説明

圧力検出装置、電子機器、及びロボット

【課題】検出精度および検出感度を向上させることができる圧力検出装置、電子機器、及びロボットを提供する。
【解決手段】圧力検出装置10は、基準点の周りに複数配置された圧力センサー13を有するセンサー基板11と、先端部23aがセンサー基板11の基準点に重なると共に圧力センサー13に当接した状態で外圧により弾性変形する弾性体突起23を有する突起シート21と、を備え、センサー基板11と突起シート21とに挟まれた隣り合う弾性体突起23の周囲に、弾性平坦化層14が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧力検出装置、これを備えた電子機器、及びロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
上記圧力検出装置として、例えば、特許文献1に記載の検出装置が知られている。この検出装置は、球状あるいは先端部が感圧素子側に向いた半球状の弾性体を感圧素子表面に設け、弾性体の変形および重心位置の変化から、外圧の大きさと方向を検出する構成となっている。このような検出装置は、タッチパネルやロボットの触覚センサー等への応用が検討されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−187502号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の検出装置では、感圧素子に対して球状の弾性体が、初期の段階で点でしか接触しないので、弾性体に水平方向の外圧が加えられると、基準点(押圧点)が滑る等ずれやすくなり、水平方向の外圧の方向と大きさを適切に測定することができなくなるという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0006】
[適用例1]本適用例に係る圧力検出装置は、加えられた外圧の方向と大きさを検出する圧力検出装置であって、基準点の周りに複数配置された圧力センサーを有する第1基板と、先端部が前記第1基板の前記基準点に重なると共に前記圧力センサーに当接した状態で前記外圧により弾性変形する弾性体突起を有する第2基板と、を備え、前記第1基板と前記第2基板とに挟まれた隣り合う前記弾性体突起の周囲に、弾性体層が設けられていることを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、弾性体突起の周囲に弾性体層が設けられているので、第2基板に外圧を加えた際、圧力センサーに対して弾性体突起の先端部が当接すると共に、弾性体層が面接触する。弾性体層と圧力センサーとが面接触することにより、弾性体突起が押し込まれた位置から安易にずれることが抑えられる。よって、外圧の方向や大きさの検出精度および検出感度を向上させることができる。
【0008】
[適用例2]上記適用例に係る圧力検出装置において、前記弾性体突起は、前記先端部が前記弾性体層の表面から突出していることが好ましい。
【0009】
この構成によれば、弾性体突起の先端部が突出している(露出している)ので、第2基板に対して圧力が加えられた際、弾性体層よりも先に弾性体突起が圧力センサーを押圧することになり、圧力の大きさの検出感度を向上させることができる。言い換えれば、微弱な圧力のときの感度を向上させることができる。
【0010】
[適用例3]上記適用例に係る圧力検出装置において、前記弾性体突起の硬さは、前記弾性体層の硬さより硬いことが好ましい。
【0011】
この構成によれば、弾性体層より弾性体突起の方が硬いので、圧力センサーに対する弾性体突起の感度を向上させることができる。よって、圧力の大きさ、圧力の方向、すべり力などを高い感度で検出することができる。
【0012】
[適用例4]上記適用例に係る圧力検出装置において、前記弾性体層の表面の摩擦係数は、前記弾性体突起の表面の摩擦係数よりも大きいことが好ましい。
【0013】
この構成によれば、弾性体層の表面の摩擦係数が大きいので、弾性体突起に外圧が加えられた際、弾性体突起が押し込まれた位置から安易にずれることが抑えられる。
【0014】
[適用例5]上記適用例に係る圧力検出装置において、前記第1基板の前記圧力センサーと前記第2基板の前記弾性体突起との間に、弾性体シートが設けられていることが好ましい。
【0015】
この構成によれば、平坦化が容易な弾性体シートを介して第1基板と第2基板とが接触するので、第1基板と第2基板との密着力をより向上させることが可能となり、弾性体突起を介して圧力が加えられた点(基準点)がその周囲にずれることをより抑えることができる。
【0016】
[適用例6]上記適用例に係る圧力検出装置において、前記外圧によって前記弾性体突起が弾性変形することにより複数の前記圧力センサーで検出された圧力値のうち任意に組み合わされた各圧力センサーで検出された圧力値の差分を演算し、その差分に基づいて外圧が加えられた方向と外圧の大きさを演算する演算装置を備える。
【0017】
[適用例7]上記適用例に係る圧力検出装置において、前記複数の圧力センサーは、前記基準点に対して点対称に配置されていることが好ましい。
【0018】
この構成によれば、基準点と各圧力センサーとの間の距離が互いに等しくなるので、前記弾性体突起の重心位置の変化量と各圧力センサーで検出される圧力値との関係が互いに等しくなる。例えば、複数の圧力センサーが基準点から互いに異なる距離に配置される場合、弾性体突起の重心位置の変化量が同じであっても、各圧力センサーで検出される圧力値は互いに異なることとなる。このため、検出値の差分を演算する際に各圧力センサーの配置位置に応じた補正係数が必要となる。しかしながら、この構成によれば、弾性体突起の重心位置の変化量と各圧力センサーが検出する圧力値との関係が互いに等しくなるので、前記補正係数は不用となる。したがって、各圧力センサーで検出された圧力値から外圧の方向と大きさを演算することが容易となり、外圧を効率よく検出することができる。
【0019】
[適用例8]上記適用例に係る圧力検出装置において、前記複数の圧力センサーは、互いに直交する2方向にマトリックス状に配置されていることが好ましい。
【0020】
この構成によれば、各圧力センサーの圧力値のうち任意に組み合わされた各圧力センサーの圧力値の差分から外圧の方向と大きさを演算することが容易となる。
【0021】
[適用例9]上記適用例に係る圧力検出装置において、前記複数の圧力センサーは、互いに直交する2方向に少なくとも4行4列に配置されていることが好ましい。
【0022】
この構成によれば、配置される圧力センサーの数が多くなる。このため、多数の圧力センサーで検出される圧力値に基づいて各圧力センサーの検出結果を積算して外圧の作用する方向を決めることができる。したがって、外圧の方向を高い精度で検出することができる。
