圧縮空気噴射により記録媒体分離を行う定着装置及び画像形成装置
【課題】加圧ローラ表面を傷付けず、用紙に強い力を与えず、また加圧ローラ表面の傷跡が用紙に転写される画像障害を防ぎつつ、用紙の高い分離性を維持する。
【解決手段】本発明に従う定着装置25によれば、定着ベルト26と加圧ローラ27とのニップ部から搬送される記録媒体8に圧縮空気を噴射して加圧ローラ27から記録媒体を分離する複数のノズル34と、分離された記録媒体の搬送を行う複数の分離板36とが、加圧ローラの幅方向に並列に配列され、加圧ローラに対して非接触に加圧ローラ側に設けられる。
【解決手段】本発明に従う定着装置25によれば、定着ベルト26と加圧ローラ27とのニップ部から搬送される記録媒体8に圧縮空気を噴射して加圧ローラ27から記録媒体を分離する複数のノズル34と、分離された記録媒体の搬送を行う複数の分離板36とが、加圧ローラの幅方向に並列に配列され、加圧ローラに対して非接触に加圧ローラ側に設けられる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧縮空気噴射により記録媒体分離を行う定着装置及びこれを用いた複写機、ファクシミリ、プリンタなどの画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、これらの画像形成装置において、記録媒体(以下、「用紙」とも言う)に転写されたトナー像を定着させる装置として、ハロゲンヒータ等を内蔵した定着ローラと当該定着ローラを加圧する加圧ローラとで形成されたニップ部によって未定着トナー像を有した用紙を侠持・搬送しながら、加熱・加圧する熱ローラ定着方式が知られ、広く採用されている。
【0003】
また、無端状の定着ベルトを、ハロゲンヒータ等を内蔵した加熱ローラと定着ローラとで張架し、定着ベルトを介して定着ローラを加圧する加圧ローラと定着ベルトとによって形成されたニップ部によって未定着トナー像を有した用紙を侠持・搬送しながら、加熱・加圧するベルト定着方式も知られている。
【0004】
このようなベルト定着方式は、定着ベルトの熱容量が小さいのでウォーミングアップタイムを短縮することができ、省エネルギーになるという利点を有している。
【0005】
これらの定着方式では、用紙に融着したトナー画像が定着ローラ/定着ベルトに接触するので、定着ローラ/定着ベルトは、離型性に優れたフッ素系樹脂を表面にコーティングされ、また用紙分離のための分離爪が用いられている。
【0006】
分離爪の大きな欠点は、これがローラやベルトに接触するためにローラやベルトの表面に爪跡(爪傷)をつけ易く、その場合には出力された画像に筋が発生するということである。
一般的に、モノクロ画像形成装置の場合、定着ローラは金属ローラの表面にテフロン(登録商標)コーティングしたものであり、分離爪が接触しても傷が付き難く、寿命も長かった。
【0007】
しかしながら、カラー画像形成装置の場合には、色の発色性を良くするために、定着ローラは表層をシリコーンゴムにフッ素コートしたもの(一般的には数十ミクロン程度のPFAチューブを使用する)か、シリコーンゴムの表面にオイルを塗布したものを使用している。よって、このような構成では表層が軟らかく傷が付き易い。
【0008】
定着ローラなどの表層に傷が付くと定着画像に筋が生じることから、今ではカラー画像形成装置では分離爪のような接触手段はほとんど用いられず、大半は非接触分離が行われている。しかし、非接触分離では、トナーと定着ローラの粘着力が高いと定着後の用紙がローラに巻きつくため、巻き付きジャムが発生し易くなる。
特にカラー画像形成では、用紙には何層ものトナー層が積層されて粘着力が高まるため、巻き付きジャムが発生し易い。
【0009】
現在、カラー画像形成装置における用紙分離では主に次の方式が用いられている。
(1)定着ローラ/ベルトとの間に微小なギャップ(約0.2mm〜1.0mm)を開け、定着ローラ/定着ベルトの長手方向/幅方向に並行に延在する分離板を用いる非接触分離板方式
(2)定着ローラ/定着ベルトとの間に微小なギャップ(約0.2mm〜1.0mm)を開け、所定間隔で配された分離爪を用いる非接触分離爪方式
(3)用紙の腰の強さと定着ローラ/定着ベルトの湾曲部弾性とで自然に剥離させるようにしたセルフストリッピング方式
【0010】
しかしながら、いずれの方式でも、定着ローラ/ベルトと定着ニップ出口部にある用紙案内板との隙間が開いているため、薄紙や先端余白が少ない用紙を通紙するとき、あるいは写真等のベタ画像を通紙するときは、用紙が定着ローラ/定着ベルトに密着したまま隙間を通過して、用紙巻きつきジャムが発生したり、分離板や分離爪に突き当たってジャムが発生したりすることがある。
【0011】
そこで、非接触分離手段として、圧縮空気を用紙分離位置に吹き付ける「エアー分離」や、定着ニップ出口部において定着ベルトの内側にパッドを設け、セルフストリッピング方式をより強化した「剥離パッド方式」が提案され、使用に供されている。
【0012】
以上のような分離技術は、例えば特許文献1,2,3,4に開示されている。
特許文献1では、分離部材の先端部を薄く仕上げ、先端部に樹脂をインサート成型することで、非接触でありながら、接触方式に近い分離性を有する非接触分離爪方式の定着装置が提案されている。この定着装置では、図9に示すように、複数の分離板36を使用して用紙8の分離性を確保している。
【0013】
特許文献2では、図10に示すように、ノズル34から圧縮空気を用紙8と定着ローラ28の間に噴射することによって、用紙の分離が困難な場合(例えば、坪量の小さい用紙)でも用紙分離を行うことができる定着装置が提案されている。
【0014】
特許文献3では、分離部材よりも先端にノズルをつけて、分離が困難な場合(例えば、坪量の小さい用紙)でも分離を行うことができる定着装置が提案されている。
【0015】
