説明

圧縮コイルばね

【課題】 圧縮コイルばねの両端部の成形を容易にし、かつばね素材に強い屈曲を与えずに耐久性を向上しながら、圧縮時にコイル軸心と直交する座巻部を形成すること。
【解決手段】 圧縮コイルばね10の両端部11のコイル平均径D1を、自由巻部12の側から該自由巻部12のコイル平均径D2より徐々に大きくし、かつその両端部11のピッチ角α1を、自由巻部12の側から該自由巻部12のピッチ角α2より徐々に小さくしてなるもの。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は圧縮コイルばねに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、端面の研削及び面取り等を要しない圧縮コイルばねとして、特許文献1に記載の如く、両端座巻部をコイル軸心と直交する平面内に、1巻以下で、平均コイル径より小さく或いは大きく成形し、かつ、この座巻部と自由巻部との間に3/4巻以上の添え巻部を有するものがある。
【特許文献1】実公昭55-43305
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1に記載の圧縮コイルばねには以下の問題点がある。
(1)圧縮コイルばねのコイル成形時に、両端座巻部をコイル軸心と直交する平面内に成形する必要があり、成形、管理にコストを要する。
【0004】
(2)圧縮コイルばねの両端座巻部をコイル軸心と直交する平面内に成形し、座巻部と自由巻部との間に添え巻部を有するようにしたから、添え巻部の両端でばね素材に強い屈曲を与え、応力集中を生じ、耐久性の低下を招くおそれがある。
【0005】
本発明の課題は、圧縮コイルばねの両端部の成形を容易にし、かつばね素材に強い屈曲を与えずに耐久性を向上しながら、圧縮時にコイル軸心と直交する座巻部を形成することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明は、圧縮コイルばねの両端部のコイル平均径を、自由巻部の側から該自由巻部のコイル平均径より徐々に大きくし、かつその両端部のピッチ角を、自由巻部の側から該自由巻部のピッチ角より徐々に小さくしてなるようにしたものである。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載の圧縮コイルばねをコイル軸心と直交するばね受面の間に介装してなるばね装置であって、圧縮コイルばねの初期荷重によりその両端部をばね受面に着座させて座巻部とするようにしたものである。
【発明の効果】
【0008】
(請求項1)
(a)圧縮コイルばねは、自由巻部より徐々に大きいコイル平均径で、かつ徐々に小さいピッチ角にて成形した両端部が、ばね受面に順次着座し、コイル軸心と直交する座巻部を形成するため、コイル成形時に両端座巻部をコイル軸心と直交する平面内に成形する必要がなくなり、成形、管理が容易になる。
【0009】
(b)圧縮コイルばねの両端部を自由巻部より徐々に大きいコイル平均径で、かつ徐々に小さいピッチ角にて成形したから、ばね素材が強い屈曲を伴なうことなく連続的に成形され、応力集中がなく、耐久性を向上できる。
【0010】
(請求項2)
(c)圧縮コイルばねの初期荷重により、圧縮コイルばねの両端部を上述(a)、(b)によりばね受面に着座する座巻部とすることにより、所望のばね特性が得られるばね装置を安定的に構成できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1は自由状態の圧縮コイルばねを示す側面図、図2は図1の端面図である。
【実施例】
【0012】
図1、図2に示す圧縮コイルばね10は以下の特徴を備える。
(1)両端部11、11のコイル平均径D1を、ばね作用をする自由巻部12の側から先端に向けて、該自由巻部12のコイル平均径D2より徐々に連続的に大きくする。このことは、両端部11、11のばね定数k1が自由巻部12のばね定数k2より小さくなることを意味する。
【0013】
(2)両端部11、11のピッチ角α1を、自由巻部12の側から先端に向けて、該自由巻部12のピッチ角α2より徐々に連続的に小さくする(両端部11、11のピッチp1は、自由巻部12の側から先端に向けて、該自由巻部12のピッチp2より徐々に連続的に小さい)。
【0014】
圧縮コイルばね10が採用される車両用懸架装置等のばね装置は、圧縮コイルばね10のコイル軸心と直交する上下のばね受面の間に圧縮コイルばね10を介装し、圧縮コイルばね10に当初から作用する初期荷重によりその両端部11、11をばね受面に着座させて座巻部11Aとする。
【0015】
従って、圧縮コイルばね10はばね装置に適用されて以下の如く動作する。
(1)圧縮コイルばね10の両端部11、11のコイル平均径D1を、自由巻部12のコイル平均径D2より徐々に大きく成形したので、この両端部11、11のばね定数k1は自由巻部12のばね定数k2より小さくなり、かつ先端ほどより小さくなり、圧縮時に、ばね定数の低い先端から順次たわみ始める。
【0016】
(2)自由巻部12のコイル平均径D2より徐々に大きいコイル平均径D1を備えるように成形された圧縮コイルばね10の両端部11、11を、自由巻部12より徐々に小さいピッチ角α1にて成形したので、圧縮時に、先端より順次たわみ始め、コイル軸心と直交するばね受面に、先端より順次着座する。
【0017】
(3)自由巻部12より徐々に大きいコイル平均径D1で、かつ徐々に小さいピッチ角α1にて成形した両端部11、11がばね受面に着座後、この両端部11、11がコイル軸心と直交する座巻部11Aとなり、自由巻部12にて設計上のばね特性が得られる。コイルばね10の初期荷重範囲内でこの座巻部11Aを形成することで所望のばね特性が得られる。
【0018】
本実施例によれば以下の作用効果を奏する。
(a)圧縮コイルばね10は、自由巻部12より徐々に大きいコイル平均径D1で、かつ徐々に小さいピッチ角α1にて成形した両端部11、11が、ばね受面に順次着座し、コイル軸心と直交する座巻部11Aを形成するため、コイル成形時に両端座巻部11Aをコイル軸心と直交する平面内に成形する必要がなくなり、成形、管理が容易になる。
【0019】
(b)圧縮コイルばね10の両端部11、11を自由巻部12より徐々に大きいコイル平均径D1で、かつ徐々に小さいピッチ角α1にて成形したから、ばね素材が強い屈曲を伴なうことなく連続的に成形され、応力集中がなく、耐久性を向上できる。
【0020】
(c)圧縮コイルばね10の初期荷重により、圧縮コイルばね10の両端部11、11を上述(a)、(b)によりばね受面に着座する座巻部11Aとすることにより、所望のばね特性が得られるばね装置を安定的に構成できる。
【0021】
以上、本発明の実施例を図面により詳述したが、本発明の具体的な構成はこの実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1は自由状態の圧縮コイルばねを示す側面図である。
【図2】図2は図1の端面図である。
【符号の説明】
【0023】
10 圧縮コイルばね
11 両端部
11A 座巻部
12 自由巻部
D1、D2 コイル平均径
α1、α2 ピッチ角

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮コイルばねの両端部のコイル平均径を、自由巻部の側から該自由巻部のコイル平均径より徐々に大きくし、
かつその両端部のピッチ角を、自由巻部の側から該自由巻部のピッチ角より徐々に小さくしてなることを特徴とする圧縮コイルばね。
【請求項2】
請求項1に記載の圧縮コイルばねをコイル軸心と直交するばね受面の間に介装してなるばね装置であって、圧縮コイルばねの初期荷重によりその両端部をばね受面に着座させて座巻部とするばね装置。

【図1】
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【図2】
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