説明

圧延機、圧延機スタンド及び圧延機における圧延機スタンドの交換方法

【課題】業界標準の圧延機、業界標準の圧延機スタンド、並びに圧延機における圧延機スタンドの業界標準の交換方法を提供。
【解決手段】ラインに配置された、中央のカリバー開口部を形成する複数の圧延機スタンド12を備え、これらの圧延機スタンドは、それぞれスタンドスペース57に配置され、それぞれ少なくとも1つの交換位置58,59へ移動可能である、長い材料を圧延するための圧延機において、狭いスペースで圧延機スタンドを簡単に交換することを可能にするため、各スタンドスペース58がインプットクラッチ56を有し、このインプットクラッチが圧延機スタンド側クラッチエレメント11と駆動側クラッチエレメントとを有しており、駆動側クラッチエレメントが軸方向に固定された状態でスタンドスペース57に設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラインに配置された、中央のカリバー開口部を形成する複数の圧延機スタンドを備え、これらの圧延機スタンドは、それぞれスタンドスペースに配置され、それぞれ少なくとも1つの交換位置へ移動可能である、長い材料を圧延するための圧延機に関し、特に、交互に取付け可能なC型スタンドにおいて、ラインに配置された、中央のカリバー開口部を形成する、モーター駆動の複数の圧延機スタンドを備える、長い材料を圧延するためのコンパクトな構造の圧延機に関する。同様に、本発明は、少なくとも2つの駆動ロール(2、3)と少なくとも2つのインプットとを備える圧延機スタンド、及び長い材料を圧延する場合に生じる圧延力を吸収するためのロールを備える圧延機スタンド、並びに圧延機における圧延機スタンド(12)の交換方法にも関する。
【0002】
本発明は、特に、ストレッチレデューサ圧延機(SRW−BCO)、サイジング圧延機(MW−BCO)及びエキルトラクティング圧延機(AZW−BCO)に適用することができる。
【0003】
長い材料を圧延する圧延機は、2ロールスタンド及び3ロールスタンド又は4ロールスタンドが知られており、カリバー直径を変更するためのロールの設定も知られている。ロールのずれは、2ロールスタンドで90°、3ロールスタンドで60°、4ロールスタンドで45°である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】日本国特許出願公開第57−121810A
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、業界標準の圧延機、業界標準の圧延機スタンド、並びに圧延機における圧延機スタンドの業界標準の交換方法を提供するという課題に基づいており、これらによって、できる限りコンパクトな形態で、可能な限り確実な圧延機スタンドの交換が可能となる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題を解決するため、ラインに配置された、中央のカリバー開口部を形成する複数の圧延機スタンドを備え、これらの圧延機スタンドは、それぞれスタンドスペースに配置され、それぞれ少なくとも1つの交換位置へ移動可能である、長い材料を圧延するための圧延機が提案され、この圧延機は、各スタンドスペースがインプットクラッチを有し、このインプットクラッチが圧延機スタンド側クラッチエレメントと駆動側クラッチエレメントとを有しており、駆動側クラッチエレメントが軸方向に固定された状態でスタンドスペースに設けられていることを特徴としている。これにより、圧延機の連結方法が特に簡単になり、この連結方法は、駆動側クラッチエレメントがスタンドスペースに固定されて設けられていることにより、インプットクラッチの両クラッチエレメントの自由度が制限され、正常な接続は圧延機スタンド側クラッチエレメントの位置のみによって影響を受けるため、高い動作信頼性によって使用することができる。圧延機スタンドが遊びなく直線的にスタンドスペースに通されている場合、すぐに分かるように、インプットクラッチの連結に対する自由度だけが生じる。結果的に、提案されている圧延機の実施形態によって、インプット又は該当するインプットクラッチによる、駆動モーターへの正確かつ確実な接続が可能となる。
【0007】
インプットクラッチを備える圧延機は、有利には圧延機スタンド及びスタンドスペースごとに2つのインプットクラッチによって形成されることができ、両方のインプットクラッチは、それぞれ回転軸に対して軸方向に作用し、これらの回転軸は平行に配置され、両方のインプットクラッチはラインの一方の側に配置されている。この限りにおいて、この実施形態による圧延機スタンド又は圧延機は、唯一のインプットクラッチが設けられている場合と同様に、簡単かつ確実にセットすることができるか、又は稼働させることができ、それは、平行に配置されたインプットクラッチを、唯一のクラッチ同様に取り扱うことができるからである。この場合、両方のインプットクラッチは、共通の駆動又は2つの個々の駆動を装備することができ、一回の取付け処置で連結され、特に、圧延機スタンドだけが動かされる。2つのインプットクラッチにより、1つのクラッチによって駆動から圧延機スタンドに伝達しなければならない力又はトルクは、それに応じて減少する。これによって、特に、クラッチ径が縮小されることにより、圧延機スタンドをより細く作ることができる。
【0008】
それでも、連結の際に圧延機スタンドが動かされることは、確実な連結にとって必ずしも必要ではない。駆動側クラッチエレメントが軸方向に可動するように実施されている実施形態も考えられる。
【0009】
圧延機の有利な実施形態では、さらに、少なくとも1つのスタンドスペースに駆動モーターを備える駆動を設けることができ、この駆動モーターは、少なくとも2つのアウトプットを有するトランスファに接続されており、これらのアウトプットは、それぞれインプットクラッチの駆動側クラッチエレメントを有している。これに加え、圧延機に駆動側クラッチエレメントを平行かつ同方向に配置することもできる。これらの実施形態により、有利には、1つ、2つ又はそれより多いインプットクラッチを備える、圧延機スタンドを備えた圧延機が提供される。この場合、一方で、多数のインプットクラッチにより多くのトルクを圧延機スタンドに伝達することができ、他方では、圧延機スタンドの様々なコンポーネントを個別に駆動することができる。圧延機スタンドの適切な実施形態では、少ないトルクしか必要ない場合、これらの圧延機スタンドに少数のアウトプット側クラッチエレメントだけを装備することもでき、その他の駆動側クラッチエレメントが設けられる部分では、構造的なスペースが残されるため、これらのクラッチエレメントを自由に用いることができる。
【0010】