特許文献4では、図11に示すように、定着ローラ28と加圧ローラ27のニップ部の下流側近傍にて、定着ベルト26の外表面を加圧ローラ27に押圧するように配置された剥離パッド32を設け、用紙の分離が困難な場合(例えば、坪量の小さい用紙)でも用紙分離を行うことができるベルト定着方式の定着装置が提案されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
しかし、ベルト定着方式の定着装置において加圧ローラに傷が付き、画像に筋が発生してしまうことがある。これを図12〜14の定着装置の模式図を用いて説明する。
図12に示すようなベルト定着装置での両面印刷時において、第一面に定着済み画像を載せた用紙8が加圧ローラ27側に搬送されて第二面を通紙される場合、用紙8は、定着ニップ出口通過後、図13に示すように加圧ローラ27に巻き付きながら搬送される。このとき、定着ニップ出口側には図14に示すような分離爪3が加圧ローラ27に接触して配置されており、用紙8はこの分離爪3によって加圧ローラ27から分離される。このような接触式分離方式は一般的なものである。
【0017】
しかし、加圧ローラ27に分離爪3が接触しているため、用紙8の分離性能は高いものの、加圧ローラ27表面が分離爪3によって傷付き易く、場合によっては加圧ローラ表面の傷跡が用紙に転写される画像障害が発生してしまう。また、分離爪3の用紙8に対する接触面積が狭いため、定着済み画像が分離爪3に接触した際に、用紙8が強い力を受けて、画像に傷や筋が生じてしまうことがある。
【0018】
そこで、本発明は、これらの問題を解決することができる定着装置及び画像形成装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記課題を解決するため、本発明に従う定着装置は、回転体である定着部材と、該定着部材に張架されて熱源からの熱を受けるベルト部材と、該ベルト部材を介して該定着部材に加圧される回転体である加圧部材とを有し、該定着部材と該加圧部材により形成されるニップ部に未定着トナーを担持した記録媒体を搬送して、トナー画像を該記録媒体に定着するものであって、前記ニップ部から搬送される前記記録媒体に圧縮空気を噴射して前記加圧部材から前記記録媒体を分離する複数のノズルと、分離された前記記録媒体の搬送を行う複数の分離板とが、前記加圧部材の幅方向に並列に配列され、前記加圧部材に対して非接触に前記加圧部材側に設けられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、分離爪の代わりにノズルを設置し、ノズルから噴射される圧縮空気により、加圧ローラに巻き付いている用紙を分離することができる。この際、複数のノズルと複数の分離板を加圧ローラの幅方向に並列に配置することにより、これらの用紙に対する接触面積が増え、従ってノズルと分離板が用紙に擦れる力が分散されて、画像への傷や筋の発生を防ぐことができる。さらに、ノズル及び分離爪は加圧ローラに接触していないため、加圧ローラの損耗を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係る画像形成装置の概略構成図である。
【図2】本発明に係るエアー分離板の概略斜視図である。
【図3】本発明に係るノズルの概略斜視図である。
【図4】本発明に係る非接触型分離板の概略斜視図である。
【図5】本発明に係るベルト定着方式の定着装置であって、両面印刷時における第二面通紙時を示す概略図である。
【図6】加圧ローラ側に搭載された本発明に係るエアー分離板の概略斜視図である。
【図7】両面印刷時における第二面通紙時の用紙分離を示す概略図である。
【図8】本発明に係るギャップ調整機構の概略構成図である。
【図9】従来のベルト定着方式(非接触型分離方式)の概略構成図である。
【図10】従来のベルト定着方式(エアー分離方式)の概略構成図である。
【図11】従来のベルト定着方式(剥離パッド方式)の概略構成図である。
【図12】従来のベルト定着方式(接触型分離方式)の両面印刷時における第二面通紙時を示す概略図である。
【図13】両面印刷時における第二面通紙時の用紙分離を示す概略図である。
【図14】従来の接触型分離爪の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照し、本発明の実施の形態について説明する。
図1は、本発明に係る画像形成装置を示すもので、タンデム型間接(中間)転写方式の複写機である。装置本体には、中央に、無端ベルト状の中間転写ベルト10が設けられている。中間転写ベルト10は、図1に示す通り、支持ローラ13、14、15、16に掛け回して、図中時計回りに回転搬送可能とする。
【0023】
この図示例では、支持ローラ15の左側に、画像転写後に中間転写ベルト10上に残留する残留トナーを除去する中間転写体クリーニング装置17を設けている。クリーニング部材にはウレタンなどのブレード状のものを用い、中間転写体回転方向に対しカウンター方向に当接している。ブレードにより回収されたトナーは、クリーニング装置内の搬送部材(図示せず)により装置奥側へ搬送され、重力などにより下方へ落下させることでトナー回収用ボトル(図示せず)へと収容される。トナー回収用ボトルには、回収トナー量を検知する手段が設けられており、満杯時には装置を停止させるなどでトナーが溢れる事態を防止している。
【0024】
また、中間転写ベルト10のベルト上辺上方には、その搬送方向に沿って、ブラック・マゼンタ・シアン・イエローの4つの画像形成手段が横に並べて配置されており、タンデム画像形成装置を構成している。タンデム画像形成装置の上方には、露光装置21が設けられている。
【0025】
一方、中間転写ベルト10のベルトループ下中央に配された支持ローラ16の対向側には、2次転写ローラ23が備えられている。2次転写ローラ23を備える2次転写装置の用紙搬送下流側には、転写用紙上の転写画像を定着する定着装置25が設けられている。定着装置25は、定着ベルト26に加圧ローラ27を押し当てて構成されている。
【0026】
