圧力検出装置、電子機器、及びロボット
【課題】高い精度で外圧の方向と大きさとを検出可能な圧力検出装置、これを備えた電子機器、及びロボットを提供すること。
【解決手段】圧力検出装置10は、基準点の周りに複数配置されたセンサー電極13とセンサー電極13を含む領域上に設けられた感圧弾性体層14とにより構成された複数の圧力センサー15を有するセンサー基板11と、先端部がセンサー基板11の基準点に重なると共に感圧弾性体層14に当接した状態で外圧により弾性変形する弾性体突起23を有する第2基板21と、を備え、第2基板21は、導電性を有する。
【解決手段】圧力検出装置10は、基準点の周りに複数配置されたセンサー電極13とセンサー電極13を含む領域上に設けられた感圧弾性体層14とにより構成された複数の圧力センサー15を有するセンサー基板11と、先端部がセンサー基板11の基準点に重なると共に感圧弾性体層14に当接した状態で外圧により弾性変形する弾性体突起23を有する第2基板21と、を備え、第2基板21は、導電性を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧力検出装置、これを備えた電子機器、及びロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
上記圧力検出装置として、例えば、特許文献1〜3に記載の検出装置が知られている。この検出装置は、球状あるいは先端部が感圧素子側に向いた半球状の弾性体を感圧素子表面に設け、弾性体の変形および重心位置の変化から、外圧の大きさと方向を検出する構成となっている。このような検出装置は、タッチパネルやロボットの触覚センサー等への応用が検討されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭60−135834号公報
【特許文献2】特開平7−128163号公報
【特許文献3】特開2007−187502号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1の検出装置は、裏面に錐状突起が略均一に配置された受圧シートを用い、その突起の変形量から圧力分布を検出する構成となっている。しかしながら、特許文献1の検出装置では、測定面にかかる圧力の面内方向の力(すべり力)を測定することができない。
上記特許文献2の検出装置は、受圧シートの表面に複数の柱状突起を格子状に配置し、これらの表面突起の周辺部を等分した個所の裏面に円錐状の突起を設けた構成となっている。特許文献2の検出装置では、外圧を3次元の力ベクトルとして検出することは可能であるが、柱状突起の変形の度合いで外圧の検出限界が決まってしまう。
上記特許文献3の検出装置では、弾性体に水平方向の外圧が加えられると、感圧素子に対して弾性体の重心位置がずれることで外圧の方向を検出可能であるが、外圧が解除された後に感圧素子に対する弾性体の重心位置が元に戻らないことがある。弾性体の重心と感圧素子との位置ずれが残留した状態では、水平方向の外圧の方向と大きさを適切に測定することができない。
以上のように、特許文献1〜3の検出装置では、いずれも外圧の方向と大きさを高い精度で検出することができないという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0006】
[適用例1]本適用例に係る圧力検出装置は、加えられた外圧の方向と大きさを検出する圧力検出装置であって、基準点の周りに複数配置されたセンサー電極と前記センサー電極を含む領域上に設けられた感圧弾性体層とにより構成された複数の圧力センサーを有する第1基板と、先端部が前記第1基板の前記基準点に重なると共に前記感圧弾性体層に当接した状態で前記外圧により弾性変形する弾性体突起を有する第2基板と、を備え、前記第2基板は、導電性を有することを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、第2基板が導電性を有することにより、センサー電極に対応するもう一方の電極としても機能させることができる。そのため、外圧の印加に伴う感圧弾性体層の抵抗値の変化に対する検出感度を向上させることができる。したがって、外圧の方向と大きさを精度よく検出することができる。
【0008】
[適用例2]上記適用例に係る圧力検出装置において、前記弾性体突起は、感圧性を有する導電性弾性体により形成されることが好ましい。
【0009】
この構成によれば、第2基板を構成する複数の弾性体突起を感圧導電性弾性体により形成しているので、外圧が印加された場合に感圧弾性体層のみならず、弾性体突起も変形により抵抗値が変化する。感圧弾性体層が垂直方向の圧力に対する検出感度が高いのに対して、弾性体突起は、すべり方向の力に対して感度よく変形することから、水平方向の圧力に対する検出感度を向上させることができる。
【0010】
[適用例3]本適用例に係る他の圧力検出装置は、加えられた外圧の方向と大きさを検出する圧力検出装置であって、基準点の周りに複数配置されたセンサー電極と前記センサー電極を含む領域上に設けられた感圧弾性体層とにより構成された複数の圧力センサーを有する第1基板と、先端部が前記第1基板の前記基準点に重なると共に前記感圧弾性体層に当接した状態で前記外圧により弾性変形する弾性体突起を有する第2基板と、を備え、前記弾性体突起を覆うように前記第2基板上に導電体膜を設けることを特徴とする。
【0011】
この構成によれば、弾性体突起を有する第2基板の形成材料として導電性及び弾性を有する材料を用いる場合に比べて材料選択の幅が拡がるので、弾性体突起を所望の形状や硬さに形成しやすくなる。
【0012】
[適用例4]上記適用例に係る圧力検出装置において、前記外圧によって前記弾性体突起が弾性変形することにより複数の前記圧力センサーで検出された圧力値のうち任意に組み合わされた各圧力センサーで検出された圧力値の差分を演算し、その差分に基づいて外圧が加えられた方向と外圧の大きさを演算する演算装置を備える。
【0013】
[適用例5]上記適用例に係る圧力検出装置において、前記複数の圧力センサーは、前記基準点に対して点対称に配置されていることが好ましい。
【0014】
この構成によれば、基準点と各圧力センサーとの間の距離が互いに等しくなるので、前記弾性体突起の重心位置の変化量と各圧力センサーで検出される圧力値との関係が互いに等しくなる。例えば、複数の圧力センサーが基準点から互いに異なる距離に配置される場合、弾性体突起の重心位置の変化量が同じであっても、各圧力センサーで検出される圧力値は互いに異なることとなる。このため、検出値の差分を演算する際に各圧力センサーの配置位置に応じた補正係数が必要となる。しかしながら、この構成によれば、弾性体突起の重心位置の変化量と各圧力センサーが検出する圧力値との関係が互いに等しくなるので、前記補正係数は不用となる。したがって、各圧力センサーで検出された圧力値から外圧の方向と大きさを演算することが容易となり、外圧を効率よく検出することができる。
【0015】
[適用例6]上記適用例に係る圧力検出装置において、前記複数の圧力センサーは、互いに直交する2方向にマトリックス状に配置されていることが好ましい。
【0016】
この構成によれば、各圧力センサーの圧力値のうち任意に組み合わされた各圧力センサーの圧力値の差分から外圧の方向と大きさを演算することが容易となる。
【0017】
[適用例7]上記適用例に係る圧力検出装置において、前記複数の圧力センサーは、互いに直交する2方向に少なくとも4行4列に配置されていることが好ましい。
【0018】
この構成によれば、配置される圧力センサーの数が多くなる。このため、多数の圧力センサーで検出される圧力値に基づいて各圧力センサーの検出結果を積算して外圧の作用する方向を決めることができる。したがって、外圧の方向を高い精度で検出することができる。
【0019】
[適用例8]上記適用例に係る圧力検出装置において、前記弾性体突起は、前記第2基板に複数形成されており、互いに離間して配置されていることが好ましい。
【0020】
この構成によれば、弾性体突起が弾性変形したときの第2基板の面内に平行な方向の変形量を許容することができる。例えば、一方の弾性体突起が変形したときに他方の弾性体突起に変形の影響を及ぼすことを抑制することができる。このため、複数の弾性体突起が互いに接触して配置されている場合に比べて、外圧を正確に各圧力センサーに伝達することができる。したがって、外圧の方向と大きさを高い精度で検出することができる。
【0021】
[適用例9]本適用例に係る電子機器は、上記に記載の圧力検出装置を備えることを特徴とする。
【0022】
この構成によれば、上記に記載の圧力検出装置を備えているので、外圧の方向と大きさを高い精度で検出することが可能な電子機器を提供することができる。
【0023】
[適用例10]本適用例に係るロボットは、上記に記載の圧力検出装置を備えることを特徴とする。
【0024】
この構成によれば、上記に記載の圧力検出装置を備えているので、外圧の方向と大きさを高い精度で検出することが可能なロボットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】第1実施形態の圧力検出装置の構成を示す分解斜視図。
【図2】(a)〜(c)は圧力の変化を示す模式断面図。
【図3】(a)〜(c)は、図2に対応した圧力の変化と位置との関係を示す模式平面図。
【図4】センシング領域の座標系を示す図。
【図5】圧力センサーによる垂直方向の圧力分布を示す図。
【図6】圧力センサーによるすべり方向の計算例を示す図。
【図7】圧力検出装置を適用した携帯電話機の概略構成を示す模式図。
【図8】圧力検出装置を適用した携帯情報端末の概略構成を示す模式図。
【図9】圧力検出装置を適用したロボットハンドの概略構成を示す模式図。
【図10】第2実施形態の圧力検出装置の概略構成を示す分解斜視図。
【図11】(a)〜(c)は圧力の変化を示す模式断面図。
【図12】第3実施形態の圧力検出装置の概略構成を示す分解斜視図。
【図13】(a)〜(c)は圧力の変化を示す模式断面図。
【図14】(a)〜(c)は、図13に対応した圧力の変化と位置との関係を示す模式平面図。
【図15】センシング領域の座標系を示す図。
【図16】(a)〜(c)は変形例の圧力検出装置の構成と圧力の変化を示す模式断面図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明を具体化した実施形態について図面に従って説明する。なお、使用する図面は、説明する部分が認識可能な状態となるように、適宜拡大または縮小して表示している。
【0027】
また、本実施形態において、第1基板の「表面」とは、第1基板における複数の圧力センサー形成面を指す。第2基板の「表面」とは、第2基板における弾性体突起形成面の反対面を指し、つまりは、外圧を受ける面を指す。
【0028】
以下の説明においては、図1中に示されたXYZ直交座標系を設定し、このXYZ直交座標系を参照しつつ各部材について説明する。XYZ直交座標系は、X軸及びY軸がセンサー基板本体12に対して平行な方向に設定され、Z軸はX軸とY軸にそれぞれ直交する方向、すなわちセンサー基板11に対する法線方向に設定されている。
【0029】
(第1実施形態)
<圧力検出装置の構成>
図1は、圧力検出装置10の構成を示す分解斜視図である。以下、圧力検出装置10の構成を、図1を参照しながら説明する。図1において、符号Pは基準点、符号Sは1つの弾性体突起23に対応して配置されたセンサー電極13を有する単位検出領域を示している。なお、「基準点」とは、すべり力が作用していない場合に弾性体突起23の中心(重心)が平面視で位置するポイントである。
【0030】
図1に示すように、圧力検出装置10は、基準点Pに加えられた外圧の方向と大きさとを検出する圧力センサー方式のタッチパッドであり、例えば、ノートパソコン等の電子機器においてマウスの代わりのポインティングデバイスとして用いられるものである。
【0031】
具体的には、圧力検出装置10は、第1基板としてのセンサー基板11と、センサー基板11と対向するように配置された第2基板21と、圧力の方向と大きさを演算する演算装置(図示せず)と、を備えている。
【0032】
具体的には、センサー基板11は、センサー基板本体12上における基準点Pの周りに複数のセンサー電極13が設けられており、センサー電極13を含むセンサー基板本体12の全体に感圧弾性体層14が設けられている。圧力検出装置10を構成する圧力センサー15は、外圧によって感圧弾性体層14が弾性変形することにより、例えば、一対のセンサー電極13間の抵抗値変化を検出し、それを圧力値に変換して出力するものである。
【0033】
第2基板21は、第2基板本体22上における基準点Pに重なる位置に重心が位置する弾性体突起23が設けられている。弾性体突起23は、その先端部がセンサー基板11(感圧弾性体層14)に当接した状態で弾性変形する。また、第2基板本体22及び弾性体突起23は、導電性を有する。
【0034】
演算装置は、複数の圧力センサー15で検出された圧力値のうち任意に組み合わされた各圧力センサー15で検出された圧力値の差分を演算し、その差分に基づいて外圧が加えられた方向と大きさとを演算する。
【0035】
より具体的には、センサー基板11は、例えば、ガラス、石英及びプラスチック等の材料で構成された矩形板状のセンサー基板本体12と、センサー基板本体12にマトリックス状に配置された複数のセンサー電極13と、センサー基板本体12上の全体に設けられた感圧弾性体層14と、を具備して構成されている。センサー基板本体12の大きさ(平面視のサイズ)は、例えば、縦56mm×横56mm程度になっている。
【0036】
複数のセンサー電極13は、基準点Pに対して点対称に配置されている。例えば、複数のセンサー電極13は、互いに直交する2方向(X方向及びY方向)にマトリックス状に配置されている。これにより、一対のセンサー電極13により構成される圧力センサー15との間の距離が互いに等しくなる。これにより、感圧弾性体層14の変形と各圧力センサー15で検出される圧力値との関係が互いに等しくなる。よって、各圧力センサー15の圧力値のうち任意に組み合わされた各圧力センサー15で検出された圧力値の差分を演算することが容易となる。なお、圧力値の差分の演算方法については後述する。
