説明

圧着具

【課題】 圧着具の挟み部よりも幅の狭い凹みを被圧着物の一部に形成し得る圧着具を提供する。
【解決手段】 一対の杆体12a, 12bの挟み部15a,15bの少なくとも一方の挟み部15aに、凸部16aを杆体13aの長手方向に延設するように形成する。他方の挟み部15bには、凸部16aに略直交するように溝を一本形成し得る。一対の杆体12a,12bは軸部11を中心に回動可能に軸支される。挟み部15a,15bに被圧着物を挟持して軸部11を中心に回動させると、挟み部13aの凸部16aにより被圧着物の一部のみに、凹部21を形成することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧着端子や毛髪用止着具などの被圧着物を挟んでこれを圧着する圧着具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プライヤーには、C字状のスナップリングを脱着するタイプ(特許文献1)や、以下説明するように圧着端子などの被圧着物を圧着するタイプなどがある。
図8(A)は従来のプライヤー100の概略図、(B)はその先部に設けられた挟み部115a,115bの斜視図である。従来のプライヤー100は、図8(A)に示すように、軸部11で互いに回動可能に軸支された一対の杆体12a,12bと、一対の杆体12a,12bの一端側にそれぞれ形成された握持部13a,13bとを備える。そして、従来のプライヤー100には、図8(B)に示すように、先端側の挟み部115a及び115bに、互いに対向する挟持面にそれぞれ溝118,118が複数本形成されている。これらの溝118は杆体12a,12bの長手方向に垂直な、横断方向に所定の間隔で凹設されている。
【0003】
以上のように構成されたプライヤー100において、握持部13a, 13bを握持することにより、挟み部115a,115bが軸部11を中心に互いに逆方向に回動して、挟み部115a,115bの各挟持面が接触する。
これにより、例えばケーブルに圧着端子を取り付ける際には、ケーブルの先端部を圧着端子の管部に挿通した状態で、握持部13a,13bを握持することで、挟み部115a,115bが軸部11を中心に互いに逆方向に回動して、挟み部115, 115bの各挟持面で圧着端子の管部が圧潰される。これで、ケーブルに圧着端子を装着することができる。
【0004】
ところで、被圧着物としては圧縮端子のほか種々のものがあるが、その中で特殊な用途として、髪飾りやかつら等の頭飾品を頭部に止着するときに用いる毛髪用止着具がある。これは、2〜3mm程度の口径(外径3〜4mm程度)で、長さが約3〜4mmのアルミニウムや銅などの金属で形成した管体をかつら本体の内面周縁に固着しておき、この管体に例えば頭髪を複数本挿通してこれを適度の圧力で圧潰し、頭髪の挿通状態で管体に固定することにより、髪飾りやかつらを頭部に固定するものである。このとき、市販のペンチやプライヤーなどの圧着具100を用いて、アルミニウム管を所定圧力で圧潰することで、髪飾りや部分かつらなどが頭髪に確実に固着される。
【特許文献1】特開2004−130397号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、一対の挟み部115a,115bの対向する挟持面に形成した各横溝118, 118は、圧着端子や毛髪用止着具などの被圧着物が一対の挟み部115a,115bで挟まれる際に位置ズレが生じないために凹設されている。これは一般に、挟み部115a,115bは軸部11を中心に開き角度を以て被圧着物に順次押圧力を加えていくことになるため、各溝118, 118が設けられていないと被圧着物の外方向へのずれが生じるからである。
【0006】
ところで、プライヤーの挟み部115a,115bは一般に、軸方向に長尺に且つ先端が先細になるように形成されているので、軸と直行する横方向、即ち、横溝118に沿った方向の幅長は先端に向かって徐々に先細になってはいるが、市販のプライヤーでは最先端の最も細い幅長箇所でも、ほぼ4mm以上の幅に形成されている。
