説明

圧着用紙

【課題】耐水性を有する圧着用紙でありながら、リサイクルすることが容易であり、かつ水に濡れた場合でも設けられた記録情報を毀損することなく、必要時に圧着面を容易に剥離でき、圧着面に印刷された情報を確実に読み取ることができる圧着用紙を提供すること。
【解決手段】基紙2の表裏面の少なくとも一方の面に接着剤層3が形成された圧着用紙であって、湿潤時の引張強度が0.7〜1.8kgf/15mm(MD)の前記基紙に、少なくともカチオン系湿潤紙力剤及びケン化度が83〜92mol%のポリビニルアルコールを含有する接着剤層を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は圧着用紙に関する。さらに詳しくは、耐水機能を有しながらも、リサイクルすることが容易であり、水に濡れた場合であっても、必要時に圧着面を容易に剥離することができる圧着用紙に関する。
【背景技術】
【0002】
圧着用紙とは基紙の少なくとも一方の面に接着剤層が形成された用紙であって、この接着剤層は、常温では接着・粘着性はないが所定の加圧によって接着剤同士が接着性を発揮する性能(以下、「圧着性」という)と、接着後に容易に剥離できる性能(以下、「易剥離性」という)とを兼ね備える。圧着用紙には、基紙上に印刷を施した後、この印刷面上に接着剤層を形成する後糊方式と呼ばれるものと、基紙上に形成された接着剤層に直接印刷や情報記録を施す先糊方式と呼ばれるものとがあるが、印刷加工先で接着剤層の形成加工を必要としないことから、一般に先糊方式の圧着用紙が広く用いられている。
【0003】
前記のごとき圧着用紙は、通常接着剤層同士が向かい合うように折りたたみ、互いに接する面を再剥離可能に圧着させて使用するものである。この接着剤層は、前記したように、圧着性と易剥離性とを兼ね備えていることから、圧着処理という簡単な加工で印刷面の情報を容易に隠蔽することができ、しかも必要時には圧着された用紙を接着剤層の界面で容易に剥離し、印刷された情報を再び読み取ることができる。そのため、圧着用紙の多くは、隠蔽を必要とする情報(以下、「隠蔽情報」という)を連絡するための葉書、いわゆる圧着葉書として用いられている。
【0004】
圧着葉書は圧着される面に隠蔽情報を印刷することで、隠蔽情報を外部に漏らすことなく郵送することができ、かつ受取人の側で容易に開封して隠蔽情報を読み取ることができるものである。隠蔽部位は、所定の圧力で剥離可能に接着されているため、剥離後に人為的に隠蔽部位を再度接着することが不可能であり、情報の隠蔽を容易に確認することができる。
【0005】
また、一般に使用されている葉書と同じ料金で郵送できるという利点も有する。そのため、封筒を用いた隠蔽情報の伝達手段や封書式のダイレクトメールに代わるものとして、近年、その利用が急速に広まってきている。
【0006】
ところで圧着葉書には、隠蔽情報を隠蔽できること(隠蔽性)と、受け取った後に情報を読み取れること(易剥離性)に必要な基紙の強度が求められている。更に、基紙の強度に加えて、郵送中における雨などによる不慮の濡れに対しても考慮し、さらに耐水性が要求されている。
近年の省資源、環境保護の進展により、従来見栄えの良さ等の理由でバージンパルプからなる上質紙が用いられていた葉書用紙にも、古紙パルプを含んだ再生紙の使用が進められている。圧着葉書においても古紙パルプを含んだ再生圧着葉書が使用されて来ている。しかしながら、古紙パルプを含んだ圧着葉書は、古紙パルプ自体が一旦使用された後に回収され、古紙処理工程で再びパルプ化処理された回収原料で微細繊維が多く含有されているため、紙質強度が低く、剥離時の強度向上が求められている。
また、不慮の濡れにおける問題は、接着剤層に通常使用される(変性)天然ゴムが、水に濡れることによりその接着性が向上するため、受取人が圧着葉書を開封しようとした際に、基紙が破れたり、不用意な箇所で剥離が生じて印刷された情報を読み取れなくなるという問題である。
【0007】
そこで従来、水濡れによって生じる基紙の紙力低下や接着剤の接着力が向上する問題に対し、基紙の紙間強度向上や圧着用紙に耐水性を付与する試みとして、基紙に耐水性を有する基体シートを用いた隠蔽情報所持体用シート(特許文献1及び3参照)や、基体シートにさらに耐水処理層を設けた耐水性再生隠蔽情報担持用シート(特許文献1及び2参照)が提案されている。
【0008】
基紙に耐水性を付与する手段として、乾燥及び/又は湿潤紙力増強剤を基紙に添加する方法、基紙表面に合成樹脂コーティングやラミネート加工によって、耐水処理層を設ける方法が試みられている。
【0009】
しかしながら、かかる乾燥や湿潤対応の紙力増強剤が添加された基紙は、難離解なため基紙の製造過程において生じる不良紙や所定の長さ、幅に製品仕上げする際に発生する裁落等(以下、損紙という)の、古紙としての再資源化が困難であり、焼却処分せざるを得ない状況にある。また、かかる基紙を用いた圧着用紙は、接着剤層との相乗効果で、不用意な濡れに対する効果が向上するものの、その耐湿性により同様の問題が生じる。
【0010】
