説明

圧力センサ

【課題】広範囲の環境変化分布を精密に検出出来、構成簡易で製造コストが安く、適用される広範囲の表面の形状変化に柔軟に従う弾性表面波素子アレイへの使用に適した圧力センサを提供することである。
【解決手段】圧力センサ12aは、球面の一部の円環状曲面を含む圧電性弾性表面波伝搬面14を備えた基材16と、伝搬面に接して形成され伝搬面に励起させ伝搬させた弾性表面波を受信し電気信号に変換する弾性表面波励起変換手段18aと、を有する。伝搬面は物体接触部位Tを有し、接触部位に対する物体の接触圧力増加に従って前記伝搬面を伝搬する弾性表面波の振幅低下を生じさせ伝搬状態を低下させるに従って弾性表面波の伝搬状態が変化することに基づき前記変換手段が受信した弾性表面波から変換された電気信号から前記接触圧力の大きさを検出する圧力検出手段24を備えている、ことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧力センサに関係している。
【背景技術】
【0002】
弾性表面波(SAW:surface acoustic wave)が伝搬する伝搬面を備えた基材と、基材の伝搬面に弾性表面波を励起し伝搬させるとともに伝搬した弾性表面波を受信して電気信号に変換する弾性表面波励起変換手段と、を有している弾性表面波素子は従来から良く知られている。従来の弾性表面波素子は、遅延線、発振器のための発振素子または共振素子、周波数を選択するためのフィルタ、化学センサやバイオセンサなどの各種センサ、あるいはリモートタグ等に使用されている。
【0003】
国際公開 WO 01/45255 A1号公報は、球形状の基材を有した弾性表面波素子を開示している。そしてこの公報は、球形状の基材の表面上に弾性表面波励起変換手段により所定範囲の幅で所定範囲の振動数の弾性表面波を励起すると上記所定範囲の幅の部分を含む所定の円環状の帯域に沿い上記励起された弾性表面波を大きく劣化させることなく繰り返し周回させることが出来ることを開示している。上記公報はさらに、複数のこのような弾性表面波素子の複数の基材を夫々の伝搬面以外の表面部位で相互に連結して並べた弾性表面波素子アレイも開示している。
【0004】
上述した如き弾性表面波素子では、上記所定の円環状の帯域に接触している外部環境に変化が生じるとこの変化に対応して上記帯域を伝搬する弾性表面波の伝搬速度も変化するので、これによって外部環境の変化を知ることが出来ることも知られている。そして、上記外部環境の変化には、上記帯域に接触した物体が上記帯域に負荷する圧力の変化も含まれる。
【0005】
ところで、人間型ロボットなどに用いられる触覚センサ(圧力センサ)に関する研究が、近年盛んに行われている(例えば、鈴木健一郎,谷川鉱:集積化触覚センサアレイ,日本ロボット学会誌,Vol.8,No4,pp.472−474(2000)や、陰山竜介,加賀美聡,稲葉雅幸,井上博允:導電性ゲルを用いたロボット用柔軟触覚センサの開発と応用,第16回日本ロボット学会学術講演会 講演論文集,pp873−874などの文献を参照)。これら従来の触覚センサは、手や指に対応する部材を備えた把持装置のような比較的小さな面積の領域において使用されており、人間型ロボットの体表面の全体に亘り容易に適用可能な構成の触覚センサ(圧力分布検出センサ)に関する研究は、まだまだ発展途上である。
【0006】
また、キーボードなどに応用されているON/OFFスイッチを複数配列して面における圧力の分布を検出することも従来良く知られている。しかしながらこのような従来の圧力分布検出センサでは、個々のON/OFFスイッチに所定以上の圧力が負荷された否かを知ることができるのみで、個々のON/OFFスイッチに負荷された圧力の大きさまでは知ることが出来ない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開 WO 01/45255 A1号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】鈴木健一郎,谷川鉱:集積化触覚センサアレイ,日本ロボット学会誌,Vol.8,No4,pp.472−474(2000)
【非特許文献2】陰山竜介,加賀美聡,稲葉雅幸,井上博允:導電性ゲルを用いたロボット用柔軟触覚センサの開発と応用,第16回日本ロボット学会学術講演会 講演論文集,pp873−874
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
人間型ロボットの体表面の全体に亘り用いられる触覚センサ(圧力分布検出センサ)は、圧力の大きさの分布を精密に検出することが必要とされるだけでなく、体表面に良好に従うことが出来るよう柔軟であることが必要とされている。しかも構成が簡素で製造コストが安価であるにこしたことはない。
【0010】
人間型ロボットにおいては、体表面の出来る限り広い範囲、好ましくは全体、から圧力の大きさの分布に関する精密な情報を得ることによって、重心や姿勢の制御が容易になることが知られており、精度の高い上述した如き触覚センサを早期に実現することが望まれている。
【0011】
この発明は上記事情の下で為され、本発明の目的は、広い面積範囲の圧力変化を含む環境変化の分布を精密に検出することが出来るとともに、構成が簡易であって製造コストが安く、また適用される広い面積範囲の表面形状の変化にも柔軟に従うことが可能な弾性表面波素子アレイに使用することに適した個々の圧力センサを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述したこの発明の目的を達成するために、この発明に従った圧力センサは:少なくとも球面の一部により構成され少なくとも円環状の曲面の一部を含み弾性表面波が伝搬する伝搬面を備えた基材と、前記伝搬面に弾性表面波を励起し伝搬させるとともに伝搬した弾性表面波を受信して電気信号に変換する弾性表面波励起変換手段と、を有しており;前記基材は、圧電性を有する少なくとも一部分を表面に沿い有していて;前記弾性表面波励起変換手段は、前記圧電性を有する少なくとも一部分に接して形成されているか又は前記圧電性を有する少なくとも一部分に所定の隙間を介在させて対面するよう形成されており;前記伝搬面は物体が接触する接触部位を有しており;前記接触部位に対する物体の接触圧力の増加に従って前記伝搬面を伝搬する弾性表面波の振幅の低下を生じさせ伝搬状態を低下させることに基づいて前記弾性表面波励起変換手段により受信した弾性表面波から変換された電気信号から、前記圧力の大きさを検出する圧力検出手段を備えている、ことを特徴としている。
【0013】
なおこの発明において周波数分析手段とは、入力された信号をスペクトル解析を行なうことにより周波数別に強度を求めたり、周波数別に入力された信号を分別して解析する装置を含み、例えばスペクトルアナライザーや、デジタルオシロスコープから得られる時間波形データをフーリエ変換して周波数分析を行なう装置を含む。
【0014】
なお、本発明においては、電界をかけることにより変形したり、圧力を加えることにより電界を生じる性質を圧電性と称し、またこのような圧電性を有した材料を圧電材料と称している。
【発明の効果】
【0015】
上述した如く構成されたことを特徴とする本発明に従った圧力センサは、広い面積範囲の圧力変化を含む環境変化の分布を精密に検出することが出来るとともに構成が簡易であって製造コストが安くまた適用される広い面積範囲の表面形状の変化にも柔軟に従うことが可能である以下に記載の弾性表面波素子アレイに使用することに適している。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】この発明の第1の実施の形態に従った弾性表面波素子アレイの構成を概略的に示す斜視図である。
【図2】この発明の第2の実施の形態に従った弾性表面波素子アレイの構成を概略的に示す平面図である。
【図3】(A)乃至(C)は、本願の発明の第3の実施の形態に従った、圧力センサアレイとしても使用可能な弾性表面波素子アレイにおいて使用される複数の弾性表面波素子の概略的な側面図であり;そして、 (D)は、図3の(C)に示されていたのと同じ弾性表面波素子を使用し、接触位置を基材上の伝搬路で弾性表面波励起変換手段から弾性表面波の進行方向に90°離れた位置から上記進行方向に対し直交する方向に離した場合を示す側面図である。
【図4】図3の(A)乃至(C)の3種類の弾性表面波素子において、基材上の伝搬路で夫々の弾性表面波励起変換手段から弾性表面波の進行方向に90°離れた位置を接触位置とし、接触位置に圧力負荷板を介して負荷された圧力の大きさとそれに伴なう弾性表面波素子の出力の減衰状況が示されている。
【図5】本願の発明の第4の実施の形態に従った、圧力センサアレイとしても使用可能な弾性表面波素子アレイにおいて使用される複数の弾性表面波素子の1つを概略的に示す側面図である。
【図6】(A)は、この発明の第5の実施の形態に従った弾性表面波素子アレイの構成を概略的に示す平面図であり; (B)は、この発明の第5の実施の形態に従った弾性表面波素子アレイの構成の一部を概略的に示す側面図であり;そして、 (C)は、この発明の第5の実施の形態に従った弾性表面波素子アレイの変形例の構成の一部を概略的に示す側面図である。
【図7】この発明の第6の実施の形態に従った弾性表面波素子アレイの構成を概略的に示す平面図である。
【図8】(A)は、この発明の第7の実施の形態に従った弾性表面波素子アレイの構成を概略的に示す側面図であり;そして、 (B)は、この発明の第7の実施の形態に従った弾性表面波素子アレイの入力手段が発生させる電気信号の一部を説明の為に簡略化して示す図である。
【図9】この発明の第8の実施の形態に従った弾性表面波素子アレイの構成を概略的に示す平面図である。
【図10】(A)は、この発明の第9の実施の形態に従った弾性表面波素子アレイの構成を概略的に示す平面図であり; (B)は、この発明の第9の実施の形態に従った弾性表面波素子アレイの構成の一部を概略的に示す側面図であり;そして、 (C)は、この発明の第9の実施の形態に従った弾性表面波素子アレイの変形例の構成の一部を概略的に示す側面図である。
【図11】この発明の第10の実施の形態に従った弾性表面波素子アレイの構成を概略的に示す平面図である。
【図12】この発明の第5,第6,第9,そして第10の実施の形態と第5及び第9の実施の形態の変形例とに共通の第1の変形例を概略的に示す側面図である。
【図13】この発明の第1乃至第10の実施の形態とこれらの変形例とに共通の第2の変形例を概略的に示す斜視図である。
【図14】(A)は、第1乃至第10の実施の形態とこれらの変形例とに共通の第3の変形例の概略的な斜視図であり;そして、 (B)は、上記共通の第3の変形例の一部を拡大して概略的に示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[第1の実施の形態]
先ず最初にこの発明の第1の実施の形態に従った弾性表面波素子アレイ10について図1を参照しながら詳細に説明する。図1は、この発明の第1の実施の形態に従った弾性表面波素子アレイ10の構成を概略的に示す斜視図である。
【0018】
この弾性表面波素子アレイ10は、図1中に示されている如く、複数の弾性表面波素子12a,12b,そして12cを備えている。複数の弾性表面波素子12a,12b,そして12cは、弾性表面波x,y,そしてzが伝搬する伝搬面14を備えた基材16を有している。複数の弾性表面波素子12a,12b,そして12cの夫々の基材16は相互に同じ寸法形状を有しているとともに、相互に同じ構造を有している。複数の弾性表面波素子12a,12b,そして12cは、伝搬面14に弾性表面波x,y,そしてzを励起し伝搬させるとともに伝搬した弾性表面波x,y,そしてzを受信して電気信号に変換する弾性表面波励起変換手段18a,18b,そして18cを夫々が有している。
【0019】
基材16は、弾性表面波x,y,そしてzを励起させ伝搬させることが可能になるように圧電性を有する少なくとも一部分を表面に沿い有している。このような基材16は例えば、圧電材料により全体が形成されているか、又は非圧電材料の基体の表面を覆う圧電材料膜との組み合わせにより構成することが出来る。そして後者の組み合わせの場合、圧電材料膜は非圧電材料の基体の表面の全てを覆ってる必要はなく、弾性表面波x,y,そしてzが伝搬する伝搬面14として使用する部分のみを覆っていることが出来るし、少なくとも基材16の表面において弾性表面波励起変換手段18a,18b,そして18cの夫々が設けられている場所を覆っていれば良い。
【0020】
ここで使用する用語「伝搬面」14とは、複数の弾性表面波素子12a,12b,そして12cの基材16の外表面において弾性表面波励起変換手段18a,18b,そして18cにより励起され、弾性表面波励起変換手段18a,18b,そして18cにより受信された後に電気信号に変換される弾性表面波x,y,そしてzが伝搬する部位のみを意味している。即ち、複数の弾性表面波素子12a,12b,そして12c基材16の外表面において弾性表面波励起変換手段18a,18b,そして18cにより弾性表面波x,y,そしてzが励起されず伝搬されない部位、又は、弾性表面波x,y,そしてzが励起され伝搬されているとしてもそこを伝搬された弾性表面波が弾性表面波励起変換手段18a,18b,そして18cにより電気信号に変換されることが出来ない部位は、ここでは「伝搬面」14とはいわない。
【0021】
複数の弾性表面波素子12a,12b,そして12cの基材16は、伝搬面14が少なくとも円環状の曲面の一部を含んでいる。この実施の形態ではさらに、基材16の伝搬面14は少なくとも連続した円環状の曲面であって、この伝搬面14を伝搬する弾性表面波が基材16の表面に沿い周回する。
【0022】
なお図1では、伝搬面14は基材16の表面において所定の幅を有し基材16の表面の所定方向に円環状に延出している帯状の部分として描かれているが、これは説明を容易にする為にそのように描かれているだけである。実際の伝搬面14は,基材16の表面においてそこに励起され伝搬する弾性表面波x,y,そしてzが基材16の表面の所定方向に伝搬して行く間に基材16の表面に沿いその伝搬方向に対し交差する方向に拡散したり収縮したりすることが多いことを考慮すべきである。
【0023】
ここで述べる「所定の方向」とは、図1中に矢印で示された方向とは逆の方向(即ち、図1中の下向き方向)であっても良いことはいうまでも無い。すだれ状電極は様々な形態のものが提案されている。所望の一方向(例えば、図1中で矢印により示されている上方向)にのみ弾性表面波を励起させることが出来るような形態もあるが、図1中に示されているような単純な形状のすだれ状電極では、図1中において上下2方向に弾性表面波を励起する。この明細書中では話を容易にする為に一方向にのみ弾性表面波が励起された場合についてのみ説明されているが、この発明の趣旨に従えば、すだれ状電極は、所望の一方向にのみ弾性表面波を励起するものでも、2方向に弾性表面波を励起するものでも、同様に機能するので、いずれでも良い。また、すだれ状電極の端子に重み付けしたり、球の経線形状に端子をパターニングしたりすることも可能である。
【0024】
この実施の形態では、基材16の伝搬面14は少なくとも球面の一部により構成されているが、基材16の表面において伝搬面14以外の部分は弾性表面波x,y,そしてzの励起及び伝搬に無関係なので、いかなる形状であっても良い。この実施の形態の複数の弾性表面波素子12a,12b,そして12cの基材16は、伝搬面14以外の部分が支持柱20により相互間で折り曲げ自在に連結されていて、支持柱20は複数の弾性表面波素子12a,12b,そして12cの基材16の伝搬面14が目的とする対象物以外に接触することを防止し、例えば人間型ロボットの体表面のような支持表面上に直接又は図示しない柔軟な膜材を介して取り付けられる。
【0025】
複数の弾性表面波励起変換手段18a,18b,そして18cが複数の弾性表面波素子12a,12b,そして12cの夫々の伝搬面14に励起し伝搬させる弾性表面波の周波数(即ち、これらの弾性表面波から複数の弾性表面波励起変換手段18a,18b,そして18cにより変換される電気信号の周波数)は互いに異なる少なくとも2つの群に分類される。このことは、複数の弾性表面波素子12a,12b,そして12cは、複数の弾性表面波励起変換手段18a,18b,そして18cにより夫々の伝搬面14に励起され伝搬される弾性表面波の周波数(即ち、これらの弾性表面波から複数の弾性表面波励起変換手段18a,18b,そして18cにより変換される電気信号の周波数)が互いに異なる少なくとも2つの群に分類されることを意味している。
【0026】
この弾性表面波素子アレイ10は、複数の弾性表面波素子12a,12b,そして12cの複数の弾性表面波励起変換手段18a,18b,そして18cにより変換された前記電気信号の周波数を複数の周波数成分に分析する周波数分析手段22を備えているとともに、さらにこれら複数の周波数成分の夫々から前記少なくとも2つの群の夫々の弾性表面波素子12a,12b,そして12cの伝搬面14における弾性表面波x,y,そしてzの伝搬状態を解析する弾性表面波伝搬状態解析手段24も備えている。
【0027】
このような周波数分析手段22は、入力された信号をスペクトル解析を行なうことにより周波数別に強度を求めたり、周波数別に入力された信号を分別して解析する装置を含み、より具体的には、例えばスペクトルアナライザーや、デジタルオシロスコープから得られる時間波形データをフーリエ変換して周波数分析を行なう装置を含む。
【0028】
