説明

圧力測定注射器

注射器バレル(11)と、該バレル(11)内のプランジャー(15)と、ばね(14)であるが、該ばね(14)の第1部分で該プランジャー(15)に結合されており、注射器キャビテイ(26)内の流体圧力に応答して移動可能な第2部分を有する該ばね(14)と、流体圧力を示すために該ばね(14)の該第2部分の複数の位置と相関させられた圧力指示部(42)と、を具備する圧力測定注射器(10)。

【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は2009年1月15日出願の米国特許仮出願第61/144,956号の特典を請求するものである。
【技術分野】
【0002】
本発明は一般的に注射器に関し、特に注射器内の流体圧力を測定出来る注射器に関する。
【背景技術】
【0003】
気管内チューブ(ETT)は、例えば機械的換気用に必要とされる時、患者の肺内へ開いた気道を提供するため、麻酔、集中治療及び救急治療時の様な医学的手順で普通使われる。該気管内チューブは挿管として公知の過程で、患者の気管内に挿入され、該チューブの遠位の端部近くのバルーン状カッフは、該気管内に該チューブを固定し、該チューブの周りの漏れを防止するために、膨らまされるのが典型的である。
【0004】
患者に挿管する時、該カッフの過剰膨張を避けることが重要であり、何故ならば気管壁に対する過剰なカッフ圧力は粘膜虚血を引き起こし、続く圧力壊死は気管の狭窄へ導くからである。過剰膨張カッフの他の破局的合併症には、粘膜潰瘍、搾孔、気管の瘢痕及び裂傷、そしてフィステル(fistula)が含まれる。
【0005】
カッフが気管壁に対し適当にシールするよう充分膨らまされることも重要である。不足膨張カッフの結果は該チューブ周りでの空気漏れのみならず、肺炎及び他の深刻な状態へ導く分泌物及び他の異物の無音吸入の様な重要な合併症を含む。
【0006】
従って、気管内チューブカッフの過剰膨張及び不足膨張の両者に関するこれらの無数の問題を避けるために、受け入れ可能なカッフ圧力の狭い範囲内に入る圧力にカッフが膨らまされることが強く求められる。更に、長時間挿管された患者では不安全なカッフ圧力が進展し得る。カッフ内の又は気管内チューブの他の場所の漏れは漸次の圧力損失に帰着し、亜酸化窒素の様な或る種のガスのカッフによる吸収は挿管時のカッフ圧力を現実に高め得る。引き延ばされた期間に亘る患者条件の変化は又カッフ圧力の調整を要する。従って、カッフ圧力が日常的にモニターされ、受け入れ可能な圧力範囲内に保持されることが重要である。
【0007】
解剖構造の差異及び個人間で対比される気管圧力は、同一寸法のカッフに於いても、カッフ内の流体容積をカッフ圧力の不正確な代理にさせる。かくして、カッフ圧力は、カッフ内に予め決められた容積の空気を保持することに依るだけでは、信頼性を有して管理されることは不可能である。
【0008】
現在、カッフ圧力をモニターするため臨床医により使われる最も普通の技術は、該カッフを膨らますために使われる注射器の指触診、又は或る場合は、患者の外部にあり、該カッフと流体的に連通するパイロットバルーンの指触診、による該圧力の見積りである。この技術は非常に不正確なことが示されて来た。該カッフを膨らますために使われる注射器は圧力を測定するため取り入れられて来たが、信頼性あるカッフ圧力測定用に感度と範囲を提供するのに失敗して来た。もう1つの取り組みは、該カッフの入り口バルブに別のマノメーターを取り付けることによりカッフ圧力を直接測定することである。しかしながら、マノメーターは、看護点で使われず又容易に利用可能でもないことが典型的な、嵩張り、高価なデバイスである。更に、これらのデバイスは必ずしも常に正確でなく、何故なら
ば多くの圧力ゲージは圧縮可能な容積を追加し、該容積は測定に影響しそして測定の結果としてカッフ圧力に負にさえ影響するからである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許仮出願公開第61/144,956号明細書、2009年1月15日出願
【特許文献2】Leibinsohnへの米国特許第4,064,879号明細書
【発明の概要】
【0010】
本発明は圧力測定注射器に関する。好ましい実施例は、該注射器の遠位の室内の流体圧力により変位させられる注射器プランジャーに設置されたばねを使用する。好ましい実施例は、柔軟なダイアフラム又はベローの形のばねを該注射器のプランジャーに設置するが、該ダイアフラム又はベローは該システムの摩擦を減じ、特に低い圧力で流体圧力のより精密な測定を提供する。
【0011】
挿管された患者の安全を保証するために、本発明の好ましい実施例は、圧力の狭いバンド内に保持される気管内チューブカッフ圧力の測定を提供する。本発明は更に該カッフを選択された範囲内に、好ましくは15と35cmHOの間、そしてなおより好ましくは約20と30cmHOの間に膨らます膨張デバイスを提供する。本発明の好ましい実施例は、それぞれ気管のカッフの過剰膨張及び不足膨張を示す、少なくとも高圧力レベル及び低圧力レベルを示す圧力ゲージを有する注射器を提供する。小児科患者の挿管の様な、或る応用では、5から20cmHOの範囲内の低圧力を測定することが望ましい。
【0012】
本発明の1側面に依れば、内部圧力ゲージを有する注射器は、先端端部にアパーチャーをそして反対端部に開口部を有するバレルと、該バレル内に配置されるプランジャー又はピストンであるが、該プランジャーの近くに流体室を規定するために該バレルの内壁に対しシールを形成する該プランジャー又はピストンと、を備える。該バレル内に配置されたばね、柔軟なダイアフラム又はベローは該ピストン内で軸方向に移動可能である。該ばね、柔軟なダイアフラム又はベローは移動可能な圧力指示部として動作し、第1端で該プランジャーに設置され、第2端では移動自由である。ばねの様な、該圧力指示部は軸方向移動に対抗する抵抗力を提供するよう校正され、該移動は該流体室内の圧力を示す。該ばねの相対位置に基づき該流体室内の圧力を示すため可視的指示が使われ、該可視的指示は低圧力限界及び高圧力限界の間の範囲内の、又は約5から35cmHOのガス圧力を示す。測定された圧力がカッフ内の流体圧力を有するよう該流体室は気管内チューブのカッフと流体的に連通している。ばね又はベローの端部はプランジャーの内部チューブ壁に対し何等の実質的摩擦無しに移動が自由であるので、該ばね又はベローは注射器室内のガス圧力をより精密に反映する。該ばねの近位の端部又は第2部分はかくして該プランジャーの内壁から機械的に分離され、その結果シールの使用無しに動作する。該ばねの遠位の端部(すなわち第1部分)は、該プランジャーの部分の外周面と注射器バレルの内壁との間でシールが形成される様な仕方で該プランジャーに結合されるので、該プランジャーの変位は流体を該注射器の遠位の開口部を通して排出する。