また、ラミネート等の合成樹脂層を設けた場合は合成樹脂表面への印刷、印字方法が限定され、このような圧着用紙は、その製造工程が煩雑になり、製造コストが高くなる欠点がある。また、印刷面に耐水処理層を形成する場合は、近年になって需要が増加している高速印字処理用インクジェット対応の用途において、耐水処理層とインクとのなじみなどを考慮しなければならない問題がでてくる。さらに、接着剤層の上に耐水処理層が形成されることで、接着剤層の圧着性や易剥離性が損なわれるという問題もある。
【特許文献1】特開平7−309086号公報
【特許文献2】特開2003−103968号公報
【特許文献3】特許第3272863号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の主たる課題は、前記背景技術に鑑みてなされたものであり、再資源化困難な接着剤層を有する圧着用紙でありながら、基紙の製造工程で発生する損紙を離解処理し、接着剤層を容易に分離処理してリサイクルすることが容易であり、かつ、水に濡れた場合であっても、必要時に圧着面を容易に剥離することができる耐水性を有する圧着用紙を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
すなわち本発明は、基紙の表裏面の少なくとも一方の面に接着剤層が形成された圧着用紙であって、湿潤時の引張強度が0.7〜1.8kgf/15mm(MD)の前記基紙に、少なくともカチオン系湿潤紙力剤及びケン化度が83〜92mol%のポリビニルアルコール(以下、「PVA」という)を含有する接着剤層を設けたことを特徴とする耐水性を有する圧着用紙を提供するものである。
なお、PVAのケン化度とは、ポリ酢酸ビニルの酢酸基を水酸基に置き換えPVAを合成する反応(ケン化反応)におけるPVA中の酢酸基と水酸基との合計数に対する水酸基の百分率であらわす。
本発明の圧着用紙は、基材が紙製であり湿潤時の引張強度が0.7〜1.8kgf/15mm(MD)とすることで、基紙の製造工程で発生する損紙を離解処理し、リサイクルすることが容易であり、環境への影響を十分配慮したものである。また、接着剤に特定の薬品を含有することにより、水に濡れた場合であっても、接着強度上昇を抑制することができ、必要時に圧着面を容易に剥離することができるものとなる。
【0013】
前記接着剤層中のPVAの重合度が300〜1000の範囲とする場合は、基紙と接着剤層との接着力を高め、圧着性に優れたものとなる。PVAの重合度が300未満の場合は、粘度が低くなりすぎて、天然ゴムを含むバインダー成分の助剤としての効果が充分に発揮されず、圧着性に劣るものとなる。またPVAの重合度が1000を超える場合には、粘度が高く圧着性には優れるものの、基紙と接着剤層との密着性に劣るものとなり、圧着した葉書を剥離する際に接着剤層が基紙から剥れやすくなる。
なお、PVAの重合度とは、酢酸ビニルモノマー分子を幾つもつないでポリ酢酸ビニルにする反応(重合反応)における酢酸ビニル分子のつながった数をあらわす。
【0014】
前記接着剤の塗工量が固形分で6〜12g/m2である場合は、所望の接着力が得られ、意図しない剥離の発生を抑制できる。また、接着力の過度の上昇による易剥離性低下も防止できる。6g/m2未満の場合には、接着力が充分でなく、剥離が生じやすくなり、また12g/m2を超えると、インクジェット印字適性の低下や接着力が強くなりすぎて易剥離性が低下しやすくなるとともに、塗工時に塗工ロールなどに接着剤組成物が付着し、操業上及び品質上のトラブルを招きやすくなる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、基紙の製造工程で発生する損紙を離解処理し、リサイクルすることが容易であり、かつ水に濡れた場合であっても、接着強度上昇を抑制することで必要時に圧着面を容易に剥離することができる耐水性を有する圧着用紙が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の圧着用紙は、前記したように、基紙の表裏面の少なくとも一方の面に接着剤層が形成された圧着用紙であって、湿潤時の引張強度が0.7〜1.8kgf/15mm(MD)の前記基紙に、少なくともカチオン系湿潤紙力剤及びケン化度が83〜92mol%のPVAを含有する接着剤層を設けたことを特徴としたものである。
このように、本発明は、特定の湿潤時の引張強度を示す紙質をもつ基紙を用いるとともに、かつ接着剤層に特定の薬剤を含有させることが大きな特徴の1つであり、かかる手法を用いることにより、前記のごとき優れた効果が発現されるのである。
【0017】
以下に、本発明の圧着用紙の一形態例について説明する。本発明の圧着用紙は、例えば図1の概略断面図に示される構造を有し、図1において、1は圧着用紙、2は基紙、3は接着剤層である。かかる接着剤層3は、基紙2の表裏面の少なくとも一方の面に形成される(両面であってもよい。)が、図1では基紙2の表面に接着剤層3が形成された状態を示している。
【0018】
まず、本発明に用いられる基紙の詳細例について以下に説明する。
基紙としては、バージンパルプを原料パルプとする非再生紙、あるいは古紙パルプを主な原料パルプとする再生紙のいずれを用いることもできる。
【0019】
