説明

圧縮蒸気供給システム及びその運転方法

【課題】蒸気圧力を必要以上に高圧にすることで生じる圧縮動力の無駄を無くすことができる圧縮蒸気供給システム及びその運転方法を提供する。
【解決手段】フラッシュタンク1からのフラッシュ蒸気が入口側に供給されフラッシュ蒸気を圧縮する蒸気圧縮機2と、圧力の異なる複数の蒸気の供給先の負荷41〜43と前記蒸気圧縮機2の出口側とをそれぞれ接続する蒸気供給管31〜33と、を備え、要求される圧力が最も大きい負荷41に接続される蒸気供給管31を除く蒸気供給管32、33に減圧弁52、53を設け、要求される圧力が最も小さい蒸気の負荷43に接続される蒸気供給管33を除く蒸気供給管31、32に逆止弁61、62を設ける。複数の負荷41〜43のうちの任意の一つ又は複数の負荷4に蒸気を供給するにあたり、蒸気を供給する負荷4のうち要求される圧力が最も小さい負荷4から順に蒸気を供給できるように蒸気圧縮機2での圧縮圧力を調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、要求される蒸気圧の異なる複数の供給先の負荷に圧縮蒸気を供給する圧縮蒸気供給システム及びその運転方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
通常、蒸気を必要とする負荷に蒸気を供給するには、ボイラBで蒸気を発生させて供給している(例えば特許文献1参照)。そして、図3(a)に示すように、供給先の負荷4が複数あって、各負荷4において要求される蒸気圧が複数通りある場合もある。例えば、高い方から順に高圧、中圧、低圧の三通りの蒸気圧をそれぞれ要求する高圧負荷41、中圧負荷42、低圧負荷43がある場合、ボイラBから高圧負荷41に高圧蒸気を搬送する高圧蒸気供給管31と、ボイラBから中圧負荷42に中圧蒸気を搬送する中圧蒸気供給管32と、ボイラBから低圧負荷43に低圧蒸気を搬送する低圧蒸気供給管33とを設け、中圧蒸気供給管32と低圧蒸気供給管33とにそれぞれ減圧弁52、53を設ける。そして、発生する蒸気が高圧となるようにボイラBを運転し、発生した高圧蒸気を高圧蒸気供給管31を介して高圧負荷41に供給し、更に、中圧蒸気供給管32の減圧弁52にて高圧蒸気を減圧して中圧蒸気として中圧負荷42に供給したり、低圧蒸気供給管33の減圧弁53にて高圧蒸気を減圧して低圧蒸気として低圧負荷43に供給したりする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−176901号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ボイラBを使用せず、高温高圧の液体が減圧されて発生するフラッシュ蒸気を利用することができれば、フラッシュ蒸気は高いエンタルピーを有することから、圧縮蒸気を発生させるのに新たに投入するエネルギーが少なくて済み、省エネルギー化を図ることができる。この場合、図3(b)に示すように、ボイラBの代わりにフラッシュタンク1及び蒸気圧縮機2を設け、蒸気圧縮機2の蒸気の出口側と各負荷4(41〜43)とを各蒸気供給管3(31〜33)で接続する。蒸気圧縮機2は一般的に、蒸気の入口側の圧力が一定となるように制御し、出口側の圧力は負荷4の圧力に応じた成り行きの圧力となる。このため、出口側の圧力を負荷4の圧力と同等の圧力とすべく蒸気を圧縮するのであるが、圧縮比が小さい程(すなわち出口側の圧力が小さい程)、単位蒸気量当たりの圧縮動力が小さくて済むものである。
【0005】
