説明

圧力センサ

【課題】感圧導電シートの導電性粒子の添加量を増加させることなく感度の良い圧力センサ1を提供する。
【解決手段】絶縁性基材2と、絶縁性基材2の一方主面に設けられた有機トランジスタ10と、有機トランジスタ10のソース電極12に所定電圧を印加する電圧電源30と、電圧電源30とソース電極12との間に設けられ、ソース電極12と直列に接続された感圧導電体20と、感圧導電体の一方主面側に積層された押圧シート60とを備え、感圧導電体20と押圧シート60とは少なくとも一部(凹部62)を非接触とし、他の部分(凸部61)を接触させた圧力センサ1を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレキシブルな圧力センサに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の技術に関し、有機トランジスタが形成された高分子フィルムの主面に、電極が形成された感圧導電ゴムシートを貼り合わせたフレキシブル検知装置が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−150146号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、有機トランジスタと組み合わせて圧力センサを構成する感圧導電シートとしてはシリコーンゴムにグラファイトが添加された材料が用いられる。この感圧導電シートを押圧して圧縮すると、導電物質であるグラファイトが相互に接触し、導電経路が形成されて抵抗値が低下するため、有機トランジスタのソース−ドレイン間の電位差を変動させることができるので、この電位差の変動に応じた圧力の変化を検知することができる。
【0005】
この感圧導電シートに導電物質として含まれるグラファイトは脆い材料であるため、圧力センサの耐久性を向上させる観点からは感圧導電シートに含まれるグラファイトの量を少なくすることが望ましい。
【0006】
しかしながら、感圧導電シートに含まれるグラファイトの量を少なくすると、感圧導電シートの抵抗値の変化率が小さくなるため、低い圧力領域において感度が不足するという問題がある。
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、感圧導電シートに含まれるグラファイトの量を増やすことなく、低い圧力領域においても感度の良好な圧力センサを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
[1]本発明は、絶縁性基材と、前記絶縁性基材の一方主面にマトリクス状に設けられた有機トランジスタと、前記有機トランジスタのソース電極に所定電圧を印加する電圧電源と、前記電圧電源と前記ソース電極との間に配置され、前記ソース電極と直列に接続された感圧導電体と、前記感圧導電体の一方主面側に積層された押圧シートと、を備え、前記感圧導電体と前記押圧シートとは少なくとも一部が非接触であることを特徴とする圧力センサを提供することにより、上記課題を解決する。
【0009】
[2]上記発明の押圧シートの前記感圧導電体に積層される面に、前記感圧導電体に接触する凸部を設けるとともに、前記感圧導電体に非接触の凹部と設けることができる。
【0010】
[3]上記発明の押圧シートの凸部の頂部に、電極を形成することができる。
【0011】
[4]上記発明の押圧シートの凸部を、導電性材料で形成することができる。
【0012】
[5]上記発明の感圧導電体を、弾性材料に導電性粒子が添加された感圧導電シートで構成し、前記押圧シートが積層される一方主面側に前記押圧シートに接する凸部と前記押圧シートに非接触の凹部とを形成することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、感圧導電体と押圧シートとの接合面のうち少なくとも一部を非接触とすることにより、非接触部分に受けた押圧力は接触部分に作用するので、押圧シートが受けた押圧力を接触部分に集中させて、押圧シートの変形量を大きくすることができる。このため、感圧導電シートに含まれるグラファイトの量を増やすことなく、低い圧力領域における感度を向上させることができる。この結果、グラファイトの添加量が増えることによる脆化を防止しつつ低い圧力領域における感度を向上させて、耐久性及び信頼性の高い圧力センサを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態に係る圧力センサの単位構成の回路図である。
