説明

圧縮試験装置

【課題】試験体の土台として使用される台座部材を下部ロッド上に安定配置し得、より信頼性の高い試験結果が得られると共に、予備試験における台座部材の位置調整を容易且つ確実に行うことができ、試験担当者の負担軽減を図り得る圧縮試験装置を提供する。
【解決手段】下部ロッド2上に載置され且つ試験体5が上面に配置される台座部材4の下面に、前記下部ロッド2の上端部が嵌入され且つ下部ロッド2に対し同芯状に前記台座部材4を載置可能とするための下部ロッド嵌入凹部4Aaを形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミックスや金属等の材料の圧縮クリープ特性、或いはその他の各種圧縮歪を計測する際に用いられる圧縮試験装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、クリープ(creep)とは、一定の温度、一定の応力を受ける材料がある時間経過後に生じる変形のことであり、クリープ特性の測定では、材料に一定の温度下で長期に亘り一定の圧縮荷重又は引張荷重が掛けられ、歪は予め設定された所定時間間隔で記録され、クリープ歪−時間線図として表される。
【0003】
図3は従来の圧縮試験装置の一例を示す要部拡大側断面図であって、図示していない加圧ユニットに接続され且つ圧縮荷重を付与するための円柱状の上部ロッド1と下部ロッド2とを鉛直方向へ延びるよう、加熱炉3内において対向配置し、前記下部ロッド2上に円板状の台座部材4´を載置し、該台座部材4´上に、セラミックスや金属等の材料で形成された試験体5を配置し、該試験体5と前記上部ロッド1との間に圧子6と球体7を介装し、更に、前記圧子6が圧縮荷重の付与方向へ摺動自在に嵌入される圧子嵌入穴8aが穿設された試験体カバー8を、前記試験体5を覆うよう配設し、この状態で、前記上部ロッド1と下部ロッド2との間に配置される試験体5に対し、前記加熱炉3内の温度を調整しつつ長期に亘り圧縮荷重を付与することにより、該試験体5に生じる歪を計測するようになっている。
【0004】
尚、図3中、1aは前記上部ロッド1の下面に形成され且つ前記球体7と係合する円錐状凹溝、6aは前記圧子6の上面に形成され且つ前記球体7と係合する円錐状凹溝である。
【0005】
ところで、図3に示される圧縮試験装置による圧縮試験においては、前記台座部材4´及び圧子6が試験体5に直接接触して圧縮荷重を付与する形式となっているため、試験体5の表面粗さや装置自体の精度によっては、試験体5に対し均等に圧縮荷重がかからなくなる虞がある。そこで前記加熱炉3による昇温を開始する前の予備試験として、前記試験体5の円周方向へ90°毎に歪ゲージを取り付け、該試験体5に予荷重をかけた状態でその歪を測定し、試験体5の円周方向各位置において均等に圧縮荷重が付与されているか否かを確認するようになっている。
【0006】
これにより、前記予備試験において、前記試験体5に対し均等に圧縮荷重が付与されていることが確認された場合には、その状態のまま加熱炉3による昇温を行いつつ圧縮荷重を所定値まで増加させ、本試験に移行するようになっている。
【0007】
尚、従来の圧縮試験装置の一般的技術水準を示すものとしては、例えば、特許文献1がある。
【特許文献1】特開2005−321382号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、前述の如き従来の圧縮試験装置においては、図3より明らかなように、試験体5の土台として使用される台座部材4´が、面積の狭い下部ロッド2上面に単に載置されているのみで、水平方向の拘束が全くなされておらず、この状態での試験は非常に不安定であり、試験結果への影響が懸念され、その誤差発生の一因となる可能性が高まる一方、なるべく上部ロッド1及び下部ロッド2の軸心上に試験体5を配置し、該試験体5上面に対し均等に圧縮荷重を与える必要があるため、予備試験において台座部材4´の位置調整に余計な手間がかかりやすく、試験担当者の負担増加にもつながる虞があった。
【0009】
