説明

圧延プラントの監視装置,圧延プラントの監視システムおよび圧延プラントの監視方法

【課題】圧延プラントに対して映像データと映像情報を用いた監視や操業解析,品質不良解析を、遠隔から高応答に行う。
【解決手段】圧延プラントのある監視サーバ側に、蓄積している映像データと映像データから特定のコイルを解析するのに過不足のないデータをコイル名に対応付けて抽出するコイルデータパック手段と、コイル単位にパックされたデータを蓄積するコイルデータ蓄積手段を備えた。また遠隔地にある監視端末側に、監視サーバのコイルデータ蓄積手段からデータをコイル単位で選択して取り込むことのできるコイルデータ取得手段と、取り込んだコイルの中から解析対象となるコイルを選択するコイル抽出手段,映像データと映像情報を同期して再生する同期再生手段を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧延プラントの監視装置,圧延プラントの監視システムおよび圧延プラントの監視方法に関する。
【背景技術】
【0002】
圧延設備の監視においては、板厚計や張力計等を設置して板厚や張力等のプロセスデータを検出すると共に、さらに、カメラを設置してプロセスの様子をそのカメラによって映像として撮像することが一般になされている。
【0003】
このプロセスデータと映像情報を用いて圧延プラントを監視する技術として、例えば特開平5−79951号公報には、映像デ−タとプロセスデータとを対応付けることで、それらを同期して再生する技術が記載されている。すなわち、プロセスデータと映像情報とを各々のデータベースに記憶し、時刻を指定することにより、そのデータが記録された時点の映像とその時点でのプロセスデータを呼び出して表示したり、また、探索値を指定することによりデータが記録された時点を特定して、そのデータが記録された時点の映像とその時点でのプロセスデータを呼び出して表示する技術が記載されている。
【0004】
また、特開平9−85315号公報には、コイルに着目してデータ処理を行う技術として、鋼板の品質情報を巻き取られたコイル単位毎に編集し、鋼帯品質をコイル単位で自動的に判定する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−79951号公報
【特許文献2】特開平9−85315号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般に、溶接により連続化され圧延される被圧延材のある溶接点から次の溶接点まではコイルとして単位づけられるものであるが、特許文献1,特許文献2記載の方法を、映像データとプロセスデータが混在した情報を用いて圧延プラントを遠隔監視する目的で使用すると、以下の問題があった。すなわち圧延プラントで処理されるコイルは、同一コイルであっても圧延プラントの上流設備と下流設備とでは、処理の開始時刻と終了時刻が異なる。特開平9−85315号公報はこの点に配慮していないため、収集データ毎に処理の開始時刻と終了時刻が異なることに配慮して、同一コイルのデータを抽出することはできなかった。
【0007】
さらに特開平5−79951号公報の手法を遠隔監視に使用すると、解析の間、遠隔側と圧延プラント側との間で映像情報を含む容量の大きなデータをやりとりする必要があった。このためインターネットを介した伝送量が多大となり、解析画面の応答性が低下する問題があった。
【0008】
したがって、本発明が解決しようとする課題は、圧延プラントを遠隔監視するとき、品質不良が発生したコイルを解析するための必要最小限のデータを遠隔側の端末にローディングする手法を提供することで、映像データとプロセスデータを用いた圧延プラントの遠隔監視を高応答化することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明では、熱間圧延プラント,冷間圧延プラント,プロセッシングライン等の被圧延材の圧延に係る圧延プラントから取り込んだプロセスデータを収集し、圧延プラントから取り込んだ映像データを収集し、収集されたプロセスデータと映像データに時刻情報を付与し、時刻情報が付与されたプロセスデータと映像データから、圧延された被圧延材の所定の連続的な箇所として単位づけられるコイルに該当するプロセスデータと映像データを抽出して、コイルに紐づいたデータのセットとしてコイルデータパックを構築し、コイルデータパックを蓄積するように構成した。
【0010】