【図2】本発明の実施形態に係る圧力センサの単位構成の断面図である。
【図3】本発明の実施形態に係る圧力センサをマトリックス状に配置したタッチパネルディスプレイの断面図である。
【図4】本発明の実施形態に係る圧力センサの感圧導電シートの圧力抵抗特性の一例を示すグラフである。
【図5】本発明の実施形態に係る圧力センサの製造方法の一例を説明するための工程断面図である。
【図6】本発明の実施形態に係る圧力センサの製造方法の一例を説明するための工程断面図である。
【図7】本発明の実施形態に係る圧力センサの製造方法の一例を説明するための工程断面図である。
【図8】本発明の実施形態に係る圧力センサの製造方法の一例を説明するための工程断面図である。
【図9】本発明の実施形態に係る圧力センサの製造方法の一例を説明するための工程断面図である。
【図10】本発明の実施形態に係る圧力センサの製造方法の一例を説明するための工程断面図である。
【図11】本発明の実施形態に係る圧力センサの製造方法の一例を説明するための工程断面図である。
【図12】押圧シートの他の態様に係る、図2に示すA領域に対応する部分拡大図である。
【図13】押圧シートのさらに他の態様に係る、図2に示すA領域に対応する部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<第1実施形態>
以下、本発明の第1実施形態に係る圧力センサを図面に基づいて説明する。本発明の第1実施形態では、本発明に係る圧力センサをマトリックス状に配置して、タッチパネル式入力装置に適用した例を説明する。
【0016】
図1、図2は、本発明の本実施形態の圧力センサ1の一例の構成を示す図である。本実施形態では、図1及び図2に示す圧力センサ1は、所定の操作面に沿ってマトリックス状に配置され、タッチパネルディスプレイを構成する。なお、本実施形態の圧力センサ1の用途は、タッチパネルディスプレイに限定されず、指紋センサ、スイッチなどに適用することができる。
【0017】
図1に示すように、本実施形態の圧力センサ1は、有機トランジスタ10と、感圧導電体20と、電圧電源30とを備える。有機トランジスタ10は、有機半導体層15を用いたトランジスタであり、ゲート電極11と、ソース電極12と、ドレイン電極13とを備える。電圧電源30は、有機トランジスタ10のソース電極12に所定電圧VDDを印加する。有機トランジスタ10は、所定電圧VDDの印加時におけるソース-ドレイン間の電流値に応じた信号を外部の信号処理装置40へ出力する。信号処理装置40は有機トランジスタ10から取得した信号に基づいて、押圧位置又は押圧力を検出する。
【0018】
図1に、有機トランジスタ(FET)10と感圧導電体20とを組み合わせた圧力センサ1の回路図を示す。本実施形態の圧力センサ1では、感圧導電体20は、電圧電源30と有機トランジスタ10の間に設けられており、有機トランジスタ10のソース電極12と感圧導電体20とが直列に接続された構造となっている。
【0019】
有機トランジスタ10がオン状態になるようにワードライン(WL)の電圧(VWL)と電源電圧VDDを設定すると、有機トランジスタ10の出力特性の線形領域において、ソース-ドレイン間を流れる電流量は、ソース-ドレイン間の電位差に比例して変化する。また、電圧電源30により一定の電圧を加えたときのソース-ドレイン間の電位差は、ソース電極12と直列に接続された感圧導電体20の抵抗値に依存する。
【0020】
感圧導電体20は、押圧により受けた圧力に応じて抵抗値が変化する可変抵抗部材として機能する。本実施形態の感圧導電体20は、導電体粒子が弾性のある高分子ゴムなどに分散された材料等からなり、押圧すると抵抗値が低下する特性を有する。特に限定されないが、本実施形態の感圧導電シート21としては、例えば、シリコーンゴムにグラファイトを添加して形成された感圧導電ゴムシートを用いることができる。感圧導電シート21は圧力印加によりシリコーンゴムが圧縮されると、導電物質であるグラファイトが相互に接触し、導電経路が形成されて抵抗値が減少するという原理となっている。つまり、感圧導電体20を押圧して圧力を印加すると、この圧力印加によって感圧導電体20の抵抗値が低下するので、ソース-ドレイン間の電位差は大きくなり、流れる電流量が増加する。感圧導電体20に与える押圧力と電流量とを予め取得しておけば、電流量に応じた信号の変化を読み取ることで圧力センサ1に印加される圧力量(押圧力)を検知することができる。
【0021】