【0037】
感圧弾性体層14とは、圧力が印加された場合に形状や抵抗率、誘電率等の特性が変化し、この変化を電気的に抽出することで圧力を電気信号に変える層であり、かつ圧力の印加を停止した場合には元の状態に戻るものを示す。本実施形態では、圧力センサー15が、感圧弾性体層14の形状変化に伴う抵抗値変化を検出する場合について説明する。感圧弾性体層14の一例としては、所定の厚みのゴムシートに導電粒子を均一に分散させたものを用いることができる。
【0038】
導電粒子が分散されたゴム系の物質を用いることにより、圧力を加えていない場合にはほぼ絶縁体となり、圧力を加えた場合には低抵抗値となる。そのため、消費電力の増加を抑えて圧力を測定することが可能となる。さらに、この場合、抵抗値と圧力との関係をルックアップテーブル等に格納しておくことで、抵抗値からの圧力の算出を容易に行うことが可能となる。
【0039】
圧力検出装置10は、外圧によって感圧弾性体層14が弾性変形することにより、隣り合う2つのセンサー電極13と感圧弾性体層14により構成され、外圧を抵抗値の変化で検出する圧力センサー15を備える。そして各圧力センサー15で検出された圧力値の差分を演算し、その差分に基づいて外圧が加えられた方向と大きさを演算する演算装置(図示せず)を備えている。なお、必ずしも隣り合うセンサー電極13の対を用いる必要はなく、例えば、間隔を空けたセンサー電極13を対にして用いるようにしても良い。
【0040】
第2基板21は、矩形板状の第2基板本体22と、第2基板本体22に設けられた複数の弾性体突起23と、を具備して構成されている。
【0041】
第2基板本体22は、外圧を直接受ける部分である。第2基板本体22は、例えば、導電性ゴム、導電性樹脂及びカーボンブラック等の導電性及び弾性を有する材料で構成することができる。本実施形態では、第2基板本体22及び複数の弾性体突起23の形成材料として導電性及び弾性を有する材料を用い、第2基板本体22及び複数の弾性体突起23を金型で一体形成している。複数の弾性体突起23を第2基板本体22とは別の材料で形成し、接着剤等を用いて第2基板本体22に接着する形で第2基板21を形成してもよい。
【0042】
複数の弾性体突起23は、第2基板本体22上においてX方向及びY方向にマトリックス状に配置されている。弾性体突起23の先端部は、例えば、球面の錘状となっており、センサー基板11(感圧弾性体層14)に当接している。弾性体突起23の重心は、初期的に基準点Pと重なる位置に配置されている。また、複数の弾性体突起23は、互いに離間して配置されている。このため、弾性体突起23が弾性変形したときの第2基板本体22の面内に平行な方向の変形量を許容することができる。
【0043】
例えば、一方の弾性体突起23が変形したときに他方の弾性体突起23に変形の影響を及ぼすことを抑制することができる。このため、複数の弾性体突起23が互いに接触して配置されている場合に比べて、外圧を正確に各圧力センサー15に伝達することができる。したがって、外圧の方向と大きさを高い精度で検出することができる。また、各圧力センサー15の圧力値のうち任意に組み合わされた各圧力センサー15の圧力値の差分から外圧の方向と大きさを演算することが容易となる。
【0044】
弾性体突起23のサイズは任意に設定することができる。ここでは、弾性体突起23の基部の径(弾性体突起23がセンサー基板11に接する部分の直径)は1.8mm程度になっている。一方、弾性体突起23の高さ(弾性体突起23のZ方向の距離)は2mm程度になっている。さらに、隣り合う弾性体突起23の離間間隔は1mm程度になっている。
【0045】
なお、弾性体突起23の硬さは、上記した感圧弾性体層14の硬さより硬い材料が用いられる。具体的には、弾性体突起23のデュロメータ硬さ(タイプA、ISO 7619準拠のデュロメータによる硬さ測定値)は、例えば、30〜60程度になっている。感圧弾性体層14の硬さは、例えば、20〜25程度である。
【0046】
このように、弾性体突起23と感圧弾性体層14との硬さの関係を調整することにより、第2基板21に圧力を加えた際、感圧弾性体層14に弾性体突起23を押し込むことが可能となり、弾性体突起23が押し込まれた位置からその周囲にずれることを抑えることができる。具体的には、第2基板21に水平方向の外圧が加えられた場合、弾性体突起23の重心(圧力が加えられた点)が初期の段階と比べてずれてしまうことを抑えることができる。これにより、外圧の検出感度を向上させることができる。
【0047】
また、第2基板21を構成する複数の弾性体突起23が導電性を有することにより、センサー基板11におけるセンサー電極13に対応するもう一方の電極としても機能することができる。この場合、第2基板21に外圧が加えられると、弾性体突起23が弾性変形し、該弾性体突起23に当接した感圧弾性体層14が変形する。そして、感圧弾性体層14の変形に伴う抵抗値の変化をセンサー電極13及びもう一方の電極として機能する第2基板21により検出するので、抵抗値の変化に対する検出感度が向上する。
【0048】
また、本実施形態は、第1基板としてのセンサー基板11と第2基板21との間に誘電体層を挟み、外圧の印加に伴う誘電体層の静電容量値の変化を検出する場合にも対応できる。
【0049】
複数の圧力センサー15は、単位検出領域S当たり縦2行、横2列に計4つ配置されている。4つの圧力センサー15の中心(単位検出領域Sの中心)が基準点Pとなっている。例えば、単位検出領域Sの大きさ(平面視のサイズ)は、縦2.8mm×横2.8mm程度になっている。また、4つの圧力センサー15の各面積がほぼ等しくなっている。
【0050】
図2及び図3は、外圧の大きさと方向を検出する方法の説明図である。図2(a)〜(c)は、圧力の変化を示す模式断面図である。図3(a)〜(c)は、図2(a)〜(c)に対応した、圧力の変化と位置との関係を示す模式平面図である。以下、外圧の大きさと方向を検出する方法を、図2及び図3を参照しながら説明する。なお、図3(a)〜(c)において、符号Gは弾性体突起23の重心(圧力中心)を示している。
【0051】
図2(a)及び図3(a)は、第2基板21の表面21aに外圧が付加される前の状態(外圧の作用がないとき)を示している。図2(a)に示すように、第2基板21の表面21aに外圧が付加される前においては、弾性体突起23及び感圧弾性体層14は変形しない。このときの各圧力センサー15の圧力値は図示略のメモリーに記憶されている。メモリーに記憶された各圧力センサー15の圧力値を基準として外圧の作用する方向や大きさが求められる。
【0052】
図3(a)は、外圧が付加されない状態における、複数の圧力センサー15や基準点Pに対する弾性体突起23の基部の相対的な位置30、センサー基板11と弾性体突起23とが接する領域40を示している。
【0053】
図2(b)及び図3(b)は、第2基板21の表面21aに垂直方向(すべり力がない状態)の外圧が付加された状態を示している。図2(b)に示すように、第2基板21を介して感圧弾性体層14の表面に垂直方向の外圧が付加されたとき、感圧弾性体層14は、−Z方向に圧縮変形する。そして、第2基板21がZ方向に撓み、センサー基板11と第2基板21との間の距離が外圧の作用がないときに比べて小さくなる。このときの圧力センサー15の圧力値は、外圧の作用がないときに比べて大きくなる(言い換えれば、検出された抵抗値が小さくなる)。また、その変化量は各圧力センサー15ともほぼ同じ値となる。
【0054】
図2(c)及び図3(c)は、第2基板21の表面21aに斜め方向(すべり力がある状態)の外圧が付加された状態を示している。図2(c)に示すように、第2基板21の表面21aに斜め方向の外圧が付加されたとき、感圧弾性体層14は、斜めに傾いて圧縮変形する。これにより、第2基板21がZ方向に撓み、センサー基板11と第2基板21との間の距離が外圧の作用がないときに比べて小さくなる。
【0055】
このとき、図3(c)に示すように、弾性体突起23の重心Gは基準点Pから+X方向及び+Y方向にずれる。この場合、弾性体突起23の先端部と4つの各センサー電極13との重なる面積はそれぞれ異なる。具体的には、弾性体突起23の先端部と4つの各センサー電極13との重なる面積は、4つのセンサー電極13のうち−X方向及び−Y方向に配置されたセンサー電極13と重なる面積よりも、+X方向及び+Y方向に配置されたセンサー電極13と重なる面積のほうが大きくなる。
【0056】
弾性体突起23は、斜め方向の外圧により変形に偏りが生じる。すなわち、弾性体突起23の重心Gは基準点Pからずれてすべり方向(X方向及びY方向)に移動する。すると、各圧力センサー15で異なる値の圧力値が検出される。そして、後述する差分の演算方法に基づいて加えられた外圧の方向が求められる。
【0057】
第2基板21の表面21aに斜め方向の外圧が付加された場合には、弾性体突起23を介して感圧弾性体層14が大きく変形する。そして、弾性体突起23がセンサー基板11に接した状態で、弾性体突起23の基部の相対的な位置30がずれる。図3(c)は、圧力センサー15や基準点Pに対する弾性体突起23の基部の相対的な位置30が外力の方向にずれることを示している。
【0058】
図4は、センシング領域の座標系を示す図である。図5は、圧力センサーによる垂直方向の圧力分布を示す図である。図6は、圧力センサーによるすべり方向の計算例を示す図である。
【0059】
図4に示すように、複数の圧力センサーS1(15)〜S4(15)は、単位検出領域S当たり一対のセンサー電極13に挟まれて縦2行、横2列に計4つ配置されている。ここで、各圧力センサーS1〜S4が検出する圧力値(検出値)をそれぞれPS1,PS2,PS3,PS4とすると、外力のX方向成分Fx(外力の面内方向成分のうちX方向に作用する分力の割合)は以下の式(1)で表される。
【0060】
【数1】
【0061】
また、外力のY方向成分Fy(外力の面内方向成分のうちY方向に作用する分力の割合)は以下の式(2)で表される。
【0062】
【数2】
【0063】
また、外力のZ方向成分Fz(外力の垂直方向成分、Z軸は図4の図中省略)は以下の式(3)で表される。
【0064】
【数3】
【0065】
本実施形態では、外圧によって感圧弾性体層14が弾性変形することにより4つの圧力センサーS1〜S4で検出された圧力値の差分を演算し、その差分に基づいて外圧が加えられた方向が演算される。
【0066】
式(1)に示すように、外圧のX方向成分Fxにおいては、4つの圧力センサーS1〜S4で検出された圧力値のうち+X方向に配置された圧力センサーS2、及び圧力センサーS4で検出された値が組み合わされるとともに、−X方向に配置された圧力センサーS1、及び圧力センサーS3で検出された値が組み合わされる。このように、+X方向に配置された圧力センサーS2、及び圧力センサーS4の組み合わせによる圧力値と−X方向に配置された圧力センサーS1及び、圧力センサーS3の組み合わせによる圧力値との差分に基づいて外圧のX方向成分が求められる。
【0067】
式(2)に示すように、外圧のY方向成分Fyにおいては、4つの圧力センサーS1〜S4で検出された圧力値のうち+Y方向に配置された圧力センサーS1、及び圧力センサーS2で検出された値が組み合わされるとともに、−Y方向に配置された圧力センサーS3、及び圧力センサーS4で検出された値が組み合わされる。このように、+Y方向に配置された圧力センサーS1、及び圧力センサーS2の組み合わせによる圧力値と−Y方向に配置された圧力センサーS3、及び圧力センサーS4の組み合わせによる圧力値との差分に基づいて外圧のY方向成分が求められる。
【0068】
式(3)に示すように、外圧のZ方向成分Fzにおいては、4つの圧力センサーS1〜S4の圧力値を足し合わせた合力で求められる。
【0069】
次に、図5に示すように、タッチパッドの検出面の中央部より左上寄りの位置を指で斜めに押した場合を考える。このとき、外圧の垂直方向の圧力は、外圧が作用した部分の中心部が最も大きくなっている(圧力値を示す圧力センサーS1〜S4の出力電圧90〜120mV程度)。また、外圧の垂直方向の圧力は、中心部に次いでその周辺部(圧力センサーS1〜S4の出力電圧60〜90mV程度)、最外周部(圧力センサーS1〜S4の出力電圧30〜60mV程度)の順に小さくなっている。
【0070】
また、指で押されていない領域は、圧力センサーS1〜S4の出力電圧が0〜30mV程度となっている。なお、タッチパッドには単位検出領域S(圧力センサーが集合した領域)がマトリックス状(例えば縦15行×横15列に計225個)に配置されているとする。
【0071】
次に、図6に示すように、タッチパッドの検出面の中央部より左上寄りの位置を指で斜めに押した場合の外圧の面内方向成分(すべり方向)の算出方法を考える。このとき、指の押圧力(外力)は、縦15行×横15列に配置されたものうち縦3行×横3列に配置された部分に作用しているとする。ここで、外圧の垂直方向の圧力は、図5と同様に外圧が作用した部分の中心部がもっとも大きくなっている(110mV)。
【0072】
縦3行×横3列に配置された各単位検出領域Sは、それぞれ4つの圧力センサーS1〜S4を有しており、各圧力センサーS1〜S4で検出された圧力値のうち任意に組み合わされた各圧力センサーで検出された圧力値の差分を演算し、その差分に基づいて外圧が加えられた方向が演算される。
【0073】
つまり、各単位検出領域Sでは、上述した式(1)及び式(2)に基づいて外圧のX方向成分Fx及び外圧のY方向成分Fyが算出される。ここでは、+X方向を基準として左回りに約123°の方向に外圧が作用していることが分かる。なお、外圧の作用する方向の算出にあっては、9つの算出結果の平均値で求める方法、あるいは9つの算出結果のうちの最大値(例えば所定のしきい値よりも大きい検出値)により求める方法を用いることができる。