また、熱間圧延プラント,冷間圧延プラント,プロセッシングライン等の圧延プラントからプロセスデータと映像データを収集するとともに、前記プロセスデータと映像データに時刻情報を付与し、プロセスデータと映像データにコイル名を付与し、時刻情報が付与されると共に前記コイル名が付与されたプロセスデータと映像データを蓄積し、指定されたコイル名に対して、指定されたコイル名に該当するプロセスデータと映像データを取り出して、コイル名に紐付けて別のエリアに蓄積し、遠隔に備えられた監視端末からコイル名が指定されると、蓄積されたプロセスデータと映像データからコイル名に該当するプロセスデータと映像データを監視端末に取り込み、指定されたコイル名に対して、プロセスデータと映像データに付与された時刻情報を用いて、監視端末上で取り込んだプロセスデータと映像データを同期して再生するように構成した。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、映像データとプロセスデータを用いた圧延プラントの監視を高応答化することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の制御システムの構成を示した説明図である。
【図2】時刻付与手段の処理である。
【図3】プロセスデータ蓄積手段の説明図である。
【図4】映像データ蓄積手段の説明図である。
【図5】コイルデータパック手段の処理である。
【図6】コイルデータ取得手段の処理である。
【図7】監視画面152の説明図である。
【図8】コイルデータパック手段の処理である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
圧延プラントに対して遠隔からプロセスデータと映像情報を用いた解析を応答性良く行えるため、圧延プラントの監視制御の効率化,保守性向上を実現できる。
【実施例1】
【0014】
図1に本発明の実施例を示す。全体は、圧延プラント135と監視サーバ101のある工場内100,監視端末151のある遠隔地150、これらをインターネットで接続する公衆網170からなり、工場内100の監視サーバ101と遠隔地150の監視端末151は、公衆網170を介して通信を行う。
【0015】
まず工場内100の機器と処理について説明する。本実施例で監視対象は圧延プラント135である。この圧延プラント135は、熱間圧延プラント,冷間圧延プラントあるいはプロセッシングライン等を構成しても良い。本実施例で圧延プラント135は、第1スタンド146,第2スタンド147,第3スタンド148,第4スタンド149の4つのスタンドで圧下力を加えることにより、鋼板141を徐々に薄くしていく。鋼板141は溶接点144により後ろの鋼板と、また溶接点145により前の鋼板とつながれており、いわゆる連続圧延が行われる。この溶接点144から溶接点145までが鋼板の巻取り単位であるコイルとなされる。もちろん、他の任意の点から任意の点をコイルとしても良いのはもちろんである。圧延プラント135には鋼板141や機器の状態を検出するため、種々の計測器やカメラが取り付けられている。一例として板厚計142は鋼板141の第1スタンド146出側の板厚を計測し、板厚計143は鋼板141の第4スタンド149出側の板厚を計測する。一般にはこの他に、鋼板141の移動速度を検出する板速計、鋼板141がスタンド間で引張られる力を計測する張力計、鋼板141の幅方向の伸びのバランスを計測する形状計等が備えられる。本願ではこれらで計測したデータを総称して、プロセスデータと称する。また図1でカメラ140は、第1スタンド入側の様子を映像情報として取り込む。カメラも同様に、目的に応じて種々の位置に取り付けられる。鋼板141は圧延プラント135で圧延された後、溶接点144,145の近傍で切断され、コイルとして巻取られる。一般にコイルが圧延鋼板の品質管理の単位である。
【0016】
コントローラ130は圧延プラント135から実績データを取り込み、圧延プラント135を制御するとともに、取り込んだ実績データをネットワーク133を介して、監視サーバ101に送信する。エンコーダ131はカメラ140から取り込んだ映像情報を、同様にネットワーク133を介して監視サーバ101に送信する。以下、監視サーバ101の各機能を「…手段」とも記するが、例えば、監視サーバ101は1つまたは複数の計算機で構成し、「…手段」とも記した各機能はソフトウェアで実現しても良いのはもちろんである。また、監視端末151においても同様である。