説明

圧縮機の解体装置および解体方法

【課題】 ルームエアコン、冷蔵庫、除湿機等の圧縮機に使用されているモータに含まれる磁石等の貴重な資源を部品単位で回収することができる圧縮機の解体装置および解体方法を提供する。
【解決手段】 圧縮機100の外郭を切断し除去する切断部10と、モータ104のロータ107に接合された回転シャフト105をロータ107から外す押し抜き部20と、ロータ107内の磁石109を脱磁する脱磁部30と、ロータ107の電磁鋼板108とロータウェイト110a、110bとを固定しているリベット111を切断して電磁鋼板108とロータウェイト110a、110bとを分離させる解体部40とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃棄されたルームエアコン、冷蔵庫、除湿機等の圧縮機の解体に関するものであり、特に圧縮機に使用されているモータのロータに内蔵された磁石等の回収を行う解体装置および解体方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、廃棄されたルームエアコン、冷蔵庫、除湿機等の家電製品を解体する場合は、冷媒回路内の冷媒フロンを回収後、主要部品を手作業で取り外し、破砕して選別し、金属、プラスチック等を回収している。圧縮機に関しては、製品から取り出されて電気炉で溶解、または破砕機で破砕されている(例えば、特許文献1、2参照)。または、圧縮機は鉄や銅等の有用金属で構成されているため、素材回収業者等に有価で引き渡されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−313210号公報(請求項1、図10)
【特許文献2】特開2001−110636号公報(請求項1、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、これら圧縮機に使用されているモータが有する金属素材の需要が急激に拡大してきている。ルームエアコン、冷蔵庫、除湿機等の圧縮機に使用されているモータには磁石埋込み型のロータが主に使われており、このロータは、回転時のバランスを取るための黄銅製のロータウェイト、電磁鋼板および磁石で構成されている。黄銅は銅や亜鉛が含有された貴重な金属資源であり、電磁鋼板は鉄損が少なく、主に発電所の発電機、変電所の変圧器、家庭の冷蔵庫、ハイブリッドカー等のモータやノートパソコン等のIT機器の精密モータの鉄芯に幅広く採用され、利用範囲は一層拡大している。また、磁石に関しては、新たな磁石に再生することで様々な製品に利用することができる。
【0005】
これらの金属材料は原形を保った状態で回収した方が高純度となり価値が高まるため、上記の特許文献1、2の圧縮機の処理方法のように他の金属材料と混同する破砕による処理は不向きであった。しかしながら、モータのロータは高速回転駆動に耐えられるように複数のリベットで固定されていると共に回転シャフトに焼きばめ接合等で強固に固定されているため、これらの部品を破損させることなく解体することが困難であった。
【0006】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、ルームエアコン、冷蔵庫、除湿機等の圧縮機に使用されているモータに含まれる磁石等の貴重な資源を他の材料と混同させることなく、部品単位で回収することができる圧縮機の解体装置および解体方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る解体装置は、モータが内蔵された圧縮機の外郭を切断し除去する切断部と、切断部で外郭が除去された圧縮機を載置し、モータのロータに接合された回転シャフトをロータから外す押し抜き部と、押し抜き部で回転シャフトが外されたロータを載置し、ロータ内の磁石を脱磁する脱磁部と、脱磁部で脱磁処理されたロータを載置し、ロータの電磁鋼板とロータウェイトとを固定しているリベットを切断して電磁鋼板とロータウェイトとを分離させる解体部と、を備えた圧縮機の解体装置。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、圧縮機の外郭を除去する切断部、回転シャフトをロータから外す押し抜き部、ロータ内の磁石を脱磁する脱磁部、ロータを固定するリベットを切断する解体部の順に圧縮機を解体することで、ロータに含まれる磁石等の貴重な資源を他の材料と混同させることなく、部品単位で回収することができる。また、ロータを単品の状態にして解体することで、圧縮機に取り付けられた状態のロータを解体する場合よりも解体する対象物が小さくなるので装置を小型にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施の形態1に係る解体装置にて処理されるルームエアコン、冷蔵庫、除湿機等の圧縮機の構成を示す図であり、図1(a)は圧縮機の側面図、図1(b)は圧縮機を分解した状態の側面図である。
【図2】図1の圧縮機に使用されているモータのロータの断面図であり、図2(a)は縦断面図、図2(b)は横断面図である。
【図3】本発明の実施の形態1に係る解体装置の全体構成を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態1に係る切断装置の構成を説明する図である。
【図5】本発明の実施の形態1に係る切断装置の構成を説明する図である。
【図6】本発明の実施の形態1に係る押し抜き装置の構成を説明する図である。
【図7】本発明の実施の形態1に係る脱磁装置の構成を説明する図である。
【図8】本発明の実施の形態1に係る脱磁装置の構成を説明する図である。
【図9】本発明の実施の形態1に係る脱磁装置の構成を説明する図である。
【図10】本発明の実施の形態1に係る解体装置の構成を説明する図である。
【図11】本発明の実施の形態1に係る解体装置にて処理されるロータの電磁鋼板の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施の形態1.
