後に、ユーザは、垂直方向または水平方向に「フリック」を実行することができる。フリック動作は、電子メールパッケージ、ウェブブラウザ、または、ドキュメントビューワ/エディタの制御にマッピングされ得る。
【0013】
センサ102の「ポインティング」機能の用途の例をさらに挙げると、表示を垂直方向および水平方向にスクロールまたは回転させること、ドキュメントまたはウェブページをスクロールすること、選択カーソルまたは編集キャレットをテキスト内またはウェブドキュメント内で移動させること、ビデオゲームまたは仮想環境等において3D表示を回転させること、精細な実物または仮想的なカメラのパン、チルト、およびズームを精密に制御すること、インタラクティブ型の地図において精密にパンおよびズームを制御すること、または、デジタル写真のパンおよびズームを精密に制御すること、が挙げられる。
【0014】
フリック操作の利用例を他にも具体的に挙げると、水平方向および垂直方向にカテゴリー化されて整理されている画像群を反転させること、所定の度数間隔でユーザインターフェース要素を回転させること、または、アプリケーションまたはウィンドウを切り替えること、が挙げられる。
【0015】
フリック操作を検出方法の1つとして、以下の方法がある。センサ上およびセンサ近傍において親指がある時間にわたって移動すると、3次元で操作経路を形成するべくこの移動を追跡および記録するとしてよい。フリック操作は、設定可能なしきい値と相対的に所与の全移動経路の速度を測定することによって、アルゴリズムを用いて精密位置制御とは区別するとしてよい。この移動経路は、3次元移動経路の空間分析に基づいて終端に到達したと見なされるとしてよい。特に、フリック操作の開始条件および終了条件が満たされているか否かに基づいて判断するとしてよい。フリック操作の開始条件および終了条件は、表面へのタッチに続いて移動が検出され、その後にタッチが離れたことを検出することを含むとしてよい。設定可能な速度しきい値よりも所与の方向に所与の量だけ大きい場合には、この移動操作は、指向性の強いフリック操作と見なされるとしてよい。移動の強さは、ユーザインターフェース要素をどの程度で制御するかにマッピングされている。例えば、3次元のユーザインターフェースオブジェクトの回転速度を変調する。
【0016】
当該システムにおいて操作を検出する別の方法として、トレーニングされたデータセットおよびパターン分類技術を利用する方法がある。この方法の一実施形態として、特定用途向けに構成されたサポートベクターマシン(SVM)がある。この方法では、操作および移動が行なわれる空間を、SVMへの入力で定義されるN空間内の一連のハイパー平面でパーティション化する。例えば、SVMは、最初のセンサ値、最後のセンサ値、中間センサ値、平均速度、最大速度、「圧力」RMSを追跡して、6空間での分類を算出するとしてよい。上記のようなSVMはさらに、既に書き込まれており変更できないセンサデータを利用するのではなく、(上記の引数を拡張することによって)状態空間の一環として、光学データを利用することができる。
【0017】
SVM認識装置を直接利用することができ、検出精度を向上させるべく、帰納的ブースティングおよび帰納的特徴削除(Recursive Feature Elimination :RFE)を同様に利用することができる。トレーニングされたデータを操作エンジンで利用するということは、例外的なユーザをサポートするように再トレーニングされ得る。
【0018】
操作を検出する方法はどの方法についても、単独で利用するとしてもよいし、または、他の方法と組み合わせて、ハイブリッド方式の操作検出方法として利用されるとしてもよい。
【0019】
ポインティングデータおよび追跡データは通常、ソフトウェア取得チェーンの複数のポイントにおいて処理される。具体的な実施形態はさまざまであるが、通常の例を挙げると、プリフィルタ、主要フィルタ、および、副次(または、出力)フィルタを含む。プリフィルタの目的は通常、生データサンプルを主要フィルタで利用できるように準備することであり、センサの特徴を決定すると共に、生のセンサの基準フレームから主要フィルタが利用している基準フレームへと変換するための簡単な変換を適用する。主要フィルタは、各サンプルからノイズを除去するように設計されている。最後に、出力フィルタは通常、主要フィルタの出力に変換を適用して、データを直接利用により適したものとする。
【0020】
本発明の実施形態がハイブリッド型で光学センサおよび容量センサを用いる場合、光学データおよび容量データを同じ座標系に書き換え出来ないように書き込む必要がある。これは、センサ装置の具体的な実施形態に応じて、フィルタチェーンのさまざまなポイントにおいて対応するとしてよい。一実施形態によると、光学データについては容量フィルタとは別のプリフィルタが設けられており、主要フィルタの間のみ容量データとハイブリッド化される。
【0021】
主要フィルタの一実施形態は、適応型の無限インパルス応答(IIR)フィルタであり、デバイスの絶対的な追跡位置は、親指または指の移動が低速で慎重になるほどに精密に制御され得る。同じポインタ位置を大きく弧を描くように移動させることも同様に可能である。適応型のフィルタは、センサ表面での動きの速度を測定した結果に基づいてフィルタリングの程度を動的に調節する。フィルタリング後の絶対位置Pnewは、フィルタリング前の絶対位置Praw、フィルタリング後の先行位置Pprevious、および、フィルタ係数fが与えられると、Pnew=f*Praw+(1−f)*Ppreviousに従って、IIRフィルタで算出することができる。
【0022】
フィルタ係数fは、常に0と1との間で変動し、追跡対象の移動をどの程度フィルタリングまたは抑制するかに影響を与える。fが1または1に近い値の場合、フィルタリングはディセーブルされて、移動は高速化し、ノイズが増加する。fが0または0に近い値の場合、フィルタリングは最大または略最大で、ノイズは低減され、移動は低速化または停止させられる。
【0023】
フィルタ係数fは、相対速度減衰関数Fの出力に応じて変わる。この減衰関数Fは概して、高速なユーザの指または親指の移動を低いfの値とマッピングしており、低速なユーザの移動を高いfの値にマッピングしている。fの値は、親指または指が移動を低速化または停止させると、時間と共に指数関数的に減衰して、最終的には1または1の近傍の値に落ち着く。一方、追跡の対象となっているユーザの実際の移動(Praw)が比較的高速な場合には、Fの出力が1に近くなるか、または、1になるので、フィルタリングを低減またはディセーブルにするとしてもよい。fは、加速および減速する、抑制された点質量物理系における位置として取り扱われる。この系では、ユーザの高速の移動は、位置表現fが1に向けて加速することに対応し、ユーザの低速の移動は、加速効果を低減またはゼロとする。fの位置表現は、0に向かう恒常的な減速の影響を受ける。この系において、0に向かう減速は、動きを高速化または低速化することによってユーザが制御可能な時間依存性関数である。fの値が0の近傍にある場合には、フィルタリングの程度が高くなるという効果が見られ、これに対応してユーザは、徐々に移動の高速化幅を細かくしていくことがしやすくなる。fの値が1または1の近傍にある場合には、IIRフィルタの効果が低減されるか、または、IIRフィルタがディセーブルされる。フィルタリングが低減またはディセーブルされると、大きなまたは高速の移動が可能である。また、フィルタリングを低減すると、ノイズが増加するが、一般的に動きが大きくなると小さくて慎重な移動の場合よりもノイズが目立ちにくいので、実際には、パラメータを適切に調整することでノイズをユーザには分からないようにすることができる。調整可能な関数パラメータは、編集キャレットのテキスト本体における文字間での、または、ポインタの画面画素間での意図的且つ高精度の移動が、ディスプレイ画面における大きな移動を大幅に劣化させることなく、当該デバイスで可能となるように、調整されるとしてよい。
【0024】
