説明

圧縮空気泡装置

【課題】消火液、水及び空気が均一に混合され、効果的な泡生成が可能な圧縮空気泡装置の提供。
【解決手段】この泡装置17は、消防自動車10に搭載される。泡装置17は、ケーシング71、水供給部72、消火液供給部73、吐出部74及び圧縮空気供給部75を備えている。ケーシング71は、混合室76を備えている。混合室76内で消火用水、消火液及び空気が同時に混合する。消火用水、消火液及び空気は、互いに直交して混ざり合う。混合室76の出口近傍に攪拌部材85が設けられている。攪拌部材85は、2枚の攪拌円盤86、87を備えている。攪拌円盤86、87は、消火用水及び消火液からなる混合液に空気を均一に混ぜる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水、空気及び消火液を混合して消火用泡を生成する装置の構造に関するものである。また、本発明は、この装置が搭載された消防自動車に関するものである。
【背景技術】
【0002】
いわゆる油火災等に対する消火手段として、従来から泡消火方法が知られている。泡消火方法は、例えばフッ素系界面活性剤(消火液)が水及び空気と混合されることにより泡が生成され、これが火元に放射される。そして、泡の皮膜による窒息効果と冷却効果により消火が行われる。
【0003】
消火用の泡は、従来から圧縮空気泡装置によって生成される(特許文献1参照)。従来の圧縮空気泡装置は、所定の泡生成室を備えており、この泡生成室の内部に平板が配置されている。泡生成室には、泡原液供給路及び空気供給路が接続されている。予め水と消火液とが混合された泡原液が泡原液供給路を通じて泡生成室に送り込まれる。また、空気供給路を通じて泡生成室に空気が供給される。空気と混合した泡原液が上記平板に衝突し、これにより、泡が発生するようになっている。
【0004】
【特許文献1】米国特許第6217009号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
効率良く泡が生成されるためには、消火液、水及び空気が均一に混合される必要がある。しかし、従来の圧縮空気泡装置では、予め水と消火液とが混合された泡原液が生成され、これに空気が混合されるため、消火液、水及び空気が十分に均一に混合せず、泡の生成効率が悪かった。
【0006】
そこで、本発明の目的は、消火液、水及び空気が均一に混合され、効果的な泡生成が可能な圧縮空気泡装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1) 上記目的が達成されるため、本発明に係る圧縮空気泡装置は、水、消火液及び空気が混合されることにより消火用泡が生成される混合室を備えたケーシングと、混合室に水を供給する水配管と、混合室に消火液を供給する消火液配管と、混合室に空気を供給する空気配管と、混合室で生成された消火用泡を吐出する吐出配管とを有する。水配管、消火液配管及び空気配管は、水、消火液及び空気が同時に混合室内で混合するようにケーシングに接続されている。
【0008】
水、消火液及び空気がケーシングの混合室に送られ、これらが当該混合室内で混合されることによって消火用泡が生成される。このとき、水、消火液及び空気が同時に混合室内で混合されるので、これらは均一に混合される。すなわち、水及び消火液の混合流体(原液)に空気が均一に混ざり合う。したがって、消火用泡が効率よく生成される。
【0009】
(2) 水配管、消火液配管及び空気配管は、水の供給方向、消火液の供給方向及び空気の供給方向が互いに直交するように配置されているのが好ましい。
【0010】
この場合、混合室内で水、消火液及び空気が激しく衝突する。このため、水及び消火液の混合流体(原液)に空気が一層均一に混ざり合う。
【0011】
(3) 混合室と吐出配管との境界部に水、消火液及び空気を攪拌して消火用泡を生成する攪拌部材が設けられているのが好ましい。
【0012】
水、消火液及び空気の混合体は、混合室から吐出配管へ送られる。このとき、水、消火液及び空気の混合体は、攪拌部材に衝突し、三者の流れが乱される。すなわち、水及び消火液の混合流体(原液)と空気とがより一層均一に混ざり合う。
【0013】
(4) 攪拌部材は、吐出配管の流路面積を縮小するように配置された環状円盤から構成され得る。この攪拌部材は、吐出配管の径方向内側に突出する突片を備えているのが好ましい。
