説明

圧電アクチュエータ駆動装置、電子機器、その駆動方法、その駆動制御プログラム、そのプログラムを記録した記録媒体

制御回路131は、電源電圧の低下速度が基準低下速度よりも速い場合、すなわち駆動効率が悪く電力消費量が多い駆動周波数で駆動している場合や、何らかの要因によって圧電アクチュエータAが起動できない場合には、所定駆動周波数に戻してから駆動周波数変更を再実行させる。従って、起動失敗を検出するまでの時間が長期化することなく、電源電圧の低下速度に基づいて起動失敗等が即座に判断でき、この判断に要する時間が短縮化されるので、異常の検知から駆動信号の最適化までの処理を迅速に実行することができるとともに、電力消費量を低減して省電力化が実現できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電アクチュエータ駆動装置、電子機器、電子機器の駆動方法、電子機器の駆動制御プログラム、このプログラムを記録した記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
圧電素子は、電気エネルギーから機械エネルギーへの変換効率や、応答性に優れている。このため、近年、圧電素子の圧電効果を利用した各種の圧電アクチュエータが開発されている。
この圧電アクチュエータとしては、圧電素子を有する振動体を主要構成要素とするものであり、例えば、この振動体を、一端に被駆動体と当接する突起部を有する板状の補強板と、この補強板の両面に貼設された圧電素子と、これら圧電素子の上面に設けられた駆動用電極およびこの駆動用電極と電気的に絶縁する検出用電極とで構成したものがある。そして、振動体の駆動用電極に所定の交流電圧を印加し、振動体をその長手方向に伸縮させる縦振動で励振させるとともに、この縦振動の振動方向と直交する方向に揺動する屈曲振動を誘発させる圧電アクチュエータの駆動装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このような駆動装置による駆動制御により、圧電アクチュエータは、振動体の突起部が楕円軌道を描くように回転し、該突起部と当接する被駆動体を駆動する。ここで、被駆動体を高効率で駆動するためには、圧電アクチュエータの振動体に設計上の最適な駆動周波数を有する交流電圧を印加して所定の縦振動および屈曲振動を生じさせる必要がある。しかしながら、駆動装置の回路特性や温度、駆動トルク等の影響により、常時設計上の最適な駆動周波数を印加することは困難である。このため、この駆動装置は、圧電素子に設けられた検出用電極から検出信号を検出し、この検出信号に基づいて駆動用電極に印加する交流電圧の駆動周波数を調整するフィードバック制御を実施している。
【0004】
具体的に、駆動用電極に印加される交流電圧の位相と、検出用電極から検出される検出信号の位相との位相差、または、複数の検出用電極から検出される検出信号間の位相差が、駆動用電極に印加される交流電圧の駆動周波数に依存することが知られている。そこで、この駆動装置では、圧電アクチュエータの設計上の最適な駆動周波数に相当する前述の位相差を、目標位相差として予め設定しておき、検出した位相差が予め設定した目標位相差に近づくように、駆動用電極に印加する交流電圧の駆動周波数を調整する。このようなフィードバック制御を実施することにより、圧電アクチュエータの振動体に最適な駆動周波数を有する交流電圧を印加することが可能となり、圧電アクチュエータを所定の縦振動および屈曲振動で励振させ、被駆動体を高効率で駆動させることを可能としている。
【0005】
しかし、特許文献1の駆動装置では、検出用電極から検出される検出信号に基づいてフィードバック制御を実施するため、何らかの要因で圧電アクチュエータの駆動開始(起動)に失敗してしまった場合や、駆動中に異常な駆動状態となってしまった場合などには、正常な検出信号が得られずに駆動周波数の調整が適切に実行できない可能性がある。
このような事態を回避して圧電アクチュエータを駆動させることができる駆動制御方法としては、圧電アクチュエータの起動に失敗したことや異常な駆動状態を検知した場合に、駆動信号の駆動周波数を初期値に戻し、この初期値から最適な駆動周波数に達するまで、駆動周波数を逐次変更(スイープ)しながら駆動信号を印加する方法が知られている(例えば、特許文献2参照)。