適応型フィルタは、親指センサシステムに本質的に存在する問題を解決するように設計されている。この問題とは、親指または指と、センサ表面とを比較した場合にサイズが異なることに関連した問題である。動的選択方式ではなくフィルタリングレベルとして1つのレベルを選択する場合、画素またはテキストにおける精細なカーソル位置決定に最適なように値を選択すると、画面全体または長いテキストにわたってカーソルを動かすための大きな移動については遅過ぎる場合がある。同様に、大きな移動に最適なように係数を選択すると、精細な制御を行う場合には利用できなくなってしまう場合がある。フィルタリングパラメータを動的に制御する場合の利点としてさらに、ユーザの移動が軽くて高速な場合に、不適切にフィルタリングの程度を高くすることによって移動を抑制してしまう事態を避けることができる。このような適応型フィルタリング方式の出力は、ユーザインターフェース全体で利用され、位置の移動に関連する全ての用途において制御感度を改善することができる。
【0025】
別の実施形態に係る主要フィルタは、多極多タップ有限インパルス応答フィルタ(FIR)を利用する。本実施形態によれば、IIRを利用する実施例に比べて、センサの周波数選択性がより明確になり、IIRを利用する実施例の不安定性の問題が解決される。FIRを利用するフィルタ実施例では、システムの信号特性/ノイズ特性を測定した結果に基づいて係数を算出する。
【0026】
FIRを利用する実施形態では、IIRフィルタ方式と同様の拡張方法に基づき、適応型フィルタシステムを形成することができる。
【0027】
上記以外の主要フィルタ実施形態も利用可能であるとしてよい。貴重な特性を持つ一部の実施形態は、一般的に予測フィルタ、およびカルマン/拡張カルマンフィルタ、具体的には粒子フィルタである。このような実施形態では、予測移動モデルを用いて、状態の算出に役立たせるため、および、応答遅延を低減させるために、基礎となるシステムに情報を与える。これは、光学データおよび容量データのハイブリッド化にも有用である。
【0028】
主要フィルタに加えて、例えば、マウスのような画面ポインタの利用モデルの場合にカーソル追跡の安定性を改善するために、副次フィルタを適用するとしてよい。フィルタリングされたポイントには、別の加速曲線をさらに適用するとしてよい。この曲線は、主要フィルタでフィルタリングされたポインタ速度Vを調整後のポインタ速度V´にマッピングしている。ポインタ入力システムの特性として望ましいのは、ユーザ入力に対する応答が線形性を持つことである。線形性を実現するためには、移動に応じた加速を実現しつつ2つの線形セグメントを統合する曲線を利用するとしてよい。
【0029】
副次フィルタの一実施形態では、低速時および高速時の2種類の速度マッピング値を表す2つの線形加速部分を円滑に接続するべく、ベジエ曲線を利用する。複数の線形部分を接続して用いることによって、あらゆる箇所で曲折している速度空間で空間的に操作するようにユーザに求める通常のマウス加速曲線が持つ望ましくない特性を回避する。これは、ボールの表面に直線を引くようにユーザに求めることと同じである。この第2層目のフィルタリングは、画面画素またはその他の精細な要素の上でカーソルポインタを安定化させる上で重要である。
【0030】
別の実施形態に係る副次フィルタは、双極正接(またはその他の円滑な微分可能関数)の弾道曲線である。他の曲線を用いて、平坦な速度空間を、ユーザが高精度および低精度のポインタ制御の両方を行えるように設計されている曲線状の速度空間にマッピングするこの機能をサポートするとしてもよい。
【0031】
システムのプリフィルタまたは生データの一部として追跡の対象である親指または指のポイントのフィルタリング前の値を算出するが、これは複数の独特のアルゴリズムを用いて行なうとしてよい。第1のアルゴリズムでは、各電極プレートを空間内のポイントと見なして、各ポイントを当該ポイントの容量測定値で乗算した結果を重み付けした値を算出する。物理的なシステムと同様に、容量は質量の測定結果として取り扱われ、各電極センサは離散したポイントでの質量のサンプル値を表す。この類似例では、質量中心または電荷中心は、電磁界が存在する場合に当該電磁界に影響を与える指または親指等の大きな物体の位置を良好に近似している。
【0032】
この質量中心の算出の変形例では、特定の選択された電極対の相互容量の測定結果を用いることを含むとしてよい。このような電極対は、順番に選択するとしてよい。そして、測定結果を合計して、指または親指等の物体が存在する場合の容量場の空間マップを形成するとしてよい。電極対によって、その間に直接置かれている物体の存在によって最も強い影響を受ける容量測定結果を得る。親指センサ102の全表面の範囲が、電極対の間の空間の一部によって形成されるように空間的に配置されている複数の電極対において複数の測定結果を得ることができる。指または親指等の物体の存在および位置のより詳細な3次元マッピングは、複数の連続した電極対の一連の測定結果を組み合わせることによって得られるとしてよい。センサ表面102と近接した位置にある物体のサイズ、形状および体積についてより多くの情報があれば、従来のタッチパッドアルゴリズムでは問題となるさまざまな場合を考慮して、デバイスは全体的により良好に位置を判定することができる。
【0033】
第2の変形例では、質量中心の算出に同様の方法を利用するが、細かい位置変化を強調して小さいセンサ領域をより良く利用するために、距離係数として逆二乗の法則を利用する。
【0034】
プリフィルタはさらに、各センサプレートの感度または応答性の差異を自動で追跡するように設計されているバイアス除去方法を含むとしてよい。任意の数のさまざまなバイアス除去アルゴリズムまたはバイアス除去方法を利用するとしてよい。
【0035】
バイアス除去アルゴリズムの一例として、行列バイアス除去が挙げられる。この方法では、容量プレートを、プレート毎に、各チャネルの最低観測値(iをチャネル番号とするとBi)、各チャネルのBi値を超える最大値Maxi、任意の特定の読出群のグローバル最小値M、および、グローバル正規化定数Mnormを追跡することによって正規化する。センサを読み出す度に、Biを更新して、元の測定値から減算してWiを算出した後に、Maxiを更新する。この時点で、読出群のうちバイアス除去後の測定値の最小値でMを更新して、Wi/Maxiの比が最小値を取るようにMnormを更新する。そして、Wiまたは正規化した(Wi/Maxi)−Mnormの一方を用いて重心算出方法の1つに基づきポイントの位置を算出する。
【0036】
一部の容量式タッチパッドアルゴリズムでは、容量センサアレイ表面に対して親指または指が平坦になるケースの対応に重点を置いていない。このように平坦な、または、広い物体がセンサ表面に接触する場合には、位置情報が不正確またはあいまいになってしまう。接触面面積は従来の容量方式タッチパッドアルゴリズムの位置算出において非常に重要なパラメータであるので、センサ表面に接触している広い物体または平坦な物体が転がったりずれたりして、誤差が大きくなったり、意図せず動いたりしてしまう場合があるとしてよい。これは、従来のタッチパッド装置での問題と見なされており、親指センサ装置102ではよくある問題である。この問題は、統合ハイブリッド型光学的容量性システムで解決され得る。任意であるが、容量方式のみを採用した親指センサシステムは、問題となるケースを明確に識別するべく親指または指に関してより高次のデータを取得する新型のアルゴリズムを利用するとしてもよい。新型のアルゴリズムでは、3次元で、センサ表面に対する親指または指の体積配向を分析するとしてよい。この場合、従来のタッチパッドシステムが抱える問題となるケースでの誤差または不正確さは、このより高次のデータを解釈することで回避され得る。
【0037】