不図示のスタートスイッチを押すと、不図示の駆動モータで支持ローラ14、15、16の1つを回転駆動して、支持ローラ13を含む他の支持ローラが従動回転し、中間転写ベルト10を回転搬送する。同時に個々の画像形成手段において、その感光体40を回転し、各感光体40上にそれぞれ、ブラック・マゼンタ・シアン・イエローの単色画像を形成する。そして、中間転写ベルト10のベルト移動に伴って、それら単色画像を順次転写して中間転写ベルト10上に合成カラー画像を形成する。
【0027】
他方、スタートスイッチを押すことにより、給紙装置の給紙ローラ42の1つを選択回転し、ペーパーバンクに多段に備えられた給紙カセット44の1つから転写用紙を繰り出し、分離ローラ45で1枚ずつ分離して給紙路に入れ、搬送ローラ47で搬送して複写機本体内の給紙路に導き、レジストローラ48に突き当てて止める。そして、中間転写ベルト10上の合成カラー画像にタイミングを合わせてレジストローラ48を回転し、中間転写ベルト10と2次転写ローラ23との間に用紙を送り込み、2次転写ローラ23で転写して用紙上にカラー画像を記録する。
【0028】
画像転写後の用紙は、2次転写装置のベルト24で搬送して定着装置25へと送り込み、そこで熱と圧力とを加えて転写画像を定着した後、排出ローラ49で排出し、排紙トレイ上にスタックする。一方、画像転写後の中間転写ベルト10は、中間転写体クリーニング装置17で、画像転写後にベルト上に残留する残留トナーを除去し、タンデム画像形成装置による再度の画像形成に備えられる。
【0029】
次に、本発明の定着装置の実施例を図2〜8に基づいて説明する。
図5は、本発明に係るベルト定着方式の定着装置であって、両面印刷時における第二面通紙時を示す概略図である。図5に示すようなベルト定着装置25においては、ベルト部材としての定着ベルト26は、駆動ローラである定着部材としての定着ローラ28と従動ローラである加熱ローラ31に支持・張架されている。定着ベルト26は、定着ローラ28が図示しない駆動機構で回転駆動されることにより回転走行する。
【0030】
加圧ローラ27は、定着ベルト26を介して定着ローラ28と対峙して設けられており、図示しない加圧機構によって、定着ベルト26を介して定着ローラ28に加圧されるようになっている。そして、加圧ローラ27と定着ベルト26によりニップ部が形成される。
【0031】
加熱ローラ31の内部には熱源としての定着ヒータ29が設けられ、この定着ヒータ29により加熱ローラ31が加熱されて、定着ベルト26が加熱ローラ31により加熱される。また、定着ベルト26の内側に設けられたテンションローラ30により、定着ベルト26の加熱ローラ31への接触面積を大きくすることができ、より多くの熱を加熱ローラ31から定着ベルト26へと伝えることができる。定着ベルト26が回転走行するとき、加圧ローラ27も定着ベルト26に連れ回りする。なお、加圧ローラ27に駆動を掛けてもよい。
【0032】
本実施例では、定着ベルト26と加圧ローラ27のニップ部下流側に、定着ベルト26の外表面を加圧ローラ27に押圧させる用紙分離補助部材としての剥離パッド32が、定着ベルト26の内側に設けられている。剥離パッド32は、例えばSUSの金属や樹脂等の剛体で形成された断面が略円弧形状のブロック部材である。剥離パッド32は、ニップ部の下流側近傍位置において定着ローラ28の軸方向全域にわたって固定配置され、また定着ベルト26を介して加圧ローラ27を所定の幅領域にわたって所定の荷重で均一に押圧するように設置されている。このように剥離パッド32を配設し、ニップ部下流部での定着ベルト26の進行方向を急激に変化させることにより、定着ベルト26側の用紙分離性を向上させている。
【0033】
定着ベルト26の表面温度は、図示しない温度検知素子により検知され、図示しない温度制御部が、その温度検知素子の出力値に基づいて、定着ベルト26の表面温度が所定の設定温度になるように定着ヒータ29を制御する。
【0034】
未定着トナー像を担持した用紙8は、定着装置25に搬入されて定着ベルト26と加圧ローラ27とのニップ部を通過し、その際、所定の温度に制御されているニップ部でトナー像が溶融定着される。その後、用紙8は装置本体外に送り出される。
【0035】
また、ニップ部の上流側には用紙8のための入口ガイド4が設けられ、ニップ部の下流側には用紙8のための出口ガイド5,6が設けられている。
【0036】
図6に示すように、以上のような構成を有する定着装置25のニップ部下流側に、ノズル34と分離板36を備えたエアー分離板33を、加圧ローラ27に対して非接触に加圧ローラ27側に配置する。ここで、図3,4にも示すように、ノズル34と分離板36の底部は平坦な矩形状を有しており、互いに密接することができる。図6に示すように、ノズル34と分離板36は、互いに密に敷き詰められて加圧ローラ27の幅方向に並列に配置されている。これにより、ノズル34と分離板36の用紙8への接触面積を増やすことができる。また、ノズル34及び分離板36を同じ長さに構成し、用紙8と接触するそれらの先端部の位置を揃えている。従って、ノズル34及び分離板36が用紙8に擦れる力が一点に集中することなく分散されて、画像への傷や筋の発生を防ぐことができる。また、ノズル34及び分離板36は加圧ローラ27に接触していないため、加圧ローラ27の損耗を防ぐことができる。
【0037】
また、複数個のノズル34と複数個の分離板36は支持部材としての同一のステー38(図2)に取り付けられ、加圧ローラ27と非接触に支持されている。また、ステー38両端の通紙領域外には、突き当て板39が設置されており、図示のように突き当て部材としての突き当て板39は加圧ローラ27の非画像領域に接触して、接触状態で摺動する。よって、加圧ローラ27の画像領域での損耗を防ぐことができるとともに、加圧ローラ27とノズル34及び分離板36のギャップを安定的に維持することができる。そして図7に示すように、ニップ部通過後の用紙8はノズル34から噴射される圧縮空気により分離され、分離された用紙8は分離板36により搬送される。
【0038】