【0013】
或る実施例では、該可視的指示は約20から30cmHOの範囲内のガス圧力を示す。該可視的指示は該ピストン上に配置され、例えば、目盛りつけマーキング及び/又はカラーコード化マーキングを有してもよい。本発明の好ましい実施例は10ccの容積を有する注射器を備える。しかしながら、子供の様な小さな患者用に、5cc注射器が好ましい。かくして、該注射器の好ましい実施例は2から20ccの範囲内の排出値を有する。
【0014】
もう1つの側面に依れば、気管内チューブのカッフ内の圧力を測定する方法は、カッフ
と流体的に連通する本発明の注射器を提供する過程と、該バレルに対しプランジャーを押し下げることにより該注射器を駆動する過程と、そして該カッフ内部の圧力を測定するために可視的指示を検出する過程と、を具備する。人工呼吸器を用いる様な、より長期間の使用を含む環境用には、該カッフ内の圧力をモニターすることが望ましいが、しかしながら、或る場合には、患者の口に隣接して注射器を保持することは望ましくない。該注射器は、プランジャー用の再取り付け位置でマーク付けされ、そこではユーザーは該注射器をポート又は入り口バルブに接続出来て、そこでは開弁はカッフ内にある圧力を著しくは変えず、現在のカッフ圧力の測定を可能にする。これは該カッフを完全には膨らませ直しする必要無しにカッフ圧力の周期的再接続と測定を可能にする。好ましくは、注射器のプランジャーと外壁の間のシールは、ユーザーが圧力を解放した後、該プランジャーを位置的に保持するのに充分であり、それにより進行中の圧力測定を可能にするのがよい。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】カッフを膨らませる気管内チューブ組立体と注射器を示す図である。
【図2A】注射器バレル内の最終圧力がベローを弾性的に変形させることを可能にするよう中に孔を有するピストンを押すプランジャーを示す本発明の1実施例の側断面図である。
【図2B】図2Aの部品の自由なボデイの図である。
【図3A】ピストンを押すばねを押すプランジャー注射器の側断面図である。
【図3B】図3Aの部品の自由なボデイの図である。
【図4A】プランジャー組立体の好ましい実施例の斜視図である。
【図4B】プランジャー組立体の好ましい実施例の側面図である。
【図5A】圧力検出ベローの好ましい実施例の側面図である。
【図5B】圧力検出ベローの好ましい実施例の断面図である。
【図5C】圧力検出ベローの好ましい実施例の一端の拡大図である。
【図6A】プランジャーの好ましい実施例の斜視図である。
【図6B】拇指が上部を押す注射器組立体の好ましい実施例の端部の頂部側の拡大図である。
【図6C】拇指が上を押す注射器組立体の好ましい実施例の端部の底部側の拡大図である。
【図6D】注射器の好ましい実施例のピストン端部の頂部側の拡大図である。
【図6E】注射器の好ましい実施例のピストン端部の底部側の拡大図である。
【図7A】注射器組立体の好ましい実施例の隠れた線を示す側面図である。
【図7B】注射器組立体の好ましい実施例の側断面図である。
【図7C】注射器組立体の好ましい実施例の先端領域の拡大断面図である。
【図8A−8B】注射器プランジャー内にベローを有する圧力測定注射器の実施例を示す図である。
【図9】本発明の気管カッフ圧力をモニターする好ましい方法のブロック図である。
【図10】小児科用気管内チューブ組立体と、カッフを膨らませる圧力測定デバイスを有する注射器と、を示す図である。
【図11】気管内チューブ組立体と、圧力測定デバイスを有する注射器と、を備えるキットを示す図である。
【図12】患者への圧力検出医療手順で使われる圧力測定注射器を示す図である。
【実施例1】
【0016】
本出願は、全開示が引用によりここに組み入れられる、2009年1月15日出願の米国特許仮出願第61/144,956の特典を請求する。
【0017】
本発明は内部圧力ゲージを有する注射器10を備え、図1で略図で図解される様な、気管内チューブ組立体20と連結して使われてもよい。気管内チューブ組立体20は、患者の肺への及び該肺からの、開いた空気通路を提供するために、患者のウインドパイプ(気管)内へ挿入され得る細長いチューブ状部材21を有する。一般的に、該チューブ組立体20は該チューブ状部材21の遠位の端部の近くに膨張可能なカッフ23を有する。該カッフ23は、該組立体20が患者の気管内に導入される時は膨らまされない状態にあるのが一般的である。現在使用されているカッフは、英国、ハイス市の、ポーテックス社(Portex, Ltd., Hythe, U.K.)により製造される様に、大容積、低圧力と呼ばれる。充分に膨らまされた時、該カッフ容積は15から20ccの範囲にあってもよい。大抵の成人患者では、膨らまされた容積は約6ccである。膨張容積は一般に4−10ccの範囲にある。該組立体20が気管内に適切に配置すると、該カッフ23は、該カッフ23から、患者の外部に配置された入り口バルブ27まで延びる小さな流体チューブ25を通して該カッフ23内へ、空気の様な流体を導入することにより膨らまされる。該カッフ23は、患者の気管に対して該カッフ23でシールするよう膨らまされる。該チューブ組立体20は又膨張可能なパイロットバルーン29を有してもよい。該ロットバルーンは該患者の外部に配置され、カッフ膨張のレベルと、該カッフ23の内側の流体圧力と、の近似値を提供するために、該カッフ23と流体的に連通している。