体積データセットを解釈する方法では、数値最適化を利用して、親指または指を表現する最良適合数学モデルを体積に与えるとしてよい。この数学モデルは、2つの焦点を持ち、そのうち1つが親指または指の先端と見なされるような3次元楕円の場合のように、はっきりとした関節点を持つとしてよい。別のモデルでは、円筒または管を近似させるために用いるとしてよく、管の一端を、親指または指の幅と一致する所定の半径だけ内側にオフセットして、親指または指の先端と見なすとしてよい。楕円形に近似される平坦な親指または指であっても、このように親指または指の先端と現される上側焦点は、従来のタッチパッドシステムに比べると、ユーザの親指または指の先端の位置により一致した一定の位置に留まる。
【0038】
従来のタッチパッドシステムでは、親指または指が平坦になったり転がったりする場合には、検出される位置のバラツキが非常に大きく、ユーザの意図した制御ポイントが親指または指の先端またはその近傍であっても、センサ表面に対する親指または指の面接触のポイントまたは面積に完全に依存してしまう。このように、従来のセンササブシステムで測定して得られる容量データについて体積アルゴリズム方式または3次元アルゴリズム方式を用いることは、親指センサ装置の主流構成の総合的な有用性において重要な点である。
【0039】
図1Bならびに図14A、図14Bおよび図14Cを参照して、親指または指の3次元配向を感知および識別して高度な位置情報を導出するアルゴリズム方式を説明する。図14Aは、通常の容量センサの配置方法を示す図である。同図に示す例では、センサ電極の配置方法を変更することもできるが、平面1400として図示している親指センサ表面102に、放射状のハチの巣状に複数の容量電極プレート1401が配置されている。図14Bは、容量センサの測定データの一例を、各容量電極1401の位置にそれぞれ対応するセンサ表面空間1400の内部または上部に位置する体積回転楕円体1403として可視化した図である。この回転楕円体は、指または親指等の、センサ表面上またはセンサ表面近傍にある物体までのおよその距離を測定した結果を表している。この距離は、平行プレートキャパシタシステムにおいて、距離、面積および容量の関係に関する従来の数式に基づいて算出する。この数式はC=A/dである。このように、距離の項は、各センサ電極からおよその値が取得されるとしてよい。図14Cは、楕円形、管、関連付けられ結合された複数の回転楕円体を有する連結集合体、または、親指または指を表すと共にそれと同様のその他の幾何学的物体としてモデル化されている、親指または指の幾何学的モデル1404のおよその配向を導出する方法を図示した説明図である。数値適合方法を利用して、幾何学的親指モデル1404の3次元的な位置および角度配向は、センサ測定結果から導出された回転楕円体1403の集合体によって画定されるマニホルドに重ねて配置されるとしてよい。親指または指の幾何学的モデルのおよその3次元的な位置および配向を数値適合方法に基づいて取得する場合、ユーザインターフェース内の代表ポイントとして機能する、この幾何学的モデル内またはこの幾何学的モデル近傍の任意のポイントを指定するとしてよい。同様に、角度または距離に関する情報も、この幾何学的モデルから推定され得る。親指または親指の一部を表すものとして楕円形を選択する場合、この楕円形の焦点1405のうちの1つが、ユーザインターフェース内の代表ポイントとして選択されるとしてよい。このポイントは、親指または指の先端または指標に関して、従来のタッチパッドアルゴリズムで導き出される、およその位置が1406であるポイントよりもはるかに直感的である。このように精度が改善された代表ポイント1405は、後段のフィルタに入力されるか、または、数値適合系の後続サイクルにおいて初期推定結果として用いられるとしてよい。この新しい方法では、容量センサフィールドに対して親指または指が平坦になった場合に発生する問題の多くについて、センサ表面102に対する接触面積の2次元的な重心または2次元的な接触点に関する従来の分析ではなく、3次元で空間分析を実行することによって対処している。図14Aから図14Cに図示した具体的な構成に限定されるものではなく、各電極プレート1401は、通常の配置方法で楕円形状でも、距離であるセンサ測定結果を近似した結果が改善され、一連の回転楕円体として表すことが可能となる。このような特定のアルゴリズムは、放射状、格子状等を始めとしたさまざまなセンサ構成で利用することができると理解されたい。
【0040】
上述したアルゴリズムの変形例では、3つの手根部を2つの関節部で接続した骨格系としてモデル化された親指を表す。これらの手根部は、親指または指の系の動きを、人間の親指または指の関節に固有の関節限界から導き出される限界に制限するアルゴリズムリンクによって接続された複数の楕円形または回転楕円形で近似するとしてよい。上述した3次元体積分析はさらに、関節を完全に模倣した幾何学的モデルを採用することによって高度化されるとしてよく、センサ表面102に対する親指または指の配向に関してさらに情報を供給する。この情報は、従来のタッチパッドシステムで見られたエラーまたは測定不能の問題について位置データを安定化させるためには肝要であるとしてよい。
【0041】
図2Aおよび図2Bはそれぞれ、一実施形態に係る親指センサの正面展開図および背面展開図である。親指センサでは、センサ基板200にプリント配線基板(PCB)202または調整ボードが着座しているとしてよい。PCB202には、PCB202からの電気信号をルーティングするための可撓性コネクタリード線204が設けられているとしてよい。センサカバー206は一般的に、長円形状で人間の親指の指球が快適に収容される凹面を持つとしてよい。一実施形態によると、組立時にカバー206をセンサ基板200に固定するクリップ208が設けられるとしてよい。センサカバー206は、親指の移動および運動を感知する複数のセンサ210を有するとしてよい。一実施形態によると、複数のセンサ210は、上述したように、アレイ状に配置された複数の容量センサであってよい。
【0042】
1以上の触覚スイッチまたはドームスイッチ212をさらに設けるとしてよい。一実施形態によると、2つのドームスイッチが設けられるとしてよく、一方はセンサカバー206の上部の近傍に配置され、他方は底部の近傍に配置される。スイッチ自体に十分な跳ね返り力がない場合には、パッドを元の位置に戻すためにバネを追加するとしてよい。センサからの信号は、ゼブラストリップコネクタ214等の中央コネクタにルーティングされるとしてよい。ゼブラストリップコネクタ214は一般的に、プリント配線基板202上の電子素子を短時間でアラインメント可能とするパッケージングデバイスである。ゼブラストリップコネクタ214は、小さいゴム製の長尺状部材の周囲に沿って炭素の帯状部材が設けられているとしてよく、長尺状部材は、いずれかの帯状部材が両側で選択されることによってプリント配線基板上のパッドからセンサ210上のパッドへの接触を可能とする。ゼブラコネクタ支持部216は、支持力を高めるために、PCB202の反対側に設けられるとしてよい。チップ218は、可撓性コネクタ204を介して、デバイス外処理のためのセンサデータを整理するために設けられているとしてよい。
【0043】
容量センサパッド210は、センサの親指面の内側に配設されるとしてよい。容量センサは、利用されるべく選択されたアルゴリズムに応じて容量場を最適化するように設計されたさまざまな新しいパターンで配置されている複数の容量センサを利用する。触覚スイッチまたはドームスイッチ212をこの面の下方に取着している。このため、ユーザは、動かして適切なタイミングで圧力を加えることで一度の動きで素早く「ポインティングおよびクリック」を行なうことができる。
【0044】
図1Aおよび図1Bを参照しつつ上述したように、MID100には、好ましくは当該デバイスの長い方の端縁(つまり、上向きで持った場合のデバイスの左側または右側)に沿ってセンサが適合しているとしてよい。ユーザは、親指または指を、センサ102の表面を横切るように沿わせることによって、2次元入力(つまり、x−y入力)を供給して、例えば、ディスプレイ104上でのカーソル105の位置を制御する。タッチ面102にはさらに、圧力感知機構が設けられているとしてもよい。圧力感知機構は少なくとも、ユーザが加えた圧力が所定のしきい値より高いか低いかを判断する。親指インターフェースはこのため、2つの次元(xおよびy)のスカラー入力および第3の次元のブール入力から形成される、「2.5D」入力を供給する。