前記バージンパルプの種類には特に限定がなく、例えば上質紙などの製造に用いられている既知のパルプを用いることができる。かかるバージンパルプの具体例としては、例えば亜硫酸パルプ(SP)、ソーダパルプ(AP)、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)や針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)などのクラフトパルプ(KP)、ケミグランドパルプ(CGP)、セミケミカルパルプ(SCP)、加圧下で砕木した漂白パルプ(BPGW)などがあげられ、これらは単独で又は2種以上を同時に用いることができる。かかるバージンパルプは、必要に応じて漂白して使用するが、この場合には塩素を用いない漂白方法を採用することが好ましい。すなわち、漂白パルプを用いる場合には、Total Chlorine Free(TCF)やElemental Chlorine Free(ECF)などの無塩素漂白にて漂白されたパルプを用いることが望ましい。かかる無塩素漂白パルプは、元素状塩素及び次亜塩素酸を使用せず、オゾン漂白や酸素漂白が施されたパルプであり、明確ではないが、パルプを構成する繊維(セルロース)の末端基が酸素により活性化されているので、後述するカチオン系湿潤紙力剤やアニオン系乾燥紙力剤との親和性が高く、紙力向上効果がより、本発明において好適に発揮されるパルプである。
【0020】
前記古紙パルプとしては、漂白処理された、特に二酸化チオ尿素(FAS)にて還元漂白された古紙パルプを好適に使用することができる。FAS漂白された古紙パルプは、従来の塩素漂白パルプと比較すると、理由は明確ではないが、後述するカチオン系湿潤紙力剤やアニオン系乾燥紙力剤との親和性が高く、紙力向上効果がより好適に発揮される。
【0021】
なお古紙パルプを用いる場合、原料パルプ中の古紙パルプの含有量は70質量%以上であることが好ましい。このように古紙パルプを70質量%以上使用することにより、環境保護や低コスト化を実現することができるとともに、同一坪量のバージンパルプのみの基紙と比較して不透明度が高く記録情報の隠蔽性が高くなるので、圧着用紙1を例えば圧着葉書などにより好適に使用することができる。なお基紙2の表面強度を充分に維持させることを考慮すると、原料パルプ中の古紙パルプの含有量は95質量%以下であることが好ましい。
【0022】
基紙の原料パルプとしては、圧着用紙の耐水性向上、具体的には基紙の湿潤紙力向上の点から、JIS P 8120の「7.試験片及び離解」に記載の方法に準拠したカナディアンスタンダードフリーネス(以下、CSFという)が350mL以上、好ましくは400mL以上、かつ600mL以下、好ましくは550mL以下の範囲に叩解されたものである。かかる原料パルプのCSFが350mL未満の場合には、紙力向上効果が低く、基紙自体の剛度、強度が低下し、印刷適性に劣ったものとなる。また原料パルプのCSFが600mLを超える場合には、地合が悪化し、例えばインクジェット印字時の印字適性に劣ったものとなるだけでなく、地合ムラによる基紙の表面強度ムラが生じ、易剥離性や接着強度にも劣ったものとなる。なお原料パルプの叩解には、リファイナーやニーダーなどの既知の叩解機が用いられるが、分級機により短繊維分、長繊維分を分級することでも原料パルプのCSFの調整が可能である。処理濃度、処理時間を適宜調整することで、CSFが前記範囲内の原料パルプを得ることができる。
【0023】
原料パルプから基紙を製造する際には、かかる原料パルプにカチオン系湿潤紙力剤及びアニオン系乾燥紙力剤を添加するのが望ましい。該カチオン系湿潤紙力剤は、基紙の湿潤引張強度を向上させる作用を有し、またアニオン系乾燥紙力剤は、カチオン系湿潤紙力剤の基紙への定着性を向上させる作用を有する。
【0024】
前記カチオン系湿潤紙力剤としては、例えばポリアミド樹脂、尿素−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂、ポリアミド−ポリアミン−エピクロルヒドリン樹脂、ポリエチレンイミンなどの樹脂にカチオン性を付与したものがあげられ、これらは単独で又は2種以上を同時に用いることができる。これらの樹脂は、例えば、尿素−ホルムアルデヒド樹脂の場合には、パルプ繊維への定着を促進するために、エチレンジアミンやジエチレントリアミンなどの多価アミンで変性し、カチオン性を付与する。メラミン−ホルムアルデヒド樹脂の場合には、塩酸存在下で加熱縮合させ、カチオン性を帯びた、いわゆる酸コロイドの形状とする。これらカチオン系湿潤紙力剤のなかでも、近年の遊離ホルマリンの規制などから、環境面を考慮すると、ポリアミド樹脂、ポリアミド−ポリアミン−エピクロルヒドリン樹脂やポリエチレンイミンを好適に使用することができる。
【0025】
また前記アニオン系乾燥紙力剤としては、例えばポリアクリルアミド(以下、「PAM」という)、PVA、カルボキシメチルセルロースなどがあげられ、これらは単独で又は2種以上を同時に用いることができる。かかるアニオン系乾燥紙力剤としてPVAを用いた場合には、後述するように、接着剤層3を形成する接着剤組成物にPVAが含まれていることから、基紙2と接着剤層3とのなじみがよりよくなり、両者の接着性をさらに高めることができる。