このため、従来のプライヤー100では、上記毛髪用止着具のように長さが約3〜5mmの極めて短い長さのアルミニウム管を圧潰する場合は管体の全長にわたって押し潰すことになってしまう。ところが、このようにして毛髪用止着具の全体を圧潰して頭飾品に固定した場合、数日後にこの毛髪用止着具を頭部から取り外す際に、鉗子や鉤針などを用いて圧潰した管体の両端部を再び押し開いて頭髪から取り去る作業が必要となるので、その取外し作業が大変厄介である。
また、アルミ管などの毛髪用止着具に毛髪を挿通して管全体を押圧すると、押圧力が分散して管体全体が扁平になり、且つプライヤー先端部の挟み部の溝で形成される管体外周に付く凹部が浅くなるため、管体内部とこの管体に挿通した毛髪との間の隙間が大きくなるので、挿通した毛髪の締め付けが弱く、そのため毛髪用止着具が毛髪から抜け易く、また圧潰された管体の両端部近傍の毛髪が切れ易くなる。
【0007】
これに対し、毛髪用止着具の管体の一部、例えば中央部分だけを、所定圧力で圧潰できれば、丁度、和太鼓の「鼓」状に、管体の中央部が縮径されると共に、両端又は一端が潰されていないか又は圧潰部分に比して漏斗状に拡開していれば、鉗子や鉤針をこの拡開部分に挿し入れることで、頭髪から容易に毛髪用止着具を取り外すことができ、作業性が向上する。
しかしながら、現状では公知のプライヤー100によっては、このような極めて短い長さの被圧着物の一部分だけを圧縮し、例えば管体の両端をなるべく潰さないように中央領域だけを、その挟み部115a,115bの幅より狭く凹ませることは困難である。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑み、被圧着物の一部だけを圧縮して、圧着具の挟み部よりも幅の狭い凹みを被圧着物に形成することができる圧着具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明は、一対の杆体を軸部を中心に回動可能に軸支し、この杆体の軸部より先端側に形成した挟み部同士で被圧着物を圧着する圧着具において、一方の杆体に形成した挟み部に、凸部を杆体の長手方向に延設するように形成し、挟み部同士で被圧着物を挟扼、即ち所定の押圧力で締め付けることにより、上記凸部に対応する線状又は細幅状の凹部を被圧着物に形成することを特徴とする。
上記構成により、圧着具の一対の杆体の後端側を握持して挟み部同士で被圧着物を挟扼する際に、一方の挟み部に形成した凸部が、被圧着物を押圧し線状又は細幅状の凹部を被圧着物の一部に形成するので、被圧着物の両端又は一端が完全に圧潰されることなく、被圧着物の一部だけを確実に圧潰することができる。
このため、特に毛髪用止着具を圧潰・圧縮する場合には、柔らかい毛髪を止着具の管体に挿通して管体の外周の一部、例えば中央部分を圧着具の凸部で圧潰することで、凸部に局所的に押圧力が作用し、さらに、挟み部の一方に長手方向の凸部がまた他方に上記凸部と交わる方向に溝が形成されていることで、管体に毛髪を挿通して押圧すると、管体外周に形成される凹部が深くなって、管体内部とこれに挿通した毛髪との間の隙間が小さくなるため、挿通した毛髪の締め付け力が強く、そのため毛髪に止着した止着具が毛髪から抜け難くなると共に、管体の両端部は強く圧潰さないので、管体両端部近傍の毛髪が切れ難い。さらに、毛髪用止着具を頭部から取り外す際に管体の両端部は強く圧潰されていないので、鉗子や鉤針などの取外し具を管体の両端部に挿入し易くなり、取外し作業が楽に行える。
また、一方の挟み部に形成する凸部の高さと幅の寸法を適宜調整することにより、被圧着物の圧潰の深さとその幅を好適に設定することができる。
【0010】
上記構成において、好ましくは、前記一対の杆体のうち、他方の杆体に形成した挟み部には、滑り止め用の溝が前記凸部と交わる方向に一本以上形成されている。これにより、被圧着物を挟持して押圧する際、被圧着物が滑ることなく、被圧着物に確実に凹部を形成することができる。
上記構成において、好ましくは、前記凸部は一筋以上形成される。凸部を適宜一筋又は複数筋形成し得ることにより、被圧着物のサイズに応じて、或いは所望の箇所と数の凹部が形成でき、各利用形態に応じて圧着具を使い分けることができる。