【0018】
注射器10は、当該技術で公知の様に、該チューブ組立体20の入り口バルブ27のポート内に挿入され、該カッフ23を膨らませる及び/又は縮ませるために使われてもよい。本発明の1側面に依れば、該注射器10は下記で説明される様に、内部圧力測定デバイスを有し、該デバイスは該カッフ23内の流体圧力を視覚的にモニターするため使われ得るので有利である。カッフ圧力は、患者が手術室にいても或いは集中治療ユニットにいても、挿管された患者の重要パラメーターであり、それは不足膨張のカッフ(すなわちカッフ圧力が低過ぎる)は気管壁に対し適切にシールせず、チューブ21の周りの空気漏れのみならず、肺内への分泌物及び他の異物の流れにも帰着するからである。過剰膨張(すなわちカッフ圧力が高過ぎる)のカッフは気管内の粘膜血流を妨げ、患者に虚血性の、場合によっては破局的な、合併症に向かう素因を与えることも又公知である。大抵の場合、気管内チューブカッフ圧力は約35cmHOを越えるべきでなく、約15cmHOを下回るべきでない。理想的には、カッフ圧力は約20と30cmHOの間のレベルに保持されるべきである。
【0019】
本発明の注射器10は、該注射器が接続される気管内チューブのカッフの様な膨張可能
な医療デバイスの内部圧力を測定出来て、カッフが不足膨張であるか、適切に膨らまされているか、或いは過剰膨張であるかの簡単で、可視的指示を提供する、内部圧力ゲージを有する。
【0020】
1側面に依れば、該圧力測定デバイスは現在の注射器設計内にうまく組み入れられる。該注射器内への該圧力測定装置の一体化は、医師及び他の健康管理専門家へ直観的で、現在の挿管技術内へ組み入れが容易な製品を提供する。
【0021】
本発明の好ましい実施例は、注射器内の空気圧により駆動される内部ばねデバイスを有する。該注射器内の圧力が増加すると、該ばねデバイスの変位は、注射器プランジャー上のフックの法則により圧力で誘起される力に比例して該注射器プランジャーの長さに沿って指示部を動かす。該力は、該変位にばね定数倍した値に等しい。内部空気ばねの利点は、設計が比較的簡単で現在の注射器設計に僅かな変更しか課さない。圧力指示部の解析は比較的直線的で予測可能である。
【0022】
本発明の1側面に依れば、注射器はシールとばねを有する圧力センサーを備える。該シールはカッフ内の圧力と大気圧の間の圧力差を保持し、その圧力差はばねのたわみを駆動し、圧力の大きさの情報をユーザーに提供する。該ばねは例えば、ダイアフラムカバーを有するコイルばねであってもよい。ばね作用とシールを1つの簡単な機構に組み合わせるためにソフトゴムベローが使われてもよい。
【0023】
図2A及び2Bは本発明の1実施例の略図による図解である。図2A及び2Bで示される様に、注射器10は設計及び動作の両面で従来の注射器と類似である。プランジャー15は外側シェル11内で往復する。プランジャー15に取り付けられたピストン端部16は外側バレル11に対し流体密閉シール12を提供し、注射器10の先端近くに流体室223を規定する。該プランジャー15とピストン端部16が該外側バレル11内で動くと、加圧流体(例えば、空気又は液体)は注射器先端内の開口部17を通して流れ、該先端は外部流体導管と流体密閉接続を形成するための接続要素(リュアロック(Luer-lok)部分の様な)を有してもよい。或る実施例では、該注射器10は、図1に示す気管内チューブカッフの様な、膨張可能な医療カッフと接続されてもよい。
【0024】
図3Aの実施例では、一対のフランジ13が外側シェル11上に配置される。注射器10の一般的な動作では、ユーザーはフランジ13を彼又は彼女の指(例えば、人差し指及び中指)で支え、一方、プランジャー15を押し下げ、先端17から流体を押し出すために、ピストン15の端部キャップ55に対し拇指の力を印加する。
【0025】
注射器10は更に、ベロー14の形の内部圧力センサーを有する。この実施例では、ベロー14はピストン端部16に固定される。該ピストン端部16は、流体室223とベロー14の内部の間の流体的連通を提供するために、中央開口部19を有する。該ベロー14は流体室223の内側及び外側の流体圧力間のシールを提供し、更にばねとして機能する。そこでは、該ばねの変位は、ベロー14の内側及び外側の流体間の圧力差により駆動される。図2Aの実施例では、ベロー14の内側の流体圧力は流体室223内部の圧力Pと平衡する。該プランジャー15と外側バレル11の両方の内部はそれぞれベント開口部18a及び18bを介して大気と通気されているので、該ベロー14の外側の流体圧力は大気圧と平衡する。
【0026】
図2Bで図解される様に、該ベローの変位、Xは圧力誘起されたベロー力、Fbellows、と該ベローのばね定数、Kに比例する。かくして、該注射器10は、ベロー14の変位が、関心のあるどんな圧力範囲に亘っても該流体室223内部の流体圧力、Pの精密な測定値を提供するよう校正され得る。該プランジャー15は該ベロー14の変位
により測定された数値圧力値を示す、目盛り付けされたマーキング42a、42b、42cの様な、可視的指示部を有してもよい。マーキング42a、42b、42cは又特定の応用のための安全動作圧力範囲を示すよう提供されてもよい。注射器が、例えば気管内チューブのカッフの様な、膨張可能な医療カッフに取り付けられる場合、該マーキング42b及び42cは安全カッフ膨張圧力用のそれぞれ下限及び上限の明らかな可視的指示を提供してもよい。
【0027】
プランジャー15が押し下げられる時、拇指力はプランジャーを下方に進め、ばねを押す代わりに該拇指力はプランジャーのピストン端16を直接押すが、該ピストン端は同じ力Fthumbで押し返す。該ピストン端16は又、シール12と外側バレル11の間のスライド摩擦のための力Fsealと、流体圧力Pとピストンの面積Aとの積である力Ffluidと、の力を上に有するが、そこでは、この場合、該面積Aはピストン外径と内側孔19の直径との関数である。
【0028】