複数の弾性表面波素子12a,12b,そして12cの複数の弾性表面波励起変換手段18a,18b,そして18cは、これらの弾性表面波励起変換手段18a,18b,そして18cに弾性表面波x,y,そしてzの励起用の相互に異なった周波数の電気信号を同時に入力する共通の入力手段26に接続されている。複数の弾性表面波素子12a,12b,そして12cの複数の弾性表面波励起変換手段18a,18b,そして18cはさらに、これらの弾性表面波励起変換手段18a,18b,そして18cにおいて受信した弾性表面波x,y,そしてzから変換された電気信号を受信する共通の受信手段28にも接続されていて、共通の受信手段28を介して周波数分析手段22に接続されている。
【0029】
なお、図1の実施の形態では、複数の弾性表面波励起変換手段18a,18b,そして18cの夫々の2つの端子の一方がアース線に接続され、他方が共通の受信手段28を介して周波数分析手段22や入力手段26に接続されている。しかしながら、以下のような図1の実施の形態における結線方法と電気的に同様な効果の得られる結線方法を採用することも出来る。この結線方法では、入力手段26が共通の受信手段28から分離され、代わりに図1のアースに接続される配線の途中に配置される。
【0030】
この発明では、その他の、図1の実施の形態における結線方法と電気的に同様な効果の得られる結線方法を排除せず、本発明の趣旨を逸脱しない限り、上述した以外のアース線の取り方や、すだれ状電極の結線方法や電気信号の伝達手段についていかなる除外や制約もない。特に、数十メガヘルツ以上の高周波電気信号は物理的に配線がつながっていなくても信号やエネルギが伝わることがあるのは公知であり、このことを利用して上述した種々の結線や伝達を行なうことを除外せず、このことは本発明の全体に亘り同様である。
【0031】
この実施の形態ではさらに、共通の受信手段28が共通の入力手段26を複数の弾性表面波素子12a,12b,そして12cの複数の弾性表面波励起変換手段18a,18b,そして18cに接続する為にも使用されている。このような受信手段28は例えば1本の導線により構成することが出来る。
【0032】
共通の入力手段26は前述した複数の周波数成分を含む電気信号を同時に発生し、この実施の形態では共通の入力手段26はパルス発生器により構成されている。
【0033】
複数の弾性表面波素子12a,12b,そして12cの複数の弾性表面波励起変換手段18a,18b,そして18cは、夫々の基材16の伝搬表面14の範囲内において表面に沿う圧電性を有する少なくとも一部分、より具体的には圧電材料の表面又は非圧電材料の基体の表面を覆う圧電材料膜、に接して形成されているか、または所定の隙間を介在させて対面するよう形成されているすだれ状電極を含んでいる。複数の弾性表面波素子12a,12b,そして12cの複数の弾性表面波励起変換手段18a,18b,そして18cに含まれているすだれ状電極の夫々の複数の端子の配列周期P1,P2,そしてP3は、少なくとも2つの群に分類される互いに異なる複数の周波数の弾性表面波x,y,そしてzを発生させる為に各群により互いに異なっている。
【0034】
複数の弾性表面波励起変換手段18a,18b,そして18cの夫々がすだれ状電極により構成されている場合、各すだれ状電極により励起され伝搬表面14を伝搬される弾性表面波x,y,又はzの伝搬方向において各すだれ状電極の複数の端子が相互に重複する長さW1,W2,又はW3(図面の煩雑を避けるために、図1では弾性表面波励起変換手段18aのすだれ状電極の重複する長さW1のみが示されている)が対応する伝搬面14の曲率半径以下であることが好ましく、さらに各すだれ状電極により対応する伝搬面14に励起される弾性表面波x,y,又はzの波長(各すだれ状電極の複数の端子の配列周期P1,P2,又はP3に相当)は上記曲率半径の1/5以下であることが好ましいことが分かっている。
【0035】
なおこの実施の形態において複数の弾性表面波素子12a,12b,そして12cの夫々に使用されている基材16を例えば1cmの直径を有した水晶球により構成し、このような基材16上に複数の弾性表面波励起変換手段18a,18b,そして18cの夫々をすだれ状電極により構成した場合には、代表的な弾性表面波励起変換手段18aのすだれ状電極の複数の端子は相互に重複する長さW1が1.1mmに、また配列周期P1が70μmに設定される。複数の弾性表面波励起変換手段18a,18b,そして18cの夫々は、対応する基材16の水晶のZ軸シリンダと呼ばれる結晶軸で定義される位置に配置され、複数の弾性表面波励起変換手段18a,18b,そして18cの夫々により対応する基材16上に励起される弾性表面波は対応する基材16の水晶のZ軸を中心に回転する方向に伝搬され周回する。
【0036】
基材16としては、水晶球の代わりに、LiNbO等の圧電結晶を使用しても良い。基材16としてLiNbOを使用した場合には、3本以上の弾性表面波伝搬経路を設定することが出来ることが分かっている。
【0037】
各すだれ状電極の寸法が上述したように規定されていなければ、特に圧電結晶を基材16に使用する場合、各すだれ状電極は対応する伝搬表面14上に常に確実に所望の弾性表面波x,y,又はzを励起し伝搬させるとともに伝搬された弾性表面波x,y,又はzから電気信号を出力することが困難になり、結晶の異方性に合わせた複雑な形状のすだれ状電極を設計しなければならなくなる。
【0038】
このよう構成されている第1の実施の形態に従った弾性表面波素子アレイ10は、複数の弾性表面波素子12a,12b,そして12cの夫々の伝搬面14において弾性表面波励起変換手段18a,18b,又は18cから離れた位置に接している外部環境が変化した場合、外部環境が変化する以前とは伝搬面14における弾性表面波x,y,又はzの伝搬速度や減衰量などの伝搬状況が変化する。この伝搬状況の変化から、上記外部環境の変化を知ることが出来る。しかも、弾性表面波素子アレイ10の複数の弾性表面波素子12a,12b,そして12cの夫々について相互に独立して上記外部環境の変化を知ることが出来る。
【0039】
即ち、弾性表面波素子アレイ10の複数の弾性表面波素子12a,12b,そして12cの配列分布に対応して複数の弾性表面波素子12a,12b,そして12cの伝搬面14に接している外部環境の変化の配列分布を知ることが出来る。
【0040】
弾性表面波素子アレイ10を例えば人間型ロボットの表面における上記表面に負荷された圧力の大きさの分布を検出する為の圧力分布センサ(即ち、触覚センサ)として使用する場合には、複数の弾性表面波素子12a,12b,そして12cの夫々の支持柱20を人間型ロボットの体表面上に直接又は図示しない柔軟な膜材を介して取り付ける。そして、人間型ロボットの体表面とは反対側に位置しているとともに弾性表面波励起変換手段18a,18b,そして18cから離れている複数の弾性表面波素子12a,12b,そして12cの夫々の基材16の伝搬表面14を含む部位を図示しない物体が接触する接触部位Tとして使用する。そして、弾性表面波伝搬状態解析手段24を、複数の弾性表面波素子12a,12b,そして12cの夫々の基材16の接触部位Tに図示しない物体が接触して圧力が負荷されることにより複数の弾性表面波素子12a,12b,そして12cの夫々の基材16の伝搬表面14を伝搬する弾性表面波x,y,又はzの伝搬速度や減衰量を含む種々の状態が変化し、ひいては弾性表面波励起変換手段18a,18b,又は18cが受信した弾性表面波x,y,又はzから変換された電気信号の変化から前記圧力の大きさを検出する圧力検出手段として使用することが出来る。
【0041】
なおここで、弾性表面波励起変換手段18a,18b,そして18cが基材16の外表面において接触部位Tから離れているので、弾性表面波励起変換手段18a,18b,そして18cは接触部位Tに負荷される外力により破損されることが無い。
【0042】
即ち、弾性表面波素子アレイ10の複数の弾性表面波素子12a,12b,そして12cの夫々を圧力センサとして使用することが出来る。
【0043】
さらに、弾性表面波素子アレイ10において複数の弾性表面波素子12a,12b,そして12cの夫々が検出した前記圧力の大きさの分布から、例えば人間型ロボットの表面における上記表面に負荷された圧力の大きさの分布を検出することが出来る。
【0044】
さらにこの実施の形態においては、弾性表面波素子アレイ10の複数の弾性表面波素子12a,12b,そして12cの複数の基材16の接触部位Tを図示しない共通の覆いにより覆うことが出来る。上記図示しない共通の覆いは、これに対する接触の程度が小さくこれに負荷される圧力が小さい場合にも複数の基材16の接触部位Tに接触するが、この場合には複数の基材16の伝搬表面14における弾性表面波x,y,又はzの伝搬を大きく低下させない。そして、弾性表面波素子アレイ10の複数の弾性表面波素子12a,12b,そして12cの複数の基材16の接触部位Tには、上記図示しない共通の覆いを介して図示しない物体が間接的に接触し間接的に圧力を負荷することになる。
【0045】
またこの実施の形態では、1つの共通の入力手段26のみにより複数の弾性表面波素子12a,12b,そして12cの複数の弾性表面波励起変換手段18a,18b,そして18cに対応する基材16の対応する伝搬表面14に対応する弾性表面波x,y,又はzを発生させる為に必要な相互に異なる複数の周波数成分を含むパルス信号を同時に入力させることが出来る。また、同時に、複数の弾性表面波素子12a,12b,そして12cの複数の弾性表面波励起変換手段18a,18b,そして18cが受信した対応する基材16の対応する伝搬表面14の対応する弾性表面波x,y,又はzから変換された相互に異なる複数の周波数成分を伴なった電気信号を共通の受信手段28により受信し、共通に受信した電気信号を周波数分析手段22により複数の弾性表面波素子12a,12b,そして12cの複数の弾性表面波励起変換手段18a,18b,そして18cの夫々に特有の周波数成分に分析し、さらにこれら特有の周波数成分から弾性表面波伝搬状態解析手段24により複数の弾性表面波素子12a,12b,そして12cの夫々の基材16の伝搬表面14における弾性表面波x,y,又はzの伝搬状態を解析することが出来る。これら伝搬状態からは、複数の弾性表面波素子12a,12b,そして12cの夫々の基材16の接触部位Tに接触した物体が負荷する圧力の大きさを検出することが出来る。
【0046】
[第2の実施の形態]
次にこの発明の第2の実施の形態に従った弾性表面波素子アレイ30について図2を参照しながら詳細に説明する。図2は、この発明の第2の実施の形態に従った弾性表面波素子アレイ30の構成を概略的に示す平面図である。
【0047】
なおこの実施の形態の弾性表面波素子アレイ30の構成部材において図1を参照しながら前述した第1の実施の形態に従った弾性表面波素子アレイ10と同じ構成部材には第1の実施の形態に従った弾性表面波素子アレイ10の同じ構成部材を指摘していた参照符号と同じ参照符号を付し、その構成部材についての詳細な説明は省略する。
【0048】
この実施の形態が図1を参照しながら前述した第1の実施の形態と異なっているのは、複数の弾性表面波素子12a,12b,そして12cの夫々が複数の弾性表面波励起変換手段18a及び18’a,18b及び18’b,そして18c及び18’cを備えていることである。複数の弾性表面波素子12a,12b,そして12cの夫々における複数の弾性表面波励起変換手段18a及び18’a,18b及び18’b,そして18c及び18’cの中の1つは図1を参照しながら前述した第1の実施の形態において使用されていた弾性表面波励起変換手段18a,18b,そして18cであり、残りの数は任意であるが、この実施の形態を示す図2では図面の簡略化の為に上記残りの数は1つとして示されている。
【0049】
複数の弾性表面波素子12a,12b,そして12cの夫々における残り1つの弾性表面波励起変換手段18’a,18’b,そして18’cは、対応する弾性表面波素子12a,12b,そして12cの夫々の基材16の表面において上記1つの弾性表面波励起変換手段18a,18b,そして18cにより励起され伝搬される弾性表面波の伝搬面14から外れた位置に配置されている。
【0050】
複数の弾性表面波素子12a,12b,そして12cの夫々における複数の弾性表面波励起変換手段18a及び18’a,18b及び18’b,そして18c及び18’cは周波数特性が相互に異なっているとともに、他の群の弾性表面波素子12a,12b,又は12cの夫々における複数の弾性表面波励起変換手段18a及び18’a,18b及び18’b,又は18c及び18’cの周波数特性とも異なっている。
【0051】
即ち、この実施の形態では、残り1つの弾性表面波励起変換手段18’a,18’b,そして18’cは、対応する弾性表面波素子12a,12b,そして12cの夫々の基材16の表面において上記1つの弾性表面波励起変換手段18a,18b,そして18cにより励起され伝搬される弾性表面波とは周波数特性が異なっていて、さらに対応しない弾性表面波素子12a,12b,又は12cの基材16の表面の複数の弾性表面波励起変換手段18a及び18’a,18b及び18’b,又は18c及び18’cにより励起され伝搬される弾性表面波とも周波数特性が異なっている。
【0052】
残り1つの弾性表面波励起変換手段18’a,18’b,そして18’cもまた上記1つの弾性表面波励起変換手段18a,18b,そして18cと同様にすだれ状電極を含んでいることが出来る。
【0053】
この場合には、複数の弾性表面波素子12a,12b,そして12cの夫々における複数の弾性表面波励起変換手段18a及び18’a,18b及び18’b,または18c及び18’cの夫々のすだれ状電極は複数の端子の配列周期(上記1つの弾性表面波励起変換手段18a,18b,そして18cの夫々のすだれ状電極の複数の端子の配列周期のみが図1中に参照符号P1,P2,又はP3により指摘されている)が相互に異なっているとともに、他の群の弾性表面波素子12a,12b,又は12cの夫々における複数の弾性表面波励起変換手段18a及び18’a,18b及び18’b,又は18c及び18’cの夫々のすだれ状電極の複数の端子の配列周期とも異なっている。
【0054】
さらに、残り1つの弾性表面波励起変換手段18’a,18’b,そして18’cに対しては、図1を参照しながら前述した第1の実施の形態において使用されていた弾性表面波励起変換手段18a,18b,そして18cに対して共通の入力手段26により弾性表面波励起用の相互に異なった複数の周波数成分の電気信号を同時に入力しているのと同様に、残り1つの弾性表面波励起変換手段18’a,18’b,そして18’cに対して弾性表面波励起用の相互に異なった複数の周波数成分の電気信号を同時に入力する共通の入力手段26’に接続されている。
【0055】
複数の弾性表面波素子12a,12b,そして12cの夫々の残り1つの弾性表面波励起変換手段18’a,18’b,又は18’cはさらに、図1を参照しながら前述した第1の実施の形態において使用されていた弾性表面波励起変換手段18a,18b,そして18cがこれらの弾性表面波励起変換手段18a,18b,そして18cにおいて受信した弾性表面波x,y,そしてzから変換された電気信号を受信する共通の受信手段28に接続されていたのと同様に、残り1つの弾性表面波励起変換手段18’a,18’b,そして18’cにおいて受信した弾性表面波から変換された電気信号を受信する共通の受信手段28’にも接続されていて、共通の受信手段28’を介して周波数分析手段22’に接続されている。
【0056】
この実施の形態ではさらに、共通の受信手段28’が共通の入力手段26’を複数の弾性表面波素子12a,12b,そして12cの夫々の残り1つの弾性表面波励起変換手段18’a,18’b,又は18’cに接続する為にも使用されている。このような受信手段28’は例えば1本の導線により構成することが出来る。
【0057】
共通の入力手段26’は残り1つの弾性表面波励起変換手段18’a,18’b,そして18’cに対し、夫々に周波数成分の相互に異なる弾性表面波を励起させる為の前述した複数の周波数成分を含む電気信号を同時に発生し、この実施の形態では共通の入力手段26’はパルス発生器により構成されている。
【0058】
複数の弾性表面波素子12a,12b,そして12cの夫々の残り1つの弾性表面波励起変換手段18’a,18’b,又は18’cの伝搬面14’の一部は上記夫々の基材16の外表面の接触部位Tに含まれているとともに、残り1つの弾性表面波励起変換手段18’a,18’b,又は18’cは接触部位Tから外れている。
【0059】
弾性表面波励起変換手段18’a,18’b,又は18’cが基材16の外表面の接触部位Tから外れていることにより、弾性表面波励起変換手段18’a,18’b,又は18’cは接触部位Tに外部から負荷される外力により損傷されることが無い。
【0060】
残り1つの弾性表面波励起変換手段18’a,18’b,そして18’cがすだれ状電極により構成されている場合、各すだれ状電極により励起され伝搬表面14’を伝搬される弾性表面波の伝搬方向において各すだれ状電極の複数の端子が相互に重複する長さ(図1を参照した第1の実施の形態ではW1,W2,又はW3と記載されていて(図面の煩雑を避けるために、図1では弾性表面波励起変換手段18aのすだれ状電極の重複する長さW1のみが示されている)が、図1を参照して前述した1つの弾性表面波励起変換手段18a,18b,又は18cのすだれ状電極の場合と同様に、対応する伝搬面14’の曲率半径以下であることが好ましく、さらに各すだれ状電極により対応する伝搬面14’に励起される弾性表面波の波長(各すだれ状電極の複数の端子の配列周期に相当)は上記曲率半径の1/5以下であることが好ましい。
【0061】
各すだれ状電極の寸法がこのように規定されていないと、特に圧電結晶を基材16に使用する場合、各すだれ状電極は対応する伝搬表面14’上に常に確実に所望の弾性表面波を励起し伝搬させ伝搬された弾性表面波から電気信号を出力することが困難になり、結晶の異方性に合わせた複雑な形状のすだれ状電極を設計しなくてはならなくなる。
