説明

圧延ロールの性能維持改削方法

【課題】方形断面の被圧延材料を圧延する圧延機において、圧延性能を維持するための圧延ロールの改削方法であり、改削によりロール径が細くなっても被圧延材料を曲がり等の不良なく圧延でき、圧延ロールの寿命が一層延長されるようにする。
【解決手段】直状部1aの両端部寄りにテーパー部1b,1cを形成することにより夫々紡錘形に形成された一対の圧延ロール1の該テーパー部間に方形断面の被圧延材料2を通して圧延する圧延機において、摩耗による変形を修正するため圧延ロール1の外周面を切削するに際し、該圧延ロールが修正を重ねることで細くなるに従い前記テーパー部1b,1cの勾配が急角度となるように設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、方形断面の被圧延材料を圧延する圧延機において、圧延性能を維持するための圧延ロールの改削方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に圧延ロールは使用によって摩耗し変形することにより、被圧延材料に長手方向の曲がりを生じさせ形状,寸法精度を悪化させると共に圧延設備にもトラブルを生じさせる原因となることから、使用によって摩耗し変形した圧延ロールは、外周面に切削バイトを当てることにより改削し変形を修正することにより繰り返し使用するようにしている。(下記特許文献1,2等参照)。
【特許文献1】特公平8−11322号公報
【特許文献2】特許第3243903号公報
【0003】
そしてこのようにして変形が修正される度に圧延ロールの外径は次第に細くなり耐圧性がなくなって圧延荷重による撓みが大きくなるため、上記のように変形を修正することによってもなおも被圧延材料の曲がり等の圧延不良が所定の許容範囲内に収まらなくなった場合にその圧延ロールは廃棄するようにしている。
【0004】
一方、本出願人が先に特許出願した特願2003−337812号に係る圧延機の発明は、図1の模式図に示すように、一対の圧延ロール1が直状部1aの両端部寄りに夫々テーパー部1b,1cを形成することにより夫々紡錘形に形成されたものであり、該テーパー部1b間またはテーパー部1c間に被圧延材料(方形断面の平角材)2を通すことにより、図2に示したように、圧延荷重により該圧延ロール1が撓んだ状態で該被圧延材料2が均一に加圧されるようにしたものである。即ち、撓みを相殺し得る勾配をテーパー部1b,1cに形成することによって、被圧延材料2を曲がり等の不良なく圧延できるものである。
なお、図1および図2は、説明のために圧延ロールの撓み量、およびテーパー部の勾配を実際よりも過大に記載している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、紡錘形の上記圧延ロール1は、上記改削の際にテーパー部1b,1cの勾配を一定の値にしていた。即ち、従来では上記テーパー部の勾配は、圧延ロールの太さに拘わらず一定値となるように切削バイトによって切削していた。このため、修正を重ね圧延ロールの外径が細くなり撓みも大きくなるとやはり被圧延材料に曲がりが発生し、形状,寸法精度が急速に悪くなるという問題があった。
本発明はこのような問題点を改善しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そのため請求項1に記載した圧延ロールの性能維持改削方法の発明は、直状部の両端部寄りにテーパー部を形成することにより夫々紡錘形に形成された一対の圧延ロールの該テーパー部間に方形断面の被圧延材料を通して圧延する圧延機において、摩耗による変形を修正するため圧延ロールの外周面を切削するに際し、該圧延ロールが修正を重ねることで細くなるに従い前記テーパー部の勾配を急角度に設定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
ロール径が細くなっても被圧延材料を曲がり等の圧延不良なく高い寸法精度に圧延できる。このため、本発明に係る性能維持改削方法により、圧延ロールを改削することにより、被圧延材料を曲がり等の圧延不良なく、期待される形状,寸法精度を維持して圧延することができる。そして、改削により寿命延長可能な回数が増え、経済性が増すと共に、被圧延材料の曲がりに伴う圧延設備等のトラブルが減少し、製品の品質も向上する。
【実施例1】
【0008】
次に本発明の実施例を説明する。本発明に係る圧延ロール1はダクタイル鋳鉄からなる全長1600mm、外径640mmのもので、図1に示したように、直状部1aの両端部寄りに夫々テーパー部1b,1cを形成することにより紡錘形に形成され、その一方のテーパー部1bの勾配は1/8000、他方のテーパー部1cの勾配は1/10400に設定される。この圧延ロール1は使用に際して、ロールスタンド(図示せず)に取り付けられ、図示したように一対が適宜間隔にて平行に支持される。そして、テーパー部1b間に被圧延材料(方形断面の平角材)2を通した後、該被圧延材料2をそのロールスタンドの反対側からテーパー部1c間に通す。これにより該被圧延材料2に荷重が掛けられ圧延される。なお、直状部1a間にも該被圧延材料2が通されることは云うまでもない。
【0009】
そして使用により圧延ロール1は摩耗し変形することから、該圧延ロールの外周面に切削バイトを当てることにより改削し変形を修正し、該圧延ロールを繰り返し使用する。この改削時にテーパー部1bおよびテーパー部1cの勾配を表1に示したようにロール径が小さくなるに従い次第に急角度となるように設定する。即ち、表1に示した圧延ロールでは、テーパー部1bの勾配が当初は1/8000に設定されていたものをロール径を620〜600mmに改削するに際しては勾配を1/6000にし、さらにロール径を600〜580mmに改削するに際してはその勾配を1/4000に設定する。また、テーパー部1cについては勾配が当初は1/10400に設定されていたものをロール径を620〜600mmに改削するに際しては勾配を1/7800にし、ロール径を600〜580mmに改削するに際しては勾配を1/5200にする。これにより改削後も該被圧延材料2は曲がり等の変形を起こすことなく、所望の厚さ形状に例えば公差0.5mm以下の高い寸法精度で圧延することができる。なお、改削を繰り返すことによりロール径が580mm以下となり、必要とする形状,寸法精度が得られなくなった場合に該圧延ロール1は廃棄される。
【表1】

【0010】
このように本発明では、改削によりロール径が細くなるに従いテーパー部1b,1cの勾配が急角度となるように設定することで、改削によりロール径が細くなり撓み量が次第に大きくなっても、その撓みを相殺し得る勾配に該テーパー部が形成されていることにより、ロール径が細くなっても被圧延材料2を曲がり等の圧延不良が生じることなく、所望の形状,寸法精度を維持して圧延することができる。
【0011】
なお、圧延不良を防止するためには、圧延機において該圧延ロールに噴射している冷却水による冷却能力を向上させると共に冷却水の噴出制御を改善し、圧延ロールが均一に冷却されるようにすることも重要である。このような均一冷却により、ロール表面の硬度が維持されることから、圧延ロールが使用によって偏摩耗するのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】圧延機に設定された圧延ロールの模式図。
【図2】圧延荷重により撓んだ状態の圧延ロールの模式図。
【符号の説明】
【0013】
1 圧延ロール
1a 直状部
1b テーパー部
1c テーパー部
2 被圧延材料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直状部の両端部寄りにテーパー部を形成することにより夫々紡錘形に形成された一対の圧延ロールの該テーパー部間に方形断面の被圧延材料を通して圧延する圧延機において、摩耗による変形を修正するため圧延ロールの外周面を切削するに際し、該圧延ロールが修正を重ねることで細くなるに従い前記テーパー部の勾配を急角度に設定することを特徴とした圧延ロールの性能維持改削方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−315073(P2006−315073A)
【公開日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−142981(P2005−142981)
【出願日】平成17年5月16日(2005.5.16)
【出願人】(000003713)大同特殊鋼株式会社 (916)
【Fターム(参考)】