これらの駆動側クラッチエレメントを平行かつ同方向に配置することは、駆動の決定において適応性が大きくなるのが有利である。従って、選択的に、1つ又は複数の駆動と圧延機スタンドとを連結することができ、特に、連結の際には圧延機スタンドをだけが動かされるが、これは、必ずしもそのように設定する必要はない。
【0011】
「平行」かつ「同方向」という用語は、この場合、それぞれのクラッチエレメントの様々な回転軸に関係しており、「同方向」とは、同じ回転方向を意味している。「トランスファ」は、アウトプットでの様々な回転数によって出力分離が生じるかどうかとは無関係に、駆動としての複数のアウトプットを有するギヤユニットを示している。この限りにおいて、トランスファは、スパーギヤでもあり得る。
【0012】
好ましくは、例えば、文献1から知られているように、圧延機スタンドがそれぞれ1つのスタンドスペース内に配置されており、それぞれ少なくとも1つの交換位置に移動可能であり、スタンドスペースごとに正確に1つの交換位置が設けられており、第1のスタンドスペースの交換位置はラインの一方の側に設けられ、第2のスタンドスペースの交換位置は、ラインのもう一方の側に設けられている。スタンドスペースに関係する交換位置により、特に、確実かつ迅速に圧延機スタンド交換を行うことのできるコンパクトな圧延機が可能となる。特に、スタンドスペースに配置されている圧延機スタンドの圧延方向、すなわち軸方向に、圧延機の全長が短くなり、それは、圧延機スタンドの両側にその他のコンポーネント用のスペースを確保する必要がないからである。特に、ラインの両方の側にある交換位置では、交換位置に対して軸方向にスペースが生じ、このスペースは、取付けのために追加的に利用できることから、このスペースを他のユニットに使用しない場合、とりわけスタンド交換の際において作動信頼性を有利に向上させることができる。さらに、この配置は、圧延機用の駆動モーターを配置する場合に有利であり、この駆動モーターは、必要に応じて、同様にラインの両方の側に配置することができ、使用可能なスペースを使って、この駆動モーターの直径を、もともと使用可能だった駆動モーターの直径のほぼ2倍にまで大きくすることができる。
【0013】
この方法により、適切な実施形態において、ラインに配置された、中央のカリバー開口部を形成する、モーター駆動の複数の圧延機スタンドを備える、長い材料を圧延するためのコンパクトな構造の高性能圧延機を作ることができ、狭いスペースの中で簡単な方法により圧延機スタンドを交換することが可能となる。この圧延機では、適切な実施形態の場合、様々な種類の圧延機スタンドを使用することができる。以下にさらに詳しく説明される圧延機スタンドのインプットクラッチは、圧延機スタンドに差し込まれる際に自動的に連結することができる。すでに指摘したように、駆動は、スペースを節約した形で格納することができる。交換カート方式については、適切な実施形態の場合、必要スペースを節約することができる。
【0014】
特に、コンパクトかつ省スペースの圧延機を提供するため、ラインに沿ってスタンドスペースに通し番号を付けることができ、一方のラインには全て奇数の交換位置が設けられ、もう一方のラインには全て偶数の交換位置が設けられている。この実施形態では、交換位置が交互に配置されていることにより、スタンドスペースを圧延方向にとりわけ省スペースに配置することができるため、両方の交換位置で均等な取付け作業用スペースが提供される。
【0015】
もう1つの有利な実施形態における圧延機では、それぞれの圧延機スタンドの交換位置を交換カートに設けることができ、この交換カートは、少なくとももう1つの交換位置を有している。このもう1つの交換位置は、交換する圧延機スタンドを準備して持っておくために用いる。従って、圧延の後に圧延機から取り外す圧延機スタンドを第1の交換位置まで送り、その後、もう1つの交換位置に準備された圧延機スタンドをすぐに接続して再びスタンドスペースに送ることができ、交換カートはそれに対応して移動する。従って、すぐに分かるように、圧延機での取付け時間が最小限に抑えられる。圧延機は、圧延機スタンドの交換後すぐに作動することができ、取り外された圧延機スタンドは、圧延機の運転開始後に、例えば保守作業など、別の用途に送ることができる。
【0016】
さらに、2つの交換位置を有する、交換カートを備えた圧延機を、有利には、この交換カートが、それぞれ2つのスタンドスペースに一方の交換位置と他方の交換位置とを1つずつ、少なくとも4つの交換位置を有するように形成することができ、一方の2つの交換位置は、一方の2つのスタンドスペースの間隔に応じて、他方の2つの交換位置は、他方の2つのスタンドスペースの間隔に応じて、互いに離されている。このことにより、有利には、両方のスタンドスペースに2つの圧延機を同時に交換することができることは明らかである。さらに、交換カートが、1つの圧延機にある全てのスタンドスペースに対して、一方の交換位置及び他方の交換位置を有することも可能であり、これらのスタンドスペースは、ラインの一方の側から同時に装着することができる。
【0017】
少なくとも4つの交換位置を有する交換カートを備えた圧延機に対しては、さらに、一方の交換位置と他方の交換位置とが、それぞれ少なくとも圧延機スタンドの幅、好ましくはスタンドスペースの間隔だけ互いに離されている場合は有利である。この実施形態により、距離測定又は幅測定の出発点が、それぞれスタンドスペースの中央又は圧延機スタンドの中央に決められている場合は、交換カートの移動距離を最小限に軽減することができる。この場合、「中央」とは、圧延方向に沿って軸方向の中間位置を意味している。
【0018】
ラインに配置された、中央のカリバー開口部を形成する複数の圧延機スタンドを用いて長い材料を圧延する圧延機の通常の特徴とは無関係に、2つ又はそれより多い交換位置を備える交換カートが有利であるのは明白であり、これらの圧延機スタンドは、それぞれスタンドスペースに配置され、それぞれ少なくとも1つの交換位置へ移動可能である。このことは、両方の交換位置が1つのスタンドスペースにのみ、又は2つのスタンドスペースに使用するかどうかとは無関係である。交換位置を1つのスタンドスペースにのみ使用する場合、交換する交換スタンドが第2の交換位置に運ばれた後で、交換カートの第1の交換位置に保持されている圧延機スタンドが予定されたスタンドスペースに運ばれ、すぐに再稼働することができるように、交換カートの移動によって、この圧延機スタンドを素早く位置決めできることにより、狭いスペースでのスタンド交換を迅速かつ確実に行うことができる。2つのスタンドスペースに交換位置を使用する場合、交換する2つの圧延機スタンドは、それらの圧延位置から交換位置に同時に移動し、交換カートによって運ばれることができ、一方では、別の交換カートによって、同時に2つの圧延機スタンドがそれらの交換位置に移動し、そこから圧延位置に運ばれることができる。圧延機が再び作動する、又は作動している間に、クレーンによる運搬など、その他の装備作業をこの交換カートから行うことができる。ここでは、場合によって、それぞれ1つの交換カートに複数の交換位置を設けることによる利点が加えられることは明らかである。