この駆動制御方法によれば、圧電アクチュエータの起動時において、駆動しようとする被駆動体の駆動が検出されなかった場合に、駆動周波数を初期値である高い周波数に戻すとともに、低い周波数に向かってスイープし直すことで、駆動信号の駆動周波数を最適な駆動周波数に合致させることができるようになっている。
【特許文献1】国際公開第02/078165号パンフレット
【特許文献2】特開平6−6990号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2の駆動制御方法では、圧電アクチュエータが正常に起動されたか否かの判断が、被駆動体の駆動を検出することで行われるため、被駆動体の駆動が検出されるまでの間は、起動に失敗していたとしても、駆動効率が良くない(最適でない)駆動周波数の駆動信号を印加し続けなければならない。このため、圧電アクチュエータの起動に失敗した場合には、再スイープを開始するか否かを判断するまでに時間が掛かるとともに、多くの電力を消費してしまうという問題がある。
【0007】
本発明の目的は、迅速かつ省電力に駆動信号の最適化を実施することができる圧電アクチュエータ駆動装置、電子機器、その駆動方法、その駆動制御プログラム、そのプログラムを記録した記録媒体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の圧電アクチュエータの駆動装置は、圧電素子に所定の駆動周波数を有する駆動信号が与えられることにより振動する振動体を有した圧電アクチュエータを駆動する圧電アクチュエータの駆動装置であって、前記駆動信号を前記振動体の圧電素子に供給する駆動手段と、前記振動体の振動を検出するとともに、検出した検出信号を出力する振動検出手段と、前記検出信号から検知される振動体の振動状態が目標振動状態に近づくように前記駆動信号の駆動周波数を変更させる駆動周波数変更手段と、電源電圧および前記圧電アクチュエータの駆動電圧のうちの少なくとも一方を検出する電圧検出手段と、前記駆動信号の駆動周波数を所定駆動周波数から増加または減少させる駆動周波数変更処理を前記駆動周波数変更手段に実行させるとともに、前記電圧検出手段で検出した電圧の低下速度に基づき、この低下速度が予め設定した基準低下速度よりも速い場合には、駆動周波数を前記所定駆動周波数に戻してから前記駆動周波数変更処理を再実行させる制御手段とを備えたことを特徴とする。
【0009】
なお、電源電圧および圧電アクチュエータの駆動電圧のうちの少なくとも一方の低下速度としては、駆動周波数の変更処理開始時点からの時間に基づいて算出される速度でもよく、また変更処理の変更回数に基づいて算出される速度でもよい。すなわち、低下速度とは、電源電圧や駆動電圧が低下する低下量を、その低下に要した時間または回数で除して算出した速度を意味する。
また、圧電アクチュエータの駆動電圧としては、電源から直接供給される電源電圧と同一の電圧でもよく、電源と圧電アクチュエータとの間に設けた昇圧回路等を介して昇圧された電圧でもよく、さらに降圧回路等を介して降圧された電圧でもよい。
【0010】
このような本発明によれば、電源電圧や駆動電圧の低下速度が基準低下速度よりも速い場合、すなわち駆動効率が悪く電力消費量が多い駆動周波数で駆動している場合や、何らかの要因によって起動できない場合には、所定駆動周波数に戻してから駆動周波数変更を再実行(再スイープ)させることで、圧電アクチュエータの再起動が実行される。
従って、従来の駆動制御方法のように起動失敗を検出するまでの時間が長期化することなく、圧電アクチュエータの起動に失敗した場合などにおいて、電源電圧や駆動電圧の低下速度に基づいて起動失敗が即座に判断でき、この判断に要する時間が短縮化されるので、異常の検知から駆動信号の最適化までの処理を迅速に実行することができるとともに、電力消費量を低減して省電力化が実現できる。
また、圧電アクチュエータの起動に成功した場合でも、駆動中に何らかの要因(温度や駆動トルク等)により、駆動信号の駆動周波数が最適な駆動周波数からずれてしまうことがある。このような場合でも、最適な駆動周波数からずれたことにより駆動効率が大きく低下すれば、電源電圧や駆動電圧の低下速度が大きくなるため、この低下速度に基づいて再スイープすることで、圧電アクチュエータが再起動され、その駆動信号を最適な駆動周波数に合致させることができる。