【0045】
ブール入力を用いて「クリック」(例えば、選択)または「入力/承認/次」機能を提供するとしてよい。ブール入力の長さを監視することによって、デバイスは、「クリック」と「長押し」とを区別することができる。制御方式の1つによると、1回のタップでデバイスを省電力状態から起こす。起きた後は、シングルクリックでオブジェクトを選択して、ダブルクリックで当該オブジェクトの選択を解除するとしてよい。長押しによって、強調処理を確定するとしてよい。続いてx−y入力が為されると強調領域を確定して、2回目の長押しで強調処理を終了させる。
【0046】
これに代えて、ユーザは、所定のしきい値を超える接触圧力を、強調領域を画定するための移動中はずっと維持することによって、つまり、「ドラッグ」操作によって領域を強調するとしてもよい。また、ダブルタップを用いて、階層構造のメニューを「戻る」ための操作とする。圧力感知機構が、加えられた圧力について正しいスカラー測定値を供給する場合には、完全な3D制御を実行することができる。この場合、測定される圧力入力値は任意の数の機能にマッピングされているとしてよい。例えば、表示されているコンテンツの拡大、ズーム、または、3次元画像の深さ方向の次元での操作等にマッピングされているとしてよい。
【0047】
別の実施形態によると、本発明はさらに、サムホイール制御に適用されるとしてもよい。回転するサムホイールに機械的に結合されている接触型スイッチまたは力センサによって、上述したのと同様に利用され得る1.5D入力または2D入力が生成される。
【0048】
図3A、図3Bおよび図3Cはそれぞれ、本発明の別の実施形態に係る、光感知をさらに行なう親指センサを示す正面図、側面図および背面図である。言うまでも無く、この構成は図1Aおよび図1Bに示したMIDにも利用され得る。上記のように、親指センサは、凹形状および凸形状を同時に持つ長円状、または、「鞍」形状のカバー206を含むとしてよく、上記と同様の容量センサアレイ210を含むとしてよい。また、光センサ300を実現するために、ウィンドウまたは開口を設けるとしてよい。一実施形態によると、光センサ300は、発光ダイオード(LED)302またはレーザ等の光源を含むとしてよい。また、光検出回路304を設けて、検出された光の変化を監視して親指の動きを判断するとしてよい。選択される光スペクトル範囲には、可視光または赤外光を含む任意の波長が含まれるとしてよい。
【0049】
図4および図5はそれぞれ、図3Aおよび図3Bに示した親指センサの正面展開図および背面展開図である。同図に示すように、カバー206は、容量センサ210と、光センサ用のウィンドウ300とを有する。ホルダ400は、ウィンドウ300に対して所定の角度で光源302を保持するとしてよい。ホルダは、プリズム301を有するとしてよい。光検出部304は同様に、センサ表面のカバー206を横切るような親指の移動を検出するべく、ホルダ400の後方に着座するとしてよい。
【0050】
親指で操作するタッチセンサを設計する上で問題が発生し得るのは、親指とセンサとの間の接触用パッチが、センサの絶対寸法と比較して大きいためである。容量センサ210は、ユーザの指に容量によって(静電力によって)結合される表面電極アレイを組み込むとしてよい。1つの感知回路を、電極アレイ内に通常多数設けられている素子の間で、電子的に切り替えて、指が存在することによる影響が最も大きい電極の箇所を特定するべくそれぞれの容量を測定して、指の位置を推定する。しかし、物理的に小さい多くの素子から形成されるアレイを備える親指センサの場合、親指は素子の大半に対して同様の影響を与える。このため、電極の数が多いのは概して、有用ではない場合がある。
【0051】
近接性または1次元の横方向の位置についてのアナログ出力を生成するより簡単な構成の容量性感知装置が何十年間にもわたって利用されてきた。このような装置は、相互容量、正弦波による電極励起、および、同期検出に基づいた構成となっていることが多い。このような構成では多数の電極の多重化を行なう必要がないので応答速度が改善されるが、センサの空間分解能が低下し得る。
【0052】
これとは対照的に、光タッチセンサは分解能を向上させることができる。しかし、光センサは、実際に接触しているのか、近接しているのかを容易に区別することができない。タッチ感知面の非常に近いところに指が位置していても、光センサが操作されてしまう場合がある。最も大きい問題はおそらく、1つの光センサで追跡可能な動きの範囲は、親指接触用のパッチのサイズの約2倍に限定されてしまう点が挙げられる。
【0053】
容量方式および光学方式を組み合わせたハイブリッド型センサを図4および図5に示すが、利点を利用して、各方式センサの弱点を克服するセンサ統合方式である。具体的には、ハイブリッド型センサは、実際に接触しているか否かを検出して、十分な大きさの追跡範囲にわたって細かい単位で動きを追跡する。
【0054】
本発明に係る処理は、4つの基本概念に基づいているとしてよい。
1.容量センサ測定および光センサ測定を組み合わせる。
2.電極構成では、1つの感知電極の周囲に複数の同時に動作する駆動電極を設ける。
3.多重周波数の正弦波による励起、または、符号分割方式のデジタル励起。
4.センサ電極とユーザの親指との間に弾性絶縁層を設ける。
【0055】
センサの構成として可能なものを1つ挙げると、4つの駆動電極D1−D4が、1つの感知電極Sの周囲に設けられており、感知電極は光センサと同位置に設けられている。互いに近接して設けられている駆動電極はそれぞれ、円形状の感知電極の周囲を取り囲む環状部の約4分の1だけ延伸している。
【0056】
これら複数の駆動電極は、別々の信号で同時に励起させ、これらの信号の合計値を重み付けして、感知電極に結合する。そして、感知電極からの信号を増幅して復調して、4つの結合パラメータ(相互容量)(D1;S)、(D2;S)、(D3;S)および(D4;S)を抽出する。
【0057】
寄生容量が大きいので、親指が存在する旨を示す信号は、大きい信号における小さな変化であり、増幅段および復調段においてダイナミックレンジに関連した問題が発生する可能性がある。この問題は、全ての相互容量が等しい場合に互いに打ち消し合う逆相駆動信号を用いることによって、抑制し得る。
【0058】
このため、親指の位置は、対称性からの逸脱として現れる差分信号によって表される。
【0059】
例えば、4つの駆動信号は以下のようになる。
D1=sin(ω1t)+sin(ω2t)+0.01sin(ω3t)
D2=sin(ω1t)−sin(ω2t)+0.01sin(ω3t)
D3=−sin(ω1t)+sin(ω2t)+0.01sin(ω3t)
D4=−sin(ω1t)−sin(ω2t)+0.01sin(ω3t)
【0060】
周波数ω1で動作している同期復調器はy軸の親指の位置に応答し、周波数ω2で動作している同期復調器はx軸の親指の位置に応答する。周波数ω3では、システムが(差分方式ではなく)シングルエンド方式のシステムであるが、信号レベルは100という因数で低減されて、増幅器のダイナミックレンジの問題を解決する。周波数ω3で動作している同期復調器は、親指の近接性に応答する。これら3つの復調器は全て、1つのセンサ入力で同時に動作し(つまり、多重化は必要ない)、センサデータレートは、信号雑音比によってのみ制限され、非常に高く(例えば、キロヘルツレベル)することが可能である。
【0061】
上述したようなアナログの正弦波による励起に代えて、直交バイナリコードによる駆動を採用する。この場合には、各駆動信号はデジタル(オン/オフ)パルス列である。同期復調器に代えて相関関係検出器を用いて、適切なコードパターンとコヒーレントなセンサ信号のアナログレベルに比例する出力を生成する。この場合も、寄生容量を無効化するための逆相駆動方法を採用することが可能であるとしてよい。このシステムは、スペクトル拡散方法をサポートし、アナログ駆動構成要素を必要としないので、有益である。外部増幅器およびアナログデジタル変換器を1つのみ備えるフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)で実装されるとしてよい。