【0074】
(電子機器)
図7は、上記実施形態の圧力検出装置10を適用した携帯電話機1000の概略構成を示す模式図である。電子機器の一例としての携帯電話機1000は、複数の操作ボタン1003及びコントロールパッド1002、並びに表示部としての液晶パネル1001を備えている。コントロールパッド1002を操作することによって、液晶パネル1001に表示される画面がスクロールされる。液晶パネル1001にはメニューボタン(図示略)が表示される。例えば、メニューボタンにカーソル(図示略)を合わせてコントロールパッド1002を強く押すことで、電話帳が表示されたり、携帯電話機1000の電話番号が表示されたりする。
【0075】
図8は、上記実施形態の圧力検出装置10を適用した携帯情報端末(PDA:Personal Digital Assistants)2000の概略構成を示す模式図である。電子機器の一例としての携帯情報端末2000は、複数の操作ボタン2002及びコントロールパッド2003、並びに表示部としての液晶パネル2001を備えている。コントロールパッド2003を操作すると、液晶パネル2001に表示されたメニューを操作できる。例えば、メニュー(図示略)にカーソル(図示略)を合わせてコントロールパッド2003を強く押すことで、住所録が表示されたり、スケジュール帳が表示されたりする。
【0076】
このような電子機器によれば、上述した圧力検出装置10をコントロールパッド1002,2003に備えているので、外圧の方向と大きさとを高い精度で検出することが可能な電子機器を提供することができる。
【0077】
なお、電子機器としては、この他にも、例えばパーソナルコンピューター、ビデオカメラのモニター、カーナビゲーション装置、ページャー、電子手帳、電卓、ワードプロセッサー、ワークステーション、テレビ電話、POS端末、デジタルスチールカメラ、タッチパネルを備えた機器等が挙げられる。これらの電子機器に対しても、本発明に係る圧力検出装置10を適用させることができる。
【0078】
(ロボット)
図9は、上記実施形態の圧力検出装置10を適用したロボットハンド3000の概略構成を示す模式図である。図9(a)に示すように、ロボットの一例としてのロボットハンド3000は、本体部3003及び一対のアーム部3002、並びに上記圧力検出装置10を適用した把持部3001を備えている。例えば、リモコン等の制御装置によりアーム部3002に駆動信号を送信すると、一対のアーム部3002が開閉動作する。
【0079】
図9(b)に示すように、ロボットハンド3000でコップ等の対象物3010を把持する場合を考える。このとき、対象物3010に作用する力は把持部3001で圧力として検出される。ロボットハンド3000は、把持部3001として上述した圧力検出装置10を備えているので、対象物3010の表面(接触面)に垂直な方向の力と併せて重力Mgですべる方向の力(すべり力の成分)を検出することが可能である。例えば、柔らかい物体を変形させたりすべりやすい物体を落としたりしないよう、対象物3010の質感に応じてできる。
【0080】
このようなロボットによれば、上述した圧力検出装置10を備えているので、外圧の方向を高い精度で検出することが可能なロボットハンド3000を提供することができる。
【0081】
以上詳述したように、本実施形態の圧力検出装置10、電子機器、及びロボットによれば、以下に示す効果が得られる。
【0082】
(1)本実施形態の圧力検出装置10によれば、第2基板21を構成する第2基板本体22と複数の弾性体突起23とが導電性を有することにより、センサー基板11におけるセンサー電極13に対応するもう一方の電極としても機能させることができる。そのため、外圧の印加に伴う感圧弾性体層14の抵抗値の変化に対する検出感度を向上させることができる。したがって、外圧の方向と大きさを精度よく検出することが可能な圧力検出装置10を提供できる。
【0083】
(2)本実施形態の圧力検出装置10によれば、感圧弾性体層14の硬さより弾性体突起23の硬さの方が硬いので、第2基板21に外圧を加えた際、感圧弾性体層14に弾性体突起23を押し込むことが可能となると共に、外圧が解除されたときの弾性体突起23の復元性を確保することができる。つまり、弾性体突起23が押し込まれた位置からその周囲にずれることを抑えることができるので、外圧の方向や大きさの検出精度および検出感度を向上させることができる。
【0084】
(3)本実施形態の圧力検出装置10によれば、基準点Pと各圧力センサー15との間の距離が互いに等しくなるので、弾性体突起23の重心Gの位置の変化量と各圧力センサー15で検出される圧力値との関係が互いに等しくなる。例えば、複数の圧力センサー15が基準点Pから互いに異なる距離に配置される場合、弾性体突起23の重心Gの位置の変化量が同じであっても、各圧力センサー15で検出される圧力値は互いに異なることとなる。このため、検出値の差分を演算する際に各圧力センサー15の配置位置に応じた補正係数が必要となる。しかしながら、この構成によれば、弾性体突起23の重心G位置の変化量と各圧力センサー15が検出する圧力値との関係が互いに等しくなるので、補正係数は不用となる。したがって、各圧力センサー15で検出された圧力値から外圧の方向と大きさを演算することが容易となり、外圧を効率よく検出することができる。
【0085】
(4)本実施形態の電子機器によれば、上記に記載の圧力検出装置10を備えているので、外圧の方向と大きさを高い精度で検出することが可能な電子機器を提供することができる。
【0086】
(5)本実施形態のロボットによれば、上記に記載の圧力検出装置10を備えているので、外圧の方向と大きさを高い精度で検出することが可能なロボットを提供することができる。
【0087】
(第2実施形態)
<圧力検出装置の構成>
図10は、第2実施形態の圧力検出装置の概略構成を示す分解斜視図である。以下、第2実施形態の圧力検出装置の構成を、図10を参照しながら説明する。
【0088】
第2実施形態の圧力検出装置110は、複数の弾性体突起を感圧性を有する導電性弾性体(感圧導電性弾性体)により形成する点で第1実施形態と異なっている。以下、第1実施形態と同じ構成部材には同一符号を付し、ここではそれらの説明を省略又は簡略化する。
【0089】
図10に示すように、第2実施形態の圧力検出装置110は、第1実施形態と同様に、第1基板としてのセンサー基板11と、センサー基板11と対向するように配置された第2基板121と、圧力の方向と大きさを演算する演算装置(図示せず)と、を備えている。センサー基板11は、センサー基板本体12上に複数のセンサー電極13がマトリックス状に設けられており、センサー電極13を含むセンサー基板本体12上に感圧弾性体層14が設けられている。
【0090】
第2実施形態の圧力検出装置110の特徴として、第2基板121を構成する複数の弾性体突起123を感圧導電性弾性体により形成している。この場合の感圧導電性弾性体とは、電気的特性の測定に必要な抵抗値以下の抵抗値を備え、圧力が印加された場合に形状が変形し、かつ圧力の印加を停止した場合には元の形状に戻るものを示す。一例としては、炭素等の導電性を示す物質を、柔軟性を備えたポリオレフィン系の樹脂中に分散させたものを挙げることができる。また、導電性ゴム、シリコンゴムなどを用いるようにしてもよい。
【0091】
また、圧力センサー15は、センサー電極13と、感圧弾性体層14とによって構成される。そして、第2基板121に外圧が加えられると、弾性体突起123および感圧弾性体層14が弾性変形し、それぞれの抵抗値が変化する。その抵抗値変化をセンサー電極13により検出し、上記の演算装置により演算を行って外圧の大きさを求める。第1実施形態と同様に、第2基板121を構成する第2基板本体22は導電性を有しているので、センサー基板11におけるセンサー電極13に対応するもう一方の電極としても機能させることができる。
【0092】
また、第1実施形態と同様に、弾性体突起123の硬さは、上記した感圧弾性体層14の硬さより硬い材料が用いられる。具体的には、弾性体突起123のデュロメータ硬さ(タイプA、ISO 7619準拠のデュロメータによる硬さ測定値)は、例えば、30〜60程度になっている。感圧弾性体層14の硬さは、例えば、20〜25程度である。
【0093】
このように、弾性体突起123と感圧弾性体層14との硬さの関係を調整することにより、第2基板121に圧力を加えた際、感圧弾性体層14に弾性体突起123を押し込むことが可能となり、弾性体突起123が押し込まれた位置からその周囲にずれることを抑えることができる。具体的には、第2基板121に水平方向の外圧が加えられた場合、弾性体突起123の重心(圧力が加えられた点)が初期の段階と比べてずれてしまうことを抑えることができる。これにより、外圧の検出感度を向上させることができる。
【0094】
図11(a)〜(c)は、圧力の変化を示す模式断面図である。以下、圧力の変化を、図11を参照しながら説明する。なお、圧力の変化と位置との関係を示す図は、図3と同様である。
【0095】
図11(a)は、第2基板121の表面121aに外圧が付加される前の状態(外圧の作用がないとき)を示している。図11(a)に示すように、第2基板121の表面121aに外圧が付加される前においては、弾性体突起123及び感圧弾性体層14は変形しない。このときの各圧力センサー15の圧力値は図示略のメモリーに記憶されている。メモリーに記憶された各圧力センサー15の圧力値を基準として外圧の作用する方向や大きさが求められる。
【0096】
図11(b)は、第2基板121の表面121aに垂直方向(すべり力がない状態)の外圧が付加された状態を示している。図11(b)に示すように、第2基板121を介して感圧弾性体層14に垂直方向の外圧が付加されたとき、感圧弾性体層14は、−Z方向に圧縮変形する。そして、第2基板121がZ方向に撓み、センサー基板11と第2基板121との間の距離が外圧の作用がないときに比べて小さくなる。このときの圧力センサー15の圧力値は、外圧の作用がないときに比べて大きくなる。また、その変化量は各圧力センサー15ともほぼ同じ値となる。
【0097】
図11(c)は、第2基板121の表面121aに斜め方向(すべり力がある状態)の外圧が付加された状態を示している。図11(c)に示すように、第2基板121の表面121aに斜め方向の外圧が付加されたとき、感圧弾性体層14は、斜めに傾いて圧縮変形する。これにより、第2基板121がZ方向に撓み、センサー基板11と第2基板121との間の距離が外圧の作用がないときに比べて小さくなる。
【0098】
このとき、弾性体突起123の重心Gは基準点Pから+X方向及び+Y方向にずれる(図3(c)参照)。この場合、弾性体突起123の先端部と4つの各センサー電極13との重なる面積はそれぞれ異なる。具体的には、弾性体突起123の先端部と4つの各センサー電極13との重なる面積は、4つのセンサー電極13のうち−X方向及び−Y方向に配置されたセンサー電極13と重なる面積よりも、+X方向及び+Y方向に配置されたセンサー電極13と重なる面積のほうが大きくなる。
【0099】
弾性体突起123は、斜め方向の外圧により変形に偏りが生じる。すなわち、弾性体突起123の重心Gは基準点Pからずれてすべり方向(X方向及びY方向)に移動する(図3(c)参照)。すると、各圧力センサー15で異なる値の圧力値が検出される。そして、上述した差分の演算方法に基づいて加えられた外圧の方向が求められる。
【0100】
第2基板121の表面121aに斜め方向の外圧が付加された場合には、弾性体突起123を介して感圧弾性体層14が大きく変形する。そして、弾性体突起123がセンサー基板11に接した状態で、弾性体突起123の基部の相対的な位置30がずれる。
【0101】
以上詳述したように、第2実施形態の圧力検出装置110によれば、上記した第1実施形態の(1)〜(5)の効果に加えて、以下に示す効果が得られる。
【0102】
(6)第2実施形態の圧力検出装置110によれば、第2基板121を構成する複数の弾性体突起123を感圧導電性弾性体により形成しているので、外圧が印加された場合に感圧弾性体層14のみならず、弾性体突起123も変形により抵抗値が変化する。感圧弾性体層14が垂直方向の圧力に対する検出感度が高いのに対して、弾性体突起123は、すべり方向の力に対して感度よく変形することから、水平方向の圧力に対する検出感度を向上させることができる。
【0103】
(第3実施形態)
<圧力検出装置の構成>
図12は、第3実施形態の圧力検出装置の概略構成を示す分解斜視図である。以下、第3実施形態の圧力検出装置の構成を、図12を参照しながら説明する。
【0104】
第3実施形態の圧力検出装置210は、複数の圧力センサー215が互いに直交する2方向に少なくとも縦4行、横4列に配置されている部分が、上述の第1実施形態で説明した圧力検出装置10と異なっている。以下、第1実施形態と同じ構成部材には同一符号を付し、ここではそれらの説明を省略又は簡略化する。
【0105】
第1実施形態及び第2実施形態では、圧力を分解して検出する原理を示すべく、圧力センサー15を2行2列に配置し、圧力を分解する計算式を示したが、実際には多数の圧力センサーにより圧力を求めることとなる。ここでは、i個(iは4以上の整数)の圧力センサー215を用いた場合に拡張した計算式を示す。
【0106】
図12において、符号Pは基準点、符号Sは1つの弾性体突起23に対応して配置された複数のセンサー電極213が設けられる単位検出領域Siを示している。なお、図12においては、便宜上、複数のセンサー電極213が単位検出領域Si当たり縦4行、横4列に配置されているが、実際には図13及び図14に示すように複数のセンサー電極213が単位検出領域Si当たり縦4行、横4列以上に配置されていてもよいものとする。
【0107】
図12に示すように、センサー基板本体12上には、互いに直交する2方向(X方向及びY方向)に少なくとも縦4行、横4列に計16個、センサー電極213が配置されている。これら16個のセンサー電極213の中心(単位検出領域Siの中心)が基準点Pとなっている。