【0011】
この際、本発明の圧電アクチュエータの駆動装置では、前記基準低下速度は、前記圧電アクチュエータの所要の起動時間に基づいて設定されており、前記制御手段は、前記圧電アクチュエータの駆動開始時において、前記電源電圧および前記圧電アクチュエータの駆動電圧のうちの少なくとも一方の低下速度に基づく前記駆動周波数変更処理を前記駆動周波数変更手段に実行させることが好ましい。
ここで、圧電アクチュエータの所要の起動時間とは、圧電アクチュエータに駆動信号を印可してから被駆動体が駆動開始(回転開始)されるまでの時間を意味し、試験や実験等に基づいて予め設定しておくことができる。
なお、起動時間の定義としては、個々の圧電アクチュエータの振動特性や、被駆動体から作用する抵抗(回転トルク等)に応じ、設計上必要とされる駆動速度(回転速度等)に達するまでの時間であってもよく、このように定義した起動時間に基づいて基準低下速度を設定してもよい。さらに、これらの他に、被駆動体が所定の駆動状態(回転速度等)に達するまでの時間を起動時間として定義してもよい。
このような構成によれば、圧電アクチュエータの所要の起動時間に基づいて基準低下速度を設定することで、圧電アクチュエータの起動の成否がより高精度に判断でき、起動に失敗した場合の再スイープまでに要する時間をさらに短縮化することができる。
さらに、圧電アクチュエータの起動時間を、駆動信号の印可から被駆動体が駆動開始されるまでの時間に設定しておけば、電源電圧や駆動電圧が急激に降下したような場合にも、駆動開始されない周波数で駆動信号を印加し続けてしまう事態を回避でき、電力の消費をさらに抑制することができる。
【0012】
また、本発明の圧電アクチュエータの駆動装置では、前記駆動周波数変更手段は、前記駆動信号と前記検出信号との位相差を検出する位相差検出手段と、前記位相差と予め設定された目標位相差とを比較する比較手段とを有し、この比較結果に基づいて前記位相差が前記目標位相差に近づくように前記駆動信号の駆動周波数を変更させることが好ましい。
このような構成によれば、位相差検出手段で検出した位相差と目標位相差との比較に基づいて、駆動周波数変更手段によってフィードバック制御が実施されるので、迅速に駆動周波数を変更することができる。すなわち、前述したように、駆動信号および検出信号の位相差と駆動電圧の駆動周波数との依存性が知られており、この依存性は、共振周波数をまたぐ駆動周波数領域において、大きな位相差(例えば、180°近く)から小さな位相差(例えば、0°近く)まで変化するものとなっている。このため、位相差と目標位相差との大小から、駆動周波数を増加させるか減少させるかが即座に決定でき、制御を迅速化させることができる。
【0013】
この際、本発明の圧電アクチュエータの駆動装置では、前記制御手段は、目標振動状態を実現させるための周波数よりも高い周波数を開始周波数として前記駆動周波数変更処理を前記駆動周波数変更手段に開始させることが好ましい。
ここで、目標振動状態を実現させるための周波数よりも高い周波数とは、最適な駆動周波数よりも高い周波数を意味し、この高い周波数を開始周波数として、この開始周波数から減少する方向に周波数をスイープさせた場合に、圧電アクチュエータの特性や回路特性、温度等の使用環境などの影響による誤差を考慮しても、最適な駆動周波数に合致させることができる範囲で適宜設定可能な周波数である。
このような構成によれば、駆動周波数を目標振動状態を実現させるための周波数よりも高い周波数である開始周波数から低い周波数に向かって減少させ(スイープさせ)ることで、電力消費を抑制しつつ、最適な駆動周波数に合致させることができる。すなわち、圧電アクチュエータに関して、共振周波数において消費電力が極大になり、この共振周波数よりも若干高い駆動周波数で駆動することで駆動効率が高くなることが知られている。このため、低い周波数から高い周波数に向かってスイープさせると共振周波数を通過することになるが、高い周波数から低い周波数に向かってスイープさせると共振周波数を通過しないので、高い周波数からスイープを開始させた方が電源の消費を抑制することができる。
【0014】