上記凸部が、杆体の一対の挟み部に、各杆体の長手方向に延設してそれぞれ形成されていてもよく、その際、各挟み部の対応する同一の位置にそれぞれ形成されていても、或いは、異なる位置にそれぞれ形成されていてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、圧着具の一方又は一対の挟み部の凸部により、被圧着物を押圧してこれに線状又は細幅状の凹部を形成し得るので、被圧着物の一部だけを確実に圧着することができる。また、挟み部に形成する凸部の幅の大きさを適宜設定することで、圧着具の挟み部の幅よりも小さい凹部を形成することができる。よって、被圧着物として毛髪用止着具を圧着具の凸部で押圧することで、その押圧した部分では、毛髪用止着具に挿通した頭髪と毛髪用止着具との間に隙間が生じないので、毛髪用止着具が頭髪から容易に抜けないようにし得ると共に、その取外し作業も簡単に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照して発明を実施するための最良の形態について説明する。
図1は、本発明の圧着具10の概略図である。本発明の圧着具10は、図1に示すように、軸部11で互いに回動可能に軸支された一対の杆体12a,12bと、一対の杆体12a,12bの後端側にそれぞれ形成された握持部13a,13bと、一対の杆体12a,12bの回動を阻止して元の状態に戻す板ばね14a,14bと、を備える。即ち、圧着具10は、一対の杆体12a,12bをその長さ方向前方部に備えた軸部11で結合させることで、軸部11中心に、一対の杆体12a,12bの後端側の握持部13a,13bが接近するように回動し、一対の杆体12a,12bの先端側にある挟み部15a,15bがそれぞれ逆向きに回動して、挟み部15aと挟み部15bの対向する挟持面が互いに接触する。また、握持部13a,13bが対向する内側には各板ばね14a,14bが配設され、握持部13a,13bを把持すると板ばね14a,14bが相互に圧縮されることで、握持部13a,13bの回動を元に戻し、挟み部15aと挟み部15bが非接触状態となる。このように非接触状態にするには、図示した板ばね14a,14bに限らず、コイルばねなどでもよい。
【0013】
図2(A)は図1の一方の挟み部15aの斜視図、(B)はA−A線に沿う断面図、(C)は図1の他方の挟み部15bの斜視図、(D)はB−B線に沿う断面図である。本発明の圧着具10における挟み部15aは、図2(A)に示すように、その内側の挟持面16に、凸部16aが挟み部15aの長手方向に延設して形成されている。この凸部16aは、挟み部15aの挟持面16から左右の各先端側を切削して切削面16b, 16bを形成することで、杆体12aの長手方向に延設して形成される。
【0014】
なお、凸部16aは、必要により又は所望により挟み部15aの挟持面16に一筋で形成されていても、複数筋で形成されていてもよい。また、凸部16aの幅も、挟持面16の幅より狭いことを条件に任意の寸法に設定できる。さらにこの凸部16aは本実施例では、挟持面16の中央に形成しているが、左方又は右方に形成することも自由である。
【0015】
一方の挟み部15aに対向する他方の挟み部15bは、図2(C), (D)に示すように、その内側の挟持面17に、挟み部15bの長手方向に略垂直になるように溝18が一本以上形成されている。即ち、挟み部15bの挟持面17の先端側に溝18が一本以上、一方の挟み部15aに形成した凸部16aと交わる方向に形成されている。上記溝18は被圧着物を挟み部15a及び15bで挟むとき、被圧着物がズレないように滑り止めの働きをする。
【0016】
以上のように、本発明実施形態の圧着具10は、その一対の挟み部15a,15bのうち、一方の挟み部15aに杆体の長手方向に延設された凸部16aが形成され、他方の挟み部15bには杆体の長手方向に垂直な方向に溝18が形成されている。これにより、後述する管体に毛髪を挿通して押圧すると、管体外周に形成される凹部が深くなって、管体内部とこれに挿通した毛髪との間の隙間が小さくなるため、挿通した毛髪の締め付け力が強く、そのため毛髪に止着した止着具が毛髪から抜け難くなり、また、管体の両端部は強く圧潰さないので、管体両端部近傍の毛髪が切れ難くなる。
【0017】
なお、図示を省略するが、挟み部15bにも、必要により、挟み部15aに設けたのと同様の凸部16aを形成してもよい。この場合、対向する同一位置に各凸部16aを設けると、被圧着物の外径が大径のものに対して両サイドから凹部を形成できる。或いは、挟み部15aと挟み部15bとに、各凸部16aをずらした位置に形成すると、被圧着物の両サイドから2筋の凹部を形成することができ、特定種類の被圧着物に対しては圧潰力を増加することができる。
【0018】
図3は、本発明の圧着具10の握持部13a,13bを握持することで挟み部15a,15bが接触する様子を示した図で、(A)はその側面図、(B)は挟み部15a,15bの先端側から見た平面図である。図3(A), (B)に示すように、一方の挟み部15aに形成した凸部16aの先端部と、他方の挟み部15bの挟持面16bの表面とが接触し、例えば、後述する圧着端子や毛髪用止着具など、管状に形成された被圧着物を圧着具10で圧着することができる。なお、「圧着」とは、一般に圧力を加えることで被圧着物を固定することを言うが、本明細書では、圧着具に挟扼されて被圧着物が変形し適度に圧潰又は圧縮される状態を含む。また、挟扼とは、挟み部15a,15bにて挟持し或る圧力を加えて締め付けることを意味する。
【0019】
図4は、管状に形成された被圧着物20を圧着具10で押圧する過程を模式的に示した図で、(A)〜(C)は側面図、(D)〜(F)は圧着物10の先端側から見た斜視図、(G)は押圧した後の被圧着物20の圧潰状態の斜視図である。
図4(A), (D)に示すように、挟み部15a及び15bの各挟持面16, 17の先端部で被圧着物20を挟持し、押圧していくと挟み部15a及び15bのなす角が小さくなる。それに伴い、図4(B), (E)に示すように、被圧着物20が挟み部15aの凸部16aと挟み部15bの挟持面17とで押圧され、管状の被圧着物20が所定の圧力で圧潰して楕円状になる。このとき、凸部16aにより凹部が形成されつつある。
さらに、挟み部15a及び15bのなす角度が小さくなると、図4(C), (F)に示すように、凸部16aが被圧着物20に食い込んで、図4(G)に示す凹部21が形成され、凸部16aの両サイドの切削面16b,16cの両端、即ち、挟み部15aの先端部の幅で、凹部21の食い込みより浅めに凹んで、凹部21と滑らかに繋がる凹み22を形成する。このとき、挟み部15b側の挟持面17、つまり溝18の上端面で、凸部16a及び挟み部15aの先端部で形成された凹部21及び凹み22に対向する面は、挟み部15bの先端部の幅だけ凹み23を形成する。
【0020】
よって、被圧着物20を圧着具10で挟扼すると、被圧着物20の両端24側は、圧着具10の凸部16aが食い込む距離ほど圧縮されない。つまり、圧着物20は、あたかも「鼓」のように、凸部16aが食い込む位置で窪んでおり、両端24側が開いた形状になる。よって、図7で後述するように、被圧着物20の一例として毛髪用止着具に頭髪を挿通し押圧固定した毛髪用止着具を取り外す際には、毛髪用止着具の両端24が中央の凹部21に比べて圧潰量が少ないため、容易に鉗子や鉤針などの取外し具を挿入し、毛髪用止着具の内周を広げてこの毛髪用止着具を外し易くなる。
【0021】
このように、管状の被圧着物20には挟み部15aの凸部16aにより、凹部21が線状又は細幅状に形成され、図4(G)に示すように、挟み部15aの幅だけ凹部21の両側に凹み22が形成される一方で、逆の溝18を形成した挟み部15b側には挟み部15bの幅だけ凹み23が形成される。
以上、図3に示すように、一方の挟み部15aが形成する挟持面16の先端部と、他方の挟み部15bが形成する挟持面17の先端部とが接触する場合のみならず、各挟み部15a,15bが形成する挟持面16, 17に傾斜を持たせて形成した圧着具10であっても同様に、挟み部15aに凸部16aを形成することで、被圧着物20を線状又は細幅状に凹部21を形成して、被圧着物30を圧着することができるのは言うまでもない。
【0022】
次に、本発明の圧着具10の利用形態について説明する。