【0019】
好ましくは、例えば文献1から知られているように、少なくとも1つの圧延機スタンドが交換シューに配置されており、この交換シューは、水平方向に対して傾けられている交換レール上を移動可能である。交換レールと組み合わせて交換シューを用いることは、個々の圧延機スタンドのロールがそれらの圧延位置で相互に傾いている場合でも、圧延機の範囲内で、特に圧延機のスタンドスペースで簡単かつ確実に圧延機スタンドを位置決めするという利点をもたらす。この傾斜角は、必要に応じて調整可能な交換レールの傾きによって設定することができるため、圧延機スタンドを簡単に、好ましくは互いに同一に、又は非常に似た構造にすることができる。この場合、交換シューによる圧延機スタンドの位置決めを、有利には、圧延機の圧延方向に対して直角に行うことが可能である。このことによって、圧延ツールとしてのロールを有する圧延機スタンドが、圧延材料に対して正しい位置に合わせられ、交換シューが交換レール上を遊びなく移動する場合は、調整作業の必要がないか、又は極めて僅かな調整作業しか必要としない。
【0020】
水平方向に対する交換レールの傾斜は、交換レール上を移動する圧延機スタンドの確実な位置決めを生じ、この圧延機スタンドは、それ自体の重力によって、交換レールに沿ってスタンドスペース内で下方に加速し、この方法で簡単に、ストッパ、当たり面、ブレーキパッド又は輪止めなどに、確実に位置決めされ得る。しかしながら、圧延機スタンドの予期しない移動に対してその他の安全装置を設ける必要ないが、その他のロック手段を使って確実なものにすることもできる。
【0021】
この関連において、有利な実施形態における圧延機は、水平面に対して傾斜している部分とほぼ水平な部分とを有する交換レールを備えることができる。この水平部分では、とりわけ装備作業を簡単かつ確実に行うことができる。さらに、水平移動のエネルギー使用は最小であるため、この部分での移動は、僅かなエネルギーで行うことができる。
【0022】
好ましくは、交換レールのほぼ水平部分が交換カート上に設けられている。このことにより、特に、交換カートを簡単な構造にすることができ、交換カート上に設けられている圧延機スタンドを、例えばウェッジ、ブレーキパッド、ストッパなどの適切なロックによって、問題なくその位置に保持することができる。
【0023】
圧延機スタンドのロックに関して、すでに説明した利点に従って、水平面に対して傾斜している交換レール部分が、スタンドスペースに設けられ、スタンドスペース内で下方に傾いている場合は特に有利である。この方法によって、スタンドスペースにおいて圧延位置の適切な位置決めが行われ、この位置決めは、固定されているストッパなどによって、構造的に簡単に、スタンドスペース内で終了する交換レールの終点で実施することができる。
【0024】
本発明の通常の特徴とは無関係に、交換シューを備える圧延機スタンドの特徴が、圧延機にとって有利であることは明白である。
【0025】
少なくとも1つの圧延機スタンドがインプットを有し、このインプットが、軸方向のインプットクラッチによって駆動モーターに連結可能である場合は、圧延機のさらに有利な実施形態が生じ、このインプットクラッチは、圧延機スタンド側クラッチエレメントと駆動側クラッチエレメントとを有しており、このインプットクラッチの回転軸は、交換レールに対して平行に配置されている。圧延機のこの実施形態、特に、交換レールに対して平行なクラッチの実施形態は、圧延機スタンド又はインプットと駆動モーター又は駆動モーターのギヤユニットとを簡単かつセルフロック式に連結する方法を可能とし、本発明の通常の特徴とは無関係に、ラインに配置された、中央のカリバー開口部を形成する複数の圧延機スタンドを備える、長い材料を圧延するための圧延機において、これらの圧延機スタンドが、それぞれスタンドスペースに配置され、それぞれ、交換レールに沿って少なくとも1つの交換位置へ移動可能である場合には、迅速かつ確実なロール交換を保証するために有利である。
【0026】
前述した回転軸の配置により、適切に実施された場合はクラッチの自動閉鎖が保証され、それは、両方のクラッチエレメントが圧延機スタンドの移動方向に沿って互いに正確に位置決めされ、その他の、特に手動による連結操作を省略することができるからである。この実施形態により、圧延機の装備時間を最小限に縮小できることは明白である。
【0027】
前述の特徴に追加して、圧延機が、油圧式の引出しシリンダを備える少なくとも1つの圧延機スタンド引出し装置を有することができるのは有利である。すぐに分かるように、この種の引出しユニットは、圧延機を迅速かつ確実に装備するのに有利であり、それは、例えば手動でチェーンの取付けなどを行う手動装備を省略することができるからである。
【0028】
これに応じて、前述の特徴の代替又は追加として、少なくとも2つの駆動ロールと少なくとも2つのインプットとを備える圧延機も提案され、この圧延機は、各インプットが1つの圧延機スタンド側クラッチエレメントを有しており、これらの圧延機スタンド側クラッチエレメントは平行かつ同方向に配置されていることを特徴とする。このことによって、有利には、この圧延機スタンドを、一方の側から、構造的に簡単かつ省スペースかつ確実に1つ又は複数の駆動に連結することができ、その際、特に、圧延機スタンドだけが動かされる。しかし、連結時の圧延機スタンドの移動は必ず行わなくてもよい。代替の方法として、例えば1つの圧延機スタンド又はスタンドスペースに、圧延機スタンドに対して軸方向にそれぞれのクラッチエレメントを連結するための駆動を設けることも可能であるが、このことは、その他のユニットが前提となり、そのためにエラー率及び取付けスペースの増加を引き起こす。
【0029】
前述の特徴の代替又は追加として、冒頭に述べた課題を解決するため、少なくとも4つの駆動ロールを備える圧延機スタンドが提案され、この圧延機スタンドは、それぞれ2つのロールが1つの共通のスタンドエレメントに支持されており、両方のスタンドエレメントは、スタンドエレメント側でスタンドボディに支持されていることを特徴とする。冒頭で述べた課題は、この場合、高いスタンドトルクと圧延力とが圧延機スタンドによって、とりわけ有利かつ確実に吸収され、分配され得ることによって解決される。
【0030】