さらに、本発明の圧電アクチュエータの駆動装置では、前記制御手段は、前記電源電圧および前記圧電アクチュエータの駆動電圧のうちの少なくとも一方が予め設定した駆動停止電圧を下回るまでの時間を計測するタイマを有し、このタイマで計測した時間が予め設定した基準時間よりも短ければ、前記低下速度が前記基準低下速度よりも速いと判断することが好ましい。
このような構成によれば、タイマで計測した駆動停止電圧を下回るまでの時間と、電圧検出手段で検出した電源電圧や駆動電圧および駆動停止電圧との関係から、電源電圧や駆動電圧の低下速度を即座に算出することができ、圧電アクチュエータを再起動させるか否かを迅速に判断することができる。
【0015】
また、本発明の圧電アクチュエータの駆動装置では、前記駆動周波数変更手段は、アップダウンカウンタを有し、このアップダウンカウンタのカウンタ値に基づいて前記駆動信号の駆動周波数を変更させ、前記制御手段は、前記電源電圧および前記圧電アクチュエータの駆動電圧のうちの少なくとも一方の低下速度が前記基準低下速度よりも速いと判断した場合には、前記アップダウンカウンタのカウンタ値を初期化して前記駆動周波数変更処理を再実行させることが好ましい。
また、前記駆動周波数変更手段は、積分回路を有し、この積分回路の出力値に基づいて前記駆動信号の駆動周波数を変更させ、前記制御手段は、前記電源電圧および前記圧電アクチュエータの駆動電圧のうちの少なくとも一方の低下速度が前記基準低下速度よりも速いと判断した場合には、前記積分回路の出力値を初期化して前記駆動周波数変更処理を再実行させるようにしてもよい。
これらの構成によれば、アップダウンカウンタのカウンタ値や積分回路の出力値に基づいて駆動信号の駆動周波数をスイープさせるとともに、カウンタ値(出力値)を初期化(リセット)することで、駆動周波数を初期値である所定駆動周波数に戻して圧電アクチュエータを再起動させることができ、駆動制御を容易に実施できるとともに、制御回路等を簡単な構造にすることができる。
【0016】
一方、本発明の電子機器は、前記いずれかの圧電アクチュエータの駆動装置と、これにより駆動される圧電アクチュエータと、電源とを備えたことを特徴とする。
この際、本発明の電子機器は、前記圧電アクチュエータによって駆動される日付表示機構を備えた電子時計であることが望ましい。
このような構成によれば、電子時計の日付表示機構の駆動において、前述と同様の効果を奏することができるとともに、圧電アクチュエータによる電子時計の小型化および薄型化を促進させることができる。そして、圧電アクチュエータで駆動する日付表示機構は、常に駆動され続けるものではなく、1日のうちで限られた時間だけ駆動され、かつ所定の駆動量(回転量)だけ駆動されればよいため、駆動開始時に適切に圧電アクチュエータを駆動させることのできる本発明の駆動制御が適している。
また、腕時計などの携帯用電子時計では、電源である電池や二次電池の大きさ(容量)が限られているため、電力消費を抑制できることの効果は大きい。特に、二次電池の放電末期などでは、電源電圧や圧電アクチュエータの駆動電圧が低下しやすくなっているため、電圧の低下速度に基づいて再起動させることで、圧電アクチュエータの駆動を確実に実施することができる。
【0017】
一方、本発明の電子機器の駆動方法は、圧電素子に所定の駆動周波数を有する駆動信号が与えられることにより振動する振動体を有した圧電アクチュエータと、前記振動体の圧電素子に電力を供給する電源とを備えた電子機器を駆動する電子機器の駆動方法であって、前記振動体の振動を検出するとともに、検出した検出信号を出力する振動検出工程と、電源電圧および前記圧電アクチュエータの駆動電圧のうちの少なくとも一方を検出する電圧検出工程と、前記検出信号から検知される振動体の振動状態が目標振動状態に近づくように前記駆動信号の駆動周波数を所定駆動周波数から増加または減少させる駆動周波数変更工程と、前記電圧検出工程で検出した電圧の低下速度に基づき、この低下速度が予め設定した基準低下速度よりも速い場合には、駆動周波数を前記所定駆動周波数に戻してから前記駆動周波数変更工程を再実行させる制御工程とを備えたことを特徴とする。
【0018】