【0062】
このよう構成されている第2の実施の形態に従った弾性表面波素子アレイ30は、図1を参照しながら前述した第1の実施の形態に従った弾性表面波素子アレイ10と同様の効果を得ることが当然出来る。そしてこれに加え、複数の弾性表面波素子12a,12b,そして12cの夫々が複数の弾性表面波励起変換手段18a及び18’a,18b及び18’b,そして18c及び18’cを備えていて、しかも夫々の弾性表面波素子12a,12b,又は12cの複数の弾性表面波励起変換手段18a及び18’a,18b及び18’b,又は18c及び18’cが相互に異なる周波数特性を有しているので、複数の弾性表面波素子12a,12b,そして12cの夫々において夫々の複数の弾性表面波励起変換手段18a及び18’a,18b及び18’b,又は18c及び18’cの伝搬面14に接触する外部環境の変化、例えば圧力の大きさの変化、をより詳細に且つ広範囲に知ることが出来る。
【0063】
上述したことから明らかなように、この実施の形態の弾性表面波素子アレイ30の複数の弾性表面波素子12a,12b,そして12cの夫々も圧力センサとして使用することができる。
【0064】
[第3の実施の形態]
図3の(A)乃至(C)には、本願の発明の第3の実施の形態に従った、圧力センサアレイとしても使用可能な弾性表面波素子アレイにおいて使用される複数の弾性表面波素子12A,12B,そして12Cが示されている。なおこの実施の形態において図1を参照しながら前述した第1の実施の形態の弾性表面波素子12a,12b,そして12cと同じ構成部材には同じ参照符号を付し、このような同じ構成部材についての詳細な説明は省略する。
【0065】
図3の(A)乃至(C)には、同じ基材16上に、複数の端子が相互に重複する長さのみが相互に異なり複数の端子の配列周期は相互に同じであるすだれ状電極により構成された弾性表面波励起変換手段18A,18B、そして18Cを有した3種類の弾性表面波素子12A,12B,そして12Cが示されていて、さらにこれら3種類の弾性表面波素子12A,12B,そして12Cにおいて、弾性表面波励起変換手段18A,18B、そして18Cの夫々により励起された弾性表面波が伝搬路14A,14B,そして14Cを伝搬するのに伴ない伝搬路14A,14B,そして14Cの幅方向の形状(即ち、弾性表面波の振幅)がどのように変わるのかが概略的に示されている。
【0066】
図3の(A)では、複数の端子が相互に重複する長さが最も小さい弾性表面波励起変換手段18Aにより基材16の周面上に励起され伝搬される弾性表面波が:上記周面に沿い弾性表面波励起変換手段18Aから90°離れた位置に至るまで伝搬路14A(即ち、振幅)を徐々に拡幅して90°離れた位置で最も拡幅し;次に、90°離れた位置から180°離れた位置に至るまで伝搬路14Aを徐々に収縮させて180°離れた位置で弾性表面波励起変換手段18Aの上記重複する長さに等しくなり;次に、270°離れた位置に至るまで伝搬路14Aを徐々に拡幅して270°離れた位置で上述した90°離れた位置と同様に最も拡幅し;次に、270°離れた位置から360°離れた位置(即ち、弾性表面波励起変換手段18A)に至るまで伝搬路14Aを徐々に収縮させて360°離れた位置で弾性表面波励起変換手段18Aの上記重複する長さに等しくなる。逆にいうと、このように成るように、所定の材料の所定の外径の基材16上に配置する弾性表面波励起変換手段18Aのすだれ状電極の複数の端子の相互に重複する長さが、配列周期は他の弾性表面波励起変換手段18Bや18Cのすだれ状電極の複数の端子の配列周期と同じにしながら、選択されている。
【0067】
図3の(B)では、複数の端子が相互に重複する長さが中間の弾性表面波励起変換手段18Bにより基材16の周面上に励起され伝搬される弾性表面波が:弾性表面波励起変換手段18Aの上記重複する長さに等しい幅の伝搬路14B(即ち、振幅)を上記周面に沿い弾性表面波励起変換手段18Bから360°周回する。逆にいうと、このように成るように、所定の材料の所定の外径の基材16上に配置する弾性表面波励起変換手段18Bのすだれ状電極の複数の端子の相互に重複する長さが、配列周期は他の弾性表面波励起変換手段18Aや18Cのすだれ状電極の複数の端子の配列周期と同じにしながら、選択されている。
【0068】
図3の(C)では、複数の端子が相互に重複する長さが最も大きい弾性表面波励起変換手段18Cにより基材16の周面上に励起され伝搬される弾性表面波が:上記周面に沿い弾性表面波励起変換手段18Cから90°離れた位置に至るまで伝搬路14C(即ち、振幅)を徐々に収縮させて90°離れた位置で最も小さくし;次に、90°離れた位置から180°離れた位置に至るまで伝搬路14Cを徐々に拡幅させて180°離れた位置で弾性表面波励起変換手段18Cの上記重複する長さに等しくなり;次に、270°離れた位置に至るまで伝搬路14Cを徐々に収縮させて270°離れた位置で上述した90°離れた位置と同様に最も小さくし;次に、270°離れた位置から360°離れた位置(即ち、弾性表面波励起変換手段18C)に至るまで伝搬路14Cを徐々に拡幅させて360°離れた位置で弾性表面波励起変換手段18Cの上記重複する長さに等しくなる。逆にいうと、このように成るように、所定の材料の所定の外径の基材16上に配置する弾性表面波励起変換手段18Cのすだれ状電極の複数の端子の相互に重複する長さが、配列周期は他の弾性表面波励起変換手段18Aや18Bのすだれ状電極の複数の端子の配列周期と同じにしながら、選択されている。
【0069】
そして図4には、図3の(A)乃至(C)の3種類の弾性表面波素子12A,12B,そして12Cにおいて、基材16上の伝搬路14A,14B,そして14Cで夫々の弾性表面波励起変換手段18A,18B,そして18Cから弾性表面波の進行方向に90°離れた位置を接触位置TPとし、接触位置TPに圧力負荷板PPを介して負荷された圧力の大きさとそれに伴なう弾性表面波の振幅の減衰状況が参照符号a,b,そしてcで指摘した線により示されている。
【0070】
参照符号a,b,そしてcで指摘した線からは、接触位置TPにおける伝搬路14A,14B,そして14Cの幅(即ち、弾性表面波の振幅)が狭いほど、接触位置TPにおいて受ける圧力の大きさによる基板16の表面の変形の影響を受けやすい(即ち、感度が高い)ことが分かる。
【0071】
これらの3種類の弾性表面波素子12A,12B,そして12Cの弾性表面波励起変換手段18A,18B,そして18Cに対しては夫々に対応した図示しない3つの入出力手段により相互に同じ周波数の電気信号を入力し、また夫々が対応している弾性表面波励起変換手段18A,18B,そして18Cが受信した弾性表面波から変換された電気信号を受け取る。さらに、上述した如く夫々に対応した図示しない3つの入出力手段に接続された図示しない弾性表面波伝搬状態解析手段により夫々が上述したごとく受信した弾性表面波から変換された電気信号を基に、3種類の弾性表面波素子12A,12B,そして12Cの夫々に負荷されている圧力の状態を検出することが出来る。
【0072】
さらに、図3の(D)には、図3の(C)に示されていたのと同じ弾性表面波素子12Cを使用し、接触位置TPを基材16上の伝搬路14Cで弾性表面波励起変換手段18Cから弾性表面波の進行方向に90°離れた位置から上記進行方向に対し直交する方向に離した場合が示されている。
【0073】
そして、この場合の接触位置TPに圧力負荷板PPを介して負荷された圧力の大きさとそれに伴なう弾性表面波の振幅の減衰状況が図4に参照符号dで指摘した線により示されている。参照符号dで指摘した線からは、上記圧力の大きさが上記圧力による基材16の表面の変形が生じる程度に大きくなるまでは、上記圧力の大きさによる弾性表面波の振幅の減衰が生ぜず、上記圧力の大きさが上記圧力による基材16の表面の変形が生じる程度に大きくなった後は、上記圧力の大きさがさらに増大するにつれ弾性表面波の振幅の減衰が図3の(C)の弾性表面波素子12Cの場合と同様に急激に減衰することが分かる。
【0074】
図3の(A)乃至(D)及び図4のa乃至dにより示されているように、同じ基材16を使用し同じ配列周期の複数の端子を有したすだれ状電極による弾性表面波励起変換手段18A乃至18Cを使用した弾性表面波素子12A乃至12Cを使用した場合でも、種々の圧力感度を有した弾性表面波素子12A乃至12Cを提供することが出来ることが分かる。そして、これら種々の圧力感度を有した弾性表面波素子12A乃至12Cを相互に組み合わせることにより、幅広い圧力感度を有した弾性表面波素子アレイ、即ち圧力センサアレイ、を提供することが出来ることが分かる。
【0075】
[第4の実施の形態]
図5には、本願の発明の第4の実施の形態に従った、圧力センサアレイとしても使用可能な弾性表面波素子アレイにおいて使用される複数の弾性表面波素子12Dの1つが示されている。この実施の形態でも、図1を参照しながら前述した第1の実施の形態の弾性表面波素子12a,12b,そして12cと同じ構成部材や図3及び図4を参照しながら前述した第3の実施の形態の弾性表面波素子12A,12B,そして12Cと同じ構成部材には同じ参照符号を付し、このような同じ構成部材についての詳細な説明は省略する。
【0076】
この実施の形態に従った弾性表面波素子12Dは、複数の周波数帯域の弾性表面波を同時に励起可能なように、例えば図5中に示されているように複数の配列周期に配置された複数の端子を有するすだれ状電極により、構成された弾性表面波励起変換手段18Dを基材16上に有している。この実施の形態に使用した弾性表面波素子12Dは1個のみ使用されても、図3の(A)乃至(C)に示されていたような相互に異なった配列周期に配置された複数の端子を有するすだれ状電極により構成された弾性表面波励起変換手段18A,18B,そして18Cを夫々が使用した複数の弾性表面波素子12A,12B,そして12Cを組み合わせた上述した如き弾性表面波素子アレイ、即ち圧力センサアレイ、と同様に幅広い圧力感度を有することが出来る。
【0077】
何故ならば:周波数が高い弾性表面波ほど基材16の接触位置TPにおけるビーム幅が狭くなり、基材16の接触位置TPで見てみると図3の(C)に示されている弾性表面波素子12Cにおいて励起される弾性表面波のようになり;また、周波数が低い弾性表面波ほど基材16の接触位置TPにおけるビーム幅が大きくなり、基材16の接触位置TPで見てみると図3の(A)に示されている弾性表面波素子12Aにおいて励起される弾性表面波のようになるからである。
【0078】
[第5の実施の形態]
次にこの発明の第5の実施の形態に従った弾性表面波素子アレイ40について図6の(A)及び(B)を参照しながら詳細に説明する。図6の(A)は、この発明の第5の実施の形態に従った弾性表面波素子アレイ40の構成を概略的に示す平面図である。
【0079】
なおこの実施の形態の弾性表面波素子アレイ40の構成部材において図1及び図2を参照しながら前述した第1及び第2の実施の形態に従った弾性表面波素子アレイ10及び30と同じ構成部材には第1及び第2の実施の形態に従った弾性表面波素子アレイ10及び30の同じ構成部材を指摘していた参照符号と同じ参照符号を付し、その構成部材についての詳細な説明は省略する。
【0080】
この実施の形態が図1を参照しながら前述した第1の実施の形態と異なっているのは、複数の弾性表面波素子12a,12b,そして12cの夫々が複数の弾性表面波励起変換手段18a及び18’a,18b及び18’b,そして18c及び18’cを備えていることである。複数の弾性表面波素子12a,12b,そして12cの夫々における複数の弾性表面波励起変換手段18a及び18’a,18b及び18’b,そして18c及び18’cの中の1つは図1を参照しながら前述した第1の実施の形態において使用されていた弾性表面波励起変換手段18a,18b,そして18cであり、残りの数は任意であるが、この実施の形態を示す図6の(A)では図面の簡略化の為に上記残りの数は1つとして示されている。
【0081】
この実施の形態が図2を参照しながら前述した第2の実施の形態と異なっているのは、複数の弾性表面波素子12a,12b,そして12cの夫々の複数の弾性表面波励起変換手段18a及び18’a,18b及び18’b,又は18c及び18’cの夫々が、対応する伝搬面14又は14’に弾性表面波(複数の弾性表面波素子12a,12b,そして12cの夫々の1つの弾性表面波励起変換手段18a,18b,そして18cが対応する伝搬面14に励起し伝搬させる弾性表面波のみが図1においてx,y,又はzで示されている)を励起し伝搬させる送信部S,S’と、送信部S,S’により対応する伝搬面14又は14’を伝搬された弾性表面波を受信して電気信号に変換する受信部J,J’と、を含んでいることである。
【0082】
複数の弾性表面波励起変換手段18a及び18’a,18b及び18’b,又は18c及び18’cの夫々の送信部S又はS’及び対応する受信部J又はJ’は、対応する伝搬面14又は14’において弾性表面波が伝搬する方向に相互に離間している。
【0083】
複数の弾性表面波励起変換手段18a及び18’a,18b及び18’b,又は18c及び18’cの夫々の送信部S又はS’及び対応する受信部J又はJ’は、これらの間で伝搬する弾性表面波の周波数に対応した配列周期の複数の端子を有したすだれ状電極であることが出来る。
【0084】
複数の弾性表面波励起変換手段18a及び18’a,18b及び18’b,又は18c及び18’cの夫々の送信部S又はS’及び対応する受信部J又はJ’の夫々の複数の端子の配列周期(上記1つの弾性表面波励起変換手段18a,18b,そして18cの夫々のすだれ状電極の複数の端子の配列周期のみが図1中に参照符号P1,P2,又はP3により指摘されている)は、図1及び図2を参照して前述した第1及び第2の実施の形態の複数の弾性表面波励起変換手段18a及び18’a,18b及び18’b,又は18c及び18’cの夫々のすだれ状電極の場合と同様に、相互に異なっているとともに、他の群の弾性表面波素子12a,12b,又は12cの夫々における複数の弾性表面波励起変換手段18a及び18’a,18b及び18’b,又は18c及び18’cの夫々の送信部S又はS’及び対応する受信部J又はJ’のすだれ状電極の複数の端子の配列周期とも異なっている。
【0085】
なお、複数の弾性表面波励起変換手段18a及び18’a,18b及び18’b,又は18c及び18’cの夫々において対応する送信部S又はS’及び対応する受信部J又はJ’のすだれ状電極の複数の端子の配列周期は相互に同じであることが好ましいことはいうまでもない。
【0086】
この実施の形態ではさらに、複数の弾性表面波素子12a,12b,そして12cの夫々の複数の弾性表面波励起変換手段18a及び18’a,18b及び18’b,又は18c及び18’cの夫々の送信部S及びS’が共通の入力手段26’’に接続されているとともに、上記夫々の受信部J及びJ’が夫々の共通の受信手段28’’を介して周波数分析手段22’’及び弾性表面波伝搬状態解析手段24’’に接続されている。
【0087】
共通の入力手段26’’は、複数の弾性表面波素子12a,12b,そして12cの夫々の複数の弾性表面波励起変換手段18a及び18’a,18b及び18’b,又は18c及び18’cの夫々の送信部S及びS’に対し、夫々の送信部S及びS’が対応する伝搬面14及び14’に対し対応する周波数成分の弾性表面波を励起し伝播させる為に必要な複数の周波数成分を全て含む電気信号を同時に入力させる。
【0088】
また、共通の受信部28’’は、複数の弾性表面波素子12a,12b,そして12cの夫々の複数の弾性表面波励起変換手段18a及び18’a,18b及び18’b,又は18c及び18’cの夫々の受信部J及びJ’が受信した対応する複数の周波数成分を全て含む電気信号を、共通の周波数分析手段22’’及び共通の弾性表面波伝搬状態解析手段24’’に送る。
【0089】
共通に受信した複数の電気信号を周波数分析手段22’’により複数の弾性表面波素子12a,12b,そして12cの複数の弾性表面波励起変換手段18a及び18’a,18b及び18’b,又は18c及び18’cの夫々に特有の周波数成分の電気信号に分析し、さらにこれら特有の周波数成分の電気信号を弾性表面波伝搬状態解析手段24’’により複数の弾性表面波素子12a,12b,そして12cの夫々の基材16の伝搬表面14又は14’における弾性表面波の伝搬状態を解析することが出来る。これら伝搬状態からは、複数の弾性表面波素子12a,12b,そして12cの夫々の基材16の接触部位Tに接触した物体が負荷する圧力の大きさを含む外部環境の変化を検出することが出来る。
【0090】
即ち、この実施の形態の弾性表面波素子アレイ40の複数の弾性表面波素子12a,12b,そして12cの夫々も圧力センサとして使用することができる。
【0091】
この実施の形態ではさらに、図1及び図2中に示されていた第1及び第2の実施の形態の複数の弾性表面波素子12a,12b,そして12cの基材16は支持柱20を介して例えば人間型ロボットの体表面のような支持表面上に直接又は図示しない柔軟な膜材を介して取り付けられていたが、複数の弾性表面波素子12a,12b,そして12cの基材16が夫々の外表面において接触部位Tとは反対側の部位Bが例えば人間型ロボットの体表面のような支持表面上に取り付けられる柔軟な膜材42中に埋設されて支持されている。
【0092】
支持柱20を使用しない図6の(A)及び(B)中に示されている弾性表面波素子アレイ40は、図1及び図2中に示されていた第1及び第2の実施の形態の弾性表面波素子アレイ10及び30に比べ、構成がより簡素になり製造も容易となる。しかも、複数の弾性表面波励起変換手段18a及び18a’,18b及び18’b,又は18c及び18’cの夫々の送信部S及びS’が、すだれ状電極により構成されていて、対応する伝搬面14及び14’上をすだれ状電極から両方向に弾性表面波x,y,及びzが励起され伝搬される場合には、膜材42に向い伝搬された弾性表面波x,y,及びzは膜材42により吸収され、対応する受信部J及びJ’に到達することが無い。
