説明

圧縮袋に付設する逆止弁および逆止弁を設けた圧縮袋

【課題】簡単な構造で吸引ロスがない逆止弁を提供できるとともに、斯かる逆止弁を備えることにより取り扱いの容易な圧縮袋を提供できるようにする。
【解決手段】圧縮袋に穿設された装着孔に取り付けられ、中央部分に第1通気孔を有するベース部材と、ベース部材に回転可能に装着される操作部材と、操作部材の回転操作により昇降操作される昇降部材と、昇降部材に昇降移動可能に装着された弁体とを備え、昇降部材に第2通気孔を穿設し、操作部材に第3通気孔が透設され、操作部材により昇降部材が上昇して弁体が昇降可能な隙間が生じ、袋の内圧が大気圧より高い場合にはその高い圧力により弁体が上昇して第1通気孔を開口いて圧縮袋内を第2通気孔、第3通気孔を介して大気に放出可能に連通させ、圧縮袋の内圧が大気圧以下になったときには自重ならびに気圧差により弁体が第1通気孔を閉塞するとともに、操作部材を回転操作して昇降部材を下降させると弁体が第1通気孔を密閉状に封止可能に構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は圧縮袋に付設する逆止弁および逆止弁を設けた圧縮袋に関するものである。
【背景技術】
【0002】
大きなものでは布団、小さなものでは旅行時の衣服等の脱気収納素材の容積を少なくして収納するときに使用される圧縮袋は、脱気収納素材を入れ、圧縮袋を圧縮して脱気した後、その出し入れ口を密閉するようにして使用するようにしてある。
ところが、こうしたものでは脱気収納素材を出し入れする出し入れ口を閉塞するときに、外気を吸引してしまうことから、操作が複雑でありながら、手早く行わなくてはならず、充分な圧縮効果を得ることが難しいという問題があった。
【0003】
そこで、特許文献1に示されるように、圧縮袋内の空気を掃除機のノズルで吸引できる吸引口を表面に設けた逆止弁を圧縮袋に出し入れ口とは別に圧縮袋に取り付け楽に、手早く脱気できるようにしたものが先に提案されている
この特許文献1に記載の逆止弁は、排気口(本発明にいう第1通気孔)に配設した弁体をスプリングの弾性力によりで排気口を閉塞する方向に押圧付勢するように構成したもので、こうした圧縮袋内の排気時には、掃除機を必要とし掃除機のない旅先での使用時には、折り畳んだ圧縮袋を両手で強く大きな力で圧縮し、圧縮袋の内圧を高め、この高められた内圧により、スプリングの押圧付勢力に抗して弁体を上昇させなくてはならず、使いづらい上、圧縮袋の破れの原因になり、耐久性が低下してしまうという問題があった。
また、掃除機を使用する場合、吸引には強く大量の負圧を必要とすることから、掃除機への負荷も大きなものになってしまうという問題もある。
【0004】
そこで、特許文献2に示されるように、圧縮袋を上下から挟んで取り付けられる上下のベース部材の上ベース部材から筒状結合部を立設し、この筒状結合部内の下方の下ベース部材に開口部(本発明にいう第1通気孔)が形成され、この開口部を開閉する板状の弁体を筒状結合部内に収納し、板状の弁体をその上方から押圧する筒状押圧部を蓋体から垂下し、蓋体を回転させたときに、当該蓋体をベース部の筒状掛合部の基部外周部分に形成されたカム機構で蓋体とともに筒状押圧部を下降させ、弁体を開口部に押し付けて脱気した圧縮袋を密封するようにしたものも提案されている。
【0005】
ところが、こうしたものでは、蓋体を回転操作するのにともなって蓋体が昇降するために、蓋体が上昇すると、上ベース部との間に隙間が生じ、ゴミ等を咬みこみやすくなるという問題がある。
また、蓋体を上ベースに装着する部分に蓋体を回動可能にするカム機構と掛合機構とが設けられることから、構造が複雑になり高価になるだけでなく、気密性を保持することが難しく、掃除機で吸引するときに当該部分のから外気を吸引するので吸引ロスが大きくなってしまうという問題もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−34379号公報