さらに、圧電アクチュエータの駆動方法として、圧電素子に所定の駆動周波数を有する駆動信号が与えられることにより振動する振動体を有した圧電アクチュエータを、前記振動体の圧電素子に前記駆動信号を供給する駆動手段を用いて駆動する圧電アクチュエータの駆動方法であって、前記振動体の振動を検出するとともに、検出した検出信号を出力する振動検出工程と、電源電圧および前記圧電アクチュエータの駆動電圧のうちの少なくとも一方を検出する電圧検出工程と、前記検出信号から検知される振動体の振動状態が目標振動状態に近づくように前記駆動信号の駆動周波数を所定駆動周波数から増加または減少させる駆動周波数変更工程と、前記電圧検出工程で検出した電圧の低下速度に基づき、この低下速度が予め設定した基準低下速度よりも速い場合には、駆動周波数を前記所定駆動周波数に戻してから前記駆動周波数変更工程を再実行させる制御工程とを備えた方法を採用してもよい。
【0019】
このような本発明によれば、前述の駆動装置と同様に、異常の検知から駆動信号の最適化までの処理を迅速に実行することができるとともに、電力消費量を低減して省電力化が実現できる。
【0020】
また、本発明の電子機器の駆動制御プログラムは、圧電素子に所定の駆動周波数を有する駆動信号が与えられることにより振動する振動体を有した圧電アクチュエータと、前記振動体の圧電素子に電力を供給する電源とを備えた電子機器を駆動制御する電子機器の駆動制御プログラムであって、コンピュータを、前記駆動信号を前記振動体の圧電素子に供給する駆動手段と、前記振動体の振動を検出するとともに、検出した検出信号を出力する振動検出手段と、前記検出信号から検知される振動体の振動状態が目標振動状態に近づくように前記駆動信号の駆動周波数を変更させる駆動周波数変更手段と、電源電圧および前記圧電アクチュエータの駆動電圧のうちの少なくとも一方を検出する電圧検出手段と、前記駆動信号の駆動周波数を所定駆動周波数から増加または減少させる駆動周波数変更処理を前記駆動周波数変更手段に実行させるとともに、前記電圧検出手段で検出した電圧の低下速度に基づき、この低下速度が予め設定した基準低下速度よりも速い場合には、駆動周波数を前記所定駆動周波数に戻してから前記駆動周波数変更処理を再実行させる制御手段とのうちの少なくとも制御手段として機能させることを特徴とする。
【0021】
さらに、圧電アクチュエータの駆動制御プログラムとして、圧電素子に所定の駆動周波数を有する駆動信号が与えられることにより振動する振動体を有した圧電アクチュエータを駆動制御する圧電アクチュエータの駆動制御プログラムであって、コンピュータを、前記駆動信号を前記振動体の圧電素子に供給する駆動手段と、前記振動体の振動を検出するとともに、検出した検出信号を出力する振動検出手段と、前記検出信号から検知される振動体の振動状態が目標振動状態に近づくように前記駆動信号の駆動周波数を変更させる駆動周波数変更手段と、電源電圧および前記圧電アクチュエータの駆動電圧のうちの少なくとも一方を検出する電圧検出手段と、前記駆動信号の駆動周波数を所定駆動周波数から増加または減少させる駆動周波数変更処理を前記駆動周波数変更手段に実行させるとともに、前記電圧検出手段で検出した電圧の低下速度に基づき、この低下速度が予め設定した基準低下速度よりも速い場合には、駆動周波数を前記所定駆動周波数に戻してから前記駆動周波数変更処理を再実行させる制御手段とのうちの少なくとも制御手段として機能させるプログラムを採用してもよい。
【0022】
このような本発明によれば、コンピュータを、電子機器の駆動制御手段である駆動手段、振動検出手段、位相差検出手段、駆動周波数変更手段、電圧検出手段、制御手段の一部または全部として機能させることで、前述の駆動装置と同様に、異常の検知から駆動信号の最適化までの処理を迅速に実行することができるとともに、電力消費量を低減して省電力化が実現できる。
【0023】
一方、本発明の記録媒体は、前記した電子機器の駆動制御プログラム、または圧電アクチュエータの駆動制御プログラムがコンピュータにて読み取り可能に記録されたものでであることが好ましい。
このような構成によれば、圧電アクチュエータまたは電子機器の駆動制御プログラムを変更、改良した際にも、そのプログラムをコンピュータに容易に読み取らせて、プログラムをアップデートすることができる。
【発明の効果】
【0024】
以上の本発明によれば、迅速かつ省電力に駆動信号の最適化を実施することができる圧電アクチュエータ駆動装置、電子機器、その駆動方法、その駆動制御プログラム、そのプログラムを記録した記録媒体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
[図1]本発明の第1実施形態に係る電子機器の概略構成を示す図。
[図2]前記電子機器における日付表示機構の詳細な構成を示す平面図。
[図3]本発明の圧電アクチュエータにおける振動状態を示す図。
[図4]前記圧電アクチュエータの駆動制御装置を示すブロック図。
[図5]前記圧電アクチュエータの駆動制御方法を説明するためのフローチャート。
[図6]前記駆動制御方法の一部を説明するためのフローチャート。
[図7]前記駆動制御装置の動作を示すタイミングチャート。
[図8]本発明の第2実施形態に係る電子機器の概略構成を示す図。
[図9]前記電子機器における動作を示すタイミングチャート。
[図10]本発明の第3実施形態に係る電子機器を示す斜視図。
[図11]前記電子機器における桁表示部を示す詳細構成正面図。
【符号の説明】
【0026】
1…電子時計(電子機器)、9…二次電池(電源)、10…日付表示機構、12…振動体、100,100A…駆動制御装置(駆動制御回路)、110…ドライバ(駆動手段)、120…駆動周波数変更手段、123…位相差DC変換回路(位相差検出手段)、124…位相差比較回路(比較手段)、126…アップダウンカウンタ、130…制御手段、131…制御回路、132…タイマ、A…圧電アクチュエータ(駆動手段)。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
[1.第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態を図面に基づいて説明する。
なお、後述する第2実施形態以降では、以下に説明する第1実施形態での構成部品と同じ部品および同様な機能を有する部品には同一符号を付し、説明を簡単にあるいは省略する。
[1−1.全体構成]
図1は、本実施形態における電子機器としての電子時計1の概略構成を示す図である。図2は、電子時計1における日付表示機構10の詳細な構成を示す平面図である。
図1に示すように、電子時計1は、時刻を表示する指針2と、この指針2を駆動するステッピングモータ3とを備えた腕時計である。ステッピングモータ3の駆動は、発振回路4、分周回路5、および駆動回路6により制御される。発振回路4は、水晶振動子からなる基準発振源を有し、基準パルスを出力するものである。分周回路5は、発振回路4から出力された基準パルスを入力し、この基準パルスに基づいて基準信号(例えば1Hzの信号)を生成する。駆動回路6は、分周回路5から出力された基準信号に基づいて、ステッピングモータ3を駆動するモータ駆動パルスを発生する。
電子時計1の日付表示機構10は、圧電アクチュエータAと、この圧電アクチュエータAを駆動制御する駆動制御装置100とを備えている。この駆動制御装置100は、電子時計1の時刻(例えば、24時)を検出して開閉するスイッチ8をトリガーとして作動し、日付表示機構10を駆動するようになっている。
【0028】
図2に示すように、日付表示機構10の主要部は、圧電アクチュエータAと、この圧電アクチュエータAによって回転駆動される駆動対象としてのロータ20と、ロータ20の回転を減速しつつ伝達する減速輪列と、減速輪列を介して伝達される駆動力により回転する日車50とから大略構成されている。減速輪列は、日回し中間車30と日回し車40とを備えている。これらの圧電アクチュエータA、ロータ20、日回し中間車30、および日回し車40は、底板11に支持されている。圧電アクチュエータAは、扁平な短冊状の振動体12を有しており、この振動体12は、その先端の当接部13がロータ20の外周面と当接するように配置されている。
【0029】
日付表示機構10の上方には、円盤状の文字板7(図1)が設けられており、この文字板7の外周部の一部には日付を表示するための窓部7Aが設けられ、窓部7Aから日車50の日付を覗けるようになっている。また、底板11の下方(裏側)には、ステッピングモータ3に接続されて指針2を駆動する運針輪列や、電源としての二次電池9等が設けられている。二次電池9は、発電機9A(図4)からの充電を受け、ステッピングモータ3や圧電アクチュエータA、駆動制御装置100の各回路に電力を供給する。発電機9Aは、ソーラー(太陽光)発電や回転錘の回転を利用した発電を行い、発電した電力を二次電池9に充電するものである。ここで、発電機9Aとして直流電力を発電する太陽電池を用いた場合には、逆流防止回路を介して二次電池9に接続することが望ましく、発電機9Aとして交流電力を発電する回転錘やゼンマイ等を用いた場合には、整流回路を介して二次電池9に接続することが望ましい。