【0093】
さらにまたこの実施の形態では、複数の弾性表面波素子12a,12b,そして12cの夫々の複数の弾性表面波励起変換手段18a及び18’a,18b及び18’b,又は18c及び18’cの夫々の送信部S及びS’,そして受信手段J及びJ’が対応する基材16の表面において膜材42から露出されていて接触部位Tから離れた位置に配置されている。従って、複数の弾性表面波素子12a,12b,そして12cの夫々の複数の弾性表面波励起変換手段18a及び18’a,18b及び18’b,又は18c及び18’cの夫々の送信部S及びS’と受信手段J及びJ’との間における弾性表面波の伝搬に膜材42が影響を及ぼすことがない。また、複数の弾性表面波励起変換手段18a及び18’a,18b及び18’b,又は18c及び18’cの夫々の送信部S及びS’,そして受信手段J及びJ’が接触部位Tから離れていることにより、接触部位Tに外部から負荷される外力により複数の弾性表面波励起変換手段18a及び18’a,18b及び18’b,又は18c及び18’cの夫々の送信部S及びS’と受信手段J及びJ’が損傷を受けることもない。
【0094】
このよう構成されている第5の実施の形態に従った弾性表面波素子アレイ40は、図1及び図2を参照しながら前述した第1及び第2の実施の形態に従った弾性表面波素子アレイ10及び30と同様の効果を得ることが当然出来る。そしてこれに加え、複数の弾性表面波素子12a,12b,そして12cの夫々が複数の弾性表面波励起変換手段18a及び18’a,18b及び18’b,そして18c及び18’cを備えていて、しかも夫々の弾性表面波素子12a,12b,又は12cの複数の弾性表面波励起変換手段18a及び18’a,18b及び18’b,又は18c及び18’cの夫々が送信部S又はS’と受信部J又はJ’を有しているので、複数の弾性表面波素子12a,12b,そして12cの夫々において夫々の複数の弾性表面波励起変換手段18a及び18’a,18b及び18’b,又は18c及び18’cの伝搬面14及び14’に接触する外部環境の変化、例えば温度の変化、に伴なう伝搬面14及び14’を伝搬する弾性表面波の特性の変化(例えば、伝搬速度の変化)をより精密に知ることが出来る。
【0095】
[第5の実施の形態の変形例]
図6の(C)には、図6の(A)及び(B)を参照したこの発明の第5の実施の形態に従った弾性表面波素子アレイ40の変形例40’の側面図が概略的に示されている。
【0096】
この変形例40’の弾性表面波素子アレイが、図6の(A)及び(B)を参照したこの発明の第5の実施の形態に従った弾性表面波素子アレイ40と異なっているのは、第5の実施の形態の弾性表面波素子アレイ40の複数の弾性表面波素子12a,12b,そして12cの夫々の基材16において膜材42に埋設されていた部位Bが削除されて略半球形状の基材16’にされており、上記埋設されていた部位Bが削除された後の部分の平坦面が柔軟な膜材42’の表面に例えば接着剤等の公知の固定手段により固定されていることである。この変形例の膜材42’には変形例40’の弾性表面波素子アレイの複数の弾性表面波素子12a,12b,そして12cの夫々の基材16’の表面が埋設されることがないので、この変形例の膜材42’の厚さは前述の第5の実施の形態に従った弾性表面波素子アレイ40の膜材42の厚さに比べ遥かに薄くすることが出来る。この変形例40’の膜材42’は、それよりも厚さの厚い第5の実施の形態の膜材42に比べ、例えば人間型ロボットの体表面のような支持表面に対しより緊密に正確に従い取り付けることが可能である。
【0097】
図6の(C)の変形例40’の弾性表面波素子アレイは、上述した略半球形状の基材16’及び厚さの薄い膜材42’以外は、図6の(A)及び(B)を参照したこの発明の第5の実施の形態に従った弾性表面波素子アレイ40と比べ、構造に差異がない。従って、図6の(C)の変形例40’の弾性表面波素子アレイは、図6の(A)及び(B)を参照したこの発明の第5の実施の形態に従った弾性表面波素子アレイ40と同じ効果を得ることが出来る。
【0098】
[第6の実施の形態]
次にこの発明の第6の実施の形態に従った弾性表面波素子アレイ50について図7を参照しながら詳細に説明する。図7は、この発明の第6の実施の形態に従った弾性表面波素子アレイ50の構成を概略的に示す平面図である。
【0099】
なおこの実施の形態の弾性表面波素子アレイ50の構成部材において図1及び図2を参照しながら前述した第1及び第2の実施の形態に従った弾性表面波素子アレイ10及び30と同じ構成部材には第1及び第2の実施の形態に従った弾性表面波素子アレイ10及び30の同じ構成部材を指摘していた参照符号と同じ参照符号を付し、その構成部材についての詳細な説明は省略する。
【0100】
この実施の形態が図1及び図2を参照しながら前述した第1及び第2の実施の形態と異なっているのは、複数の弾性表面波素子12a,12b,そして12cの夫々が複数の弾性表面波励起変換手段18a及び18’a,18b及び18’b,そして18c及び18’cを備えていることである。複数の弾性表面波素子12a,12b,そして12cの夫々における複数の弾性表面波励起変換手段18a及び18’a,18b及び18’b,そして18c及び18’cの中の1つは図1を参照しながら前述した第1の実施の形態において使用されていた弾性表面波励起変換手段18a,18b,そして18cであり、残りの数は任意であるが、この実施の形態を示す図7では図面の簡略化の為に上記残りの数は1つとして示されている。
【0101】
さらにこの実施の形態では、複数の弾性表面波素子12a,12b,そして12cの夫々の複数の弾性表面波励起変換手段18a及び18’a,18b及び18’b,又は18c及び18’cの夫々が対応する伝搬面14又は14’に励起し伝搬させる弾性表面波(複数の弾性表面波素子12a,12b,そして12cの夫々の1つの弾性表面波励起変換手段18a,18b,そして18cが対応する伝搬面14に励起し伝搬させる弾性表面波のみが図1においてx,y,又はzで示されている)を対応する複数の弾性表面波励起変換手段18a及び18’a,18b及び18’b,又は18c及び18’cの夫々に向い反射する反射体H及びH’が対応する伝搬面14又は14’に設けられている。
【0102】
複数の弾性表面波励起変換手段18a及び18’a,18b及び18’b,又は18c及び18’cと対応する反射体H及びH’とは、対応する伝搬面14又は14’において弾性表面波が伝搬する方向に相互に離間している。
【0103】
複数の弾性表面波励起変換手段18a及び18’a,18b及び18’b,又は18c及び18’cと対応する反射体H及びH’とは、これらの間で伝搬する弾性表面波の周波数に対応した配列周期の複数の端子を有したすだれ状電極の両極を結合したはしご型のパターンで形成することが出来るが、この詳しい構造は公知なのでここではこれ以上説明しない。なお、反射体H及びH’は、基材16の伝搬面14及び14’に例えばフォトリソグラフィーを用いてエッチングにより形成した溝であることも出来る。
【0104】
なお、複数の弾性表面波励起変換手段18a及び18’a,18b及び18’b,又は18c及び18’cの夫々と対応する反射体H又はH’は、はしご型の導電パターンを形成することでも実現することが出来ることは弾性学上公知であり、これに限られるものでもない。要は、弾性学上の反射体H又はH’として機能するような構成であれば良い。
【0105】
この実施の形態ではさらに、複数の弾性表面波素子12a,12b,そして12cの夫々の複数の弾性表面波励起変換手段18a及び18’a,18b及び18’b,又は18c及び18’cの夫々が共通の入力手段26に接続されているとともに、共通の受信手段28を介して周波数分析手段22及び弾性表面波伝搬状態解析手段24にも接続されている。
【0106】
共通の入力手段26は、複数の弾性表面波素子12a,12b,そして12cの夫々の複数の弾性表面波励起変換手段18a及び18’a,18b及び18’b,又は18c及び18’cの夫々に対し、夫々が対応する伝搬面14及び14’に対し対応する周波数成分の弾性表面波を励起し伝播させる為に必要な複数の周波数成分を全て含む電気信号を同時に入力させる。
【0107】
反射体H及びH’は、複数の弾性表面波素子12a,12b,そして12cの夫々の複数の弾性表面波励起変換手段18a及び18’a,18b及び18’b,又は18c及び18’cの夫々が対応する伝搬面14及び14’に対し励起させ対応する反射体H及びH’に向い伝搬されてきた弾性表面波を、対応する伝搬面14及び14’を介して対応する弾性表面波励起変換手段18a及び18’a,18b及び18’b,又は18c及び18’cに向い反射する。
【0108】
共通の受信手段28は、複数の弾性表面波素子12a,12b,そして12cの夫々の複数の弾性表面波励起変換手段18a及び18’a,18b及び18’b,又は18c及び18’cの夫々が対応する反射体H及びH’から反射されて来て受信した対応する複数の周波数成分を全て含む電気信号を、共通の周波数分析手段22及び共通の弾性表面波伝搬状態解析手段24に送る。
【0109】
共通に受信した複数の電気信号を周波数分析手段22により複数の弾性表面波素子12a,12b,そして12cの複数の弾性表面波励起変換手段18a及び18’a,18b及び18’b,又は18c及び18’cの夫々に特有の周波数成分の電気信号に分析し、さらにこれら特有の周波数成分の電気信号を弾性表面波伝搬状態解析手段24により複数の弾性表面波素子12a,12b,そして12cの夫々の基材16の伝搬表面14又は14’における弾性表面波の伝搬状態を解析することが出来る。これら伝搬状態からは、複数の弾性表面波素子12a,12b,そして12cの夫々の基材16の接触部位Tに接触した物体が負荷する圧力の大きさをを含む外部環境の変化を検出することが出来る。
【0110】
即ち、この実施の形態の弾性表面波素子アレイ50の複数の弾性表面波素子12a,12b,そして12cの夫々も圧力センサとして使用することができる。
【0111】
この実施の形態ではさらに、図1及び図2中に示されていた第1及び第2の実施の形態の複数の弾性表面波素子12a,12b,そして12cの基材16は支持柱20を介して例えば人間型ロボットの体表面のような支持表面上に直接又は図示しない柔軟な膜材を介して取り付けられていたが、図6の(A)及び(B)を参照しながら前述した第5の実施の形態の場合と同様に複数の弾性表面波素子12a,12b,そして12cの基材16が夫々の外表面において接触部位Tとは反対側の部位Bが例えば人間型ロボットの体表面のような支持表面上に取り付けられる柔軟な膜材42(図6の(B)参照)中に埋設されて支持されている。
【0112】
支持柱20を使用しない図6の(A)及び(B)中に示されている第5の実施の形態の弾性表面波素子アレイ40と同様に、支持柱20を使用しない図7中に示されている第6の実施の形態の弾性表面波素子アレイ50もまた、図1及び図2中に示されていた第1及び第2の実施の形態の弾性表面波素子アレイ10及び30に比べ、構成がより簡素になり製造も容易となる。しかも、複数の弾性表面波励起変換手段18a及び18a’,18b及び18’b,又は18c及び18’cの夫々の送信部S及びS’が、すだれ状電極により構成され、対応する伝搬面14及び14’上をすだれ状電極から両方向に弾性表面波x,y,及びzが励起され伝搬される場合には、膜材42に向い伝搬された弾性表面波x,y,及びzは膜材42により吸収され、対応する反射体H及びH’に到達することが無い。
【0113】
さらにまたこの実施の形態では、複数の弾性表面波素子12a,12b,そして12cの夫々の複数の弾性表面波励起変換手段18a及び18’a,18b及び18’b,又は18c及び18’cと対応する反射体H及びH’が対応する基材16の表面において膜材42(図6の(B)参照)から露出されていて接触部位Tから離れた位置に配置されている。従って、複数の弾性表面波素子12a,12b,そして12cの夫々の複数の弾性表面波励起変換手段18a及び18’a,18b及び18’b,又は18c及び18’cと対応する反射体H及びH’との間における弾性表面波の伝搬に膜材42(図6の(B)参照)が影響を及ぼすことがない。また、接触部位Tから複数の弾性表面波励起変換手段18a及び18’a,18b及び18’b,又は18c及び18’cと対応する反射体H及びH’が離れていることにより、接触部位Tに外部から負荷される外力により複数の弾性表面波励起変換手段18a及び18’a,18b及び18’b,又は18c及び18’cと対応する反射体H及びH’が損傷を受けることがない。
【0114】
このよう構成されている第6の実施の形態に従った弾性表面波素子アレイ50は、図1及び図2を参照しながら前述した第1及び第2の実施の形態に従った弾性表面波素子アレイ10及び30と同様の効果を得ることが当然出来る。そしてこれに加えて、図2を参照しながら前述した第2の実施の形態に従った弾性表面波素子アレイ30や図6の(A)及び(B)を参照しながら前述した第5の実施の形態に従った弾性表面波素子アレイ40よりも構成を簡素にすることが出来る。
【0115】
このよう構成されている第6の実施の形態に従った弾性表面波素子アレイ50はさらに、図6の(C)を参照しながら前述した第5の実施の形態の変形例に従った弾性表面波素子アレイ40’と同様に、複数の弾性表面波素子12a,12b,そして12cの夫々の基材16において膜材42(図6の(B)参照)に埋設されていた部位B(図6の(B)参照)を削除して略半球形状の基材16’にし、上記部位B(図6の(B)参照)が削除された後に残った平坦面を柔軟な膜材42’(図6の(C)参照)の表面に例えば接着剤等の公知の固定手段により固定することもできる。
【0116】
このように変形させても図7を参照しながら前述した第6の実施の形態に従った弾性表面波素子アレイ50と同じ作用効果を得ることができるし、さらには図6の(C)を参照しながら前述した第5の実施の形態の変形例に従った弾性表面波素子アレイ40’に特有の下記の効果も得ることが出来る。
【0117】
即ち、膜材42’(図6の(C)参照)には弾性表面波素子アレイ50の複数の弾性表面波素子12a,12b,そして12cの夫々の基材16の表面の上記部位B(図6の(B)参照)が埋設されることがないので、図7を参照しながら前述した第6の実施の形態のこような変形例の膜材42’(図6の(C)参照)の厚さは図7を参照して前述された第6の実施の形態に従った弾性表面波素子アレイ50の膜材42(図6の(B)参照)の厚さに比べ遥かに薄くすることが出来る。この変形例の膜材42’(図6の(C)参照)は、それよりも厚さの厚い第6の実施の形態の膜材42(図6の(B)参照)に比べ、例えば人間型ロボットの体表面のような支持表面に対しより緊密に正確に従い取り付けることが可能である。
【0118】
[第7の実施の形態]
次にこの発明の第7の実施の形態に従った弾性表面波素子アレイ60について図8の(A)を参照しながら詳細に説明する。図8の(A)は、この発明の第7の実施の形態に従った弾性表面波素子アレイ60の構成を概略的に示す側面図である。
【0119】
この弾性表面波素子アレイ60は、図8の(A)中に示されている如く、複数の弾性表面波素子62a,62b,62c,62d,62e,そして62fを備えている。これら複数の弾性表面波素子62a,62b,62c,62d,62e,そして62fは、それらの基材の伝搬面に励起され伝搬される弾性表面波の伝搬時間が互いに異なる少なくとも2つの群に分類されている。上記伝搬時間の異なりは、例えば、夫々の伝搬面に励起され伝搬される弾性表面波の周波数成分の差異や夫々の伝搬面の構造の差異や夫々の伝搬面における弾性表面波の伝搬経路の長さの差異によって生じさせることが出来る。
【0120】
この実施の形態では、複数の弾性表面波素子62a,62b,62c,62d,62e,そして62fは、夫々の伝搬面に励起され伝搬される弾性表面波の周波数成分の差異と夫々の伝搬面における弾性表面波の伝搬経路の長さの差異によって6つの群に分類されている。
【0121】
詳細には、3つの弾性表面波素子62a,62b,そして62cは、相互に同じ弾性表面波αが伝搬する相互に同じ構造の伝搬面64を備えていて相互に同じ構造をしているが相互の直径が異なる基材66a,66b,そして66cを有している。即ち、3つの弾性表面波素子62a,62b,そして62cにおいては、相互に同じ弾性表面波αが伝搬する相互に同じ構造の構造の伝搬面64を備えていて相互に同じ構造をしているが相互の直径が異なる基材66a,66b,そして66cにおいて弾性表面波αが伝搬する伝搬経路の長さが相互に異なっている。
【0122】
3つの弾性表面波素子62a,62b,そして62cの基材66a,66b,そして66cの伝搬面64には、相互に同じ弾性表面波αを伝搬面64に励起し伝搬させるとともに伝搬した弾性表面波αを受信して対応する電気信号に変換する弾性表面波励起変換手段68a,68b,そして68cが設けられている。
【0123】
また、残り3つの弾性表面波素子62d,62e,そして62fは、相互に同じ弾性表面波βが伝搬する相互に同じ構造の伝搬面64’を備えていて相互に同じ構造をしているが相互の直径が異なる基材66d,66e,そして66fを有している。即ち、残り3つの弾性表面波素子62d,62e,そして62fにおいては、相互に同じ弾性表面波βが伝搬する相互に同じ構造の構造の伝搬面64’を備えていて相互に同じ構造をしているが相互の直径が異なる基材66d,66e,そして66fにおいて弾性表面波βが伝搬する伝搬経路の長さが相互に異なっている。