まず本願発明の実施の形態を説明するにあたって、本実施の形態に係る解体装置にて処理されるルームエアコン、冷蔵庫、除湿機等の圧縮機について説明する。
図1は実施の形態1に係る解体装置にて処理されるルームエアコン、冷蔵庫、除湿機等の圧縮機の構成を示す図であり、図1(a)は圧縮機の側面図、図1(b)は圧縮機を分解した状態の側面図である。なお、図1には圧縮機の一例としてロータリー型圧縮機を示しているが、この圧縮機に限定するものではない。
【0011】
図1に示すように、圧縮機100は、圧縮機100の外郭を形成する金属製の密閉型のシェル部101と、シェル部101の側面と配管を介して接続され、液冷媒とガス冷媒を分離しガス冷媒をシェル部101内に供給するマフラー部102を備えている。シェル部101内には、ガス冷媒の圧縮が行われる圧縮室103と、圧縮室103を駆動させるモータ104とが設けられている。モータ104は、圧縮室103に回転可能に連結されたシャフト105と、銅線が取り付けられたドーナツ型のステータ106と、ステータ106の内側に設けられ、シャフト105に焼ばめ接合されたロータ107とから構成されている。なお、図1(b)ではステータ106をロータ107から取り外した状態を示している。
【0012】
図2はロータ107の断面図であり、図2(a)は縦断面図、図2(b)は横断面図である。図2に示すように、ロータ107は、円盤状の薄い板厚の鉄系部材が複数重ねられた電磁鋼板108と、重ねられた電磁鋼板108内に設けられた収容部に収容された矩形状の磁石109と、電磁鋼板108の上面側と下面側に取り付けられたロータウェイト110a、110bと、周方向に等間隔に配置され、電磁鋼板108とロータウェイト110a、110bとを固定するリベット111とを備えている。
【0013】
電磁鋼板108およびロータウェイト110a、110bの中心には、モータ104のシャフト105が挿入される穴112が形成されている。磁石109は、磁石109の最広面がロータ107の長手方向に対して略平行となる向きで設けられている。また、磁石109はシャフト105が挿入される穴112を囲むように6つ設けられている。
【0014】
なお、図2(b)では、磁石109が電磁鋼板108の外周面に沿って環状に設けられたロータ107を示しているが、磁石109が電磁鋼板108の中心部から外周面に向かって放射状に配置されたロータもある。また、図2(b)では、4本のリベット111で固定したロータ107を示しているが、3本のリベット111で固定したロータもある。実施の形態1に係る解体装置では、このような磁石109の配置やリベット111の本数等が異なるロータも処理することができ、図2に示すロータ107と同様に解体することが可能である。
【0015】
以上説明したロータ107を備えた圧縮機100を処理する実施の形態1に係る解体装置について、以下説明する。
図3は実施の形態1に係る解体装置の全体構成を示す図である。図3に示すように、解体装置1は、圧縮機100のシェル部101、マフラー部102を切断し除去する切断装置10と、ロータ107からシャフト105を取り外し、ロータ107を単品にする押し抜き装置20と、単品となったロータ107を脱磁する脱磁装置30と、ロータ107のリベット111を切断し、ロータ107を解体する解体装置40とを備えている。
【0016】
以下、切断装置10、押し抜き装置20、脱磁装置30、解体装置40については、図4〜図10を参照して詳細に説明する。図4、5は実施の形態1に係る切断装置の構成を説明する図である。図6は実施の形態1に係る押し抜き装置の構成を説明する図である。図7〜9は実施の形態1に係る脱磁装置の構成を説明する図である。図10は実施の形態1に係る解体装置の構成を説明する図である。
【0017】
ルームエアコン、冷蔵庫、除湿機等の製品本体から予め取り出された圧縮機100は、コンベアなどによって切断装置10へ送られる。図4、5に示すように、切断装置10は、マフラー部102とシェル部101とを接続する配管を切断し、マフラー部102を除去するマフラー部除去装置10aと、マフラー部102が除去された圧縮機のシェル部101を切断、除去するシェル部除去装置10bとを備えている。なお、圧縮機100は作業者などの人手によって切断装置10へ送られるようにしてもよい。
