説明

圧延製品、特に熱間圧延されたスチールストリップの長手方向をガイドするための方法と、この方法を実施するための熱間圧延機

圧延製品のはばにわたる組織と強度の違いを軽減し、圧延製品のトリミング損失を最小化するために、圧延製品(5)を、層状冷却領域(4)に沿って、層状冷却領域(4)の両側で、少なくとも1つのサイドガイド(11)によってガイドする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念に記載の圧延製品、特に熱間圧延されたスチールストリップの長手方向をガイドするための方法と、請求項8の上位概念に記載のこの方法を実施するための熱間圧延機に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、熱間圧延機内の圧延製品は、仕上げ圧延ラインを出た場合、ローラテーブルを介してコイラ領域まで層状冷却領域を通過することが知られている。
【0003】
層状冷却領域内で、圧延製品は、圧延製品の幅にわたってできるだけ均等な組織構造と均等な強度特性を得るために、水によって必要なコイラ温度に冷却される。
【0004】
圧延製品の全製造プロセスに依存して、状況によっては不等な温度プロフィルが圧延製品の幅にわたって生じる。この温度プロフィルは、均等化を意図して、特に圧延製品に沿って圧延製品の幅の上に配設された、圧延製品を冷却するための遮蔽要素を有する装置によって影響を受けることがある。
【0005】
このような装置は、特許文献1及び特許文献2から公知である。
【0006】
それにもかかわらず、ローラテーブルに沿った圧延製品の搬送は、必ずしも、このような装置によって常におおよそ圧延製品の幅が均等に冷却されるように、行なわれない。それは、圧延製品が、変動する傾向にあり、装置によって設定される冷却領域を横に外れるからである。これにより、永続的に片側又は交互に両側に圧延製品のエッジ領域は、全幅に比べ、温度プロフィル、組織構造及び強度において著しい偏差が生じ得る。特別な欠点として、これに関係して生じるトリミング損失を挙げることができ、このトリミング損失は、生産量を減少させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】独国特許第3230866号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第199 25 535号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、本発明の課題は、前記組織と強度の違いと、圧延製品のトリミング損失を最小化することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この課題は、本発明により、請求項1の特徴と請求項8の特徴によって解決される。
【0010】
請求項1の特徴によれば、圧延製品、特に熱間圧延されたスチールストリップの長手方向をガイドするための方法圧延製品に従って、熱間圧延機の仕上げ圧延ラインを出た後にローラテーブルを介してコイラの方向に搬送され、仕上げ圧延ラインとコイラ間に位置する層状冷却領域を通過する。
【0011】
本発明によれば、圧延製品は、層状冷却領域に沿って、層状冷却領域の両側で、少なくとも1つのサイドガイドによってガイドされ、このサイドガイドは、互いに平行で互いに間隔を置いて配設されたガイドメジャから成り、しかも、圧延製品が、特に圧延製品の上に配設された液状の冷却媒体用の遮蔽要素を有する冷却装置によって、本質的に全面的に冷却媒体にさらされるように、形成されている。
【0012】
これには、圧延製品の変動が、即ち層状冷却領域内で圧延製品が搬送方向から外れることが、妨げられるとの利点との利点が結び付いている。従って、圧延製品の幅にわたって、均一な組織構造と均等な強度特性を形成すると共に均等な温度プロフィルが得られる。
【0013】
更に、本発明による方法の結果、圧延製品のトリミング損失が、決定的に軽減され、従って、圧延製品の生産量が上昇する。
【0014】
既に前で言及したように、圧延製品は、層状冷却領域に沿って複数のサイドガイドによってガイドすることができる。この場合、これらサイドガイドは、言及したように、圧延製品の両側に存在する互いに平行に配設された互いに相対的に移動可能なガイドメジャから成る。
【0015】
圧延製品の幅への少なくとも1つのサイドガイドの調整は、本発明の形成においては、自動的に、しかも、仕上げ圧延ラインを出た後に圧延製品の幅が測定技術で検出されることによって、行なわれる。従って、特に、圧延製品の幅への少なくとも1つのサイドガイドの粗い調整が行なわれ、圧延製品の先端がサイドガイドを通過した後で、検出された圧延製品の幅への調整が行なわれる。
【0016】
既に前に開示されているように、圧延製品の搬送経路に対して横のサイドガイドの調整は、本発明によれば、圧延製品の上に配設された、液状の冷却媒体用の遮蔽要素を有する冷却装置の位置に依存して行なわれる。同様に、当然、冷却装置も、サイドガイドの位置に位置調整することができ、しかも、常に、ほぼ圧延製品の幅にわたって同じ温度プロフィルを得るために、位置調整することができる。
【0017】
請求項8の特徴によれば、熱間圧延機は、熱間圧延機の仕上げ圧延ラインの後に配設された、圧延製品を搬送するためのローラテーブルを有する層状冷却領域と、ローラテーブルの終端部に配設された、圧延製品を巻き取るためのコイラと、特に、圧延製品の上に配設された、液状の冷却媒体用の遮蔽要素を有する冷却装置とを有する。
【0018】
本発明によれば、層状冷却領域内での圧延製品の横の変動を回避するために、層状冷却領域に沿って、少なくとも1つのサイドガイドが配設されている。
【0019】
本発明の別の形成では、層状冷却領域に沿って、このような複数のサイドガイドを配設することができる。従って、圧延製品の長手方向のガイドに関して比較的確実な安定性が得られる。
【0020】
本発明の別の形成では、仕上げ圧延ラインの出口と層状冷却領域の入口間に、圧延製品の幅を検出する測定装置が配設されており、この測定装置は、信号伝達をするように、熱間圧延機の電子制御装置と接続している。更に、この電子制御装置には、信号伝達をするように、例えばピストンシリンダユニットにより作用を加えるための油圧制御手段が接続している。この場合、ピストンシリンダユニットは、ほぼ圧延製品の幅にガイドメジャを調整するための駆動手段である。
【0021】
本発明を、図面に基づいて以下で詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】従来技術による熱間圧延機の層状冷却領域の概略図を示す。
【図2】本発明による熱間圧延機の層状冷却領域の概略図を示す。
【図3】ローラテーブルのサイドガイドと組み合わせた、熱間圧延機の層状冷却領域内で圧延製品の上に配設された、液状の冷却媒体用の遮蔽要素を有する冷却装置の概略図を正面図で示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1によれば、仕上げ圧延ライン2の出口側に、複数の冷却部分から成る、熱間圧延機1の層状冷却領域4.3のローラテーブル3が形成されている。ローラテーブル3上を、熱間圧延されたスチールストリップの形態の圧延製品5が、矢印の方向6にコイラ7に向かって搬送され、このコイラ7に巻き取られる。巻き取る前に、圧延製品5は、特に水平な搬送方向6からドライバ8により転向される。
【0024】
層状冷却領域4の出口4.2と転向装置8間に、それ自体公知のサイドガイド9が、圧延製品5のために配設されているが、このサイドガイドは、もっぱら、圧延製品5のエッジの揃った巻取りのために使用される。
【0025】
層状冷却領域4は、ここに図示されているように、その長手方向の広がりにわたって、複数の層状冷却部分4.3から成り、各層状冷却部分4.3は、それ自体公知の転向要素10.1を有する冷却装置10.1を備えることができる(図3参照)。
【0026】
図2には、従来技術から公知の層状冷却領域4が図示されているが、但し、連続する2つの層状冷却部分4.3間に、ガイドメジャ11.1と11.2から成るサイドガイド11が配設されていること(図3参照)、仕上げ圧延ライン2の出口2.1と層状冷却領域4の入口間に圧延製品5の幅を検出するための測定装置12配設されていることに、違いがある。
【0027】
測定装置12は、ロジックに従い、ここには図示されていない、熱間圧延機の電子制御装置と、検出した測定結果を処理するために信号伝達をするように接続されている。更に、相応に信号伝達をするように電子制御装置と接続されているのは、ここには図示されていない、アクチュエータとして、第1及び第2のガイドメジャ11.1及び11.2から成るサイドガイド11に付設されたピストンシリンダユニットのための制御手段である。
【0028】
図3では、それ自体公知の冷却装置10が、ローラテーブル3上を案内される圧延製品5の垂直方向で上に位置決めされている。冷却装置10は、液状の冷却媒体14用の遮蔽要素10.1を備える。
【0029】
本発明によれば、圧延製品5の両側に対してそれぞれ1つのガイドメジャ11.1及び11.2が位置決めされている。両ガイドメジャは、図2に図示されているように、連続するそれぞれ2つの層状冷却部分4.3間に配設されたサイドガイド11を形成する。ガイドメジャのそれぞれは、圧延製品5の幅に応じてこの幅に調整されるように、特に油圧式のピストンシリンダユニット14もしくは15のピストンロッド14.1もしくは15.1の自由端と接続している。
【0030】
ピストンシリンダユニット14,15の制御技術手段は、本発明の対象ではないので、ここでは、更に立ち入ることはしない。
【符号の説明】
【0031】
1 熱間圧延機
2 仕上げ圧延ライン
2.1 仕上げ圧延ラインの出口
3 ローラテーブル
4 層状冷却領域
4.1 層状冷却領域の入口
4.2 層状冷却領域の出口
4.3 層状冷却部分
5 圧延製品
6 搬送方向
7 コイラ
8 ドライバ
9 サイドガイド
10 冷却装置
10.1 転向要素
11 サイドガイド
11.1 ガイドメジャ
11.2 ガイドメジャ
12 測定装置
13 冷却媒体
14 ピストンシリンダユニット
14.1 ピストンロッド
15 ピストンシリンダユニット