図2は、図1に示す回路を有する本実施形態の圧力センサ1の断面図である。図2に示すように、有機トランジスタ10を構成するゲート電極11、ソース電極12、ドレイン電極13は、絶縁性基材2の一方主面に形成され、ゲート絶縁層14に覆われたゲート電極11の上(積層方向に沿う図面の上方向、以下同じ)には、有機半導体層15が形成されている。この有機半導体層15の上には絶縁層17を介して感圧導電体20が形成されている。さらに、感圧導電体20の上面(積層方向に沿う図面の上側の面、以下同じ)は押圧シート60により覆われている。図2に示す圧力センサ1では、押圧シート60の上面Pが押圧されると、有機トランジスタ10はその押圧力に応じた信号を出力する。
【0022】
図2に示すように、感圧導電体20は、第1パッド電極18、18aを介してソース電極12と直列に接続されている。感圧導電体20は一枚の感圧導電シート21から構成してもよいし、複数の感圧導電シートを積層して構成してもよい。また、同図に示すように、感圧導電体20の上側に積層された感圧導電シート21の上面(押圧シート60との境界面)には第2パッド電極19が形成されている。この第2パッド電極19は、電圧電源30と接続している。電圧電源30と接続された第2パッド電極19と第1パッド電極18とは、感圧導電体20(21)を介して電圧印加時に導通する。
【0023】
また、図2に示すように、本実施形態の圧力センサ1は、感圧導電体20の一方主面側(押圧操作を受ける面P側)に積層された押圧シート60を備える。この押圧シート60は、感圧導電シート21の上に積層されているため押圧シート60と感圧導電シート21とは接触しているが、その少なくとも一部において非接触とする。このように非接触の部分を形成することにより、積層された押圧シート60と感圧導電シート21との接触面積を、押圧シート60と感圧導電シート21とが対向する(重なり合う)面積よりも小さくすることができる。
【0024】
本実施形態では、押圧シート60と感圧導電シート21との接触面積を小さくすることによって、圧力印加時に押圧シート60と感圧導電シート21の接触部に応力を集中させ、その結果、グラファイトの添加量が少ない感圧導電シート21を用いた場合であっても低圧領域の感度を低下させないようにすることができる。グラファイトの添加量を増やさなくても低圧領域の感度を維持できるので、耐久性の高い感圧導電シートを用いることができる。
【0025】
特に限定されないが、本実施形態では、押圧シート60の感圧導電シート21に積層される側の主面に凸部61と凹部62とを設けることにより、感圧導電シート21と押圧シート60との一部を非接触とさせている。つまり、押圧シート60の凸部61を感圧導電シート21に接するようにしつつ、その凹部62を感圧導電シート21と非接触にしている。凸部61と凹部62の形成手法は特に限定されないが、例えば、凸部61と凹部62の形状に対応する凹凸型を用いて熱インプリント法により形成することができる。
【0026】
また、本実施形態において、凸部61を設ける位置は、有機トランジスタのソース電極12と接続された第1パッド電極18と対向する位置であることが好ましい。また、図2に示すように、本実施形態の押圧シート60の凸部61の頂部には第2パッド電極19が形成されている。つまり、同図に示すように、押圧シート60の凸部61の頂部に設けられた第2パッド電極19は、感圧導電シート21を介して有機トランジスタ10と接続された第1パッド電極18と対向する位置に配置されている。
【0027】
図3は、図2に示す圧力センサ1の単位構成をマトリックス状に配列したタッチパネルディスプレイ100の断面図であり、指でタッチパネルディスプレイ100の操作面を矢印F方向に押圧している状態を示す図である。なお、図3のXで示す領域が図2に示す圧力センサ1の単位構成に相当する。
【0028】
タッチパネルディスプレイ100の操作面側から押圧シート60を矢印Fの方向に沿って押圧すると、押圧シート60に与えられた押圧力は凹部62には伝わらずに、凸部61に集中し、凸部61の頂部に設けられた第2パッド電極19は第1パッド電極18を強く押しつける。他方、押圧シート60と感圧導電シート21とが全面で接触している(非接触部分が無い)場合には、押圧シート60に与えたれた押圧力は、押圧部分を中心に接触面全体に分散されることが予想される。
【0029】
したがって、押圧シート60に同じ押圧力を与えたとき、感圧導電シート21と押圧シート60とが非接触の凹部62と接触する凸部61を設けた本実施形態の方が強い圧力(単位面積あたりの押圧力)で感圧導電シート21を押圧することができる。つまり、押圧シート60に同じ押圧力を与えたときに、凹部62(非接触部分)と凸部61とを設けた本実施形態の方が、押圧シート60と感圧導電シート21とが全面で接触している(非接触部分が無い)場合よりも感圧導電シート21を大きく変形させる(圧縮させる)ことができる。