【0026】
原料パルプに対するカチオン系湿潤紙力剤及びアニオン系乾燥紙力剤の添加量は、特に限定されるものではなく基紙の湿潤引張り強度が0.7〜1.8kgf/15mm(MD)となるように適宜調整することにより得られる。基紙の充分な耐水性向上効果を得る場合には、原料パルプ103 kg(絶乾)に対してカチオン系湿潤紙力剤が10kg以上であることが好ましいものの、必要以上の使用による高コスト化を避けることと同時に、基紙を古紙としてリサイクルできるよう環境への影響を考慮する場合には、原料パルプ103 kg(絶乾)に対してカチオン系湿潤紙力剤が20kg以下、さらには15kg以下とすることが好ましい。15kgを超えて20kg以下の範囲では離解可能であるものの、離解時間がかかる、又は離解させるために次亜塩素酸ソーダー等の薬品添加が必要となる。15kg以下であれば、通常の高濃度パルパーで離解可能である。
【0027】
前述のカチオン系湿潤紙力剤及びアニオン系乾燥紙力剤は、両者のイオンバランスをとって、カチオン系湿潤紙力剤が抄造時における基紙に定着しやすくなるように両者の配合割合を調整するものである。具体的には、カチオン系湿潤紙力剤とアニオン系乾燥紙力剤との割合(カチオン系湿潤紙力剤/アニオン系乾燥紙力剤(質量比))が1/4以上、さらには1/3.9以上、また1/3以下、さらには1/3.1以下となるように調整することが好ましい。かかる両者の割合が1/4未満の場合には、湿潤引張強度の向上効果が小さくなり、また1/3を超える場合には、アニオン系乾燥紙力剤の配合割合が少なくなるため、カチオン系湿潤紙力剤の定着性が低下する。
【0028】
基紙の製造方法には特に限定がなく、用紙の一般的な抄紙技術により抄紙して製造することができる。すなわち、原料パルプをスラリー化したのち、長網抄紙機、丸網抄紙機、ツインワイヤータイプ抄紙機、多層抄抄紙機などを使用して抄紙すればよい。
【0029】
カチオン系湿潤紙力剤とアニオン系乾燥紙力剤を含有して得られる本発明に用いる基紙は、その湿潤時の引張強度(「湿潤引張強度」ともいう。)が特定の範囲にあることが重要である。つまり、湿潤引張強度が大きすぎる場合には、水に濡れても極めて破れにくく、接着剤塗布後の用紙としては剥離して印刷された情報を確実に読み取ることが充分に可能な圧着用紙を提供することができるが、基紙を製造する工程中で発生する損紙は離解させるに極めて難があるために古紙として再利用することができず、環境に配慮されたものとはいえない。逆に、湿潤引張強度が低い場合には水に濡れた場合などに基紙が層間剥離を起こし、圧着用紙として重ね合わせた接着剤層の界面剥離が実現できなくなってしまう。このため湿潤引張強度が特定の範囲にあることが重要になる。
すなわち、基紙の湿潤引張強度は0.7〜1.8kgf/15mm(MD)の範囲とすることが好ましい。
基紙のMD方向の湿潤引張強度が0.7kgf/15mm(MD)未満の場合には、後に、カチオン系湿潤紙力剤を含有した接着剤組成物からなる接着剤層を塗布しても、得られる圧着用紙の湿潤紙力は充分に得られないものとなり、水に濡れた場合等において界面剥離が実現できなくなるために圧着面に印刷された情報を確実に読み取ることができない。
湿潤引張強度が1.8kgf/15mm(MD)を超える場合には、基紙を古紙として再利用することが困難となる。
本発明においては、これら基紙を用いるとともに、表裏面の少なくとも一方の面に、カチオン系湿潤紙力剤を含有した接着剤組成物からなる接着剤層を塗布し、塗布後の湿潤紙力をさらに高めることで、圧着葉書とした際に、高耐水性で、水に濡れた場合であっても設けられた記録情報を毀損することなく、必要時に圧着面を容易に剥離することができ、圧着面に印刷された情報を確実に読み取ることができる圧着用紙を得るものである。
【0030】
さらには、湿潤時の紙層間剥離強度は10〜50gf/15mmの範囲とすることが好ましい。10gf/15mm未満では、水に濡れた場合等において紙層間で剥離され、圧着面に印刷された情報を確実に読み取ることができない。
湿潤時の紙層間剥離強度が50gf/15mmを超える場合には、基紙を古紙として再利用することが困難となり生産上で資源回収の問題がでてくる。
【0031】
ここで湿潤引張強度と湿潤時の紙層間剥離強度について説明する。本発明にかかわる湿潤引張強度とは、JISP 8135に記載の方法に準拠し、基紙を水に10分間浸漬後に測定した値である。紙層間剥離強度とは、基紙を水に10分間浸漬後にT型剥離力を測定した値である。水への浸漬時間を10分間と設定したのは、基紙からなる圧着用紙は水に浸漬して使用することを前提とするものではなく、例えば圧着葉書などとして使用する際に、配送中の雨や事故などにより水に濡れた場合であっても耐え得る耐水性を有するものであればよいためである。なお、かかる湿潤引張強度・湿潤時の紙層間剥離強度は水に濡れた状態で測定したものである。
【0032】