本実施例のように、ノズル34と分離板36を取り付けたステー38を加圧ローラ27側に設置する場合、両面印刷時のみにノズル34から圧縮空気を噴射することにより、片面印刷時において定着ローラ28側の用紙分離に外乱を与えずにすみ、かつ圧縮空気を節約することができる。言い換えれば、用紙8が定着ローラ28側のみにトナー画像を担持している場合は、圧縮空気は噴射されないと好ましい。
【0039】
ここで、ノズル及び分離板の表面にフッ素樹脂をコーティングするか、ノズル及び分離板をフッ素樹脂から構成すると好ましい。このように分離板及びノズルの表面や材質自体を構成して、トナーとの離型性を良くすることにより、画像表面が分離板やノズルに接触した場合でも画像異常を発生し難くすることができる。
【0040】
また、加圧ローラ27に対するノズル34と分離板36のギャップを調整するために、少なくとも1つのノズル34と分離板36には、図8に示すようなギャップ調整機構35が設けられている。ギャップ調整機構35は、ノズル34と分離板36をステー38に位置決めするためのねじ機構としてのねじ53、該ステー38と該ねじ53の間に付勢力を持って介入された付勢部材としてのばね51、該ばね51の付勢力によってノズル34と分離板36が回動するためのステー回転軸55を有している。
【0041】
ねじ53をねじ軸時計回りに廻すとねじが締め込まれ、ノズル34と分離板36はステー回転軸55を中心に図中反時計回りに回転する。従って、このギャップ調整機構35により、加圧ローラ27に対するノズル34と分離板36のギャップの微調整が可能となる。ここで、加圧ローラ27に対するノズル34と分離板36のギャップは、薄紙のための分離性を確保するために狭くする必要があり、0.1〜0.3mm程度に設定している。
【0042】
このように、分離板及びノズルの加圧ローラとのギャップを微調整する機構を用いることにより、最高の分離性が得られる最適なギャップに調整することが可能である。
【0043】
本発明に従う画像形成装置は前記定着装置を用いると好ましく、互いに密に敷き詰められかつ加圧ローラと非接触に加圧ローラ側に配置されたノズルと分離板を用いて、圧縮空気の噴射により用紙と加圧ローラを分離することで、両面印刷時でもトナー画像を担持した用紙を異常なく安定して搬送することが可能となる。
【0044】
なお、本発明の定着装置は、定着部材としての定着ローラと、加圧ローラなどを有するローラ定着装置として構成されてもよい。
また、図5,7にも示されているように、分離された用紙8を搬送するための別な分離板が、ニップ部下流側において定着ベルト26側にも設けられてもよい。
【0045】
以上のように、本発明に従う定着装置では、加圧ローラ27に巻き付いた用紙8を分離するために、図3に示すようなノズル34と図4に示すような分離板36とを装着した図2に示すようなエアー分離板33を、加圧ローラ27に対して非接触に加圧ローラ27側に装着することにより、加圧ローラ27を傷付けることなく、用紙の高い分離性を確保しつつ、画像への傷や筋の発生を防ぐことができる。
【符号の説明】
【0046】
8 記録媒体(用紙)
26 定着ベルト(ベルト部材)
27 加圧ローラ(加圧部材)
28 定着ローラ(定着部材)
32 剥離パッド(用紙分離補助部材)
34 ノズル
36 分離板
38 ステー(支持部材)
39 突き当て板(突き当て部材)
51 圧縮ばね(付勢部材)
53 ねじ(ねじ機構)
55 ステー回転軸(回転軸)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0047】
【特許文献1】特開2009−31759号公報
【特許文献2】特開昭61−59468号公報
【特許文献3】特開2009−271115号公報
【特許文献4】特開2007−57682号公報
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧縮空気噴射により記録媒体分離を行う定着装置及びこれを用いた複写機、ファクシミリ、プリンタなどの画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、これらの画像形成装置において、記録媒体(以下、「用紙」とも言う)に転写されたトナー像を定着させる装置として、ハロゲンヒータ等を内蔵した定着ローラと当該定着ローラを加圧する加圧ローラとで形成されたニップ部によって未定着トナー像を有した用紙を侠持・搬送しながら、加熱・加圧する熱ローラ定着方式が知られ、広く採用されている。
【0003】
また、無端状の定着ベルトを、ハロゲンヒータ等を内蔵した加熱ローラと定着ローラとで張架し、定着ベルトを介して定着ローラを加圧する加圧ローラと定着ベルトとによって形成されたニップ部によって未定着トナー像を有した用紙を侠持・搬送しながら、加熱・加圧するベルト定着方式も知られている。
【0004】
このようなベルト定着方式は、定着ベルトの熱容量が小さいのでウォーミングアップタイムを短縮することができ、省エネルギーになるという利点を有している。
【0005】
これらの定着方式では、用紙に融着したトナー画像が定着ローラ/定着ベルトに接触するので、定着ローラ/定着ベルトは、離型性に優れたフッ素系樹脂を表面にコーティングされ、また用紙分離のための分離爪が用いられている。
【0006】
分離爪の大きな欠点は、これがローラやベルトに接触するためにローラやベルトの表面に爪跡(爪傷)をつけ易く、その場合には出力された画像に筋が発生するということである。
一般的に、モノクロ画像形成装置の場合、定着ローラは金属ローラの表面にテフロン(登録商標)コーティングしたものであり、分離爪が接触しても傷が付き難く、寿命も長かった。
【0007】
しかしながら、カラー画像形成装置の場合には、色の発色性を良くするために、定着ローラは表層をシリコーンゴムにフッ素コートしたもの(一般的には数十ミクロン程度のPFAチューブを使用する)か、シリコーンゴムの表面にオイルを塗布したものを使用している。よって、このような構成では表層が軟らかく傷が付き易い。
【0008】
