説明

圧力検出装置

【課題】許容過負荷を超えるオーバー圧がかかっても精度低下を生じることがなく、かつ、測定する流体の滞留を少なくできる圧力検出装置を提供すること。
【解決手段】一面に受圧面1Cが形成されるケース1の内部に取付孔1Aが形成され、このケース1の取付孔1Aに基板20が固定され、この基板20にダイアフラム21が対向配置され、このダイアフラム21と基板20とにダイアフラム21の変位を検出する変位検出部22が設けられ、ダイアフラム21の基板20と対向する面とは反対側の面に密接して隔膜23が設けられるとともに、この隔膜23の外周部23Aがケース1の凹部1Dに固定される。隔膜23はケース1の受圧面1Cと面一になるよう配置され、かつ、外周部23Aとダイアフラム21に接する中央部23Bとの間に応力を吸収する応力吸収部23Cが設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品工業等の分野で使用される圧力センサ、その他の圧力検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
食品工業の分野においては、衛生上の理由から接液面がたとえばステンレス鋼(SUS316L)からなる圧力センサが必要とされる。これは、測定体の過剰なオーバー圧への機械的対応と、測定体に含まれる化学物質に耐えられる特性からである。化学工業でも圧力トランスミッタの接液部に化学的耐性に対して特別な要求が必要とされる。
これらの要求に対しては、一般的に、接液面をステンレス鋼(SUS316L)のダイアフラムとし、圧力を検出する検出部とステンレス鋼(SUS316L)のダイアフラムとの間に圧力伝達用としてシリコン等の液体を封入した圧力センサが用いられていた。
しかし、このタイプの圧力センサでは、液体の封入工程に時間とコストがかかり、ステンレスのダイアフラムの破損時の液体の流出、さらには、圧力伝達用液体の温度による熱膨張の影響等の問題があった。
【0003】
これらの問題を解決するために、従来では、圧力を検出するダイアフラムを備えたセンサ素子と、ハウジングにセンサ素子を固定する固定手段が設けられ、ハウジングを閉鎖するダイアフラムを備え、ダイアフラムとセンサダイアフラムの間に固形物を有し、固形物が圧力を伝達する圧力センサがある(特許文献1)。この圧力センサでは、ハウジングには肩部が形成され、この肩部に当接するように固定手段でセンサ素子を押圧する。ハウジングの肩部にはダイアフラムの外周部が接合され、このダイアフラムは肩部の受圧面より窪んだ状態で測定圧力を受ける。
【0004】
他の従来例として、ケースに設けられ流体圧を受けて変形するダイアフラムと、このダイアフラムの変形を電気信号に変換するとともにダイアフラムに設けられた歪ゲージと、許容過負荷値を超えるオーバー圧を受けたダイアフラムが過剰に変形することを規制するネジとを備えた圧力センサがある(特許文献2)。
この圧力センサでは、オーバー圧対策のために、ネジはダイアフラムが最も変位する中央部分に当接可能とされ、ネジの先端に当接するダイアフラムの中央部分が周縁部に比べて厚肉に形成されている。さらに、ケースの流体に接する面に対してダイアフラムの受圧面が後退して配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第2774267号公報
【特許文献2】特許第4233809号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1で示される従来例では、圧力伝達のために液体を使用していないものの、ハウジングにセンサ素子を固定する固定手段が設けられており、ハウジングの肩部から窪んだ状態でダイアフラムが受圧するため、ダイアフラムとハウジングの肩部とで段差が生じフラッシュサーフェスな形状が構成できない。そのため、この段差によって、測定流体の滞留が多くなり、衛生上の問題が生じる。
【0007】
特許文献2で示される従来例では、圧力伝達のために液体を使用していないものの、オーバー圧の対策として、ダイアフラムで受けた圧力の過剰な変形を規制するネジの一点で受ける構成となっているため、ダイアフラムに応力集中部が発生し、特に歪検出の場合に測定誤差になりかねない。そして、圧力検出方法として歪ゲージを使用しているため、特に食品工業において計測器の固定に用いられるクランプの固定においては、締め付け力により出力変化等の問題が発生する。その上、オーバー圧が生じた際に、ダイアフラムの過剰な変形をネジで確実に規制するために、ダイアフラムのネジが当接する中央部分の厚さを、それ以外の周縁部分の厚さに比べて厚くするので、ダイアフラムの受圧面に段差が生じてフラッシュサーフェスな形状が構成できない。そのため、特許文献1と同様に、測定流体の滞留が多くなり、衛生上の問題が生じる。