【0014】
この構成では、攪拌部材が簡単かつ安価に構成され得る。しかも、攪拌部材が突片を備えているので、水、消火液及び空気の混合体の流れは、突片によりさらに乱される。したがって、水及び消火液の混合流体(原液)と空気とがなお一層均一に混ざり合う。
【0015】
(5) 攪拌部材は、複数の突片を備えているのが好ましい。各突片は、吐出配管の中心軸を中心として対称に配置されているのが好ましい。
【0016】
この構成では、水、消火液及び空気の混合体の流れは、吐出配管内において均等に乱される。したがって、水及び消火液の混合流体(原液)と空気とがより一層均一に混ざり合い、消火用泡が効率よく生成される。
【0017】
(6) 複数の攪拌部材が消火用泡の吐出方向に並設されているのが好ましい。
【0018】
これにより、水、消火液及び空気の混合体の流れは、より激しく乱される。したがって、水及び消火液の混合流体(原液)と空気とがより一層均一に混ざり合う。
【0019】
(7) 攪拌部材は、消火用泡の吐出方向に貫通する小孔を備えていてもよい。
【0020】
水、消火液及び空気の混合体は、混合室から吐出配管へ送られるが、このとき、水、消火液及び空気の混合体は、上記小孔をも通過する。この小孔は、混合室から吐出配管へ通ずる絞りとして機能し、水、消火液及び空気の混合体が小孔を通過する際に激しく混ざり合う。したがって、水及び消火液の混合流体(原液)と空気とがより一層均一に混ざり合う。
【0021】
(8) 上記圧縮空気泡装置を備えた消防自動車が提供され得る。上記圧縮空気泡装置が消火用泡を効率よく生成するから、この装置を搭載した消防自動車は、火災現場における泡消火活動に優れる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、消火用泡の生成効率が高いので、消火液単位量当たりの消火用泡の生成量が増大する。したがって、本発明に係る圧縮空気泡装置が消防自動車に搭載されると、少ない消火液から大量の消火用泡が放出されることになるから、消防自動車の消火能力が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
【0024】
<全体構成>
【0025】
図1〜図3は、本発明の一実施形態に係る圧縮空気泡装置(以下、「泡装置」と称される。)が搭載された消防自動車の艤装図である。図1は正面図、図2は右側面図、図3は平面図である。また、図4は、この消防自動車の配管系統図である。
【0026】
この消防自動車10は、シャシー11と、シャシー11に架装されたボディ12と、ボディ12の内部に配置された消防ポンプ13、真空ポンプ14、水槽15、薬液漕16及び泡装置17(図4参照)とを備えている。
【0027】
水槽15は、所定の容積(例えば600l)を有し、消火用水を貯留することができるようになっている。消防ポンプ13は、従来から一般的に使用されているものであって、インペラを備えた遠心式ポンプである。この消防ポンプは、吸水ポート及び吐水ポートを備えており、吸水ポートに導かれた消火用水がインペラによって遠心加速されて高圧水として吐水ポートから吐出される。この水槽15は、吸水パイプ20を介して消防ポンプの吸水ポートに接続されている(図4参照)。
【0028】
薬液層16は、所定の容量(例えば20l)を有し、界面活性剤等を含む消火液を貯留することができるようになっている。薬液漕16に原液ポンプ18が接続されている。原液ポンプ18は、DCモータ19にて駆動される。原液ポンプ18が作動することにより、消火液が薬液漕16から泡装置17へ送給されるようになっている。この薬液漕16は、送給パイプ21を介して原液ポンプ18に接続されている。
【0029】
図4が示すように、真空ポンプ14は、第1配管22及び第2配管23備えている。第1配管22は、エアチャンバ24及び急速吸排気弁25を備えており、上記吸水パイプ20に接続されている。第2配管23は、セパレータレシーバタンク26を備えており、このセパレータレシーバータンク26に排気路27及び圧力制御弁28が接続されている。上記泡装置17は、圧力制御弁28を介してセパレータレシーバータンク26と接続されている。この真空ポンプ14が作動すると、第1配管22を介して吸水パイプ20内の空気が吸引される。つまり、吸水パイプ20内が負圧となり、水槽15から消防ポンプ13へ消火用水が導かれる。一方、この真空ポンプ14は、コンプレッサとしても機能する。すなわち、第1配管22のバルブ29が閉じられた状態で真空ポンプ14が作動すると、吸気路30及びエアフィルタ31を介して外気が吸引され、圧力制御弁28を介して圧縮空気が泡装置17へ送給されるようになっている。