定着ローラなどの表層に傷が付くと定着画像に筋が生じることから、今ではカラー画像形成装置では分離爪のような接触手段はほとんど用いられず、大半は非接触分離が行われている。しかし、非接触分離では、トナーと定着ローラの粘着力が高いと定着後の用紙がローラに巻きつくため、巻き付きジャムが発生し易くなる。
特にカラー画像形成では、用紙には何層ものトナー層が積層されて粘着力が高まるため、巻き付きジャムが発生し易い。
【0009】
現在、カラー画像形成装置における用紙分離では主に次の方式が用いられている。
(1)定着ローラ/ベルトとの間に微小なギャップ(約0.2mm〜1.0mm)を開け、定着ローラ/定着ベルトの長手方向/幅方向に並行に延在する分離板を用いる非接触分離板方式
(2)定着ローラ/定着ベルトとの間に微小なギャップ(約0.2mm〜1.0mm)を開け、所定間隔で配された分離爪を用いる非接触分離爪方式
(3)用紙の腰の強さと定着ローラ/定着ベルトの湾曲部弾性とで自然に剥離させるようにしたセルフストリッピング方式
【0010】
しかしながら、いずれの方式でも、定着ローラ/ベルトと定着ニップ出口部にある用紙案内板との隙間が開いているため、薄紙や先端余白が少ない用紙を通紙するとき、あるいは写真等のベタ画像を通紙するときは、用紙が定着ローラ/定着ベルトに密着したまま隙間を通過して、用紙巻きつきジャムが発生したり、分離板や分離爪に突き当たってジャムが発生したりすることがある。
【0011】
そこで、非接触分離手段として、圧縮空気を用紙分離位置に吹き付ける「エアー分離」や、定着ニップ出口部において定着ベルトの内側にパッドを設け、セルフストリッピング方式をより強化した「剥離パッド方式」が提案され、使用に供されている。
【0012】
以上のような分離技術は、例えば特許文献1,2,3,4に開示されている。
特許文献1では、分離部材の先端部を薄く仕上げ、先端部に樹脂をインサート成型することで、非接触でありながら、接触方式に近い分離性を有する非接触分離爪方式の定着装置が提案されている。この定着装置では、図9に示すように、複数の分離板36を使用して用紙8の分離性を確保している。
【0013】
特許文献2では、図10に示すように、ノズル34から圧縮空気を用紙8と定着ローラ28の間に噴射することによって、用紙の分離が困難な場合(例えば、坪量の小さい用紙)でも用紙分離を行うことができる定着装置が提案されている。
【0014】
特許文献3では、分離部材よりも先端にノズルをつけて、分離が困難な場合(例えば、坪量の小さい用紙)でも分離を行うことができる定着装置が提案されている。
【0015】
特許文献4では、図11に示すように、定着ローラ28と加圧ローラ27のニップ部の下流側近傍にて、定着ベルト26の外表面を加圧ローラ27に押圧するように配置された剥離パッド32を設け、用紙の分離が困難な場合(例えば、坪量の小さい用紙)でも用紙分離を行うことができるベルト定着方式の定着装置が提案されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
しかし、ベルト定着方式の定着装置において加圧ローラに傷が付き、画像に筋が発生してしまうことがある。これを図12〜14の定着装置の模式図を用いて説明する。
図12に示すようなベルト定着装置での両面印刷時において、第一面に定着済み画像を載せた用紙8が加圧ローラ27側に搬送されて第二面を通紙される場合、用紙8は、定着ニップ出口通過後、図13に示すように加圧ローラ27に巻き付きながら搬送される。このとき、定着ニップ出口側には図14に示すような分離爪3が加圧ローラ27に接触して配置されており、用紙8はこの分離爪3によって加圧ローラ27から分離される。このような接触式分離方式は一般的なものである。
【0017】
しかし、加圧ローラ27に分離爪3が接触しているため、用紙8の分離性能は高いものの、加圧ローラ27表面が分離爪3によって傷付き易く、場合によっては加圧ローラ表面の傷跡が用紙に転写される画像障害が発生してしまう。また、分離爪3の用紙8に対する接触面積が狭いため、定着済み画像が分離爪3に接触した際に、用紙8が強い力を受けて、画像に傷や筋が生じてしまうことがある。
【0018】
そこで、本発明は、これらの問題を解決することができる定着装置及び画像形成装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記課題を解決するため、本発明に従う定着装置は、回転体である定着部材と、該定着部材に張架されて熱源からの熱を受けるベルト部材と、該ベルト部材を介して該定着部材に加圧される回転体である加圧部材とを有し、該定着部材と該加圧部材により形成されるニップ部に未定着トナーを担持した記録媒体を搬送して、トナー画像を該記録媒体に定着するものであって、前記ニップ部から搬送される前記記録媒体に圧縮空気を噴射して前記加圧部材から前記記録媒体を分離する複数のノズルと、分離された前記記録媒体の搬送を行う複数の分離板とが、前記加圧部材の幅方向に並列に配列され、前記加圧部材に対して非接触に前記加圧部材側に設けられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、分離爪の代わりにノズルを設置し、ノズルから噴射される圧縮空気により、加圧ローラに巻き付いている用紙を分離することができる。この際、複数のノズルと複数の分離板を加圧ローラの幅方向に並列に配置することにより、これらの用紙に対する接触面積が増え、従ってノズルと分離板が用紙に擦れる力が分散されて、画像への傷や筋の発生を防ぐことができる。さらに、ノズル及び分離爪は加圧ローラに接触していないため、加圧ローラの損耗を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係る画像形成装置の概略構成図である。
【図2】本発明に係るエアー分離板の概略斜視図である。
【図3】本発明に係るノズルの概略斜視図である。
【図4】本発明に係る非接触型分離板の概略斜視図である。
【図5】本発明に係るベルト定着方式の定着装置であって、両面印刷時における第二面通紙時を示す概略図である。
【図6】加圧ローラ側に搭載された本発明に係るエアー分離板の概略斜視図である。