【0124】
残り3つの弾性表面波素子62d,62e,そして62fの基材66d,66e,そして66fの伝搬面64’には、相互に同じ弾性表面波βを伝搬面64’に励起し伝搬させるとともに伝搬した弾性表面波βを受信して対応する電気信号に変換する弾性表面波励起変換手段68d,68e,そして68fが設けられている。
【0125】
基材66a,66b,66c,66d,66e,そして66fの夫々は、弾性表面波α又はβを励起させ伝搬させることが可能になるように表面に沿い圧電性を有する少なくとも一部分を有しているだけで良いが、具体的には、圧電材料により全体が形成されているか、又は非圧電材料の基体とこの基体の表面を覆う圧電材料膜との組み合わせにより構成することが出来る。そして後者の組み合わせの場合、圧電材料膜は非圧電材料の基体の表面の全てを覆っている必要はなく、少なくとも、基材66a,66b,66c,66d,66e,そして66fの夫々の基体の表面において弾性表面波励起変換手段68a,68b,68c,68d,68e,そして68fに対応した場所のみを覆っていれば良い。
【0126】
ここで使用する用語「伝搬面」64とは、複数の弾性表面波素子62a,62b,62c,66d,66e,そして66fの基材66a,66b,66c,66d,66e,そして66fの夫々の外表面において弾性表面波励起変換手段68a,68b,68c,68d,68e,又は68fにより弾性表面波α又はβが励起され伝搬される部位のみを意味している。即ち、複数の弾性表面波素子62a,62b,62c,62d,62e,そして62fの基材66a,66b,66c,66d,66e,そして66fの夫々の外表面において弾性表面波励起変換手段68a,68b,68c,68d,68e,又は68fにより弾性表面波α又はβが励起されず伝搬されない部位、又は、弾性表面波α又はβが励起され伝搬されたとしても伝搬された弾性表面波α又はβから弾性表面波励起変換手段68a,68b,68c,68d,68e,又は68fが電気信号を出力することが出来ない部位は、ここでは「伝搬面」64とはいわない。
【0127】
複数の弾性表面波素子62a,62b,62c,62d,62e,そして62fの基材66a,66b,66c,66d,66e,そして66fは、伝搬面64又は64’が少なくとも円環状の曲面の一部を含んでいる。この実施の形態ではさらに、基材66a,66b,66c,66d,66e,そして66fの伝搬面64又は64’は少なくとも連続した円環状の曲面であって、この伝搬面64又は64’を伝搬する弾性表面波α又はβが基材66a,66b,66c,66d,66e,そして66fの夫々の外表面に沿い周回する。
【0128】
なお図8の(A)では、伝搬面64又は64’は基材66a,66b,66c,66d,66e,そして66fの夫々の外表面において所定の幅を有し基材66a,66b,66c,66d,66e,そして66fの夫々の外表面の所定方向に円環状に延出している帯状の部分として描かれているが、これは説明を容易にする為にそのように描かれているだけである。実際の伝搬面64又は64’は、基材66a,66b,66c,66d,66e,そして66fの夫々の外表面においてそこに励起され伝搬する弾性表面波α又はβが基材66a,66b,66c,66d,66e,そして66fの夫々の外表面の所定方向に伝搬して行く間に基材66a,66b,66c,66d,66e,そして66fの夫々の外表面に沿いその伝搬方向に対し交差する方向に拡散したり収縮したりすることが多いことを考慮すべきである。
【0129】
この実施の形態では、基材66a,66b,66c,66d,66e,そして66fの夫々の伝搬面64又は64’は少なくとも球面の一部により構成されているが、基材66a,66b,66c,66d,66e,そして66fの夫々の外表面において伝搬面64又は64’以外の部分は弾性表面波α又はβの励起及び伝搬に無関係なので、いかなる形状であっても良い。この実施の形態の複数の弾性表面波素子62a,62b,62c,62d,62e,そして62fの基材66a,66b,66c,66d,66e,そして66fの夫々は、伝搬面64又は64’以外の部分が支持柱70により相互間で折り曲げ自在に連結されていて、支持柱70は複数の弾性表面波素子62a,62b,62c,62d,62e,そして62fの基材66a,66b,66c,66d,66e,そして66fの夫々の伝搬面64又は64’が目的とする対象物以外に接触することを防止し、例えば人間型ロボットの体表面のような支持表面上に直接又は図示しない柔軟な膜材を介して取り付けられる。
【0130】
この実施の形態の複数の弾性表面波素子62a,62b,そして62cの基材66a,66b,そして66cはさらに、伝搬面64における弾性表面波αの伝搬経路の長さの差異を少なくとも2つの群に分類する為に、少なくとも球面の一部により構成されている伝搬面64の外径が相互に異なっているとともに、残りの複数の弾性表面波素子62d,62e,そして62fの基材66d,66e,そして66fもさらに、伝搬面64’における弾性表面波βの伝搬経路の長さの差異を少なくとも2つの群に分類する為に、少なくとも球面の一部により構成されている伝搬面64’の外径が相互に異なっている。なお、図8の(A)では、複数の弾性表面波素子62a,62b,そして62cの基材66a,66b,そして66cにおいて伝搬面64における弾性表面波αの伝搬経路の長さの差異を明瞭に示すために伝搬面64の外径の差異を誇張して描いているが、伝搬面64の外径の差異は実際には一見して殆ど見分けが付かない程度である。同じことは、残りの複数の弾性表面波素子62d,62e,そして62fの基材66d,66e,そして66fの伝搬面64’の外径の差異についても同じことが言える。
【0131】
この実施の形態ではさらに、複数の弾性表面波励起変換手段68a,68b,68c,68d,68e,そして68fが複数の弾性表面波素子62a,62b,62c,62d,62e,そして62fの夫々の伝搬面64又は64’に励起し伝搬させる弾性表面波α及びβの周波数は互いに異なる少なくとも2つの群に分類される。
【0132】
この弾性表面波素子アレイ60は、複数の弾性表面波素子62a,62b,62c,62d,62e,そして62fの複数の弾性表面波励起変換手段68a,68b,68c,68d,68e,そして68fにより変換された前記電気信号を伝搬時間の差異(即ち、到達時間の差異)に基づき分割する時間波形分割手段72と、時間波形分割手段72により分割された電気信号を複数の周波数成分に分析する周波数分析手段74と、を備えているとともに、さらにこれら複数の周波数成分の夫々の時間成分の変化から上記伝搬時間の変化(即ち、到達時間の差異)を分析し上記少なくとも2つの群の夫々の弾性表面波素子62a,62b,62c,62d,62e,そして62fの伝搬面64又は64’における弾性表面波α又はβの伝搬状態を解析する弾性表面波伝搬状態解析手段76も備えている。
【0133】
なお、時間波形分割手段72としてはゲート回路を使用することが出来るし、例えばデジタルオシロスコープ等を使用して前記電気信号を数値に置き換えた後に、さらにこの数値をソフトウエアにより分割するような構成を使用することも出来る。
【0134】
複数の弾性表面波素子62a,62b,62c,62d,62e,そして62fの複数の弾性表面波励起変換手段68a,68b,68c,68d,68e,そして68fは、これらの弾性表面波励起変換手段68a,68b,68c,68d,68e,そして68fに弾性表面波α又はβを励起させる為の相互に異なった周波数成分を含む電気信号を同時に入力する共通の入力手段78に接続されている。複数の弾性表面波素子62a,62b,62c,62d,62e,そして62fの複数の弾性表面波励起変換手段68a,68b,68c,68d,68e,そして68fはさらに、これらの弾性表面波励起変換手段68a,68b,68c,68d,68e,そして68fにおいて受信した弾性表面波α又はβから変換された電気信号を受信する共通の受信手段79にも接続されていて、共通の受信手段79を介して時間波形分割手段72に接続されている。
【0135】
なおこの実施の形態では、弾性表面波励起変換手段68a,68b,68c,68d,68e,そして68fからの電気信号は、最初に時間波形分割手段72に入力され、次に周波数分析手段74に入力されるが、これとは逆に最初に周波数分析手段74に入力され、次に時間波形分割手段72に入力されるようにしても、同じ結果が得られることは信号処理学上明らかであり、本発明はこのようにすることを除外しない。
【0136】
この実施の形態ではさらに、共通の受信手段79が共通の入力手段78を複数の弾性表面波素子62a,62b,62c,62d,62e,そして62の複数の弾性表面波励起変換手段68a,68b,68c,68d,68e,そして68fに接続する為にも使用されている。このような受信手段79は例えば1本の導線により構成することが出来る。
【0137】
共通の入力手段79は、図8の(B)中に示されている如く、前記少なくとも2つの群の夫々の弾性表面波α及びβの伝搬時間の差異Dよりも短い包絡線における時間要素tの半値幅HW1及びHW2を有するパルス又はバースト状の電気信号ESを同時に発生し、この実施の形態では共通の入力手段78はパルス発生器により構成されている。
【0138】
前述したように、図8の(A)中の全ての弾性表面波励起変換手段(すだれ状電極)68a,68b,68c,68d,68e,そして68fに弾性表面波励起用の電気信号を供給する配線が組まれていれば、本発明の趣旨を逸脱しない限りその他のアース線の取り方や弾性表面波励起変換手段(すだれ状電極)68a,68b,68c,68d,68e,そして68fとの結線や弾性表面波励起変換手段(すだれ状電極)68a,68b,68c,68d,68e,そして68fとの信号伝達手段についていかなる除外や制約も受けない。
【0139】
この実施の形態において複数の弾性表面波素子62a,62b,62c,62d,62e,そして62fの複数の弾性表面波励起変換手段68a,68b,68c,68d,68e,そして68fは、基材66a,66b,66c,66d,66e,そして66fの表面に沿った圧電性を有した少なくとも一部分、具体的には基材66a,66b,66c,66d,66e,そして66fを構成している圧電材料の表面又は非圧電材料の基体の表面を覆う圧電材料膜に接して形成されているか、または所定の隙間を介在させて対面するよう形成されているすだれ状電極を含んでいる。複数の弾性表面波素子62a,62b,そして62cの複数の弾性表面波励起変換手段68a,68b,そして68cに含まれているすだれ状電極の夫々の複数の端子の配列周期K1と、残りの複数の弾性表面波素子62d,62e,そして62fの複数の弾性表面波励起変換手段68d,68e,そして68fに含まれているすだれ状電極の夫々の複数の端子の配列周期K2とは、少なくとも2つの群に分類される互いに異なる複数の周波数の弾性表面波α及びβを発生させる為に互いに異なっている。
【0140】
上述した如く、複数の弾性表面波励起変換手段68a,68b,68c,68d,68e,そして68fがすだれ状電極を含む場合、各すだれ状電極により励起され伝搬表面64又は64’を伝搬される弾性表面波α又はβの伝搬方向において各すだれ状電極の複数の端子が相互に重複する長さC1又はC2が対応する伝搬面64又は64’の曲率半径以下であることが好ましく、さらに各すだれ状電極により対応する伝搬面64又は64’に励起される弾性表面波α又はβの波長(各すだれ状電極の複数の端子の配列周期K1又はK2に相当)は上記曲率半径の1/5以下であることが好ましいことが分かっている。
【0141】
各すだれ状電極の寸法がこのように規定されていなければ、特に圧電結晶を基材66a,66b,66c,66d,66e,そして66fに使用する場合、各すだれ状電極は対応する伝搬表面64又は64’上に常に確実に所望の弾性表面波α又はβを励起し伝搬させ受信した弾性表面波α又はβから電気信号を出力させることが困難になり、結晶の異方性に合わせた複雑な形状のすだれ状電極を設計しなくてはならなくなる。
【0142】
このよう構成されている第7の実施の形態に従った弾性表面波素子アレイ60は、複数の弾性表面波素子62a,62b,62c,62d,62e,そして62fの夫々の伝搬面64又は64’に接している外部環境が変化した場合、外部環境が変化する以前とは伝搬面64又は64’における弾性表面波α又はβの伝搬速度や伝搬減衰量等を含む伝搬状況が変化する。この伝搬状況の変化から、上記外部環境の変化を知ることが出来る。しかも、弾性表面波素子アレイ60の複数の弾性表面波素子62a,62b,62c,62d,62e,そして62fの夫々について相互に独立して上記外部環境の変化を知ることが出来る。
【0143】
即ち、弾性表面波素子アレイ60の複数の弾性表面波素子62a,62b,62c,62d,62e,そして62fの配列分布に対応して複数の弾性表面波素子62a,62b,62c,62d,62e,そして62fの伝搬面64又は64’に接している外部環境の変化の配列分布を知ることが出来る。
【0144】
この実施の形態では、前述したように複数の弾性表面波素子62a,62b,そして62cの基材66a,66b,そして66cの伝搬面64の直径が相互に異なっているとともに、残りの複数の弾性表面波素子62d,62e,そして62fの基材66d,66e,そして66fの伝搬面64’の直径も相互に異なっていて、伝搬面64及び64’の夫々における弾性表面波α及びβの伝搬経路の長さが相互に異なっているが、例えば、上記直径が5%増加すると複数の弾性表面波励起変換手段68a,68b,そして68cにより、及び残りの複数の弾性表面波励起変換手段68d,68e,そして68fにより、伝搬面64及び64’に弾性表面波α及びβを励起させ伝搬させる為の電気信号が入力されてから複数の弾性表面波励起変換手段68a,68b,そして68c、及び複数の弾性表面波励起変換手段68d,68e,そして68fが対応する伝搬面64及び64’から上記伝搬された弾性表面波α及びβを受け取るまでに要する経過時間も略5%増加する。
【0145】
従って、複数の弾性表面波素子62a,62b,そして62cの複数の弾性表面波励起変換手段68a,68b,そして68cに対しこれらに共通の周波数成分を含む電気信号を共通の入力手段78により同時に入力しても、共通の受信手段79は複数の弾性表面波素子62a,62b,そして62cの複数の弾性表面波励起変換手段68a,68b,そして68cから、複数の弾性表面波励起変換手段68a,68b,そして68cが対応する伝搬面64から受信した上記伝搬された弾性表面波αから変換した電気信号を受信するまでに要する時間(即ち、伝搬時間)が異なっているので、複数の弾性表面波励起変換手段68a,68b,そして68cが受信した共通の周波数成分を含む複数の電気信号を時間波形分割手段72により相互に明確に3つに分割することが可能になっている。
【0146】
同じことは、残りの複数の弾性表面波素子62d,62e,そして62fについてもいえ、残りの複数の弾性表面波励起変換手段68d,68e,そして68fが受信した弾性表面波βから変換した共通の周波数成分を含む複数の電気信号を時間波形分割手段72により相互に明確に3つに分割することが可能になっている。
【0147】
弾性表面波素子アレイ60を例えば人間型ロボットの表面における上記表面に負荷された圧力の大きさの分布を検出する為の圧力分布センサ(即ち、触覚センサ)として使用する場合には、複数の弾性表面波素子62a,62b,62c,62d,62e,そして62fの夫々の支持柱70を人間型ロボットの体表面上に直接又は図示しない柔軟な膜材を介して取り付ける。そして、人間型ロボットの体表面とは反対側に位置しているとともに弾性表面波励起変換手段68a,68b,68c,68d,68e,そして68fから離れている複数の弾性表面波素子62a,62b,62c,62d,62e,そして62fの基材66a,66b,66c,66d,66e,そして66fの伝搬表面64又は64’を含む部位を図示しない物体が接触する接触部位Tとして使用する。そして、弾性表面波伝搬状態解析手段76を、複数の弾性表面波素子62a,62b,62c,62d,62e,そして62fの基材66a,66b,66c,66d,66e,そして66fの夫々の接触部位Tに図示しない物体が接触して圧力が負荷されることにより複数の弾性表面波素子62a,62b,62c,62d,62e,そして62fの基材66a,66b,66c,66d,66e,そして66fの伝搬表面64又は64’を伝搬する弾性表面波α又はβの例えば減衰率を含む種々の状態が変化し、ひいては弾性表面波励起変換手段68a,68b,68c,68d,68e,そして68fが受信した弾性表面波α又はβから変換した電気信号の変化から前記圧力の大きさを検出する圧力検出手段として使用することが出来る。
【0148】
即ち、弾性表面波素子アレイ60の複数の弾性表面波素子62a,62b,62c,62d,62e,そして62fの夫々を圧力センサとして使用することが出来る。
【0149】
さらに、弾性表面波素子アレイ60において複数の弾性表面波素子62a,62b,62c,62d,62e,そして62fの夫々が検出した前記圧力の大きさの分布から、例えば人間型ロボットの表面における上記表面に負荷された圧力の大きさの分布を検出することが出来る。
【0150】