なお、電源は、発電機9Aで充電される二次電池9に限らず、一般的な一次電池(例えば、リチウムイオン電池)でもよい。
【0030】
日回し中間車30は、大径部31と小径部32とから構成されている。小径部32は、大径部31よりも若干小径の円筒形であり、その外周面には、略正方形状の切欠部33が形成されている。この小径部32は、大径部31に対し、同心をなすように固着されている。大径部31には、ロータ20の上部の歯車21が噛合している。したがって、大径部31と小径部32とからなる日回し中間車30は、ロータ20の回転に連動して回転する。
日回し中間車30の側方の底板11には、板バネ34が設けられており、この板バネ34の基端部が底板11に固定され、先端部34Aが略V字状に折り曲げられて形成されている。板バネ34の先端部34Aは、日回し中間車30の切欠部33に出入可能に設けられている。板バネ34に近接した位置には、接触子35が配置されており、この接触子35は、日回し中間車30が回転し、板バネ34の先端部34Aが切欠部33に入り込んだときに、板バネ34と接触するようになっている。そして、板バネ34には、所定の電圧が印加されており、接触子35に接触すると、その電圧が接触子35にも印加される。従って、接触子35の電圧を検出することによって、日送り状態を検出でき、日車50の1日分の回転量が検出できる。
なお、日車50の回転量は、板バネ34や接触子35を用いたものに限らず、ロータ20や日回し中間車30の回転状態を検出して所定のパルス信号を出力するものなどが利用でき、具体的には、公知のフォトリフレクタ、フォトインタラプタ、MRセンサ等の各種の回転エンコーダ等が利用できる。
【0031】
日車50は、リング状の形状をしており、その内周面に内歯車51が形成されている。日回し車40は、五歯の歯車を有しており、日車50の内歯車51に噛合している。また、日回し車40の中心には、シャフト41が設けられており、このシャフト41は、底板11に形成された貫通孔42に遊挿されている。貫通孔42は、日車50の周回方向に沿って長く形成されている。そして、日回し車40およびシャフト41は、底板11に固定された板バネ43によって図2の右上方向に付勢されている。この板バネ43の付勢作用によって日車50の揺動も防止される。
【0032】
圧電アクチュエータAの振動体12は、二長辺と二短辺とにより囲まれた長方形状の板である。また、振動体12は、2枚の長方形かつ板状の圧電素子の間に、これらの圧電素子と略同形状であり、かつ圧電素子よりも肉厚の薄いステンレス鋼等の補強板を挟んだ積層構造を有している。圧電素子としては、チタン酸ジルコニウム酸鉛(PZT(商標))、水晶、ニオブ酸リチウム、チタン酸バリウム、チタン酸鉛、メタニオブ酸鉛、ポリフッ化ビニリデン、亜鉛ニオブ酸鉛、スカンジウムニオブ酸鉛等の各種のものを用いることができる。
振動体12は、一短辺の幅方向略中央部分に当接部13を有している。この当接部13は、補強板を切断成形する等の方法により得られたものであり、緩やかな曲面を持った先端部分を圧電素子から突出させている。振動体12は、この当接部13の先端をロータ20の外周面に当接させる姿勢を保っている。振動体12にこのような姿勢を維持させるために、支持部材14と付勢部材15とが圧電アクチュエータAに設けられている。
【0033】
圧電アクチュエータAの支持部材14は、補強板の切断成形等の方法により補強板と一体形成されたものである。この支持部材14は、L字状の部材であり、振動体12の一長辺の略中央から垂直に突出した垂直部と、この垂直部の先端から長辺に対して平行にロータ20側に向けて延びた水平部とからなる。垂直部とは反対側の水平部の端部には、底板11から突出したピンが貫通しており、このピンを回転軸として支持部材14およびこれに固定された振動体12が回転可能である。支持部材14の水平部の略中央には、付勢部材15の一端が係合されている。付勢部材15は、その略中央部分を底板11から突出したピンが貫通しており、このピンを回転軸として回動可能である。また、支持部材14と反対側の付勢部材15の端部は、底板11に係合されており、この端部の位置を変えることにより振動体12の当接部13をロータ20の外周面に押し当てる圧力が調整可能になっている。