【図7】両面印刷時における第二面通紙時の用紙分離を示す概略図である。
【図8】本発明に係るギャップ調整機構の概略構成図である。
【図9】従来のベルト定着方式(非接触型分離方式)の概略構成図である。
【図10】従来のベルト定着方式(エアー分離方式)の概略構成図である。
【図11】従来のベルト定着方式(剥離パッド方式)の概略構成図である。
【図12】従来のベルト定着方式(接触型分離方式)の両面印刷時における第二面通紙時を示す概略図である。
【図13】両面印刷時における第二面通紙時の用紙分離を示す概略図である。
【図14】従来の接触型分離爪の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照し、本発明の実施の形態について説明する。
図1は、本発明に係る画像形成装置を示すもので、タンデム型間接(中間)転写方式の複写機である。装置本体には、中央に、無端ベルト状の中間転写ベルト10が設けられている。中間転写ベルト10は、図1に示す通り、支持ローラ13、14、15、16に掛け回して、図中時計回りに回転搬送可能とする。
【0023】
この図示例では、支持ローラ15の左側に、画像転写後に中間転写ベルト10上に残留する残留トナーを除去する中間転写体クリーニング装置17を設けている。クリーニング部材にはウレタンなどのブレード状のものを用い、中間転写体回転方向に対しカウンター方向に当接している。ブレードにより回収されたトナーは、クリーニング装置内の搬送部材(図示せず)により装置奥側へ搬送され、重力などにより下方へ落下させることでトナー回収用ボトル(図示せず)へと収容される。トナー回収用ボトルには、回収トナー量を検知する手段が設けられており、満杯時には装置を停止させるなどでトナーが溢れる事態を防止している。
【0024】
また、中間転写ベルト10のベルト上辺上方には、その搬送方向に沿って、ブラック・マゼンタ・シアン・イエローの4つの画像形成手段が横に並べて配置されており、タンデム画像形成装置を構成している。タンデム画像形成装置の上方には、露光装置21が設けられている。
【0025】
一方、中間転写ベルト10のベルトループ下中央に配された支持ローラ16の対向側には、2次転写ローラ23が備えられている。2次転写ローラ23を備える2次転写装置の用紙搬送下流側には、転写用紙上の転写画像を定着する定着装置25が設けられている。定着装置25は、定着ベルト26に加圧ローラ27を押し当てて構成されている。
【0026】
不図示のスタートスイッチを押すと、不図示の駆動モータで支持ローラ14、15、16の1つを回転駆動して、支持ローラ13を含む他の支持ローラが従動回転し、中間転写ベルト10を回転搬送する。同時に個々の画像形成手段において、その感光体40を回転し、各感光体40上にそれぞれ、ブラック・マゼンタ・シアン・イエローの単色画像を形成する。そして、中間転写ベルト10のベルト移動に伴って、それら単色画像を順次転写して中間転写ベルト10上に合成カラー画像を形成する。
【0027】
他方、スタートスイッチを押すことにより、給紙装置の給紙ローラ42の1つを選択回転し、ペーパーバンクに多段に備えられた給紙カセット44の1つから転写用紙を繰り出し、分離ローラ45で1枚ずつ分離して給紙路に入れ、搬送ローラ47で搬送して複写機本体内の給紙路に導き、レジストローラ48に突き当てて止める。そして、中間転写ベルト10上の合成カラー画像にタイミングを合わせてレジストローラ48を回転し、中間転写ベルト10と2次転写ローラ23との間に用紙を送り込み、2次転写ローラ23で転写して用紙上にカラー画像を記録する。
【0028】
画像転写後の用紙は、2次転写装置のベルト24で搬送して定着装置25へと送り込み、そこで熱と圧力とを加えて転写画像を定着した後、排出ローラ49で排出し、排紙トレイ上にスタックする。一方、画像転写後の中間転写ベルト10は、中間転写体クリーニング装置17で、画像転写後にベルト上に残留する残留トナーを除去し、タンデム画像形成装置による再度の画像形成に備えられる。
【0029】
次に、本発明の定着装置の実施例を図2〜8に基づいて説明する。
図5は、本発明に係るベルト定着方式の定着装置であって、両面印刷時における第二面通紙時を示す概略図である。図5に示すようなベルト定着装置25においては、ベルト部材としての定着ベルト26は、駆動ローラである定着部材としての定着ローラ28と従動ローラである加熱ローラ31に支持・張架されている。定着ベルト26は、定着ローラ28が図示しない駆動機構で回転駆動されることにより回転走行する。
【0030】
加圧ローラ27は、定着ベルト26を介して定着ローラ28と対峙して設けられており、図示しない加圧機構によって、定着ベルト26を介して定着ローラ28に加圧されるようになっている。そして、加圧ローラ27と定着ベルト26によりニップ部が形成される。
【0031】
加熱ローラ31の内部には熱源としての定着ヒータ29が設けられ、この定着ヒータ29により加熱ローラ31が加熱されて、定着ベルト26が加熱ローラ31により加熱される。また、定着ベルト26の内側に設けられたテンションローラ30により、定着ベルト26の加熱ローラ31への接触面積を大きくすることができ、より多くの熱を加熱ローラ31から定着ベルト26へと伝えることができる。定着ベルト26が回転走行するとき、加圧ローラ27も定着ベルト26に連れ回りする。なお、加圧ローラ27に駆動を掛けてもよい。
【0032】
本実施例では、定着ベルト26と加圧ローラ27のニップ部下流側に、定着ベルト26の外表面を加圧ローラ27に押圧させる用紙分離補助部材としての剥離パッド32が、定着ベルト26の内側に設けられている。剥離パッド32は、例えばSUSの金属や樹脂等の剛体で形成された断面が略円弧形状のブロック部材である。剥離パッド32は、ニップ部の下流側近傍位置において定着ローラ28の軸方向全域にわたって固定配置され、また定着ベルト26を介して加圧ローラ27を所定の幅領域にわたって所定の荷重で均一に押圧するように設置されている。このように剥離パッド32を配設し、ニップ部下流部での定着ベルト26の進行方向を急激に変化させることにより、定着ベルト26側の用紙分離性を向上させている。