【0023】
[適用例10]上記適用例に係る圧力検出装置において、前記弾性体突起は、前記第2基板に複数形成されており、互いに離間して配置されていることが好ましい。
【0024】
この構成によれば、弾性体突起が弾性変形したときの第2基板の面内に平行な方向の変形量を許容することができる。例えば、一方の弾性体突起が変形したときに他方の弾性体突起に変形の影響を及ぼすことを抑制することができる。このため、複数の弾性体突起が互いに接触して配置されている場合に比べて、外圧を正確に各圧力センサーに伝達することができる。したがって、外圧の方向と大きさを高い精度で検出することができる。
【0025】
[適用例11]本適用例に係る電子機器は、上記に記載の圧力検出装置を備えることを特徴とする。
【0026】
この構成によれば、上記に記載の圧力検出装置を備えているので、外圧の方向と大きさを高い精度で検出することが可能な電子機器を提供することができる。
【0027】
[適用例12]本適用例に係るロボットは、上記に記載の圧力検出装置を備えることを特徴とする。
【0028】
この構成によれば、上記に記載の圧力検出装置を備えているので、外圧の方向と大きさを高い精度で検出することが可能なロボットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】第1実施形態の圧力検出装置の構成を示す分解斜視図。
【図2】(a)〜(c)は、圧力の変化を示す模式断面図。
【図3】(a)〜(c)は、圧力の変化と位置との関係を示す模式平面図。
【図4】センシング領域の座標系を示す図。
【図5】圧力センサーによる垂直方向の圧力分布を示す図。
【図6】圧力センサーによるすべり方向の計算例を示す図。
【図7】圧力検出装置を適用した携帯電話機の概略構成を示す模式図。
【図8】圧力検出装置を適用した携帯情報端末の概略構成を示す模式図。
【図9】圧力検出装置を適用したロボットハンドの概略構成を示す模式図。
【図10】第2実施形態の圧力検出装置の概略構成を示す分解斜視図。
【図11】(a)〜(c)は、圧力の変化を示す模式断面図。
【図12】(a)〜(c)は、圧力の変化と位置との関係を示す模式平面図。
【図13】センシング領域の座標系を示す図。
【図14】(a)〜(c)は、変形例の圧力の変化を示す模式断面図。
【図15】(a)〜(c)は、変形例の圧力の変化を示す模式断面図。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明を具体化した実施形態について図面に従って説明する。なお、使用する図面は、説明する部分が認識可能な状態となるように、適宜拡大または縮小して表示している。
【0031】
また、本実施形態において、第1基板の「表面」とは、第1基板における複数の圧力センサー形成面を指す。第2基板の「表面」とは、第2基板における弾性体突起形成面の反対面を指し、つまりは、外圧を受ける面を指す。
【0032】
以下の説明においては、図1中に示されたXYZ直交座標系を設定し、このXYZ直交座標系を参照しつつ各部材について説明する。XYZ直交座標系は、X軸及びY軸がセンサー基板本体12に対して平行な方向に設定されている。Z軸は、X軸とY軸とにそれぞれ直交する方向、すなわちセンサー基板11に対する法線方向に設定されている。
【0033】
(第1実施形態)
<圧力検出装置の構成>
図1は、圧力検出装置の構成を示す分解斜視図である。以下、圧力検出装置の構成を、図1を参照しながら説明する。図1において、符号Pは基準点、符号Sは1つの弾性体突起23に対応して配置された圧力センサー13が検出する単位検出領域を示している。なお、「基準点」とは、すべり力が作用していない場合に弾性体突起23の中心(重心)が平面視で位置するポイントである。
【0034】
図1に示すように、圧力検出装置10は、基準点Pに加えられた外圧の方向と大きさとを検出する圧力センサー方式のタッチパッドであり、例えば、ノートパソコン等の電子機器においてマウスの代わりのポインティングデバイスとして用いられるものである。
【0035】
具体的には、圧力検出装置10は、第1基板としてのセンサー基板11と、センサー基板11と対向するように配置された第2基板としての突起シート21と、圧力の方向と大きさを演算する演算装置(図示せず)と、を備えている。
【0036】
具体的には、センサー基板11は、センサー基板本体12上における基準点Pの周りに複数の圧力センサー13が設けられている。
【0037】
突起シート21は、突起シート本体22上における基準点Pに重なる位置に重心が位置する弾性体突起23が設けられている。弾性体突起23は、その先端部がセンサー基板11(圧力センサー13)に当接した状態で弾性変形する。また、複数の弾性体突起23の間には、弾性体突起の略先端部が埋まる程度に、表面が平坦化された弾性体層としての弾性平坦化層14が設けられている。
【0038】
演算装置は、複数の圧力センサー13で検出された圧力値のうち任意に組み合わされた各圧力センサー13で検出された圧力値の差分を演算し、その差分に基づいて外圧が加えられた方向と大きさとを演算する。
【0039】
より具体的には、センサー基板11は、例えば、ガラス、石英及びプラスチック等の材料で構成された矩形板状のセンサー基板本体12と、センサー基板本体12にマトリックス状に配置された複数の圧力センサー13と、を具備して構成されている。センサー基板本体12の大きさ(平面視のサイズ)は、例えば、縦56mm×横56mm程度になっている。
【0040】
複数の圧力センサー13は、基準点Pに対して点対称に配置されている。例えば、複数の圧力センサー13は、互いに直交する2方向(X方向及びY方向)にマトリックス状に配置されている。これにより、基準点Pと各圧力センサー13との間の距離が互いに等しくなる。これにより、弾性体突起23の変形と各圧力センサー13で検出される圧力値との関係が互いに等しくなる。よって、各圧力センサー13の圧力値のうち任意に組み合わされた各圧力センサー13で検出された圧力値の差分を演算することが容易となる。なお、圧力値の差分の演算方法については後述する。
【0041】
突起シート21は、矩形板状の突起シート本体22と、突起シート本体22に設けられた複数の弾性体突起23と、を具備して構成されている。
【0042】
また、複数の弾性体突起23の間には、上記したように、弾性体突起23の略先端部23aが埋まる程度に弾性平坦化層14が設けられている。これにより、突起シート21に圧力を加えた際、圧力センサー13に対して弾性体突起23が点接触すると共に、弾性平坦化層14が面接触する。つまり、面接触している弾性平坦化層14と圧力センサー13との密着力が向上する。よって、弾性体突起23が押し込まれた位置(基準点)からその周囲にずれることを抑えることができる。