【0062】
弾性表面層を設けることによって、親指がデバイスに接触している時に、力に対する感度が高い応答が得られる。適切な閉細胞型の発泡性材料または同様の材料を用いることによって、容量性感知方式に適切な小さなずれに力を変換する。このような圧力情報がさらに得られることによって、制御応答および操作多様性を改善し得る。
【0063】
上述したように、「センサが影に入る」という問題に対処するべく、光学式マウスに設けられているものと同様の光センサ(電極構造の中央に設ける)で容量センサを補完する。光センサによって、デバイスの性能は少なくとも1つの点において改善されるとしてよい。全ての容量センサ電極が完全に親指または指で覆われ(センサが影に入り)、親指または指が完全に平坦な状態で摺動することによって、摺動中は常に電極プレートが完全に親指または指で被覆されたままである場合、容量方式システムでは位置追跡情報を更新することが出来ない場合がある。この場合に、この種の動きを検出および追跡可能な光学システムが現在追跡中の位置の決定処理を引き継ぐ。これは、センサのうち影に入った範囲の大きさに関わらず、親指または指の表面が横方向に摺動すると、開口から見ることができ、光学的な動き追跡を利用可能であるためである。光センサでこのような動きを追跡可能であるので、ユーザは、より広い範囲にわたって移動させて、インターフェースの制御を高精細化および高ロバスト化できる。
【0064】
容量センサで決定できない場合に動き追跡を補完的に実行することに加えて、任意の特定の実施形態では、光学データまたは容量データの精度は、ある種の感知結果については相手よりも高くなるとしてよい。例えば、一実施形態によると、光センサは速度角度の検出には優れているが、速度の検出は比較的性能が劣るとしてよい。この実施形態では、容量データと光学データとを主要フィルタにおいてハイブリッド化する。このような構成にすることによって、光入力または容量入力の一方のみが利用される場合に比べて、良好な結果が得られる。
【0065】
図7は、光センサシステムおよび容量センサシステムの性能上の利点、および、統合ハイブリッド型光学的容量方式親指センサシステムの性能を比較して、親指または指によって被覆されたセンサ面102の割合と関連付けて示すグラフである。
【0066】
本願で提案するハイブリッド方式では、容量センサを主に、タッチ検出および3次元での絶対位置情報の取得に利用する。力および絶対位置に関する情報を得ることで、ユーザは、例えば、瞬時に強く、タッチ感知領域の上側周縁または下側周縁に接触して、ページアップ操作またはページダウン操作を実行可能になるとしてよい。光センサからは、接近している旨を示す情報およびセンサの表面に沿ったより高分解能の測定結果を得る。
【0067】
光センサは、取得遅延を回避するべく、容量センサが検出したタッチに応じて、取得モードにロックされるとしてよい。このように取得時間を短縮することによって、高速な(例えば、カードをリーダに通すような)動きによる操作を検出する性能が改善され得る。
【0068】
上述したように、ユーザの親指で操作する光タッチセンサの性能は、1個のみ用いる場合、当該センサは静止ポイントで光データを取得するということ、および、ユーザの親指の移動範囲は親指の幅よりも大きいということのために、制限されてしまう場合がある。つまり、ユーザが親指の範囲の外側境界に向かって親指を動かすと、センサと親指との間の光学的接触が失われてしまい、親指の動きをそれ以上測定することができなくなってしまう。
【0069】
一実施形態によると、本発明は、複数の光タッチセンサを設けることによって追跡可能な親指移動範囲を拡張する。一の変形例によると、3つのセンサを予測最大移動の方向に沿って(中手骨関節に対応する円弧状の動きに沿って)アレイ状に配置する。隣接するセンサ間の距離は、親指接触パッチの幅よりもわずかに小さいことが好ましい。
【0070】
また、隣接する光センサを重複させることで、冗長に(可能性としてはより正確な)測定を行なうことができ、または、センサ間での測定の「引継ぎ」を容易にすることができる。
【0071】
本発明の別の変形例によると、一の発光部−受光部の対を光学的に分割して、複数のポートで発光および受光を行う。分割は、ビームスプリッタまたはインテグラルイメージングを用いて行なう(つまり、複数の凸状レンズをアレイ状に配置して、「フライアイ」レンズを形成する)。ポートまたはレンズの数および間隔は、上述のように設定するのが好ましい。
【0072】
本発明のいずれの変形例でも、光センサはユーザからバイオメトリクスデータを取得するために用いることも可能である。例えば、センサは、心拍数または体温を測定することができる。
【0073】
容量センサおよび光センサは、親指センサ表面カバーにおいて、多くの異なる形状および構造を取るとしてよい。図8Aから図13Bは、可能性として幾つかの例を挙げたに過ぎない。図8Aから図8Dは、7つのセンサを配置する場合を示した図であり、3つのセンサが中心を通るように並び、残りの4つのセンサが両側に配置されている。図8Aから図13Bに示すセンサは全て、容量センサであってよく、ハイブリッド方式の場合は、中央センサが光センサであるか、複数の光センサを設ける場合には、中心を通る3つのセンサ全てが光センサとなるとしてよい。
【0074】
図8Aから図13Bにおいて、センサ表面102上に設けられている容量電極について特定の形状、寸法、および配置を定めている特定または新規の構成またはパターンがあるとしてよく、光センサ用の開口は設けるとしてもよいし、設けないとしてもよく、設ける場合には親指センサシステムの性能が全体的に高くなり、設けない場合には全体的に低くなる。容量電極の配置はさまざまな形式を取るとしてよく、放射状パターンまたは格子状パターンを含む。
【0075】
放射状パターンは、センサ表面の中央における容量性感度を大きくするように設計されている。放射状パターンでは、複数の電極プレートが集まるポイントが、センサ表面の中央となる。この共通集合ポイントによって、中央連結ポイントにおける感度が高まる。中央連結ポイントでは、複数の電極が、親指または指の先端と、小さい測定領域において接触する。親指または指とセンサとの接触表面が大きくなりセンサの数が増えると、比例して信号強度C=A/dが大きくなり、測定ノイズが低減され、センサの制御装置としての精度が高まる。
【0076】
格子状パターンは、電極位置に対応するサンプリングポイントが一定の間隔で並び、軸とアラインメントされるという利点を持つとしてよい。このような構成は、追跡パターンをより予測しやすくなり、アルゴリズムの大幅な簡略化を促進し得るという点で有用である。
【0077】
図8Aから図13Bを参照しつつ、一連の新規のセンサ構成を説明する。各図において、円形の図形は所与の構成を表し、アスペクト比は正方形として図示する。各図の下半分に示す楕円形の図形は、その真上にある図と同じ構成であるが、センサ表面102に埋設される際の見え方をより実際に近い形状で表すアスペクト比で図示している。円形の図形は、親指センサ表面102を忠実に表現したものではないが、所与のパターンに本質的に見られる対称性を明確に示すものとして図示されている。各センサ構成については、容量方式のみを採用したものと同様に、光方式も採用したハイブリッド型も可能である。各図では、両方の例を並べて図示する。
【0078】