しかしながら、単にボイラBをフラッシュタンク1及び蒸気圧縮機2に置き換えるだけでは、高圧負荷41に高圧蒸気を供給する必要がなく中圧負荷42や低圧負荷43にのみ蒸気を供給する場合でも、出口側の圧力を高圧負荷41の圧力と同等にする必要がある。すなわち、出口側の圧力を中圧や低圧にすると、高圧負荷41から高圧蒸気供給管31を介して高圧蒸気が蒸気圧縮機2に逆流してしまう。このため、蒸気圧縮機2で蒸気を高圧に圧縮して高圧負荷41からの逆流が起こらないようにした上で、中圧蒸気管の減圧弁52で高圧蒸気を減圧して中圧蒸気として中圧負荷42に供給したり、低圧蒸気管の減圧弁53で高圧蒸気を減圧して低圧蒸気として低圧負荷43に供給することになり、高圧蒸気が必要でない場合に蒸気を高圧に圧縮することによる圧縮動力の無駄が発生してしまうものであった。
【0006】
本発明は上記従来の問題点に鑑みて発明したものであって、その目的とするところは、蒸気圧力を必要以上に高圧にすることで生じる圧縮動力の無駄を無くすことができる圧縮蒸気供給システムを提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために請求項1に係る圧縮蒸気供給システムは、フラッシュタンク1からのフラッシュ蒸気が入口側に供給され該フラッシュ蒸気を圧縮する蒸気圧縮機2と、圧力の異なる複数の蒸気の供給先の負荷4(図1に示す例では41〜43)と前記蒸気圧縮機2の出口側とをそれぞれ接続する蒸気供給管3(31〜33)と、を備え、要求される圧力が最も大きい負荷41に接続される蒸気供給管31を除く蒸気供給管32、33に減圧弁5(52、53)を設け、要求される圧力が最も小さい蒸気の負荷43に接続される蒸気供給管33を除く蒸気供給管31、32に逆止弁6(61、62)を設けて成ることを特徴とする。
【0008】
また請求項2に係る発明は、請求項1記載の圧縮蒸気供給システムの運転方法であって、複数の負荷4(41〜43)のうちの任意の一つ又は複数の負荷4に蒸気を供給するにあたり、蒸気を供給する負荷4のうち要求される圧力が最も小さい負荷4から順に供給する蒸気を蒸気圧縮機2で発生させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明においては、任意の一つ又は複数の負荷に蒸気を供給するにあたり、蒸気を供給する負荷のうち要求される圧力が最も小さい負荷から順に蒸気を供給できるため、常に要求される圧力が最も大きい負荷に応じた圧力となるように蒸気圧縮機で圧縮する必要がなく、圧縮動力の無駄をなくし省エネルギー化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の圧縮蒸気供給システムの一実施形態の構成図である。
【図2】同上における運転の説明図であり、(a)は低圧負荷にのみ蒸気を供給する場合を示し、(b)は中圧負荷及び低圧負荷に蒸気を供給する場合を示し、(c)は全ての負荷に蒸気を供給する場合を示す。
【図3】(a)(b)は従来の蒸気供給システムの構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態について図1及び図2に基づいて説明する。
【0012】
本圧縮蒸気供給システムは、図1に示すように、フラッシュ蒸気が入口側に供給される蒸気圧縮機2と、蒸気圧縮機2の出口側に接続され、蒸気の供給先の負荷4に蒸気を搬送するための蒸気供給管3と、で主体が構成される。
【0013】
蒸気圧縮機2は、圧縮比等の仕様は特に限定されないが、本実施形態ではスクリュー式の圧縮機で、蒸気を約0.8MPa程度の圧力に上昇可能であるものとする。この蒸気圧縮機2は、圧縮部の入口側に接続管11を介してフラッシュタンク1が接続され、圧縮部の出口側に蒸気供給管3の上流端が接続される。
【0014】
フラッシュタンク1は、高温高圧の液体が減圧されてフラッシュ蒸気を発生させるもので、発生したフラッシュ蒸気は上記接続管11を介して蒸気圧縮機2に供給される。
【0015】