基紙には、必要に応じて、例えばクレー、炭酸カルシウム、二酸化チタンや製紙スラッジを原料として、特に脱墨フロスを原料として再生された無機粒子などの填料が添加されていてもよい。またその表面に、必要に応じて、無機顔料、澱粉などを含むサイズプレス液を塗布することにより、表面強度をさらに高めることができる。
また本発明に用いられる基紙の坪量には特に限定がなく、例えば100〜150g/m2 程度であればよい。
【0033】
次に、基紙2の表裏面の少なくとも一方の面に形成される接着剤層3と、接着剤層塗布後の湿潤強度について以下に説明する。
前記接着剤層は、圧着性及び耐水性をさらに向上させることができ、水に濡れた場合であっても接着剤層の強度低下及び破壊が充分に阻止されるという点から、カチオン系湿潤紙力剤を含有することが好ましい。
【0034】
カチオン系湿潤紙力剤を接着剤層中に含有することで、接着剤層中のバインダー成分の水酸基やカルボキシル基と湿潤紙力剤中のアルデヒド基やメチル基とが反応して接着性が高まるとともに、湿潤紙力剤が基紙表面より基紙繊維との結合を高めながら基紙に対する接着剤層の密着性をも高め、結果として、接着剤層塗布後の圧着用紙として圧着性及び耐水性がさらに向上するものである。カチオン系湿潤紙力剤は、従来公知のカチオン系湿潤紙力剤を、接着剤層の機能である易剥離性を阻害しない範囲で使用できるが、接着剤層中に10部〜30部内添することが好ましく、30部以上では接着性が低下し不用意に剥離する問題が生じ、10部未満では湿潤時の耐水効果が得られない。
前記基紙への接着剤層塗布後の圧着用紙の湿潤紙力としては、湿潤引張強度2.0kgf/15mm(MD)以上、湿潤時の紙層間剥離強度50gf/15mm以上とすることによって、圧着葉書等として使用され郵送途中に雨にあたるなどの水に濡れた場合にも紙基材の表面及び紙中の強度低下がなく、紙破れや接着剤層の剥離不具合を解決できるのである。
基紙そのものに本発明の特性を付与せず、カチオン系湿潤紙力剤を含有する接着剤層を塗布するのみで前記接着剤塗布後の湿潤強度を達成することは困難である。
【0035】
耐水性を向上させ界面剥離をより良好に実現させるためには、例えば天然ゴムを含むバインダー成分、PVA及び微細粒子を少なくとも含有した接着剤組成物から形成されることが好ましい。
バインダー成分には、例えば天然ゴムが含まれるが、本発明においてはかかる天然ゴムのほかにも、通常接着剤のバインダー成分として用いられるラテックス、合成ゴム、合成樹脂などを併用することができる。そのなかでも、例えば天然ゴムを無硫黄加硫し、メタクリル酸メチルと混合した天然ゴムラテックス、天然ゴムにメタクリル酸メチルをグラフト共重合させて得られた天然ゴムラテックス、アクリル変性ゴムラテックス、ゴムラテックスと保護コロイド系アクリル共重合エマルジョンとの混合物などを単独で又は2種以上を同時に、耐ブロッキング性、耐経時劣化、インク着肉性などの点から特に好適に使用することができる。
バインダー成分中の天然ゴムの量には特に限定がなく、通常50質量%以上、さらには55〜95質量%程度であればよい。
【0036】
また前記バインダー成分として、その特性を損なわない限り、澱粉、分散剤、保湿剤、耐水化剤、界面活性剤などが含まれていてもよい。かかる分散剤としては、例えばポリエチレンオキサイド、ステアリン酸カルシウムなどがあげられる。また保湿剤としては、例えばアクリル酸、アクリル酸エステル、カルボキシメチルセルロースなどがあげられる。耐水化剤としては、例えば尿素ホルマリン樹脂、ポリアミドポリ尿素系樹脂などがあげられ、界面活性剤としては、例えばシリコーンワックス「GZ−650」(商品名、星光PMC社製)などがあげられる。
【0037】
PVAは天然ゴムを含むバインダー成分の助剤として作用し、湿潤時の接着力上昇を抑制するものである。PVAとして、完全ケン化PVAや中間ケン化PVAではなく、部分ケン化PVAを用いることが好ましい。かかる部分ケン化PVAのケン化度は、接着剤層の圧着性のほか、特に水に濡れた場合の接着剤層の強度や易剥離性に影響を与える。かかるケン化度が83mol%未満の場合には、特に水に濡れた場合の接着剤層の強度が低下するので、83mol%以上、さらには85mol%以上であることが好ましい。またかかるケン化度が92mol%を超える場合には、圧着力が増加して易剥離性が低下する上に、接着剤組成物に増粘が生じて調製が困難となるので、92mol%以下、さらには90mol%以下であることが好ましい。
【0038】
またPVAの重合度300〜1000であることが好ましい。重合度は粘度などに影響を与えるが、PVAの重合度が低い方が、基紙2と接着剤層3との密着性が高まるので好ましいが、PVAの重合度が300未満の場合は、粘度が低くなりすぎて、天然ゴムを含むバインダー成分の助剤としての効果が充分に発揮されず、接着剤層同士の圧着性に劣るものとなる。したがって、かかるPVAの重合度は300以上、さらには350以上であることが好ましい。またPVAの重合度が1000を超える場合には、粘度が高く接着剤層同士の圧着性には優れるものの、基紙2と接着剤層3との密着性に劣るものとなる。したがって、かかるPVAの重合度は1000以下、さらには950以下であることが好ましい。このような重合度を有するPVAを用いることで、基紙2と接着剤層3との接着力がより高まり、水に濡れても易剥離性がさらに低下しにくくなる。