図8Aから図8Dを参照しつつ、新規の放射状構成を説明する。この構成では、一組の6個の導電性で、同サイズのセンサディスク801を、第7の中央センサに接するようにコンパクトに配置している。この構成には、光学方式ハイブリッド型の形態803または容量方式のみを採用した形態851があるとしてよい。光学方式ハイブリッド型では、中央電極プレート852に代えて、光学的開口804を設けている。このセンサ構成からは複数の利点が得られるとしてよい。主軸であるx軸およびy軸を含む、30度の倍数の複数の軸に沿って対称になっているとしてよい。各電極プレートの表面積が比較的大きいことによって、この構成では、より遠くの物体の容量の測定を行なう機能が改善する。このように遠隔測定特性が改善されることによって、3次元アルゴリズムの利用効果が大幅に改善される。容量測定の規模が比較的大きいので、ノイズレベルが抑制される。また、端縁の形状が楕円形であることによって、指または親指がセンサ表面を横切るように摺動する際に電極プレート間の移動がより円滑になる。また、楕円形状とすることによって、質量中心の算出結果を、ディスク状の場合には点で、楕円形状の場合には線分で、より良好に近似することができるようになるので、親指または指の距離推定結果が高精度化される。
【0079】
図9Aから図9Dを参照しつつ、新規の放射状構成を説明する。この構成では、ディスク901を放射状に一定の角度間隔902で複数の扇形に分割している。本例では、6個の扇形を図示しているが、数は増減させ得る。この扇形はさらに、所定の半径に対応するライン903に沿って分割されている。この半径は、内側の扇形904および外側の扇形905の面積が同じになるように選択されるとしてよい。このような構成にすることで、各電極プレートの信号応答が等しくなるとしてよい。光学方式を採用した形態は、同様の構造を持つとしてよいが、適切なサイズの開口を切り抜くとしてよい。電極プレート906および907は、面積が等しくなるように算出されるとしてよい。
【0080】
図10Aから図10Fを参照しつつ、新規の放射状星型構成を説明する。この構成では、幾何学的に正多角形から形成されるN個の先端を持つ「星」型パターンを形成する。この構成の効果としては、隣接する電極プレート間での突然の移動が抑制されること、表面積に起因する容量応答を等しくすること、センサ表面を横切るように摺動する親指または指等の物体の移動の線形性が高まるのでセンサ測定の規則性および予測可能性が向上することが挙げられるとしてよい。境界間での突然の移動が抑制されることによって、データストリームの一貫性が高まるとしてよく、点移動の追跡が全体的により円滑になるとしてよい。本例では6個の先端を持つ星型パターンを図示しているが、先端の数を任意に設定しても上述のような効果が得られるものと理解されたい。この構成における先端の数は、三角対称の数が多くなるように選択されている。
【0081】
図10Eおよび図10Fは、公知の矩形の「バックギャモン」センサパターン1075と、同じパターンの新規の放射状構成1076とのマッピングを示す図である。このマッピングによると、矩形形態での端縁1078および端縁1079は、放射状形態での端縁1080および端縁1081に対応する。容量電極プレート1083、1084は、一方の端縁1078から他方の端縁1079へと延在する長尺状ポイント1077を介して互いに交互に設けられている。この構成の公知の特徴は、試験物体1082が端縁1078と端縁1079との間を摺動すると、プレート1083および1084上で測定される容量は、試験物体1082が被覆するプレートの表面積に応じて試験物体の位置に線形に比例して変動することにある。
【0082】
この特徴は、新規の放射状構成1076でも同様に実現される。放射状構成1076では、径方向に内向きまたは外向きに摺動する試験物体1085が容量測定値に与える影響は略線形である。このため、星型パターン1076は、バックギャモンパターン1075を放射状に構成したものである。また、この線形性は試験物体1086の角度位置が変動した場合でも維持されることは明らかである。図10Aから図10Dを再度参照すると、星型パターン1000のポイント1002における内側半径は、光学的開口1004の半径と同様に、下半分に示す楕円構成1009に対して、電極プレート1005および1006の表面積が等しくなるように選択されるとしてよい。星型構成1003の内側半径1010は同様に、全ての電極プレート1007、1008の面積が等しくなるように選択されるとしてよい。容量方式1003が持つその他の望ましい特性として、多くの別個の内側電極が集まる共通中央接合部1011が挙げられる。共通中央接合部1011によって、薄型で先端が尖った電極を多数交互に配置する場合に特有である、容量混合特性が得られるとしてよい。
【0083】
図11Aから図11Dを参照しつつ、光学的開口の有無は任意である新規の格子状パターンを説明する。センサ表面102は、一組の直交するライン1101によって分割されており、分割されている各電極プレート1102は、アスペクト比が略正方形であり、各電極プレート1102の面積は等しくなっている。この面積は、センサフィールドの中央に配置されている光学的開口1103を、または、その他の適切な構成の複数の光センサを参照してまたは参照することなく算出するとしてよい。通常の格子状構成は、センサ表面102における各電極プレートの表面積を最大限まで大きくできるという利点がある。表面積が増加すると、一般的に、容量測定値が増加し、ノイズが大幅に抑制され得る。
【0084】
図12Aおよび図12Bを参照しつつ、新規の格子状容量センサ構成を説明する。このパターンは、光学方式ハイブリッド型の実施形態1201、または、容量方式のみを採用した実施形態1204の両方があるとしてよい。光学的開口1203は、楕円電極センサ1202を斜めに複数配置した格子状アレイ構成の中央に配置されるとしてよい。光センサ1204を設けない構成では、光学的開口を省略することにより、電極プレート1205のサイズを大きくすることができ、利用可能な表面積が大きくなるという利点が得られるとしてよい。電極プレート1202、1205の楕円形状によって、容量センサは、遠隔で測定して点状サンプルを近似する機能が改善される。電極の端縁は曲線状になっており、この構成によっても、センサ表面102を横切るように親指または指を摺動させる場合のプレート間の移動がより円滑になるとしてよい。
【0085】
図13Aおよび図13Bを参照しつつ、新規のひし形格子状容量センサ構成を説明する。構成1300では光学的開口1302を設けており、構成1301では省略している。電極1303は、動きの主軸であるX軸およびY軸に対して斜めになるような角度に設けることで、交互に設けやすくなるとしてよい。センサフィールドのX軸に沿って平行にのみ移動する摺動物体は常に、移動境界1304を斜めの角度で当たって横切る。このように移動境界1304が角度を持っているか、または、斜めであることによって、隣接する電極センサ1303の測定結果は、センサ電極を横切る際の移動は階段関数のように急激となる通常の直交格子状構成を利用する場合よりも、より線形に変動するとしてよい。同じことは、アスペクト比を調整することで、X軸と回転対称であるY軸についても言える。多くのユーザインターフェース素子は直交するように配置されているのが主流であるので主軸に平行に動くことが最も一般的なケースとなるが、ひし形パターンは、この場合に、移動境界を線形化し、その結果として測定を円滑化するとしてよい。
【0086】
図12Aおよび図12Bは、センサ表面102の両側に12個の長尺状容量センサ1202が縦方向に並べられており、中央光センサ1203が設けられている様子を示している。一部の実施形態によると、センサは、上述したように互いに重複するとしてもよいし、しなくてもよい。図9Aから図9Dは、放射状に配置されている容量センサを示しており、図13Aおよび図13Bはひし形形状の容量センサを示している。これらの構成はいずれも、言うまでもなく、光センサをさらに含むとしてもよい。
【0087】
図6は、本発明に係る処理の一実施形態を示すブロック図である。PCBまたは調整ボード600は、容量センサアレイ602、機械的ドームスイッチ604、光送信部(LED)606、および、光検出部608との間で、入力を受信して、制御出力を送信するとしてよい。一部の実施形態によると、光学系を任意で設けるとしてよい。容量センサアレイは、上述したように、ゼブラストリップコネクタを介して接続されているとしてよい。全ての信号およびデータ測定結果は、MIDに対する可撓性コネクタを介したデバイス外処理のために、常時測定され、デジタル化され、シリアルデータストリームへと編成されているとしてよい。