4つの駆動ロールを備える圧延機スタンドには、特に有利な場合、スタンドエレメントごとに1つのインプットと、例えば水平ロール及び垂直ロールなど互いに垂直に配置されている2つのロールと、を設けることができる。このことにより、特に、インプットとロールとの間のギヤユニットに関しても、コンパクトかつ簡単な構造にすることが可能となる。この場合、圧延機スタンドでは、互いにかみ合う2つのベベルギヤによって、好ましくは45°の円錐角で、これらのロールを相互に動作可能に接続することができる。さらに、圧延機スタンドの互いにかみ合う両方のベベルギヤを、1つのカセットの中に配置することもできる。圧延機スタンドのこれらの実施形態により、圧延機スタンド内で作用する力及びトルクが、ベベルギヤ及びロールの配置によってとりわけ均一に分配され、この圧延機スタンドによって吸収され得ることは明らかである。従って、この実施形態による圧延機スタンドの場合、特に長い寿命と高い作動信頼性とが確実なものになる。
【0031】
前述の特徴の代替又は追加として、長い材料を圧延する場合に生じる圧延力を吸収するためのロールを備える圧延機スタンドが提案され、この圧延機スタンドは、少なくとも2つのスタンドパネルを有するスタンドボディを特徴とし、このスタンドパネルは互いに平行に、圧延力に対して垂直に配置されている。提案されている配置に従って2つのスタンドパネル設けることにより、僅かな材料によって製造が可能であり、製造コストの安い、非常に安定した圧延機スタンドの実施形態が生じる。
【0032】
追加的に、ロールの数に応じて、圧延機スタンドに曲がり部品を設けることができ、これらの曲がり部品は、圧延力を吸収し、スタンドパネルに圧延力を伝達する。圧延機スタンドのこの実施形態も、発生する圧延力を均等に圧延機スタンドに伝達することができることにより、圧延における確実かつ長い使用が確実に可能となる。
【0033】
冒頭の課題を解決するため、前述の特徴の代替又は追加として、長い材料を圧延する場合に生じる圧延力を吸収するための圧延機スタンドが提案され、この圧延機スタンドは、油圧式過負荷保護を特徴としている。この油圧式過負荷保護は、ロールの数に応じて圧延機スタンドに設けることができ、簡単な方法で圧延機スタンドを再び作動準備状態にすることができる。このことは、圧延機に圧延機スタンドをセットした後又は過負荷による停止後にも、圧力を単に適切な値まで上昇させることにより行うことができる。
【0034】
少なくとも1つの圧延機スタンドの油圧式過負荷シリンダが、相互に通信可能である場合、このことにより、有利には、例えば機能不良の場合に、全ての過負荷シリンダを同時に作動させることが可能となる。
【0035】
冒頭の課題を解決するため、1つの圧延機における圧延機スタンドの交換方法も提案され、この方法は、少なくとも1つの圧延機スタンドが傾斜した交換レールに沿って移動することを特徴としている。このことにより、有利には、すでに前述したように、圧延機スタンドのクラッチが開閉される場合には、とりわけ移動経路の制御を簡単に行うことができる。ここでは、傾斜した交換レールに沿った移動により、クラッチが自動的に閉じることができ、また自動的に閉じたままにしておくこともできる。
【0036】
特に、圧延機スタンドが、傾斜した交換レールに沿って圧延位置に落とされる場合は有利である。圧延機スタンドが傾斜した交換レールに沿って圧延位置に降下することにより、圧延機スタンドの自動ロック又は位置決めが可能になることは明らかであり、それは、重力の作用により、すでに詳しく述べたように、圧延機スタンドが交換レールから外れて独自に移動することが防止されるからである。
【0037】
同様に、一方では、これの代替又は追加として、冒頭の課題を解決するため、1つの圧延機における圧延機スタンドの交換方法が提案され、この方法は、少なくとも1つの圧延機スタンドがその圧延位置から一方の側へ、もう1つの圧延機スタンドがその圧延位置から別の側へ移動することを特徴としている。他方では、これに対応して、1つの圧延機における圧延機スタンドの交換方法が提案され、この方法は、少なくとも2つの圧延機スタンドがその圧延位置から共通の側及び交換位置に移動することを特徴とし、これらの交換位置は、少なくとも圧延機スタンドの幅だけ互いに離れている。これらの工程は、移動した圧延機スタンドの横側又は隣に、次の取付け又は装備作業のためのスペース、もしくは圧延機スタンドを一時保管するためのスペースが残されるという利点を提供する。特に、2つの圧延機スタンドの間にスペースが提供されるのは有利であり、このスペースには、他方の圧延機スタンドを一時保管することができ、その際、残りの圧延機スタンドの取付けは妨げられない。
【0038】
これと関連して、圧延機スタンドの「圧延機スタンド幅」は、圧延軸又は圧延方向に沿った、圧延機スタンドの長手方向の範囲である。従って、圧延機スタンドの幅は、圧延機の主要伸長方向に対して軸方向に広がっている。
【0039】
好ましくは、後者の代替の解決方法では、両方の圧延機スタンドが、少なくとも1つの別の圧延機スタンドと一緒に、この別の圧延機スタンドがその圧延位置に移動する前に、圧延機スタンドの幅だけ移動する。圧延機に沿って軸方向に行われるこの移動により、第1の両方の圧延機スタンドを取り除く必要なしに、別の圧延機スタンドの位置決めが行われる。従って、圧延機スタンドの非常に素早い交換が行われ、それらの交換時間及び取付け時間についても、最小限の時間だけを要する。この手順に必要な全スペースも、最小限まで抑えることができる。
【0040】
前述した方法の代替又は追加として、1つの圧延機における圧延機スタンドの交換方法が提案され、この方法では、駆動側クラッチエレメントは固定されたままであり、インプットクラッチが閉まるように、圧延機スタンド側クラッチエレメントを備える圧延機スタンドが動かされることにより、圧延機スタンドの少なくとも1つのインプットがインプットクラッチによってスタンドスペースの駆動に接続されることを特徴としている。冒頭の課題を解決するためにも、この方法が有利であるのは、圧延機スタンドとその駆動とのとりわけ迅速かつ確実な接続が保証され得ることであり、それは、インプットクラッチの2つのクラッチエレメントを順に挿入するだけで済むからであり、特に、それぞれの圧延機スタンドが適切なレール上を移動する場合、設定又は調整作業を実施しなくてもよいからである。すでに前述したように、これによって取付け時間が最小化され、このようなクラッチの作動信頼性が簡単な構造によって最大限に高められることは明らかである。
【0041】
特に、前述の解決方法と関連して、4ロールスタンドを提供することが可能であり、この4ロールスタンドにより、45°のずれがある場合、インプットクラッチが自動的に連結するように圧延機スタンドを圧延機ハウジングの中に挿入することができ、この駆動システムはコンパクトに製造されており、圧延機スタンドの交換は最小スペースで行われる。