少量の流体は、孔19を通り、ベロー14内へ流れ、該ベローを長さXまで弾性的に延ばす。有効な断面積Abellowsと圧力Pとの積は、該ピストンに直接作用する力Fbellows baseである。しかしながら、Fbellows baseは該ベローばね定数Kと該ベローの軸方向延び(Xマイナス該ベローの自由長)との積に等しい。かくして、該ベローの長さの変化を観察することにより、医療者は該カッフへ供給される圧力Pの直接測定値を有し、この測定は未知のシール摩擦力により影響されない。
【0029】
この実施例では、プランジャー及び外側バレルはそれぞれベント18aと18bを有するので、該ベローの外側は周囲大気に供される。従って、高度及び大気圧に関係なく精密な圧力読み値がもたらされる。
【0030】
好ましくは、該ベローが操作者に容易に視認出来るよう、バレル11及びプランジャー15の両者は透明な材料から成るのがよい。該ばね定数Kbellowsは校正され得るので、圧力Pは上記説明の様に精密に決定され得る。該注射器出口17が膨張可能な医療カッフ23(図1)の様な外部デバイスに接続される時、該ベロー14の内側室はカッフ23と直接流体的に連通し(すなわち、カッフ膨張/収縮時、又はカッフモニタリング手順時)、ベロー14の内部の圧力Pは該カッフ内の圧力に等しい。従って、該ベローの軸方向延びは該カッフ内の流体圧力を直接測定するため使われてもよい。
【0031】
最近の気管内チューブカッフは一般に比較的低い圧力に膨らまされ、前述の様に、安全なカッフ圧力範囲は約15と35cmHOの間、より好ましくは15cmHOと50cmHOの間の狭い圧力バンド内にある。小児科の患者用のチューブの様な場合には、該カッフ圧力は0と約15cmHOの間で、約10cmHOより低いことが多い。かくして、理想的には該注射器は、関心のある特定カッフ用の特定の安全カッフ圧力範囲内、及び該範囲を直接囲む、流体圧力の精密な測定値を提供するよう校正されるべきである。図2Aの実施例では、該プランジャーは、注射器内の流体圧力Pを示す、その長さに沿う、目盛り付けされたマーキング42を有する。加えて、該マーキング42は、カッフ膨張圧力が“安全”範囲内にあるかどうかの決定で臨床医に役立つカラーを有してもよい。例えば、42aで示されたプランジャーの部分は、該カッフ圧力が低すぎる(例えば、<15cmHO)ことを示すために赤い色付けを有し、42bで示された部分は“安全”範囲(例えば、15−35cmHO)内の該カッフ圧力を示すために白く、そして42cで示された部分は該カッフが高すぎる圧力(例えば、>35cmHO)に膨らまされたことを示すために暗赤色の色付けを有してもよい。多数種類のこのカラーコード化案が本発明の原理により実施されてもよいことは理解されるであろう。更に、可視的指示部は、該ベローが膨らみそして縮む時、流体圧力を示すために該指示部が該プランジャーに対し長手方向に移動するよう、該ベロー上に提供されてもよい。
【0032】
特定の実施例では、該注射器は、少なくとも5から35cmHO、又は10から35cmHO、又は或る実施例では、10から20HOの圧力範囲を示す複数のマーカーを有する。他の圧力範囲も本発明により考慮されている。
【0033】
図2A及び2Bは、特許文献2の図2及び3で示される圧力指示注射器30の精密な機能描写である図3A及び3Bと対照された時、特に、本発明の注射器の或る実施例の利点を図解する。
【0034】
図3A及び3Bのデバイスでは、ユーザーはプランジャー35に未知の力Fthumbを印加する。該プランジャー35はばね34を押し、該ばねは力Fspringで押し返す。運動の何れの点に於いても、該ばね力Fspringは、ばね定数kと、該ばねの自由長Lspringと該ばねの圧縮された長さXとの間の差と、の積に等しい。
【0035】
しかしながら、該ばねの長さの変化を観察することにより精密に測定されるこの力Fspringは、該圧力Pの精密な決定を可能にはしない。これは、該ばね力Fspringはピストン36を押し、該圧力の力、Fpistonのみならず、シール力、Fsealに依っても抵抗される事実に依る。該シール力は、該圧力と、該シール材料32と外側バレル31の間の摩擦係数と、そして製造誤差による該シールの初期事前負荷と、の関数である。 加えて、該摩擦係数は湿度と温度に依り変わり得る。
【0036】
膨張可能な気管内カッフで使われる比較的低い圧力の様な低い流体圧力で動作する時、該シール力、Fsealのこの変動性は該ばね機構の変位に影響し得て、かくして該圧力測定を図3A及び3Bのデバイスで精密でなくする。
【0037】
対照的に、図2Bで最も良く図解される様に、本発明の注射器10は、ピストン端部16と外側バレル11の間のシール力、Fsealから、該ベロー14のばね力を分離する。かくして、該シール力の変動はベロー変位又は圧力測定に影響しない。
【0038】
従って、本発明は、低圧力を精密に測定する永らく痛感されたニーヅを解決するが、それは圧力室内の圧力により自由に膨らむが、シール摩擦の様な何等かの力によっては拘束されないベローを使うことにより、弾性ばね要素を該圧力室に効果的に、直接結合することに依るからである。
【0039】
そこで、該ばね(ベロー14)は該ばねの第1(遠位の)部分でプランジャー15に結合され、該ばねの第2(近位の)部分は注射器キャビテイ223内の流体圧力に応答して動く。該ばねの該第1部分は該プランジャーの遠位の端部に設置され、該注射器の内壁とのスライドするシールを形成するよう該プランジャーに結合される。該ばねの該第2部分はシール用接触無しに該注射器内で長手方向に動く。
【0040】
図4A及び4Bは図2A及び2Bの実施例により動作するプランジャー組立体15の好ましい実施例を示す。該プランジャー組立体15は、機械的結合、超音波溶接及び/又はUV硬化接着剤の様な何等かの適当な手段を使い、一緒に接合されるか、相互に接着されてもよい2つの同一の半分品(15a、15b)から組み立てられてもよい。非常な多量用には、単一ピース部品がインジェクションモールドされてもよい。該組み立てられたプランジャー15は、該プランジャー15の一端の開口部19から延び、反対端で閉じられる円柱状内部キャビテイを形成する。該プランジャー15の該閉じた端部はキャップ部分55を有し、該部分はユーザーが該プランジャー15の該端部に快適に力を印加することを可能にするよう適合されている。該キャップ部分55の近くには、該プランジャーの内部を大気に通気し、該ベローにより測定される圧力が周囲大気を基準にしていることを保
証する空気ベント孔18aがある。
【0041】
図5A−5Cは1実施例のベロー14を図解する。該ベロー14は該ベロー14の一端に先端54を、そして該ベロー14の反対端にフッド53を有する。該ベロー14は先端54では閉じており、該フッド53の近くでは開いている。該フッド53は下記で更に詳細に説明される様に、プランジャー15のピストン端16上に嵌合している。組み立てられた注射器では、流体は開口部19を通して該ベロー14に入り、内部キャビテイ26を充たし、該ベロー14を圧力の関数として膨らませ、収縮させる。該ピストン15とベロー14はかくしてはまり込む仕方で相互に対し動く。ベロー14の膨張と収縮は、圧力マーキング42に対する先端54の位置が、圧力の可視的指示を臨床医又は医療家に与えるよう、該先端54をプランジャー15に対し軸方向に変位させる。
【0042】
図7A−7Cで示される様に、該フッド53はプランジャーのピストン端部16上に置かれ、次いでOリング52a及び52bは該フッド上に置かれ、該Oリングは該フッドを該プランジャー溝50a及び50b内へ変形させ、該ベローを位置的に引き留め、そして該プランジャー15とベロー14の組立体が外側バレル11内に置かれる時、気密シールが保持されるようにする。1つのOリングと溝が適度なシーリングを提供するのが典型的であるが、ここで2つ示されているのは堅牢さを追加するためである。この構成は、該プランジャーへの該ベローの組立及びシーリング用として接着剤又は他の接合方法を使用するニーヅを取り除く。従って、該フッド及びOリングの使用により高い簡便性(より低いコスト)と優れた信頼性とが成就される。
【0043】
1実施例では、プランジャー15の外径は約13mmであり、内径は約10mmであり、そして典型的バレル11の内径は14mmである。或るプランジャー壁厚さ用に充分な余地を残すために、該ベロー外径用のソフトな上限は約9から10mmに設定され、内径は約5から6mmに設定される。該ベローのピッチは典型的に3から4mmである。丸いプロフアイルのベローと3角形のプロフアイルのベローとの両者が使われてもよい。該デバイスが水平位置で使われるなら、重力は、該ベローの重さと、該ベロー材料と該プランジャープラスチックとの間の摩擦係数に等しい引きずり力(drag force)を惹起させるであろう。典型的に、該ベロー重さは約2gであるが、該重さの1/2が“引きずり(dragging)”であり(もう1つの端部はピストンにより支えられる)、該摩擦係数は精々0.3であり、従って引きずり力は約3mNである。望ましい膨張圧力に於けるベロー上の軸方向力は約60mNである。従って、圧力測定での最大の予想される誤差は典型的に約5%である。該ベローの先端の端部54はかくして該プランジャーの壁から機械的に分離される。標準の注射器プランジャー長さは又50から75mmの長さにソフトな上限を与える。該ベローは0.1から1mmの範囲の壁厚さを有してもよく、例えば0.5mm付近であってもよい。これらのパラメーターを用いると、該ベロー材料は、低圧で可視的に変形するよう、シリコーンゴムの様なソフトなエラストマー(ショア30−60A)であってもよい。
【0044】
該ベローはブローモールドされてもよく、該方法は凹角の特徴の故に最も低廉な製造オプションでありそうだが、しかしながら、ブローモールディングは約1/2mmより狭い許容差を提供せず、該ベローの半径に沿う壁厚さの固有の変動も生じる。しかしながら、各ベローは、該ベローが型を離れる時校正され、独特なバーコードを与えられてもよい。該ベローがプランジャー上に組み立てられ、バレル内に置かれる時、圧力指示マーク42用の最終レーザーマーキングが行われてもよい。代わりに、該システムが組み立てられた後、圧力が印加されそして圧力が増加する時、圧力指示マークがレーザーでマーク付けされ、そして例えばビジョンシステムにより位置が測定されてもよい。マサチューセッツ州、レオミンスターのアルブライトテクノロジー(Albright Technologies in Leominster,
MA)の様な、好適なブローモールドシリコーンエラストマーベローの多くの製造会社が
ある。
【0045】
1−2mmの最小厚さを有するディップモールディングについての許容差はもっと大きい。高精度インジェクションモールディング過程は重要寸法範囲の部品について誤差を0.1mmまで改良し、その結果として使われるが、しかし高価なツーリングを要し、かくして非常に大量の応用には好適になりそうである。
【0046】
図6A−6Eは、医療家の拇指が圧力を形成し、カッフ23内への流れを引き起こすよう力を印加する端部キャップ55と、ピストン端部16と、を有するプランジャー15を示す。ピストン端部16は、シール溝50a及び50bと、流体圧力がベロー18内に入るための開口部19と、を有するが、該ベローはプランジャー15の円柱状の内部キャビテイの内部に置かれ、該ピストン端部16上に嵌合されたベローフッド53を有する。
【0047】
図6A−6Cは圧力等化孔18aを図解するが、該孔は該ベローがカッフ23内の流体と周囲空気の間の圧力差に供されることを保証する。図6A−6Cは又圧力指示マーク42を図解する。
【0048】
図6Cは該プランジャーの半分品15a、15bの各々上の雌雄整合特徴部(ピン及び孔)64a及び64bを示す。図6Eは同様な整合特徴部65a及び65bを示す。2つの同一のプランジャー半分品15a、15bは面対面で接合され、該雌雄整合特徴部は嵌合するので、該プランジャー半分品は整合され、丸いプランジャーが得られる。該半分品は一緒に超音波溶接されるか又はUV硬化接着剤が使われてもよい。大量生産では単一体設計が創られてもよい。
【0049】
図7A−7Cはベロー18及びプランジャー15を有する注射器組立体10の好ましい実施例を示す。外側バレル11はプランジャー15を受け、医療家の拇指は力をプランジャー端部キャップ55に印加し、該医療家の指からの反作用力はフランジ13により受けられる。加圧流体(例えば、空気)は該注射器端部17を通って流れるが、該端部は、図1でカッフ23へ該加圧流体を運ぶ外部流体導管との流体密閉接続を形成するための接続要素{リュアロック(Luer-lok)部分の様な}を有する。
【0050】
図8A及び8Bは圧力測定注射器800のなおもう1つの実施例を図解する。該注射器800は図8Aに示す様に、ばねとしてのベロー806とプランジャー804内部のシールを使う。該プランジャー804の先端のゴムシール810(図8B)は、該注射器が、該注射器空気圧を該ベローに結合するシール内の孔と同じ様に感ずるよう使われる。該ベローの内部は該プランジャーのベースで大気に通気される。該ベローは、マノーメーターと該プランジャー上のマークとを使って、例えば、10cmHOのインクレメントで校正されてもよい。
【0051】
このシステムは、3kPaの圧力を与えられると、該ベローが例えば42.7mmだけたわむよう作動する。図8Bで示される様に、6CC注射器800の標準注射器外側シェル(バレル)802が使われてもよい。該システムは、ベロー806,該ベロー806を収容するプランジャーチューブ804,キャップ808、そして該プランジャー804と該シェル802の間のシール810を有する。該注射器感触を保存するために該プランジャーを該シェルに対しシールするよう従来のプランジャーからの現在のゴムシールが使われ、修正は、圧力伝達に必要な空気流を可能にするためにその軸線を通して約1.9mm(0.075インチ)の孔がドリル加工されたことである。
【0052】
ベロー材料は例えば、柔らかいゴム又は低圧力で可視的に変形するプラスチックであってもよい。ブローモールデッドスペシャルテイズ(Blow Molded Specialties)製の製品
の様な商業的ベローが使われてもよい。1実施例用のベロー寸法が表1にリスト化されている。該ベローは、先端を硬化し、該先端が変形し、読み出しを難しくしないことを保証するために、端部に同様な厚さのゴムのもう1つの層を付加するよう変型されてもよい。
【0053】
【表1】

【0054】
長期間使用時カッフ圧力をモニターする過程60が図9のシーケンスで図解される。この過程は最初に注射器で気管内カッフを選択された圧力に膨らませる過程61を有する。該注射器は次いで除かれるが63、それは該注射器が長期間患者の口の近くに取り付けられることは好ましくないからである。カッフ圧力をモニターするために、バルブが測定用に開かれた時、該カッフ圧力が著しく変わらないよう、該注射器は確立された範囲内に選択された注射器内部圧力を有するポートに周期的に取り付けられ、そしてオプション的に該カッフ圧力を調整する65。
【0055】
図10は小児科用の気管用チューブ(ETT)組立体900と、カッフを膨らませる及び/又はカッフの圧力を測定する圧力測定ゲージを有する注射器901と、を図解する。図1と連携して上記で実質的に説明された様に、該注射器901はカッフ903と流体的に連通する該チューブ組立体900の入り口バルブ905に取り付けられる。気管用チューブは小児科患者用に特に開発されて来た。これらのチューブは一般に小さく、子供の解剖構造用に誂えられている。例えば、キンバリークラーク社からのマイクロカッフ小児科用気管用チューブ(the MICROCUFF Pediatric Endotracheal Tube from Kimberly-Clark,
Inc.)が、3mm(生後八ヶ月より幼い患者用に推奨される)から7mm(14から16才未満の患者用に推奨される)までに及ぶチューブ内径を有する種々のチューブサイズで売られている。更に、この様な小児科用チューブが11cmHOの平均カッフ圧力、又は従来のチューブの約半分の圧力、で効果的にシールすることは知られている。1実施例に依れば、本発明の注射器801は小児科用気管内チューブの精密な圧力測定を提供するよう校正され、そして少なくとも約0から約20cmHOまでの圧力を含む範囲に亘り、特に約5から約15cmHOの範囲に亘って、検出可能である。該圧力測定デバイスは小児科用イーテーテーの安全カッフ圧力を精密に測定するよう校正され、上記で実質的に説明された、内部ベローを有するのが好ましい。或る実施例では、該注射器は広い範囲の圧力に亘り検出可能であり、成人及び小児科イーテーテーカッフ圧力測定用に使われてもよい。種々の種類のカッフ用に安全圧力範囲を示すために別々のマーキングが該注射器プランジャー上に提供されてもよい。他の実施例では、特定の圧力範囲に亘り校正された特定応用向け圧力測定注射器が、それぞれの注射器圧力感度範囲内に入る安全動作圧力を有する特定デバイス用のカッフ圧力を測定するため使われる。例えば、小児科特定的注射器がオプションで従来の注射器より小さく作られ(例えば、5cc以下)、少なくとも約0から約20cmHOまでの圧力を含む範囲に亘り、或いは特に約5から約15cmHOまでの範囲に亘り、検出可能であってもよい。
【0056】
代わりに、又は加えて、特定応用向け圧力測定モジュールが注射器内に挿入され、そこでは各モジュールは異なる圧力測定感度範囲を有してもよい。該圧力測定モジュールは例えば、注射器と相互交換可能式に使われ得る、種々のベローばね定数を有するベローであってもよく、或いは、再使用可能な外側バレル内に挿入され得て、各々が異なる内部ベロ
ーを有し、特定圧力範囲に亘り検出可能な、相互交換可能なプランジャー組立体であってもよい。種々に校正された圧力測定注射器のセット、又は注射器と共に使うための圧力測定モジュールがキットとして提供されてもよい。
【0057】
図11は臨床医が、患者内に気管内チューブを挿入し、カッフを安全圧力に膨らまし、そして長時間必要な様にカッフ圧力を精密にモニターし調整することを可能にするよう提供される気管内チューブ組立体931と圧力測定注射器933を有するキット930を図解する。該チューブ組立体931と注射器933は使い捨て部品として一緒に売られてもよい。代わりに、キット930の1つ以上の部品は例えば加圧蒸気滅菌可能であり、再使用可能であってもよい。
【0058】
本発明の種々の実施例が気管内チューブ組立体と共に使うための注射器と連携して説明されたが、圧力測定デバイスを有する本注射器が他の応用にも使われ得ることは理解されよう。例えば、本注射器は喉頭マスク、鼻気管チューブ(naso-tracheal tube)、喉頭チューブ(Laryngeal tube)等の様な他の膨張可能な医療デバイスで膨らませ、その圧力を測定するため使われてもよい。ベローの様な圧力測定デバイスが、特定の膨張可能なデバイスの安全動作範囲に亘り好適な圧力感度を提供するよう校正されることは理解されるだろう。例えば、喉頭マスクの場合、ベローバネは少なくとも約55から約60cmHOの安全動作圧力範囲に亘り感度を有するよう校正されてもよい。
【0059】
更に、膨張可能な医療デバイスで使用するのに加えて、本圧力測定注射器は哺乳動物身体内への液体の注射、神経内への局部麻酔の注射、そして仕切り症候群の診断及び治療の様な何等かの圧力検出医療手順と連携して使用されてもよい。麻酔の注射で使用するための圧力測定注射器は例えば、100cmHO付近までの圧力で精密であるよう校正されたベローを有してもよい。
【0060】
図12は患者950への圧力感応性医療手順で使われる圧力測定注射器940を図解する。該注射器940は例えば仕切り症候群の診断及び治療で使われてもよい。仕切り症候群は囲まれた解剖空間内の増加した圧力により特徴付けられ、弾力のない筋膜及び骨により閉ざされ、10mmHg(13.6cmHO)より低い正規圧力を有する空間内で見出されるのが典型的である。仕切り症候群用の従来の診断はストライカー針(Striker needle)を使って行われるが、そこでは針が該仕切り内に挿入され、少量の塩水が注射されるが、該針が該塩水を注射するために必要な圧力を表す。典型的に、30mmHg(40.8cmHO)を上回る圧力を有する患者に手術(例えば筋膜切開)が指示され、他の要因により、どこで圧力が10と30mmHg(13.6−40.8cmHO)の間にあるかが示される。本発明の圧力測定注射器940はこれらの圧力範囲に亘り校正され、高価なストライカー針セットアップを使うことなく、仕切り症候群を検出するため使われてもよい。これは又粉砕負傷での軍用にも有用である。
【0061】
本発明が特定の方法と装置と関連して説明されたが、当業者はここでの特定の実施例への他の等価物を認識するであろう。説明は例に依るものであり、本発明の範囲を限定するように行われておらず、そしてこれらの等価物は下記で表明される請求項により含まれるよう意図されていることは理解されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
注射器バレルと、
該バレル内のプランジャーと
該プランジャーに結合された第1部分と注射器キャビテイ内の流体圧力に応答して移動可能な第2部分とを有するばねと、
流体圧力を示すために該ばねの該第2部分の複数の位置に相関させられた圧力指示部と、を具備する圧力測定注射器。
【請求項2】
該ばねの該第2部分が、該プランジャーの内壁に対してシール接触することなしに該プランジャー内で長手方向に動く請求項1記載の注射器。
【請求項3】
該ばねの該第1部分が、該注射器バレルの内壁とスライドシールを形成するよう該プランジャーに結合される請求項1記載の注射器。
【請求項4】
該ばねがベローを有する請求項1記載の注射器。
【請求項5】
該圧力指示部が、不足膨張を示す少なくとも第1レベルと、過剰膨張を示す少なくとも第2レベルを含む流体の、複数の、少なくとも3つの圧力レベルを有する請求項1記載の注射器。
【請求項6】
該プランジャーが遠位の端部と近位の端部とを有し、該ばねの該第1部分が、該プランジャーの該遠位の端部に取付けられる請求項1記載の注射器。
【請求項7】
該ばねが遠位の端部と近位の端部とを有する請求項1記載の注射器。
【請求項8】
該ばねの該遠位の端部が該第1部分を有し、該ばねの該近位の端部が該第2部分を有する請求項7記載の注射器。
【請求項9】
該ばねの該近位の端部が、流体圧力を示すために該ピストンに対し長手方向に動く可視的指示部要素を有する請求項8記載の注射器。
【請求項10】
該流体がガスを有する請求項1記載の注射器。
【請求項11】
該流体が液体を有する請求項1記載の注射器。
【請求項12】
該注射器が、気管内のカッフのガス圧力を測定するため該カッフに接続される請求項1記載の注射器。
【請求項13】
該スライドシールがOリングを有する請求項3記載の注射器。
【請求項14】
該ばねがコイル状ばね及び/又は柔軟なダイアフラムを有する請求項1記載の注射器。
【請求項15】
該注射器が、少なくとも5cmHOから35cmHOの圧力範囲を示す複数のマーカーを有する請求項1記載の注射器。
【請求項16】
該プランジャーは、該ばねが中に配置される内部キャビテイを有するチューブ状ボデイを備え、該プランジャーは、該ばねと、該注射器の遠位のキャビテイとの間の流体接続を提供するために遠位の開口部を有する請求項1記載の注射器。
【請求項17】
該ばねの遠位の端部が、該プランジャーの遠位の端部に機械的に結合される請求項1記載の注射器。
【請求項18】
該注射器が、塩水の様な液体の哺乳動物身体内への注射のための針に接続される請求項1記載の注射器。
【請求項19】
該注射器が小児科用気管内チューブに接続される請求項1記載の注射器。
【請求項20】
先端端部のアパーチャーと反対端部の開口部とを有するバレルと、
該バレル内に配置され、該プランジャーの近くに流体室を規定するよう該バレルの内壁に対しシールを形成するプランジャーと、
該プランジャー内に配置され、第1端で該プランジャーに取付けられ、該流体室内の圧力を示すために第2端で移動可能であるベローと、
該ベローの位置に基づき該流体室内の圧力を示す可視的指示と、を具備する気管内カッフ圧力測定注射器。
【請求項21】
該プランジャーが、5から35cmHOの範囲内で高圧限界と低圧限界を示す可視的指示を有する請求項20記載の注射器。
【請求項22】
該可視的指示が、10から30cmHOの範囲内の圧力を指示する請求項20記載の注射器。
【請求項23】
該可視的指示が、該プランジャーの外壁面上に配置される請求項20記載の注射器。
【請求項24】
該ピストン及び該ベローが、伸縮する仕方で相互に対し移動する請求項20記載の注射器。
【請求項25】
該ベローが、該流体室と流体的に連通する内部キャビテイを有する請求項23記載の注射器。
【請求項26】
該可視的指示が、該プランジャーが該注射器内部で軸方向にスライドする時、視認可能なマーキングを該プランジャー上に有する請求項20記載の注射器。
【請求項27】
該マーキングが、該室内の流体圧力を示す目盛り付きマーキングを有する請求項26記載の注射器。
【請求項28】
該マーキングが、該プランジャー上の配色の変化を有する請求項26記載の注射器。
【請求項29】
該ベローの近位の端部上の指示部を更に具備する請求項5記載の注射器。
【請求項30】
該ベローが、0.1から1mmの範囲内の壁厚さを有する請求項20記載の注射器。
【請求項31】
該可視的指示が数値圧力値を有する請求項20記載の注射器。
【請求項32】
該ベローが、該カッフ内の不足圧力か過剰圧力か何れかを示す近位の端部を有する請求項20記載の注射器。
【請求項33】
該流体室が気管内チューブのカッフと流体的に連通しており、該測定される圧力が該カッフ内の該圧力を有する請求項20記載の注射器。
【請求項34】
該マーキングが、1から5cmHOの範囲の圧力のインクレメントを示す離間したマーキングを有する請求項27記載の注射器。
【請求項35】
気管内チューブのカッフ内の圧力を測定する方法であって、
注射器を該カッフに接続する過程を具備しており、該注射器は、先端端部にアパーチャーを有するバレルを備えており、又該注射器は、該バレル内に配置されるプランジャーを有し、該プランジャーの近くに流体室を規定するため該バレルの内壁に対しシールを形成しており、該プランジャー内に配置され、該プランジャーに対し軸方向に移動可能であるばねを有しており、該ばねは、第1端部で該プランジャーに取付けられ、該ばねの第2端部の該軸方向移動が該流体室内の圧力を示すようなっており、
該バレルに対し該プランジャーを押し下げることにより該注射器を駆動する過程と、そして
該カッフ内部のガス圧力を測定する過程と、を具備する方法。
【請求項36】
該ばねの位置に基づき該流体室内の該圧力を示す可視的指示を見る過程を更に具備しており、該可視的指示は、約5から35cmHOの範囲内の圧力を示す請求項35記載の方法。
【請求項37】
該可視的指示が、10から30cmHOの範囲内の圧力を更に示す請求項36記載の方法。
【請求項38】
該圧力を測定する過程が、ベロー又はダイアフラムの様なばねを変位させる過程を更に有する請求項35記載の方法。
【請求項39】
該ばねの該第2端部が、該プランジャーの壁から機械的に分離される請求項35記載の方法。
【請求項40】
該プランジャー上の手動圧力を解除する過程と、該カッフ内の流体圧力をモニターする過程と、を更に具備する請求項35記載の方法。
【請求項41】
該プランジャー上の可視的指示に対する、該ベローの近位の端部上に配置された指示部要素の位置を、観察する過程を更に具備する請求項38記載の方法。
【請求項42】
該カッフの不足膨張又は過剰膨張を測定する過程を更に具備する請求項35記載の方法。
【請求項43】
該駆動する過程が、該注射器で該カッフを膨らませる過程を更に有する請求項35記載の方法。
【請求項44】
該カッフを膨らませる過程が、該プランジャーを該注射器バレル内へ手動で押し込む過程を有しており、該プランジャーが遠位の方向にスライドする、該バレルの内壁に対するシールを有する請求項43記載の方法。
【請求項45】
注射器バレルを形成する過程と、
プランジャーを形成する過程と、
ばねを形成する過程と、
該ばねが第1部分で該プランジャーに結合されており、該ばねが該プランジャーに対し長手方向に移動可能な、結合されない第2部分を有する該ばねを該プランジャー内に挿入する過程と、
シールを形成するために該プランジャーと該ばねを該注射器バレル内に挿入する過程と
、を具備する圧力測定注射器を製作する方法。
【請求項46】
該ばねが、モールドされたベローを有する請求項45記載の方法。
【請求項47】
該注射器バレル、プランジャーそしてばねが非金属である請求項45記載の方法。
【請求項48】
圧力レベルを示すために該プランジャー上にマーキングを形成する過程を更に具備する請求項45記載の方法。
【請求項49】
該プランジャーが、遠位の端部のピストンと、近位の端部のキャップと、そして空気ベントと、を有する請求項45記載の方法。
【請求項50】
該注射器が、2から20ccの範囲の排出容積を有する請求項45記載の方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図6D】
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【図6E】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公表番号】特表2012−515064(P2012−515064A)
【公表日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−546395(P2011−546395)
【出願日】平成22年1月15日(2010.1.15)
【国際出願番号】PCT/US2010/021233
【国際公開番号】WO2010/083433
【国際公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【出願人】(500479843)
【出願人】(591275056)マサチユセツツ・インスチチユート・オブ・テクノロジイ (9)
【氏名又は名称原語表記】MASSACHUSETTS INSTITUTE OF TECHNOLOGY
【Fターム(参考)】