監視サーバ101は、コントローラ130から送られて来るプロセスデータを収集するプロセスデータ収集手段103、プロセスデータ収集手段103が収集したプロセスデータを格納し、蓄積するプロセスデータ蓄積手段104、エンコーダ131から送られてくる映像データを収集する映像収集手段105、映像収集手段105が収集した映像データを格納し、蓄積する映像データ蓄積手段106、プロセスデータと映像データのそれぞれにデータの収集時刻を特定するための情報を付与する時刻付与手段107(収集時刻はデータ検出に同期(同時刻)の時刻であり、以下、時刻情報とも称する)、プロセスデータと映像データに付与するコイル名を上位計算機から受け取り、プロセスデータ蓄積手段104と映像データ蓄積手段106に出力するコイル名付与手段110,監視画面102からユーザが要求したコイルに対して、プロセスデータ蓄積手段104と映像データ蓄積手段106に蓄積されている該当コイルのデータを抽出し、コイル名に紐づいたデータのかたまりを構築するコイルデータパック手段108、コイル名に紐づいたデータのかたまりをコイル単位で蓄積するコイルデータ蓄積手段109を備えている。図でコイルデータ蓄積手段にはA1001〜C1029のコイルが蓄積されている。監視画面では、蓄積されたデータを表示するとともに、コイルデータ蓄積手段109に格納したいコイル名を入力できる。
【0017】
次に遠隔地150の機器と処理について説明する。遠隔地150には圧延プラント135の状態を監視するための監視端末151と監視画面152が備えられている。監視端末151はネットワーク157につながれており、遠隔地150側のゲートウェイ158,公衆網170(例えばインターネット(TCP/IPプロトコル),LAN(IEEE802プロトコル)を用いても良い),工場内100側のゲートウェイ132を介して、工場内のネットワーク133に接続されており、監視サーバ101との間で信号を授受できる。監視端末151は、監視画面152からユーザが要求したコイルに対して、監視サーバ101のコイル蓄積手段からコイルデータを取得し、コイルデータ蓄積手段154に格納するコイルデータ取得手段153、取得したデータをコイル名に対応づけてコイル単位で蓄積する端末側コイルデータ蓄積手段154、監視画面152からユーザが要求した解析対象となるコイルに対して、端末側コイルデータ蓄積手段154から該当コイルを抽出するコイルデータ抽出手段155、抽出したコイルに対してプロセスデータと映像データを同期再生する同期再生手段156を備えている。
【0018】
以下、各部の動作を詳細に説明する。図2に時刻付与手段107の処理を示す。時刻情報を付与する目的は、プロセスデータ,映像データのそれぞれについて、これらを同期再生することと、データのそれぞれがどのコイルに対応しているかを特定するための情報を添付することである。時刻付与手段107はタイマーで周期的に起動される。実システムでは必要とされる時刻精度に従って、20ms〜100ms程度で起動されることが多い(以下の実施例では10msec毎)。S2−1で、プロセスデータのひとつについて、このプロセスデータの検出位置をコイルの溶接点144,145が通過したかどうかを判定する。溶接点が通過していないときはS2−3に進む。溶接点が通過しているときはS2−2で監視サーバ101が内部で有している時刻を取り込み、この時刻を前のコイルの抜け時刻と後コイルの進入時刻として特定し、プロセスデータ蓄積手段104に出力する。すなわち、次にS2−3で全てのプロセスデータ(例えば、少なくとも、F4D板厚,F1_F2張力,F1ロール速度…)に対して処理が終了したかどうかを判定し、終了していないときは次のプロセスデータに対してS2−1〜S2−3の処理を繰り返す。終了しているときはS2−4で、カメラのひとつについて、このカメラの撮像位置をコイルの溶接点144,145が通過したかどうかを判定する。たとえばカメラがミル入側を撮影しているとき、撮像位置はミルの位置である。溶接点が通過していないときはS2−6に進む。溶接点が通過しているときはS2−5で監視サーバ101が内部で有している時刻を取り込み、前のコイルの抜け時刻と後コイルの進入時刻を特定し、映像データ蓄積手段106に出力する。次にS2−6で全てのカメラ(少なくともカメラ140…)に対して処理が終了したかどうかを判定し、終了していないときは次のカメラに対してS2−4〜S2−6の処理を繰り返す。終了しているときはS2−7で映像データのファイリングタイミングかどうかを判定する。圧延プラント135にカメラが複数備えられている場合でも、通常は同一タイミングで映像データをファイリングすることが多いので、本実施例でも映像ファイリングタイミングが同一の場合を示しているが、解像度の異なるカメラの場合等であれば、カメラ毎に異なったタイミングでファイリングすることもできる。映像データのファイリングタイミングのときは、S2−8で映像データに、例えば201001301036.mpgのような時刻をキーにしたファイル名を付与し、映像データ蓄積手段106に出力する。
【0019】