【0108】
図13(a)〜(c)は、図2(a)〜(c)に対応した、第3実施形態の圧力センサーによる圧力の変化を示す断面図である。図14(a)〜(c)は、図13(a)〜(c)に対応した、第3実施形態の圧力センサーによる圧力の変化と位置との関係を示す平面図である。以下、外圧の大きさと方向を検出する方法を、図13及び図14を参照しながら説明する。
【0109】
図13(a)及び図14(a)は、第2基板21の表面21aに外圧が付加される前の状態(外圧の作用がないとき)を示している。図13(a)に示すように、第2基板21の表面21aに外圧が付加される前においては、弾性体突起23及び感圧弾性体層14は変形しない。このときの各圧力センサー215の圧力値は図示略のメモリーに記憶されている。メモリーに記憶された各圧力センサー215の圧力値を基準として外圧の作用する方向や大きさが求められる。
【0110】
図14(a)は、外圧が付加されない状態における、複数の圧力センサー215や基準点Pに対する弾性体突起23の基部の相対的な位置30、センサー基板211と弾性体突起23とが接する領域40を示している。
【0111】
図13(b)及び図14(b)は、第2基板21の表面21aに垂直方向(すべり力がない状態)の外圧が付加された状態を示している。図13(b)に示すように、第2基板21を介して感圧弾性体層14の表面に垂直方向の外圧が付加されたとき、感圧弾性体層14は、−Z方向に圧縮変形する。そして、第2基板21がZ方向に撓み、センサー基板211と第2基板21との間の距離が外圧の作用がないときに比べて小さくなる。このときの圧力センサー215の圧力値は、外圧の作用がないときに比べて大きくなる。また、その変化量は各圧力センサー215ともほぼ同じ値となる。
【0112】
図13(c)及び図14(c)は、第2基板21の表面21aに斜め方向(すべり力がある状態)の外圧が付加された状態を示している。図13(c)に示すように、第2基板21の表面21aに斜め方向の外圧が付加されたとき、感圧弾性体層14は、斜めに傾いて圧縮変形する。これにより、第2基板21がZ方向に撓み、センサー基板211と第2基板21との間の距離が外圧の作用がないときに比べて小さくなる。
【0113】
このとき、図14(c)に示すように、弾性体突起23の重心Gは基準点Pから+X方向及び+Y方向にずれる。この場合、弾性体突起23の先端部と4つの各センサー電極213との重なる面積はそれぞれ異なる。具体的には、弾性体突起23の先端部と4つの各センサー電極213との重なる面積は、4つのセンサー電極213のうち−X方向及び−Y方向に配置されたセンサー電極213と重なる面積よりも、+X方向及び+Y方向に配置されたセンサー電極213と重なる面積のほうが大きくなる。
【0114】
弾性体突起23は、斜め方向の外圧により変形に偏りが生じる。すなわち、弾性体突起23の重心Gは基準点Pからずれてすべり方向(X方向及びY方向)に移動する。すると、各圧力センサー215で異なる値の圧力値が検出される。そして、後述する差分の演算方法に基づいて加えられた外圧の方向が求められる。
【0115】
第2基板21の表面に斜め方向の外圧が付加された場合には、弾性体突起23を介して感圧弾性体層14が大きく変形する。そして、弾性体突起23がセンサー基板211に接した状態で、弾性体突起23の基部の相対的な位置30がずれる。図14(c)は、圧力センサー215や基準点Pに対する弾性体突起23の基部の相対的な位置30が外力の方向にずれることを示している。
【0116】
図15は、図4に対応した、第3実施形態のセンシング領域の座標系を示す図である。なお、図15において、複数の圧力センサーSi(100個)がマトリックス状に配置されており、このうちの25個の圧力センサーSiがそれぞれ−X方向及び+Y方向に区画された領域、+X方向及び+Y方向に区画された領域、−X方向及び−Y方向に区画された領域、+X方向及び−Y方向に区画された領域に配置されている。また、図15においては、便宜上、100個の圧力センサーSiを図示しているが、圧力センサーSiの配置数はこれに限らず任意に変更することができる。
【0117】
図15に示すように、複数の圧力センサーSiは、単位検出領域S当たり縦10行、横10列に計100個配置されている。ここで、各圧力センサーSiが検出する圧力値(検出値)をそれぞれPi(i=1〜100)、基準点Pと各圧力センサーSiとの間の距離の面内方向成分をri(i=1〜100)とする。
【0118】
また、面内方向成分のうちX方向成分をrxi(i=1〜100)、面内方向成分のうちY方向成分をryi(i=1〜100)とすると、外力のX方向成分Fx(外力の面内方向成分のうちX方向に作用する分力の割合)は以下の式(4)で表される。
【0119】
【数4】
【0120】
また、外力のY方向成分Fy(外力の面内方向成分のうちY方向に作用する分力の割合)は以下の式(5)で表される。
【0121】
【数5】
【0122】
また、外力のZ方向成分Fz(外力の垂直方向成分)は以下の式(6)で表される。
【0123】
【数6】
【0124】
本実施形態では、外圧によって変化する100個の圧力センサーSiの圧力値のうち任意に組み合わされた各圧力センサーSiの圧力値の差分を演算し、その差分に基づいて外圧が加えられた方向が演算される。
【0125】
式(4)に示すように、外圧のX方向成分Fxにおいては、100個の圧力センサーSiで検出された圧力値のうち相対的に+X方向に配置された圧力センサーSiで検出された値が組み合わされるとともに、相対的に−X方向に配置された圧力センサーSiで検出された値が組み合わされる。このように、相対的に+X方向に配置された圧力センサーSiの組み合わせによる圧力値と相対的に−X方向に配置された圧力センサーSiの組み合わせによる圧力値との差分に基づいて外圧のX方向成分が求められる。
【0126】
式(5)に示すように、外圧のY方向成分Fyにおいては、100個の圧力センサーSiの圧力値のうち相対的に+Y方向に配置された圧力センサーSiで検出された値が組み合わされるとともに、相対的に−Y方向に配置された圧力センサーSiで検出された値が組み合わされる。このように、相対的に+Y方向に配置された圧力センサーSiの組み合わせによる圧力値と相対的に−Y方向に配置された圧力センサーSiの組み合わせによる圧力値との差分に基づいて外圧のY方向成分が求められる。
【0127】
式(6)に示すように、外圧のZ方向成分Fzにおいては、100個の圧力センサーSiで検出された圧力値を足し合わせた合力で求められる。
【0128】
なお、外圧の作用する方向の算出にあっては、100個の圧力センサーSiで検出された圧力値の算出結果の平均値で求める方法、あるいは100個の圧力センサーSiで検出された圧力値の算出結果のうちの最大値(例えば、所定のしきい値よりも大きい検出値)により求める方法を用いることができる。
【0129】
本実施形態の圧力検出装置210によれば、複数の圧力センサー215が互いに直交する2方向に少なくとも縦4行、横4列に配置されているので、配置される圧力センサー215の数が多くなる。このため、多数の圧力センサー215で検出された圧力値に基づいて各圧力センサー215の検出結果を積算して外圧の作用する方向と大きさとを求めることができる。したがって、外圧の方向を高い精度で検出することができる。
【0130】
本実施形態では、外圧によって弾性体突起23を介して、感圧弾性体層14が弾性変形することにより変化するi個の圧力センサー215の圧力値の差分を演算し、その差分に基づいて外圧が加えられた方向が演算される。
【0131】
式(4)に示すように、外圧のX方向成分Fxにおいては、i個の圧力センサーSiで測定された圧力値のうちX方向に配置された圧力センサーSiで測定された値を処理して外圧のX方向成分が求められる。
【0132】
式(5)に示すように、外圧のY方向成分Fyにおいては、i個の圧力センサーSiで測定された圧力値のうちY方向に配置された圧力センサーSiで測定された値を処理して外圧のY方向成分が求められる。
【0133】
式(6)に示すように、外圧のZ方向成分Fzにおいては、i個の圧力センサーSiで検出された圧力値を足し合わせた合力で求められる。
【0134】
以上詳述したように、第3実施形態の圧力検出装置210によれば、上記した第1実施形態及び第2実施形態の(1)〜(6)の効果に加えて、以下に示す効果が得られる。
【0135】
(7)第3実施形態の圧力検出装置210によれば、配置される圧力センサー215の数が多くなる。このため、多数の圧力センサー215で検出される圧力値に基づいて各圧力センサー215の検出結果を積算して外圧の作用する方向を決めることができる。したがって、外圧の方向を高い精度で検出することができる。
【0136】
なお、実施形態は上記に限定されず、以下のような形態で実施することもできる。
【0137】
(変形例1)
例えば、図16(a)〜(c)に示すように、第2基板本体22及び弾性体突起323を覆うように、導電体膜としての導電性膜324を成膜して第2基板321を構成してもよい。この場合、第2基板本体22及び弾性体突起323の形成材料として絶縁性ゴムや発砲ウレタン等の樹脂材料を用い、第2基板本体22及び弾性体突起323を金型で一体形成し、その後、複数の弾性体突起323の露出する部位全体を覆って第2基板本体22の上に例えばアルミニウム(Al)等の金属材料を形成してもよい。これにより、第2基板本体22及び弾性体突起323の形成材料として導電性及び弾性を有する材料を用いる場合に比べて材料選択の幅が拡がるので、弾性体突起323を所望の形状や硬さに形成しやすくなる。図16(a)〜(c)に示すように、変形例1の圧力検出装置310によれば、外圧の方向と大きさを精度よく検出することができる。
【0138】
(変形例2)
上記したように、感圧弾性体層14として導電粒子が分散されたゴムを用いて電気抵抗値変化を検出していたが、電気的特性の変化から圧力を検出するものであればよく、例えば、誘電体材料を用いて容量値変化を検出するようにしてもよい。また、インダクタンスの変化を検出するようにしてもよい。なお、強い電磁波が存在する場合、ノイズによる影響を受ける場合があるので、状況に応じていずれかの方法を選択して使用することが好ましい。
【0139】
(変形例3)
上記したように、弾性体突起23の形状は、半球状であることに限定されず、例えば、他の形状の錐状や柱状でもよい。
【符号の説明】
【0140】
10,110,210…圧力検出装置、11,211…第1基板としてのセンサー基板、12…センサー基板本体、13,213…センサー電極、14…感圧弾性体層、15,215(S1,S2,S3,S4)…圧力センサー、21…第2基板、21a…表面、22…第2基板本体、23…弾性体突起、30…位置、40…領域、1000…携帯電話機、1001,2001…液晶パネル、1002,2003…コントロールパッド、1003,2002…操作ボタン、2000…携帯情報端末、3000…ロボットハンド、3001…把持部、3002…アーム部、3003…本体部、3010…対象物。
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧力検出装置、これを備えた電子機器、及びロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
上記圧力検出装置として、例えば、特許文献1〜3に記載の検出装置が知られている。この検出装置は、球状あるいは先端部が感圧素子側に向いた半球状の弾性体を感圧素子表面に設け、弾性体の変形および重心位置の変化から、外圧の大きさと方向を検出する構成となっている。このような検出装置は、タッチパネルやロボットの触覚センサー等への応用が検討されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭60−135834号公報
【特許文献2】特開平7−128163号公報
【特許文献3】特開2007−187502号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1の検出装置は、裏面に錐状突起が略均一に配置された受圧シートを用い、その突起の変形量から圧力分布を検出する構成となっている。しかしながら、特許文献1の検出装置では、測定面にかかる圧力の面内方向の力(すべり力)を測定することができない。
上記特許文献2の検出装置は、受圧シートの表面に複数の柱状突起を格子状に配置し、これらの表面突起の周辺部を等分した個所の裏面に円錐状の突起を設けた構成となっている。特許文献2の検出装置では、外圧を3次元の力ベクトルとして検出することは可能であるが、柱状突起の変形の度合いで外圧の検出限界が決まってしまう。
上記特許文献3の検出装置では、弾性体に水平方向の外圧が加えられると、感圧素子に対して弾性体の重心位置がずれることで外圧の方向を検出可能であるが、外圧が解除された後に感圧素子に対する弾性体の重心位置が元に戻らないことがある。弾性体の重心と感圧素子との位置ずれが残留した状態では、水平方向の外圧の方向と大きさを適切に測定することができない。
以上のように、特許文献1〜3の検出装置では、いずれも外圧の方向と大きさを高い精度で検出することができないという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0006】
[適用例1]本適用例に係る圧力検出装置は、加えられた外圧の方向と大きさを検出する圧力検出装置であって、基準点の周りに複数配置されたセンサー電極と前記センサー電極を含む領域上に設けられた感圧弾性体層とにより構成された複数の圧力センサーを有する第1基板と、先端部が前記第1基板の前記基準点に重なると共に前記感圧弾性体層に当接した状態で前記外圧により弾性変形する弾性体突起を有する第2基板と、を備え、前記第2基板は、導電性を有することを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、第2基板が導電性を有することにより、センサー電極に対応するもう一方の電極としても機能させることができる。そのため、外圧の印加に伴う感圧弾性体層の抵抗値の変化に対する検出感度を向上させることができる。したがって、外圧の方向と大きさを精度よく検出することができる。