【0018】
マフラー部除去装置10aは、図4に示すように、圧縮機100が載置される台11と、台11から圧縮機100の上方にかけて延在したアーム部12と、アーム部12の先端部分に設けられたカッター13と、カッター13を上下方向にスライドさせる駆動機構14とを備えている。
【0019】
まず、圧縮機100は、不図示のコンベアの駆動によって運ばれ、マフラー部102とシェル部101とを接続する配管がカッター13の直下となる位置に載置される。そして、駆動機構14を駆動させ、カッター13を下方にスライドさせてカッター13を配管の上方から押し付けることで配管を切断する。なお、図4には駆動機構14によってカッター13をスライドさせるものを示したが、作業者がレバー等を引くことでカッター13をスライドさせるものでもよい。
【0020】
シェル部除去装置10bは、図5に示すように、マフラー部102が除去された圧縮機100aが載置される回転台15と、回転台15を回転させるモータ部16と、2つのカッター17を有し、回転台15に向かって移動可能に設けられたアーム部18と、アーム部18を移動させる駆動機構19とを備えている。
【0021】
まず、不図示のコンベアの駆動によって、圧縮機100aが回転台15に載置される。そして、モータ16を駆動させて回転台15を回転させ、圧縮機100aを回転させる。その後、アクチュエーター19を駆動させ、アーム部18を圧縮機100a側に移動させる。そして、2つのカッター17を圧縮機100aのシェル部101の側面の上部と下部とにそれぞれ押し付け、圧縮機100aが回転することによってシェル部101全周を切断する。切断されたシェル部101は除去され、圧縮機100aは、圧縮室103、モータ104が露出した状態となる。
【0022】
このように、始めに切断装置10でシェル部101、マフラー部102を取り除くことで圧縮機100内のモータ104等が露出するため、圧縮機100からロータ107を取り出しやすくすることができる。また、シェル部101を取り除くことで圧縮機100内の圧縮室103が露出するため、この圧縮機を上下逆さにするなどをして圧縮室103内に溜まっている潤滑油の多くを取り出すことができ、後工程における油垂れ等を防止することができる。さらに、シェル部101等を取り除くことで、処理対象物が小さくなり後工程の装置を小型にすることができる。
【0023】
切断装置10で取り除かれたシェル部101、マフラー部102は、鉄系の金属として回収され別途処理される。また、このときモータ104のステータ106も取り除かれ、ステータ106に取り付けられた銅線は銅系の金属として回収され、銅線以外の部分は鉄系の金属として回収され別途処理される。
【0024】
なお、予めマフラー部102が除去された圧縮機を切断装置10へ送るようにしてもよく、その場合にはマフラー除去手段が不要となり切断装置10を小型にすることができる。
【0025】
切断装置10でシェル部101等が取り除かれた半解体状態の圧縮機は、次にコンベアなどによって押し抜き装置20へ送られる。なお、半解体状態の圧縮機は作業者などの人手によって押し抜き装置20へ送られるようにしてもよい。
【0026】
図6に示すように、押し抜き装置20は、半解体状態の圧縮機100bが載置される台21と、台21に載置された圧縮機100bの側方に設けられ、不図示の駆動機構によって水平方向にスライドされる一対の板状のロータ受け台22と、ロータ受け台22によって支持される圧縮機100bのシャフト105の上方に設けられた押し棒23と、押し棒23に対して下方に荷重を加え、シャフト105がロータ107から外れる位置まで押し棒23を下方に押し込む油圧式のプレスシリンダー24とを備えている。
【0027】
一対のロータ受け台22は、互いに対向する位置に設けられており、台21に載置される圧縮機100bに向かってそれぞれスライドするようになっている。押し棒23は、シャフト105の軸線上に設けられており、押し棒23を下方に移動させたときに押し棒23の下端面がシャフト105の上端面に当たるようになっている。また、押し棒23は、シャフト105の外径と同じ又はシャフト105の外径よりも小さい幅となっている。なお、ロータ受台22、押し棒23には、ロータ107内の磁石109の磁力に影響しない非磁性材が使われている。