さらにこの実施の形態においては、弾性表面波素子アレイ60の複数の弾性表面波素子62a,62b,62c,62d,62e,そして62fの複数の基材66a,66b,66c,66d,66e,そして66fの接触部位Tを図示しない共通の覆いにより覆うことが出来る。この場合、上記図示しない共通の覆いを介して外部の物体が複数の基材66a,66b,66c,66d,66e,そして66fのいずれかの接触部位Tに接触した時、複数の基材66a,66b,66c,66d,66e,そして66fの上記いずれかの伝搬表面64又は64’における弾性表面波α又はβの伝搬が低下され、上記低下の程度で上記いずれかの接触部位Tに対し上記図示しない共通の覆いを介し上記外部の物体が負荷する圧力を定量的に判断することが出来る。
【0151】
なおこの実施の形態においては、弾性表面波素子アレイ60が2種類の弾性表面波α及びβを励起し伝搬させる為の2種類の弾性表面波励起変換手段68a,68b,そして68c、及び68d,68e,そして68fを備えた2種類の弾性表面波素子62a,62b,そして62c、及び62d,62e,そして62fを備えているが、1種類の弾性表面波α又はβを励起し伝搬させる為の1種類の弾性表面波励起変換手段68a,68b,そして68c、又は68d,68e,そして68fを備えた1種類の弾性表面波素子62a,62b,そして62c、又は62d,62e,そして62fのみを使用した場合には、1種類の弾性表面波素子62a,62b,そして62c、又は62d,62e,そして62fにおける基材66a,66b,そして66c、又は66d,66e,そして66fの伝搬面64又は64’の直径の差異(即ち、伝搬面64又は64’における弾性表面波α又はβの伝搬距離の差異)により生ずる、伝搬面64又は64’における弾性表面波α又はβが1周回に要する伝搬時間の差異(即ち、1周回に要する到達時間の差異)のみにより、1種類の弾性表面波素子62a,62b,そして62c、又は62d,62e,そして62fの1種類の弾性表面波励起変換手段68a,68b,そして68c、又は68d,68e,そして68fが受信した伝搬された弾性表面波α又はβから変換した3つの相互に同じ周波数成分を有している電気信号を時間波形分割手段72のみで周波数分析手段74を使用することなく容易に区分可能である。
【0152】
[第8の実施の形態]
次にこの発明の第8の実施の形態に従った弾性表面波素子アレイ80について図9を参照しながら詳細に説明する。図9は、この発明の第8の実施の形態に従った弾性表面波素子アレイ80の構成を概略的に示す平面図である。
【0153】
なおこの実施の形態の弾性表面波素子アレイ80の構成部材において図8の(A)を参照しながら前述した第7の実施の形態に従った弾性表面波素子アレイ60と同じ構成部材には第7の実施の形態に従った弾性表面波素子アレイ60の同じ構成部材を指摘していた参照符号と同じ参照符号を付し、その構成部材についての詳細な説明は省略する。
【0154】
この実施の形態が図8の(A)を参照しながら前述した第7の実施の形態と異なっているのは、複数の弾性表面波素子62a,62b,そして62cの夫々が複数の弾性表面波励起変換手段68a及び68d,68b及び68e,そして68c及び68fを備えていることである。複数の弾性表面波素子62a,62b,そして62cの夫々における複数の弾性表面波励起変換手段68a及び68d,68b及び68e,又は68c及び68fの組み合わせの中の1つは図8の(A)を参照しながら前述した第7の実施の形態において使用されていた弾性表面波励起変換手段68a,68b,又は68cであり、残りの数は任意であるが、この実施の形態を示す図9では図面の簡略化の為に上記残りの数は1つとして示されている。この実施の形態における上記残りの1つは、図8の(A)を参照しながら前述した第7の実施の形態において使用されていた弾性表面波励起変換手段68d,68e,又は68fである。
【0155】
弾性表面波素子62aにおける複数の弾性表面波励起変換手段68a及び68dが励起する弾性表面波α及びβは周波数特性が相互に異なっており、別の弾性表面波素子62bにおける複数の弾性表面波励起変換手段68b及び68eが励起する弾性表面波α及びβも周波数特性が相互に異なっており、さらに別の弾性表面波素子62cにおける複数の弾性表面波励起変換手段68c及び68fが励起する弾性表面波α及びβも周波数特性が相互に異なっている。
【0156】
このように周波数特性を相互に異ならせる為に、この実施の形態では、複数の弾性表面波素子62a,62b,そして62cの夫々における1つの弾性表面波励起変換手段68a,68b,又は68cは、図8の(A)中に示されているように相互に同じ配列周期K1の複数の端子を有するすだれ状電極により構成することが出来、また、複数の弾性表面波素子62a,62b,そして62cの夫々におけるもう1つの弾性表面波励起変換手段68d,68e,又は68fは、図8の(A)中に示されているように上記配列周期K1とは異なる相互に同じ配列周期K2の複数の端子を有するすだれ状電極により構成することが出来る。
【0157】
或いは、複数の弾性表面波素子62a,62b,そして62cの基材66a,66b,そして66cの夫々の外表面に設置される弾性表面波励起変換手段68a及び68d,68b及び68e,又は68c及び68fの夫々の構成や寸法を同じにしても、上記外表面において弾性表面波励起変換手段68a及び68d,68b及び68e,又は68c及び68fの夫々が設置される2つの部分の硬さを相互に異ならせることによっても、上述したように周波数特性を相互に異ならせることが出来る。
【0158】
複数の弾性表面波素子62a,62b,そして62cの複数の弾性表面波励起変換手段68a及び68d,68b及び68e,そして68c及び68fは、共通の入力手段78に共通の受信手段79を介して接続されているとともに、共通の受信手段79を介して時間波形分割手段72にも接続されている。
【0159】
共通の入力手段78は、複数の弾性表面波素子62a,62b,そして62cの複数の弾性表面波励起変換手段68a及び68d,68b及び68e,そして68c及び68fに対し夫々に所定の複数の周波数成分の弾性表面波α又はβを励起させる為の所定の複数の周波数成分を含む電気信号を同時に入力する。この実施の形態では共通の入力手段78はパルス発生器により構成されている。
【0160】
複数の弾性表面波素子62a,62b,そして62cの複数の弾性表面波励起変換手段68a及び68d,68b及び68e,そして68c及び68fは、これらが対応する複数の弾性表面波素子62a,62b,そして62cの基材66a,66b,そして66cの夫々の接触部位Tから外れているが、複数の弾性表面波励起変換手段68a及び68d,68b及び68e,そして68c及び68fが対応する伝搬面64及び64’の夫々の一部は、これらが対応する複数の弾性表面波素子62a,62b,そして62cの基材66a,66b,そして66cの夫々の接触部位Tに含まれている。
【0161】
接触部位Tから複数の弾性表面波励起変換手段68a及び68d,68b及び68e,そして68c及び68fが離れていることは、接触部位Tに負荷される外力により複数の弾性表面波励起変換手段68a及び68d,68b及び68e,そして68c及び68fが破損する可能性が無くなるので好ましい。
【0162】
この実施の形態においても、図8を参照して前述した第7の実施の形態の場合と同様に、複数の弾性表面波素子62a,62b,そして62cの夫々の1つの弾性表面波励起変換手段68a,68b,又は68cを構成しているすだれ状電極の複数の端子が相互に重複する長さC1(図8の(A)参照)及びもう1つの弾性表面波励起変換手段68d,68e,又は68fを構成しているすだれ状電極の複数の端子が相互に重複する長さC2(図8の(A)参照)は、上記夫々の基材66a,66b,又は66cにおいて弾性表面波励起変換手段68a及び68d,68b及び68e,又は68c及び68fが対応している伝搬面64又は64’の曲率半径以下であることが好ましく、さらに各すだれ状電極により対応する伝搬面64又は64’に励起される弾性表面波α又はβの波長(各すだれ状電極における配列周期K1又はK2に対応)も上記曲率半径の1/5以下であることが好ましい。
【0163】
各すだれ状電極の寸法がこのように規定されていないと、特に圧電結晶を基材66a,66b,そして66cに使用する場合、各すだれ状電極は対応する伝搬表面64又は64’上に常に確実に所望の弾性表面波を励起し伝搬させ伝搬された弾性表面波から電気信号を出力することが困難になり、結晶の異方性に合わせた複雑な形状のすだれ状電極を設計しなくてはならなくなる。
【0164】
このように構成されている第8の実施の形態に従った弾性表面波素子アレイ80は、図8の(A)を参照しながら前述した第7の実施の形態に従った弾性表面波素子アレイ60と同様に、全ての弾性表面波励起変換手段68a,68b,68c,68d,68e,そして68fから出力される電気信号を相互に独立して評価可能である。
【0165】
より詳細には、複数の弾性表面波素子62a,62b,そして62cの複数の弾性表面波励起変換手段68a,68b,そして68cから相互に同じ周波数成分を有する弾性表面波αから変換された相互に同じ周波数成分を有する複数の電気信号が基材66a,66b,そして66cにおける伝搬表面64の直径の差異に基づく時間差を伴ない出力され、また同じ複数の弾性表面波素子62a,62b,そして62cの別の複数の弾性表面波励起変換手段68d,68e,そして68fから弾性表面波αとは別の相互に同じ周波数成分を有する弾性表面波βから変換された相互に同じ周波数成分を有する複数の電気信号が基材66a,66b,そして66cにおける伝搬表面64の直径の差異に基づく時間差を伴ない出力されるので、弾性表面波αから変換された前者の複数の電気信号が時間波形分割手段72により相互に区分され、弾性表面波βから変換された後者の複数の電気信号も時間波形分割手段72により相互に区分される。
【0166】
さらには、このように時間差により相互に区分された弾性表面波αから変換された前者の複数の電気信号と弾性表面波βから変換された後者の複数の電気信号の夫々を、周波数分析手段74により相互に区分した後に、弾性表面波伝搬状態解析手段(圧力検出手段)76により、対応する弾性表面波素子62a,62b,又は62cの伝搬表面64又は64’を伝搬する弾性表面波α又はβの伝搬状態を解析し、応する弾性表面波素子62a,62b,又は62cの接触部位Tに外部から接触した図示しない物体から負荷された圧力を相互に独立して評価することが出来る。
【0167】
上述したことから明らかなように、この実施の形態の弾性表面波素子アレイ80の複数の弾性表面波素子62a,62b,そして62cの夫々も圧力センサとして使用することができる。
【0168】
しかも、この実施の形態のように、弾性表面波素子の基材の外表面上に複数の弾性表面波励起変換手段を設置した場合は、種々の利点を得ることが出来る。例えば、図3の(A)乃至(B)中に示されているように、複数の弾性表面波励起変換手段の夫々が励起し伝搬させる弾性表面波の伝搬経路の形状や寸法を相互に異ならせることにより、弾性表面波素子に幅広い圧力感度を持たせることが出来る。また、複数の弾性表面波励起変換手段の中の1つを外部環境の温度変化に伴なう例えば弾性表面波素子の基材の寸法の変化等の弾性表面波の伝搬に影響を及ぼす種々の要因の測定に使用し、この測定結果に基づき外部環境の温度変化に伴なう上記種々の要因の影響を考慮して残りの弾性表面波励起変換手段が測定する接触圧力の測定結果をより高精度にすることが出来る。
【0169】
[第9の実施の形態]
次にこの発明の第9の実施の形態に従った弾性表面波素子アレイ90について図10の(A)及び(B)を参照しながら詳細に説明する。図10の(A)は、この発明の第9の実施の形態に従った弾性表面波素子アレイ90の構成を概略的に示す平面図である。
【0170】
なおこの実施の形態の弾性表面波素子アレイ90の構成部材において図8の(A)及び図9を参照しながら前述した第7及び第8の実施の形態に従った弾性表面波素子アレイ60及び80と同じ構成部材には第7及び第8の実施の形態に従った弾性表面波素子アレイ60及び80の同じ構成部材を指摘していた参照符号と同じ参照符号を付し、その構成部材についての詳細な説明は省略する。
【0171】
この実施の形態が図8の(A)を参照しながら前述した第7の実施の形態と異なっているのは、複数の弾性表面波素子62a,62b,そして62cの夫々が複数の弾性表面波励起変換手段68a及び68d,68b及び68e,そして68c及び68fを備えていることである。複数の弾性表面波素子62a,62b,そして62cの夫々における複数の弾性表面波励起変換手段68a及び68d,68b及び68e,又は68c及び68dの組み合わせの中の1つは、図8の(A)を参照しながら前述した第7の実施の形態において使用されていた弾性表面波励起変換手段68a,68b,又は68cであり、残りの数は任意であるが、この実施の形態を示す図10の(A)では図面の簡略化の為に上記残りの数は1つとして示されている。この実施の形態における上記残りの1つは、図8の(A)を参照しながら前述した第7の実施の形態において使用されていた弾性表面波励起変換手段68d,68e,又は68fである。
【0172】
この実施の形態が図9を参照しながら前述した第8の実施の形態と異なっているのは、複数の弾性表面波素子62a,62b,そして62cの夫々の複数の弾性表面波励起変換手段68a及び68d,68b及び68e,又は68c及び68fの夫々が、対応する伝搬面64又は64’に弾性表面波α又はβを励起し伝搬させる送信部S,S’と、送信部S,S’により対応する伝搬面64又は64’を伝搬された弾性表面波α又はβを受信して電気信号に変換する受信部J,J’と、を含んでいることである。
【0173】
複数の弾性表面波励起変換手段68a及び68d,68b及び68e,又は68c及び68fの夫々の送信部S又はS’及び対応する受信部J又はJ’は、対応する伝搬面64又は64’において弾性表面波α又はβが伝搬する方向に相互に離間している。
【0174】
複数の弾性表面波励起変換手段68a及び68d,68b及び68e,又は68c及び68fの夫々の送信部S又はS’及び対応する受信部J又はJ’は、これらの間で伝搬する弾性表面波α又はβの周波数に対応した配列周期の複数の端子を有したすだれ状電極であることが出来る。
【0175】
複数の弾性表面波励起変換手段68a及び68d,68b及び68e,又は68c及び68fの夫々の組み合わせにおいて、送信部S及び対応した受信部Jの夫々の複数の端子の配列周期K1(図8の(A)参照)と、送信部S’及び対応した受信部J’の夫々の複数の端子の配列周期K2(図8の(A)参照)とは、図8の(A)及び図9を参照して前述した第7及び第8の実施の形態の複数の弾性表面波励起変換手段68a及び68d,68b及び68e,又は68c及び68fの夫々の組み合わせのすだれ状電極の場合と同様に、相互に異なっている。
【0176】
しかし、複数の弾性表面波励起変換手段68a及び68d,68b及び68e,又は68c及び68fの夫々の組み合わせにおいて、相互に対応する送信部S及び受信部Jの夫々のすだれ状電極の複数の端子の配列周期K1(図8の(A)参照)は相互に同じであり、相互に対応する送信部S及び受信部Jの夫々のすだれ状電極の複数の端子の配列周期K2(図8の(A)参照)も相互に同じであることが好ましいことはいうまでもない。
【0177】
この実施の形態ではさらに、複数の弾性表面波素子62a,62b,そして62cの夫々の複数の弾性表面波励起変換手段68a及び68d,68b及び68e,又は68c及び68fの夫々の送信部S及びS’が共通の入力手段78に接続されているとともに、上記夫々の受信部J及びJ’が夫々の共通の受信手段79を介して時間波形分割手段72,周波数分析手段74及び弾性表面波伝搬状態解析手段76に接続されている。
【0178】
共通の入力手段78は、複数の弾性表面波素子62a,62b,そして62cの夫々の複数の弾性表面波励起変換手段68a及び68d,68b及び68e,又は68c及び68fの夫々の送信部S及びS’に対し、夫々の送信部S及びS’が対応する伝搬面64及び64’に対し対応する周波数成分の弾性表面波α及びβを励起し伝搬させる為に必要な複数の周波数成分を全て含む電気信号を同時に入力させる。
【0179】
また、共通の受信手段79は、複数の弾性表面波素子62a,62b,そして62cの夫々の複数の弾性表面波励起変換手段68a及び68d,68b及び68e,又は68c及び68fの夫々の受信部J及びJ’が受信した対応する周波数成分の弾性表面波α及びβから変換した対応する複数の周波数成分を含む複数の電気信号を伝搬時間の差異を伴なって、共通の時間波形分割手段72,共通の周波数分析手段74,そして共通の弾性表面波伝搬状態解析手段76に送る。
【0180】
伝搬時間の差異を伴なって共通に受信した複数の電気信号は、時間波形分割手段72により相互に明確に分割された後、周波数分析手段74により複数の弾性表面波素子62a,62b,そして62cの夫々の複数の弾性表面波励起変換手段68a及び68d,68b及び68e,又は68c及び68fの夫々に特有の周波数成分の電気信号に区分される。次に、これら時間成分により相互に分割されるとともに周波数成分により区分された電気信号から弾性表面波伝搬状態解析手段76が、複数の弾性表面波素子62a,62b,そして62cの基材66a,66b,そして66cの夫々の伝搬表面64又は64’における弾性表面波α又はβの伝搬状態を解析することが出来る。これら伝搬状態からは、複数の弾性表面波素子62a,62b,そして62cの基材66a,66b,そして66cの夫々の接触部位Tに外部から接触した図示しない物体が接触部位Tに負荷する圧力の大きさを含む外部環境の変化を検出することが出来る。
【0181】
即ち、この実施の形態の弾性表面波素子アレイ90の複数の弾性表面波素子62a,62b,そして62cの夫々も圧力センサとして使用することができる。
【0182】