【0008】
本発明の目的は、許容過負荷を超えるオーバー圧がかかっても精度低下を生じることがなく、かつ、測定する流体の滞留を少なくできる圧力検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の圧力検出装置は、内部に取付孔が形成されるとともに一面に受圧面が形成されるケースと、このケースの取付孔に固定される基板と、この基板の一面に対向配置されるダイアフラムと、このダイアフラムと前記基板とに設けられ前記ダイアフラムの変位を検出する変位検出部と、前記ダイアフラムの前記基板と対向する面とは反対側の面に密接して設けられるとともに周縁部が前記ケースに固定される隔膜とを備え、前記隔膜は、前記ケースの受圧面と面一になるよう配置され、かつ、前記ダイアフラムに接する領域より外側の領域であって前記ケースに接触する領域より内側の領域に応力を吸収する応力吸収部を有することを特徴とする。
【0010】
この構成の本発明では、圧力検出装置を被設置部に固定するために、ケースをクランプ締めすると、ケースに固定された隔膜の外周部分はケースとともに歪みが生じることになるが、隔膜の応力吸収部によって、その歪みに伴う応力が吸収されるので、クランプ締め付けによるケース歪がダイアフラムに伝えにくくなり、クランプ締め付け時の出力変化を少なく抑えることができる。
被設置部に設置された圧力検出装置では、測定対象となる流体が導入されると、ケースの受圧面及び隔膜に圧力が生じ、この隔膜がダイアフラムとともに変位すると、その変位は変位検出部で検出される。本発明では、ダイアフラムへの変位の伝達は隔膜で行われるものであり、圧力伝達部材として液体が存在しないので、液体の注入の手間が省略できて装置の製造コストが安くなる。そして、隔膜の受圧面とケースの受圧面とは面一となっており、かつ、隔膜がダイアフラムに面接触していることから、測定面のフラッシュサーフェス化が可能である。そのため、測定流体の滞留を少なくすることができ、衛生上の問題を回避することができる。さらに、隔膜が密接にダイアフラムに接し、ダイアフラムは基板に対向されているため、許容過負荷を超えるオーバー圧が隔膜及びダイアフラムにかかっても、基板が面で接しバックアップとなり耐圧特性が向上する。しかも、圧力の導入に伴って、隔膜の応力吸収部で区画された内部領域とこの内部領域に接するダイアフラムとが変位するが、応力吸収部がダイアフラムに接する内部領域より外側の領域であってケースに接触する領域より内側の領域に形成されているので、隔膜の内部領域とダイアフラムとの変位が圧力吸収部によって阻害されることがない。つまり、隔膜が圧力吸収部のない平板とすると、隔膜の内部領域とダイアフラムとが変位しようとしても、隔膜の周縁部がケースに固定されているため、隔膜の変位が阻害されることになり、検出精度が低下するが、このような不都合を応力吸収部を隔膜に設けた本発明では回避することができる。
【0011】
ここで、本発明では、前記応力吸収部は円周状に形成された湾曲部である構成が好ましい。
この構成の本発明では、応力吸収部の形状を簡易なものにすることで、装置の製造コストを低いものにできる。
【0012】
前記ダイアフラムと前記隔膜が接着して一体化された構成でもよく、あるいは、前記ダイアフラムと前記隔膜とが真空状態で密着して一体化された構成でもよい。
前記ダイアフラムと前記隔膜とが接着して一体化された構成の本発明では、隔膜とダイアフラムの密接度を増すため、接着剤で接着することにより、検出精度の向上を図ることができるとともに、測定領域を下回る圧力に対しても有効となる。
これに対して、前記ダイアフラムと前記隔膜とが真空状態で密着して一体化された構成では、ダイアフラムと隔膜との間に接着剤を塗布する必要がない。そのため、接着剤の膜厚管理が不要となり、装置を簡易に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第一実施形態にかかる圧力検出装置の全体構成を示す断面図。