本発明は、斯かる実情に鑑み、試験体の土台として使用される台座部材を下部ロッド上に安定配置し得、より信頼性の高い試験結果が得られると共に、予備試験における台座部材の位置調整を容易且つ確実に行うことができ、試験担当者の負担軽減を図り得る圧縮試験装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上部ロッドと下部ロッドとの間に配置される試験体に対し圧縮荷重を付与して該試験体に生じる歪を計測するようにした圧縮試験装置において、
前記下部ロッド上に載置され且つ前記試験体が上面に配置される台座部材と、
前記下部ロッドの上端部が嵌入され且つ下部ロッドに対し同芯状に前記台座部材を載置可能となるよう該台座部材下面に形成される下部ロッド嵌入凹部と、
前記台座部材上に載置される試験体と前記上部ロッドとの間に介装され且つ試験体に対し圧縮荷重を付与する圧子と
を備えたことを特徴とする圧縮試験装置にかかるものである。
【0011】
上記手段によれば、以下のような作用が得られる。
【0012】
本発明の圧縮試験装置においては、試験体の土台として使用される台座部材は、その下部ロッド嵌入凹部を下部ロッドの上端部に嵌入させることによって、下部ロッドに対し同芯状に載置されるため、従来のように、台座部材を面積の狭い下部ロッド上面に単に載置するのとは異なり、水平方向の拘束がなされ、この状態での試験は安定性が高まり、試験結果における誤差が発生しにくくなる一方、予備試験において、上部ロッド及び下部ロッドの軸心上に試験体を配置し、該試験体上面に対し均等に圧縮荷重を与えるための台座部材の位置調整に余計な手間がかからず、試験担当者の負担増加が避けられることとなる。
【0013】
前記圧縮試験装置においては、前記台座部材を、前記下部ロッド嵌入凹部が下面に形成される下側台座と、前記試験体が上面に配置される上側台座とに分割形成し、
前記下側台座の上面に、該下側台座に対し同芯状に前記上側台座を載置可能となるよう上側台座嵌入凹部を形成することができ、このようにすると、万一、上側台座に亀裂が生じたり或いは上側台座が破損したとしても、下側台座や下部ロッドに二次的な破損等の被害が及ぶ心配がなくなり、上側台座のみを交換すれば済み、コストを軽減することも可能となる。
【0014】
又、前記上部ロッドの下面に円錐状凹溝を形成すると共に、前記圧子の上面に円錐状凹溝を形成し、前記上部ロッドの円錐状凹溝と前記圧子の円錐状凹溝との間に球体を介装することが、試験体に対し上面に一様な圧縮荷重をかける上で有効となる。
【0015】
更に又、前記上側台座が圧縮荷重の付与方向へ摺動自在に嵌入される上側台座嵌入穴と前記圧子が圧縮荷重の付与方向へ摺動自在に嵌入される圧子嵌入穴とが穿設された試験体カバーを、前記試験体を覆うよう配設することもでき、このようにすると、試験途中において万一、試験体が破損したとしても、その破片が飛び散るようなことが避けられると共に、試験を加熱炉内で行う場合には、該加熱炉内において試験体が直に熱に晒されず、試験体カバーで保護される形となるため、試験体の一部分のみが加熱されて温度上昇してしまうことがなく、試験体を均一に加熱することが可能となり、加熱ムラもなく、試験結果の信頼性を更に高めることが可能となる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の請求項1記載の圧縮試験装置によれば、試験体の土台として使用される台座部材を下部ロッド上に安定配置し得、より信頼性の高い試験結果が得られると共に、予備試験における台座部材の位置調整を容易且つ確実に行うことができ、試験担当者の負担軽減を図り得るという優れた効果を奏し得る。
【0017】
本発明の請求項2記載の圧縮試験装置によれば、上記効果に加え更に、万一、上側台座に亀裂が生じたり或いは上側台座が破損したとしても、下側台座や下部ロッドに二次的な破損等の被害が及ぶことを回避し得、上側台座のみの交換で対応し得、コスト軽減をも図り得るという優れた効果を奏し得る。
【0018】
本発明の請求項3記載の圧縮試験装置によれば、上記効果に加え更に、試験体に対し上面に一様な圧縮荷重をかけることができるという優れた効果を奏し得る。
【0019】