【0033】
定着ベルト26の表面温度は、図示しない温度検知素子により検知され、図示しない温度制御部が、その温度検知素子の出力値に基づいて、定着ベルト26の表面温度が所定の設定温度になるように定着ヒータ29を制御する。
【0034】
未定着トナー像を担持した用紙8は、定着装置25に搬入されて定着ベルト26と加圧ローラ27とのニップ部を通過し、その際、所定の温度に制御されているニップ部でトナー像が溶融定着される。その後、用紙8は装置本体外に送り出される。
【0035】
また、ニップ部の上流側には用紙8のための入口ガイド4が設けられ、ニップ部の下流側には用紙8のための出口ガイド5,6が設けられている。
【0036】
図6に示すように、以上のような構成を有する定着装置25のニップ部下流側に、ノズル34と分離板36を備えたエアー分離板33を、加圧ローラ27に対して非接触に加圧ローラ27側に配置する。ここで、図3,4にも示すように、ノズル34と分離板36の底部は平坦な矩形状を有しており、互いに密接することができる。図6に示すように、ノズル34と分離板36は、互いに密に敷き詰められて加圧ローラ27の幅方向に並列に配置されている。これにより、ノズル34と分離板36の用紙8への接触面積を増やすことができる。また、ノズル34及び分離板36を同じ長さに構成し、用紙8と接触するそれらの先端部の位置を揃えている。従って、ノズル34及び分離板36が用紙8に擦れる力が一点に集中することなく分散されて、画像への傷や筋の発生を防ぐことができる。また、ノズル34及び分離板36は加圧ローラ27に接触していないため、加圧ローラ27の損耗を防ぐことができる。
【0037】
また、複数個のノズル34と複数個の分離板36は支持部材としての同一のステー38(図2)に取り付けられ、加圧ローラ27と非接触に支持されている。また、ステー38両端の通紙領域外には、突き当て板39が設置されており、図示のように突き当て部材としての突き当て板39は加圧ローラ27の非画像領域に接触して、接触状態で摺動する。よって、加圧ローラ27の画像領域での損耗を防ぐことができるとともに、加圧ローラ27とノズル34及び分離板36のギャップを安定的に維持することができる。そして図7に示すように、ニップ部通過後の用紙8はノズル34から噴射される圧縮空気により分離され、分離された用紙8は分離板36により搬送される。
【0038】
本実施例のように、ノズル34と分離板36を取り付けたステー38を加圧ローラ27側に設置する場合、両面印刷時のみにノズル34から圧縮空気を噴射することにより、片面印刷時において定着ローラ28側の用紙分離に外乱を与えずにすみ、かつ圧縮空気を節約することができる。言い換えれば、用紙8が定着ローラ28側のみにトナー画像を担持している場合は、圧縮空気は噴射されないと好ましい。
【0039】
ここで、ノズル及び分離板の表面にフッ素樹脂をコーティングするか、ノズル及び分離板をフッ素樹脂から構成すると好ましい。このように分離板及びノズルの表面や材質自体を構成して、トナーとの離型性を良くすることにより、画像表面が分離板やノズルに接触した場合でも画像異常を発生し難くすることができる。
【0040】
また、加圧ローラ27に対するノズル34と分離板36のギャップを調整するために、少なくとも1つのノズル34と分離板36には、図8に示すようなギャップ調整機構35が設けられている。ギャップ調整機構35は、ノズル34と分離板36をステー38に位置決めするためのねじ機構としてのねじ53、該ステー38と該ねじ53の間に付勢力を持って介入された付勢部材としてのばね51、該ばね51の付勢力によってノズル34と分離板36が回動するためのステー回転軸55を有している。
【0041】
ねじ53をねじ軸時計回りに廻すとねじが締め込まれ、ノズル34と分離板36はステー回転軸55を中心に図中反時計回りに回転する。従って、このギャップ調整機構35により、加圧ローラ27に対するノズル34と分離板36のギャップの微調整が可能となる。ここで、加圧ローラ27に対するノズル34と分離板36のギャップは、薄紙のための分離性を確保するために狭くする必要があり、0.1〜0.3mm程度に設定している。
【0042】
このように、分離板及びノズルの加圧ローラとのギャップを微調整する機構を用いることにより、最高の分離性が得られる最適なギャップに調整することが可能である。
【0043】
本発明に従う画像形成装置は前記定着装置を用いると好ましく、互いに密に敷き詰められかつ加圧ローラと非接触に加圧ローラ側に配置されたノズルと分離板を用いて、圧縮空気の噴射により用紙と加圧ローラを分離することで、両面印刷時でもトナー画像を担持した用紙を異常なく安定して搬送することが可能となる。
【0044】
なお、本発明の定着装置は、定着部材としての定着ローラと、加圧ローラなどを有するローラ定着装置として構成されてもよい。
また、図5,7にも示されているように、分離された用紙8を搬送するための別な分離板が、ニップ部下流側において定着ベルト26側にも設けられてもよい。
【0045】
以上のように、本発明に従う定着装置では、加圧ローラ27に巻き付いた用紙8を分離するために、図3に示すようなノズル34と図4に示すような分離板36とを装着した図2に示すようなエアー分離板33を、加圧ローラ27に対して非接触に加圧ローラ27側に装着することにより、加圧ローラ27を傷付けることなく、用紙の高い分離性を確保しつつ、画像への傷や筋の発生を防ぐことができる。
【符号の説明】
【0046】
8 記録媒体(用紙)
26 定着ベルト(ベルト部材)
27 加圧ローラ(加圧部材)
28 定着ローラ(定着部材)
32 剥離パッド(用紙分離補助部材)
34 ノズル
36 分離板
38 ステー(支持部材)
39 突き当て板(突き当て部材)
51 圧縮ばね(付勢部材)
53 ねじ(ねじ機構)
55 ステー回転軸(回転軸)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0047】