【0043】
具体的には、突起シート21に水平方向の外圧が加えられた場合、弾性体突起23の基準点(圧力が加えられた点)が初期の段階と比べてずれてしまうことを抑えることができる。これにより、外圧の方向や大きさの検出精度および検出感度を向上させることができる。
【0044】
突起シート本体22は、外圧を直接受ける部分である。突起シート本体22は、例えばガラス、石英、及びプラスチック等の材料で構成することもできるし、発泡ウレタン樹脂、シリコーン樹脂等の樹脂材料で構成することもできる。本実施形態では、突起シート本体22及び弾性体突起23の形成材料として樹脂材料を用い、突起シート本体22、及び弾性体突起23を金型で一体形成している。
【0045】
弾性平坦化層14は、例えば、弾性体突起23の間にシリコンゴムなどが塗布されて形成されている。具体的には、弾性体突起23よりも硬度の低い弾性材料の溶液を、弾性体突起23の間に塗布、あるいはスプレー塗布、またはディッピングする事により形成することが出来る。
【0046】
複数の弾性体突起23は、突起シート本体22上においてX方向及びY方向にマトリックス状に配置されている。弾性体突起23の先端部23aは、例えば、球面の錘状となっており、センサー基板11(センサー基板本体12上の複数の圧力センサー13)に当接している。弾性体突起23の重心は、初期的に基準点Pと重なる位置に配置されている。また、複数の弾性体突起23は、互いに離間して配置されている。このため、弾性体突起23が弾性変形したときの突起シート本体22の面内に平行な方向の変形量を許容することができる。
【0047】
例えば、一方の弾性体突起23が変形したときに他方の弾性体突起23に変形の影響を及ぼすことを抑制することができる。このため、複数の弾性体突起23が互いに接触して配置されている場合に比べて、外圧を正確に各圧力センサー13に伝達することができる。したがって、外圧の方向と大きさを高い精度で検出することができる。また、各圧力センサー13の圧力値のうち任意に組み合わされた各圧力センサー13の圧力値の差分から外圧の方向と大きさを演算することが容易となる。
【0048】
弾性体突起23のサイズは任意に設定することができる。ここでは、弾性体突起23の基部の径(弾性体突起23がセンサー基板11に接する部分の直径)は1.8mm程度になっている。一方、弾性体突起23の高さ(弾性体突起23のZ方向の距離)は2mm程度になっている。さらに、隣り合う弾性体突起23の離間間隔は1mm程度になっている。
【0049】
なお、弾性体突起23の硬さは、上記した弾性平坦化層14の硬さより硬い材料が用いられる。具体的には、弾性体突起23のデュロメータ硬さ(タイプA、ISO 7619準拠のデュロメータによる硬さ測定値)は、例えば、30〜60程度になっている。
【0050】
また、弾性平坦化層14のデュロメータ硬さは、弾性体突起23のデュロメータ硬さよりも小さな値の材料を用いる。例えば、10〜25程度である。材料としては、例えば、軟質ゴムが挙げられる。弾性体突起23の方が硬いので、圧力センサー13に対する弾性体突起23の感度を向上させることができる。よって、圧力の大きさ、圧力の方向、すべり力などを高い感度で検出することができる。
【0051】
複数の圧力センサー13は、単位検出領域S当たり縦2行、横2列に計4つ配置されている。4つの圧力センサー13の中心(単位検出領域Sの中心)が基準点Pとなっている。例えば、単位検出領域Sの大きさ(平面視のサイズ)は、縦2.8mm×横2.8mm程度になっている。また、4つの圧力センサー13の各面積がほぼ等しくなっている。
【0052】
隣り合う圧力センサー13の間隔は、0.1mm程度になっている。このため、外乱や静電気等の影響により、隣り合う位置の圧力センサーで検出される圧力値にノイズがのらないようになっている。
【0053】
圧力センサーとしては、例えばダイアフラムゲージ等の感圧素子を用いることができる。この場合には、接触面に外圧が作用したときにダイアフラムに加わる圧力を電気信号に変換する。
【0054】
そのほかにも、圧力センサーとしては、抵抗値変化型の感圧素子を用いることが出来る。例えば、感圧導電性ゴム等で構成された感圧素子が知られている。感圧導電性ゴムシートの上側表面と下側表面に上下電極を設けた場合、外圧が作用すると、感圧導電性ゴムシートの膜厚方向の抵抗値変化を感知して外圧を検出することが出来る。また、感圧導電性ゴムシートのどちらか一方の表面に平行電極あるいは櫛歯状電極を設けた場合、外圧が作用すると、感圧導電性ゴムシートの水平方向の抵抗値変化を感知して外圧を検出することが出来る。
【0055】
そのほかにも、圧力センサーとしては、静電容量値変化型の感圧素子を用いることが出来る。この場合、外圧が作用すると静電容量値の変化を感知して外圧を検出することが出来る。また、インダクタンスの変化を検出するようにしてもよい。なお、強い電磁波が存在する場合、ノイズによる影響を受ける場合があるので、状況に応じていずれかの方法を選択して使用することが好ましい。
【0056】
図2及び図3は、外圧の大きさと方向を検出する方法の説明図である。図2(a)〜(c)は、圧力の変化を示す模式断面図である。図3(a)〜(c)は、図2(a)〜(c)に対応した、圧力の変化と位置との関係を示す模式平面図である。以下、外圧の大きさと方向を検出する方法を、図2及び図3を参照しながら説明する。なお、図3(a)〜(c)において、符号Gは弾性体突起23の重心(圧力中心)を示している。
【0057】
図2(a)及び図3(a)は、突起シート21の表面21aに外圧が付加される前の状態(外圧の作用がないとき)を示している。図2(a)に示すように、突起シート21の表面21aに外圧が付加される前においては、弾性体突起23は変形しない。また、弾性体突起23の周囲に設けられた弾性平坦化層14は、圧力センサー13と接した状態にある。このときの各圧力センサー13の圧力値は図示略のメモリーに記憶されている。メモリーに記憶された各圧力センサー13の圧力値を基準として外圧の作用する方向や大きさが求められる。
【0058】
図3(a)は、外圧が付加されない状態における、複数の圧力センサー13や基準点Pに対する弾性体突起23の基部の相対的な位置30、センサー基板11と弾性体突起23とが接する領域40を示している。
【0059】
図2(b)及び図3(b)は、突起シート21の表面21aに垂直方向(すべり力がない状態)の外圧が付加された状態を示している。図2(b)に示すように、弾性体突起23は、突起シート21を介して垂直方向の外圧が付加されたとき、弾性体突起23の先端部23aがセンサー基板本体12の表面に配置された複数の圧力センサー13に当接した状態でZ方向に圧縮変形する(撓む)。弾性平坦化層14も同様に、圧力センサー13の表面と密着すると共に、Z方向に圧縮変形する。