【図2】本発明の第二実施形態にかかる圧力検出装置の要部を示す断面図。
【図3】本発明の変形例にかかる圧力検出装置の要部を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。ここで、各実施形態の説明において、同一の構成要素は同一符号を付して説明を省略もしくは簡略にする。
図1は第一実施形態にかかる圧力検出装置の全体構成を示す断面図である。
図1において、圧力検出装置は、ステンレス製の短寸円筒状のケース1と、このケース1に設けられ圧力を検出する検出素子2と、この検出素子2と接続される回路基板3と、この回路基板3を覆うステンレス製のカバー4とを備えた圧力センサである。この圧力センサは食品工業分野で使用されるものであり、例えば、食品製造プラントの配管に設けられる。
【0015】
ケース1は、その中心部に検出素子2を取り付けるための取付孔1Aが形成され、かつ、その端面側にフランジ部1Bが形成されている。このフランジ部1Bの一面が受圧面1Cとされる。この受圧面1Cに測定流体が接するようにケース1のフランジ部1Bが図示しない配管の被設置部に取り付けられる。
ケース1の受圧面1Cに連続して凹部1Dが形成され、この凹部1Dの端部と取付孔1Aとの間にテーパー部1Eが形成されている。
ケース1の受圧面1Cとは反対側の端面には段差部1Fが形成されている。
【0016】
検出素子2は、ケース1の取付孔1Aに取り付けられる厚肉の基板20と、この基板20の一面に対向配置されるダイアフラム21と、このダイアフラム21と基板20とに設けられダイアフラム21の変位を検出する変位検出部22と、ダイアフラム21の基板20と対向する面とは反対側の面に密接して設けられる隔膜23とを備えている。
基板20は、セラミックスからなり、円柱状に形成されている。基板20は、その軸芯が取付孔1Aの軸芯と一致しており、その外周面が取付孔1Aの内周面とは所定間隔離れている。
【0017】
基板20はケース1に保持部材24、抑え板25及びねじ26で取り付けられている。
保持部材24は、ケース1の取付孔1Aの内周面と基板20の外周面との間に挟持される係合片部24Aと、この係合片部24Aの端部に一体形成されケース1の段差部1Fと基板20の端面とを覆うリング状部24Bとを有し断面がT型とされた部材である。このリング状部24Bと基板20との間には固定材27が設けられている。この固定材27は、接着材等の他、ロウ付け、溶接等を採用することができる。
抑え板25はリング状部24Bの平面部と重合するものであり、外周縁がリング状部24Bの外周縁と一致する円板である。この抑え板25と保持部材24のリング状部24Bとは、ねじ26でケース1の段差部1Fに固定される。
【0018】
ダイアフラム21はセラミックスからなり、その形状は直径がD1の円板状である。ダイアフラム21の外周縁は基板20の外周縁と一致する。
ダイアフラム21と基板20との外周部分に絶縁部材として環状のガラス部材28が設けられている。
ダイアフラム21と基板20の互いに対向する面には変位検出部22を構成する電極22A,22Bが印刷等で形成されている。そのため、これらの電極22A,22Bが設けられ基板20、ダイアフラム21及びガラス部材28からなる空間Sからコンデンサが構成される。
【0019】
基板20の一面に形成された電極22Aは基板20の内部に形成されたスルーホール20Aと基板20の他面に立設された電極ピン29とを通じて回路基板3に電気的に接続される。ダイアフラム21に形成された電極22Bは基板20及びガラス部材28に形成されたスルーホール20Bと基板20の他面に立設された電極ピン29とを通じて回路基板3に電気的に接続される。つまり、ダイアフラム21は、基板20とは反対側で圧力を受けると、この圧力によってダイアフラム21が変位し、コンデンサの静電容量が変化する。この静電容量の変化はスルーホール20A,20B、電極ピン29を通じて回路基板3に信号として送られる。
ダイアフラム21、基板20及びガラス部材28から構成される空間Sと外部空間とを連通するための連通孔20Cが基板20に形成されている。
【0020】
隔膜23は、ケース1の凹部1Dに配置されるリング状の外周部23Aと、ダイアフラム21と対向配置される円板状の中央部23Bと、この中央部23Bと外周部23Aとを接続する応力吸収部23Cとを有する薄肉の円板状部材であり、ケース1の受圧面1Cと面一になるよう配置される。隔膜23の材質はステンレス鋼(SUS316L)が好ましいが、ステンレス鋼以外でも、コバルトニッケル合金等の耐食性の高材質を採用することも可能である。
