説明

圧延潤滑混合液供給装置

【課題】幅切りによって、潤滑混合液の不要な噴霧を行って潤滑混合液を無駄にすることなく、潤滑混合液を噴霧しないヘッダーノズルについてノズル詰まりを防止する圧延潤滑混合液供給装置を提供すること。
【解決手段】圧延潤滑混合液供給部と、ノズル詰り防止液供給部と、圧延潤滑混合液及びノズル詰り防止液の少なくとも一つを噴霧する複数のヘッダーノズルと、前記圧延潤滑混合液供給部及びノズル詰り防止液供給部と前記ヘッダーノズルとを連通するための複数の連通路組を切換え可能に設けた供給制御部とを有し、前記供給制御部の少なくとも一つの前記連通路組が、前記圧延潤滑混合液供給部を圧延材に対向した前記ヘッダーノズルに連通させる圧延潤滑混合液通路と、前記ノズル詰り防止液供給部を圧延材に対向しない前記ヘッダーノズルに連通させるノズル詰り防止液通路とを包含する圧延潤滑混合液供給装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱間圧延や冷間タンデム圧延等の圧延ロール、すなわちワークロールやバックアップロールや、圧延材に、圧延潤滑剤と希釈水の混合である圧延潤滑混合液を噴射して供給する圧延潤滑混合液供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
圧延加工において、製品品質の向上、ロール寿命の延長、加工エネルギーの削減を目的として、圧延潤滑剤と水を混合した圧延潤滑混合液が圧延ロールや圧延材に向けて噴射されている。特に、熱間圧延においては、圧延潤滑混合液供給装置の圧延潤滑混合液供給ノズルは、圧延材の輻射熱によって焼付きあるいは焦付きが発生するおそれがある。
【0003】
従来の圧延潤滑混合液供給装置としては、ミキサー部で圧延潤滑剤と希釈水とを混合し、圧延ロールの軸方向に複数個並べて配置されたスプレーノズルを介して圧延潤滑剤と希釈水との混合液を圧延ロールや圧延材に噴射する圧延潤滑剤の噴射装置であって、圧延に供される金属板の板幅に応じて混合液を噴射するスプレーノズルの個数を増減させ、かつミキサー装置内を混合しながら流れる混合液の流速を一定に維持する圧延潤滑剤の噴射装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
他の従来の圧延潤滑混合液供給装置としては、ミキサーによって圧延潤滑剤と希釈水とを混合した潤滑混合液が流れる流路に、絞り部を形成し、該絞り部との間にリング状の隙間を形成しうる弁体と、前記隙間の大きさを調整する調整手段と、流路を流れている水に油を供給する給油路とを備え、前記隙間の大きさを調整することにより、油種や粘度の異なる潤滑油に柔軟に対応して適度なミキシングレベルを得られるようにした圧延潤滑混合液供給装置が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
従来の圧延潤滑混合液供給装置に使用されるヘッダーとしては、多数のスプレーノズルを備えたメインヘッダの背面にサブヘッダを設け、これらを戻り管及び供給管により相互に連結するとともに、供給管の内部に圧延油をメインヘッダに向けて噴出するインジェクションノズルを深く挿入したことを特徴とする圧延油ヘッダが提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【0006】
他の従来の圧延潤滑混合液供給装置に使用されるヘッダーとしては、多数のスプレーノズルを備えたメインヘッダの背面に、戻り管を介してサブヘッダを接続し、圧延油を常時循環させるとともに、圧力計によりヘッダ内を循環する圧延油の圧力を測定し、タンクからの圧延油供給ポンプの回転数を制御し、これによってスプレーノズル数にかかわらずスプレー量を一定とし、また油分濃度を均一に維持して、いわゆる幅切りを可能するヘッダーが提案されている(例えば、特許文献4参照)。
ここで、幅切りとは、圧延材の幅が小さくなったことに合わせて、作動するノズルの数を減らして、潤滑混合剤の散布幅を狭くすることである。
【0007】