【0060】
そして、センサー基板11と突起シート21との間の距離が外圧の作用がないときに比べて小さくなる。このときの圧力センサー13の圧力値は、外圧の作用がないときに比べて大きくなる。また、その変化量は各圧力センサー13ともほぼ同じ値となる。
【0061】
図2(c)及び図3(c)は、突起シート21の表面21aに斜め方向(すべり力がある状態)の外圧が付加された状態を示している。図2(c)に示すように、弾性体突起23は、突起シート21の表面21aに斜め方向の外圧が付加されたとき、弾性体突起23の先端部23aがセンサー基板本体12の表面に配置された圧力センサー13に当接した状態で斜めに傾いて圧縮変形する。つまり、弾性体突起23がZ方向に撓み、センサー基板11と突起シート21との間の距離が外圧の作用がないときに比べて小さくなる。
【0062】
このとき、弾性体突起23の周囲に設けられた弾性平坦化層14が圧力センサー13の表面と密着していることにより、斜め方向の外圧が付加されたとしても、弾性体突起23の基準点Pがその周囲にずれることが抑えられる。よって、外圧の方向や大きさの検出精度および検出感度を向上させることができる。
【0063】
また、図3(c)に示すように、弾性体突起23の重心Gは、基準点Pから+X方向及び+Y方向にずれる。この場合、弾性体突起23と4つの各圧力センサー13との重なる面積はそれぞれ異なる。具体的には、弾性体突起23と4つの各圧力センサー13との重なる面積は、4つの圧力センサー13のうち−X方向及び−Y方向に配置された圧力センサー13と重なる面積よりも、+X方向及び+Y方向に配置された圧力センサー13と重なる面積のほうが大きくなる。
【0064】
弾性体突起23は、斜め方向の外圧により変形に偏りが生じる。すなわち、弾性体突起23の重心Gは基準点Pからずれてすべり方向(X方向及びY方向)に移動する。すると、各圧力センサー13で異なる値の圧力値が検出される。そして、後述する差分の演算方法に基づいて加えられた外圧の方向が求められる。
【0065】
突起シート21の表面21aに斜め方向の外圧が付加された場合には、弾性体突起23が大きく変形する。そして、弾性体突起23がセンサー基板11に接した状態で、弾性体突起23の基部の相対的な位置30がずれる。図3(c)は、圧力センサー13や基準点Pに対する弾性体突起23の基部の相対的な位置30が外力の方向にずれることを示している。
【0066】
図4は、センシング領域の座標系を示す図である。図5は、圧力センサーによる垂直方向の圧力分布を示す図である。図6は、圧力センサーによるすべり方向の計算例を示す図である。
【0067】
図4に示すように、複数の圧力センサーS1(13)〜S4(13)は、単位検出領域S当たり縦2行、横2列に計4つ配置されている。ここで、各圧力センサーS1〜S4が検出する圧力値(検出値)をそれぞれPS1,PS2,PS3,PS4とすると、外力のX方向成分Fx(外力の面内方向成分のうちX方向に作用する分力の割合)は以下の式(1)で表される。
【0068】
【数1】

【0069】
また、外力のY方向成分Fy(外力の面内方向成分のうちY方向に作用する分力の割合)は以下の式(2)で表される。
【0070】
【数2】

【0071】
また、外力のZ方向成分Fz(外力の垂直方向成分、Z軸は図4の図中省略)は以下の式(3)で表される。
【0072】
【数3】

【0073】
本実施形態では、外圧によって弾性体突起23が弾性変形することにより4つの圧力センサーS1〜S4で検出された圧力値の差分を演算し、その差分に基づいて外圧が加えられた方向が演算される。
【0074】
式(1)に示すように、外圧のX方向成分Fxにおいては、4つの圧力センサーS1〜S4で検出された圧力値のうち+X方向に配置された圧力センサーS2、及び圧力センサーS4で検出された値が組み合わされるとともに、−X方向に配置された圧力センサーS1、及び圧力センサーS3で検出された値が組み合わされる。このように、+X方向に配置された圧力センサーS2、及び圧力センサーS4の組み合わせによる圧力値と−X方向に配置された圧力センサーS1、及び圧力センサーS3の組み合わせによる圧力値との差分に基づいて外圧のX方向成分が求められる。
【0075】
式(2)に示すように、外圧のY方向成分Fyにおいては、4つの圧力センサーS1〜S4で検出された圧力値のうち+Y方向に配置された圧力センサーS1、及び圧力センサーS2で検出された値が組み合わされるとともに、−Y方向に配置された圧力センサーS3、及び圧力センサーS4で検出された値が組み合わされる。このように、+Y方向に配置された圧力センサーS1、及び圧力センサーS2の組み合わせによる圧力値と−Y方向に配置された圧力センサーS3、及び圧力センサーS4の組み合わせによる圧力値との差分に基づいて外圧のY方向成分が求められる。
【0076】
式(3)に示すように、外圧のZ方向成分Fzにおいては、4つの圧力センサーS1〜S4の圧力値を足し合わせた合力で求められる。
【0077】
次に、図5に示すように、タッチパッドの検出面の中央部より左上寄りの位置を指で斜めに押した場合を考える。このとき、外圧の垂直方向の圧力は、外圧が作用した部分の中心部が最も大きくなっている(圧力センサーS1〜S4の出力電圧90〜120mV程度)。また、外圧の垂直方向の圧力は、中心部に次いでその周辺部(圧力センサーS1〜S4の出力電圧60〜90mV程度)、最外周部(圧力センサーS1〜S4の出力電圧30〜60mV程度)の順に小さくなっている。
【0078】
また、指で押されていない領域は、圧力センサーS1〜S4の出力電圧が0〜30mV程度となっている。なお、タッチパッドには単位検出領域(圧力センサーS1〜S4が集合した領域)がマトリックス状(例えば縦15行×横15列に計225個)に配置されているとする。
【0079】
次に、図6に示すように、タッチパッドの検出面の中央部より左上寄りの位置を指で斜めに押した場合の外圧の面内方向成分(すべり方向)の算出方法を考える。このとき、指の押圧力(外力)は、縦15行×横15列に配置されたものうち縦3行×横3列に配置された部分に作用しているとする。ここで、外圧の垂直方向の圧力は、図5と同様に外圧が作用した部分の中心部がもっとも大きくなっている(110mV)。
【0080】
縦3行×横3列に配置された各単位検出領域は、それぞれ4つの圧力センサーS1〜S4を有しており、各圧力センサーS1〜S4で検出された圧力値のうち任意に組み合わされた各圧力センサーで検出された圧力値の差分を演算し、その差分に基づいて外圧が加えられた方向が演算される。
【0081】