【0028】
一対のロータ受け台22でロータ107を支持することで、シャフト105を挟むようにしてロータ105を支持することができ、シャフト105が取り付けられた状態のロータ107を安定して支持することができる。また、押し棒23の外径をシャフト105の外径よりも小さくすることで、押し棒23がロータ107の穴112に挿入可能な大きさとなるので、シャフト105がロータ107から完全に外れる位置まで押し棒23を押し込むことができる。
【0029】
まず、不図示のコンベアの駆動によって、圧縮機100bが台21の中心部に載置される。そして、不図示の駆動機構の駆動によってロータ受け台22を圧縮機100b側にスライドさせ、ロータ受け台22の先端部をロータ107と圧縮室103の隙間に挿入させる。その後、台21を下降させ、ロータ107の下面をロータ受台22の上面で受けロータ107を支持する。なお、圧縮機100bをアーム等で挟持し、圧縮機100bを上方に移動させてからロータ受台22をロータ107と圧縮室103の隙間に挿入させ、ロータ107を支持するものでもよい。
【0030】
ロータ受け台22によって圧縮機100bの支持が完了すると、プレスシリンダー24によって押し棒23を下方に移動させ、シャフト105の上端面に押し棒23の下端面を当てる。そして、プレスシリンダー24でさらに押し棒23を下方に向けて例えば2トンの荷重で押す。荷重が加えられたシャフト105は徐々に下降し、ロータ107からシャフト105が外れ、シャフト105と圧縮室103が下方に脱落する。ロータ107から外されたシャフト105、圧縮室103は、鉄系の金属として回収され別途処理される。
【0031】
このように、押し抜き装置20でロータ107を単品にすることで、シャフト105や圧縮室103が取り付けられた状態のものと比べて、後工程における処理対象物が大幅に小さくなるので装置を大幅に小型にすることが可能となる。また、潤滑油が多く付着している圧縮室103を取り外すことで、後工程において油垂れなどが発生することがなくなるので、装置の油汚染や故障等を防止することができる。さらに、ロータ107に焼きばめ接合されたシャフト105を取り外すことで、後工程においてロータ107を容易に解体することができる。
【0032】
押し抜き装置20で単品となったロータ107は、次にアームなどによって挟持され脱磁装置30へ送られる。図7、8に示すように、脱磁装置30は、ロータ107の穴112とほぼ同じ外径のピン31aが設けられ、ロータ107の穴112にこのピン31aを挿入し、ロータ107を支持する支持台31と、交番減衰磁界を発生し、ロータ107の磁石109の脱磁を行う交番減衰磁界脱磁コイル32を備えている。
【0033】
図7に示すように、まず、アーム200で挟持されたロータ107が支持台31の上方に運ばれる。そして、ロータ107の中心にある穴112に支持台31のピン31aを挿入させて、ロータ107を支持する。このとき、ロータ107の穴112はロータ107の中心に設けられているため、支持台31のピン31aの中心はロータ107の中心部に位置することになる。ロータ107の支持が完了すると、アーム200がロータ107から外され、支持台31に載置されたロータは交番減衰磁界脱磁コイル32へ送られる。なお、支持台31には、ロータ107内の磁石109の磁力に影響しない非磁性材が使われている。
【0034】
このように、ロータ107を単品にしたことでロータ107の穴112にピン31aを挿入させることが可能となり、ロータ107を容易に支持することができると共に、ロータ107の中心をこのピン31aの中心に基づいて容易に認識することができるので、次工程における脱磁処理を効率的に行うことができる。
【0035】
図8に示すように、交番減衰磁界脱磁コイル32に送られたロータ107は、ドーナツ型の交番減衰磁界脱磁コイル32の内側に挿入される。そして、交番減衰磁界脱磁コイル32に電圧が印加することで、図8に矢印で示すように交番減衰磁界Aを発生させる。なお、交番減衰磁界による常温脱磁では潤滑油の発煙の心配はない。
【0036】