他の従来の圧延潤滑混合液供給装置に使用されるヘッダーとしては、多数のスプレーノズルを備えたヘッダ本体の内部を、仕切り板によりスプレーノズル側の室とその背面側の室とに分割するとともに、これらの2室を少なくともヘッダ本体の両端部で連通させ、この仕切り板の途中に設けた空間部に、圧延油供給ノズルから供給された圧延油の衝突圧により回転する回転羽根を、その回転軸が仕切り板と同一平面上にあるように設けたことを特徴とする圧延油ヘッダが提案されている(例えば、特許文献5参照)。
【0008】
さらに他の従来の圧延潤滑混合液供給装置に使用されるヘッダーとしては、多数のスプレーノズルを備えたヘッダ本体の内部に、ヘッダ端部の圧延油供給ノズルから供給された圧延油を、次第に拡径したディフューザ部を通じてヘッダ本体内部の中央部に向かって噴出するとともに、そのヘッダ内端部付近の圧延油を吸引する2個のイジェクタを、左右対称かつ圧延油がヘッダ本体内でイジェクタ内部を通って循環できるように、イジェクタ両端をヘッダ端部内側と密着させないように、また中央側で相互に間隔を持たせて設けたことを特徴とする圧延油ヘッダが提案されている(例えば、特許文献6参照)。
【0009】
さらに他の従来の圧延潤滑混合液供給装置に使用されるヘッダーとしては、圧延機で圧延される鋼板に圧延油をスプレーするスプレーヘッダであって、圧延油供給室を形成する内筒とこの内筒に回転自在に固定される外筒との二重管構造とされ、前記外筒の外周面にノズル植え付け本数の異なる複数のノズル列が設けられ、該ノズル列の任意の1列が前記外筒の内面と前記内筒の外面とで画成されるノズルスプレー室を介して、前記内筒の圧延油供給室と選択的に連通可能とされることを特徴とする圧延油のスプレーヘッダが提案されている(例えば、特許文献7参照)。
【0010】
(特許文献のリスト)
【特許文献1】特開2002−282911
【特許文献2】WO2002/081068
【特許文献3】特開2003−340514
【特許文献4】特開2003−340513
【特許文献5】特許第3699692号
【特許文献6】特許第3796195号
【特許文献7】特開平9−10817号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
圧延材の幅が変更され、従来の圧延潤滑混合液供給装置において、幅切りを行う場合、一般的に、作動するヘッダーノズルの数を減少させること、すなわち不用なヘッダーノズルを閉塞することによって行っている。しかし、閉塞されたヘッダーノズルへの希釈水の供給が止まると、配管内に圧延潤滑混合液が滞留し、分離した圧延潤滑混合液が加水分解、あるいは劣化により、ノズル詰まりが起こり易くなる問題がある。
【0012】
また、圧延ロールへ圧延潤滑剤が多量に付着していると、圧延材のスリップや、圧延材が蛇行するという問題が発生する。
【0013】
一方、従来の圧延潤滑混合液供給装置の圧延潤滑剤と希釈水のミキサー部において、管路内を流れる希釈水に圧延潤滑剤を注入し、希釈水の減圧や乱流によって潤滑混合液を生成している。エマルションの潤滑混合液は、混合状態が良好すなわち圧延潤滑剤の粒子が小さいと、圧延装置のロールへの圧延潤滑剤の付着性が悪くなる。反対に、混合状態が悪いと、ヘッダーの幅方向で圧延潤滑剤の含有比率が不均一になるおそれが高い。
【0014】
(発明の目的)
本発明は、従来の圧延潤滑混合液供給装置の上述した問題に鑑みてなされたものであって、幅切りによって、潤滑混合液の不要な噴霧を停止させて潤滑混合液を無駄にすることなく、かつ潤滑混合液を噴霧しないヘッダーノズルについてノズル詰まりを防止することができる、簡易かつ確実な、操作ミス等のおそれのない圧延潤滑混合液供給装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、
圧延潤滑混合液供給部と、ノズル詰り防止液供給部と、圧延潤滑混合液及びノズル詰り防止液の少なくとも一つを噴霧する複数のヘッダーノズルと、前記圧延潤滑混合液供給部及びノズル詰り防止液供給部と前記ヘッダーノズルとを連通するための複数の連通路組を切換え可能に設けた供給制御部とを有し、
前記供給制御部の少なくとも一つの前記連通路組が、前記圧延潤滑液供給部を圧延材又はロールに対向した前記ヘッダーノズルに連通させる圧延潤滑混合液通路と、前記ノズル詰り防止液供給部を圧延材に対向しない前記ヘッダーノズルに連通させるノズル詰り防止液通路とを包含することを特徴とする圧延潤滑液供給装置である。
【0016】
本発明の実施態様は、以下のとおりである。
前記供給制御部が、前記圧延潤滑混合液混合供給部及びノズル詰り防止液供給部に対し回転移動して前記連通路組を切換えることを特徴とする。
【0017】
前記供給制御部が、前記圧延潤滑混合液供給部及びノズル詰り防止液供給部に対し直線移動して前記連通路組を切換えることを特徴とする。
【0018】
前記供給制御部が、前記圧延潤滑混合液を噴霧するヘッダーノズルの数に対応して、モーターポンプにより前記圧延潤滑混合液の供給量を調整することを特徴とする。
【0019】
前記供給制御部が、前記ノズル詰り防止液を噴霧するヘッダーノズルの数に対応して、前記ノズル詰り防止液の供給量を調整することを特徴とする。
【0020】
前記圧延潤滑混合液が、潤滑剤と水のエマルジョンであることを特徴とする。
【0021】
前記圧延潤滑混合液の水が、水であることを特徴とする。圧延潤滑混合液の乳化状態を均一かつ一定にすることを容易に行うことができる。
【0022】
前記ノズル詰り防止液が、界面活性剤の水希釈液であることを特徴とする。
【0023】
前記圧延潤滑混合液供給部が、圧延潤滑液と希釈液を混合して圧延潤滑混合液をつくるミキサー部を包含することを特徴とする。
【0024】
前記ミキサー部は、圧延潤滑混合液を噴霧するヘッダーノズルの数に対応して圧延潤滑液の流量を調整する流量調整部を有し、圧延潤滑混合液を噴霧するヘッダーノズルの数に拘わらず一定の圧延潤滑液及び希釈液の混合比を維持することを特徴とする。
【0025】
本発明はまた、圧延潤滑混合液供給部と、ノズル詰り防止液供給部と、圧延潤滑混合液及びノズル詰り防止液の少なくとも一つを噴霧する複数のヘッダーノズルと、前記圧延潤滑混合液供給部及びノズル詰り防止液供給部と前記ヘッダーノズルとを連通するための供給制御部とを有することを特徴とする圧延潤滑混合液供給装置である。
【0026】
本発明はまた、圧延潤滑混合液供給部と、ノズル詰り防止液供給部と、圧延潤滑混合液及びノズル詰り防止液の少なくとも一つを噴霧する複数のヘッダーノズルと、前記圧延潤滑混合液供給部及びノズル詰り防止液供給部と前記ヘッダーノズルとを連通するための複数の連通路組を回転移動により切換え可能に設けた供給制御部とを有することを特徴とする圧延潤滑混合液供給装置である。
【0027】
本発明はさらに、圧延潤滑混合液供給部と、ノズル詰り防止液供給部と、圧延潤滑混合液及びノズル詰り防止液の少なくとも一つを噴霧する複数のヘッダーノズルと、前記圧延潤滑混合液供給部及びノズル詰り防止液供給部と前記ヘッダーノズルとを連通するための複数の連通路組を直線移動により切換え可能に設けた供給制御部とを有することを特徴とする圧延潤滑混合液供給装置である。
【発明の効果】
【0028】
本発明の圧延潤滑混合液供給装置によれば、幅切りによって、混合潤滑液の不要な噴霧を停止させて混合潤滑液を無駄にすることなく、かつ混合潤滑液を噴霧しないヘッダーノズルについてノズル詰まりを防止することができる、簡易かつ確実な、操作ミス等のおそれのない圧延潤滑混合液供給装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下に本発明の実施形態の圧延潤滑混合液供給装置を図に基づいて説明する。
(第1実施形態)
第1実施形態の圧延潤滑混合液供給装置1は、図1に示すように、ロータリ式切換え弁を備えた供給制御部を持ち、圧延材Pの表面に圧延潤滑混合液Sを噴霧する。
【0030】
圧延潤滑混合液供給装置1は、図1に示すように、圧延潤滑液を供給する圧延潤滑液タンク部10と、圧延潤滑液を希釈するための希釈水Dを供給する希釈水タンク部12と、加圧ノズル詰り防止液Cを供給するノズル詰り防止液タンク部14と、圧延潤滑混合液Sとノズル詰り防止液Cを所定のヘッダーノズルに供給するための複数の連通路を有しこれらを制御する供給制御部20と、ロール又は圧延材Pの走行方向と直交する方向に直線的に並置されたヘッダーノズル列22を有するヘッダー24とを有する。供給制御部20は、希釈水タンク部12から供給される希釈水Dと、圧延潤滑液タンク部10から供給される圧延潤滑液Lを混合するミキサー部25を有する。
【0031】
ヘッダー24のヘッダーノズル列22は、図1ないし図5に示すように、各図の左側より、ヘッダーノズルNL1、NL2、NL3,NL4、・・・・・・、NR4、NR3,NR2,NR1を有する。圧延材Pの幅は、図2に示す全幅PW0、図3に示す1段幅切り幅PW1、図4に示す2段幅切り幅PW2、図5に示す3段幅切り幅PW3等と変化する。
【0032】
図2に示す全幅PW0に対しては、全てのヘッダーノズルNL1、NL2、NL3,NL4、・・・・・・、NR4、NR3,NR2,NR1が圧延潤滑混合液Sを噴霧する。 図3に示す1段幅切り幅PW1に対しては、ヘッダーノズルNL2、NL3,NL4、・・・・・・、NR4、NR3,NR2が圧延潤滑混合液Sを噴霧し、ヘッダーノズルNL1、R1がノズル詰り防止液Cを噴霧する。
【0033】
図4に示す2段幅切り幅PW2に対しては、ヘッダーノズルNL3,NL4、・・・・・・、NR4、NR3が圧延潤滑混合液Sを噴霧し、ヘッダーノズルNL1、NL2、NR2,NR1がノズル詰り防止液Cを噴霧する。
図5に示す3段幅切り幅PW3に対しては、ヘッダーノズルNL4、・・・・・・、NR4が圧延潤滑混合液Sを噴霧し、ヘッダーノズルNL1、NL2、NL3、NR3,NR2,NR1がノズル詰り防止液Cを噴霧する。
【0034】
供給制御部20は、図1に示すように、ロータリ式切換え弁40を回転可能に収納したハウジング41を有する。ハウジング41は、圧延潤滑混合液SをヘッダーノズルNL4、・・・・・・、NR4に供給するための第1コネクタ30、圧延潤滑混合液S又はノズル詰り防止液CをヘッダーノズルNL3及びNR3に供給するための第2コネクタ32、圧延潤滑混合液S又はノズル詰り防止液CをヘッダーノズルNL2及びNR2に供給するための第3コネクタ34、圧延潤滑混合液S又はノズル詰り防止液CをヘッダーノズルNL1及びNR1に供給するための第4コネクタ36を有する。
【0035】
ハウジング41は、さらに、図1に示すように、圧延潤滑液タンク部10から圧延潤滑液Lを供給される圧延潤滑液コネクタ50、希釈水タンク部12から希釈水Dを供給される希釈水コネクタ52、ノズル詰り防止液タンク部14からノズル詰り防止液Cを供給されるノズル詰り防止液コネクタ54を有する。圧延潤滑液コネクタ50と希釈水コネクタ52は、ミキサー部25において連通されていて、両者を所定の混合比で混合する。
【0036】
圧延潤滑液タンク部10は、モータMにより駆動される第1ポンプP1によって圧延潤滑液Lをミキサー部25の圧延潤滑液コネクタ50に供給するように連結されている。モータMは、圧延潤滑液制御部26によって制御される。
【0037】
希釈水タンク部12は、第2ポンプP2及び希釈水圧力調整弁27を介して希釈水Dをミキサー部25の希釈水コネクタ52に供給するように連結されている。
【0038】
ノズル詰り防止液タンク部14は、第3ポンプP3及びノズル詰り防止液圧力調整弁28を介してノズル詰り防止液Cを供給制御部20のノズル詰り防止液コネクタ54に供給するように連結されている。
【0039】
圧延潤滑液Lは、例えば油脂、鉱油、又は合成エステルの溶液である。圧延潤滑液には、所望により、極圧添加剤を加える。希釈水Dは、第2ポンプP2によって加圧され、希釈水圧力調整弁27によって調整され、例えば、約0.6MPaでミキサー部25に供給される。
【0040】
圧延潤滑混合液Sは、ロール又は圧延材Pに対向したヘッダーノズル列22の各ヘッダーノズルから、0.3MPaで圧延材Pに向けて噴霧され、ノズル詰り防止液Cは圧延材に対向しないヘッダーノズル列22の各ヘッダーノズルから圧延材Pの走路に向けて、例えば、0.1MPaで噴霧される。
【0041】
ロータリ式切換え弁40は、エア駆動手段42によって回動され、回転位置センサ44によって回動角度位置が検出される。エア駆動手段42は、エア駆動力によって往復運動するリニア部材(図示せず)によって回転させられる駆動シャフト(図示せず)を有する。回転位置センサ44は、回転部材(図示せず)に複数の磁石を埋め込み、静止部材(図示せず)に配置した磁気センサ(図示せず)によって前記駆動シャフト(図示せず)の回転位置を検出する。
【0042】
ロータリ式切換え弁40の構成は、全幅噴霧状態において、図6の回転軸に沿った断面図6a、図6aの線6bー6bに沿った断面図6b、図6の線6cー6cに沿った断面図6c、図6の線6dー6dに沿った断面図6dに示される。図7ないし図9は、1段幅切り状態ないし3段幅切り状態を、図6と同じ方式で示す。
【0043】
ロータリ式切換え弁40は、図6ないし図9に示すように、圧延潤滑混合液通路60と、ノズル詰り防止液通路70と、全幅圧延潤滑混合液縦通路62、1段幅切り圧延潤滑混合液縦通路64、2段幅切り圧延潤滑混合液縦通路66、2段幅切りノズル詰り防止液縦通路72、3段幅切りノズル詰り防止液縦通路74を有する。
【0044】
圧延潤滑混合液通路60は、最大断面積の全幅用直線通路60a、二番目に大きい断面積の1段幅切り用直線通路60b、三番目に大きい断面積の2段幅切り用直線通路60c、四番目に大きい断面積の3段幅切り用直線通路60dを、ロータリ式切換え弁40の回転中心点X1において交差するように、等角度間隔で配置して形成されている。
【0045】
ノズル詰り防止液通路70は、最小断面積の全幅用直線通路70a、二番目に小さい断面積の1段幅切り用直線通路70b、三番目に小さい断面積の2段幅切り用直線通路70c、四番目に小さい断面積の3段幅切り用直線通路70dをロータリ式切換え弁40の回転中心点X2において交差するように、等角度間隔で配置して形成されている。ただし、最小断面積の全幅用直線通路70a、二番目に小さい断面積の1段幅切り用直線通路70b、三番目に小さい断面積の2段幅切り用直線通路70c、四番目に小さい断面積の3段幅切り用直線通路70dの断面積の差異は小さいので、図6cないし図9cには同一断面積として記載されている。
全幅用直線通路70aは、全体構成の理解を容易にするために説明したが、実際はノズル詰り防止液を噴霧する必要がないので通路70a(図示せず)は形成されていない。
【0046】
上述した第1実施形態のノズル詰り防止液通路70の最小断面積は、ノズル詰り防止のために設けたものであり、ノズル詰り防止の効果が確保できれば、例えば全ての通路の断面積を同一にする等任意に決定することができる。
【0047】
上述した第1実施形態の圧延潤滑混合液供給装置1は、ロータリ式切換え弁40を回転操作することのみにより、圧延材Pの幅に合わせて無駄なく圧延潤滑混合液Sを噴霧すると同時に、圧延潤滑混合液Sを噴霧していないヘッダーノズルにはノズル詰り防止液Cが供給され、ノズル詰りが有効に防止される。
一方、各ヘッダーノズルからの噴霧される圧延潤滑混合液Sの混合比又は量の一方又は両方は、第2ポンプP2及び希釈水圧力調整弁27ならびにモータMを調整することによって行う。例えば、いずれの段幅切り状態においても、各ヘッダーノズルからの噴霧される圧延潤滑混合液Sの混合比又は量の一方又は両方は常に一定であるように調整される。
【0048】
(第2実施形態)
第2実施形態の圧延潤滑混合液供給装置100は、リニア式切換え弁を備えた供給制御部を持ち、圧延材Pの表面に圧延潤滑混合液Sを噴霧する。第2実施形態の圧延潤滑混合液供給装置100は、供給制御部以外は第1実施形態と同一の構成を有するので、供給制御部以外の説明は省略する。
【0049】
供給制御部120は、図10に示すように、リニア式切換え弁140を直線摺動可能に収納したハウジング141を有する。ハウジング141は、圧延潤滑混合液SをヘッダーノズルNL4、・・・・・・、NR4に供給するための第1コネクタ130、圧延潤滑混合液S又はノズル詰り防止液CをヘッダーノズルNL3、NR3に供給するための第2コネクタ132、圧延潤滑混合液S又はノズル詰り防止液CをヘッダーノズルNL2、NR2に供給するための第3コネクタ134、圧延潤滑混合液S又はノズル詰り防止液CをヘッダーノズルNL1、NR1に供給するための第4コネクタ136を有する。
【0050】
ハウジング141は、さらに、図10に示すように、圧延潤滑液タンク部(図示せず)から圧延潤滑液を供給される圧延潤滑液コネクタ150、希釈水タンク部(図示せず)から供給される希釈水コネクタ152、ノズル詰り防止液タンク部(図示せず)からノズル詰り防止液Cを供給されるノズル詰り防止液コネクタ154を有する。圧延潤滑液コネクタ150と希釈水コネクタ152は、ミキサー部125において連通されている。
【0051】
リニア式切換え弁140は、エア駆動手段142によって直線移動され、磁石143及び複数の位置センサ144によって直線摺動位置が検出される。リニア式切換え弁140は、断面図である図10、及び図10の線11ー11に沿った断面図である図11で示される。
【0052】
リニア式切換え弁140は、図10及び図11に示すように、全幅圧延潤滑混合液噴霧に関する全幅圧延潤滑混合液直線通路160a、全幅圧延潤滑混合液縦通路162aを有する。
リニア式切換え弁140は、さらに、1段幅切り圧延潤滑混合液噴霧に関する1段幅圧延潤滑混合液直線通路160b、1段幅圧延潤滑混合液縦通路162b、1段幅圧延ノズル詰り防止液直線通路164bを有する。
リニア式切換え弁140は、さらに、2段幅切り圧延潤滑混合液噴霧に関する2段幅圧延潤滑混合液直線通路160c、2段幅圧延潤滑混合液縦通路162c、2段幅圧延ノズル詰り防止液直線通路164c、2段幅圧延ノズル詰り防止液縦通路166cを有する。
リニア式切換え弁140は、さらに、3段幅切り圧延潤滑混合液噴霧に関する3段幅圧延潤滑混合液直線通路160d、3段幅圧延ノズル詰り防止液直線通路164d、3段幅圧延ノズル詰り防止液縦通路166dを有する。
【0053】
全幅圧延潤滑混合液直線通路160aないし3段幅圧延潤滑混合液直線通路160dは、順次その最小断面積が小さくなるように形成される。1段幅圧延ノズル詰り防止液直線通路164bないし3段幅圧延ノズル詰り防止液直線通路164dは、順次その最小断面積が大きくなっているが、ノズル詰り防止の効果が確保できれば、例えば全てのノズル詰り防止液直線通路164bないし164dの最小断面積を同一にする等任意に決定することができる。
【0054】
全幅圧延潤滑混合液噴霧状態の供給制御部120は、図10に示すように、ミキサー部125が全幅圧延潤滑混合液直線通路160aに連通している。さらに、全幅圧延潤滑混合液直線通路160a及び全幅圧延潤滑混合液縦通路162aが第1コネクタ130、第2コネクタ132、第3コネクタ134及び第4コネクタ136に連通している。
【0055】
1段幅切り圧延潤滑混合液噴霧状態の供給制御部120は、図12に示すように、ミキサー部125が1段幅圧延潤滑混合液直線通路160bに連通し、ノズル詰り防止液コネクタ154が1段幅圧延ノズル詰り防止液直線通路164bに連通している。1段幅圧延潤滑混合液直線通路160b及び1段幅圧延潤滑混合液縦通路162bが第1コネクタ130、第2コネクタ132及び第3コネクタ134に連通している。さらに、1段幅圧延ノズル詰り防止液直線通路164bが第4コネクタ136に連通している。
【0056】
2段幅切り圧延潤滑混合液噴霧状態の供給制御部120は、図13に示すように、ミキサー部125が2段幅圧延潤滑混合液直線通路160cに連通し、ノズル詰り防止液コネクタ154が2段幅圧延ノズル詰り防止液直線通路164cに連通している。2段幅圧延潤滑混合液直線通路160c及び2段幅圧延潤滑混合液縦通路162cが第1コネクタ130及び第2コネクタ132に連通している。さらに、2段幅圧延ノズル詰り防止液直線通路164c及び2段幅圧延ノズル詰り防止液縦通路166cが第3コネクタ134及び第4コネクタ136に連通している。
【0057】
3段幅切り圧延潤滑混合液噴霧状態の供給制御部120は、図14に示すように、ミキサー部125が3段幅圧延潤滑混合液直線通路160dに連通し、ノズル詰り防止液コネクタ154が3段幅圧延ノズル詰り防止液直線通路164dに連通している。3段幅圧延潤滑混合液直線通路160dが第1コネクタ130に連通している。さらに、3段幅圧延ノズル詰り防止液直線通路164d及び3段幅圧延ノズル詰り防止液縦通路166dが第2コネクタ132、第3コネクタ134及び第4コネクタ136に連通している。
【0058】
上述した第2実施形態の圧延潤滑混合液供給装置100は、リニア式切換え弁140を直線摺動操作することのみにより、圧延材Pの幅に合わせて無駄なく圧延潤滑混合液Sを噴霧すると同時に、ノズル詰り防止液Cを噴霧する。すなわち、圧延潤滑混合液Sを噴霧していないヘッダーノズルにはノズル詰り防止液Cが供給され、ノズル詰りが有効に防止される。
【0059】
(変形例)
上述した実施形態においては、希釈水Dとノズル詰り防止液Cは異なった種類ものであったが、両者を同一のものとし、希釈水タンク部12と加圧ノズル詰り防止液Cを共通とすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】第1実施形態の圧延潤滑混合液供給装置の構成説明図である。
【図2】第1実施形態の圧延潤滑混合液供給装置の全幅潤滑混合液供給状態の作動説明図である。
【図3】第1実施形態の圧延潤滑混合液供給装置の1段幅切りの潤滑混合液供給状態の作動説明図である。
【図4】第1実施形態の圧延潤滑混合液供給装置の2段幅切りの潤滑混合液供給状態の作動説明図である。
【図5】第1実施形態の圧延潤滑混合液供給装置の3段幅切りの潤滑混合液供給状態の作動説明図である。
【図6】第1実施形態の圧延潤滑混合液供給装置の全幅潤滑混合液供給状態のロータリ式切換え弁の構成作動説明図である。
【図7】第1実施形態の圧延潤滑混合液供給装置の1段幅切りの潤滑混合液供給状態のロータリ式切換え弁の構成作動説明図である。
【図8】第1実施形態の圧延潤滑混合液供給装置の2段幅切りの潤滑混合液供給状態のロータリ式切換え弁の構成作動説明図である。
【図9】第1実施形態の圧延潤滑混合液供給装置の3段幅切りの潤滑混合液供給状態のロータリ式切換え弁の構成作動説明図である。
【図10】第2実施形態の圧延潤滑混合液供給装置の全幅潤滑混合液供給状態の作動説明図である。
【図11】図10における線11−11に沿った断面説明図である。
【図12】第2実施形態の圧延潤滑混合液供給装置の1段幅切りの潤滑混合液供給状態の断面図である。
【図13】第2実施形態の圧延潤滑混合液供給装置の2段幅切りの潤滑混合液供給状態の断面図である。
【図14】第2実施形態の圧延潤滑混合液供給装置の3段幅切りの潤滑混合液供給状態の断面図である。
【符号の説明】
【0061】
P 圧延材
S 圧延潤滑混合液
C ノズル詰り防止液
D 希釈水
NL1・・・NR1 ヘッダーノズル
PW0 圧延材の全幅
PW1 圧延材の1段幅切り幅
PW2 圧延材の2段幅切り幅
PW3 圧延材の3段幅切り幅
1 圧延潤滑混合液供給装置
10 圧延潤滑液タンク部
12 希釈水タンク部
14 ノズル詰り防止液タンク部
20、120 供給制御部
22 ヘッダーノズル列
24 ヘッダー
25、125 ミキサー部
30、130 第1コネクタ
32、132 第2コネクタ
34、134 第3コネクタ
36、136 第4コネクタ
40 ロータリ式切換え弁
41 ハウジング
42 エア駆動手段
44 回転位置センサ
50、150 圧延潤滑液コネクタ
52、152 希釈水コネクタ
54、154 ノズル詰り防止液コネクタ
60、160 圧延潤滑混合液通路
62、162a 全幅圧延潤滑混合液縦通路
64、162b 1段幅切り圧延潤滑混合液縦通路
66、162c 2段幅切り圧延潤滑混合液縦通路
70、164b ノズル詰り防止液通路
72、166c 2段幅切りノズル詰り防止液縦通路