つまり、各単位検出領域では、上述した式(1)及び式(2)に基づいて外圧のX方向成分Fx及び外圧のY方向成分Fyが算出される。ここでは、+X方向を基準として左回りに約123°の方向に外圧が作用していることが分かる。なお、外圧の作用する方向の算出にあっては、9つの算出結果の平均値で求める方法、あるいは9つの算出結果のうちの最大値(例えば所定のしきい値よりも大きい検出値)により求める方法を用いることができる。
【0082】
(電子機器)
図7は、上記実施形態の圧力検出装置10を適用した携帯電話機1000の概略構成を示す模式図である。電子機器の一例としての携帯電話機1000は、複数の操作ボタン1003及びコントロールパッド1002、並びに表示部としての液晶パネル1001を備えている。コントロールパッド1002を操作することによって、液晶パネル1001に表示される画面がスクロールされる。液晶パネル1001にはメニューボタン(図示略)が表示される。例えば、メニューボタンにカーソル(図示略)を合わせてコントロールパッド1002を強く押すことで、電話帳が表示されたり、携帯電話機1000の電話番号が表示されたりする。
【0083】
図8は、上記実施形態の圧力検出装置10を適用した携帯情報端末(PDA:Personal Digital Assistants)2000の概略構成を示す模式図である。電子機器の一例としての携帯情報端末2000は、複数の操作ボタン2002及びコントロールパッド2003、並びに表示部としての液晶パネル2001を備えている。コントロールパッド2003を操作すると、液晶パネル2001に表示されたメニューを操作できる。例えば、メニュー(図示略)にカーソル(図示略)を合わせてコントロールパッド2003を強く押すことで、住所録が表示されたり、スケジュール帳が表示されたりする。
【0084】
このような電子機器によれば、上述した圧力検出装置10をコントロールパッド1002,2003に備えているので、外圧の方向と大きさとを高い精度で検出することが可能な電子機器を提供することができる。
【0085】
なお、電子機器としては、この他にも、例えばパーソナルコンピューター、ビデオカメラのモニター、カーナビゲーション装置、ページャー、電子手帳、電卓、ワードプロセッサー、ワークステーション、テレビ電話、POS端末、デジタルスチールカメラ、タッチパネルを備えた機器等が挙げられる。これらの電子機器に対しても、本発明に係る圧力検出装置10を適用させることができる。
【0086】
(ロボット)
図9は、上記実施形態の圧力検出装置10を適用したロボットハンド3000の概略構成を示す模式図である。図9(a)に示すように、ロボットの一例としてのロボットハンド3000は、本体部3003及び一対のアーム部3002、並びに上記圧力検出装置を適用した把持部3001を備えている。例えば、リモコン等の制御装置によりアーム部3002に駆動信号を送信すると、一対のアーム部3002が開閉動作する。
【0087】
図9(b)に示すように、ロボットハンド3000でコップ等の対象物3010を把持する場合を考える。このとき、対象物3010に作用する力は把持部3001で圧力として検出される。ロボットハンド3000は、把持部3001として上述した圧力検出装置を備えているので、対象物3010の表面(接触面)に垂直な方向の力と併せて重力Mgですべる方向の力(すべり力の成分)を検出することが可能である。例えば、柔らかい物体を変形させたりすべりやすい物体を落としたりしないよう、対象物3010の質感に応じて把持することができる。
【0088】
このようなロボットによれば、上述した圧力検出装置10を備えているので、外圧の方向を高い精度で検出することが可能なロボットハンド3000を提供することができる。
【0089】
以上詳述したように、本実施形態の圧力検出装置10、電子機器、及びロボットによれば、以下に示す効果が得られる。
【0090】
(1)本実施形態の圧力検出装置10によれば、弾性体突起23の周囲に弾性平坦化層14が設けられているので、突起シート21に外圧を加えた際、圧力センサー13に対して弾性体突起23の先端部23aが当接すると共に、弾性平坦化層14が面接触する。弾性平坦化層14と圧力センサー13とが面接触することにより、弾性体突起23が押し込まれた位置から安易にずれることが抑えられる。よって、外圧の方向や大きさの検出精度および検出感度を向上させることができる。
【0091】
(2)本実施形態の圧力検出装置10によれば、弾性平坦化層14より弾性体突起23の方が硬いので、圧力センサー13に対する弾性体突起23の感度を向上させることができる。よって、圧力の大きさ、圧力の方向、すべり力などを高い感度で検出することができる。また、弾性平坦化層14の表面の摩擦係数が大きいので、弾性体突起23に外圧が加えられた際、弾性体突起23が押し込まれた位置から安易にずれることが抑えられる。
【0092】
(3)本実施形態の圧力検出装置10によれば、基準点Pと各圧力センサー13との間の距離が互いに等しくなるので、弾性体突起23の重心G位置の変化量と各圧力センサー13で検出される圧力値との関係が互いに等しくなる。例えば、複数の圧力センサー13が基準点Pから互いに異なる距離に配置される場合、弾性体突起23の重心G位置の変化量が同じであっても、各圧力センサー13で検出される圧力値は互いに異なることとなる。このため、検出値の差分を演算する際に各圧力センサー13の配置位置に応じた補正係数が必要となる。しかしながら、この構成によれば、弾性体突起23の重心G位置の変化量と各圧力センサー13が検出する圧力値との関係が互いに等しくなるので、補正係数は不用となる。したがって、各圧力センサー13で検出された圧力値から外圧の方向と大きさを演算することが容易となり、外圧を効率よく検出することができる。
【0093】
(4)本実施形態の電子機器によれば、上記に記載の圧力検出装置10を備えているので、外圧の方向と大きさを高い精度で検出することが可能な電子機器を提供することができる。
【0094】
(5)本実施形態のロボットによれば、上記に記載の圧力検出装置10を備えているので、外圧の方向と大きさを高い精度で検出することが可能なロボットを提供することができる。
【0095】
(第2実施形態)
<圧力検出装置の構成>
図10は、第2実施形態の圧力検出装置の概略構成を示す分解斜視図である。以下、第2実施形態の圧力検出装置の構成を、図10を参照しながら説明する。
【0096】
図10に示すように、第2実施形態の圧力検出装置110は、複数の圧力センサー113が互いに直交する2方向に少なくとも縦4行、横4列に配置されている部分が、上述の第1実施形態で説明した圧力検出装置10と異なっている。以下、第1実施形態と同じ構成部材には同一符号を付し、ここではそれらの説明を省略又は簡略化する。
【0097】
第1実施形態では、圧力を分解して検出する原理を示すべく、圧力センサー13を2行2列に配置し、圧力を分解する計算式を示したが、実際には多数の圧力センサーにより圧力を求めることとなる。ここでは、i個(iは4以上の整数)の圧力センサー113を用いた場合に拡張した計算式を示す。
【0098】
図10において、符号Pは基準点、符号Sは1つの弾性体突起23に対応して配置された複数の圧力センサー113が設けられる単位検出領域を示している。なお、図10においては、便宜上、複数の圧力センサー113が単位検出領域S当たり縦4行、横4列に配置されているが、実際には図11及び図12に示すように複数の圧力センサー113が単位検出領域S当たり縦4行、横4列以上に配置されていてもよいものとする。
【0099】
図10に示すように、センサー基板本体12上には、互いに直交する2方向(X方向及びY方向)に少なくとも縦4行、横4列に計16個、圧力センサー113が配置されている。これら16個の圧力センサー113の中心(単位検出領域Sの中心)が基準点Pとなっている。
【0100】
図11(a)〜(c)は、図2(a)〜(c)に対応した、第2実施形態の圧力の変化を示す模式断面図である。図12(a)〜(c)は、図11(a)〜(c)に対応した、第2実施形態の圧力の変化と位置との関係を示す模式平面図である。以下、外圧の大きさと方向を検出する方法を、図11及び図12を参照しながら説明する。
【0101】
図11(a)及び図12(a)は、突起シート21の表面21aに外圧が付加される前の状態(外圧の作用がないとき)を示している。図11(a)に示すように、突起シート21の表面21aに外圧が付加される前においては、弾性体突起23は変形しない。また、弾性体突起23の周囲に設けられた弾性平坦化層14は、圧力センサー113と接した状態にある。このときの各圧力センサー113の圧力値は図示略のメモリーに記憶されている。メモリーに記憶された各圧力センサー113の圧力値を基準として外圧の作用する方向や大きさが求められる。
【0102】
図12(a)は、外圧が付加されない状態における、複数の圧力センサー113や基準点Pに対する弾性体突起23の基部の相対的な位置30、センサー基板111と弾性体突起23とが接する領域40を示している。
【0103】
図11(b)及び図12(b)は、突起シート21の表面21aに垂直方向(すべり力がない状態)の外圧が付加された状態を示している。図11(b)に示すように、突起シート21の表面に垂直方向の外圧が付加されたとき、弾性体突起23は、Z方向に圧縮変形する。弾性平坦化層14も同様に、圧力センサー113の表面と密着すると共に、Z方向に圧縮変形する。そして、センサー基板111と突起シート21との間の距離が外圧の作用がないときに比べて小さくなる。このときの圧力センサー113の圧力値は、外圧の作用がないときに比べて大きくなる。また、その変化量は各圧力センサー113ともほぼ同じ値となる。
【0104】
図11(c)及び図12(c)は、突起シート21の表面21aに斜め方向(すべり力がある状態)の外圧が付加された状態を示している。図11(c)に示すように、突起シート21の表面21aに斜め方向の外圧が付加されたとき、弾性体突起23は、斜めに傾いて圧縮変形する。これにより、弾性体突起23がZ方向に撓み、センサー基板111と突起シート21との間の距離が外圧の作用がないときに比べて小さくなる。
【0105】
このとき、第1実施形態と同様に、弾性体突起23の周囲に設けられた弾性平坦化層14が圧力センサー113の表面と密着していることにより、斜め方向の外圧が付加されたとしても、弾性体突起23の基準点Pがその周囲にずれることが抑えられる。よって、外圧の方向や大きさの検出精度および検出感度を向上させることができる。
【0106】
また、図12(c)に示すように、弾性体突起23の重心Gは基準点Pから+X方向及び+Y方向にずれる。この場合、弾性体突起23の先端部と4つの各圧力センサーとの重なる面積はそれぞれ異なる。具体的には、弾性体突起23の先端部と4つの各圧力センサー113との重なる面積は、4つの圧力センサー113のうち−X方向及び−Y方向に配置された圧力センサー113と重なる面積よりも、+X方向及び+Y方向に配置された圧力センサー113と重なる面積のほうが大きくなる。
【0107】
弾性体突起23は、斜め方向の外圧により変形に偏りが生じる。すなわち、弾性体突起23の重心Gは基準点Pからずれてすべり方向(X方向及びY方向)に移動する。すると、各圧力センサー113で異なる値の圧力値が検出される。そして、後述する差分の演算方法に基づいて加えられた外圧の方向が求められる。
【0108】
突起シート21の表面21aに斜め方向の外圧が付加された場合には、弾性体突起23が大きく変形する。そして、弾性体突起23がセンサー基板111に接した状態で、弾性体突起23の基部の相対的な位置30がずれる。図12(c)は、圧力センサー113や基準点Pに対する弾性体突起23の基部の相対的な位置30が外力の方向にずれることを示している。
【0109】
図13は、図4に対応した、第2実施形態のセンシング領域の座標系を示す図である。なお、図13において、複数の圧力センサーSi(100個)がマトリックス状に配置されており、このうちの25個の圧力センサーSiがそれぞれ−X方向及び+Y方向に区画された領域、+X方向及び+Y方向に区画された領域、−X方向及び−Y方向に区画された領域、+X方向及び−Y方向に区画された領域に配置されている。また、図13においては、便宜上、100個の圧力センサーSiを図示しているが、圧力センサーSiの配置数はこれに限らず任意に変更することができる。
【0110】
図13に示すように、複数の圧力センサーSiは、単位検出領域S当たり縦10行、横10列に計100個配置されている。ここで、各圧力センサーSiが検出する圧力値(検出値)をそれぞれPi(i=1〜100)、基準点Pと各圧力センサーSiとの間の距離の面内方向成分をri(i=1〜100)とする。
【0111】
また、面内方向成分のうちX方向成分をrxi(i=1〜100)、面内方向成分のうちY方向成分をryi(i=1〜100)とすると、外力のX方向成分Fx(外力の面内方向成分のうちX方向に作用する分力の割合)は以下の式(4)で表される。
【0112】
【数4】

【0113】
また、外力のY方向成分Fy(外力の面内方向成分のうちY方向に作用する分力の割合)は以下の式(5)で表される。
【0114】
【数5】

【0115】
また、外力のZ方向成分Fz(外力の垂直方向成分)は以下の式(6)で表される。
【0116】
【数6】

【0117】
本実施形態では、外圧によって変化する100個の圧力センサーSiの圧力値のうち任意に組み合わされた各圧力センサーSiの圧力値の差分を演算し、その差分に基づいて外圧が加えられた方向が演算される。
【0118】