負荷4は、本発明においては、複数あると共に負荷4が要求する蒸気圧が複数通りあるもので、本実施形態では一例として、約0.8MPa(本実施形態では高圧Phとする)の水蒸気を必要とする例えば抄紙工程等の高圧負荷41と、約0.5MPa(本実施形態では中圧Pmとする)の水蒸気を必要とする例えば抄紙工程等の中圧負荷42と、約0.1〜0.2MPa(本実施形態では低圧Plとする)の水蒸気を必要とする例えば抄紙工程や空調用の低圧負荷43と、があるものとする。なお、負荷4の圧力は例示した前記圧力に限定されないものであり、また、負荷4は例示した前記抄紙工程や空調等の用途に限定されないものであり、また、負荷4の数及び蒸気供給管3の数や、要求される蒸気圧が何通りあるかも限定されないものである。
【0016】
各負荷4にはそれぞれ蒸気供給管3の下流端が接続され、蒸気供給管3を介して各負荷4と蒸気圧縮機2の圧縮部の出口側とが連通する。このため、蒸気供給管3の途中に弁があって流路が閉塞されたり絞られたりしない限り、蒸気が内部を移動して蒸気圧縮機2の出口側の圧力と負荷4の圧力とが均衡しようとする。本実施形態では、高圧負荷41に接続される蒸気供給管3を高圧蒸気供給管31とし、中圧負荷42に接続される蒸気供給管3を中圧蒸気供給管32とし、低圧負荷43に接続される蒸気供給管3を低圧蒸気供給管33とする。本実施形態では、各蒸気供給管3は上流端側で合流して一蒸気供給管3の上流端が蒸気圧縮機2の出口側に接続されているが、各蒸気供給管3の上流端がそれぞれ別個に蒸気圧縮機2の出口側に接続されていてもよい。
【0017】
蒸気供給管3には、要求される圧力が最も大きい負荷4(41)に接続される蒸気供給管3(31)を除く蒸気供給管3に減圧弁5を設けるもので、本実施形態では、高圧蒸気供給管31を除く中圧蒸気供給管32と低圧蒸気供給管33とにそれぞれ減圧弁52、53を設けてある。高圧負荷41に蒸気を供給するため蒸気圧縮機2で高圧蒸気を発生させた時でも、高圧蒸気を減圧弁52、53により減圧して中圧蒸気や低圧蒸気とし、高圧負荷41以外の負荷4、すなわち中圧負荷42や低圧負荷43に所望の圧力の蒸気を供給することができる。
【0018】
そして本発明では、要求される圧力が最も小さい負荷4に接続される蒸気供給管3を除く蒸気供給管3に逆止弁6を設けるもので、本実施形態では、低圧蒸気供給管33を除く高圧蒸気供給管31と中圧蒸気供給管32とにそれぞれ逆止弁61、62を設けてある。以下、本発明の圧縮蒸気供給システムの運転について説明する。
【0019】
まず、低圧負荷43にのみ蒸気を供給する場合には、図2(a)に示すように、蒸気圧縮機2にて上記低圧Plより若干高い圧力(これを低圧力Pl′として低圧Plと区別する)の蒸気を発生させる。この時、低圧負荷43には低圧蒸気が供給されるが、蒸気圧縮機2にて発生する蒸気が低圧力Pl′であるため高圧蒸気供給管31及び中圧蒸気供給管32においては、逆止弁61、62の下流側が高圧Ph及び中圧Pmとなるのに対し上流側はこれらより低い低圧力Pl′となるため、上流側の低圧力Pl′の蒸気は逆止弁61、62を通って下流側に移動することはなく、高圧負荷41及び中圧負荷42には蒸気が供給されない。この場合に必要となる蒸気圧縮機2の出口側の低圧力Pl′=低圧負荷43が要求する低圧Pl+減圧弁53での損失圧力となる。また、高圧負荷41及び中圧負荷42には蒸気が供給されないだけでなく、逆止弁61、62により高圧負荷41及び中圧負荷42から高圧蒸気及び中圧蒸気が蒸気圧縮機2側に逆流することがない。
【0020】
次に、中圧負荷42及び低圧負荷43にのみ蒸気を供給する場合には、図2(b)に示すように、蒸気圧縮機2にて上記中圧Pmより若干高い圧力(これを中圧力Pm′として中圧Pmと区別する)の蒸気を発生させる。この時、中圧負荷42に減圧弁52で減圧された中圧蒸気が供給されると共に、低圧負荷43に減圧弁53で減圧された低圧蒸気が供給されるが、蒸気圧縮機2にて発生する蒸気が中圧力Pm′であるため高圧蒸気供給管31においては、逆止弁61の下流側が高圧Phとなるのに対し上流側はこれより低い中圧力Pm′となるため、上流側の中圧力Pm′の蒸気は逆止弁61を通って下流側に移動することはなく、高圧負荷41には蒸気が供給されない。この場合に必要となる蒸気圧縮機2の出口側の中圧力Pm′=中圧負荷42が要求する中圧Pm+減圧弁52での損失圧力となる。また、高圧負荷41には蒸気が供給されないだけでなく、逆止弁6により高圧負荷41から高圧蒸気が蒸気圧縮機2側に逆流することがない。