更に、カチオン系湿潤紙力剤及びケン化度が83〜92mol%のPVAを含有させることで、インクジェット記録における、インクジェットインクの浸透が抑制され印刷見栄え、発色性が向上すると共に、剥離時のインクジェット記録の反対面への転移が抑制される効果が生じる。
また、接着剤層の形状維持が図れるため、電子写真記録における熱定着時のカール、寸法変化を抑制できる。
【0039】
本発明において、特に前記範囲内のケン化度を有する部分ケン化PVA、すなわち、ケン化度が83〜92mol%の範囲の部分ケン化PVAを用いた場合には、水に濡れた際の、接着剤層の易剥離性の低下及び強度低下による層破壊といった問題がより充分に解決され得る。
PVAの配合量は、水に濡れた際に、接着剤層の易剥離性の低下及び強度低下による層破壊が充分に阻止されるようにするには、バインダー成分100質量部に対して5質量部以上、さらには8質量部以上であることが好ましい。また耐水性や操業安定性、粘度安定性を考慮すると、PVAの配合量は、バインダー成分100質量部に対して20質量部以下、さらには15質量部以下であることが好ましい。なお本発明においては、重合度やケン化度が異なる2種以上のPVAを同時に用いてもよい。
【0040】
微細粒子は加圧接着された接着剤層3同士の擬似接着性をコントロールし、必要時における圧着面の剥離を容易にする成分である。
前記微細粒子としては、例えばシリカ、クレー、炭酸カルシウムなどの顔料の他、平均粒子径の異なる非晶質合成シリカ粉末、焼成カオリン、酸性白土、活性白土、コロイダルシリカ、コロイダルアルミナ、ゼオライト、炭酸マグネシウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、水酸化アルミニウム、コーンスターチ、馬鈴薯澱粉、小麦澱粉、ポリエチレン微粒子、ポリスチレン微粒子などがあげられ、これらは単独で又は2種以上を同時に用いることができる。
【0041】
微細粒子の粒子径があまりにも小さい場合には、接着剤層のブロッキングや再剥離不良を引き起こし、隠蔽情報の毀損をきたす問題が生じ、印刷や加工工程で搬送不良や重送の原因となる傾向があるので、平均粒子径は1μm以上、さらには3μm以上であることが好ましい。また微細粒子の粒子径があまりにも大きい場合には、不用意な剥離が生じて隠蔽性を損なう恐れがあり、微細粒子が接着剤層より突出した特異な凸部を形成するため、印刷不良や加工、印刷工程における作業性不良が起こったり、印刷見栄えが低下する傾向があるので、平均粒子径は25μm以下、さらには20μm以下であることが好ましい。
【0042】
微細粒子の配合量は、接着剤層同士の擬似接着性が所望の程度に充分にコントロールされるようにするには、バインダー成分100質量部に対して1質量部以上、さらには3質量部以上であることが好ましい。また微細粒子があまりにも多い場合には、接着剤層表面における微細粒子の固定が不充分になり、加工や印刷・記録工程において微細粒子の脱落が生じ、擬似接着性の低下や印刷・記録適正、品質の低下を招く恐れがあるので、微細粒子の配合量は、バインダー成分100質量部に対して10質量部以下、さらには8質量部以下であることが好ましい。なお本発明においては、粒子径が異なる2種以上の微細粒子を同時に用いてもよい。
【0043】
接着剤組成物の調製方法には特に限定がなく、例えば天然ゴムや必要に応じてその他の成分を含むバインダー成分の分散液に、適宜配合割合を調整したPVA及び微細粒子を添加し、均一組成となるように適温にて混合すればよい。
得られた接着剤組成物の粘度や固形分濃度は、本発明の目的を阻害しない限り特に限定がなく、圧着用紙における接着剤層としての作用を充分に発揮し得る範囲であればよい。例えば25℃での粘度(B型粘度計にて測定)が13×10-3〜35×10-3Pa・s程度であり、固形分濃度が5〜50%程度であることが好ましい。
例えば前記組成の接着剤組成物を前記基紙2に塗工することにより、接着剤層3が形成される。
【0044】
接着剤組成物の塗工方法には特に限定がなく、通常の塗工機を用いた方法を採用することができる。かかる塗工機としては、例えばエアーナイフコーター、ブレードコーター、ロッドメタリングコーター、カーテンコーター、ロールコーターなどがあげられるが、特に着色した接着剤組成物を塗工する場合には、より均一に塗工することができるカーテンコーターを用いることが好ましい。またこれら塗工機を用いる方法の他にも、例えばグラビアオフセット、凸版、平板などの印刷方式で印刷する方法も採用することができる。
【0045】
接着剤組成物の塗工量は、6〜12g/m2 とすることが好ましい。6g/m2未満の場合には、所望の接着剤層同士の接着力が得られず意図しない剥離が生じやすくなり、また12g/m2を超えると、接着力が強くなりすぎて易剥離性が低下しやすくなるとともに、オフセット印刷時にブランケット上への塗料堆積の原因につながり、印刷時の品質トラブルを招きやすくなるので、6〜12g/m2 さらには8〜10g/m2とすることが好ましい。
【0046】