支持台31によってロータ107の中心を認識することができるので、支持台31のピン31aの中心と交番減衰磁界脱磁コイル32の中心とを一致させるように、支持台31を移動させロータ107を交番減衰磁界脱磁コイル32の内側に挿入させることで、ロータ107を交番減衰磁界脱磁コイル32の内側の中央に配置させることができる。交番減衰磁界脱磁コイル32の中央に配置されたロータ107には交番減衰磁界Aがロータ107全体に均等にかかるため、効率よく磁石109の脱磁を行うことができる。
【0037】
また、ロータ107を交番減衰磁界脱磁コイル32の中央に縦置きに配置することで、磁石109の長手方向が交番減衰磁界Aの方向に対して並行の向きになる。このように、ロータ107を縦置きに配置することで、交番減衰磁界Aが磁石109の長手方向に均等にかかるため、ロータ107を動かすことなく全ての磁石109の脱磁を行うことができる。
【0038】
なお、交番減衰磁界Aの強さは磁石109のグレード、極数に応じた適切な値に設定されており、適切な値であれば1、2回交番減衰磁界をかけることで磁石109の脱磁を行うことができる。また、交番減衰磁界による脱磁を行う場合、交番減衰磁界A内に配置されたロータ107が交番減衰磁界Aの影響を受けて振動するおそれがあるため、図示していないが、交番減衰磁界脱磁コイル32の上方にはロータ107の飛び出し防止用のカバーが設けられている。
【0039】
ここで、図9に示すように、交番減衰磁界脱磁コイル32内にロータ107を横置きに配置させて脱磁を行ってもよい。ロータ107を横置きに配置することで、磁石109の長手方向が交番減衰磁界Aの方向に対して略垂直となる向きになり、磁石109の最広面に交番減衰磁界Aが直交するため、交番減衰磁界Aが磁石109に作用しやすくなり脱磁の効率を高めることができる。
【0040】
この場合、図2(b)に示したように、ロータ107内には複数の磁石109が環状に設けられているため、ロータ107を周方向に回転させる機構を設け、すべての磁石109の最広面に交番減衰磁界Aを直交させるようにすることでさらに効率よく脱磁を行うことが可能となる。また、縦置きの場合に比べ、脱磁効率がよいため交番減衰磁界Aの強さが小さい低容量の電源で済み、脱磁装置が安価で済む。例えば、ルームエアコン用の希土類磁石を使用したロータの場合は4テスラ以上の磁束密度が必要だが、横置きの場合には最大4テスラで脱磁が可能となる。
【0041】
なお、脱磁手段として、交番減衰磁界脱磁コイル32に換えて高周波誘導加熱コイルを用いた高周波誘導加熱による脱磁を行ってもよい。ロータ107は、交番減衰磁界脱磁コイル32の場合と同様に支持台31によって支持される。図2(b)に示したロータ107のように磁石109が電磁鋼板108の外周面に沿って環状に設けられた場合には、電磁鋼板108の表面が赤熱するまで加熱をすると、磁石109の外側にある電磁鋼板108の表面部分が焼き切れ、磁石109が露出する。このように、高周波誘導加熱による脱磁の場合には、磁石109の脱磁と取出しが一度にでき作業時間を短縮させることができる。
【0042】
また、高周波誘導加熱による脱磁を行う場合、加熱により潤滑油が発煙するため別途煙処理装置が必要となるが、押し抜き装置20でロータ107を単品にしたことで、半解体状態の圧縮機100bに比べ潤滑油の付着が少なく発煙量も少なくなるため、小型の安価な煙処理装置設備で対応することができ、コストを抑えることができる。
【0043】
脱磁装置30で磁石109の脱磁が行われたロータ107は、次にアームなどによって挟持され解体装置40へ送られる。図10に示すように、解体装置40は、台41上に設けられ、ロータ107の穴112とほぼ同じ外径のピン42aを有する保持台42と、台41から上方に延在したアーム部43と、アーム部43に上下方向に移動可能に設けられるとともに、水平方向にスライド可能に設けられた押切刃44と、押切刃44を移動させる駆動機構45とを備えている。
【0044】
押切刃44は2つ設けられており、互いに対向する位置で、ロータ107が載置される中央部に向かってスライドする向きに設けられている。なお、図10では左側の押切刃44の一部を省略しているが、右側の押切刃44と同様にアーム部に設けられている。
【0045】