外周部23Aは、凹部1Dの端部との間に隙間が生じないように、その外縁を凹部1Dの端部に密になるように溶接等で固定される。中央部23Bはダイアフラム21の全面に接着層230で一体化される。ここで、接着層230はシリコン系接着剤を用いることが好ましい。
接着層230は直径がD2となる平面円形に形成される。直径D2はガラス部材28の内周径とほぼ同じか、それより内側であって、ダイアフラム21の直径D1より小さい。接着層230より外側の領域では、ダイアフラム21と隔膜23とは接着固定されることなく単に重合されている。
応力吸収部23Cは、保持部材24、ケース1、基板20及び隔膜23で囲まれた空間Kに向けて突出する湾曲部(波状部)である。この湾曲部の突出部分はテーパー部1Eから離隔される。換言すれば、テーパー部1Eが応力吸収部23Cと干渉しないように形成されている。この湾曲部は環状に連続して形成されている。
【0021】
回路基板3は複数本のケーブル31に電気的に接続されており、これらのケーブル31は1本のチューブ32の内部に纏められてカバー4の外部に導き出される。これらのケーブル31は図示しない制御装置に接続され、この制御装置に配管内部の圧力値のデータが出力される。
チューブ32の内部にはケーブル31の他に大気開放チューブ33が配置され、この大気開放チューブ33は接続パイプ34及び導通パイプ35を通じて基板20の連通孔20Cに連通されている。
大気開放チューブ33は、その一端が大気に開放され、他端がカバー4の内部で接続パイプ34の一端に接続されている。この接続パイプ34は可撓性の材料から形成され、その他端が導通パイプ35に接続される。この導通パイプ35は、接続パイプ34に接続される一端部35Aと、この一端部35Aと一体に形成されるパイプ本体35Bと、このパイプ本体35Bに接続されるフランジ部35Cとを備え、このフランジ部35CはOリング36を介して基板20に密接状態で固定されている。導通パイプ35の内部空間は連通孔20Cと直線状となるように配置される。パイプ本体35Bは、保持部材24及び抑え板25を貫通している。
【0022】
カバー4は、その一端開口部がケース1に溶接等で接合される筒部4Aと、この筒部4Aの他端部に設けられる円板状部4Bとを有する有底円筒状部材であり、円板状部4Bにはケーブル31を収納するケーブルグランド41が取り付けられている。このケーブルグランド41はカバー4に密に取り付けられており、これにより、カバー4の内部は密閉状態とされる。
【0023】
次に、第一実施形態の圧力検出装置の組立方法について説明する。
まず、隔膜23の外周部23Aをケース1の凹部1Dに溶接等で接合する。さらに、電極22Aを形成した基板20と、電極22Bを形成したダイアフラム21とをガラス部材28を挟んで互いに接合し、これらの基板20、ダイアフラム21及びガラス部材28をケース1の取付孔1Aに挿入する。このダイアフラム21と隔膜23の中央部23Bとを接着剤で互いに接合し、さらに、基板20をケース1に保持部材24、抑え板25及びねじ26で取り付ける。そして、回路基板3を基板20に対向して取り付けるとともに、この回路基板3にケーブル31を接続し、さらに、基板20に導通パイプ35、接続パイプ34及び大気開放チューブ33を接続してコンデンサを構成する空間Sと大気とを連通した状態とし、カバー4をケース1に接合する。
【0024】
このように組み立てられた圧力検出装置のケース1を、図示しない被設置部の配管にクランプで取り付ける。クランプでケース1を締め付けると、ケース1のフランジ部1Bに生じる応力が隔膜23の外周部23Aに伝わり、この外周部23Aから中央部23Bに伝わろうとするが、その途中に設けられた応力吸収部23Cにより応力が吸収されることになる。
配管に取り付けられた圧力検出装置に測定対象となる流体が導入されると、隔膜23が圧力を受けることになり、この隔膜23がダイアフラム21とともに変位する。このダイアフラム21が変位することで、変位検出部22を構成する電極22A,22Bの間隔が変化し、この変化が圧力値の変化として制御装置に送られる。
【0025】
従って、第一実施形態では、次の作用効果を奏することができる。