【0088】
ソフトウェアは、位置制御を実行するために、例えば、有限インパルス応答(FIR)フィルタによるデータ処理を利用するとしてよい。このデータはさらに、操作制御を実行するための操作認識アルゴリズムを用いて処理される。操作認識は、複雑さのためにMIDのCPUで実行されるとしてよい。CPUは、従来のマイクロプロセッサであってよい。これらに限定されないが、Intel Corporation社のx86(登録商標)ファミリー、Pentium(登録商標)ファミリー、Itanium(登録商標)ファミリー、または、Atom(登録商標)ファミリーのマイクロプロセッサ、Motorolaファミリーのマイクロプロセッサ等、任意の適切なオペレーティングシステムを実行するマイクロプロセッサを含むとしてよい。例えば、本発明の一実施形態では、コンピュータシステム400のオペレーティングシステムとしてMicrosoft Windows(登録商標)を利用する。別の実施形態によると、他のオペレーティングシステム、例えば、これらに限定されないが、Apple社のMacintosh(登録商標)オペレーティングシステム、Linux(登録商標)オペレーティングシステム、Unix(登録商標)オペレーティングシステム、3Com社のPalmオペレーティングシステム等も本発明の教示内容に応じて利用するとしてもよい。
【0089】
本発明の図示した実施形態を上記で説明したが、要約に記載した内容も含め、全ての内容を網羅することを意図したものではなく、開示した実施形態そのものに本発明を限定するものでもない。本明細書では本発明の具体的な実施形態および例を説明のために記載したが、当業者であれば想到するように、本発明の範囲内ではさまざまな均等な変形例が実施可能である。
【0090】
これらの変形例は、上記の詳細な説明を鑑みて本発明に対して為され得る。以下に記載する請求項で用いる用語は、本発明を明細書および請求項で開示する具体的な実施形態に限定するものと解釈されるべきではない。逆に、本発明の範囲は、以下に記載する請求項によってのみ決定されるものであり、請求項は、既に原則が確立されている請求項解釈方法に従って解釈されるものである。
【図1A−1B】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
親指を収容する形状を持ち、モバイルコンピュータデバイス上に配置されているタッチパッドと、
前記タッチパッドに対応付けられており、前記モバイルコンピュータデバイスについてのx方向およびy方向においてカーソルを制御するための親指操作を検出する複数の容量センサを有する容量センサアレイと、
前記タッチパッドに対応付けられており、前記モバイルコンピュータデバイスについてのブール入力として親指圧力を検出する圧力センサ機構と
を備える装置。
【請求項2】
前記圧力センサ機構は、前記タッチパッドの下方に設けられている触覚スイッチを有する請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記圧力センサ機構は、一対の触覚スイッチを有しており、前記タッチパッドの両端に1つずつ設けられている請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記タッチパッドは、前記モバイルコンピュータデバイスの上側部分において、前記モバイルコンピュータデバイスを持つと自然に親指が当たる位置に配置されている請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記容量センサアレイが有する各センサからの出力を整理するゼブラストリップコネクタをさらに備える請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記容量センサアレイが有する各容量センサは、一般的に楕円形状であり、前記タッチパッドの両側に沿って配置されている請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記容量センサアレイが有する各容量センサは、一般的にひし形形状である請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記容量センサアレイが有する各容量センサは、一般的に長円形状である請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記タッチパッドに対応付けられており、親指を光学的に検出する光センサをさらに備える請求項1に記載の装置。
【請求項10】
前記光センサは、前記タッチパッドの中心の近傍に配置されており、前記容量センサアレイは、前記光センサの周囲を取り囲むように設けられている請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記タッチパッドに対応付けられており、前記タッチパッドの長さに沿った親指の動きを光学的に検出する複数の光センサをさらに備える請求項1に記載の装置。
【請求項12】
前記複数の光センサは、前記タッチパッドの中央ラインより下に配置され、前記容量センサアレイは、前記複数の光センサの周囲を取り囲むように設けられている請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記光センサと同位置に配置されている容量センサをさらに備える請求項10に記載の装置。
【請求項14】
ハンドヘルド型のコンピュータデバイスを制御する方法であって、
前記コンピュータデバイスの上側の、前記コンピュータデバイスを持つと自然に親指が当たる箇所に、親指を収納する形状を持つタッチパッドを設ける段階と、
前記タッチパッドを横切るような親指の動きを容量に基づいて検出して、親指の動きをx方向およびy方向の動きに変換して、前記コンピュータデバイスのディスプレイ上でカーソルを制御する段階と、
前記タッチパッドに加わる圧力を検出して、圧力を前記コンピュータデバイス用のブール入力に変換する段階と
を備える方法。
【請求項15】
前記ブール入力は、クリック入力を含む請求項14に記載の方法。
【請求項16】
圧力を検出する際にタップと長押しとを区別する段階をさらに備える請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記タッチパッド上または前記タッチパッドの近傍での親指の動きを光学的に検出する段階をさらに備える請求項14に記載の方法。
【請求項18】
ハンドヘルド型のコンピュータデバイスと、
前記コンピュータデバイスの上側パネルに配置されている親指タッチパッドと、
前記タッチパッドに対応付けられている複数の容量センサを有する容量センサアレイと、
前記タッチパッドに対応付けられている少なくとも1つの光センサと、
前記タッチパッドに対応付けられており、前記コンピュータデバイスに対するブール入力として親指圧力を検出する圧力センサ機構と
を備え、
前記容量センサアレイおよび前記光センサは、親指操作を検出して、前記コンピュータデバイスについてのx方向およびy方向においてカーソルを制御するシステム。
【請求項19】
前記親指タッチパッドは、
前記容量センサアレイの前記複数の容量センサが分散して設けられている、鞍形状を持つ外側カバーと、
前記光センサ用に光を通過させるために前記カバーに設けられている開口と、
前記開口の後方に設けられている光源と、
前記開口の後方に設けられている光検出部と
を有する請求項18に記載のシステム。
【請求項20】
前記親指タッチパッドはさらに、
前記容量センサアレイが有する各センサからの出力を整理するためのゼブラストリップコネクタ
を有する請求項19に記載のシステム。
【請求項21】
前記圧力センサ機構は、前記タッチパッドの下方に設けられている触覚スイッチを有する請求項18に記載のシステム。
【請求項22】
前記圧力センサ機構は、一対の触覚スイッチを有しており、前記タッチパッドの両端に1つずつ設けられている請求項18に記載のシステム。