【0008】
[適用例2]上記適用例に係る圧力検出装置において、前記弾性体突起は、感圧性を有する導電性弾性体により形成されることが好ましい。
【0009】
この構成によれば、第2基板を構成する複数の弾性体突起を感圧導電性弾性体により形成しているので、外圧が印加された場合に感圧弾性体層のみならず、弾性体突起も変形により抵抗値が変化する。感圧弾性体層が垂直方向の圧力に対する検出感度が高いのに対して、弾性体突起は、すべり方向の力に対して感度よく変形することから、水平方向の圧力に対する検出感度を向上させることができる。
【0010】
[適用例3]本適用例に係る他の圧力検出装置は、加えられた外圧の方向と大きさを検出する圧力検出装置であって、基準点の周りに複数配置されたセンサー電極と前記センサー電極を含む領域上に設けられた感圧弾性体層とにより構成された複数の圧力センサーを有する第1基板と、先端部が前記第1基板の前記基準点に重なると共に前記感圧弾性体層に当接した状態で前記外圧により弾性変形する弾性体突起を有する第2基板と、を備え、前記弾性体突起を覆うように前記第2基板上に導電体膜を設けることを特徴とする。
【0011】
この構成によれば、弾性体突起を有する第2基板の形成材料として導電性及び弾性を有する材料を用いる場合に比べて材料選択の幅が拡がるので、弾性体突起を所望の形状や硬さに形成しやすくなる。
【0012】
[適用例4]上記適用例に係る圧力検出装置において、前記外圧によって前記弾性体突起が弾性変形することにより複数の前記圧力センサーで検出された圧力値のうち任意に組み合わされた各圧力センサーで検出された圧力値の差分を演算し、その差分に基づいて外圧が加えられた方向と外圧の大きさを演算する演算装置を備える。
【0013】
[適用例5]上記適用例に係る圧力検出装置において、前記複数の圧力センサーは、前記基準点に対して点対称に配置されていることが好ましい。
【0014】
この構成によれば、基準点と各圧力センサーとの間の距離が互いに等しくなるので、前記弾性体突起の重心位置の変化量と各圧力センサーで検出される圧力値との関係が互いに等しくなる。例えば、複数の圧力センサーが基準点から互いに異なる距離に配置される場合、弾性体突起の重心位置の変化量が同じであっても、各圧力センサーで検出される圧力値は互いに異なることとなる。このため、検出値の差分を演算する際に各圧力センサーの配置位置に応じた補正係数が必要となる。しかしながら、この構成によれば、弾性体突起の重心位置の変化量と各圧力センサーが検出する圧力値との関係が互いに等しくなるので、前記補正係数は不用となる。したがって、各圧力センサーで検出された圧力値から外圧の方向と大きさを演算することが容易となり、外圧を効率よく検出することができる。
【0015】
[適用例6]上記適用例に係る圧力検出装置において、前記複数の圧力センサーは、互いに直交する2方向にマトリックス状に配置されていることが好ましい。
【0016】
この構成によれば、各圧力センサーの圧力値のうち任意に組み合わされた各圧力センサーの圧力値の差分から外圧の方向と大きさを演算することが容易となる。
【0017】
[適用例7]上記適用例に係る圧力検出装置において、前記複数の圧力センサーは、互いに直交する2方向に少なくとも4行4列に配置されていることが好ましい。
【0018】
この構成によれば、配置される圧力センサーの数が多くなる。このため、多数の圧力センサーで検出される圧力値に基づいて各圧力センサーの検出結果を積算して外圧の作用する方向を決めることができる。したがって、外圧の方向を高い精度で検出することができる。
【0019】
[適用例8]上記適用例に係る圧力検出装置において、前記弾性体突起は、前記第2基板に複数形成されており、互いに離間して配置されていることが好ましい。
【0020】
この構成によれば、弾性体突起が弾性変形したときの第2基板の面内に平行な方向の変形量を許容することができる。例えば、一方の弾性体突起が変形したときに他方の弾性体突起に変形の影響を及ぼすことを抑制することができる。このため、複数の弾性体突起が互いに接触して配置されている場合に比べて、外圧を正確に各圧力センサーに伝達することができる。したがって、外圧の方向と大きさを高い精度で検出することができる。
【0021】
[適用例9]本適用例に係る電子機器は、上記に記載の圧力検出装置を備えることを特徴とする。
【0022】
この構成によれば、上記に記載の圧力検出装置を備えているので、外圧の方向と大きさを高い精度で検出することが可能な電子機器を提供することができる。
【0023】
[適用例10]本適用例に係るロボットは、上記に記載の圧力検出装置を備えることを特徴とする。
【0024】
この構成によれば、上記に記載の圧力検出装置を備えているので、外圧の方向と大きさを高い精度で検出することが可能なロボットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】第1実施形態の圧力検出装置の構成を示す分解斜視図。
【図2】(a)〜(c)は圧力の変化を示す模式断面図。
【図3】(a)〜(c)は、図2に対応した圧力の変化と位置との関係を示す模式平面図。
【図4】センシング領域の座標系を示す図。
【図5】圧力センサーによる垂直方向の圧力分布を示す図。
【図6】圧力センサーによるすべり方向の計算例を示す図。
【図7】圧力検出装置を適用した携帯電話機の概略構成を示す模式図。
【図8】圧力検出装置を適用した携帯情報端末の概略構成を示す模式図。
【図9】圧力検出装置を適用したロボットハンドの概略構成を示す模式図。
【図10】第2実施形態の圧力検出装置の概略構成を示す分解斜視図。
【図11】(a)〜(c)は圧力の変化を示す模式断面図。
【図12】第3実施形態の圧力検出装置の概略構成を示す分解斜視図。
【図13】(a)〜(c)は圧力の変化を示す模式断面図。
【図14】(a)〜(c)は、図13に対応した圧力の変化と位置との関係を示す模式平面図。
【図15】センシング領域の座標系を示す図。
【図16】(a)〜(c)は変形例の圧力検出装置の構成と圧力の変化を示す模式断面図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明を具体化した実施形態について図面に従って説明する。なお、使用する図面は、説明する部分が認識可能な状態となるように、適宜拡大または縮小して表示している。
【0027】
また、本実施形態において、第1基板の「表面」とは、第1基板における複数の圧力センサー形成面を指す。第2基板の「表面」とは、第2基板における弾性体突起形成面の反対面を指し、つまりは、外圧を受ける面を指す。
【0028】
以下の説明においては、図1中に示されたXYZ直交座標系を設定し、このXYZ直交座標系を参照しつつ各部材について説明する。XYZ直交座標系は、X軸及びY軸がセンサー基板本体12に対して平行な方向に設定され、Z軸はX軸とY軸にそれぞれ直交する方向、すなわちセンサー基板11に対する法線方向に設定されている。
【0029】
(第1実施形態)
<圧力検出装置の構成>
図1は、圧力検出装置10の構成を示す分解斜視図である。以下、圧力検出装置10の構成を、図1を参照しながら説明する。図1において、符号Pは基準点、符号Sは1つの弾性体突起23に対応して配置されたセンサー電極13を有する単位検出領域を示している。なお、「基準点」とは、すべり力が作用していない場合に弾性体突起23の中心(重心)が平面視で位置するポイントである。
【0030】
図1に示すように、圧力検出装置10は、基準点Pに加えられた外圧の方向と大きさとを検出する圧力センサー方式のタッチパッドであり、例えば、ノートパソコン等の電子機器においてマウスの代わりのポインティングデバイスとして用いられるものである。
【0031】
具体的には、圧力検出装置10は、第1基板としてのセンサー基板11と、センサー基板11と対向するように配置された第2基板21と、圧力の方向と大きさを演算する演算装置(図示せず)と、を備えている。
【0032】
具体的には、センサー基板11は、センサー基板本体12上における基準点Pの周りに複数のセンサー電極13が設けられており、センサー電極13を含むセンサー基板本体12の全体に感圧弾性体層14が設けられている。圧力検出装置10を構成する圧力センサー15は、外圧によって感圧弾性体層14が弾性変形することにより、例えば、一対のセンサー電極13間の抵抗値変化を検出し、それを圧力値に変換して出力するものである。
【0033】
第2基板21は、第2基板本体22上における基準点Pに重なる位置に重心が位置する弾性体突起23が設けられている。弾性体突起23は、その先端部がセンサー基板11(感圧弾性体層14)に当接した状態で弾性変形する。また、第2基板本体22及び弾性体突起23は、導電性を有する。
【0034】
演算装置は、複数の圧力センサー15で検出された圧力値のうち任意に組み合わされた各圧力センサー15で検出された圧力値の差分を演算し、その差分に基づいて外圧が加えられた方向と大きさとを演算する。
【0035】
より具体的には、センサー基板11は、例えば、ガラス、石英及びプラスチック等の材料で構成された矩形板状のセンサー基板本体12と、センサー基板本体12にマトリックス状に配置された複数のセンサー電極13と、センサー基板本体12上の全体に設けられた感圧弾性体層14と、を具備して構成されている。センサー基板本体12の大きさ(平面視のサイズ)は、例えば、縦56mm×横56mm程度になっている。
【0036】
複数のセンサー電極13は、基準点Pに対して点対称に配置されている。例えば、複数のセンサー電極13は、互いに直交する2方向(X方向及びY方向)にマトリックス状に配置されている。これにより、一対のセンサー電極13により構成される圧力センサー15との間の距離が互いに等しくなる。これにより、感圧弾性体層14の変形と各圧力センサー15で検出される圧力値との関係が互いに等しくなる。よって、各圧力センサー15の圧力値のうち任意に組み合わされた各圧力センサー15で検出された圧力値の差分を演算することが容易となる。なお、圧力値の差分の演算方法については後述する。
【0037】
感圧弾性体層14とは、圧力が印加された場合に形状や抵抗率、誘電率等の特性が変化し、この変化を電気的に抽出することで圧力を電気信号に変える層であり、かつ圧力の印加を停止した場合には元の状態に戻るものを示す。本実施形態では、圧力センサー15が、感圧弾性体層14の形状変化に伴う抵抗値変化を検出する場合について説明する。感圧弾性体層14の一例としては、所定の厚みのゴムシートに導電粒子を均一に分散させたものを用いることができる。
【0038】
導電粒子が分散されたゴム系の物質を用いることにより、圧力を加えていない場合にはほぼ絶縁体となり、圧力を加えた場合には低抵抗値となる。そのため、消費電力の増加を抑えて圧力を測定することが可能となる。さらに、この場合、抵抗値と圧力との関係をルックアップテーブル等に格納しておくことで、抵抗値からの圧力の算出を容易に行うことが可能となる。
【0039】
圧力検出装置10は、外圧によって感圧弾性体層14が弾性変形することにより、隣り合う2つのセンサー電極13と感圧弾性体層14により構成され、外圧を抵抗値の変化で検出する圧力センサー15を備える。そして各圧力センサー15で検出された圧力値の差分を演算し、その差分に基づいて外圧が加えられた方向と大きさを演算する演算装置(図示せず)を備えている。なお、必ずしも隣り合うセンサー電極13の対を用いる必要はなく、例えば、間隔を空けたセンサー電極13を対にして用いるようにしても良い。
【0040】
第2基板21は、矩形板状の第2基板本体22と、第2基板本体22に設けられた複数の弾性体突起23と、を具備して構成されている。
【0041】
第2基板本体22は、外圧を直接受ける部分である。第2基板本体22は、例えば、導電性ゴム、導電性樹脂及びカーボンブラック等の導電性及び弾性を有する材料で構成することができる。本実施形態では、第2基板本体22及び複数の弾性体突起23の形成材料として導電性及び弾性を有する材料を用い、第2基板本体22及び複数の弾性体突起23を金型で一体形成している。複数の弾性体突起23を第2基板本体22とは別の材料で形成し、接着剤等を用いて第2基板本体22に接着する形で第2基板21を形成してもよい。
【0042】
複数の弾性体突起23は、第2基板本体22上においてX方向及びY方向にマトリックス状に配置されている。弾性体突起23の先端部は、例えば、球面の錘状となっており、センサー基板11(感圧弾性体層14)に当接している。弾性体突起23の重心は、初期的に基準点Pと重なる位置に配置されている。また、複数の弾性体突起23は、互いに離間して配置されている。このため、弾性体突起23が弾性変形したときの第2基板本体22の面内に平行な方向の変形量を許容することができる。
【0043】
例えば、一方の弾性体突起23が変形したときに他方の弾性体突起23に変形の影響を及ぼすことを抑制することができる。このため、複数の弾性体突起23が互いに接触して配置されている場合に比べて、外圧を正確に各圧力センサー15に伝達することができる。したがって、外圧の方向と大きさを高い精度で検出することができる。また、各圧力センサー15の圧力値のうち任意に組み合わされた各圧力センサー15の圧力値の差分から外圧の方向と大きさを演算することが容易となる。
【0044】
弾性体突起23のサイズは任意に設定することができる。ここでは、弾性体突起23の基部の径(弾性体突起23がセンサー基板11に接する部分の直径)は1.8mm程度になっている。一方、弾性体突起23の高さ(弾性体突起23のZ方向の距離)は2mm程度になっている。さらに、隣り合う弾性体突起23の離間間隔は1mm程度になっている。