まず、解体装置40に送られたロータ107は保持台42に送られ、ロータ107の穴112に保持台42のピン42aが挿入される。そして、保持台42によって保持されたロータ107が2つの押切刃44の中央に載置される。その後、不図示のセンサーによって、リベット111の位置を検出し、検出された位置に基づいて駆動機構45が押切刃44を上下方向に移動させ、押切刃44の刃先端部がリベット111に当たる位置に押切刃44をセットする。そして、駆動機構45によって、2つの押切刃44を同時にロータ107に向かって素早くスライドさせ、リベット111を切断する。
【0046】
このように、対向する一対の押切刃44でリベット111を切断することで、ロータ107を部品単位に解体することが可能な状態にすることができる。そして、一対の押切刃44を互いに対向する位置に配置させ、ロータ107に向かって同時にスライドさせてリベット111を切断することで、切断時の衝撃を打ち消し合うことができるので、電磁鋼板108や磁石109に伝わる衝撃を最小限に抑えることできる。切断時の衝撃を抑えることで電磁鋼板108内の磁石109の収容部の変形を抑えることができるので、後工程において磁石109を容易に取り出すことが可能となる。
【0047】
また、保持台42によって、ロータ107の下方側を支持してロータ107の側方と上方とを開放させた状態でロータ107を保持することで、リベット111切断時に発生する衝撃がロータ107の側方と上方とに逃げ、電磁鋼板108、磁石109及びロータウェイト110a、110bの変形や破損を抑制することができる。
【0048】
ここで、不図示のセンサーによって、ロータウェイト110aと電磁鋼板108の境界部分を検出し、この境界部分に押切刃44の刃先端部が当たる位置に押切刃44をセットし、リベット111を切断するようにしてもよい。その場合、図10に示すようにロータウェイト110aと電磁鋼板108の境界部分に押切刃44が入り込み、ロータウェイト110aを電磁鋼板108から分離させるようにしてリベット111の切断が行われるので、押切刃44の接触によるロータウェイト110aと電磁鋼板108の変形や破損を最小限に抑えることができ、より原形を保った状態で各部品を解体することが可能となる。
【0049】
また、除去されたロータウェイト110aは、切断時の衝撃により上方に飛び出すおそれがあるため、図10に示すように解体装置40の上方にロータウェイト110aの飛散防止用のカバー46を設けることで、ロータウェイト110aの飛散を防止することができ安全性を確保することができる。このカバー46はアクリル等の中が見える透明材料で作られており、解体状況の確認をすることも可能となっている。なお、取り除かれたロータウェイト110aは、黄銅材料として回収され別途処理される。
【0050】
なお、押切刃44に代えて、例えば円盤状のカッター等でリベット111の切断をするものにした場合、歯の寿命を考慮する必要がありランニングコストが増加するおそれがある。また、グラインダー等でリベット111の頭を研磨するものにした場合には、除去時間が長くなり時間効率が大幅に悪化するおそれがある。したがって、図10に示した押切刃44によるリベット111の切断が最適である。
【0051】
ここで、3本のリベットで固定されたロータの場合について説明する。3本のリベットで固定されたロータに対して2つの押切刃でリベットの切断を行うと、1方の押切刃で1つのリベット、もう一方の押切刃で2つのリベットを切断することとなり、切断時の衝撃がそれぞれの押切刃で異なってしまい衝撃を十分に打ち消すことができないおそれがある。この場合、それぞれのリベットに対応した3つの押切刃を設け、3つの押切刃を同時にロータに向かってスライドさせてリベットの切断を行えば切断時の衝撃を抑えることができる。
【0052】
ロータのリベットの本数は一般的には4本と3本のものが多いので、リベットの本数の検出を予め画像センサーなどで行い、検出結果に応じて押切刃の位置と、ロータの向きを適切にセットするようにすれば、それぞれのロータのリベットの切断を最適に行うことができる。また、ロータの形状をパターン化して装置に記憶させることで、この2種類以外のリベットを備えたロータにも対応させることが可能となる。
【0053】