【0042】
同様に、これらの利点を追加的に実施することができるようにするため、従属請求項の特徴も加えることができるのは当然である。本発明のその他の利点、目的及び特徴を、以下の添付図の説明に基づいて述べる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】圧延機の斜視図である。
【図2】図1による圧延機の第1の圧延機スタンドの正面図である。
【図3】1つのインプットと3つの駆動ロールを備える3ロールスタンドの図である。
【図4】2つのインプットと2つの駆動ロールを備える4ロールスタンドの図である。
【図5】2つのインプットと4つの駆動ロールを備える4ロールスタンドの図である。
【図6】図5に基づく構造の部分的断面図による詳細図である。
【図7】圧延機スタンドを含めた、図5及び6に基づく構造の斜視図である。
【図8】図5〜7に基づく構造図であり、過負荷シリンダの示された図5と同様の図である。
【図9】過負荷シリンダの詳細図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
図1及び2による実施例の場合、各スタンドスペース57には、独自の制御可能な駆動モーター51と、圧延位置61においてスタンドスペース57上にあるそれぞれ1つの圧延機スタンドに対してそれぞれ2つのアウトプットを備えるトランスファ52と、が割り当てられている。この場合、駆動モーター51は、スタンドスペース57も担架しているベース50に接している。圧延機スタンド12には、圧延機スタンド側にそれぞれ4つのロールが含まれ、これらのロールは、圧延する圧延材料のカリバーを形成する。この実施形態による全ての圧延機スタンド12は、カリバー直径を別にして同一構造であり、この実施例において、カリバー直径は圧延方向に圧延機スタンド12から圧延機スタンド12へ次第に細くなっており、他の実施例では、カリバーを別の形に変更することができる。
【0045】
偶数のスタンドスペース57の圧延機スタンド12は、この実施例の場合、圧延機ハウジングにおいて、圧延ラインの範囲内に、圧延方向17に対応する圧延軸に対し、水平面に関して22.5°傾いた状態で配置されている。これに対して、奇数のスタンドスペース57の圧延機スタンド12は、圧延機ハウジングにおいて、圧延ラインの範囲内に、圧延方向17に対応する圧延軸に対し、水平面に関して−22.5°ずれた状態で配置されている。従って、1つの圧延機スタンド12は、隣接する圧延機スタンド12に対して、圧延軸を中心にそれぞれ45°ずれている。
【0046】
この実施例においては、個々の圧延機スタンド12が、それぞれ、ロールを備える交換シュー53の上にある。この特殊な交換装置により、狭いスペースで数分内にスタンドの交換が可能となる。
【0047】
偶数のスタンドスペース57の圧延機スタンド交換は、圧延方向17に、圧延ラインの右側から行われる。奇数のスタンドスペースの圧延機スタンド交換は、圧延方向17に、圧延ラインの左側から行われる。圧延機のそれぞれの側には、ベースによって担架されている符号の付けられていないレール上を移動可能な交換カート54があり、交換カートは、交換するまで使用されている圧延機スタンド12及び待機している圧延機スタンド12の両方を保持するために用いられる。同様に、圧延機のそれぞれの側には、各圧延機スタンド12に対して油圧式引出しシリンダを備える圧延機スタンド引出し装置55があり、この装置は、それぞれベース50に支持されている。個々の圧延機スタンド12の交換は、この圧延機スタンド引出し装置55を使って問題なく行うことができる。
【0048】
使用中の圧延機スタンド12は、交換のために、圧延機スタンド引出し装置55のシリンダによって圧延機ハウジング又はスタンドスペース57からそれぞれの交換カート54に引き出され、交換カートは交換レール60上で弧を描きながら、圧延位置61における22.5°又は−22.5°の傾きから、交換カート54上の交換位置58において水平位置に到達する。次に、交換カート54は圧延方向17に沿ってスタンド距離の分を移動する。交換のために待機している圧延機スタンド12は、圧延機ハウジング開口部の前又はそれらの交換位置59とともにスタンドスペース57の前にあり、圧延機スタンド引出し装置55のシリンダによって、圧延機ハウジングの範囲内で圧延位置61のスタンドスペース57までスライドすることができる。交換レール60上を移動して、圧延機スタンドが22.5°又は−22.5°の傾き達し、圧延位置61に運ばれると、駆動モーター51の駆動力を圧延機スタンド12に伝達するインプットクラッチ56が自動的に入る。
【0049】
インプットクラッチの自動連結は、圧延位置61部分における22.5°又は−22.5°の交換レール60の傾きによって容易になり、それは、重力があるために、連結プロセスにそれ以上の力を必要としないからである。従って、圧延機スタンド12を圧延位置57の中に入れる場合、圧延機スタンド引出し装置55は、使用後に引き出す際の駆動力の一部しか必要としない。また、傾けられた交換レール60により、圧延中の作動信頼性が向上し、それは、圧延機スタンド12が、それ自体の重量によってそれぞれのスタンドスペース57に接触しており、この方法で位置決めされるからである。この限りにおいて、特にこの実施例の場合は、圧延機スタンド12を位置決めするための追加の支援システムを省略することができる。
【0050】
圧延機から取り出された圧延機スタンド12は、次に、適切にスライドして交換カート54に支持され、圧延運転の再開後にクレーンによって交換カート54から取り外され、他の用途に送られ、新しい圧延機スタンド12と交換される。直後のメンテナンスなど、その他の措置も、必要に応じてここで行うことができる。この実施例では、圧延機スタンド12が交換カート54から取り外される際に、好ましくは、交換シュー53が交換カート54に残される。共通の交換カート54上の2つの交換位置58、59により、装備時間及び圧延機の静止時間が最小限に縮小されるのは明らかであり、それは、圧延機スタンド12の実質的な圧延機への運搬と圧延機からの運搬が、実際の装備から切り離されているからである。
【0051】
図1から分かるように、圧延ライン又は圧延方向17に沿って圧延機スタンド12が交互に配置されていることは、圧延機スタンド12が圧延軸に対してそれぞれ45°互いにずれて配置されているという、すでに言及した別の利点を提供する。このことにより、圧延の際に生じる可能性のあるバリは、次の圧延機スタンド12の通過の際に再び滑らかにされ、それは、圧延機スタンド12がそれぞれ通過する場合、各圧延機スタンド12で使用するロール2、3、16の互いに突き当たっているエッジが、別の位置、すなわち45°ずれた位置にあるからである。