【0030】
図1〜図3が示すように、シャシー11は、メインフレーム36と、メインフレーム36に懸架された車輪37と、メインフレーム36の前端部に設けられたキャビン38と、図示されていないが、メインフレーム36に支持され、キャビン38の下方に配置されたエンジンとを備えている。メインフレーム36は、断面が略C字状に形成された一対の鋼材からなる。これらは、図2が示すように、左右方向(車幅方向)に互いに対向配置されている。なお、メインフレーム36は、上記一対の鋼材同士を連結する複数のクロスメンバーを備えており、これにより、メインフレーム36全体の剛性が向上されている。また、エンジンは、このメインフレーム36に支持されており、当該エンジンに動力伝達機構が連結されている。この動力伝達機構を介して車輪37が駆動され、消防自動車10が走行する。キャビン38は、この消防自動車10を走行運転するための運転室を構成している。
【0031】
ボディ12は、消防自動車10の外形を構成している。ボディ12は、本実施形態ではFRP(Fiber Reinforced Plastics)からなる。もっとも、ボディ12がフレーム及び鋼板又はアルミニウム合金板等から構成されていてもよいことは勿論である。ボディ12の中央部にポンプ室39が設けられている。このポンプ室39の下方に消防ポンプ13及び真空ポンプ14(図4参照)が架装されており、ポンプ室39の前方に水槽15及び薬液漕16(図4参照)が配置されている。なお、上記消防ポンプ13は、上記エンジンからPTO(Power Take Off Device)を介して取り出された駆動力によって駆動されるようになっている。また、ボディ12の後方にホースカーが着脱自在に取り付けられるようになっている。
【0032】
ボディ12の側面に、吐水ポート34、35と、中継ポート40と、吸水ポート42と、操作モニター43と、無線装置44とが設けられている。これらは、ボディ12の左右の側面に対称に配置されている。また、ボディ12の側面に機材収容室45が設けられている。吐水ポート34、35は、開閉コックを備えている。この開閉コックが開かれることにより、消防ポンプ13から吐出された高圧水が吐水ポート34、35から排出される。なお、この吐水ポート34、35に消防ホースが接続されるようになっている。
【0033】
中継ポート40は、消火栓や他の消防ポンプと接続され得る。そして、この中継ポート40に供給された消火用水は、消防自動車10の内部配管を経て消防ポンプ13に送られ、上記吐水ポート34、35から高圧水として吐出される。なお、この中継ポート40にも開閉コックが設けられている。さらに、吸水ポート42は、吸水管46が接続されている。この吸水管46の先端にストレーナ47が設けられている。吸水ポート42は、消防自動車10の内部配管を経て消防ポンプ13に接続されている。したがって、吸水管46が水源(例えば河川やため池)に挿入されることにより、この水源から消火用水がくみ上げられ、上記吐水ポート34、35から高圧水として排出される。なお、この吸水ポート42にも開閉コックが設けられている。
【0034】
操作モニター43は、消防ポンプ13の運転状況を表示する。例えば、吐水ポート34、35から排出されている消火用水の圧力や流量が表示される。無線装置44は、他の消防自動車や消防隊員との連絡に使用される。これら操作モニター43及び無線装置44は、操作ユニット55として構成されている。すなわち、この操作ユニット55がボディ12に嵌め込まれている(図1参照)。また、上記機材収容室45には、発動発電機その他の消火活動に使用される機材が収容されている。この機材収容室45は、シャッター48がスライドされることにより開閉されるようになっている。
【0035】
<泡装置の構造>
【0036】
図5は、泡装置17の正面図である。また、図6〜図8は、それぞれ泡装置17の右側面図、左側面図及び底面図である。
【0037】
泡装置17は、消防自動車10のボディ12の内部に配置されている。泡装置17は、主管61と、バイパス管62とを備えている。