なお、図10ではロータ107を縦置きにし、ロータ107の左右方向から押切刃44をスライドさせてリベット111を切断し、ロータウェイト110aを除去するものを示したが、ロータ107を横向きに保持する保持台を設け、横向きになったロータ107の上下方向から押切刃44をスライドさせてリベット111を切断し、ロータウェイト110aを除去するようにしてもよい。その場合には、除去されたロータウェイト110aが下方に落下するので、ロータウェイト110aを所定の位置に落下させることができるので回収が容易になり、作業性を向上させることができる。
【0054】
解体装置40でリベット111が切断されたロータ107は、次に解体装置1から搬出される。解体装置1から搬出されたロータ107は、電磁鋼板108内から磁石109が取り出される。磁石109は、ロータ107を逆さにして振動を加えることで、容易に取り出すことができる。仮に電磁鋼板108が若干変形して磁石109が電磁鋼板108に引っかかる場合には、長尺状の治具等を磁石109の収容部に挿入させ押し出すことで容易に取り出すことができる。磁石109が取り出されたロータ107は、部品ごとに解体され材料別に回収される。
【0055】
図11は実施の形態1に係る解体装置にて処理されるロータの電磁鋼板の構成を示す図である。図11に示すように、ロータ107の電磁鋼板108は薄い板状部材が複数枚重ねられ、かしめ部113によって固定されて形成されている。かしめ部113は、電磁鋼板108の最上部から最下部のまでの部材をすべてかしめて固定している。このように、電磁鋼板108はかしめ部113によって一体に固定されているため、磁石109が取り出された後も原形は保った状態で回収することが可能であり、素材メーカ等に高品位の鉄として売却することができる。
【0056】
以上説明したように、本実施の形態に係る解体装置1は切断装置10、押し抜き装置20、脱磁装置30、解体装置40の順に圧縮機100を解体するものである。このような順番で解体することで、圧縮機100のモータ104に含まれる磁石109等の貴重な資源を他の材料と混同させることなく、効率よく回収することが可能となる。
【0057】
具体的には、始めに切断装置10で圧縮機100のモータ104等を露出させることで、モータ104のステータ106を取り除くことができると共に、次の押し抜き装置20にてシャフト105を外す処理が可能となる。次に、押し抜き装置20でシャフト105と圧縮室103をロータ107から外すことで、磁石109等の貴重な資源を有するロータ107を単品の状態にし、次の脱磁装置30にて効率よく脱磁処理を行うことができる。次に、脱磁装置30にてロータ107の磁石109を脱磁処理することで、最後の解体装置40にて磁石109の磁力に影響されずにロータ107を解体することができる。
【0058】
仮に、シャフト105と圧縮室103が付いた状態で脱磁処理を行うとすると、ロータ107単品の状態に比べ、大きくて重く、また圧縮室103に多くの潤滑油が付着しているため取り扱いが難しく作業性が悪化するおそれがある。また、シャフト105を外さずにロータ107から飛び出た部分のシャフト105を切断して解体を進めると、脱磁装置30における処理対象物は小さくなるものの、ロータ107の穴112にはシャフト105が焼きばめ接合されている状態のため、最後の解体装置40でリベット111を切断したとしてもロータ107を解体することが困難となる。さらに、磁石109の脱磁処理を行わずに解体装置40でリベット111の切断を行うと、押切刃44が磁石109の影響を受け正常にリベット111を切断することができず、電磁鋼板108や磁石109が変形してしまうおそれがある。
【0059】
切断装置10、押し抜き装置20、脱磁装置30、解体装置40の順に圧縮機100を解体することで、これらの弊害が発生することなく圧縮機100を効率よく解体することができ、ロータ107に含まれる磁石109等の貴重な資源を他の材料と混同させることなく、部品単位で回収することが可能となる。
【符号の説明】
【0060】