基紙2上に接着剤組成物を塗工した後には、塗工面を平滑化処理することが好ましく、かかる平滑化処理を行う際には、通常のカレンダー処理を採用することができる。カレンダー処理は、塗工機と一連のカレンダー(オンマシンカレンダー)により行うことも可能であるし、塗工機と一連ではなく完全に別体のカレンダー(オフマシンカレンダー)により行うことも可能である。カレンダーの種類は特に限定されず、金属ロールと弾性ロールとを備えるカレンダー、金属ロール同士を組み合わせたカレンダーなどの既知のカレンダーを使用することができる。
【0047】
かくして基紙2上に形成された接着剤層3の塗工量が、あまりにも少ない場合には、圧着性が低く、例えば圧着葉書の郵送中に剥離が生じてしまう恐れがあり、またあまりにも塗工量が多い場合には、圧着時に接着剤組成物のはみだしなどが生じる恐れがあるので、通常接着剤層の厚みは10〜20μm程度であることが好ましい。
【0048】
前記のごとく構成された圧着用紙1は、情報が印刷される前に基紙2に接着剤層3が形成される、いわゆる先糊方式と呼ばれるものである。先糊方式の圧着用紙から、例えば圧着葉書を作成する場合には、不変情報である共有データを圧着用紙1に印刷した後、個人情報などの隠蔽を必要とする可変データの印刷を接着剤層3に印刷し、少なくともかかる隠蔽を必要とする可変データを隠蔽するように圧着用紙1を2つ折りもしくは3つ折り(Z折り)などに折り曲げ、圧着シーラなどにより加圧接着すればよい。このように構成された圧着葉書は、高耐水性であるので、水に濡れた場合であっても、接着剤層の破壊がなく、必要時に圧着面を容易に剥離することができ、圧着面に印刷された情報を確実に読み取ることができる。なお、本発明にかかわる圧着用紙1は、このような先糊方式で形成されたものに限定されるものではなく、後糊方式にも適用することができる。
【0049】
次に、本発明の圧着用紙を以下の実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定されるものではない。
・ 基紙の作製(表1参照)
配合比をFAS漂白上白古紙パルプ/ECF漂白LBKP=70/30とした原料パルプをリファイナーで叩解し、CSFを420ccに調整したパルプスラリーに、カチオン系湿潤紙力剤(カチオン性ポリアミド樹脂、商品名:WS4002、星光PMC社製、固形分25%)及びアニオン系乾燥紙力剤(PAM、商品名:ハーマイドEX、ハリマ化成社製、固形分20%)を表1に示す配合量(原料パルプ103 kg(絶乾)に対する量)にて添加し、この抄紙原料を長網抄紙機にて抄紙した。抄紙時にヘッドボックス原料吐出口(リップ)の開度、抄紙速度に対する抄紙原料吐出量の調整、ワイヤーパートにおけるワイヤーのシェーキング(横揺れ)を行い、図2に概略斜視図で示した圧着葉書用のNo.1〜7の基紙を得た。各基紙の表裏面には、無機顔料及び澱粉を含む塗工層を片面あたり1.5g/m2 塗布した。坪量はすべて130g/m2 に調整した。

・ 接着剤組成物の調製(表2参照)
天然ゴムラテックス(NR)100重量部とメタクリル酸メチル(MMA)10重量部をグラフト共重合させたグラフト共重合天然ゴムエマルジョン27重量部を、変性澱粉25重量部とシリカ(商品名:カープテックス#80D DSLジャパン)20部を含む分散液45重量部に混合し、バインダー成分としてPVA(クラレ社製)とラテックス10重量部(日本ゼオン製)及びカチオン系湿潤紙力剤(カチオン性ポリアミド樹脂、商品名:WS4002、星光PMC社製)を表2のとおり配合して、これらを室温にて充分に混合し接着剤組成物を得た。
【0050】
【表1】

【0051】
【表2】

【0052】
(実施例1〜19及び比較例1〜12)圧着葉書の作製
ブレードコーターを用い表1,表2に示す組み合わせで、表1に示すNo.1〜7の基紙の表面にカチオン系湿潤紙力剤の配合量を0〜30部の間で変化させた接着剤組成物を4〜14g/m2 の塗工量で塗工して、実施例1〜19及び比較例1〜12の圧着用紙を作成した。
以下の「(試験例3)印刷適性(1)」の欄に記載の方法にて圧着葉書の印刷を施した。この圧着葉書を、接着剤層が向かい合うように3つ折りにして、圧着シーラ(型番:MS−9100、大日本印刷社製)を用い、シーラーギャップ17の条件で圧着処理をしてそれぞれ向かい合った面を加圧接着させた。
得られた圧着後の圧着葉書及び圧着前の圧着葉書について以下の試験を行い、その特性を調べた。その結果を表2に示す。
(試験例1)基紙の湿潤引張強度
基紙を水に10分間浸漬させた後、JIS P 8135に記載の方法に準拠してMD方向の湿潤引張強度を測定した。
(試験例2)基紙の離解性
離解試験
試料を3.0cm角に裁断し、これをTAPPI標準離解機に2%濃度となるように投入した後、3,000rpmで15分間離解した。こうして得られた試料分散液からTAPPI角型シートマシンを用い、米坪量が70g/m2となるように手抄きシートを作製、脱水、乾燥した。
目視にて、シート中に未離解物が見られないものを離解性良好、未離解物が残存しているものを離解性不良とした。
[評価基準]
◎:シート中に未離解物が全く見られないもの
○:シート中に未離解物が僅かにしか見られないもの
×:シート中に未離解物が著しく残存しているもの