本発明の請求項4記載の圧縮試験装置によれば、上記効果に加え更に、試験途中において万一、試験体が破損したような場合に、その飛散を防止し得ると共に、試験を加熱炉内で行う場合に、該加熱炉内における試験体の加熱ムラをも防止し得、試験結果の更なる信頼性向上を図り得るという優れた効果を奏し得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。
【0021】
図1及び図2は本発明を実施する形態の一例であって、図中、図3と同一の符号を付した部分は同一物を表わしており、基本的な構成は図3に示す従来のものと同様であるが、本図示例の特徴とするところは、図1及び図2に示す如く、下部ロッド2上に載置され且つ試験体5が上面に配置される台座部材4の下面に、前記下部ロッド2の上端部が嵌入され且つ下部ロッド2に対し同芯状に前記台座部材4を載置可能とするための下部ロッド嵌入凹部4Aaを形成した点にある。
【0022】
本図示例の場合、前記台座部材4は、前記下部ロッド嵌入凹部4Aaが下面に形成される円柱状の下側台座4Aと、該円柱状の下側台座4Aより小径の円柱状で且つ前記試験体5が上面に配置される上側台座4Bとに分割形成し、前記下側台座4Aの上面に、該下側台座4Aに対し同芯状に前記上側台座4Bを載置可能となるよう上側台座嵌入凹部4Abを形成してある。
【0023】
又、前記上部ロッド1の下面には、円錐状凹溝1aを形成すると共に、前記台座部材4上に載置される試験体5と前記上部ロッド1との間に介装され且つ試験体5に対し圧縮荷重を付与する圧子6の上面には、円錐状凹溝6aを形成し、前記上部ロッド1の円錐状凹溝1aと前記圧子6の円錐状凹溝6aとの間には、球体7を介装してある。
【0024】
更に又、前記圧子6が圧縮荷重の付与方向へ摺動自在に嵌入される圧子嵌入穴8aが穿設された試験体カバー8の下面側には、前記上側台座4Bが圧縮荷重の付与方向へ摺動自在に嵌入される上側台座嵌入穴8bを穿設し、前記試験体カバー8を、前記試験体5及び上側台座4Bを覆って前記下側台座4A上に載置されるよう配設してある。
【0025】
次に、上記図示例の作用を説明する。
【0026】
前記試験体5の土台として使用される台座部材4は、その下部ロッド嵌入凹部4Aaを下部ロッド2の上端部に嵌入させることによって、下部ロッド2に対し同芯状に載置されるため、図3に示される従来例のように、台座部材4´を面積の狭い下部ロッド2上面に単に載置するのとは異なり、水平方向の拘束がなされ、この状態での試験は安定性が高まり、試験結果における誤差が発生しにくくなる一方、予備試験において、上部ロッド1及び下部ロッド2の軸心上に試験体5を配置し、該試験体5上面に対し均等に圧縮荷重を与えるための台座部材4の位置調整に余計な手間がかからず、試験担当者の負担増加が避けられることとなる。
【0027】
しかも、本図示例においては、前記台座部材4を、前記下部ロッド嵌入凹部4Aaが下面に形成される円柱状の下側台座4Aと、該円柱状の下側台座4Aより小径の円柱状で且つ前記試験体5が上面に配置される上側台座4Bとに分割形成し、前記下側台座4Aの上面に、該下側台座4Aに対し同芯状に前記上側台座4Bを載置可能となるよう上側台座嵌入凹部4Abを形成してあるため、万一、上側台座4Bに亀裂が生じたり或いは上側台座4Bが破損したとしても、下側台座4Aや下部ロッド2に二次的な破損等の被害が及ぶ心配がなくなり、上側台座4Bのみを交換すれば済み、コストを軽減することも可能となる。
【0028】
又、前記上部ロッド1の下面には、円錐状凹溝1aを形成すると共に、前記台座部材4上に載置される試験体5と前記上部ロッド1との間に介装され且つ試験体5に対し圧縮荷重を付与する圧子6の上面には、円錐状凹溝6aを形成し、前記上部ロッド1の円錐状凹溝1aと前記圧子6の円錐状凹溝6aとの間には、球体7を介装してあるため、試験体5に対し上面に一様な圧縮荷重をかけることが可能となる。
【0029】
更に又、前記圧子6が圧縮荷重の付与方向へ摺動自在に嵌入される圧子嵌入穴8aが穿設された試験体カバー8の下面側には、前記上側台座4Bが圧縮荷重の付与方向へ摺動自在に嵌入される上側台座嵌入穴8bを穿設し、前記試験体カバー8を、前記試験体5及び上側台座4Bを覆って前記下側台座4A上に載置されるよう配設してあるため、試験途中において万一、試験体5が破損したとしても、その破片が飛び散るようなことが避けられると共に、加熱炉内において試験体5が直に熱に晒されず、試験体5カバーで保護される形となるため、試験体5の一部分のみが加熱されて温度上昇してしまうことがなく、試験体5を均一に加熱することが可能となり、加熱ムラもなく、試験結果の信頼性を更に高めることが可能となる。