15.1 ピストンロッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧延製品が、仕上げ圧延ラインを出た後にローラテーブルを介してコイラ(7)の方向に搬送され、仕上げ圧延ラインとコイラ間に位置する層状冷却領域(4)を通過する、熱間圧延機(1)のローラテーブル(3)上で圧延製品、特に熱間圧延されたスチールストリップの長手方向をガイドするための方法において、
圧延製品(5)が、層状冷却領域(4)に沿って、層状冷却領域(4)の両側で、少なくとも1つのサイドガイド(11)によってガイドされることを特徴とする方法。
【請求項2】
圧延製品(5)が、層状冷却領域(4)に沿って、層状冷却領域(4)の両側で、複数のサイドガイド(11)によってガイドされることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
圧延製品が仕上げ圧延ライン(2)を通過した後に、圧延製品(5)の幅が、自動的に検出されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
圧延製品(5)の先端がそれぞれのサイドガイドを通過した後に、サイドガイド(11)が、検出された圧延製品の幅に調整されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の方法。
【請求項5】
圧延製品の幅へのサイドガイド(11)の調整が、制御されて行なわれることを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
サイドガイド(11)の位置が、圧延製品(5)の上に配設された液状の冷却媒体用の遮蔽要素(10.1)を有する冷却装置(10)の位置に依存して調整されることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の方法。
【請求項7】
圧延製品(5)の上に配設された液状の冷却媒体用の遮蔽要素(10.1)を有する冷却装置(10)の位置が、サイドガイド(11)の位置に依存して調整されることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つに記載の方法。
【請求項8】
仕上げ圧延ライン(2)の後に配設された、圧延製品(5)を搬送するためのローラテーブル(3)を有する層状冷却領域(4)と、ローラテーブル(3)の終端部に配設された、圧延製品(5)を巻き取るためのコイラ(7)と、圧延製品(5)の上に配設された、液状の冷却媒体用の遮蔽要素(10.1)を有する冷却装置(10)とを有する、仕上げ圧延ラインを有する熱間圧延機において、
層状冷却領域(4)に沿って、少なくとも1つのサイドガイド(11)が配設されていることを特徴とする熱間圧延機。
【請求項9】
層状冷却領域(4)に沿って、複数のサイドガイド(11)が配設されていることを特徴とする請求項8に記載の熱間圧延機。
【請求項10】
仕上げ圧延ライン(2)の出口(2.1)と層状冷却領域(4)の入口(4.1)間に、圧延製品(5)の幅を検出する測定装置(12)が配設されていることを特徴とする請求項8に記載の熱間圧延機。
【請求項11】
圧延製品(5)の均等な組織構造と均等な強度特性を顧慮して、少なくとも1つのサイドガイドが、圧延製品(5)の上に配設された、液状の冷却媒体用の遮蔽要素(10.1)を有する冷却装置(10)の位置に依存して調整可能であることを特徴とする請求項8に記載の熱間圧延機。
【請求項12】
圧延製品(5)の均等な組織構造と均等な強度特性を顧慮して、圧延製品(5)の上に配設された、液状の冷却媒体用の遮蔽要素(10.1)を有する冷却装置(10)の位置が、少なくとも1つのサイドガイド(11)の位置に依存して調整可能であることを特徴とする請求項8に記載の熱間圧延機。
【請求項13】
少なくとも1つのサイドガイド(11)が、圧延製品の両側に存在する互いに平行に配設された互いに相対的に移動可能なガイドメジャ(11.1,11.2)を有することを特徴とする請求項8〜12のいずれか1つに記載の熱間圧延機。
【請求項14】
ガイドメジャ(11.1,11.2)のそれぞれが、ピストンシリンダユニット(13)として形成された、ガイドメジャの平行移動を生じさせる駆動装置と作用結合していることを特徴とする請求項13に記載の熱間圧延機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公表番号】特表2011−527634(P2011−527634A)
【公表日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−517042(P2011−517042)
【出願日】平成21年7月13日(2009.7.13)
【国際出願番号】PCT/EP2009/005074
【国際公開番号】WO2010/006750
【国際公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【出願人】(390035426)エス・エム・エス・ジーマーク・アクチエンゲゼルシャフト (320)