この実施の形態ではさらに、図8の(A)及び図9中に示されていた第7及び第8の実施の形態の複数の弾性表面波素子62a,62b,そして62cの基材66a,66b,そして66cは支持柱70を介して例えば人間型ロボットの体表面のような支持表面上に直接又は図示しない柔軟な膜材を介して取り付けられていたが、複数の弾性表面波素子62a,62b,そして62cの基材66a,66b,そして66cの夫々が、夫々の外表面において接触部位Tとは反対側の部位Bが例えば人間型ロボットの体表面のような支持表面上に取り付けられる柔軟な膜材92中に埋設されて支持されている。
【0183】
支持柱70を使用しない図10の(A)及び(B)中に示されている弾性表面波素子アレイ90は、図8の(A)及び図9中に示されていた第7及び第8の実施の形態の弾性表面波素子アレイ60及び80に比べ、構成がより簡素になり製造も容易となる。しかも、複数の弾性表面波励起変換手段68a及び68d,68b及び68e,又は68c及び68fの夫々の送信部S及びS’が、すだれ状電極により構成されていて、対応する伝搬面64及び64’上をすだれ状電極から両方向に弾性表面波α及びβが励起され伝搬される場合には、膜材92に向い伝搬された弾性表面波α及びβは膜材92により吸収され、対応する受信部J及びJ’に到達することが無い。
【0184】
さらにまたこの実施の形態では、複数の弾性表面波素子62a,62b,そして62cの夫々における複数の弾性表面波励起変換手段68a及び68d,68b及び68e,又は68c及び68fの夫々の送信部S及びS’,そして受信部J及びJ’は、対応する基材66a,66b,そして66cの夫々の外表面において膜材92から露出されていて、しかも接触部位Tから離れて配置されている。従って、複数の弾性表面波素子62a,62b,そして62cの夫々の複数の弾性表面波励起変換手段68a及び68d,68b及び68e,又は68c及び68fの夫々の組み合わせにおいて送信部S及びS’と受信部J及びJ’との間における弾性表面波α及びβの伝搬に膜材92が影響を及ぼすことがない。しかも、接触部位Tから離れている複数の弾性表面波励起変換手段68a及び68d,68b及び68e,又は68c及び68fの夫々の送信部S及びS’,そして受信部J及びJ’は、接触部位Tに負荷される外力により損傷を受けることが無い。
【0185】
このよう構成されている第9の実施の形態に従った弾性表面波素子アレイ90は、図8の(A)及び図9を参照しながら前述した第7及び第8の実施の形態に従った弾性表面波素子アレイ60及び80と同様の効果を得ることが当然出来る。そしてこれに加え、複数の弾性表面波素子62a,62b,そして62cの夫々が複数の弾性表面波励起変換手段68a及び68d,68b及び68e,そして68c及び68fの組み合わせを備えていて、しかも夫々の弾性表面波素子62a,62b,又は62cの複数の弾性表面波励起変換手段68a及び68d,68b及び68e,又は68c及び68fの夫々が送信部S又はS’と受信部J又はJ’を有しているので、複数の弾性表面波素子62a,62b,そして62cの夫々において夫々の複数の弾性表面波励起変換手段68a及び68d,68b及び68e,又は68c及び68dの伝搬面64及び64’に接触する外部環境の変化、例えば圧力の大きさの変化、に伴なう伝搬面64及び64’を伝搬する弾性表面波α及びβの特性の変化(例えば、伝搬速度や強度の変化)をより精密に知ることが出来る。
【0186】
[第9の実施の形態の変形例]
図10の(C)には、図10の(A)及び(B)を参照したこの発明の第9の実施の形態に従った弾性表面波素子アレイ90の変形例90’の側面図が概略的に示されている。
【0187】
この変形例90’の弾性表面波素子アレイが、図10の(A)及び(B)を参照したこの発明の第9の実施の形態に従った弾性表面波素子アレイ90と異なっているのは、第9の実施の形態の弾性表面波素子アレイ90の複数の弾性表面波素子62a,62b,そして62cの基材66a,66b,そして66cの夫々において膜材92に埋設されていた部位Bが削除されて略半球形状の基材66’a,66’b,そして66’cにされており、上記部位Bが削除された後に残った平坦面が柔軟な膜材92’の表面に例えば接着剤等の公知の固定手段により固定されていることである。この変形例の膜材92’には変形例90’の弾性表面波素子アレイの複数の弾性表面波素子62’a,62’b,そして62’cの夫々の基材66’a,66’b,そして66’cの外表面が埋設されることがないので、この変形例90’の膜材92’の厚さは前述の第9の実施の形態に従った弾性表面波素子アレイ90の膜材92の厚さに比べ遥かに薄くすることが出来る。この変形例の膜材92’は、それよりも厚さの厚い第9の実施の形態の膜材92に比べ、例えば人間型ロボットの体表面のような支持表面に対しより緊密に正確に従い取り付けることが可能である。
【0188】
図10の(C)の変形例90’の弾性表面波素子アレイは、上述した略半球形状の基材66’及び厚さの薄い膜材92’以外は、図10の(A)及び(B)を参照したこの発明の第9の実施の形態に従った弾性表面波素子アレイ90と比べ、構造に差異がない。従って、図10の(C)の変形例90’の弾性表面波素子アレイは、図10の(A)及び(B)を参照したこの発明の第9の実施の形態に従った弾性表面波素子アレイ90と同じ効果を得ることが出来る。
【0189】
なお、図10の(A)及び(B)を参照して上述した第9の実施の形態及び図10の(C)を参照して上述した第9の実施の形態の変形例では、複数の弾性表面波素子62a,62b,そして62c、又は62’a,62’b,そして62’cの複数の弾性表面波励起変換手段68a及び68d,68b及び68e,そして68c及び68fから時間波形分割手段72が受信する電気信号は、複数の弾性表面波励起変換手段68a及び68d,68b及び68e,そして68c及び68fが励起し伝搬させる弾性表面波α及びβの周波数の差異や複数の弾性表面波素子62a,62b,そして62cの複数の基材66a,66b,そして66cの直径の差異、又は複数の弾性表面波素子62’a,62’b,そして62’cの複数の基材66’a,66’b,そして66’cの直径の差異に基づく、複数の基材66a,66b,そして66c、又は66’a,66’b,そして66’cの夫々の伝搬表面64又は64’において弾性表面波α又はβが送信部S又はS’から受信部J又はJ’まで伝搬するのに要する時間(到達時間)の差異によって相互に分割することが出来る。
【0190】
従って、複数の弾性表面波素子62a,62b,そして62cの複数の基材66a,66b,そして66cの直径の差異をなくし(即ち、複数の基材66a,66b,そして66cの直径を相互に等しくし)ても、また複数の弾性表面波素子62’a,62’b,そして62’cの複数の基材66’a,66’b,そして66’cの直径の差異をなくし(即ち、複数の基材66’a,66’b,そして66’cの直径を相互に等しくし)ても、基材66a及び66’aの夫々の伝搬表面64に設置されている弾性表面波励起変換手段68aの送信手段Sと受信手段Jとの間の距離及び上記夫々の伝搬表面64’に設置されている弾性表面波励起変換手段68dの送信手段S’と受信手段J’との間の距離,基材66b及び66’bの夫々の伝搬表面64に設置されている弾性表面波励起変換手段68bの送信手段Sと受信手段Jとの間の距離及び上記夫々の伝搬表面64’に設置されている弾性表面波励起変換手段68eの送信手段S’と受信手段J’との間の距離,そして基材66c及び66’cの夫々の伝搬表面64に設置されている弾性表面波励起変換手段68cの送信手段Sと受信手段Jとの間の距離及び上記夫々の伝搬表面64’に設置されている弾性表面波励起変換手段68fの送信手段S’と受信手段J’との間の距離を相互に異ならせることによっても、複数の弾性表面波素子62a,62b,そして62c、及び62’a,62’b,そして62’cの複数の弾性表面波励起変換手段68a及び68d,68b及び68e,そして68c及び68fから時間波形分割手段72が受信する電気信号を、上述したように複数の弾性表面波素子62a,62b,そして62cの複数の基材66a,66b,そして66c、及び複数の弾性表面波素子62’a,62’b,そして62’cの複数の基材66’a,66’b,そして66’cに直径の差異がある場合と同様に、弾性表面波α又はβが送信部S又はS’から受信部J又はJ’まで伝搬するのに要する時間(到達時間)の差異によって相互に分割することが出来る。
【0191】
[第10の実施の形態]
次にこの発明の第10の実施の形態に従った弾性表面波素子アレイ100について図11を参照しながら詳細に説明する。図11は、この発明の第10の実施の形態に従った弾性表面波素子アレイ100の構成を概略的に示す平面図である。
【0192】
なおこの実施の形態の弾性表面波素子アレイ100の構成部材において図9を参照しながら前述した第8の実施の形態に従った弾性表面波素子アレイ80と同じ構成部材には第8の実施の形態に従った弾性表面波素子アレイ80の同じ構成部材を指摘していた参照符号と同じ参照符号を付し、その構成部材についての詳細な説明は省略する。
【0193】
この実施の形態が図9を参照しながら前述した第8の実施の形態と異なっているのは、複数の弾性表面波素子62a,62b,そして62cの夫々の複数の弾性表面波励起変換手段68a及び68d,68b及び68e,又は68c及び68fの夫々が対応する伝搬面64又は64’に励起し伝搬させる弾性表面波α又はβを対応する複数の弾性表面波励起変換手段68a及び68d,68b及び68e,又は68c及び68fの夫々に向い反射する反射体H及びH’が対応する伝搬面64又は64’に設けられていることである。
【0194】
複数の弾性表面波励起変換手段68a及び68d,68b及び68e,又は68c及び68fと対応する反射体H及びH’とは、対応する伝搬面64又は64’において弾性表面波が伝搬する方向に相互に離間している。
【0195】
複数の弾性表面波励起変換手段68a及び68d,68b及び68e,又は68c及び68fと対応する反射体H及びH’とは、これらの間で伝搬する弾性表面波α又はβの周波数に対応した配列周期K1又はK2(図8の(A)参照)の複数の端子を有したすだれ状電極の両極を結合したはしご型のパターンで形成することが出来るが、この詳しい構造は公知なのでここではこれ以上説明しない。なお、反射体H及びH’は、基材66a,66b,そして66cの夫々の伝搬面64及び64’に例えばフォトリソグラフィーを用いてエッチングにより形成した溝であることも出来る。
【0196】
複数の弾性表面波素子62a,62b,そして62cの夫々の複数の弾性表面波励起変換手段68a及び68d,68b及び68e,又は68c及び68fの夫々が接続されている共通の入力手段78は、複数の弾性表面波素子62a,62b,そして62cの夫々の複数の弾性表面波励起変換手段68a及び68d,68b及び68e,又は68c及び68fの夫々に対し、夫々が対応する伝搬面64及び64’に対し対応する周波数成分の弾性表面波α又はβを励起し伝播させる為に必要な複数の周波数成分を全て含む電気信号を同時に入力させる。
【0197】
反射体H及びH’は、複数の弾性表面波素子62a,62b,そして62cの夫々の複数の弾性表面波励起変換手段68a及び68d,68b及び68e,又は68c及び68fの夫々が対応する伝搬面64及び64’に対し励起させ対応する反射体H及びH’に向い伝搬されてきた弾性表面波α又はβを、対応する伝搬面64及び64’を介して対応する弾性表面波励起変換手段68a及び68d,68b及び68e,又は68c及び68fに向い反射する。
【0198】
複数の弾性表面波素子62a,62b,そして62cの夫々の複数の弾性表面波励起変換手段68a及び68d,68b及び68e,又は68c及び68fの夫々が接続されている共通の受信手段79は、複数の弾性表面波素子62a,62b,そして62cの夫々の複数の弾性表面波励起変換手段68a及び68d,68b及び68e,又は68c及び68fの夫々が、対応する反射体H及びH’から反射されて来て受信した弾性表面波α及びβから変換した対応する複数の周波数成分を含む複数の電気信号を、伝搬時間の差異を伴ない受信し、共通の時間波形分割手段72,共通の周波数分析手段74,そして共通の弾性表面波伝搬状態解析手段76に送る。
【0199】
伝搬時間の差異を伴なって共通に受信した複数の電気信号は、時間波形分割手段72により相互に明確に分割された後、周波数分析手段74により複数の弾性表面波素子62a,62b,そして62cの夫々の複数の弾性表面波励起変換手段68a及び68d,68b及び68e,又は68c及び68fの夫々に特有の周波数成分の電気信号に区分される。次に、これら時間成分により相互に分割されるとともに周波数成分により区分された電気信号から弾性表面波伝搬状態解析手段76が、複数の弾性表面波素子62a,62b,そして62cの基材66a,66b,そして66cの夫々の伝搬表面64又は64’における弾性表面波α又はβの伝搬状態を解析することが出来る。これら伝搬状態からは、複数の弾性表面波素子62a,62b,そして62cの基材66a,66b,そして66cの夫々の接触部位Tに外部から接触した図示しない物体が接触部位Tに負荷する圧力の大きさを含む外部環境の変化を検出することが出来る。
【0200】
即ち、この実施の形態の弾性表面波素子アレイ100の複数の弾性表面波素子62a,62b,そして62cの夫々も圧力センサとして使用することができる。
【0201】
なお、図11を参照して上述した第10の実施の形態では、複数の弾性表面波素子62a,62b,そして62cの複数の弾性表面波励起変換手段68a及び68d,68b及び68e,そして68c及び68fから時間波形分割手段72が受信する電気信号は、複数の弾性表面波励起変換手段68a及び68d,68b及び68e,そして68c及び68fが励起し伝搬させる弾性表面波α及びβの周波数の差異や複数の弾性表面波素子62a,62b,そして62cの複数の基材66a,66b,そして66cの直径の差異に基づく、複数の基材66a,66b,そして66cの夫々の伝搬表面64又は64’において弾性表面波α又はβが複数の弾性表面波励起変換手段68a及び68d,68b及び68e,又は68c及び68fから反射体H又はH’を介して元の複数の弾性表面波励起変換手段68a及び68d,68b及び68e,又は68c及び68fまで伝搬するのに要する時間(到達時間)の差異によって相互に分割することが出来る。
【0202】
従って、複数の弾性表面波素子62a,62b,そして62cの複数の基材66a,66b,そして66cの直径の差異をなくし(即ち、複数の基材66a,66b,そして66cの直径を相互に等しくし)ても、基材66aの伝搬表面64に設置されている弾性表面波励起変換手段68aと反射体Hとの間の距離及び伝搬表面64’に設置されている弾性表面波励起変換手段68dと反射体H’との間の距離,基材66bの伝搬表面64に設置されている弾性表面波励起変換手段68bと反射体Hとの間の距離及び伝搬表面64’に設置されている弾性表面波励起変換手段68eと反射体H’との間の距離,そして基材66の伝搬表面64に設置されている弾性表面波励起変換手段68cと反射体Hとの間の距離及び伝搬表面64’に設置されている弾性表面波励起変換手段68fと反射体H’との間の距離を相互に異ならせることによっても、複数の弾性表面波素子62a,62b,そして62cの複数の弾性表面波励起変換手段68a及び68d,68b及び68e,そして68c及び68fから時間波形分割手段72が受信する電気信号を、上述したように複数の弾性表面波素子62a,62b,そして62cの複数の基材66a,66b,そして66cに直径の差異がある場合と同様に、弾性表面波α又はβが複数の弾性表面波励起変換手段68a及び68d,68b及び68e,又は68c及び68fから反射体H又はH’を介して元の複数の弾性表面波励起変換手段68a及び68d,68b及び68e,又は68c及び68fまで伝搬するのに要する時間(到達時間)の差異によって相互に分割することが出来る。
【0203】
この実施の形態ではさらに、図9中に示されていた第8の実施の形態の複数の弾性表面波素子62a,62b,そして62cの基材66a,66b,そして66cは支持柱70を介して例えば人間型ロボットの体表面のような支持表面上に直接又は図示しない柔軟な膜材を介して取り付けられていたが、図10の(A)及び(B)を参照しながら前述した第9の実施の形態の場合と同様に複数の弾性表面波素子62a,62b,そして62cの基材66a,66b,そして66cが夫々の外表面において接触部位Tとは反対側の部位B(図10の(B)参照)が例えば人間型ロボットの体表面のような支持表面上に取り付けられる柔軟な膜材92(図10の(B)参照)中に埋設されて支持されている。
【0204】
支持柱70を使用しない図10の(A)及び(B)中に示されている第9の実施の形態の弾性表面波素子アレイ90と同様に、支持柱70を使用しない図11中に示されている第10の実施の形態の弾性表面波素子アレイ100もまた、図9中に示されていた第8の実施の形態の弾性表面波素子アレイ80に比べ、構成がより簡素になり製造も容易となる。しかも、複数の弾性表面波励起変換手段68a及び68d,68b及び68e,又は68c及び68fが、すだれ状電極により構成されていて、対応する伝搬面64及び64’上をすだれ状電極から両方向に弾性表面波α及びβが励起され伝搬される場合には、膜材92に向い伝搬された弾性表面波α及びβは膜材92により吸収され、対応する反射体H及びH’に到達することが無い。
【0205】