(1)一面に受圧面1Cが形成されるケース1の内部に取付孔1Aが形成され、このケース1の取付孔1Aに基板20が固定され、この基板20にダイアフラム21が対向配置され、このダイアフラム21と基板20とにダイアフラム21の変位を検出する変位検出部22が設けられ、ダイアフラム21の基板20と対向する面とは反対側の面に密接して隔膜23が設けられるとともに、この隔膜23の外周部23Aがケース1の凹部1Dに固定され、ダイアフラム21への変位の伝達が隔膜23から直接行われることになる。そのため、圧力伝達部材として液体が存在しないので、温度変化に伴う液体の熱膨張収縮がなくなり、その上、液体の注入の手間が省略できて装置の製造コストが安くなる。しかも、隔膜23が密接にダイアフラム21に接し、ダイアフラム21が基板20に対向しているので、許容過負荷を超えるオーバー圧が隔膜23及びダイアフラム21にかかっても、基板20が接してバックアップとなり耐圧特性が向上する。
【0026】
(2)隔膜23はケース1の受圧面1Cと面一になるよう配置され、隔膜23とダイアフラム21とが面接触しているので、測定面がフラッシュサーフェス化され、その結果、測定流体の滞留を少なくして衛生上の問題が生じることが少ない。
(3)隔膜23は、ケース1に接する外周部23Aと、ダイアフラム21に接する中央部23Bと、これらの間に設けられ応力を吸収する応力吸収部23Cとを有する。ケース1をクランプ締めする際に、ケース1に固定された隔膜23の外周部23Aにケース1とともに歪みが生じても、隔膜23の応力吸収部23Cによって、応力が吸収されるので、クランプ締め付けによるケース歪がダイアフラム21に伝えにくくなり、クランプ締め付け時の出力変化を少なく抑えて検出精度の低下を防止することができる。しかも、圧力が隔膜23の応力吸収部23Cで区画された内部領域にかかり、この内部領域及び内部領域に接するダイアフラム21が変位しようとすると、この変位が応力吸収部23Cによって阻害されることがないので、検出精度の低下を防止できる。
【0027】
(4)応力吸収部23Cは円周状に形成された湾曲部であるから、隔膜23をプレス加工等で形成することで、応力吸収部23Cを簡易に形成することができる。そのため、圧力検出装置の製造コストを低いものにできる。
(5)基板20に応力吸収部23Cとの干渉を防止するためのテーパー部1Eが形成されているので、隔膜23の変位が阻害されることがなくなり、高い検出精度を維持することができる。
(6)ダイアフラム21と隔膜23とが接着層230で一体化されているので、検出精度の向上を図ることができるとともに、測定領域を下回る圧力に対しても有効となる。特に、仮に、負圧がかかっても、隔膜23がダイアフラム21から離隔することがないので、検出精度の低下を防止できる。しかも、接着層230の直径D2がダイアフラム21の直径D1より小さく形成され、接着層230より外側の領域では、ダイアフラム21と隔膜23とが接着されることなく単に重合されているだけなので、圧力の導入に伴って、隔膜23とダイアフラム21とがその中心部分を中心として湾曲するように変位した際に、隔膜23とダイアフラム21とが外周に向かうに従って面方向の延びの差が生じても、接着層230より外側の領域では接着されていないので、この延びの差を吸収して検出精度の低下を防止することができる。とりわけ、隔膜23のダイアフラム21との非接着部分が増すと、応力吸収部23Cが増え、より精度の高い検出が可能となる。
【0028】
(7)基板20のダイアフラム21が設けられている面とは反対側の面がケース1に保持部材24及び抑え板25で抑えられ、かつ、これらがねじ26でケース1に取り付けられているので、ダイアフラム21を隔膜23に面接触させることができる。そのため、隔膜23の面とケース1の受圧面1Cとが面一となりやすくなり、測定面がフラッシュサーフェス化されやすくなる。
(8)保持部材24はケース1と基板20との間に挟持される係合片部24Aと、この係合片部24Aの端部に一体形成されたリング状部24Bとを有する構成であるから、ケース1に外周部23Aが固定された隔膜23と基板20の端面側に設けられたダイアフラム21との位置決めが正確に行われることになり、検出精度が向上する。
【0029】
次に、本発明の第二実施形態を図2に基づいて説明する。
第二実施形態は、ダイアフラム21と隔膜23との接合構造並びに基板20のケース1への固定構造が第一実施形態と異なるもので、他の構成は第一実施形態と同じである。
図2は第二実施形態の要部を示す断面図である。