(試験例3)接着剤層の強度
剥離後の接着剤層表面の凹凸状態を光学顕微鏡にて観察し、また層表面を手で擦った際のザラツキ状態を調べ、以下の評価基準に基づいて評価した。
[評価基準]
◎:凹凸がなく平滑で、ザラツキがない。
○:凹凸がほとんどなく、ザラツキが僅かである。
△:小さな凹凸が数箇所確認され、ザラツキも少しある。
×:全体的に凹凸が著しく、ザラツキがあり、接着剤層が著しく破壊されている。
(試験例4)易剥離性
圧着葉書を接着された面から剥離し、その状態を以下の評価基準に基づいて評価した。
湿潤の場合は、前処理として10分間水に浸漬し、水を拭き取った後、同様に評価した。
[評価基準]
◎:特に力を要さず、非常に剥離が容易である。
○:剥離が容易である。
△:少し剥離が重く、剥離しにくい。
×:剥離が非常に重く、剥離しにくい、あるいは基材が材破するため、適切に剥離できない。または、軽すぎて意図しない剥離が発生する。
(試験例5)オフセット印刷適性
ビジネスフォーム印刷機(型番:MVF、(株)ミヤッコシ製)にて、圧着用紙にUVオフセット1色印刷を行った。印刷速度150m/分で、ジャバラ折り出しによるフォーム印刷加工を実施。6,000m/分のフォーム印刷を行った後に、ブランケット上への塗料カス堆積の有無と印刷面を目視にて観察し、以下の評価基準に基づいて評価した。
[評価基準]
○:ブランケット上にカス堆積がなく、印刷物面上にも印刷不良が発生していない。
△:ブランケット上にカス堆積が若干あるが、印刷物上には印刷不良なし。
×:ブランケット上にカス堆積がみられ、さらに印刷物の印面に印刷不良がみられる。
【0053】
表2に示された結果から、実施例1〜19のように、湿潤引張強度が0.7〜1.8kgf/15mm(MD)となるように調整された基紙上に、少なくともカチオン系紙力湿潤剤及びケン化度が83〜92mol%のPVAを含有した接着剤層を塗布した場合には、いずれも、印刷適性に優れるのは勿論のこと、乾燥時及び湿潤時ともに、易剥離性に優れ、基紙の破れ及び接着剤層の破壊がほとんどなく、確実な印刷情報の読み取りが可能であることがわかる。また、基紙はその製造工程中において古紙としても再利用できるような離解性の点においても問題なく、その結果、環境に配慮した圧着用紙を提供することができることがわかる。
【0054】
これに対して、表2の比較例3〜4、及び12のように、基紙の湿潤引張強度が0.7〜1.8kgf/15mm(MD)の基紙を使用したとしても、接着剤層にカチオン系紙力湿潤剤を添加しなかった場合、又はケン化度83〜92mol%のPVAを使用しない場合は、湿潤時、または乾燥時の剥離性に劣り、確実な印刷情報の読み取りが困難なものであることがわかる。
比較例1,5のように、基紙の湿潤引張強度が0.7kgf/15mm(MD)未満の場合は、接着剤層中のカチオン系紙力湿潤剤を添加した場合でも易剥離性が低く、基紙の破れが生じて耐水性に劣り、確実な印刷情報の読み取りが困難なものであることがわかる。
また、比較例2及び6〜10については易剥離性が低く、確実な印刷情報の読み取りが困難であるだけでなく、基紙が離解処理できないため、基紙の製造工程で発生する損紙をリサイクルすることが困難である。比較例11も基紙が離解処理できないため、リサイクルすることが困難である。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明の圧着用紙は、圧着葉書だけでなく、例えば隠蔽を必要とする情報隠蔽用紙、隠蔽性封筒などにも好適に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の圧着用紙の一実施態様を示す概略断面図である。
【図2】本発明の実施例にかかわる圧着葉書の概略斜視図であり、(a)は圧着前の概略斜視図、(b)は圧着後の概略斜視図である。
【符号の説明】
【0057】
1…圧着用紙、2…基紙、3…接着剤層、4…圧着葉書、5a〜5f…面、6…圧着葉書。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基紙の表裏面の少なくとも一方の面に接着剤層が形成された圧着用紙であって、
湿潤時の引張強度が0.7〜1.8kgf/15mm(MD)の前記基紙に、
少なくともカチオン系湿潤紙力剤及びケン化度が83〜92mol%のポリビニルアルコールを含有する接着剤層を設けたことを特徴とする圧着用紙。
【請求項2】
前記接着剤層中のポリビニルアルコールの重合度が300〜1000の範囲である、請求項1に記載の圧着用紙。
【請求項3】
前記接着剤の塗工量が固形分で6〜12g/m2である請求項1又は2記載の圧着用紙。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−119963(P2007−119963A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−315458(P2005−315458)
【出願日】平成17年10月28日(2005.10.28)
【出願人】(390029148)大王製紙株式会社 (2,041)
【Fターム(参考)】