【0038】
主管61は、第1ポート63及び第2ポート64を備えており、両者は連通している。第1ポート63は、消防ポンプ13の吐出ポートと接続されている。すなわち、消防ポンプから吐出された高圧の消防用水が第1ポート63に導かれる。主管61は、切換バルブ65を備えている。この切換バルブ65は、主管61を開閉するものであって、第1ポート63と第2ポート64との間で通水を許容しあるいは遮断する。
【0039】
バイパス管62は、入力ポート66及び出力ポート67とを備えており、両者は連通している。入力ポート66は、主管61の第1ポート63の近傍に接続され、出力ポート67は、主管61の第2ポート64の近傍と接続されている。すなわち、上記切換バルブ65が主管61を閉塞した場合は、消火用水は、第1ポート63から入力ポート66を経てバイパス管62を通り、出力ポート67を経て第2ポート64へ送られる。バイパス管62は、逆止弁68を備えており、消火用水が出力ポート67側から入力ポート66側へ流れることが規制されている。
【0040】
前述のように、この消防自動車10は、上記水槽15及び薬液漕16を備えている。消防ポンプ13は、高圧の消火用水を上記第1ポート63に導く。上記切換バルブ65が主管61を開放しているときは、当該高圧の消火用水は第2ポート64を経てボディ12に設けられた吐水ポート34、35から吐出される。これにより、通常の放水消火活動が行われる。一方、上記切換バルブ65が主管61を閉塞しているときは、上記高圧の消火用水は上記第1ポート63からバイパス管62へ送られ、後述の要領で消火用泡が生成される。この消火用泡は、上記吐水ポート34から放出され、泡消火活動が行われることになる。
【0041】
図9は、図8におけるIX−IX断面図である。同図は、バイパス管62の断面図である。また、図10は、泡装置17が上記IX−IX断面で切断された状態の断面斜視図である。
【0042】
図9及び図10が示すように、バイパス管62は、薬液混合部69を備えている。この薬液混合部69は、ケーシング71と、水供給部72(水配管)と、消火液供給部73(消化液配管)と、吐出部74(吐出配管)とを備えている。また、図6〜図8が示すように、この薬液混合部69は、圧縮空気供給部75(空気配管)を備えている。上記切換バルブ65が主管61を閉塞したときは、上記消防ポンプ13から送給された高圧の消火用水は、水供給部72に送られる。また、消火液は、原液ポンプ18(図4参照)により消火液供給部73に送給される。さらに、真空ポンプ14にて圧縮された空気は、圧縮空気供給部75に送給される。
【0043】
図11は、薬液混合部69の拡大断面斜視図である。
【0044】
ケーシング71は、例えばステンレス鋼からなる。同図が示すように、ケーシング71の内部に混合室76が形成されている。水供給部72は、ケーシング71の第1側面77に設けられている。水供給部72は、この第1側面77を貫通して混合室76に連通している。消火液供給部73は、ケーシング71の第2側面78に設けられている。この第2側面78は、上記第1側面77と直交している。消火液供給部73は、この第2側面78を貫通して混合室76に連通している。したがって、消火用水の供給方向と消火液の供給方向とが直交しており、混合室76内では、供給される消火用水と消火液とが直交状態で衝突する。また、図6〜図8が示すように、圧縮空気供給部74は、ケーシング71の第3側面79(図7参照)に設けられている。この第3側面79は、上記第1側面77に直交し且つ上記第2側面78にも直交している。圧縮空気供給部74は、この第3側面79を貫通して上記混合室(図11参照)に連通している。したがって、圧縮空気の供給方向は、上記消火用水の供給方向と直交し且つ上記消火液の供給方向と直交している。
【0045】
つまり、消火用水、消火液及び圧縮空気は、混合室76内で同時に混合されるようになっている。そして、混合室76内では、消火用水、消火液及び圧縮空気が互いに直交状態で衝突するようになっている。消火用水、消火液及び圧縮空気が互いに直交することによる作用効果については後述される。
【0046】