【0045】
なお、弾性体突起23の硬さは、上記した感圧弾性体層14の硬さより硬い材料が用いられる。具体的には、弾性体突起23のデュロメータ硬さ(タイプA、ISO 7619準拠のデュロメータによる硬さ測定値)は、例えば、30〜60程度になっている。感圧弾性体層14の硬さは、例えば、20〜25程度である。
【0046】
このように、弾性体突起23と感圧弾性体層14との硬さの関係を調整することにより、第2基板21に圧力を加えた際、感圧弾性体層14に弾性体突起23を押し込むことが可能となり、弾性体突起23が押し込まれた位置からその周囲にずれることを抑えることができる。具体的には、第2基板21に水平方向の外圧が加えられた場合、弾性体突起23の重心(圧力が加えられた点)が初期の段階と比べてずれてしまうことを抑えることができる。これにより、外圧の検出感度を向上させることができる。
【0047】
また、第2基板21を構成する複数の弾性体突起23が導電性を有することにより、センサー基板11におけるセンサー電極13に対応するもう一方の電極としても機能することができる。この場合、第2基板21に外圧が加えられると、弾性体突起23が弾性変形し、該弾性体突起23に当接した感圧弾性体層14が変形する。そして、感圧弾性体層14の変形に伴う抵抗値の変化をセンサー電極13及びもう一方の電極として機能する第2基板21により検出するので、抵抗値の変化に対する検出感度が向上する。
【0048】
また、本実施形態は、第1基板としてのセンサー基板11と第2基板21との間に誘電体層を挟み、外圧の印加に伴う誘電体層の静電容量値の変化を検出する場合にも対応できる。
【0049】
複数の圧力センサー15は、単位検出領域S当たり縦2行、横2列に計4つ配置されている。4つの圧力センサー15の中心(単位検出領域Sの中心)が基準点Pとなっている。例えば、単位検出領域Sの大きさ(平面視のサイズ)は、縦2.8mm×横2.8mm程度になっている。また、4つの圧力センサー15の各面積がほぼ等しくなっている。
【0050】
図2及び図3は、外圧の大きさと方向を検出する方法の説明図である。図2(a)〜(c)は、圧力の変化を示す模式断面図である。図3(a)〜(c)は、図2(a)〜(c)に対応した、圧力の変化と位置との関係を示す模式平面図である。以下、外圧の大きさと方向を検出する方法を、図2及び図3を参照しながら説明する。なお、図3(a)〜(c)において、符号Gは弾性体突起23の重心(圧力中心)を示している。
【0051】
図2(a)及び図3(a)は、第2基板21の表面21aに外圧が付加される前の状態(外圧の作用がないとき)を示している。図2(a)に示すように、第2基板21の表面21aに外圧が付加される前においては、弾性体突起23及び感圧弾性体層14は変形しない。このときの各圧力センサー15の圧力値は図示略のメモリーに記憶されている。メモリーに記憶された各圧力センサー15の圧力値を基準として外圧の作用する方向や大きさが求められる。
【0052】
図3(a)は、外圧が付加されない状態における、複数の圧力センサー15や基準点Pに対する弾性体突起23の基部の相対的な位置30、センサー基板11と弾性体突起23とが接する領域40を示している。
【0053】
図2(b)及び図3(b)は、第2基板21の表面21aに垂直方向(すべり力がない状態)の外圧が付加された状態を示している。図2(b)に示すように、第2基板21を介して感圧弾性体層14の表面に垂直方向の外圧が付加されたとき、感圧弾性体層14は、−Z方向に圧縮変形する。そして、第2基板21がZ方向に撓み、センサー基板11と第2基板21との間の距離が外圧の作用がないときに比べて小さくなる。このときの圧力センサー15の圧力値は、外圧の作用がないときに比べて大きくなる(言い換えれば、検出された抵抗値が小さくなる)。また、その変化量は各圧力センサー15ともほぼ同じ値となる。
【0054】
図2(c)及び図3(c)は、第2基板21の表面21aに斜め方向(すべり力がある状態)の外圧が付加された状態を示している。図2(c)に示すように、第2基板21の表面21aに斜め方向の外圧が付加されたとき、感圧弾性体層14は、斜めに傾いて圧縮変形する。これにより、第2基板21がZ方向に撓み、センサー基板11と第2基板21との間の距離が外圧の作用がないときに比べて小さくなる。
【0055】
このとき、図3(c)に示すように、弾性体突起23の重心Gは基準点Pから+X方向及び+Y方向にずれる。この場合、弾性体突起23の先端部と4つの各センサー電極13との重なる面積はそれぞれ異なる。具体的には、弾性体突起23の先端部と4つの各センサー電極13との重なる面積は、4つのセンサー電極13のうち−X方向及び−Y方向に配置されたセンサー電極13と重なる面積よりも、+X方向及び+Y方向に配置されたセンサー電極13と重なる面積のほうが大きくなる。
【0056】
弾性体突起23は、斜め方向の外圧により変形に偏りが生じる。すなわち、弾性体突起23の重心Gは基準点Pからずれてすべり方向(X方向及びY方向)に移動する。すると、各圧力センサー15で異なる値の圧力値が検出される。そして、後述する差分の演算方法に基づいて加えられた外圧の方向が求められる。
【0057】
第2基板21の表面21aに斜め方向の外圧が付加された場合には、弾性体突起23を介して感圧弾性体層14が大きく変形する。そして、弾性体突起23がセンサー基板11に接した状態で、弾性体突起23の基部の相対的な位置30がずれる。図3(c)は、圧力センサー15や基準点Pに対する弾性体突起23の基部の相対的な位置30が外力の方向にずれることを示している。
【0058】
図4は、センシング領域の座標系を示す図である。図5は、圧力センサーによる垂直方向の圧力分布を示す図である。図6は、圧力センサーによるすべり方向の計算例を示す図である。
【0059】
図4に示すように、複数の圧力センサーS1(15)〜S4(15)は、単位検出領域S当たり一対のセンサー電極13に挟まれて縦2行、横2列に計4つ配置されている。ここで、各圧力センサーS1〜S4が検出する圧力値(検出値)をそれぞれPS1,PS2,PS3,PS4とすると、外力のX方向成分Fx(外力の面内方向成分のうちX方向に作用する分力の割合)は以下の式(1)で表される。
【0060】
【数1】
【0061】
また、外力のY方向成分Fy(外力の面内方向成分のうちY方向に作用する分力の割合)は以下の式(2)で表される。
【0062】
【数2】
【0063】
また、外力のZ方向成分Fz(外力の垂直方向成分、Z軸は図4の図中省略)は以下の式(3)で表される。
【0064】
【数3】
【0065】
本実施形態では、外圧によって感圧弾性体層14が弾性変形することにより4つの圧力センサーS1〜S4で検出された圧力値の差分を演算し、その差分に基づいて外圧が加えられた方向が演算される。
【0066】
式(1)に示すように、外圧のX方向成分Fxにおいては、4つの圧力センサーS1〜S4で検出された圧力値のうち+X方向に配置された圧力センサーS2、及び圧力センサーS4で検出された値が組み合わされるとともに、−X方向に配置された圧力センサーS1、及び圧力センサーS3で検出された値が組み合わされる。このように、+X方向に配置された圧力センサーS2、及び圧力センサーS4の組み合わせによる圧力値と−X方向に配置された圧力センサーS1及び、圧力センサーS3の組み合わせによる圧力値との差分に基づいて外圧のX方向成分が求められる。
【0067】
式(2)に示すように、外圧のY方向成分Fyにおいては、4つの圧力センサーS1〜S4で検出された圧力値のうち+Y方向に配置された圧力センサーS1、及び圧力センサーS2で検出された値が組み合わされるとともに、−Y方向に配置された圧力センサーS3、及び圧力センサーS4で検出された値が組み合わされる。このように、+Y方向に配置された圧力センサーS1、及び圧力センサーS2の組み合わせによる圧力値と−Y方向に配置された圧力センサーS3、及び圧力センサーS4の組み合わせによる圧力値との差分に基づいて外圧のY方向成分が求められる。
【0068】
式(3)に示すように、外圧のZ方向成分Fzにおいては、4つの圧力センサーS1〜S4の圧力値を足し合わせた合力で求められる。
【0069】
次に、図5に示すように、タッチパッドの検出面の中央部より左上寄りの位置を指で斜めに押した場合を考える。このとき、外圧の垂直方向の圧力は、外圧が作用した部分の中心部が最も大きくなっている(圧力値を示す圧力センサーS1〜S4の出力電圧90〜120mV程度)。また、外圧の垂直方向の圧力は、中心部に次いでその周辺部(圧力センサーS1〜S4の出力電圧60〜90mV程度)、最外周部(圧力センサーS1〜S4の出力電圧30〜60mV程度)の順に小さくなっている。
【0070】
また、指で押されていない領域は、圧力センサーS1〜S4の出力電圧が0〜30mV程度となっている。なお、タッチパッドには単位検出領域S(圧力センサーが集合した領域)がマトリックス状(例えば縦15行×横15列に計225個)に配置されているとする。
【0071】
次に、図6に示すように、タッチパッドの検出面の中央部より左上寄りの位置を指で斜めに押した場合の外圧の面内方向成分(すべり方向)の算出方法を考える。このとき、指の押圧力(外力)は、縦15行×横15列に配置されたものうち縦3行×横3列に配置された部分に作用しているとする。ここで、外圧の垂直方向の圧力は、図5と同様に外圧が作用した部分の中心部がもっとも大きくなっている(110mV)。
【0072】
縦3行×横3列に配置された各単位検出領域Sは、それぞれ4つの圧力センサーS1〜S4を有しており、各圧力センサーS1〜S4で検出された圧力値のうち任意に組み合わされた各圧力センサーで検出された圧力値の差分を演算し、その差分に基づいて外圧が加えられた方向が演算される。
【0073】
つまり、各単位検出領域Sでは、上述した式(1)及び式(2)に基づいて外圧のX方向成分Fx及び外圧のY方向成分Fyが算出される。ここでは、+X方向を基準として左回りに約123°の方向に外圧が作用していることが分かる。なお、外圧の作用する方向の算出にあっては、9つの算出結果の平均値で求める方法、あるいは9つの算出結果のうちの最大値(例えば所定のしきい値よりも大きい検出値)により求める方法を用いることができる。
【0074】
(電子機器)
図7は、上記実施形態の圧力検出装置10を適用した携帯電話機1000の概略構成を示す模式図である。電子機器の一例としての携帯電話機1000は、複数の操作ボタン1003及びコントロールパッド1002、並びに表示部としての液晶パネル1001を備えている。コントロールパッド1002を操作することによって、液晶パネル1001に表示される画面がスクロールされる。液晶パネル1001にはメニューボタン(図示略)が表示される。例えば、メニューボタンにカーソル(図示略)を合わせてコントロールパッド1002を強く押すことで、電話帳が表示されたり、携帯電話機1000の電話番号が表示されたりする。
【0075】
図8は、上記実施形態の圧力検出装置10を適用した携帯情報端末(PDA:Personal Digital Assistants)2000の概略構成を示す模式図である。電子機器の一例としての携帯情報端末2000は、複数の操作ボタン2002及びコントロールパッド2003、並びに表示部としての液晶パネル2001を備えている。コントロールパッド2003を操作すると、液晶パネル2001に表示されたメニューを操作できる。例えば、メニュー(図示略)にカーソル(図示略)を合わせてコントロールパッド2003を強く押すことで、住所録が表示されたり、スケジュール帳が表示されたりする。
【0076】
このような電子機器によれば、上述した圧力検出装置10をコントロールパッド1002,2003に備えているので、外圧の方向と大きさとを高い精度で検出することが可能な電子機器を提供することができる。
【0077】
なお、電子機器としては、この他にも、例えばパーソナルコンピューター、ビデオカメラのモニター、カーナビゲーション装置、ページャー、電子手帳、電卓、ワードプロセッサー、ワークステーション、テレビ電話、POS端末、デジタルスチールカメラ、タッチパネルを備えた機器等が挙げられる。これらの電子機器に対しても、本発明に係る圧力検出装置10を適用させることができる。
【0078】
(ロボット)
図9は、上記実施形態の圧力検出装置10を適用したロボットハンド3000の概略構成を示す模式図である。図9(a)に示すように、ロボットの一例としてのロボットハンド3000は、本体部3003及び一対のアーム部3002、並びに上記圧力検出装置10を適用した把持部3001を備えている。例えば、リモコン等の制御装置によりアーム部3002に駆動信号を送信すると、一対のアーム部3002が開閉動作する。
【0079】
図9(b)に示すように、ロボットハンド3000でコップ等の対象物3010を把持する場合を考える。このとき、対象物3010に作用する力は把持部3001で圧力として検出される。ロボットハンド3000は、把持部3001として上述した圧力検出装置10を備えているので、対象物3010の表面(接触面)に垂直な方向の力と併せて重力Mgですべる方向の力(すべり力の成分)を検出することが可能である。例えば、柔らかい物体を変形させたりすべりやすい物体を落としたりしないよう、対象物3010の質感に応じてできる。
【0080】
このようなロボットによれば、上述した圧力検出装置10を備えているので、外圧の方向を高い精度で検出することが可能なロボットハンド3000を提供することができる。
【0081】
以上詳述したように、本実施形態の圧力検出装置10、電子機器、及びロボットによれば、以下に示す効果が得られる。
【0082】
(1)本実施形態の圧力検出装置10によれば、第2基板21を構成する第2基板本体22と複数の弾性体突起23とが導電性を有することにより、センサー基板11におけるセンサー電極13に対応するもう一方の電極としても機能させることができる。そのため、外圧の印加に伴う感圧弾性体層14の抵抗値の変化に対する検出感度を向上させることができる。したがって、外圧の方向と大きさを精度よく検出することが可能な圧力検出装置10を提供できる。