1 解体装置、10 切断装置(切断部)、13 カッター、15 回転台、17 カッター、20 押し抜き装置(押し抜き部)、22 ロータ受け台、23 押し棒、24 プレスシリンダー、30 脱磁装置(脱磁部)、31 支持台、32 交番減衰磁界脱磁コイル、40 解体装置(解体部)、42 保持台、44 押切刃、46 カバー、100 圧縮機、101 シェル部、102 マフラー部、103 圧縮室、104 モータ、105 シャフト、106 ステータ、107 ロータ、108 電磁鋼板、109 磁石、110a、110b ロータウェイト、111 リベット、112 穴、113 かしめ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータが内蔵された圧縮機の外郭を切断し除去する切断部と、
前記切断部で外郭が除去された圧縮機を載置し、前記モータのロータに接合された回転シャフトを該ロータから外す押し抜き部と、
前記押し抜き部で回転シャフトが外された前記ロータを載置し、前記ロータ内の磁石を脱磁する脱磁部と、
前記脱磁部で脱磁処理された前記ロータを載置し、前記ロータの電磁鋼板とロータウェイトとを固定しているリベットを切断して前記電磁鋼板と前記ロータウェイトとを分離させる解体部と、
を備えた圧縮機の解体装置。
【請求項2】
前記押し抜き部は、
前記ロータの側方に互いに対向する位置に設けられ、前記ロータに向かってスライドし前記ロータの下面を支持する一対のロータ受け台と、
前記回転シャフトの上方で且つ前記回転シャフトの軸線上に設けられ、前記回転シャフトの外径よりも小さい外径を有する押し棒と、
前記回転シャフトが前記ロータから外れる位置まで前記押し棒を下方に押し込むプレスシリンダーと、
を備えたことを特徴とする請求項1記載の圧縮機の解体装置。
【請求項3】
前記脱磁部は、
前記ロータの前記シャフトが取り付けられていた開口部に挿入される突起を有し、該突起を該開口部に挿入して前記ロータを支持する支持台と
前記支持台によって支持された前記ロータを囲うように設けられ、交番減衰磁界を発生させて前記磁石を脱磁する交番減衰磁界脱磁コイルと、
を備えたことを特徴とする請求項1または請求項2記載の圧縮機の解体装置。
【請求項4】
前記支持台は、前記磁石の長手方向が前記交番減衰磁界の向きに対して略並行となる向きに前記ロータを支持することを特徴とする請求項3記載の圧縮機の解体装置。
【請求項5】
前記支持台は、前記磁石の長手方向が前記交番減衰磁界の向きに対して略垂直となる向きに前記ロータを支持することを特徴とする請求項3記載の圧縮機の解体装置。
【請求項6】
前記脱磁部は、前記ロータを囲うように設けられ、高周波誘導加熱により前記磁石を脱磁する高周波誘導加熱コイルを備えたことを特徴とする請求項1または請求項2記載の圧縮機の解体装置。
【請求項7】
前記解体部は、
前記ロータの前記シャフトが取り付けられていた開口部に挿入される突起を有し、該突起を該開口部に挿入して前記ロータを保持する保持台と、
前記保持台によって保持された前記ロータの側方に互いに対向する位置に設けられ、前記ロータに向かって同時にスライドして前記リベットを切断する一対の押切刃と、
を備えたことを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれかに記載の圧縮機の解体装置。
【請求項8】
前記押切刃は、前記押切刃の先端が前記ロータの前記ロータウェイトと前記電磁鋼板との境界部分に当たる位置でスライドすることを特徴とする請求項7記載の圧縮機の解体装置。
【請求項9】
モータが内蔵された圧縮機の外郭を切断し除去する切断工程と、
前記切断工程後に、前記モータのロータを前記モータの回転シャフトから外す押し抜き工程と、
前記押し抜き工程後に、前記回転シャフトが外された前記ロータ内の磁石を脱磁する脱磁工程と、
前記脱磁工程後に、前記ロータの電磁鋼板とロータウェイトとを固定しているリベットを切断して前記電磁鋼板と前記ロータウェイトとを分離させる解体工程と、
を備えた圧縮機の解体方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−99714(P2013−99714A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−244435(P2011−244435)
【出願日】平成23年11月8日(2011.11.8)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】