【0021】
また、中圧負荷42に蒸気を供給する場合には必然的に低圧負荷43にも蒸気を供給することとなるが、中圧負荷42に蒸気を供給しなくても低圧負荷43にのみ蒸気を供給することは上述した通り可能である。このため、低圧負荷43への蒸気供給の優先度は、中圧負荷42への蒸気供給の優先度よりも高いことになる。
【0022】
次に、全ての負荷4に蒸気を供給する場合には、図2(c)に示すように、蒸気圧縮機2にて高圧蒸気を発生させる。この時、高圧負荷41に高圧蒸気が供給され、中圧負荷42に減圧弁52で減圧された中圧蒸気が供給されると共に、低圧負荷43に減圧弁53で減圧された低圧蒸気が供給される。この場合に必要となる蒸気圧縮機2の出口側の圧力は、高圧負荷41が要求する高圧Phとなる。
【0023】
また、高圧負荷41に蒸気を供給する場合には必然的に中圧負荷42及び低圧負荷43にも蒸気を供給することとなるが、高圧負荷41に蒸気を供給せず、中圧負荷42及び低圧負荷43や、低圧負荷43にのみ蒸気を供給することは上述した通り可能である。このため、高圧負荷41への蒸気供給の優先度は、中圧負荷42及び低圧負荷43への蒸気供給の優先度よりも低いことになる。
【0024】
従って蒸気供給の優先度は低圧負荷43>中圧負荷42>高圧負荷41であり、最も優先的に低圧負荷43に低圧蒸気が供給され、次に優先的に中圧負荷42に中圧蒸気が供給され、最も低い優先度で高圧負荷41に高圧蒸気が供給される。
【0025】
本発明の圧縮蒸気供給システムにおいては、任意の一つ又は複数の負荷4に蒸気を供給するにあたり、蒸気を供給する負荷4のうち要求される圧力が最も大きい負荷4に応じた圧力の蒸気を蒸気圧縮機2で発生させるため、上記のように例えば低圧負荷43にのみ低圧蒸気を供給する時には、蒸気圧縮機2にて出口側の圧力を低圧力Pl′にすればよくて高圧Phにする場合よりも小さい圧縮比で済み、中圧負荷42及び低圧負荷43に中圧蒸気及び低圧蒸気を供給する時には、蒸気圧縮機2にて出口側の圧力を中圧力Pm′にすればよくて高圧Phにする場合よりも小さい圧縮比で済む。これにより、従来のように、常に要求される圧力が最も大きい負荷4に応じた圧力となるように蒸気圧縮機2で圧縮することによる圧縮動力の無駄をなくし、省エネルギー化を図ることができる。
【符号の説明】
【0026】
1 フラッシュタンク
2 蒸気圧縮機
3 蒸気供給管
31 高圧蒸気供給管
32 中圧蒸気供給管
33 低圧蒸気供給管
4 負荷
41 高圧負荷
42 中圧負荷
43 低圧負荷
5 減圧弁
6 逆止弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フラッシュタンクからのフラッシュ蒸気が入口側に供給され該フラッシュ蒸気を圧縮する蒸気圧縮機と、圧力の異なる複数の蒸気の供給先の負荷と前記蒸気圧縮機の出口側とをそれぞれ接続する蒸気供給管と、を備え、要求される圧力が最も大きい負荷に接続される蒸気供給管を除く蒸気供給管に減圧弁を設け、要求される圧力が最も小さい蒸気の負荷に接続される蒸気供給管を除く蒸気供給管に逆止弁を設けて成ることを特徴とする圧縮蒸気供給システム。
【請求項2】
請求項1記載の圧縮蒸気供給システムの運転方法であって、複数の負荷のうちの任意の一つ又は複数の負荷に蒸気を供給するにあたり、蒸気を供給する負荷のうち要求される圧力が最も小さい負荷から順に供給する蒸気を蒸気圧縮機で発生させることを特徴とする圧縮蒸気供給システムの運転方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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