【特許文献2】特開2007−161337号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記問題点に鑑みて提案されたもので、簡単な構造で吸引ロスがない逆止弁を提供できるとともに、斯かる逆止弁を備えることにより取り扱いの容易な圧縮袋を提供できるようにすることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために本発明にかかる圧縮袋に付設する逆止弁は、圧縮して脱気可能な脱気素材を入れて封止する圧縮袋に付設する逆止弁であって、圧縮袋に穿設された装着孔に取り付けられ、中央部分に第1通気孔を有するベース部材と、ベース部材に回転可能に装着される操作部材と、操作部材の回転操作により昇降操作される昇降部材と、昇降部材に昇降移動可能に装着された弁体とを備え、昇降部材に第2通気孔を穿設し、操作部材に第3通気孔が透設され、操作部材の回転操作により昇降部材が上昇して弁体が昇降可能な隙間が生じ、袋の内圧が大気圧より高い場合にはその高い圧力により弁体が上昇して第1通気孔を開口いて圧縮袋内を第2通気孔、第3通気孔を介して外部に放出可能に連通させ、圧縮袋の内圧が大気圧以下になったときには自重ならびに気圧差により弁体が第1通気孔を閉塞するとともに、操作部材を回転操作して昇降部材を下降させると弁体が第1通気孔を密閉状に封止可能に構成したことを最も主要な特徴とするものである。
【0009】
逆止弁を設けた圧縮袋は、圧縮袋が柔軟な樹脂製のシート素材により、脱気収納素材の出し入れ口を除く周囲が閉塞された袋状に形成し、出し入れ口に、気密状に封止可能な封止手段を設けてなる圧縮袋の一部に装着孔を形成し、圧縮袋の内方から筒部が外部に突出する状態にベース部材を取り付け、当該筒部内に弁体を昇降可能に装着した昇降部材を配設し、操作部材の外筒を前記筒部に回動可能に外嵌させて請求項1に記載の逆止弁を取り付けたことを最も主要な特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、操作部材を回転操作して昇降部材を上昇させて弁体が遊動する隙間を形成すると、この弁体を押し上げるだけのわずかな圧力差で第1通気孔を開くことができ、差圧がなくなると、弁体の自重で下降して第1通気孔をふさいでしっかりと閉塞する。
これにより、前記した特許文献1のようにスプリングの押圧付勢力に抗して弁体を上昇させるような圧力を圧縮袋内に発生ささなくても済むことから、これを備えた圧縮袋の破損の発生を可及的に防止してその耐久性を大幅に向上させることができる利点がある。
【0011】
また、逆止弁は、ベース部材、操作部材、弁体を備えた昇降部材を備えるだけの簡単な構造でありながら高い気密性を保つことができ、特許文献2のような吸引ロスもなく、安価に実施することができる利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】は本発明にかかる逆止弁を付設した圧縮袋の斜視図である。
【図2】は本発明にかかる逆止弁の分解した状態の斜視図である。
【図3】は本発明にかかる逆止弁を分解した状態の仰瞰図である。
【図4】は本発明にかかる逆止弁を分解した状態の縦断側面図である。
【図5】は本発明にかかる逆止弁で第1通気孔を閉塞した状態の縦断側面である。
【図6】は本発明にかかる逆止弁の脱気時の空気の流れを示す縦断側面である。
【図7】は本発明にかかる逆止弁で脱気終了時の状態を示す縦断側面である。
【実施例】
【0013】
以下、本発明にかかる圧縮袋に付設する逆止弁および逆止弁を設けた圧縮袋の最も好ましい実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は本発明にかかる逆止弁を付設した圧縮袋の斜視図であって、図中符号1は衣服(脱気収納素材)2を収納した圧縮袋を示し、符号3は圧縮袋1に装着された逆止弁を示す。
【0014】
上記圧縮袋1は、気体を透過しない性質を持つ二軸延伸ナイロンフィルムと、直鎖状低密度ポリエチレンフィルムとをラミネートした多層フィルムからなる長方形のシートを2枚合わせにし、四囲のうち、収納口4となる辺を除く三辺を溶着して袋状にしたもので、収納口は、シール装置5が設けられている。
シール装置5は、ライン状の2本の気密部材を設けた樹脂製のファスナ素材6を収納口4に溶着し、このファスナ素材6を気密状に嵌合させるスライダ34を備えて構成されている。
【0015】
上記逆止弁3は、圧縮袋1を形成する一方のシート面1aに取り付けられており、図2乃至図4に示すように構成されている。
この逆止弁3は、圧縮袋1に穿設された装着孔7(図4参照)に取り付けられるベース部材8と、ベース部材8に回転可能に装着される操作部材9と、操作部材9の回転操作により昇降操作される昇降部材10と、昇降部材10に昇降移動可能に装着された弁体11とからなる。
【0016】
ベース部材8は、圧縮袋1の装着孔7への取り付け部12が円板状に形成され、その上面中央部分には操作部材9を回転可能に装着する短寸の筒部13が、合成樹脂で取り付け部12と一体に形成されている。