【0052】
図2による圧延機の断面図では、水平面に対して22.5°の角度をもつ偶数のスタンドスペース57の構造と、圧延方向17に対して右側に配置されている交換装置とが明らかである。奇数のスタンドスペース57には左右対称構造が該当し、奇数のスタンドスペース57のそれぞれ1つの駆動51は、奇数のスタンドスペース57の交換位置58の下部に配置されている。駆動51が交互に配置されていることにより、さらに、より強力な駆動を使用することが可能であり、それは、圧延方向17に沿って、個々の駆動のためにより多くのスペースが残されるためであり、ほぼ2倍の直径とより高いトルクを備える駆動が使用可能であるからである。唯一のインプットクラッチだけを備える圧延機スタンド12を使用する場合、そのような実施形態においては、回転数が増速又は減速されない場合でも、より強力に実施されている駆動51の駆動力が必要に応じて十分であり得る限り、増速又は減速歯車もしくはトランスファを全て省略することができる。
【0053】
それぞれの交換レール60の方向が変化することにより、さらに、この実施例では、個々の交換位置58にある圧延機スタンド12の間に、もう1つの圧延機スタンド12のためのスペースが、交換位置39のいずれかにそれぞれ十分に残されることになり、それは、この高さで、そこに設けられているスタンドスペース57が他方の側から装着又は交換されるからである。従って、交換カート54が圧延機スタンドの幅だけずれることにより、新しい圧延機スタンド12に該当するセットを準備することができる。
【0054】
図1及び2による圧延機スタンドは、例えば以下のタイプの圧延機スタンドであり得る。
− 1つのインプット1と3つの駆動ロール2、3とを備える3ロールスタンド
− 2つのインプット1と2つの駆動ロール2とを備える4ロールスタンド、又は
− 2つのインプット1と4つの駆動ロール2、3とを備える4ロールスタンド
必要に応じて、交換レール60の傾斜角は、それぞれの要件に適合させることができる。
【0055】
1つのインプット1と3つの駆動ロール2、3とを備える3ロールスタンドは、図3に例が示されているように、例えば、それぞれ2つのベベルギヤ7、8からなる2つのベベルギヤペアを有し、これらは、インプットと同軸に配置されている駆動ロール2の両側に設けられ、それらの側で再びそれぞれ1つの駆動ロール3を駆動する。ロール2、3は、この場合、120°の角度で互いに調整され、圧延機スタンド12の中に配置されている。この種のユニットは、特に、ストレッチレデューサ圧延機でも、サイジング圧延機又はエキストラクティング圧延機でも使用することができる。この場合、この種の圧延機スタンド12は、全浮動式アクスル4装備又は非装備及び固定式又は調整可能式で形成することができる。
【0056】
3ロールスタンドの場合、すぐに分かるように、傾斜部分における交換レール60の最適な角度は、水平面に対して30°又は−30°であり、それは、ロール2、3のシンメトリ軸と、互いに突き当たるロールの外部エッジとの間に、それぞれ60°の角度の開きが生じるからである。この種のずれによって、4ロールスタンドとの関連ですでに述べたように、第1の圧延機スタンド12に生じるバリは、次の圧延機スタンド12において再び滑らかにされる。
【0057】
圧延方向17に配置されている2つの圧延機スタンド12に対しては、それぞれ別の角度のずれも可能であることは明らかであるが、説明した45°又は60°のずれをもつ配置の場合、バリに作用する圧延力が最大に到達するため、最大限の圧延結果が達成される。しかし、図3〜6の図の平面において、2つのロール2、3の突き当たるエッジに、ロールのシンメトリ軸部分よりも小さな半径がある場合は、必要に応じて、円形ではない圧延表面を設けることも可能である。同様に、特殊な圧延プロセスでは、圧延機スタンド12におけるその他のロールの配置及び/又は45°又は60°とは異なる圧延機スタンド12又はロール2、3のずれ、又はその他の、もしくは変更可能な傾斜角も設けることができる。
【0058】
図3による圧延機スタンド12の全浮動式アクスル4は、駆動ロール2及びベベルギヤ7、8によって同様に駆動されるロール3に、インプット1によって供給される駆動力を供給する。圧延機スタンド12には、インプットクラッチの圧延機スタンド側クラッチエレメント11が装備され、このインプットクラッチは、回転可能に全浮動式アクスル4と接続され、インプットクラッチ側で、前述の実施例で説明したようにインプットクラッチの駆動側クラッチエレメントと相互作用し、傾斜した交換レール60によって、圧延機スタンド12では、自動的に両方のクラッチエレメントが接続される。
【0059】
この場合、両方のクラッチエレメントは、説明されているその他の実施形態でも同様に、圧延位置61の部分において、常に互いに同軸に配置されている。従って、インプットクラッチの回転軸15は、両方のクラッチエレメントの回転軸とも、駆動ロール2の回転軸とも一致する。さらに、インプットクラッチの回転軸15は、交換レーン60に対して平行に通っている。
【0060】
必要に応じて、駆動ロール3は、ドラッグロールとしても形成することができる。
【0061】
図4による、2つのインプット1と2つの駆動ロール2とを備える4ロールスタンドの場合、これらは互いに向かい合って配置されており、それぞれ、2つのインプット1のいずれかに接続されている。両方の駆動ロール2に対して、それぞれ90°ずれた状態で、合わせて2つのドラッグロール16が設けられている。この配置も、好ましくは、ここには図示されていない圧延機スタンド12の中で保持されており、ストレッチレデューサ圧延機でも、サイジング圧延機又はエキストラクティング圧延機でも使用することができる。この場合、この種の圧延機スタンド12も、全浮動式アクスル4装備又は非装備及び固定式又は調整可能式で形成することができる。
【0062】
2つのインプットを備える4ロールスタンドでは、前述した3ロールスタンドとは反対に、両方のドラッグロール16が、駆動ロール2によって切り離されている。従って、このドラッグロール16の回転は、圧延材料の動きだけによって圧延方向17に沿って行われ、このドラッグロール16は、圧延材料に作用する接触圧によって引っ張られる。
【0063】
前の実施例とは異なり、4ロールスタンドの駆動ロール2には、全浮動式アクスル4とインプット1とに対する同軸の回転軸が装備されてない。全浮動式アクスル4と駆動ロール2との間、及び全浮動式アクスルの反対側にある駆動ロール2の面には、それぞれ1つの偏心ブッシュが設けられている。この偏心ブッシュ9により、圧延する圧延材料への各ロールの設定が可能となり、同様にドラッグロール16も付属の偏心ブッシュ9を備えている。接触圧及び圧延寸法は、偏心ブッシュ9上に加わる力によって、要求に応じて調整することができる。この実施形態では、接触圧を発生させるために、図4には図示されていない過負荷シリンダがこの偏心ブッシュ9に作用する。