【特許文献1】特開2009−31759号公報
【特許文献2】特開昭61−59468号公報
【特許文献3】特開2009−271115号公報
【特許文献4】特開2007−57682号公報
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転体である定着部材と、該定着部材に張架されて熱源からの熱を受けるベルト部材と、該ベルト部材を介して該定着部材に加圧される回転体である加圧部材とを有し、該ベルト部材と該加圧部材により形成されるニップ部に未定着トナーを担持した記録媒体を搬送して、トナー画像を該記録媒体に定着する定着装置において、
前記ニップ部から搬送される前記記録媒体に圧縮空気を噴射して前記加圧部材から前記記録媒体を分離する複数のノズルと、分離された前記記録媒体の搬送を行う複数の分離板とが、前記加圧部材の幅方向に並列に配列され、前記加圧部材に対して非接触に前記加圧部材側に設けられることを特徴とする定着装置。
【請求項2】
前記ノズルと前記分離板は同一の支持部材に支持され、該支持部材の両端の突き当て部材が前記加圧部材の非画像領域に接触していることを特徴とする請求項1に記載の定着装置。
【請求項3】
少なくとも1つの前記分離板及び前記ノズルが、前記加圧部材に対する前記ノズルと前記分離板のギャップを調整することができるギャップ調整機構を有し、
該ギャップ調整機構は、前記ノズルと前記分離板を前記支持部材に対して位置決めするためのねじ機構と、該ねじ機構と前記支持部材の間に付勢力を持って介入された付勢部材と、該付勢部材からの付勢力によって前記ノズルと前記分離板が回動するための回転軸と、を有することを特徴とする請求項2に記載の定着装置。
【請求項4】
前記記録媒体が前記定着部材側のみにトナー画像を担持している場合、前記ノズルから圧縮空気は噴射されないことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の定着装置。
【請求項5】
前記ニップ部の下流側において、前記ベルト部材の外表面を前記加圧部材に押圧させる用紙分離補助部材が、前記ベルト部材の内側に設けられることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の定着装置。
【請求項6】
前記ノズル及び前記分離板の表面にフッ素樹脂をコーティングしたことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の定着装置。
【請求項7】
前記ノズル及び前記分離板をフッ素樹脂から構成することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の定着装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の定着装置を備えた画像形成装置。
【請求項1】
回転体である定着部材と、該定着部材に張架されて熱源からの熱を受けるベルト部材と、該ベルト部材を介して該定着部材に加圧される回転体である加圧部材とを有し、該ベルト部材と該加圧部材により形成されるニップ部に未定着トナーを担持した記録媒体を搬送して、トナー画像を該記録媒体に定着する定着装置において、
前記ニップ部から搬送される前記記録媒体に圧縮空気を噴射して前記加圧部材から前記記録媒体を分離する複数のノズルと、分離された前記記録媒体の搬送を行う複数の分離板とが、前記加圧部材の幅方向に並列に配列され、前記加圧部材に対して非接触に前記加圧部材側に設けられることを特徴とする定着装置。
【請求項2】
前記ノズルと前記分離板は同一の支持部材に支持され、該支持部材の両端の突き当て部材が前記加圧部材の非画像領域に接触していることを特徴とする請求項1に記載の定着装置。
【請求項3】
少なくとも1つの前記分離板及び前記ノズルが、前記加圧部材に対する前記ノズルと前記分離板のギャップを調整することができるギャップ調整機構を有し、
該ギャップ調整機構は、前記ノズルと前記分離板を前記支持部材に対して位置決めするためのねじ機構と、該ねじ機構と前記支持部材の間に付勢力を持って介入された付勢部材と、該付勢部材からの付勢力によって前記ノズルと前記分離板が回動するための回転軸と、を有することを特徴とする請求項2に記載の定着装置。
【請求項4】
前記記録媒体が前記定着部材側のみにトナー画像を担持している場合、前記ノズルから圧縮空気は噴射されないことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の定着装置。
【請求項5】
前記ニップ部の下流側において、前記ベルト部材の外表面を前記加圧部材に押圧させる用紙分離補助部材が、前記ベルト部材の内側に設けられることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の定着装置。
【請求項6】
前記ノズル及び前記分離板の表面にフッ素樹脂をコーティングしたことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の定着装置。
【請求項7】
前記ノズル及び前記分離板をフッ素樹脂から構成することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の定着装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の定着装置を備えた画像形成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2013−97098(P2013−97098A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−238591(P2011−238591)
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
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