この筒部13の外周面には後述する操作部材9を回転可能に装着するための環状溝からなる枢支部14が形成され、筒部13の内周面には雌螺子部15が刻設されるとともに、筒部13の底部中央には第1通気孔16が穿設されている(図3参照)。
円盤状の取り付け部12の下面で上記第1通気孔16の周囲には、当該第1通気孔16を取り囲む状態の筒状部17と、この筒状部17から放射状に張り付き防止用のリブ18が放射状に一体に突出形成してあり、筒状部17の基端部には第1通気孔16に連通する通気用横穴19が形成されている。
【0017】
上記筒部13に回転可能に枢支される操作部材9は、伏せ椀状に形成されており、その球面の上端部には図2に示すように第3通気孔20が穿設されており、下面には図4に示すように第3通気孔20の下方には放射状に配設された板状の操作片21を突出するとともに、前記ベース部材8の筒部13に外嵌する外筒22が下方に垂下してある。
そして、この外筒22の内周面には図3および図4に示すように、上記筒部の枢支部14に嵌合する環状の突部23が形成されている。
【0018】
上記昇降部材10は、操作部材9の外筒22がベース部材8の筒部13に外嵌されて装着したときに筒部13と外筒22とで形成される弁収納室24内に装着されるもので、有底筒状に形成され、外周面には前記ベース部材8の筒部13の内周面に刻設された雌螺子部15に螺合する雄螺子25が形成されており、昇降部材10の内周面には前記操作部材9の板状の操作片21により当該昇降部材10を回転操作するための板状の従動部材26が内方に突出させてある。
そして、昇降部材10の底部の中央には弁体11を装着する装着孔27が設けてあり、この装着孔27に装着される弁体11の外周より外側の昇降部材10の底部には複数の第2通気孔28が透設されている。
【0019】
上記弁体11は、第1通気孔16の上端部の周囲に環状に突出形成された弁座29よりわずかに大きく形成された円板状の弁面30部分と、この弁面30部分の中央から上方に延出され、昇降部材10の底部の厚さより長く形成したステム部分31と、ステム部分31の先端部分に抜け止め用の膨出部32とを、弾性を有する合成樹脂エラストマで成形して形成されている。
上記ステム部分31の直径は、昇降部材10の底部に形成された装着孔27よりわずかに小径に形成されており、操作部材9の回転操作により、昇降部材10が上昇して弁座29と昇降部材10の底面との間が弁体の弁面30部分の厚さより大きくなると、弁体11がその弁面30部分に作用する圧力により、上下に遊動可能となる。
尚、図上符号33は操作部材に複数形成された操作用のくぼみである。
【0020】
上記のように形成された逆止弁1は、図4に示すように圧縮袋1の表面1a側に開設された逆止弁3の装着孔7に、ベース部材8の筒部13を圧縮袋1の内方から外方に突出させ、円盤状の取り付け部12を気密状に接着若しくは溶着してベース部材8を固定する。
次に、装着孔27に弁体11を装着した昇降部材10を回転させながら、その外周面に刻設された雄螺子25をベース部材8の筒部13の内周面に形成された雌螺子部15に螺合させ、弁体11の弁面30が第1通気孔16の弁座29に当接するまで下降させる。
【0021】
然る後、操作部材9の外筒22を、ベース部材8の筒部13に外嵌するように上方から圧入して外筒22の内周面に形成されている環状の突部23を筒部13の枢支部14に嵌合させると、操作部材9の板状の操作片21と、昇降部材10の板状の従動部材26とが嵌合し、操作部材9の回転操作で昇降部材10が昇降操作されるようになる。
【0022】
斯くして、逆止弁3が取り付けられた圧縮袋1は、図1に示すように収納口4から折り畳んだセータ等の衣服2を収納する。
そして収納口4を密封した後、圧縮袋1内を脱気する。
この圧縮袋1内を脱気にあたっては、圧縮袋1を押圧して内圧を高めるか、掃除機で吸引させる方法が用いられるのであるが、いずれにしても以下の手順で行われる。
【0023】
先ず、図5に示すように操作部材9を回動操作して昇降部材10を上昇させて弁体11の弁面30を弁座29から離間可能な状態にする。
次に、圧縮袋1を押圧して内圧を高めるか、掃除機で吸引させて圧縮袋1の内圧を相対的に高めるかすることにより、圧縮袋1内の圧力と昇降部材10の内方の圧力との間に圧縮袋1の内圧が高くなる差圧(気圧差)を形成する。
すると、この差圧により、弁体11が上昇し、弁面30が弁座29から離れて第1通気孔16が開かれる。