【0064】
図5〜8に示されている、4つの駆動ロール2、3を備える4ロールスタンドの両方のインプット1には、また2つの駆動ロール2を備える前述の4ロールスタンドにも、互いに平行に配置されたインプットクラッチ回転軸15が装備されている。この配置により、交換レール60上の圧延機スタンド12を圧延位置61にセットする間に、インプットクラッチを自動的に閉じることができる。
【0065】
図5〜8に示されている、2つのインプット1と4つの駆動ロール2、3とを備える4ロールスタンドには、図3による3ロールスタンドとは異なり、高いスタンドトルクと圧延力を吸収するために、2つの圧延ユニットが装備されている。それぞれ1つのインプット1によって、互いに垂直に配置されている2つのロール2、3は、それぞれ相互にかみ合う2つのベベルギヤ7、8を介して駆動され、ベベルギヤアングルは45°である。
【0066】
この場合、それぞれ内部にあるベベルギヤ7、8は、圧延機スタンド内を移動可能にガイドされるカセット6の中に個別に支持されている。さらに、スプライン形状を備えるベベルギヤ7、8は、それぞれ付属する全浮動式アクスル4、5の短いシャフトピースの端部に移動可能に取り付けられ、インナスプライン形状を備える他方の端部は、ロールシャフト上にある。シャフトピースは、転がり軸受けによって偏心ブッシュ9の中で支持されている。ロール2、3の偏心を調節する場合、カセット6も動かされるため、その中に固定支持されているベベルギヤ7、8も動かされ、これらは、その際、ロール端部のスプライン形状の中に移動する。圧延材料の反対側にある偏心ブッシュ9には、両側に平坦部が設けられている。カムの中心は、圧延機スタンド内を圧延方向17に移動する。ロール2、3の調整又はカムの回転は、平坦部の一方の側を押しているロールハウジング内スタッドボルトによって行われる。スタッドボルトを備えるホルダは、偏心ブッシュ9の平坦部を取り囲んでいる。スタッドボルト上には、リングギヤにかみ合うスパーギヤがある。周辺方向にリングギヤが回転することにより、スタッドボルトは、同距離及び同時に、取り付けられているスパーギヤと一緒に回転し、それによってロールの半径方向の位置が変化する。全浮動式アクスル4、5として実施されているロールシャフトユニットは、スレッドロッド10とクランプナット10とによって張着されている。
【0067】
圧延機スタンド12は、図5〜8による実施例の場合、2つのスタンドパネル13を有しており、これらのスタンドパネルは、4つの曲がり部品14を取り囲んでいる。この限りにおいて、スタンドパネル13は、圧延力を吸収する。曲がり部品14は、接続の前、好ましくは溶接前に加工され、この実施例の場合、曲がり部品のショルダーが、曲がり部品を取り囲むスタンドパネル13内に固定されている。この種のスタンド構造に代わって、例えば鋳造ボディとしての従来の圧延機スタンドも使用可能である。
【0068】
特にこの場合、カセット6は、独立したスタンドエレメントを形成しているため、ここでは2つの独立したスタンドエレメントが設けられており、これらは、それぞれ、垂直に配置されたロール2、3に接続されているインプット1を備えている。カセット6又は独立したスタンドエレメントは、それらの側で、スタンドパネル13によって形成されているスタンドボディに支持されている。別の実施形態では、互いに向き合うそれぞれ2つのロールを、1つのスタンドエレメント内に設けることも考えられる。独立したスタンドエレメントにより、高いスタンドトルクと圧延力とを吸収することができる。
【0069】
過負荷保護としては、従来のせん断ピン又はその他の周知の装置を使用することができる。この実施例では、特に図8に示されているように、油圧式過負荷シリンダ20が設けられていることにより、素早く作動状態に戻ることのできる過負荷保護を実現することができ、このことは、例えば該当する圧力を提供することによって簡単に実施することができる。該当する信号は、迅速かつ確実に読み取られ、例えば圧延機全体を停止するなど、その他の反応に利用することもできる。
【0070】
油圧式過負荷シリンダ20は、特に図9に詳しく図示されているように、シリンダボディ26、シリンダカバー21、及びピストン25からなる。圧延機スタンド12では、それぞれ1つのローラ2、3に、2つの過負荷シリンダ20が装備され、これらの過負荷シリンダは偏心ブッシュ9に作用する。従って、4ロールスタンドの圧延機スタンド12の場合は、8つの独立した過負荷シリンダ20が装備されている。
【0071】
シリンダカバー21を、回り止め22を備えるホルダピン23が通っている。これによって、過負荷シリンダ20のガイドピース27とその下の偏心ブッシュ9との間にあるギャップを精密に調整することができる。ピストン25とシリンダカバー21との間に形成されている行程容積24は、この実施例の場合、高圧下にあるオイル又はグリースが加えられるが、必要に応じて、その他の媒体も使用可能である。過負荷シリンダ20は、この実施例の場合、パイプラインを用いて、プレッシャコネクション28を介して互いに接続されているが、必要に応じて、これは省略することもできる。しかし、通信が故障した場合、プレッシャコネクション28又は振動伝達のその他の手段を用いて、全てのロール2、3の過負荷保護の同時作動を確実に行うことは簡単にはできない。過負荷シリンダ20は、設定された分離力で開き、ガイドピース27が内部部品と一緒に偏心ブッシュ9を開放するように、共通のバルブによって設定されている。このことは、必ずしも全てのピンが同時に切断されない従来のせん断ピンとは反対に、同時に行われ、特に元に戻すこともできる。
【0072】
この種の過負荷保護、特に、圧延機スタンド12の全てのロールに関してシンクロナイズすることは、とりわけ、エキストラクティング圧延機にとって有利である。
【符号の説明】
【0073】

1 インプット
2 駆動ロール
3 駆動ロール
4 全浮動式アクスル
5 全浮動式アクスル
6 ベベルギヤペア用カセット
7 ベベルギヤ
8 ベベルギヤ
9 偏心ブッシュ
10 クランプナット付きスレッドロッド
11 インプットクラッチの圧延機スタンド側クラッチエレメント
12 圧延機スタンド
13 スタンドパネル
14 曲がり部品
15 インプットクラッチの回転軸
16 ドラッグロール
17 圧延方向
20 過負荷シリンダ
21 シリンダカバー
22 回り止め
23 ホルダピン
24 行程容積
25 ピストン
26 シリンダボディ
27 ガイドピース
28 プレッシャコネクション
50 ベース