【0083】
(2)本実施形態の圧力検出装置10によれば、感圧弾性体層14の硬さより弾性体突起23の硬さの方が硬いので、第2基板21に外圧を加えた際、感圧弾性体層14に弾性体突起23を押し込むことが可能となると共に、外圧が解除されたときの弾性体突起23の復元性を確保することができる。つまり、弾性体突起23が押し込まれた位置からその周囲にずれることを抑えることができるので、外圧の方向や大きさの検出精度および検出感度を向上させることができる。
【0084】
(3)本実施形態の圧力検出装置10によれば、基準点Pと各圧力センサー15との間の距離が互いに等しくなるので、弾性体突起23の重心Gの位置の変化量と各圧力センサー15で検出される圧力値との関係が互いに等しくなる。例えば、複数の圧力センサー15が基準点Pから互いに異なる距離に配置される場合、弾性体突起23の重心Gの位置の変化量が同じであっても、各圧力センサー15で検出される圧力値は互いに異なることとなる。このため、検出値の差分を演算する際に各圧力センサー15の配置位置に応じた補正係数が必要となる。しかしながら、この構成によれば、弾性体突起23の重心G位置の変化量と各圧力センサー15が検出する圧力値との関係が互いに等しくなるので、補正係数は不用となる。したがって、各圧力センサー15で検出された圧力値から外圧の方向と大きさを演算することが容易となり、外圧を効率よく検出することができる。
【0085】
(4)本実施形態の電子機器によれば、上記に記載の圧力検出装置10を備えているので、外圧の方向と大きさを高い精度で検出することが可能な電子機器を提供することができる。
【0086】
(5)本実施形態のロボットによれば、上記に記載の圧力検出装置10を備えているので、外圧の方向と大きさを高い精度で検出することが可能なロボットを提供することができる。
【0087】
(第2実施形態)
<圧力検出装置の構成>
図10は、第2実施形態の圧力検出装置の概略構成を示す分解斜視図である。以下、第2実施形態の圧力検出装置の構成を、図10を参照しながら説明する。
【0088】
第2実施形態の圧力検出装置110は、複数の弾性体突起を感圧性を有する導電性弾性体(感圧導電性弾性体)により形成する点で第1実施形態と異なっている。以下、第1実施形態と同じ構成部材には同一符号を付し、ここではそれらの説明を省略又は簡略化する。
【0089】
図10に示すように、第2実施形態の圧力検出装置110は、第1実施形態と同様に、第1基板としてのセンサー基板11と、センサー基板11と対向するように配置された第2基板121と、圧力の方向と大きさを演算する演算装置(図示せず)と、を備えている。センサー基板11は、センサー基板本体12上に複数のセンサー電極13がマトリックス状に設けられており、センサー電極13を含むセンサー基板本体12上に感圧弾性体層14が設けられている。
【0090】
第2実施形態の圧力検出装置110の特徴として、第2基板121を構成する複数の弾性体突起123を感圧導電性弾性体により形成している。この場合の感圧導電性弾性体とは、電気的特性の測定に必要な抵抗値以下の抵抗値を備え、圧力が印加された場合に形状が変形し、かつ圧力の印加を停止した場合には元の形状に戻るものを示す。一例としては、炭素等の導電性を示す物質を、柔軟性を備えたポリオレフィン系の樹脂中に分散させたものを挙げることができる。また、導電性ゴム、シリコンゴムなどを用いるようにしてもよい。
【0091】
また、圧力センサー15は、センサー電極13と、感圧弾性体層14とによって構成される。そして、第2基板121に外圧が加えられると、弾性体突起123および感圧弾性体層14が弾性変形し、それぞれの抵抗値が変化する。その抵抗値変化をセンサー電極13により検出し、上記の演算装置により演算を行って外圧の大きさを求める。第1実施形態と同様に、第2基板121を構成する第2基板本体22は導電性を有しているので、センサー基板11におけるセンサー電極13に対応するもう一方の電極としても機能させることができる。
【0092】
また、第1実施形態と同様に、弾性体突起123の硬さは、上記した感圧弾性体層14の硬さより硬い材料が用いられる。具体的には、弾性体突起123のデュロメータ硬さ(タイプA、ISO 7619準拠のデュロメータによる硬さ測定値)は、例えば、30〜60程度になっている。感圧弾性体層14の硬さは、例えば、20〜25程度である。
【0093】
このように、弾性体突起123と感圧弾性体層14との硬さの関係を調整することにより、第2基板121に圧力を加えた際、感圧弾性体層14に弾性体突起123を押し込むことが可能となり、弾性体突起123が押し込まれた位置からその周囲にずれることを抑えることができる。具体的には、第2基板121に水平方向の外圧が加えられた場合、弾性体突起123の重心(圧力が加えられた点)が初期の段階と比べてずれてしまうことを抑えることができる。これにより、外圧の検出感度を向上させることができる。
【0094】
図11(a)〜(c)は、圧力の変化を示す模式断面図である。以下、圧力の変化を、図11を参照しながら説明する。なお、圧力の変化と位置との関係を示す図は、図3と同様である。
【0095】
図11(a)は、第2基板121の表面121aに外圧が付加される前の状態(外圧の作用がないとき)を示している。図11(a)に示すように、第2基板121の表面121aに外圧が付加される前においては、弾性体突起123及び感圧弾性体層14は変形しない。このときの各圧力センサー15の圧力値は図示略のメモリーに記憶されている。メモリーに記憶された各圧力センサー15の圧力値を基準として外圧の作用する方向や大きさが求められる。
【0096】
図11(b)は、第2基板121の表面121aに垂直方向(すべり力がない状態)の外圧が付加された状態を示している。図11(b)に示すように、第2基板121を介して感圧弾性体層14に垂直方向の外圧が付加されたとき、感圧弾性体層14は、−Z方向に圧縮変形する。そして、第2基板121がZ方向に撓み、センサー基板11と第2基板121との間の距離が外圧の作用がないときに比べて小さくなる。このときの圧力センサー15の圧力値は、外圧の作用がないときに比べて大きくなる。また、その変化量は各圧力センサー15ともほぼ同じ値となる。
【0097】
図11(c)は、第2基板121の表面121aに斜め方向(すべり力がある状態)の外圧が付加された状態を示している。図11(c)に示すように、第2基板121の表面121aに斜め方向の外圧が付加されたとき、感圧弾性体層14は、斜めに傾いて圧縮変形する。これにより、第2基板121がZ方向に撓み、センサー基板11と第2基板121との間の距離が外圧の作用がないときに比べて小さくなる。
【0098】
このとき、弾性体突起123の重心Gは基準点Pから+X方向及び+Y方向にずれる(図3(c)参照)。この場合、弾性体突起123の先端部と4つの各センサー電極13との重なる面積はそれぞれ異なる。具体的には、弾性体突起123の先端部と4つの各センサー電極13との重なる面積は、4つのセンサー電極13のうち−X方向及び−Y方向に配置されたセンサー電極13と重なる面積よりも、+X方向及び+Y方向に配置されたセンサー電極13と重なる面積のほうが大きくなる。
【0099】
弾性体突起123は、斜め方向の外圧により変形に偏りが生じる。すなわち、弾性体突起123の重心Gは基準点Pからずれてすべり方向(X方向及びY方向)に移動する(図3(c)参照)。すると、各圧力センサー15で異なる値の圧力値が検出される。そして、上述した差分の演算方法に基づいて加えられた外圧の方向が求められる。
【0100】
第2基板121の表面121aに斜め方向の外圧が付加された場合には、弾性体突起123を介して感圧弾性体層14が大きく変形する。そして、弾性体突起123がセンサー基板11に接した状態で、弾性体突起123の基部の相対的な位置30がずれる。
【0101】
以上詳述したように、第2実施形態の圧力検出装置110によれば、上記した第1実施形態の(1)〜(5)の効果に加えて、以下に示す効果が得られる。
【0102】
(6)第2実施形態の圧力検出装置110によれば、第2基板121を構成する複数の弾性体突起123を感圧導電性弾性体により形成しているので、外圧が印加された場合に感圧弾性体層14のみならず、弾性体突起123も変形により抵抗値が変化する。感圧弾性体層14が垂直方向の圧力に対する検出感度が高いのに対して、弾性体突起123は、すべり方向の力に対して感度よく変形することから、水平方向の圧力に対する検出感度を向上させることができる。
【0103】
(第3実施形態)
<圧力検出装置の構成>
図12は、第3実施形態の圧力検出装置の概略構成を示す分解斜視図である。以下、第3実施形態の圧力検出装置の構成を、図12を参照しながら説明する。
【0104】
第3実施形態の圧力検出装置210は、複数の圧力センサー215が互いに直交する2方向に少なくとも縦4行、横4列に配置されている部分が、上述の第1実施形態で説明した圧力検出装置10と異なっている。以下、第1実施形態と同じ構成部材には同一符号を付し、ここではそれらの説明を省略又は簡略化する。
【0105】
第1実施形態及び第2実施形態では、圧力を分解して検出する原理を示すべく、圧力センサー15を2行2列に配置し、圧力を分解する計算式を示したが、実際には多数の圧力センサーにより圧力を求めることとなる。ここでは、i個(iは4以上の整数)の圧力センサー215を用いた場合に拡張した計算式を示す。
【0106】
図12において、符号Pは基準点、符号Sは1つの弾性体突起23に対応して配置された複数のセンサー電極213が設けられる単位検出領域Siを示している。なお、図12においては、便宜上、複数のセンサー電極213が単位検出領域Si当たり縦4行、横4列に配置されているが、実際には図13及び図14に示すように複数のセンサー電極213が単位検出領域Si当たり縦4行、横4列以上に配置されていてもよいものとする。
【0107】
図12に示すように、センサー基板本体12上には、互いに直交する2方向(X方向及びY方向)に少なくとも縦4行、横4列に計16個、センサー電極213が配置されている。これら16個のセンサー電極213の中心(単位検出領域Siの中心)が基準点Pとなっている。
【0108】
図13(a)〜(c)は、図2(a)〜(c)に対応した、第3実施形態の圧力センサーによる圧力の変化を示す断面図である。図14(a)〜(c)は、図13(a)〜(c)に対応した、第3実施形態の圧力センサーによる圧力の変化と位置との関係を示す平面図である。以下、外圧の大きさと方向を検出する方法を、図13及び図14を参照しながら説明する。
【0109】
図13(a)及び図14(a)は、第2基板21の表面21aに外圧が付加される前の状態(外圧の作用がないとき)を示している。図13(a)に示すように、第2基板21の表面21aに外圧が付加される前においては、弾性体突起23及び感圧弾性体層14は変形しない。このときの各圧力センサー215の圧力値は図示略のメモリーに記憶されている。メモリーに記憶された各圧力センサー215の圧力値を基準として外圧の作用する方向や大きさが求められる。
【0110】
図14(a)は、外圧が付加されない状態における、複数の圧力センサー215や基準点Pに対する弾性体突起23の基部の相対的な位置30、センサー基板211と弾性体突起23とが接する領域40を示している。
【0111】
図13(b)及び図14(b)は、第2基板21の表面21aに垂直方向(すべり力がない状態)の外圧が付加された状態を示している。図13(b)に示すように、第2基板21を介して感圧弾性体層14の表面に垂直方向の外圧が付加されたとき、感圧弾性体層14は、−Z方向に圧縮変形する。そして、第2基板21がZ方向に撓み、センサー基板211と第2基板21との間の距離が外圧の作用がないときに比べて小さくなる。このときの圧力センサー215の圧力値は、外圧の作用がないときに比べて大きくなる。また、その変化量は各圧力センサー215ともほぼ同じ値となる。
【0112】
図13(c)及び図14(c)は、第2基板21の表面21aに斜め方向(すべり力がある状態)の外圧が付加された状態を示している。図13(c)に示すように、第2基板21の表面21aに斜め方向の外圧が付加されたとき、感圧弾性体層14は、斜めに傾いて圧縮変形する。これにより、第2基板21がZ方向に撓み、センサー基板211と第2基板21との間の距離が外圧の作用がないときに比べて小さくなる。
【0113】
このとき、図14(c)に示すように、弾性体突起23の重心Gは基準点Pから+X方向及び+Y方向にずれる。この場合、弾性体突起23の先端部と4つの各センサー電極213との重なる面積はそれぞれ異なる。具体的には、弾性体突起23の先端部と4つの各センサー電極213との重なる面積は、4つのセンサー電極213のうち−X方向及び−Y方向に配置されたセンサー電極213と重なる面積よりも、+X方向及び+Y方向に配置されたセンサー電極213と重なる面積のほうが大きくなる。
【0114】
弾性体突起23は、斜め方向の外圧により変形に偏りが生じる。すなわち、弾性体突起23の重心Gは基準点Pからずれてすべり方向(X方向及びY方向)に移動する。すると、各圧力センサー215で異なる値の圧力値が検出される。そして、後述する差分の演算方法に基づいて加えられた外圧の方向が求められる。
【0115】
第2基板21の表面に斜め方向の外圧が付加された場合には、弾性体突起23を介して感圧弾性体層14が大きく変形する。そして、弾性体突起23がセンサー基板211に接した状態で、弾性体突起23の基部の相対的な位置30がずれる。図14(c)は、圧力センサー215や基準点Pに対する弾性体突起23の基部の相対的な位置30が外力の方向にずれることを示している。
【0116】