図10及び図11が示すように、ケーシングの第4側面80に混合室76に連通する孔が設けられている。この第4側面80は、上記第1側面71と対向する面である。第4側面80に設けられた孔に圧力センサ81が接続されている。また、ケーシングの第5側面82に吐出部74が設けられている。この第5側面82は、上記第2側面78と対向する面である。吐出部74は、この第5側面82に設けられた接続ポート83に接続されている。すなわち、吐出部74は、第5側面82を貫通しており、混合室76と連通している。したがって、混合室76内で消火用水、消火液及び圧縮空気が混合されると(以下、消火用水、消火液及び圧縮空気の混合体を単に「混合体」と称する。)、当該混合体は、吐出部74から出力ポート67を介して主管61の第2ポート64へ送られる(図10参照)。
【0047】
<攪拌部材>
【0048】
図9〜図11が示すように、泡装置17は、攪拌部材85を備えている。この攪拌部材85は、ケーシング71の混合室76と吐出部74との境界部に配置されている。この攪拌部材85は、混合室76から混合体が吐出部74へ送られる際に、混合体と衝突する。これにより、消火用水、消火液及び圧縮空気が激しく攪拌され、消火用泡が生成されるようになっている。
【0049】
図12は、攪拌部材85の拡大図である。図13は図12におけるXIII−矢視図であり、図14は、図12におけるXIV−矢視図である。
【0050】
攪拌部材85は、2枚の攪拌円盤86、87と、これらを連結する連結棒88とを備えている(図9、図11参照)。攪拌円盤86は、ステンレス鋼その他の耐腐食性に優れる金属あるいは樹脂等から構成されている。図12及び図13が示すように、攪拌円盤86は、環状の円盤部材である。具体的には、攪拌円盤86は、薄肉円形の板状部材からなり、中央に円形の貫通孔89が設けられている。この攪拌円盤86は、図11が示すように、ケーシング71の第5側面82に対向するように配置されている。攪拌円盤86は環状に形成されているから、当該攪拌円盤86によって吐出部74の接続ポートが縮径されている。換言すれば、攪拌円盤86は、吐出部74の流路面積を縮小する。
【0051】
攪拌円盤86の貫通孔89の周縁に3つの支持舌片90(突片)が形成されている。これら支持舌片90は、貫通孔89の周縁に放射状に設けられている。すなわち、支持舌片90は、吐出部74の仮想中心軸50を中心として対称に配置されており、当該貫通孔89の中心側(吐出部74の径方向内側)に向かって突出している。この支持舌片90に上記連結棒88の一端部が支持固定されている。この支持舌片90が設けられることによる作用効果については後述される。
【0052】
また、攪拌円盤86の外縁部に複数の小孔91が設けられている。これら小孔91は、攪拌円盤86を上記混合体の吐出方向に貫通している。本実施形態では、6つの小孔91が設けられているが、小孔91の数は特に限定されるものではない。図11が示すように、各小孔91は、攪拌部材85が取り付けられた状態で上記接続ポート83及び吐出部74の内側に露出する。したがって、上記混合体の一部は、ケーシング71の混合室76から吐出部74へ移動する際に、各小孔91内を通過することになる。混合体が小孔91を通過することによる作用効果については後述される。
【0053】
攪拌円盤87は、攪拌円盤86と同様にステンレス鋼その他の耐腐食性に優れる金属あるいは樹脂等から構成されている。図12及び図14が示すように、攪拌円盤87は、薄肉円形の板状部材からなる。この攪拌円盤87は、図11及び図12が示すように、攪拌円盤86と対向するように配置されており、攪拌円盤86よりも吐出部74の奥側に配置されている。すなわち、攪拌円盤86及び攪拌円盤87は、混合体の吐出方向に並設されている。攪拌円盤87の外径は、攪拌円盤86の外径よりも小さい。このため、吐出部74の一部(中心部分)は攪拌円盤87によって閉塞され、混合体ないし消火用泡は、攪拌円盤87と吐出部74の内壁面との隙間を通って出力ポート67へ送られる。なお、攪拌円盤86と同様に、攪拌円盤87の中央に円形の貫通孔が設けられていてもよい。
【0054】
攪拌円盤87の外周縁に3つの支持舌片92(突片)が形成されている。これら支持舌片92は、攪拌円盤87の外周縁に放射状に設けられている。すなわち、支持舌片92は、吐出部74の仮想中心軸50を中心として対称に配置されており、吐出部74の径方向外側に向かって突出している。本実施形態では、これら支持舌片92は、上記攪拌円盤86の支持舌片90と対向している。この支持舌片92に上記連結棒88の他端部が支持固定されている。つまり、連結棒88が支持舌片90と支持舌片92との間に架け渡されることにより、支持舌片90と支持舌片92とが連結されている。この支持舌片92が設けられることによる作用効果についても後述される。
【0055】
<放水等の作業及び作用効果>
【0056】
この消防自動車10は、火災現場にて次の要領で放水等の作業を行う。
【0057】
まず、通常の放水消火活動が行われる場合は、上記切換バルブ65(図5参照)が主管61を開放する。これにより、消防ポンプ13から泡装置17の第1ポート63に送給された高圧の消火用水は、第2ポート64を経て放水される。
【0058】
上記切換バルブ65が主管61を閉塞した場合は、泡消火活動が行われる。図10及び図11が示すように、消火用水が水供給部72からケーシング71の混合室76内に送られる。また、消火液が消火液供給部73から上記混合室76内に送られる。さらに、図8が示すように、圧縮空気が圧縮空気供給部75から上記混合室76に送られる。これらが当該混合室76内で混合されることによって消火用泡が生成される。このとき、消火用水、消火液及び空気が同時に混合室76内で混合されるので、これらは均一に混合される。すなわち、消火用水及び消火液の混合液に空気が均一に混ざり合い、これにより、消火用泡が効率よく生成される。
【0059】
このように本実施形態に係る泡装置17は、消火用水、消火液及び空気を同時に混ぜ合わせるので、消火用泡の生成効率が高い。したがって、消火液単位量当たりの消火用泡の生成量が増大する。その結果、この泡装置17を搭載した消防自動車10は、少ない消火液から大量の消火用泡を放出することができ、高い消火能力を発揮する。
【0060】
また、本実施形態では、消火用水、消火液及び圧縮空気が互いに直交して衝突する。すなわち、混合室76内で消火用水、消火液及び空気が激しく衝突する(図11参照)。このため、消火用水及び消火液の混合液に空気が一層均一に混ざり合い、一層効率的に消火用泡が生成される。
【0061】
さらに、本実施形態では、上記攪拌部材85が設けられているから、消火用水、消火液及び空気の混合体が混合室76から吐出部74へ送られる際に当該混合体が攪拌部材85に衝突し、三者の流れが乱される。すなわち、上記混合液と空気とがより一層均一に混ざり合い、より一層効率的な消火用泡の生成が実現される。
【0062】
特に攪拌部材85は、攪拌円盤86を備えており、簡単な構造で安価に製造され得るという利点がる。しかも攪拌円盤86は、吐出部74の流路面積を縮小するように配置されているから、吐出部74に備えられた絞りとして機能する。したがって、消火用水、消火液及び空気の混合体が混合室76から吐出部74へ送られる際に当該混合体の流れが一層乱される。すなわち、上記混合液と空気とがより一層均一に混ざり合い、さらに効率的な消火用泡の生成が実現される。加えて、この攪拌円盤86は、吐出部74の内側に突出する支持舌片90を備えているから、上記混合体の流れがなお一層乱され、より効率的に消火用泡が生成される。
【0063】
また、本実施形態では、上記攪拌円盤86は、複数の支持舌片90を備えており、各支持舌片90は放射状に配置されていることから、消火用水、消火液及び空気の混合体の流れは、吐出部74の内部において均等に乱される。したがって、上記混合液と空気とがなお一層均一に混ざり合い、消火用泡が効率よく生成される。
【0064】
さらに、本実施形態では、攪拌部材85は攪拌円盤87を備えており、この攪拌円盤87は消火用泡の吐出方向に並設されている。これにより、上記混合体の流れはより激しく乱される。したがって、上記混合液と空気とがより一層均一に混ざり合うという利点がある。なお、本実施形態では、攪拌部材85は2枚の攪拌円盤86、87を備えているが、攪拌円盤の数は特に限定されない。したがって、3枚以上の攪拌円盤が設けられていてもよい。
【0065】
加えて、上記攪拌円盤86は、上記小孔91を備えている。消火用水、消火液及び空気の混合体は、混合室76から吐出部74へ送られるが、このとき、当該混合体の一部は上記小孔91を通過する。この小孔91は、混合室76から吐出部74へ通ずる絞りとして機能し、上記混合体が小孔91を通過する際にきわめて激しく混ざり合う。したがって、上記混合液と空気とがより一層均一に混ざり合うという利点がある。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明は、消防自動車及び消防自動車に搭載される圧縮空気泡装置に適用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る圧縮空気泡装置が搭載された消防自動車の艤装図である。