第1通気孔16が開かれると図6に示すように圧縮袋1内の空気が、第1通気孔16から第2通気孔28及び第3通気孔20を介して逆止弁11外に流れ出て、圧縮袋1が脱気されて圧縮袋1内の容積が減少(減容)される。
【0024】
そして、押圧されていた圧縮袋1がその押圧(圧縮)から解放され、あるいは吸引していた掃除機の吸引が停止されると、圧縮袋1内の圧力が外気(大気)と等しいか、それ低下になると、弁体11の自重もしくは差圧により弁体11が下降し、図7に示すようにその弁面30が弁座29と当接して第1通気孔16を即座に塞ぐ。
これにより、第1通気孔16から空気が圧縮袋1内に流入するのが防止されるので、この状態で、操作部材9を回転操作して昇降部材10を下降させ、その底部で弁体11を第1通気孔16の弁座29に押圧して密閉すると圧縮袋1の圧縮状態が保持され、衣服2の脱気収納作業が終了する。
【0025】
上述したように、弁体11を昇降させるために操作部材9を回転操作しても昇降部材10だけが昇降し、操作部材9は昇降することがないので、操作部材9の昇降に伴う隙間が生じるのが防止される。
これにより、隙間からゴミの咬み込みを防止することができる。
【0026】
尚、上記実施の形態では、操作部材9の板状の操作片21ならびに昇降部材10を回転操作するための板状の従動部材26をそれぞれ複数設けるようにしてあるが、いずれか一方を1つにすることができるのはいうまでもないことである。
また、操作部材9の外筒22の内周面の突部23を、本例では図上、環状に形成するようにしてあるが、これは環状にしたものに限られず、不連続の突状や突起にすることもできる。
【符号の説明】
【0027】
1・・・圧縮袋
2・・・衣服(脱気収納素材)
3・・・逆止弁
4・・・収納口
5・・・シール装置
6・・・ファスナ素材
7・・・装着孔
8・・・ベース部材
9・・・操作部材
10・・・昇降部材
11・・・弁体
12・・・取り付け部
13・・・筒部
14・・・枢支部
15・・・雌螺子部
16・・・第1通気孔
17・・・筒状部
18・・・リブ
19・・・通気用横孔
20・・・第3通気孔
21・・・操作片
22・・・外筒
23・・・突部
24・・・弁収納部
25・・・雄螺子部
26・・・従動部材
27・・・装着孔
28・・・第2通気孔
29・・・弁座
30・・・弁面
31・・・ステム部分
32・・・膨出部
33・・・操作用くぼみ
34・・・スライダ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮して脱気可能な脱気素材を入れて封止する圧縮袋に付設する逆止弁であって、圧縮袋に穿設された装着孔に取り付けられ、中央部分に第1通気孔を有するベース部材と、ベース部材に回転可能に装着される操作部材と、操作部材の回転操作により昇降操作される昇降部材と、昇降部材に昇降移動可能に装着された弁体とを備え、昇降部材に第2通気孔を穿設し、操作部材に第3通気孔が透設され、操作部材の回転操作により昇降部材が上昇して弁体が昇降可能な隙間が生じ、袋の内圧が大気圧より高い場合にはその高い圧力により弁体が上昇して第1通気孔を開口いて圧縮袋内を第2通気孔、第3通気孔を介して外部に放出可能に連通させ、圧縮袋の内圧が大気圧以下になったときには自重ならびに気圧差により弁体が第1通気孔を閉塞するとともに、操作部材を回転操作して昇降部材を下降させると弁体が第1通気孔を密閉状に封止可能に構成したことを特徴とする圧縮袋に付設する逆止弁。
【請求項2】
圧縮袋が柔軟な樹脂製のシート素材により、脱気収納素材の出し入れ口を除く周囲が閉塞された袋状に形成し、出し入れ口に、気密状に封止可能な封止手段を設けてなる圧縮袋の一部に装着孔を形成し、圧縮袋の内方から筒部が外部に突出する状態にベース部材を取り付け、当該筒部内に弁体を昇降可能に装着した昇降部材を配設し、操作部材の外筒を前記筒部に回動可能に外嵌させて請求項1に記載の逆止弁を取り付けたことを特徴とする逆止弁を設けた圧縮袋。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−1249(P2012−1249A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−138159(P2010−138159)
【出願日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【出願人】(501311498)株式会社山田利 (1)
【Fターム(参考)】