51 駆動モーター
52 トランスファ
53 交換シュー
54 交換カート
55 圧延機スタンド引出し装置
56 インプットクラッチ
57 スタンドスペース
58 交換位置
59 別の交換位置
60 交換レール
61 圧延位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラインに配置された、中央のカリバー開口部を形成する複数の圧延機スタンド(12)を備え、該圧延機スタンド(12)は、それぞれスタンドスペース(57)に配置され、それぞれ少なくとも1つの交換位置(58、59)へ移動可能であり、特に前述の請求項のいずれか一項に記載の、長い材料を圧延するための圧延機であって、
前記各スタンドスペース(57)がインプットクラッチを有し、該インプットクラッチが圧延機スタンド側クラッチエレメント(11)と駆動側クラッチエレメントとを有しており、該駆動側クラッチエレメントが軸方向に固定した状態で前記スタンドスペース(57)に設けられていることを特徴とする圧延機。
【請求項2】
前記圧延機スタンド(12)及び前記スタンドスペース(57)ごとに2つの前記インプットクラッチがあることを特徴とし、両方の前記インプットクラッチは、それぞれ回転軸(15)に対して軸方向に作用し、前記回転軸(15)は平行に配置され、両方の前記インプットクラッチはラインの一方の側に配置されている、請求項1に記載の圧延機。
【請求項3】
少なくとも1つの前記スタンドスペース(57)に駆動モーター(51)を備える駆動が設けられ、前記駆動モーターは、少なくとも2つのアウトプットを有するトランスファ(52)に接続されており、前記アウトプットは、それぞれ前記インプットクラッチの前記駆動側クラッチエレメントを有していることを特徴とする、請求項1及び2のいずれか一項に記載の圧延機。
【請求項4】
ラインに配置された、中央のカリバー開口部を形成する複数の圧延機スタンド(12)を備え、該圧延機スタンド(12)は、それぞれスタンドスペース(57)に配置され、それぞれ少なくとも1つの交換位置(58、59)へ移動可能である、長い材料を圧延するための圧延機であって、
前記交換位置(58)が交換カート(54)上に設けられており、該交換カート(54)は、少なくとももう1つの交換位置(59)を有していることを特徴とする圧延機。
【請求項5】
前記交換カート(54)が、それぞれ2つの前記スタンドスペース(57)に一方の前記交換位置(58)と他方の前記交換位置(59)とを1つずつ、少なくとも4つの前記交換位置(58、59)を有しており、一方の2つの前記交換位置(57)は、一方の2つの前記スタンドスペース(57)の間隔に応じて、他方の2つの前記交換位置(59)は、他方の2つの前記スタンドスペース(57)の間隔に応じて、互いに離されていることを特徴とする、請求項4に記載の圧延機。
【請求項6】
一方の前記交換位置(58)と他方の前記交換位置(59)とが、それぞれ少なくとも前記圧延機スタンド(12)の幅、好ましくは前記スタンドスペース(57)の間隔だけ互いに離されていることを特徴とする、請求項5に記載の圧延機。
【請求項7】
油圧式の引出しシリンダを備える少なくとも1つの圧延機スタンド引出し装置(55)を特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の圧延機。
【請求項8】
少なくとも2つの駆動ロール(2、3)と少なくとも2つのインプット(1)とを備える圧延機スタンドであって、各前記インプット(1)が1つの圧延機スタンド側クラッチエレメント(11)を有しており、該圧延機スタンド側クラッチエレメント(11)は、平行かつ同方向に配置されていることを特徴とする圧延機スタンド。
【請求項9】
少なくとも4つの駆動ロール(2、3)を備える圧延機スタンドであって、それぞれ2つの前記ロール(2、3)が、1つの共通のスタンドエレメントに支持されており、両方の前記スタンドエレメントは、前記スタンドエレメント側でスタンドボディに支持されていることを特徴とする圧延機スタンド。
【請求項10】
前記スタンドエレメントごとに1つのインプット(1)と、互いに垂直に配置されている2つの前記ロール(2、3)とが設けられていることを特徴とする、請求項9に記載の圧延機スタンド。
【請求項11】
前記ロール(2,3)が、互いにかみ合う2つのベベルギヤ(8、9)によって、好ましくは45°の円錐角で相互に動作可能に接続されていることを特徴とする、請求項10に記載の圧延機スタンド。
【請求項12】
互いにかみ合う両方の前記ベベルギヤ(8、9)が、1つのカセット(6)の中に配置されていることを特徴とする、請求項11に記載の圧延機スタンド。
【請求項13】
長い材料を圧延する場合に生じる圧延力を吸収するためのロールを備える圧延機スタンドであって、
少なくとも2つのスタンドパネル(13)を有し、該スタンドパネル(13)が互いに平行に、圧延力に対して垂直に配置されているスタンドボディを特徴とする圧延機スタンド。
【請求項14】
前記ロール(2、3)の数に応じて、曲がり部品(14)が設けられており、該曲がり部品(14)は、前記圧延力を吸収し、前記スタンドパネル(13)に圧延力を伝達することを特徴とする、請求項13に記載の圧延機スタンド。
【請求項15】
油圧式過負荷保護を特徴とする、長い材料を圧延する場合に生じる圧延力を吸収するための圧延機スタンド。
【請求項16】
前記ロール(2、3)の数に応じて、相互に通信する過負荷シリンダ(20)が設けられていることを特徴とする、請求項15に記載の圧延機スタンド。
【請求項17】
少なくとも2つの圧延機スタンド(12)が、その圧延位置(61)から共通の側及び交換位置(58、59)に移動し、該交換位置は、少なくとも圧延機スタンドの幅だけ互いに離れており、両方の前記圧延機スタンド(12)が、少なくとも1つの別の圧延機スタンド(12)と一緒に、前記別の圧延機スタンド(12)がその前記圧延位置(61)に移動する前に、圧延機スタンドの幅だけ移動することを特徴とする、圧延機における圧延機スタンド(12)の交換方法。
【請求項18】
駆動側クラッチエレメントは固定されたままであり、前記インプットクラッチが閉まるように、前記圧延機スタンド側クラッチエレメント(11)を備える前記圧延機スタンド(12)が動かされることによって、圧延機スタンド(12)の少なくとも1つのインプット(1)が、インプットクラッチによってスタンドスペース(57)の駆動に接続されることを特徴とする、圧延機における圧延機スタンドの交換方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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