さらにまたこの実施の形態では、複数の弾性表面波素子62a,62b,そして62cの夫々の複数の弾性表面波励起変換手段68a及び68d,68b及び68e,又は68c及び68fと対応する反射体H及びH’が、対応する基材66a,66b,又は66cの表面において膜材92(図10の(B)参照)から露出されていて接触部位Tから離れた位置に配置されている。従って、複数の弾性表面波素子62a,62b,そして62cの夫々の複数の弾性表面波励起変換手段68a及び68d,68b及び68e,又は68c及び68fと対応する反射体H及びH’との間における弾性表面波α及びβの伝搬に膜材92(図10の(B)参照)が影響を及ぼすことがない。しかも、接触部位Tから離れている複数の弾性表面波励起変換手段68a及び68d,68b及び68e,又は68c及び68fと対応する反射体H及びH’は、接触部位Tに負荷される外力により損傷を受けることがない。
【0206】
このよう構成されている第10の実施の形態に従った弾性表面波素子アレイ100は、図9を参照しながら前述した第8の実施の形態に従った弾性表面波素子アレイ80と同様の効果を得ることが当然出来る。そしてこれに加えて、図9を参照しながら前述した第8の実施の形態に従った弾性表面波素子アレイ80や図10の(A)及び(B)を参照しながら前述した第9の実施の形態に従った弾性表面波素子アレイ90よりも構成を簡素にすることが出来る。
【0207】
このよう構成されている第10の実施の形態に従った弾性表面波素子アレイ100はさらに、図10の(C)を参照しながら前述した第9の実施の形態の変形例に従った弾性表面波素子アレイ90’と同様に、複数の弾性表面波素子62a,62b,そして62cの基材66a,66b,そして66cの夫々において膜材92(図10の(B)参照)に埋設されていた部位B(図10の(B)参照)を削除して略半球形状の基材66’a,66’b,そして66’c(図10の(C)参照)にし、上記部位Bが削除された後に残った平坦面を柔軟な膜材92’(図10の(C)参照)の表面に例えば接着剤等の公知の固定手段により固定することもできる。
【0208】
このように変形させても図11を参照しながら前述した第10の実施の形態に従った弾性表面波素子アレイ100と同じ作用効果を得ることができるし、さらには図10の(C)を参照しながら前述した第9の実施の形態の変形例に従った弾性表面波素子アレイ90’に特有の下記の効果も得ることが出来る。
【0209】
即ち、膜材92’(図10の(C)参照)には弾性表面波素子アレイ100の複数の弾性表面波素子62a,62b,そして62cの基材66a,66b,そして66cの夫々の外表面の上記部位B(図10の(B)参照)が埋設されることがないので、図11を参照しながら前述した第10の実施の形態のこような変形例の膜材92’(図10の(C)参照)の厚さは図11を参照して前述された第10の実施の形態に従った弾性表面波素子アレイ100の膜材92(図10の(B)参照)の厚さに比べ遥かに薄くすることが出来る。この変形例の膜材92’(図10の(C)参照)は、それよりも厚さの厚い第10の実施の形態の膜材92(図10の(B)参照)に比べ、例えば人間型ロボットの体表面のような支持表面に対しより緊密に正確に従い取り付けることが可能である。
【0210】
[第5,第6,第9,そして第10の実施の形態と第5及び第9の実施の形態の変形例とに共通の第1の変形例]
次に、図12を参照しながら、図6,7,10,そして11を参照しながら前述した第5,第6,第9,そして第10の実施の形態と第5及び第9の実施の形態の変形例とに共通の第1の変形例について詳細に説明する。なお図12は、上記共通の第1の変形例の概略的な側面図である。
【0211】
そしてこの共通の第1の変形例において、これら図6,7,10,そして11を参照しながら前述した第5,第6,第9,そして第10の実施の形態と第5及び第9の実施の形態の変形例の構成部材と同じ構成部材には、これら図6,7,10,そして11を参照しながら前述した第5,第6,第9,そして第10の実施の形態と第5及び第9の実施の形態の変形例の構成部材を指摘していたのと同じ参照符号を付し、これらの構成部材についての詳細な説明は省略する。
【0212】
これらの実施の形態及びこれらの実施の形態の変形例において使用されている複数の弾性表面波素子12a,12b,そして12c,あるいは62a,62b,そして62cの複数の弾性表面波励起変換手段18a,18b,18c,18’a,18’b,18’c,68a,68b,68c,68d,68e,又は68fや送信部S又はS’や受信部J又はJ’や反射体H又はH’が前述したようにすだれ状電極により構成されている場合には、図12中に示されているように、すだれ状電極の一方の接点を共通の入力手段26’’,26,78及び共通の受信手段28’’、28,79の中の対応する1つに接続させるとともに、すだれ状電極の他方の接点を対応する基材16,16’,66a,66b,66cの接触部位Tに設置した導電性材料の接地部材Eに接続させることが出来る。
【0213】
さらに、これらの実施の形態及びこれらの実施の形態の変形例において使用されている複数の弾性表面波素子12a,12b,そして12c,あるいは62a,62b,そして62cの基材16,16’,66a,66b,66cの接触部位Tを柔軟な導電性膜FMにより覆っていて、導電性膜FMが接地されている。
【0214】
そして、これらの実施の形態及びこれらの実施の形態の変形例において使用されている複数の弾性表面波素子12a,12b,そして12c,あるいは62a,62b,そして62cの基材16,16’,66a,66b,66cの接触部位Tには、導電性膜FMを介して外部の物体から圧力が負荷される。
【0215】
[第1乃至第10の実施の形態とこれらの変形例とに共通の第2の変形例]
次に、図13を参照しながら、図1乃至図3及び図5乃至図11を参照しながら前述した第1乃至第10の実施の形態とこれらの変形例とに共通の第2の変形例について詳細に説明する。なお図13は、上記共通の第3の変形例の概略的な斜視図である。
【0216】
そしてこの共通の第2の変形例において、これら図1乃至図3及び図5乃至図11を参照しながら前述した第1乃至第10の実施の形態とこれらの変形例の構成部材と同じ構成部材には、これら図1乃至図3及び図5乃至図11を参照しながら前述した第1乃至第10の実施の形態とこれらの変形例の構成部材を指摘していたのと同じ参照符号を付し、これらの構成部材についての詳細な説明は省略する。
【0217】
この共通の第2の変形例では、図1乃至図3及び図5乃至図11を参照しながら前述した第1乃至第10の実施の形態とこれらの変形例の弾性表面波素子アレイ10,30,40,40’,50,60,80,90,90’,100の夫々に含まれる弾性表面波素子12a,12b,12c,…,又は12A,12B,12C,12D,…,又は12’a,12’b,12’c,…,又は62a,62b,62c,62d,62e,62f,…,又は62’a,62’b,62’c,…,の列又は行に任意の間隔で温度測定素子TMが介在されている。温度測定素子TMは、弾性表面波素子アレイ10,30,40,40’,50,60,80,90,90’,又は100が配置されている環境の温度を測定する為に使用される。温度測定素子TMは、従来公知の任意の構成であることが出来るし、弾性表面波素子アレイ10,30,40,40’,50,60,80,90,90’,100の夫々に含まれる弾性表面波素子12a,12b,12c,…,又は12A,12B,12C,12D,…,又は12’a,12’b,12’c,…,又は62a,62b,62c,…,又は62d,62e,62f,…,又は62’a,62’b,62’c,…,の夫々と同じ構成であって、上記環境温度の変化のみにより弾性表面波素子12a,12b,12c,…,又は12A,12B,12C,12D,…,又は12’a,12’b,12’c,…,又は62a,62b,62c,…,又は62d,62e,62f,…,又は62’a,62’b,62’c,…,に生じる弾性表面波伝搬状況の変化を検出するような電気又は電子回路を備えていることが出来る。
【0218】
このような構成であれば、弾性表面波素子アレイ10,30,40,40’,50,60,80,90,90’,100の夫々に含まれる弾性表面波素子12a,12b,12c,…,又は12A,12B,12C,12D,…,又は12’a,12’b,12’c,…,又は62a,62b,62c,…,又は62d,62e,62f,…,又は62’a,62’b,62’c,…,において検出されたそれらに対する接触圧力の大きさに応じて変化する弾性表面波伝搬状況の変化から、上記環境温度の変化に伴なうる弾性表面波伝搬状況の変化の影響を取り除くことが出来るようになるので、上記検出されたそれらに対する接触圧力の大きさのより正確な絶対値を知ることが出来るようになる。
【0219】
なお図13には、弾性表面波素子アレイ10,30,40,40’,50,60,80,90,90’,100の夫々に含まれる弾性表面波素子12a,12b,12c,…,又は12A,12B,12C,12D,…,又は12’a,12’b,12’c,…,又は62a,62b,62c,…,又は62d,62e,62f,…,又は62’a,62’b,62’c,…,の接触部位Tを共通して覆う柔軟な覆いFRも示されている。
【0220】
[第1乃至第10の実施の形態とこれらの変形例とに共通の第3の変形例]
次に、図14を参照しながら、図1乃至図3及び図5乃至図11を参照しながら前述した第1乃至第10の実施の形態とこれらの変形例とに共通の第3の変形例について詳細に説明する。なお図14の(A)は、上記共通の第3の変形例の概略的な斜視図であり;そして、図14の(B)は、上記共通の第3の変形例の一部を拡大して概略的に示す側面図である。
【0221】
そしてこの共通の第3の変形例において、これら図1乃至図3及び図5乃至図11を参照しながら前述した第1乃至第10の実施の形態とこれらの変形例の構成部材と同じ構成部材には、これら図1乃至図3及び図5乃至図11を参照しながら前述した第1乃至第10の実施の形態とこれらの変形例の構成部材を指摘していたのと同じ参照符号を付し、これらの構成部材についての詳細な説明は省略する。
【0222】
図14の(A)中に示されているように、この共通の第3の変形例では、図1乃至図3及び図5乃至図11を参照しながら前述した第1乃至第10の実施の形態とこれらの変形例の弾性表面波素子アレイ10,30,40,40’,50,60,80,90,90’,100の夫々に含まれる弾性表面波素子12a,12b,12c,…,又は12A,12B,12C,12D,…,又は12’a,12’b,12’c,…,又は62a,62b,62c,…,又は62d,62e,62f,…,又は62’a,62’b,62’c,…,の基材16,16’,66a,66b,66c,又は66dが柔軟な糸状の連結部材により相互に連結されていて、上記糸状の連結部材は例えば共通の入力手段26,26’,26’’,又は78の為のリード線や共通の受信手段28,28’,28’’,又は79の為のリード線を含むことが出来る。
【0223】
上記糸状の連結部材は、例えば基材16,16’,66a,66b,66c,又は66dにおいて夫々の伝搬面14,14’,64,又は64’を避けて形成された貫通孔Qに挿通されていることが出来る。このようにして上記糸状の連結部材により基材16,16’,66a,66b,66c,又は66dが相互に連結されている弾性表面波素子12a,12b,12c,…,又は12A,12B,12C,12D,…,又は12’a,12’b,12’c,…,又は62a,62b,62c,…,又は62d,62e,62f,…,又は62’a,62’b,62’c,…,を含む弾性表面波素子アレイ10,30,40,40’,50,60,80,90,90’,100は、所謂ビーズ編み物のように取り扱うことを可能にし、例えば人間型ロボットの表面の所望の部位に容易に緊密に適合可能であるとともに取り外しも容易な衣服の一部のように構成することが可能になる。
【0224】
さらに、このように上記糸状の連結部材により基材16,16’,66a,66b,66c,又は66dが相互に連結されている弾性表面波素子12a,12b,12c,…,又は12A,12B,12C,12D,…,又は12’a,12’b,12’c,…,又は62a,62b,62c,…,又は62d,62e,62f,…,又は62’a,62’b,62’c,…,を含む弾性表面波素子アレイ10,30,40,40’,50,60,80,90,90’,100は、必要に応じて図14の(B)中に示されているように基材16,16’,66a,66b,66c,又は66dの表面の接触部位T、さらには接触部位Tとは反対側の部位B、を共通の柔軟な覆いFRにより覆うことが出来る。共通の柔軟な覆いFRは、1枚の膜でなければならないことはなく、所望の機能を達成することが出来るのであれば、多層膜や織布や不織布であることも出来る。
【符号の説明】
【0225】
10,30,40,40’.50,60,80,90,90’,100…弾性表面波素子アレイ、12a,12b,12c,12A,12B,12C,12D,12’a,12’b,12’c,62a,62b,62c,62d,62e,62f,62’a,62’b,62’c…弾性表面波素子、14,14’,14A,14B,14C,64,64’…伝搬面、16,16’,66a,66b,66c,66d…基材、18a,18b,18c,18’a,18’b,18’c,18A,18B,18C,18D,68a,68b,68c,68d,68e,68f,68’a,68’b,68’c…弾性表面波励起変換手段、22,22’,22’’,74…周波数分析手段、24,24’,24’’,76…弾性表面波伝搬状態解析手段(圧力検出手段)、26,26’,26’’,78…入力手段、28,28’,28’’,79…受信手段、S,S’…送信部,T…接触部位、J,J’…受信部、H,H’…反射体、x,y,z,α,β…弾性表面波、P1,P2,P3,K1,K2…配列周期、W1,C1,C2…重複する長さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも球面の一部により構成され少なくとも円環状の曲面の一部を含み弾性表面波が伝搬する伝搬面を備えた基材と、前記伝搬面に弾性表面波を励起し伝搬させるとともに伝搬した弾性表面波を受信して電気信号に変換する弾性表面波励起変換手段と、を有しており、
前記基材は、圧電性を有する少なくとも一部分を表面に沿い有していて、
前記弾性表面波励起変換手段は、前記圧電性を有する少なくとも一部分に接して形成されているか又は前記圧電性を有する少なくとも一部分に所定の隙間を介在させて対面するよう形成されており、
前記伝搬面は物体が接触する接触部位を有しており、
前記接触部位に対する物体の接触圧力の増加に従って前記伝搬面を伝搬する弾性表面波の振幅の低下を生じさせ伝搬状態を低下させることに基づいて前記弾性表面波励起変換手段により受信した弾性表面波から変換された電気信号から、前記圧力の大きさを検出する圧力検出手段を備えている、
ことを特徴とする圧力センサ。
【請求項2】
相互に周波数特性が異なっている複数の弾性表面波励起変換手段を有していて、
前記複数の弾性表面波励起変換手段により変換された電気信号について周波数分析を行い各周波数成分の対応した弾性表面波励起変換手段を特定する、
ことを特徴とする請求項1に記載の圧力センサ。
【請求項3】
前記複数の弾性表面波励起変換手段は、夫々の複数の端子の配列周期が相互に異なっている複数のすだれ状電極を有している、ことを特徴とする請求項7に記載の圧力センサ。
【請求項4】
前記弾性表面波励起変換手段は、電極周期が一定でなく複数帯域の周波数特性を有しているすだれ状電極を有しており、
前記圧力検出手段は、前記すだれ状電極が受信した複数帯域の弾性表面波からの複数帯域の周波数特性を有している電気信号の周波数分析を行ない、各周波数成分に対応した弾性表面波成分の伝搬経路における伝搬状態の変化に基づき前記圧力の大きさを検出する、
ことを特徴とする請求項1に記載の圧力センサ。
【請求項5】
前記伝搬面には、前記弾性表面波励起変換手段から伝搬されてきた弾性表面波を前記弾性表面波励起変換手段に向い反射する反射体が設けられている、ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の圧力センサ。
【請求項6】
前記弾性表面波励起変換手段は、前記伝搬面に弾性表面波を励起し伝搬させる送信部と、前記送信部により前記伝搬面を伝搬された弾性表面波を受信して電気信号に変換する受信部と、を含んでいて、前記送信部と前記受信部とは前記伝搬面に沿い弾性表面波が伝搬する方向に相互に離間している、ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の圧力センサ。
【請求項7】
前記基材の前記伝搬面は連続した円環状の曲面であって、この伝搬面を伝搬する弾性表面波が前記基材の表面に沿い周回する、ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の圧力センサ。
【請求項8】
前記基材は球面により構成されている、ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の圧力センサ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate


【公開番号】特開2010−139506(P2010−139506A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−5298(P2010−5298)
【出願日】平成22年1月13日(2010.1.13)
【分割の表示】特願2003−382855(P2003−382855)の分割
【原出願日】平成15年11月12日(2003.11.12)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【出願人】(503416870)ボール・セミコンダクター・インコーポレーテッド (5)
【Fターム(参考)】