【0030】
こうして、試験体5の土台として使用される台座部材4を下部ロッド2上に安定配置し得、より信頼性の高い試験結果が得られると共に、予備試験における台座部材4の位置調整を容易且つ確実に行うことができ、試験担当者の負担軽減を図り得る。
【0031】
しかも、前記台座部材4を下側台座4Aと上側台座4Bとに分割形成したことにより、万一、上側台座4Bに亀裂が生じたり或いは上側台座4Bが破損したとしても、下側台座4Aや下部ロッド2に二次的な破損等の被害が及ぶことを回避し得、上側台座4Bのみの交換で対応し得、コスト軽減をも図り得る。
【0032】
又、前記上部ロッド1の下面に円錐状凹溝1aを形成すると共に、前記圧子6の上面に円錐状凹溝6aを形成し、前記上部ロッド1の円錐状凹溝1aと前記圧子6の円錐状凹溝6aとの間に球体7を介装したことにより、試験体5に対し上面に一様な圧縮荷重をかけることができる。
【0033】
更に又、前記上側台座4Bが圧縮荷重の付与方向へ摺動自在に嵌入される上側台座嵌入穴8bと前記圧子6が圧縮荷重の付与方向へ摺動自在に嵌入される圧子嵌入穴8aとが穿設された試験体カバー8を、前記試験体5を覆うよう配設したことにより、試験途中において万一、試験体5が破損したような場合に、その飛散を防止し得ると共に、加熱炉3内における試験体5の加熱ムラをも防止し得、試験結果の更なる信頼性向上を図り得る。
【0034】
尚、本発明の圧縮試験装置は、上述の図示例にのみ限定されるものではなく、試験を加熱炉3内で行う場合に限らず、加熱を伴わない単なる圧縮試験にも適用可能なこと、又、球体7や試験体カバー8は必要に応じて省略することも可能なこと等、その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明を実施する形態の一例を示す要部拡大側断面図である。
【図2】本発明を実施する形態の一例を示す分解斜視図である。
【図3】従来の圧縮試験装置の一例を示す要部拡大側断面図である。
【符号の説明】
【0036】
1 上部ロッド
1a 円錐状凹溝
2 下部ロッド
3 加熱炉
4 台座部材
4A 下側台座
4Aa 下部ロッド嵌入凹部
4Ab 上側台座嵌入凹部
4B 上側台座
5 試験体
6 圧子
6a 円錐状凹溝
7 球体
8 試験体カバー
8a 圧子嵌入穴
8b 上側台座嵌入穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部ロッドと下部ロッドとの間に配置される試験体に対し圧縮荷重を付与して該試験体に生じる歪を計測するようにした圧縮試験装置において、
前記下部ロッド上に載置され且つ前記試験体が上面に配置される台座部材と、
前記下部ロッドの上端部が嵌入され且つ下部ロッドに対し同芯状に前記台座部材を載置可能となるよう該台座部材下面に形成される下部ロッド嵌入凹部と、
前記台座部材上に載置される試験体と前記上部ロッドとの間に介装され且つ試験体に対し圧縮荷重を付与する圧子と
を備えたことを特徴とする圧縮試験装置。
【請求項2】
前記台座部材を、前記下部ロッド嵌入凹部が下面に形成される下側台座と、前記試験体が上面に配置される上側台座とに分割形成し、
前記下側台座の上面に、該下側台座に対し同芯状に前記上側台座を載置可能となるよう上側台座嵌入凹部を形成した請求項1記載の圧縮試験装置。
【請求項3】
前記上部ロッドの下面に円錐状凹溝を形成すると共に、前記圧子の上面に円錐状凹溝を形成し、前記上部ロッドの円錐状凹溝と前記圧子の円錐状凹溝との間に球体を介装した請求項2記載の圧縮試験装置。
【請求項4】
前記上側台座が圧縮荷重の付与方向へ摺動自在に嵌入される上側台座嵌入穴と前記圧子が圧縮荷重の付与方向へ摺動自在に嵌入される圧子嵌入穴とが穿設された試験体カバーを、前記試験体を覆うよう配設した請求項2又は3記載の圧縮試験装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate