説明

圧力源システム

【課題】モータの消費エネルギを削減できる圧力源システムを提供する。
【解決手段】加圧された作動油(作動流体)を供給する圧力源システム1であって、加圧作動油を吐出するポンプ11と、このポンプ11から吐出される加圧作動油を蓄えるアキュームレータ13と、慣性力によって回転するフライホイール5と、このフライホイール5を回転駆動するモータ3と、フライホイール5からポンプ11に伝達される回転力を断続するポンプ側クラッチ6と、アキュームレータ13の圧力Pを目標値PDに保つようにポンプ側クラッチ6の断続作動を制御する制御回路31とを備える構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加圧された作動流体を供給する圧力源システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の圧力源システムとして、モータによって回転駆動されることによって加圧作動油を吐出するポンプと、このポンプから吐出される加圧作動油を蓄えるアキュームレータとを備え、このアキュームレータに貯留された加圧作動油を車両の油圧モータに供給するものがある(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2005−096759号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、このような従来の圧力源システムにあっては、アキュームレータの圧力が十分に高められた状態でもモータによってポンプが回転駆動され、モータの消費エネルギが増大するという問題点があった。
【0004】
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたものであり、モータの消費エネルギを削減できる圧力源システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、加圧された作動流体を供給する圧力源システムであって、加圧作動流体を吐出するポンプと、このポンプから吐出される加圧作動流体を蓄えるアキュームレータと、慣性力によって回転するフライホイールと、このフライホイールを回転駆動するモータと、フライホイールからポンプに伝達される回転力を断続するクラッチと、アキュームレータの圧力を目標値に保つようにクラッチの断続作動を制御する制御回路とを備えるものとした。
【発明の効果】
【0006】
本発明によると、フライホイールの回転力がポンプ側クラッチを介してポンプに伝えられることにより、ポンプを断続的に駆動することが可能となり、ポンプの駆動を停止する作動時にモータの動力がポンプに伝えられることがなく、モータを小さい負荷で略一定速度で回転させることによってモータの消費エネルギを削減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0008】
図1に示す圧力源システム1は、所定の圧力に加圧された作動油(作動流体)を供給するものである。
【0009】
圧力源システム1は、その回転によって加圧作動油を吐出するポンプ11と、このポンプ11から吐出される加圧作動油を蓄えるアキュームレータ13とを備える。
【0010】
ポンプ11は吸込通路21を介してタンク14に貯留された作動油を吸込み、加圧作動油を吐出通路22に吐出する。
【0011】
吐出通路22にはチェック弁12が介装され、ポンプ11から吐出される加圧作動油はチェック弁12を介してアキュームレータ13に供給される。
【0012】
アキュームレータ13は、例えばガス封入式のものが用いられる。この場合、アキュームレータ13は、その内部がガスが封入されたガス室と、加圧作動油が貯留される作動油室とに仕切られ、貯留される作動油量が増えて作動油室の圧力が上昇すると、ガス室が収縮するようになっている。
【0013】
吐出通路22にはチェック弁12の下流側に圧力検出器15が介装され、この圧力検出器15の検出信号が制御回路31に入力される。
【0014】
圧力源システム1から加圧作動油が供給される負荷として電気油圧サーボアクチュエータ16が設けられる。電気油圧サーボアクチュエータ16は、アキュームレータ13に連通する吐出通路22とタンク14に連通する戻し通路23とにそれぞれ接続される。
【0015】
ポンプ11を回転駆動するアクチュエータとして、電動モータ3が設けられる。このモータ3とポンプ11との間には、フライホイール5が設けられる。フライホイール5は重量のある円盤であり、この円盤が慣性力によって回転することにより力のエネルギーを保存する。
【0016】
モータ3とフライホイール5との間にはモータ側クラッチ4が設けられ、このモータ側クラッチ4によって両者間の回転伝達が断続される。モータ側クラッチ4は例えば電磁式のものが用いられる。この場合、モータ側クラッチ4はサーボアンプ方式のクラッチON・OFF回路33から出力される駆動電流によって断続作動する。
【0017】
フライホイール5とポンプ11の間にはポンプ側クラッチ6が設けられ、このポンプ側クラッチ6によって両者間の回転伝達が断続される。ポンプ側クラッチ6は例えば電磁式のものが用いられる。この場合、ポンプ側クラッチ6はサーボアンプ方式のクラッチON・OFF回路34から出力される駆動電流によって断続作動する。
【0018】
三相交流式のモータ3は、高速スイッチング回路32から出力される駆動電流によって回転作動する。
【0019】