図3にプロセスデータ蓄積手段104の構成を示す。プロセスデータ蓄積手段104は、プロセスデータ収集手段103から受信したプロセスデータを格納する時系列プロセスデータ蓄積手段301と、各コイルについて各プロセスデータの検出位置に進入した時刻と検出位置を抜けた時刻を、それぞれ開始時刻,終了時刻として格納するプロセス時刻情報蓄積手段302から構成される。ここでは、コイルの溶接点145がF4D板厚の検出計で2010.1/30/10:30:24:150に検出され、その後、10msec毎に、F4D板厚が検出されている。そして、次の溶接点144が2010.1/30/10:32:13:310に検出される。同様に、コイルの溶接点145がF1_F2張力の検出計で2010.1/30/10:30:13:440に検出され、その後、10msec毎に、そして、次の溶接点144が2010.1/30/10:32:02:760に検出される。さらに、コイルの溶接点145がF1ロール速度の検出計で2010.1/30/10:30:12:010に検出され、その後10msec毎に、そして、次の溶接点が2010.1/30/10:32:01:330に検出される。時系列プロセスデータ蓄積手段301は、第4スタンド149の出側板厚(F4D板厚)、第1スタンド146と第2スタンド147間の張力(F1_F2張力)等の検出値(第1スタンド146と第2スタンド147の間に図示しない張力計が設けられている。)、第1スタンド146のロール速度(F1ロール速度)第1スタンド146の作業ロールを回転させるモータに図示しない速度計が設けられ、この速度計でロール速度F1が検出される。取り込み時刻に対応付けて蓄積している。またプロセス時刻情報蓄積手段302は、コイル毎に各プロセスデータの検出位置に進入した時刻と抜け時刻が格納されており、たとえば、言いかえると、コイル名A1001のコイルは第4スタンド出側板厚検出位置に2010年1月30日10時30分24.150秒に進入したことで、このコイルの板厚の測定が開始され、2010年1月30日10時32分13.310秒にコイル抜けにより、このコイルの測定を完了したことが分かる。言い換えると、第4スタンド出側板厚計から検出された時系列データに対して、2010年1月30日10時30分24.150秒から2010年1月30日10時32分13.310秒まではコイル名A1001のコイルに対応したデータであることを示している。
【0020】
図4に映像データ蓄積手段106の構成を示す。映像データ蓄積手段106は、映像収集手段105(映像データ)から受信した映像データを格納する時系列映像データ蓄積手段401と、各コイルについて各映像データの撮像位置に進入した時刻と撮像位置を抜けた時刻を格納する映像時刻情報蓄積手段402から構成される。時系列映像データ蓄積手段401は、カメラ140で取り込んだ映像データを1分単位でファイリングし、取り込み時刻に対応付けて蓄積している。図の例では、ファイル名がそのまま取り込み時刻として名付けられてあり、カメラ140が2010年1月30日10時30分から1分間の間に取り込んだ映像データが、201001301030.mpgのファイル名で格納されている。以下、撮影した映像を1分毎に、取り込み開始時刻をファイル名として格納されている。また映像時刻情報蓄積手段402は、コイル毎に各映像データの撮像位置に進入した時刻と抜け時刻が格納されており、たとえばコイル名A1001のコイルはカメラ140の撮像位置に2010年1月30日10時30分6.110秒に進入(溶接点145がカメラで検出)したことで、このコイルの映像の取り込みが開始され、2010年1月30日10時31分48.400秒にコイル抜け(溶接点144がカメラで検出)により、このコイルの映像の取り込みを終了したことが分かる。言い換えると、カメラ140で撮影された映像データに対して、2010年1月30日10時30分6.110秒から2010年1月30日10時31分48.400秒まではコイル名A1001のコイルに対応した映像であることを示している。他のカメラについても、同様の形態で映像データが蓄積されている。
【0021】
図5にコイルデータパック手段108の処理を示す。コイルデータパック手段108は、ユーザにより特定されたコイルについて、プロセスデータ蓄積手段104と映像データ蓄積手段106から、このコイルに紐づいたデータを過不足なく抽出し、コイル名をキーとしてコイルデータ蓄積手段109に格納する。S5−1で、ユーザが監視画面102から入力したコイル名を取り込み、処理の対象となるコイルを特定する。S5−2では、特定された該当コイルについて、プロセス時刻情報蓄積手段302の対応するコイル名の開始時刻と、映像時刻情報蓄積手段402の対応するコイル名の開始時刻とを検索し、すべてのプロセスデータの中で最も古い開始時刻を抽出し、これを第1の時刻(図3の例では、F1ロール速度の2010.1/30/10:30:12:010)とする。同様に該当コイルについて、プロセス時刻情報蓄積手段302の対応するコイル名の終了時刻と、映像時刻情報蓄積手段402の対応するコイル名の終了時刻とを検索し、最新の終了時刻を抽出し、これを第2の時刻(図3の例では、F4D板厚の2010.1/30/10:32:13:310)とする。次にS5−3で時系列プロセスデータ蓄積手段301を検索し、第1の時刻から第2の時刻までのデータを、該当コイルに紐づいたプロセスデータとして抽出する。同様にS5−4で時系列映像データ蓄積手段401を検索し、第1の時刻の映像が含まれる映像ファイルから第2の時刻の映像が含まれる映像ファイルを、該当コイルに紐づいた映像データとして抽出する。たとえば第1の時刻が2010年1月30日10時29分45.150秒、第2の時刻が2010年1月30日10時34分24.450秒のとき、201001301029.mpg〜201001301034.mpgが抽出される。このようにして抽出したコイル名に紐づいたプロセスデータと映像データを、コイルデータパックと呼ぶ。S5−5でコイルデータ蓄積手段109にコイルデータパックを格納する。図1に示すように、コイルデータ蓄積手段109には、コイル単位でコイルデータパック111が格納されている。
【0022】
本実施例ではユーザが単一のコイルを指定し、これに従ってコイルデータパック111を構築する例を示したが、連続して圧延された複数のコイルを指定し、これに従ってコイルデータパック111を構築することも、同様の構成で実現できる。一般に溶接点近傍は圧延トラブルや品質不良が発生し易いため、連続する複数のコイルでコイルデータパック111を構成することで、溶接点近傍の解析を連続的に行うことができる。
【0023】
図6に監視端末151が備えている、コイルデータ取得手段153の処理を示す。コイルデータ取得手段153は、監視画面152からのユーザの要求にしたがって、監視サーバ101のコイルデータ蓄積手段109からユーザが特定したコイルデータパック111を監視端末151側に取り込む。S6−1で、ユーザが監視画面152から入力したコイル名を取り込み、取得の対象となるコイルを特定する。S6−2で監視サーバ101のコイルデータ蓄積手段109から該当コイルに対応するコイルデータパック111を、監視端末151にダウンロードする。S6−3で、ダウンロードにより取り込んだコイルデータパックを、端末側コイルデータ蓄積手段154に、同様にコイルデータパック157として保存する。
【0024】
端末側コイルデータ蓄積手段154に蓄積されたコイルデータパック157は監視画面152からのユーザ要求にしたがって、リスト等の形で監視画面152に表示される。コイルデータ抽出手段155は監視画面152でユーザが要求したコイル名に対して、対応したコイルデータパック157を抽出する。そして同期再生手段156により同期再生される。同期再生の技術はすでに確立されており、既知の技術(例えば特開平5−79951等ですでに明らか)に確立されている方法で行えば良い。
【0025】
図7に監視画面152において、プロセスデータと映像データを同期再生した画面の一例を示す。画面上にプロセスデータ701と映像データ702が表示されている。タイムインジケータは703は、表示されている映像データと時刻が同期された個所を示している。すなわち、現在再生されている映像データとタイムインジケータが存在している個所のプロセスデータは、同一時刻に採取されたデータである。映像データを再生中は、タイムインジケータが再生中の映像時刻の進展にしたがって、左から右に移動する。またタイムインジケータをマウスでクリックして左右に動かすと、その映像データがその時刻の映像に切り替わる。したがって鋼板141が映像上で波うちしていた時刻で、鋼板の板厚や張力の変動がどうだったか、鋼板の板厚や張力が変動していた時刻の映像がどうだったか等を、映像データ解析とプロセスデータ解析を駆使して、多面的に解析することができる。
【0026】
このように、すべてのプロセスデータと映像データは第1の時刻から第2の時刻までの同一範囲で取り出されて、コイルデータ蓄積手段109に格納されている。したがって時刻を横軸にして、任意の組合せで表示や同期再生を行える。
【0027】
本実施例ではプロセスデータと映像データを例に説明したが、映像データの代わりに音声データが収集される場合でも、同様の構成で本発明を適用できる。またプロセスデータと映像データ,音声データが混在している場合でも、同様の構成で本発明を適用できる。
【実施例2】
【0028】