図2において、第二実施形態の圧力検出装置は、第一実施形態と同様に、ケース1、検出素子2、回路基板3及びカバー4(図1参照)を備えた圧力センサである。
検出素子2は、基板20、ダイアフラム21、変位検出部22及び隔膜23を備えて構成されており、第二実施形態では、基板20はケース1に保持部材24で固定されている。つまり、ケース1の段差部1Fに保持部材24のリング状部24Bの外周縁部が当接した状態で気密溶接、あるいは電子ビーム溶接がされる。
ケース1、基板20、隔膜23及び保持部材24で囲われた空間Kは高真空に保たれており、その結果、接着剤がなくて、ダイアフラム21と隔膜23の中央部23Bとが一体化される。
【0030】
従って、第二実施形態では、第一実施形態の(1)〜(5)(8)と同様の効果を奏することができる他、次の効果を奏することができる。
(9)ダイアフラム21と隔膜23とが真空状態で密着して一体化されているので、ダイアフラム21と隔膜23との間に接着剤を塗布する必要がない。そのため、接着剤の膜厚管理が不要となり、装置を簡易に製造することができる。
【0031】
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
例えば、前記各実施形態では、基板20のダイアフラム21が設けられていない部分をケース1に固定するために、保持部材24を用いたが、本発明では、図3に示されるように、ケース1の段差部1Fの内周面からケース中心に向かう係合用突起1Gを周方向に沿って設け、この係合用突起1Gと基板20の外周縁部とに固定材27を設ける構成であってもよい。なお、図3では、第二実施形態と同様に、空間Kが真空状態となっており、ダイアフラム21と隔膜23とが接着剤を用いることなく一体化されている。また、スルーホール20A,20B及び連通孔20Cの図示が省略されている。
【0032】
また、前記各実施形態では、応力吸収部23Cを環状に形成された湾曲部としたが、本発明では、湾曲部を周方向に沿って複数箇所設けるものでもよく、空間Sに先端が望むように突出した形状ではなく、空間Sとは反対側に突出する形状であってもよい。
そして、圧力検出装置は圧力センサでなく、差圧を検出する差圧センサであってもよい。
さらに、本発明の圧力検出装置は化学プラントで使用されるものであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明は、食品工業分野、化学工業分野、その他の分野で用いられる圧力検出装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0034】
1…ケース、1A…取付孔、1C…受圧面、2…検出素子、3…回路基板、4…カバー、20…基板、21…ダイアフラム、22…変位検出部、23…隔膜、23A…外周部、23B…中央部、23C…応力吸収部、24…保持部材、230…接着層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に取付孔が形成されるとともに一面に受圧面が形成されるケースと、このケースの取付孔に固定される基板と、この基板の一面に対向配置されるダイアフラムと、このダイアフラムと前記基板とに設けられ前記ダイアフラムの変位を検出する変位検出部と、前記ダイアフラムの前記基板と対向する面とは反対側の面に密接して設けられるとともに周縁部が前記ケースに固定される隔膜とを備え、
前記隔膜は、前記ケースの受圧面と面一になるよう配置され、かつ、前記ダイアフラムに接する領域より外側の領域であって前記ケースに接触する領域より内側の領域に応力を吸収する応力吸収部を有することを特徴とする圧力検出装置。
【請求項2】
請求項1に記載された圧力検出装置において、
前記応力吸収部は円周状に形成された湾曲部であることを特徴とする圧力検出装置。
【請求項3】
請求項2に記載された圧力検出装置において、
前記ダイアフラムと前記隔膜が接着して一体化された
ことを特徴とする圧力検出装置。
【請求項4】
請求項2に記載された圧力検出装置において、
前記ダイアフラムと前記隔膜とが真空状態で密着して一体化された
ことを特徴とする圧力検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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