【0030】
ちなみに、感圧導電シート21は、図4に示すように、与えられた圧力に対して抵抗値が変化する圧力抵抗特性を有する。感圧導電シート21の圧力抵抗特性は、その材料の性質、硬度又は導電性粒子の含有量などによって異なり、図4には感圧導電シート21A,Bの圧力抵抗特性を示す。
【0031】
このため、同じ押圧力を与えたときに、感圧導電シート21と非接触の凹部62と接触する凸部61を設けた押圧シート60とを有する本実施形態の圧力センサ1は、押圧シート60と感圧導電シート21とが全面で隙間なく接触している(非接触部分が無い)態様の圧力センサよりも、凸部61に押圧された感圧導電シート21の抵抗値を大きく低下させることができるとともに、有機トランジスタ10のソース−ドレイン間の電位差を大きくして、ソース−ドレイン間に流れる電流量の変化量を大きくすることができる。
【0032】
この結果、同じ押圧力に対して応答性の良い圧力センサ1を提供することができる。言い換えると、低い押圧力に対しても精度の高い圧力センサ1を提供することができる。
【0033】
以下、図5〜図11に基づいて、本実施形態の圧力センサ1の製造方法について説明する。
【0034】
まず、図5に示すように、絶縁性基材2の一方主面にゲート電極11を形成する。絶縁性基材2としては、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PEN(ポリエチレンナフタレート)、ポリイミドなどの高分子フィルムを用いることができる。ゲート電極11の形成手法は特に限定されず、インクジェット法又はグラビアオフセット法などの印刷技術や、真空蒸着又はスパッタ法などの形成方法によりゲート電極11を形成する。ゲート電極11の材料としては、例えば、AgやCuなどの金属のナノ粒子インクや、PEDOT(ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン))/PSS(ポリスチレンスルホン酸)などの導電性高分子や、AuやAlなどの金属材料を用いることができる。ゲート電極11を形成した後に、必要に応じてオーブンなどで焼成を行う。
【0035】
次に、図6に示すように、ゲート電極11の周囲に、エポキシ樹脂などの樹脂材料を用いて、例えばスクリーン印刷などの方法で土手(堰)として機能する絶縁層16を形成する。絶縁層16を形成した後に、必要に応じてオーブンなどで乾燥させる。なお、本例の絶縁層16は、必ずしも必要ではなく、後の工程や、後の工程において用いられる材料に応じて形成すればよい。続いて、例えばポリイミド系樹脂などの樹脂材料を用いて、例えばインクジェット法などの印刷技術を用いて、ゲート電極11を覆うようにゲート絶縁膜14を形成する。絶縁膜14を形成した後に、必要に応じてオーブンなどで加熱し、乾燥や架橋を行う。
【0036】
次に、図7に示すように、ソース電極12とドレイン電極13を形成する。ソース電極12及びドレイン電極13の形成手法は特に限定されず、インクジェット法又はグラビアオフセット法などの印刷技術や、真空蒸着又はスパッタ法などの形成方法によりソース電極12とドレイン電極13を形成する。ソース電極12とドレイン電極13の材料としては、例えば、AgやCuなどの金属のナノ粒子インクや、PEDOT/PSSなどの導電性高分子や、AuやAlなどの金属材料を用いることができる。ソース電極12とドレイン電極13を形成した後に、必要に応じてオーブンなどで焼成を行う。
【0037】
次に、図8に示すように、有機半導体層15を形成する。有機半導体層15の形成手法は特に限定されず、例えばインクジェット法やフレキソ印刷法などの印刷技術や、真空蒸着などの成膜方法を用いることができる。また、有機半導体材料としては、ペンタセンのほか、アントラセン、テトラセン、ヘキサセン等のアセン類、又はα − オリゴチオフェン類、例えばクォーターチオフェン(4 T) 、セキシチオフェン、オクタチオフェンなどの多環芳香族炭化水素系材料の1種または2種以上を混合して用いることができる。そのほか、ポリ(3−アルキルチオフェン)、ポリ(3−ヘキシルチオフェン)、ポリ(3− オクチルチオフェン)、ポリ(2,5−チエニレンビニレン)、ポリ(パラ−フェニレンビニレン)、ポリ(9,9−ジオクチルフルオレン)、ポリ(9,9−ジオクチルフルオレン−コ−ビス−N,N’−(4−メトキシフェニル)−ビス−N,N’−フェニル−1,4−フェニレンジアミン)、ポリ(9,9−ジオクチルフルオレン−コ−ベンゾチアジアゾール)などの出願時に知られた有機半導体材料を用いることができる。