式(4)に示すように、外圧のX方向成分Fxにおいては、100個の圧力センサーSiで検出された圧力値のうち相対的に+X方向に配置された圧力センサーSiで検出された値が組み合わされるとともに、相対的に−X方向に配置された圧力センサーSiで検出された値が組み合わされる。このように、相対的に+X方向に配置された圧力センサーSiの組み合わせによる圧力値と相対的に−X方向に配置された圧力センサーSiの組み合わせによる圧力値との差分に基づいて外圧のX方向成分が求められる。
【0119】
式(5)に示すように、外圧のY方向成分Fyにおいては、100個の圧力センサーSiの圧力値のうち相対的に+Y方向に配置された圧力センサーSiで検出された値が組み合わされるとともに、相対的に−Y方向に配置された圧力センサーSiで検出された値が組み合わされる。このように、相対的に+Y方向に配置された圧力センサーSiの組み合わせによる圧力値と相対的に−Y方向に配置された圧力センサーSiの組み合わせによる圧力値との差分に基づいて外圧のY方向成分が求められる。
【0120】
式(6)に示すように、外圧のZ方向成分Fzにおいては、100個の圧力センサーSiで検出された圧力値を足し合わせた合力で求められる。
【0121】
なお、外圧の作用する方向の算出にあっては、100個の圧力センサーSiで検出された圧力値の算出結果の平均値で求める方法、あるいは100個の圧力センサーSiで検出された圧力値の算出結果のうちの最大値(例えば、所定のしきい値よりも大きい検出値)により求める方法を用いることができる。
【0122】
本実施形態の圧力検出装置110によれば、複数の圧力センサー113が互いに直交する2方向に少なくとも縦4行、横4列に配置されているので、配置される圧力センサー113の数が多くなる。このため、多数の圧力センサー113で検出された圧力値に基づいて各圧力センサー113の検出結果を積算して外圧の作用する方向と大きさとを求めることができる。したがって、外圧の方向を高い精度で検出することができる。
【0123】
本実施形態では、外圧によって弾性体突起23が弾性変形することにより変化するi個の圧力センサー113の圧力値の差分を演算し、その差分に基づいて外圧が加えられた方向が演算される。
【0124】
式(4)に示すように、外圧のX方向成分Fxにおいては、i個の圧力センサーSiで測定された圧力値のうちX方向に配置された圧力センサーSiで測定された値を処理して外圧のX方向成分が求められる。
【0125】
式(5)に示すように、外圧のY方向成分Fyにおいては、i個の圧力センサーSiで測定された圧力値のうちY方向に配置された圧力センサーSiで測定された値を処理して外圧のY方向成分が求められる。
【0126】
式(6)に示すように、外圧のZ方向成分Fzにおいては、i個の圧力センサーSiで検出された圧力値を足し合わせた合力で求められる。
【0127】
以上詳述したように、第2実施形態の圧力検出装置110によれば、上記した第1実施形態の(1)〜(3)の効果に加えて、以下に示す効果が得られる。
【0128】
(6)第2実施形態の圧力検出装置110によれば、配置される圧力センサー113の数が多くなる。このため、多数の圧力センサー113で検出される圧力値に基づいて各圧力センサー113の検出結果を積算して外圧の作用する方向を決めることができる。したがって、外圧の方向を高い精度で検出することができる。
【0129】
なお、実施形態は上記に限定されず、以下のような形態で実施することもできる。
【0130】
(変形例1)
上記したような突起シート21(圧力検出装置10)の構成に限定されず、図14(a)及び図15(a)に示すような突起シート521,621(圧力検出装置510,610)の構成であってもよい。図14(a)〜(c)及び図15(a)〜(c)は、圧力の変化を示す模式断面図である。
【0131】
まず、図14(a)に示す突起シート521は、突起シート本体22上に弾性体突起23が設けられている。弾性体突起23の周囲(弾性体突起23間)には、弾性平坦化層514が設けられている。ここで、上記実施形態と異なる点としては、弾性体突起23の先端部23aが、弾性平坦化層514の表面から突出している点である。以下、突起シート521に圧力が加えられた場合の突起シート521が変化する様子を、図14(a)〜(c)を参照しながら説明する。
【0132】
図14(a)は、突起シート521の表面21aに外圧が付加される前の状態(外圧の作用がないとき)を示している。図14(a)に示すように、突起シート521の表面21aに外圧が付加される前においては、弾性体突起23は変形しない。また、弾性平坦化層514は、センサー基板11(圧力センサー13)と接触していない。
【0133】
図14(b)は、突起シート521の表面21aに垂直方向(すべり力がない状態)の外圧が付加された状態を示している。図14(b)に示すように、弾性体突起23は、突起シート521を介して垂直方向の外圧が付加されたとき、弾性体突起23の先端部23aがセンサー基板本体12の表面に配置された複数の圧力センサー13に当接した状態でZ方向に圧縮変形する(撓む)。その後、弾性体突起23の周囲に設けられた弾性平坦化層514と圧力センサー13とが密着する。
【0134】
図14(c)は、突起シート521の表面21aに斜め方向(すべり力がある状態)の外圧が付加された状態を示している。図14(c)に示すように、弾性体突起23は、突起シート521の表面21aに斜め方向の外圧が付加されたとき、弾性体突起23の先端部23aがセンサー基板本体12の表面に配置された圧力センサー13に当接した状態で斜めに傾いて圧縮変形する。同時に、弾性平坦化層514も、圧力センサー13に当接した状態で斜めに傾いて圧縮変形する。
【0135】
このとき、弾性体突起23の周囲に設けられた弾性平坦化層514が圧力センサー13の表面と密着していることにより、斜め方向の外圧が付加されたとしても、弾性体突起23の基準点Pがその周囲にずれることが抑えられる。よって、外圧の方向や大きさの検出精度および検出感度を向上させることができる。
【0136】
更に、弾性体突起23の先端部23aが突出している(露出している)ので、突起シート521に対して圧力が加えられた際、弾性平坦化層514よりも先に弾性体突起23が圧力センサー13を押圧することになり、圧力の大きさの検出感度を向上させることができる。特に、微弱な圧力のときの感度を向上させることができる。
【0137】
また、図15(a)に示す突起シート621は、突起シート本体22上に弾性体突起23が設けられている。弾性体突起23の周囲(弾性体突起23間)には、弾性平坦化層614が設けられている。ここで、上記実施形態及び変形例と異なる点としては、弾性体突起23の先端部23aが弾性平坦化層614の表面と略同じ高さに設けられ、これらを覆うように平坦化された弾性体シート615が設けられている点である。以下、突起シート621に圧力が加えられた場合の突起シート621が変化する様子を、図15(a)〜(c)を参照しながら説明する。