74、166d 3段幅切りノズル詰り防止液縦通路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧延潤滑混合液供給部と、ノズル詰り防止液供給部と、圧延潤滑混合液及びノズル詰り防止液の少なくとも一つを噴霧する複数のヘッダーノズルと、前記圧延潤滑混合液供給部及びノズル詰り防止液供給部と前記ヘッダーノズルとを連通するための複数の連通路組を切換え可能に設けた供給制御部とを有し、
前記供給制御部の少なくとも一つの前記連通路組が、前記圧延潤滑混合液供給部を圧延材又はロールに対向した前記ヘッダーノズルに連通させる圧延潤滑混合液通路と、前記ノズル詰り防止液供給部を圧延材に対向しない前記ヘッダーノズルに連通させるノズル詰り防止液通路とを包含することを特徴とする圧延潤滑混合液供給装置。
【請求項2】
前記供給制御部が、前記圧延潤滑混合液供給部及びノズル詰り防止液供給部に対し回転移動して前記連通路組を切換えることを特徴とする請求項1に記載の圧延潤滑混合液供給装置。
【請求項3】
前記供給制御部が、前記圧延潤滑混合液供給部及びノズル詰り防止液供給部に対し直線移動して前記連通路組を切換えることを特徴とする請求項1に記載の圧延潤滑混合液供給装置。
【請求項4】
前記供給制御部が、前記圧延潤滑混合液を噴霧するヘッダーノズルの数に対応して、前記圧延潤滑混合液の供給量を調整することを特徴とする請求項1に記載の圧延混合液供給装置。
【請求項5】
前記供給制御部が、前記ノズル詰り防止液を噴霧するヘッダーノズルの数に対応して、前記ノズル詰り防止液の供給量を調整することを特徴とする請求項1に記載の圧延潤滑混合液供給装置。
【請求項6】
前記圧延潤滑混合液が、潤滑剤と水のエマルジョンであることを特徴とする請求項1に記載の圧延潤滑混合液供給装置。
【請求項7】
前記ノズル詰り防止液が、水であることを特徴とする請求項1に記載の圧延潤滑混合液供給装置。
【請求項8】
前記ノズル詰り防止液が、界面活性剤の水希釈液であることを特徴とする請求項1に記載の圧延潤滑混合液供給装置。
【請求項9】
前記圧延潤滑混合液供給部が、圧延潤滑液と希釈液を混合して圧延潤滑混合液をつくるミキサー部を包含することを特徴とする請求項1に記載の圧延潤滑混合液供給装置。
【請求項10】
前記ミキサー部は、圧延潤滑混合液を噴霧するヘッダーノズルの数に対応して圧延潤滑液の流量を調整する流量調整部を有し、圧延潤滑混合液を噴霧するヘッダーノズルの数に拘わらず一定の圧延潤滑液及び希釈液の混合比を維持することを特徴とする請求項1に記載の圧延潤滑混合液供給装置。
【請求項11】
圧延潤滑混合液供給部と、ノズル詰り防止液供給部と、圧延潤滑混合液及びノズル詰り防止液の少なくとも一つを噴霧する複数のヘッダーノズルと、前記圧延潤滑混合液供給部及びノズル詰り防止液供給部と前記ヘッダーノズルとを連通するための供給制御部とを有することを特徴とする圧延潤滑混合液供給装置。
【請求項12】
圧延潤滑混合液供給部と、ノズル詰り防止液供給部と、圧延潤滑混合液及びノズル詰り防止液の少なくとも一つを噴霧する複数のヘッダーノズルと、前記圧延潤滑混合液供給部及びノズル詰り防止液供給部と前記ヘッダーノズルとを連通するための複数の連通路組を回転移動により切換え可能に設けた供給制御部とを有することを特徴とする圧延潤滑混合液供給装置。
【請求項13】
圧延潤滑混合液供給部と、ノズル詰り防止液供給部と、圧延潤滑混合液及びノズル詰り防止液の少なくとも一つを噴霧する複数のヘッダーノズルと、前記圧延潤滑混合液供給部及びノズル詰り防止液供給部と前記ヘッダーノズルとを連通するための複数の連通路組を直線移動により切換え可能に設けた供給制御部とを有することを特徴とする圧延潤滑混合液供給装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2010−125481(P2010−125481A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−301539(P2008−301539)
【出願日】平成20年11月26日(2008.11.26)
【出願人】(000162423)協同油脂株式会社 (165)