【0038】
また、有機半導体層15の形成手法も特に限定されず、インクジェット法やフレキソ印刷法などの印刷技術や、真空蒸着法、スプレー法などの手法を用いることができる。
【0039】
本実施形態では、有機半導体層15を用いて圧力センサ1を作製するので、低温プロセスで製造できる。また、プラスチック基板を用いることができるので、フレキシブルかつ軽量であり、壊れにくい素子を提供することができる。また、有機トランジスタ10は、印刷法で形成することができるため、無機半導体層を作製するためのフォトリソグラフィー法と比較して製造工程を大幅に簡略化でき、製造時に使用する材料も大幅に削減することができる。このため、製造時の環境負荷を抑えるとともに製造コストを抑制することができる。
【0040】
次に、図9に示すように、有機半導体層15を覆う絶縁層17を形成する。絶縁層17の材料は特に限定されず、例えばパリレン(パラキシリレン系ポリマー)などの絶縁体材料を用いることができる。また、絶縁層17の形成手法も特に限定されず、例えば蒸着法などの形成方法により成膜することができる。また、同図に示すように、絶縁層17には、製品においてソース電極12と導通する第1パッド電極18の一部を構成するビア18a用のビアホール18a´を形成する。ビアホール18a´の形成手法は特に限定されないが、本例ではCOレーザーにより穿孔してビアホール18a´を形成する。
【0041】
次に、図10に示すように、先の工程において形成したビアホール18a´に、導電性材料を充填して、ソース電極12と導通する第1パッド電極18を形成する。第1パッド電極18の形成に用いられる導電性材料は特に限定されないが、AuやAgなどの金属材料や、これらを含む導電性ペーストを用いることができる。また、第1パッド電極18の形成手法は特に限定されないが、インクジェット法などの印刷技術や、真空蒸着法やスパッタ法などの成膜方法を用いることができる。また、予めビア18aと電極18とを含む第1パッド電極18が形成されている絶縁層17を準備しておき、図8に示す有機半導体層15を形成した半製品にこの絶縁層17をラミネートすることにより、図10に示す半製品を得ることができる。
【0042】
次に、図11に示すように第1パッド電極18と接するように、所望の圧力抵抗(P-R)特性を示す感圧導電シート21を絶縁層17の上にラミネートする。本例では、1枚の感圧導電シート21を積層する例を示すが、必要に応じて複数の感圧導電シート21を積層することができる。
【0043】
最後に、第2パッド電極19が形成されたPETやPENなどの高分子フィルムからなる押圧シート60を、感圧導電シート21の上にラミネートすることで、先に説明した図2に示す本実施形態の圧力センサ1を作製することができる。押圧シート60の感圧導電シート21と接する面には上述したように非接触な部分が形成されている。第2パッド電極19の材料は特に限定されず、例えばAuやCuなどの導電性材料を用いることができる。
【0044】
なお、有機トランジスタ10を作製するための材料や作製手法は、上記に限定されず、出願時に知られた材料及び作製手法を適宜に適用することができる。
【0045】
本明細書及び図面では、説明の便宜から一単位の圧力センサ1を例に説明するが、本実施形態では図2に示す圧力センサ1を複数個準備して、縦横に操作面(押圧面と平行な面)にマトリックス状に配置して面状の圧力センサ1を作製し、本実施形態に係るタッチパネルディスプレイ100を構成することができる。このように面状の圧力センサ1を作製することにより、同じくマトリックス状に配置された各有機トランジスタ10の検出結果に基づいて操作面における押圧力の分布信号を検出することができる。また、所定の押圧力に対するソース電極12とドレイン電極13との間の電流変化を予め取得しておくことにより、圧力センサ1が押圧された場合の押圧力の大きさをも検出することができる。
【0046】
以上のとおり、本発明において本実施形態に係る有機トランジスタ10と感圧導電体20を組み合わせた圧力センサ1によれば、押圧操作がされる押圧シート60と感圧導電体20(感圧導電シート21)との少なくとも一部を非接触とすることにより、押圧力を非接触の部分(凹部62)以外の接触部分(凸部61)に集中させることができるので、感圧導電シート21に含まれるグラファイトの量を増やすことなく、低い圧力領域における感度を向上させることができる。この結果、グラファイトの添加量が増えることに起因する脆化を防止しつつ低い圧力領域における感度を向上させて、耐久性及び信頼性の高い圧力センサ1(タッチパネルディスプレイ100)を提供することができる。
【0047】
<第2実施形態>
以下、本発明の第2実施形態に係る圧力センサ1について図12に基づいて説明する。本実施形態の圧力センサ1は、押圧シート60の凸部61の構成に特徴がある。ここでは、異なる点を中心に説明し、その他の部分については、第1実施形態に関する記載を援用する。図12は、図2に示すA領域に対応する部分の部分拡大図である。本実施形態の押圧シート60の凸部61は、導電性材料で形成されている。特に限定されないが、導電性の凸部61は、導電性ペーストを用いたスクリーン印刷などの印刷技術により形成することができる。本実施形態によれば、第1実施形態と同様の作用効果を奏するとともに、押圧シート60に凹凸形状を形成する必要がないので、製造コストを低減することができる。
【0048】
<第3実施形態>
以下、本発明の第3実施形態に係る圧力センサ1について図13に基づいて説明する。本実施形態の圧力センサ1は、押圧シート60ではなく感圧導電シート21(感圧導電体20)に凹凸を形成した点に特徴がある。ここでは、異なる点を中心に説明し、その他の部分については、第1実施形態に関する記載を援用する。図13は、図2に示すA領域に対応する部分の部分拡大図である。本実施形態では、感圧導電シート21(感圧導電体20)の押圧シート60が積層される一方主面側に、押圧シート60に接する凸部21aと押圧シート60に非接触の凹部21bとを形成する。特に限定されないが、感圧導電シート21(感圧導電体20)の凸部21aと凹部21bとは熱インプリント法などにより形成することができる。本実施形態によれば、第1実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0049】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記の実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【符号の説明】
【0050】
100…タッチパネルディスプレイ
1…圧力センサ
2…絶縁性基材
10…有機トランジスタ
11…ゲート電極
12…ソース電極
13…ドレイン電極
14…ゲート絶縁層
15…有機半導体層
16,17…絶縁層
18,18a…第1パッド電極(18…電極,18a…ビア)
18a´…ビアホール
19…第2パッド電極
20…感圧導電体
21、21A、21B…感圧導電シート
21a…凸部,21b…凹部
30…電圧電源
40…信号処理装置
60…押圧シート
61…凸部
62…凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁性基材と、
前記絶縁性基材の一方主面にマトリクス状に設けられた有機トランジスタと、
前記有機トランジスタのソース電極に所定電圧を印加する電圧電源と、
前記電圧電源と前記ソース電極との間に配置され、前記ソース電極と直列に接続された感圧導電体と、
前記感圧導電体の一方主面側に積層された押圧シートと、を備え、
前記感圧導電体と前記押圧シートとは少なくとも一部が非接触であることを特徴とする圧力センサ。
【請求項2】
前記押圧シートは、前記感圧導電体に積層される面に、前記感圧導電体に接触する凸部と、前記感圧導電体に非接触の凹部とを有することを特徴とする請求項1に記載の圧力センサ。
【請求項3】
前記押圧シートの凸部の頂部には電極が形成されていることを特徴とする請求項2に記載の圧力センサ。
【請求項4】
前記押圧シートの凸部は、導電性材料で形成されていることを特徴とする請求項2に記載の圧力センサ。
【請求項5】
前記感圧導電体は、弾性材料に導電性粒子が添加された感圧導電シートであり、前記押圧シートが積層される一方主面側に、前記押圧シートに接する凸部と前記押圧シートに非接触の凹部とを有することを特徴とする請求項1に記載の圧力センサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−68563(P2013−68563A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−208699(P2011−208699)
【出願日】平成23年9月26日(2011.9.26)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】