図5(A)は圧着具10の使用形態の一例を示した斜視図、(B)は(A)の矢印Cから見た様子を示した図である。図5では、導線31に圧着端子40を取り付ける場合を例に挙げている。
図5に示すように、被覆導線30の先端部の被覆を剥がして圧着端子40の中空41に挿通し、中空41を形成する管部42の外周を圧着具10で圧着する。このとき、管部42の軸方向、つまり導線31の方向に対し、圧着具10の凸部16aの延設方向が交わるように、好ましくは直交するように、握持部13a,13bを軸11を中心にして回動させて、圧着具10の挟み部15a,15bで管部42を挟む。
【0023】
図6は、圧着端子40の管部42を圧着具10で圧着させた後の圧着端子40を示した平面図である。図に示すように、圧着端子40の管部42の外周に、軸方向に対して直交するように凹部43が形成される。これで、凹部43がその幅を狭くして形成され、導線31の外周が圧着端子40の内周壁の一部と当接し、場合により導線31の一部を曲げるので、導線31が圧着端子40から容易に抜けないようにすることができる。
【0024】
図7は、圧着具10の別の使用形態を示した斜視図である。図7では、頭髪51に義毛63を付設した毛髪用止着具60を装着する場合を例に挙げる。図7に示すように、頭部50に生える自毛(頭髪)51の一部を、毛髪用止着具60の管体61に挿通し、毛髪用止着具60の外周62を圧着具10で圧着する。このとき、毛髪用止着具60の管体61の軸方向に対して、圧着具10の挟み部15aに設けた凸部16aの延設方向が交わるように、好ましくは直交するように、圧着具10の挟み部15a,15bで毛髪用止着具60の外周62を挟み、握持部13a,13bを軸部11を中心にして回動させる。これにより、毛髪用止着具60の外周62の一部だけに、毛髪用止着具60の軸方向に対して直交するように、線状又は細幅状の凹部が形成される。
【0025】
ここで、毛髪用止着具60の大きさや材質などを適宜選択することにより、図4(G)で示した凹部21と凹み22とが形成される。これにより、挿通した自毛51と毛髪用止着具60の内周との間に隙間が形成されることなく、毛髪用止着具60で自毛51を締め付けることができる。よって、自毛51と毛髪用止着具60との固着力を向上させることができる。
また、毛髪用止着具60の直径が3mm、その長さが3〜5mm程度の非常に小さい被圧着物でも、圧着具10の挟持面16に形成した凸部16aの幅や高さを適宜設定することにより、毛髪用止着具60を部分的に容易に圧潰して、図4に示す凹部21や凹み22を毛髪用止着具60の一部に形成することができる。
【0026】
従来のプライヤー100では、毛髪用止着具のように長さが約3〜5mmの極めて短い長さのアルミニウム管を圧潰する場合は管体の全長にわたって押し潰してしまい、そのため、押圧力が分散して管体全体が扁平になり、且つプライヤー先端部の挟み部の溝で形成される管体外周に形成される凹部が浅くなって、管体内部とこの管体に挿通した毛髪との間の隙間が大きくなるので、挿通した毛髪の締め付けが弱く、そのため毛髪用止着具が毛髪から抜け易く、また圧潰された管体の両端部近傍の毛髪が切れ易くなっていた。これに対して本発明では、毛髪用止着具60を圧潰・圧縮する場合、頭髪51を止着具の管体61に挿通して管体61の外周の一部、例えば中央部分を圧着具の凸部16aで圧潰することで、凸部16aに局所的に押圧力が作用し、さらに、挟み部の一方15aに形成された長手方向の凸部16aでまた他方15bに上記凸部と交わる方向に形成された溝18により、管体外周に形成される凹部21が深くなって、管体内部とこれに挿通した頭髪との間の隙間が小さくなるため、挿通した頭髪の締め付け力が強く、そのため頭髪に止着した止着具が頭髪51から抜け難くなる。
【0027】
さらに、毛髪用止着具60の両端は、図4(G)に示したように、圧着具10の凸部16aが食い込む距離ほど圧潰されない。つまり、毛髪用止着具60は、あたかも「鼓」のように、凸部16aが食い込む位置で窪んでおり、両端側が開いた形状になる。よって、毛髪用止着具60の両端から容易に鉗子や鉤針などの取り外し具を挿入し、毛髪用止着具60の内周を広げて毛髪用止着具60を取り外すことができる。
【0028】