図15は、図4に対応した、第3実施形態のセンシング領域の座標系を示す図である。なお、図15において、複数の圧力センサーSi(100個)がマトリックス状に配置されており、このうちの25個の圧力センサーSiがそれぞれ−X方向及び+Y方向に区画された領域、+X方向及び+Y方向に区画された領域、−X方向及び−Y方向に区画された領域、+X方向及び−Y方向に区画された領域に配置されている。また、図15においては、便宜上、100個の圧力センサーSiを図示しているが、圧力センサーSiの配置数はこれに限らず任意に変更することができる。
【0117】
図15に示すように、複数の圧力センサーSiは、単位検出領域S当たり縦10行、横10列に計100個配置されている。ここで、各圧力センサーSiが検出する圧力値(検出値)をそれぞれPi(i=1〜100)、基準点Pと各圧力センサーSiとの間の距離の面内方向成分をri(i=1〜100)とする。
【0118】
また、面内方向成分のうちX方向成分をrxi(i=1〜100)、面内方向成分のうちY方向成分をryi(i=1〜100)とすると、外力のX方向成分Fx(外力の面内方向成分のうちX方向に作用する分力の割合)は以下の式(4)で表される。
【0119】
【数4】
【0120】
また、外力のY方向成分Fy(外力の面内方向成分のうちY方向に作用する分力の割合)は以下の式(5)で表される。
【0121】
【数5】
【0122】
また、外力のZ方向成分Fz(外力の垂直方向成分)は以下の式(6)で表される。
【0123】
【数6】
【0124】
本実施形態では、外圧によって変化する100個の圧力センサーSiの圧力値のうち任意に組み合わされた各圧力センサーSiの圧力値の差分を演算し、その差分に基づいて外圧が加えられた方向が演算される。
【0125】
式(4)に示すように、外圧のX方向成分Fxにおいては、100個の圧力センサーSiで検出された圧力値のうち相対的に+X方向に配置された圧力センサーSiで検出された値が組み合わされるとともに、相対的に−X方向に配置された圧力センサーSiで検出された値が組み合わされる。このように、相対的に+X方向に配置された圧力センサーSiの組み合わせによる圧力値と相対的に−X方向に配置された圧力センサーSiの組み合わせによる圧力値との差分に基づいて外圧のX方向成分が求められる。
【0126】
式(5)に示すように、外圧のY方向成分Fyにおいては、100個の圧力センサーSiの圧力値のうち相対的に+Y方向に配置された圧力センサーSiで検出された値が組み合わされるとともに、相対的に−Y方向に配置された圧力センサーSiで検出された値が組み合わされる。このように、相対的に+Y方向に配置された圧力センサーSiの組み合わせによる圧力値と相対的に−Y方向に配置された圧力センサーSiの組み合わせによる圧力値との差分に基づいて外圧のY方向成分が求められる。
【0127】
式(6)に示すように、外圧のZ方向成分Fzにおいては、100個の圧力センサーSiで検出された圧力値を足し合わせた合力で求められる。
【0128】
なお、外圧の作用する方向の算出にあっては、100個の圧力センサーSiで検出された圧力値の算出結果の平均値で求める方法、あるいは100個の圧力センサーSiで検出された圧力値の算出結果のうちの最大値(例えば、所定のしきい値よりも大きい検出値)により求める方法を用いることができる。
【0129】
本実施形態の圧力検出装置210によれば、複数の圧力センサー215が互いに直交する2方向に少なくとも縦4行、横4列に配置されているので、配置される圧力センサー215の数が多くなる。このため、多数の圧力センサー215で検出された圧力値に基づいて各圧力センサー215の検出結果を積算して外圧の作用する方向と大きさとを求めることができる。したがって、外圧の方向を高い精度で検出することができる。
【0130】
本実施形態では、外圧によって弾性体突起23を介して、感圧弾性体層14が弾性変形することにより変化するi個の圧力センサー215の圧力値の差分を演算し、その差分に基づいて外圧が加えられた方向が演算される。
【0131】
式(4)に示すように、外圧のX方向成分Fxにおいては、i個の圧力センサーSiで測定された圧力値のうちX方向に配置された圧力センサーSiで測定された値を処理して外圧のX方向成分が求められる。
【0132】
式(5)に示すように、外圧のY方向成分Fyにおいては、i個の圧力センサーSiで測定された圧力値のうちY方向に配置された圧力センサーSiで測定された値を処理して外圧のY方向成分が求められる。
【0133】
式(6)に示すように、外圧のZ方向成分Fzにおいては、i個の圧力センサーSiで検出された圧力値を足し合わせた合力で求められる。
【0134】
以上詳述したように、第3実施形態の圧力検出装置210によれば、上記した第1実施形態及び第2実施形態の(1)〜(6)の効果に加えて、以下に示す効果が得られる。
【0135】
(7)第3実施形態の圧力検出装置210によれば、配置される圧力センサー215の数が多くなる。このため、多数の圧力センサー215で検出される圧力値に基づいて各圧力センサー215の検出結果を積算して外圧の作用する方向を決めることができる。したがって、外圧の方向を高い精度で検出することができる。
【0136】
なお、実施形態は上記に限定されず、以下のような形態で実施することもできる。
【0137】
(変形例1)
例えば、図16(a)〜(c)に示すように、第2基板本体22及び弾性体突起323を覆うように、導電体膜としての導電性膜324を成膜して第2基板321を構成してもよい。この場合、第2基板本体22及び弾性体突起323の形成材料として絶縁性ゴムや発砲ウレタン等の樹脂材料を用い、第2基板本体22及び弾性体突起323を金型で一体形成し、その後、複数の弾性体突起323の露出する部位全体を覆って第2基板本体22の上に例えばアルミニウム(Al)等の金属材料を形成してもよい。これにより、第2基板本体22及び弾性体突起323の形成材料として導電性及び弾性を有する材料を用いる場合に比べて材料選択の幅が拡がるので、弾性体突起323を所望の形状や硬さに形成しやすくなる。図16(a)〜(c)に示すように、変形例1の圧力検出装置310によれば、外圧の方向と大きさを精度よく検出することができる。
【0138】
(変形例2)
上記したように、感圧弾性体層14として導電粒子が分散されたゴムを用いて電気抵抗値変化を検出していたが、電気的特性の変化から圧力を検出するものであればよく、例えば、誘電体材料を用いて容量値変化を検出するようにしてもよい。また、インダクタンスの変化を検出するようにしてもよい。なお、強い電磁波が存在する場合、ノイズによる影響を受ける場合があるので、状況に応じていずれかの方法を選択して使用することが好ましい。
【0139】
(変形例3)
上記したように、弾性体突起23の形状は、半球状であることに限定されず、例えば、他の形状の錐状や柱状でもよい。
【符号の説明】
【0140】
10,110,210…圧力検出装置、11,211…第1基板としてのセンサー基板、12…センサー基板本体、13,213…センサー電極、14…感圧弾性体層、15,215(S1,S2,S3,S4)…圧力センサー、21…第2基板、21a…表面、22…第2基板本体、23…弾性体突起、30…位置、40…領域、1000…携帯電話機、1001,2001…液晶パネル、1002,2003…コントロールパッド、1003,2002…操作ボタン、2000…携帯情報端末、3000…ロボットハンド、3001…把持部、3002…アーム部、3003…本体部、3010…対象物。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加えられた外圧の方向と大きさを検出する圧力検出装置であって、
基準点の周りに複数配置されたセンサー電極と前記センサー電極を含む領域上に設けられた感圧弾性体層とにより構成された複数の圧力センサーを有する第1基板と、
先端部が前記第1基板の前記基準点に重なると共に前記感圧弾性体層に当接した状態で前記外圧により弾性変形する弾性体突起を有する第2基板と、を備え、
前記第2基板は、導電性を有することを特徴とする圧力検出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の圧力検出装置であって、
前記弾性体突起は、感圧性を有する導電性弾性体により形成されることを特徴とする圧力検出装置。
【請求項3】
加えられた外圧の方向と大きさを検出する圧力検出装置であって、
基準点の周りに複数配置されたセンサー電極と前記センサー電極を含む領域上に設けられた感圧弾性体層とにより構成された複数の圧力センサーを有する第1基板と、
先端部が前記第1基板の前記基準点に重なると共に前記感圧弾性体層に当接した状態で前記外圧により弾性変形する弾性体突起を有する第2基板と、を備え、
前記弾性体突起を覆うように前記第2基板上に導電体膜を設けることを特徴とする圧力検出装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の圧力検出装置であって、
前記外圧によって前記弾性体突起が弾性変形することにより複数の前記圧力センサーで検出された圧力値のうち任意に組み合わされた各圧力センサーで検出された圧力値の差分を演算し、その差分に基づいて外圧が加えられた方向と外圧の大きさを演算する演算装置を備えることを特徴とする圧力検出装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の圧力検出装置であって、
前記複数の圧力センサーは、前記基準点に対して点対称に配置されていることを特徴とする圧力検出装置。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の圧力検出装置であって、
前記複数の圧力センサーは、互いに直交する2方向にマトリックス状に配置されていることを特徴とする圧力検出装置。
【請求項7】
請求項6に記載の圧力検出装置であって、
前記複数の圧力センサーは、互いに直交する2方向に少なくとも4行4列に配置されていることを特徴とする圧力検出装置。
【請求項8】
請求項1乃至請求項7のいずれか一項に記載の圧力検出装置であって、
前記弾性体突起は、前記第2基板に複数形成されており、互いに離間して配置されていることを特徴とする圧力検出装置。
【請求項9】
請求項1乃至請求項8のいずれか一項に記載の圧力検出装置を備えることを特徴とする電子機器。
【請求項10】
請求項1乃至請求項8のいずれか一項に記載の圧力検出装置を備えることを特徴とするロボット。
【請求項1】
加えられた外圧の方向と大きさを検出する圧力検出装置であって、
基準点の周りに複数配置されたセンサー電極と前記センサー電極を含む領域上に設けられた感圧弾性体層とにより構成された複数の圧力センサーを有する第1基板と、
先端部が前記第1基板の前記基準点に重なると共に前記感圧弾性体層に当接した状態で前記外圧により弾性変形する弾性体突起を有する第2基板と、を備え、
前記第2基板は、導電性を有することを特徴とする圧力検出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の圧力検出装置であって、
前記弾性体突起は、感圧性を有する導電性弾性体により形成されることを特徴とする圧力検出装置。
【請求項3】
加えられた外圧の方向と大きさを検出する圧力検出装置であって、
基準点の周りに複数配置されたセンサー電極と前記センサー電極を含む領域上に設けられた感圧弾性体層とにより構成された複数の圧力センサーを有する第1基板と、
先端部が前記第1基板の前記基準点に重なると共に前記感圧弾性体層に当接した状態で前記外圧により弾性変形する弾性体突起を有する第2基板と、を備え、
前記弾性体突起を覆うように前記第2基板上に導電体膜を設けることを特徴とする圧力検出装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の圧力検出装置であって、
前記外圧によって前記弾性体突起が弾性変形することにより複数の前記圧力センサーで検出された圧力値のうち任意に組み合わされた各圧力センサーで検出された圧力値の差分を演算し、その差分に基づいて外圧が加えられた方向と外圧の大きさを演算する演算装置を備えることを特徴とする圧力検出装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の圧力検出装置であって、
前記複数の圧力センサーは、前記基準点に対して点対称に配置されていることを特徴とする圧力検出装置。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の圧力検出装置であって、
前記複数の圧力センサーは、互いに直交する2方向にマトリックス状に配置されていることを特徴とする圧力検出装置。
【請求項7】
請求項6に記載の圧力検出装置であって、
前記複数の圧力センサーは、互いに直交する2方向に少なくとも4行4列に配置されていることを特徴とする圧力検出装置。
【請求項8】
請求項1乃至請求項7のいずれか一項に記載の圧力検出装置であって、
前記弾性体突起は、前記第2基板に複数形成されており、互いに離間して配置されていることを特徴とする圧力検出装置。
【請求項9】
請求項1乃至請求項8のいずれか一項に記載の圧力検出装置を備えることを特徴とする電子機器。
【請求項10】
請求項1乃至請求項8のいずれか一項に記載の圧力検出装置を備えることを特徴とするロボット。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2012−132816(P2012−132816A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−285967(P2010−285967)
【出願日】平成22年12月22日(2010.12.22)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月22日(2010.12.22)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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