【図2】図2は、本発明の一実施形態に係る圧縮空気泡装置が搭載された消防自動車の艤装図である。
【図3】図3は、本発明の一実施形態に係る圧縮空気泡装置が搭載された消防自動車の艤装図である。
【図4】図4は、本発明の一実施形態に係る消防自動車の配管系統図である。
【図5】図5は、本発明の一実施形態に係る圧縮空気泡装置の正面図である。
【図6】図6は、本発明の一実施形態に係る圧縮空気泡装置の右側面図である。
【図7】図7は、本発明の一実施形態に係る圧縮空気泡装置の左側面図である。
【図8】図8は、本発明の一実施形態に係る圧縮空気泡装置の底面図である。
【図9】図9は、図8におけるIX−IX断面図である。
【図10】図10は、本発明の一実施形態に係る圧縮空気泡装置の断面斜視図である。
【図11】図11は、本発明の一実施形態に係る圧縮空気泡装置の薬液混合部の拡大断面斜視図である。
【図12】図12は、本発明の一実施形態に係る圧縮空気泡装置の攪拌部材の拡大図である。
【図13】図13は、図12におけるXIII−矢視図である。
【図14】図14は、図12におけるXIV−矢視図である。
【符号の説明】
【0068】
10・・・消防自動車
13・・・消防ポンプ
14・・・真空ポンプ
15・・・水槽
16・・・薬液漕
17・・・泡装置
18・・・原液ポンプ
50・・・中心軸
61・・・主管
62・・・バイパス管
63・・・第1ポート
64・・・第2ポート
65・・・切換バルブ
66・・・入力ポート
67・・・出力ポート
69・・・薬液混合部
71・・・ケーシング
72・・・水供給部
73・・・消火液供給部
74・・・吐出部
75・・・圧縮空気供給部
76・・・混合室
77・・・第1側面
78・・・第2側面
79・・・第3側面
80・・・第4側面
81・・・圧力センサ
82・・・第5側面
83・・・接続ポート
85・・・攪拌部材
86・・・攪拌円盤
87・・・攪拌円盤
88・・・連結棒
89・・・貫通孔
90・・・支持舌片
91・・・小孔
92・・・支持舌片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水、消火液及び空気が混合されることにより消火用泡が生成される混合室を備えたケーシングと、
混合室に水を供給する水配管と、
混合室に消火液を供給する消火液配管と、
混合室に空気を供給する空気配管と、
混合室で生成された消火用泡を吐出する吐出配管とを有し、
水配管、消火液配管及び空気配管は、水、消火液及び空気が同時に混合室内で混合するようにケーシングに接続されている圧縮空気泡装置。
【請求項2】
水配管、消火液配管及び空気配管は、水の供給方向、消火液の供給方向及び空気の供給方向が互いに直交するように配置されている請求項1に記載の圧縮空気泡装置。
【請求項3】
混合室と吐出配管との境界部に水、消火液及び空気を攪拌して消火用泡を生成する攪拌部材が設けられている請求項1又は2に記載の圧縮空気泡装置。
【請求項4】
攪拌部材は、吐出配管の流路面積を縮小するように配置された環状円盤であって、吐出配管の径方向内側に突出する突片を備えている請求項3に記載の圧縮空気泡装置。
【請求項5】
攪拌部材は複数の突片を備えており、各突片は吐出配管の中心軸を中心として対称に配置されている請求項4に記載の圧縮空気泡装置。
【請求項6】
複数の攪拌部材が消火用泡の吐出方向に並設されている請求項3から5のいずれかに記載の圧縮空気泡装置。
【請求項7】
攪拌部材は、消火用泡の吐出方向に貫通する小孔を備えている請求項3から6のいずれかに記載の圧縮空気泡装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれかに記載の圧縮空気泡装置を備えた消防自動車。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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