制御回路31は、モータ側クラッチ4を接続した状態でモータ3がフライホイール5を一定の回転速度で駆動するように高速スイッチング回路32を介してモータ3の作動を制御する。
【0020】
制御回路31は、圧力検出器15によって検出されるアキュームレータ13の圧力Pを入力するとともに、指令値として圧力デマンドPDを入力し、検出圧力Pを圧力デマンドPDに近づけるようにクラッチON・OFF回路34を介してポンプ側クラッチ6の断続作動をフィードバック制御する。
【0021】
このフィードバック制御は、検出圧力Pが圧力デマンドPDより低下すると、ポンプ側クラッチ6を接続作動させる駆動電流を出力する。これにより、フライホイール5の回転がポンプ側クラッチ6を介してポンプ11に伝えられ、ポンプ11から吐出される加圧作動油がチェック弁12を介してアキュームレータ13に蓄えられる。
【0022】
検出圧力Pが圧力デマンドPDより所定のヒステリシス分を超えて上昇すると、ポンプ側クラッチ6への駆動電流がカットされる。これにより、ポンプ側クラッチ6の接続が解除され、フライホイール5の回転がポンプ11に伝えられることがなく、モータ3がフライホイール5を駆動する負荷が低減される。
【0023】
こうして、ポンプ11の吐出作動がポンプ側クラッチ6を介して断続される一方、モータ3がフライホイール5を略一定速度で回転作動させることにより、ポンプ11の駆動を停止する作動時にモータ3の動力が無駄に使われることを抑えられ、モータ3の消費電力を削減することができる。
【0024】
図2の(a)、(b)は、アキュームレータ13のガス体積、圧力が経過時間に応じてそれぞれ変化する様子を示している。これは、サーボアンプ方式のクラッチON・OFF回路34が1Hzの正弦波で加振した場合の特性であり、アキュームレータ13のガス体積、圧力が周期的に変動し、その変動幅が所定の範囲に抑えられる。
【0025】
本実施の形態では、加圧された作動油(作動流体)を供給する圧力源システム1であって、加圧作動油を吐出するポンプ11と、このポンプ11から吐出される加圧作動油を蓄えるアキュームレータ13と、慣性力によって回転するフライホイール5と、このフライホイール5を回転駆動するモータ3と、フライホイール5からポンプ11に伝達される回転力を断続するポンプ側クラッチ6と、アキュームレータ13の圧力Pを目標値PDに保つようにポンプ側クラッチ6の断続作動を制御する制御回路31とを備える構成とした。
【0026】
上記構成に基づき、フライホイール5の回転力がポンプ側クラッチ6を介してポンプ11に伝えられることにより、ポンプ11を断続的に駆動することが可能となり、ポンプ11の駆動を停止する作動時にモータ3の動力がポンプ11に伝えられることがなく、モータ3を小さい負荷で略一定速度で回転させることによってモータ3の消費エネルギを削減することができる。
【0027】
本実施の形態では、アキュームレータ13の圧力Pを検出する圧力検出器15を備え、制御回路31は圧力検出器15によって検出される検出圧力Pを入力し、検出圧力Pを目標値PDに近づけるようにポンプ側クラッチ6の断続作動をフィードバック制御する構成とした。
【0028】
上記構成に基づき、アキュームレータ13の圧力Pを的確に制御することができる。
【0029】
なお、圧力源システム1を循環する作動流体として、作動油としての代わりに例えば水溶性代替液等の作動流体を用いても良い。また、作動流体として、ガス(気体)を用いても良い。
【0030】
本発明は上記の実施の形態に限定されずに、その技術的な思想の範囲内において種々の変更がなしうることは明白である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の実施の形態を示す圧力源システムの構成図。
【図2】同じくアキュームレータのガス体積、圧力が経過時間に応じてそれぞれ変化する様子を示す特性図。
【符号の説明】
【0032】
1 圧力源システム
3 モータ
5 フライホイール
6 クラッチ
11 ポンプ
12 チェック弁
13 アキュームレータ
14 タンク
15 圧力検出器
31 制御回路
32 高速スイッチング回路
34 クラッチON・OFF回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加圧された作動流体を供給する圧力源システムであって、
加圧作動流体を吐出するポンプと、
このポンプから吐出される加圧作動流体を蓄えるアキュームレータと、
慣性力によって回転するフライホイールと、
このフライホイールを回転駆動するモータと、
前記フライホイールから前記ポンプに伝達される回転力を断続するクラッチと、
前記アキュームレータの圧力を目標値に保つように前記クラッチの断続作動を制御する制御回路とを備えたことを特徴とする圧力源システム。
【請求項2】
前記アキュームレータの圧力を検出する圧力検出器を備え、
前記制御回路は前記圧力検出器によって検出される検出圧力を入力し、検出圧力を目標値に近づけるようにクラッチの断続作動をフィードバック制御することを特徴とする請求項1に記載の圧力源システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2010−71439(P2010−71439A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−242289(P2008−242289)
【出願日】平成20年9月22日(2008.9.22)
【出願人】(304039065)カヤバ システム マシナリー株式会社 (185)
【Fターム(参考)】