以上のように、自毛51に義毛63を付設した毛髪用止着具60を装着するばかりでなく、所謂エクステンションなどの付け毛や動植物、キャラクターグッズなどの各種の装飾品を有するアクセサリーなどの髪飾りを自毛に装着する場合や、かつらの内側に毛髪用止着具60を取り付け頭髪をこの止着具に挿通してかつらを固着する場合において、本発明の圧着具10を用いて毛髪用止着具60を圧着することができる。このとき、自毛51が毛髪用止着具60で締め付けられるので、自毛51が毛髪用止着具60から容易に抜けないようにすることができる。また、それ以外の被圧着物についても本発明の圧着具10を用いて圧着することができることに加え、必要により被圧着物を取り外す際にも、全体が圧縮されておらずその両端又は一端が潰されていないので、極めて簡単に取外し作業が実行される。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の圧着具の概略図である。
【図2】(A)図1の一方の挟み部の斜視図で、(B)はA−A線に沿う断面図、(C)は図1の他方の挟み部の斜視図、(D)はB−B線に沿う断面図である。
【図3】本発明の圧着具の握持部を握持することで、各挟み部が接触する様子を示した図で、(A)はその側面図、(B)は挟み部の先端側から見た平面図である。
【図4】管状の被圧着物を圧着具で圧着する過程を模式的に示した図で、(A)〜(C)は側面図、(D)〜(F)は圧着物の先端側から見た斜視図、(G)は圧着した後の被圧着物の斜視図である。
【図5】(A)は圧着具の使用形態の一例を示した斜視図、(B)は(A)の矢印Cから見た様子を示した図である。
【図6】圧着端子の管部の圧着後における圧着端子を示した平面図である。
【図7】圧着具の別の使用形態を示した斜視図である。
【図8】(A)は従来のプライヤーの概略図、(B)は挟み部の斜視図である。
【符号の説明】
【0030】
10 圧着具
11 軸部
12a,12b 杆体
13a,13b 握持部
14a,14b 板ばね
15a,15b 挟み部
16, 17 挟持面
16a 凸部
16b 切削面
18 溝
20 被圧着物
21, 43 凹部
22, 23 凹み
24 端
30 被覆導線
31 導線
40 圧縮端子
41, 61 管体
42 管部
50 頭部
51 自毛(頭髪)
60 毛髪用止着具
62 外周
63 義毛

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の杆体が軸部を中心に回動可能に軸支され、上記杆体の軸部より先端側に形成された挟み部同士で被圧着物を圧着する圧着具において、
杆体に形成した挟み部の少なくとも一方に、凸部が上記杆体の長手方向に延設するように形成されており、
上記挟み部同士で被圧着物を挟扼することにより、上記凸部に対応する線状又は細幅状の凹部を上記被圧着物に形成することを特徴とする、圧着具。
【請求項2】
前記一対の杆体のうち、他方の杆体に形成した挟み部には、滑り止め用の溝が前記凸部と交わる方向に一本以上形成されていることを特徴とする、請求項1に記載の圧着具。
【請求項3】
前記凸部が、前記杆体の一対の挟み部に、各杆体の長手方向に延設してそれぞれ形成されていることを特徴とする、請求項1に記載の圧着具。
【請求項4】
前記凸部が、前記杆体の一対の挟み部に、各杆体の長手方向に且つ同一位置に延設してそれぞれ形成されていることを特徴とする、請求項1又は3に記載の圧着具。
【請求項5】
前記凸部が、前記杆体の一対の挟み部に、各杆体の長手方向に且つ異なる位置に延設してそれぞれ形成されていることを特徴とする、請求項1又は3に記載の圧着具。
【請求項6】
前記凸部が、一筋以上形成されていることを特徴とする、請求項1乃至5の何れかに記載の圧着具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−68867(P2006−68867A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−257309(P2004−257309)
【出願日】平成16年9月3日(2004.9.3)
【出願人】(000126676)株式会社アデランス (49)
【Fターム(参考)】