次に本発明の第2の実施例を示す。第1の実施例との違いはコイルデータパックに含まれるデータの内容で、第1の実施例では、該当コイルに対応した鋼板141の先端が圧延プラント135に進入し、尾端が圧延プラント135を抜けるまでのすべてのプロセスデータと映像データをコイル名に紐付けて蓄積したのに対し、本実施例では各プロセスデータと映像データのそれぞれについて、その検出位置を該当コイルに対応した鋼板141の先端が進入し尾端が抜けるまでのデータを、コイルに紐付けて蓄積する。
【0029】
図8はコイルデータパック手段108の処理を示したものである。本実施例でコイルデータパック手段108は、ユーザにより特定されたコイルについて、プロセスデータ蓄積手段104と映像データ蓄積手段106から、このコイルに紐づいたデータを過不足なく抽出し、コイル名をキーとしてコイルデータ蓄積手段109に格納する。S8−1で、ユーザが監視画面102から入力したコイル名を取り込み、処理の対象となるコイルを特定する。S8−2でプロセスデータ蓄積手段104を検索し、開始時刻から終了時刻までのプロセスデータを抽出する。すなわち該当コイルの各プロセスデータについてプロセス時刻情報蓄積手段302を検索し、開始時刻と終了時刻を認識した上で、対応する範囲のプロセスデータを該当コイルに紐づいたプロセスデータとして、時系列プロセスデータ蓄積手段301から抽出する。同様にS8−3で映像データ蓄積手段106を検索し、開始時刻から終了時刻までの映像データを抽出する。すなわち該当コイルの映像データについて映像時刻情報蓄積手段402を検索し、開始時刻と終了時刻を認識した上で、対応する範囲の映像データを該当コイルに紐づいた映像データとして、時系列映像データ蓄積手段401から抽出する。たとえば開始時刻が2010年1月30日10時29分45.150秒、終了時刻が2010年1月30日10時34分24.450秒のとき、201001301029.mpg〜201001301034.mpgが抽出される。S8−4でコイルデータ蓄積手段109にコイルデータパックを格納する。図1に示すように、コイルデータ蓄積手段109には、コイル単位でコイルデータパック111が格納されている。
【0030】
本実施例によると、プロセスデータまたは映像データ毎に該当コイルに対応したデータのみを抽出してコイルデータパック111を構成するので、第1の実施例に比べ、コイルデータパック111に含まれるデータ量が少なくて済む利点がある。
【0031】
熱間圧延プラント,冷間圧延プラント,プロセッシングライン等の、コイル単位で品質を管理する圧延プラントの監視装置として、広く適用することができる。またたとえばプレート圧延プラントにおいてもプレート単位で製品品質を管理するので、本発明を同様に適用できる。このように特定の単位で品質管理を行うプラントであれば、本実施例で示したコイルを品質管理の単位に置き換えることで広く適用できる。
【0032】
以上、実施例を要約すると、圧延プラントに近接した場所に監視サーバ、遠隔地に監視端末を設け、それらはインターネットで情報を授受する。そして監視サーバ側に、蓄積しているプロセスデータと映像データから特定のコイルを解析するのに過不足のないデータをコイル名に対応付けて抽出するコイルデータパック手段と、コイル単位にパックされたデータを蓄積するコイルデータ蓄積手段を備えた。また遠隔地にある監視端末側に、監視サーバのコイルデータ蓄積手段からデータをコイル単位で選択して取り込むことのできるコイルデータ取得手段と、取り込んだコイルの中から解析対象となるコイルを選択するコイル抽出手段、プロセスデータと映像情報を同期して再生する同期再生手段を備えた。
【0033】
監視サーバに備えたコイルデータパック手段は、ユーザから指示されたコイルに対して、蓄積されたプロセスデータと映像データからコイルに関連したデータのみを選択的に抽出し、コイル名に対応付けてコイルデータ蓄積手段に格納する。また監視端末に備えたコイルデータ取得手段は、ユーザが指示したコイルのコイルデータパックを、監視サーバから監視端末にダウンロードにより取り込む。同期再生手段はユーザが選択したコイルについて、プロセスデータと映像を同期再生した結果をユーザに対して報知する。
【0034】
解析に先立って、不良が発生したコイルに紐づいたプロセスデータと映像データのみを遠隔側の端末にローディングすることにより、遠隔端末においても応答性の良いデータの再生を行える
【符号の説明】
【0035】
100 工場内
101 監視サーバ
102 監視画面
103 プロセスデータ収集手段
104 プロセスデータ蓄積手段
105 映像収集手段
106 映像データ蓄積手段
107 時刻付与手段
108 コイルデータパック手段
109 コイルデータ蓄積手段
135 圧延プラント
151 監視端末
152 監視画面
153 コイルデータ取得手段
154 端末側コイルデータ蓄積手段
155 コイルデータ抽出手段
156 同期再生手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱間圧延プラント,冷間圧延プラント,プロセッシングライン等の被圧延材の圧延に係る圧延プラントを監視する圧延プラントの監視装置において、前記圧延された被圧延材はコイルとして単位づけられるものであって、
前記圧延プラントから取り込んだプロセスデータを収集するプロセスデータ収集手段と、
前記圧延プラントから取り込んだ映像データを収集する映像データ収集手段と、
前記収集されたプロセスデータと映像データに時刻情報を付与する時刻情報付与手段と、
前記時刻情報が付与されたプロセスデータと映像データから前記コイルに該当するプロセスデータと映像データを抽出して、前記コイルに紐づいたデータのセットとしてコイルデータパックを構築するコイルデータパック手段と、
前記コイルデータパックを蓄積するコイルデータ蓄積手段を備えたこと、
を特徴とする圧延プラントの監視装置。
【請求項2】
前記時刻情報付与手段は、時刻情報として、各プロセスデータに対して取り込み時刻を付与するとともに、コイル毎に各プロセスデータの取り込みを開始した時刻と終了した時刻を付与し、
各映像データに対して取り込み時刻を付与するとともに、コイル毎に各映像データの取り込みを開始した時刻と終了した時刻を付与することを特徴とする請求項1記載の圧延プラントの監視装置。
【請求項3】
各プロセスデータを前記時刻情報としての取り込み時刻と対応付けて格納した時系列プロセスデータ蓄積手段と、
コイル毎に各プロセスデータの取り込みを開始した時刻と終了した時刻を格納したプロセス時刻情報蓄積手段と、
各映像データを前記時刻情報としての取り込み時刻と対応付けて格納した時系列映像データ蓄積手段と、
コイル毎に各映像データの取り込みを開始した時刻と終了した時刻を格納した映像時刻情報蓄積手段を備えたこと、
を特徴とする請求項1記載の圧延プラントの監視装置。
【請求項4】
前記コイルデータパック手段は、
指定されたコイル名に対して前記プロセス時刻情報蓄積手段を検索し、コイル名に対応した各プロセスデータの取り込みを開始した時刻を取り出すとともに、前記映像時刻情報蓄積手段を検索することでコイル名に対応した各映像データの取り込みを開始した時刻を取り出し、取り出した時刻の中で相対的に古い時刻を第1の時刻とし、
指定されたコイル名に対して前記プロセス時刻情報蓄積手段を検索し、コイル名に対応した各プロセスデータの取り込みを終了した時刻を取り出すとともに、前記映像時刻情報蓄積手段を検索することでコイル名に対応した各映像データの取り込みを終了した時刻を取り出し、取り出した時刻の中で相対的に新しい時刻を第2の時刻とし、
前記時系列プロセスデータ蓄積手段から第1の時刻と第2の時刻の間にあるプロセスデータを抽出するとともに、前記時系列映像データ蓄積手段から第1の時刻と第2の時刻の間にある映像データを抽出し、
抽出したデータを用いて前記コイルデータパックを構築すること、
を特徴とする請求項3記載の圧延プラントの監視装置。
【請求項5】
前記コイルデータパック手段は、
指定されたコイル名に対して前記プロセス時刻情報蓄積手段を検索することでコイル名に対応した各プロセスデータの取り込みを開始した時刻と終了した時刻を認識し、
各プロセスデータに対して、前記時系列プロセスデータ蓄積手段から取り込みを開始した時刻と終了した時刻の間にあるプロセスデータを抽出するとともに、
指定されたコイル名に対して前記映像時刻情報蓄積手段を検索することでコイル名に対応した各映像データの取り込みを開始した時刻と終了した時刻を認識し、
各映像データに対して、前記時系列映像データ蓄積手段から取り込みを開始した時刻と終了した時刻の間にある映像データを抽出し、
抽出したデータを用いてコイルデータパックを構築すること、
を特徴とする請求項3記載の圧延プラントの監視装置。
【請求項6】
熱間圧延プラント,冷間圧延プラント,プロセッシングライン等の被圧延材の圧延に係る圧延プラントからプロセスデータと映像データを取り込んで蓄積する監視サーバと、前記監視サーバと通信回線で接続され、前記監視サーバに蓄積されたデータを取り込み、取り込んだデータを用いて前記圧延プラントの異常解析や圧延プラントで生産されたコイルの品質を管理する監視端末から構成される圧延プラントの監視システムにおいて、前記圧延された被圧延材の所定の連続的な箇所はコイルとして単位づけられるものであって、
該監視サーバは、
前記圧延プラントから取り込んだプロセスデータを収集するプロセスデータ収集手段と、
前記圧延プラントから取り込んだ映像データを収集する映像データ収集手段と、
前記収集されたプロセスデータと映像データに時刻情報を付与する時刻情報付与手段と、
前記時刻情報が付与されたプロセスデータと映像データから前記コイルに該当するプロセスデータと映像データを抽出して、前記コイルに紐づいたデータのセットとしてコイルデータパックを構築するコイルデータパック手段と、
前記コイルデータパックを蓄積するコイルデータ蓄積手段を備え、
該監視端末は、
指定されたコイルに対して、前記コイルデータ蓄積手段から前記コイルに該当するコイルデータパックを前記通信回線を介して取り込み、端末側コイルデータ蓄積手段に格納すること、
を特徴とする圧延プラントの監視システム。
【請求項7】
該監視端末は監視画面を備え、
監視端末から指定されたコイル名に対応するコイルデータを前記端末側コイルデータ蓄積手段から取り出し、
プロセスデータに付与された時刻情報としての取り込み時刻の情報と映像データに付与された時刻情報としての取り込み時刻の情報を用いて、監視画面上でプロセスデータと映像データを同期して再生すること、
を特徴とする請求項6記載の圧延プラントの監視システム。
【請求項8】
熱間圧延プラント,冷間圧延プラント,プロセッシングライン等の被圧延材の圧延に係る圧延プラントから取り込んだプロセスデータを収集し、
前記圧延プラントから取り込んだ映像データを収集し、
前記収集されたプロセスデータと映像データに時刻情報を付与し、
前記時刻情報が付与されたプロセスデータと映像データから、圧延された被圧延材の所定の連続的な箇所として単位づけられるコイルに該当するプロセスデータと映像データを抽出して、前記コイルに紐づいたデータのセットとしてコイルデータパックを構築し、
前記コイルデータパックを蓄積する圧延プラントの監視方法。
【請求項9】
熱間圧延プラント,冷間圧延プラント,プロセッシングライン等の圧延プラントからプロセスデータと映像データを収集するとともに、前記プロセスデータと映像データに時刻情報を付与し、
前記プロセスデータと映像データにコイル名を付与し、
前記時刻情報が付与されると共に前記コイル名が付与されたプロセスデータと映像データを蓄積し、
指定されたコイル名に対して、前記指定されたコイル名に該当するプロセスデータと映像データを取り出して、前記コイル名に紐付けて別のエリアに蓄積し、
遠隔に備えられた監視端末からコイル名が指定されると、前記蓄積されたプロセスデータと映像データから前記コイル名に該当するプロセスデータと映像データを監視端末に取り込み、
前記指定されたコイル名に対して、前記プロセスデータと前記映像データに付与された時刻情報を用いて、前記監視端末上で前記取り込んだプロセスデータと映像データを同期して再生する圧延プラントの監視方法。
【請求項10】
収集したプロセスデータに対して、各プロセスデータの取り込み時刻と、コイル毎に各プロセスデータの取り込みを開始した時刻と終了した時刻を付与し、
収集した映像データに対して、各映像データの取り込み時刻と、コイル毎に各映像データの取り込みを開始した時刻と終了した時刻を付与し、
対応するコイル名を該プロセスデータと映像データに付与し、
各プロセスデータを取り込み時刻と対応付けて格納するとともに、コイル毎に各プロセスデータの取り込みを開始した時刻と終了した時刻を格納し、
各映像データを取り込み時刻と対応付けて格納するとともに、コイル毎に各映像データの取り込みを開始した時刻と終了した時刻を格納し、
指定されたコイル名に対して、コイル名に該当するプロセスデータと映像データを取り出して、コイル名に紐付けて別のエリアに蓄積し、
遠隔に備えられた監視端末からコイル名を指定し、
コイル名に該当するプロセスデータと映像データを監視端末に取り込み、
監視端末からコイル名を指定し、
指定されたコイル名に対して、プロセスデータに付与された時刻情報としての取り込み時刻の情報と映像データに付与された時刻情報としての取り込み時刻の情報を用いて、監視端末上でプロセスデータと映像データを同期して再生すること、
を特徴とする圧延プラントの監視方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−257967(P2011−257967A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−131581(P2010−131581)
【出願日】平成22年6月9日(2010.6.9)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】