【請求項23】
前記ブール入力は、クリック入力を含む請求項18に記載のシステム。
【請求項1】
親指を収容する形状を持ち、モバイルコンピュータデバイス上に配置されているタッチパッドと、
前記タッチパッドに対応付けられており、前記モバイルコンピュータデバイスについてのx方向およびy方向においてカーソルを制御するための親指操作を検出する複数の容量センサを有する容量センサアレイと、
前記タッチパッドに対応付けられており、前記モバイルコンピュータデバイスについてのブール入力として親指圧力を検出する圧力センサ機構と
を備える装置。
【請求項2】
前記圧力センサ機構は、前記タッチパッドの下方に設けられている触覚スイッチを有する請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記圧力センサ機構は、一対の触覚スイッチを有しており、前記タッチパッドの両端に1つずつ設けられている請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記タッチパッドは、前記モバイルコンピュータデバイスの上側部分において、前記モバイルコンピュータデバイスを持つと自然に親指が当たる位置に配置されている請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記容量センサアレイが有する各センサからの出力を整理するゼブラストリップコネクタをさらに備える請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記容量センサアレイが有する各容量センサは、一般的に楕円形状であり、前記タッチパッドの両側に沿って配置されている請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記容量センサアレイが有する各容量センサは、一般的にひし形形状である請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記容量センサアレイが有する各容量センサは、一般的に長円形状である請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記タッチパッドに対応付けられており、親指を光学的に検出する光センサをさらに備える請求項1に記載の装置。
【請求項10】
前記光センサは、前記タッチパッドの中心の近傍に配置されており、前記容量センサアレイは、前記光センサの周囲を取り囲むように設けられている請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記タッチパッドに対応付けられており、前記タッチパッドの長さに沿った親指の動きを光学的に検出する複数の光センサをさらに備える請求項1に記載の装置。
【請求項12】
前記複数の光センサは、前記タッチパッドの中央ラインより下に配置され、前記容量センサアレイは、前記複数の光センサの周囲を取り囲むように設けられている請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記光センサと同位置に配置されている容量センサをさらに備える請求項10に記載の装置。
【請求項14】
ハンドヘルド型のコンピュータデバイスを制御する方法であって、
前記コンピュータデバイスの上側の、前記コンピュータデバイスを持つと自然に親指が当たる箇所に、親指を収納する形状を持つタッチパッドを設ける段階と、
前記タッチパッドを横切るような親指の動きを容量に基づいて検出して、親指の動きをx方向およびy方向の動きに変換して、前記コンピュータデバイスのディスプレイ上でカーソルを制御する段階と、
前記タッチパッドに加わる圧力を検出して、圧力を前記コンピュータデバイス用のブール入力に変換する段階と
を備える方法。
【請求項15】
前記ブール入力は、クリック入力を含む請求項14に記載の方法。
【請求項16】
圧力を検出する際にタップと長押しとを区別する段階をさらに備える請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記タッチパッド上または前記タッチパッドの近傍での親指の動きを光学的に検出する段階をさらに備える請求項14に記載の方法。
【請求項18】
ハンドヘルド型のコンピュータデバイスと、
前記コンピュータデバイスの上側パネルに配置されている親指タッチパッドと、
前記タッチパッドに対応付けられている複数の容量センサを有する容量センサアレイと、
前記タッチパッドに対応付けられている少なくとも1つの光センサと、
前記タッチパッドに対応付けられており、前記コンピュータデバイスに対するブール入力として親指圧力を検出する圧力センサ機構と
を備え、
前記容量センサアレイおよび前記光センサは、親指操作を検出して、前記コンピュータデバイスについてのx方向およびy方向においてカーソルを制御するシステム。
【請求項19】
前記親指タッチパッドは、
前記容量センサアレイの前記複数の容量センサが分散して設けられている、鞍形状を持つ外側カバーと、
前記光センサ用に光を通過させるために前記カバーに設けられている開口と、
前記開口の後方に設けられている光源と、
前記開口の後方に設けられている光検出部と
を有する請求項18に記載のシステム。
【請求項20】
前記親指タッチパッドはさらに、
前記容量センサアレイが有する各センサからの出力を整理するためのゼブラストリップコネクタ
を有する請求項19に記載のシステム。
【請求項21】
前記圧力センサ機構は、前記タッチパッドの下方に設けられている触覚スイッチを有する請求項18に記載のシステム。
【請求項22】
前記圧力センサ機構は、一対の触覚スイッチを有しており、前記タッチパッドの両端に1つずつ設けられている請求項18に記載のシステム。
【請求項23】
前記ブール入力は、クリック入力を含む請求項18に記載のシステム。
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図8D】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図9D】
【図10A】
【図10B】
【図10C】
【図10D】
【図10E】
【図10F】
【図11A】
【図11B】
【図11C】
【図11D】
【図12A】
【図12B】
【図13A】
【図13B】
【図14A】
【図14B】
【図14C】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図8D】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図9D】
【図10A】
【図10B】
【図10C】
【図10D】
【図10E】
【図10F】
【図11A】
【図11B】
【図11C】
【図11D】
【図12A】
【図12B】
【図13A】
【図13B】
【図14A】
【図14B】
【図14C】
【公表番号】特表2012−530320(P2012−530320A)
【公表日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−516086(P2012−516086)
【出願日】平成22年4月29日(2010.4.29)
【国際出願番号】PCT/US2010/032973
【国際公開番号】WO2010/147704
【国際公開日】平成22年12月23日(2010.12.23)
【出願人】(591003943)インテル・コーポレーション (1,101)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年4月29日(2010.4.29)
【国際出願番号】PCT/US2010/032973
【国際公開番号】WO2010/147704
【国際公開日】平成22年12月23日(2010.12.23)
【出願人】(591003943)インテル・コーポレーション (1,101)
【Fターム(参考)】
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