【0138】
図15(a)は、突起シート621の表面21aに外圧が付加される前の状態(外圧の作用がないとき)を示している。図15(a)に示すように、突起シート621の表面21aに外圧が付加される前においては、弾性体シート615と圧力センサー13とが接触しているものの、弾性体突起23は変形していない。
【0139】
図15(b)は、突起シート621の表面21aに垂直方向(すべり力がない状態)の外圧が付加された状態を示している。図15(b)に示すように、弾性体突起23は、突起シート621を介して垂直方向の外圧が付加されたとき、弾性体シート615が圧力センサー13に当接した状態で、弾性体シート615及び弾性平坦化層614と共にZ方向に圧縮変形する。
【0140】
ここで、突起シート621を構成する部材の硬さ関係を説明する。硬い部材から順に、弾性体突起23、弾性体シート615、弾性平坦化層614となっている。なお、弾性体シート615と弾性平坦化層614の硬さは同じであってもよい。
【0141】
図15(c)は、突起シート621の表面21aに斜め方向(すべり力がある状態)の外圧が付加された状態を示している。図15(c)に示すように、弾性体突起23は、突起シート621の表面21aに斜め方向の外圧が付加されたとき、弾性体シート615が圧力センサー13の表面と密着した状態で斜めに圧縮変形する。
【0142】
このように、平坦化が容易な弾性体シート615を介してセンサー基板11と突起シート621とが全面で接触するので、センサー基板11と突起シート621との密着力をより向上させることが可能となり、弾性体突起23を介して圧力が加えられた点(基準点P)がその周囲にずれることをより抑えることができる。
【0143】
(変形例2)
上記したように、弾性体突起23の形状は、半球状であることに限定されず、例えば、他の形状の錘状や柱状でもよい。
【0144】
(変形例3)
上記したように、弾性平坦化層14の表面が平坦であることに限定されず、以下のような表面状態であってもよい。例えば、弾性平坦化層14の表面が細かい波状であったり、凸凹状であったりしてもよい。言い換えれば、弾性体突起23の基準点Pがその周囲にずれない程度に、弾性平坦化層14とセンサー基板11とが接触していることが望ましい。
【符号の説明】
【0145】
10,110,510,610…圧力検出装置、11,111,211…第1基板としてのセンサー基板、12…センサー基板本体、13,113(S1,S2,S3,S4)…圧力センサー、14,514,614…弾性体層としての弾性平坦化層、21,521,621…第2基板としての突起シート、21a…表面、22…突起シート本体、23…弾性体突起、23a…先端部、30…位置、40…領域、615…弾性体シート、1000…携帯電話機、1001,2001…液晶パネル、1002,2003…コントロールパッド、1003,2002…操作ボタン、2000…携帯情報端末、3000…ロボットハンド、3001…把持部、3002…アーム部、3003…本体部、3010…対象物。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加えられた外圧の方向と大きさを検出する圧力検出装置であって、
基準点の周りに複数配置された圧力センサーを有する第1基板と、
先端部が前記第1基板の前記基準点に重なると共に前記圧力センサーに当接した状態で前記外圧により弾性変形する弾性体突起を有する第2基板と、を備え、
前記第1基板と前記第2基板とに挟まれた隣り合う前記弾性体突起の周囲に、弾性体層が設けられていることを特徴とする圧力検出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の圧力検出装置であって、
前記弾性体突起は、前記先端部が前記弾性体層の表面から突出していることを特徴とする圧力検出装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の圧力検出装置であって、
前記弾性体突起の硬さは、前記弾性体層の硬さより硬いことを特徴とする圧力検出装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の圧力検出装置であって、
前記弾性体層の表面の摩擦係数は、前記弾性体突起の表面の摩擦係数よりも大きいことを特徴とする圧力検出装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の圧力検出装置であって、
前記第1基板の前記圧力センサーと前記第2基板の前記弾性体突起との間に、弾性体シートが設けられていることを特徴とする圧力検出装置。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の圧力検出装置であって、
前記外圧によって前記弾性体突起が弾性変形することにより複数の前記圧力センサーで検出された圧力値のうち任意に組み合わされた各圧力センサーで検出された圧力値の差分を演算し、その差分に基づいて外圧が加えられた方向と外圧の大きさを演算する演算装置を備えることを特徴とする圧力検出装置。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の圧力検出装置であって、
前記複数の圧力センサーは、前記基準点に対して点対称に配置されていることを特徴とする圧力検出装置。
【請求項8】
請求項1乃至請求項7のいずれか一項に記載の圧力検出装置であって、
前記複数の圧力センサーは、互いに直交する2方向にマトリックス状に配置されていることを特徴とする圧力検出装置。
【請求項9】
請求項8に記載の圧力検出装置であって、
前記複数の圧力センサーは、互いに直交する2方向に少なくとも4行4列に配置されていることを特徴とする圧力検出装置。
【請求項10】
請求項1乃至請求項9のいずれか一項に記載の圧力検出装置であって、
前記弾性体突起は、前記第2基板に複数形成されており、互いに離間して配置されていることを特徴とする圧力検出装置。
【請求項11】
請求項1乃至請求項10のいずれか一項に記載の圧力検出装置を備えることを特徴とする電子機器。
【請求項12】
請求項1乃至請求項10のいずれか一項に記載の圧力検出装置を備えることを特徴とするロボット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−98148(P2012−98148A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−245976(P2010−245976)
【出願日】平成22年11月2日(2010.11.2)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】