【0034】
以上の構成において、圧電アクチュエータAの振動体12は、駆動制御装置100から所定の周波数の駆動信号が圧電素子に印加されることで第1の振動モードである縦振動と、この縦振動に誘発されて第2の振動モードである屈曲振動とが発生し、その板面を含む平面内において当接部13が楕円軌道を描いて運動する。ロータ20は、この振動体12の当接部13によってその外周面が叩かれ、図2中矢印で示すように、時計回りに回転駆動される。このロータ20の回転は、日回し中間車30を介して日回し車40に伝達され、この日回し車40が日車50を時計回り方向に回転させる。このような振動体12からロータ20、ロータ20から減速輪列(日回し中間車30および日回し車40)、減速輪列から日車50への力の伝達は、いずれも振動体12の底板11面に平行な方向の力の伝達である。このため、ステッピングモータのようにコイルやロータを厚さ方向に積み重ねるのではなく、同一平面内に振動体12およびロータ20を配置し、日付表示機構10を薄型化できる。そして、日付表示機構10を薄型にできるため、電子時計1全体を薄型にできる。
【0035】
[1−2.圧電アクチュエータAの駆動制御装置の構成]
先ず、駆動制御装置100の構成を説明する前に、振動体12の振動状態と印加される駆動信号の駆動周波数との関係について、図3に基づいて説明する。
図3は、駆動電圧信号の駆動周波数に対する、振動体12の振動状態(検出信号と駆動電圧信号との位相差、圧電アクチュエータAの消費電力、および駆動効率)の関係を示す図である。ここで、検出信号は、振動体12の圧電素子に配置された振動検出手段としての振動検出電極(圧電素子)から得られる信号であり、振動体12の振動を表すものである。同図において、実線で示された位相差、および破線で示された消費電力は、駆動電圧の駆動周波数の増加に伴って低下し、一点鎖線で示された駆動効率は、特定の駆動周波数(本実施形態では、276kHz近傍の周波数)でピークを有するようになっている。すなわち、圧電アクチュエータAの駆動効率は、駆動電圧の駆動周波数に依存し、駆動効率に優れた最適な駆動周波数(最適駆動周波数f0、目標振動状態を実現させるための周波数)が存在することが分かる。
そして、最適駆動周波数f0よりも小さい駆動周波数で圧電アクチュエータAを駆動した場合には、消費電力が急激に増大し、駆動効率が著しく低下するとともに、最適駆動周波数f0から外れた(図中、274kHz未満や276.5kHzを超える範囲の)周波数では、駆動効率が0(ゼロ)、すなわち圧電アクチュエータAが駆動できない、あるいは駆動できても設計通りに作動しないことになる。
なお、図3のグラフにおける数値は、特定の圧電アクチュエータAに関する実測値を例示したものであって、本発明の圧電アクチュエータAにおける駆動電圧信号の駆動周波数や、位相差、消費電力、駆動効率等を限定するものではない。
【0036】
次に、本実施形態の駆動制御装置について、図4に基づいて説明する。
本実施形態の駆動制御装置100は、ICチップ上に回路として実装されたものであって、上述のような振動体12の振動状態と駆動信号の駆動周波数との関係から、最適駆動周波数f0となる位相差を目標位相差として設定し、駆動時に検出される位相差が目標位相差に近づくように、振動体12に印加する駆動電圧信号の駆動周波数を変更して圧電アクチュエータAをフィードバック制御する。また、駆動制御装置100は、圧電アクチュエータAの起動時に最適駆動周波数f0よりも十分に高い周波数(初期周波数fmax)から順次周波数を減少させて、駆動電圧信号の駆動周波数を最適周波数f0に合致させるスイープ制御を実施するものでもある。
【0037】
図4は、本実施形態の駆動制御装置100を示すブロック図である。
図4に示すように、圧電アクチュエータAを駆動制御する駆動制御装置100は、圧電アクチュエータAに駆動信号を送る駆動手段としてのドライバ110と、圧電アクチュエータAからの検出信号とドライバ110からの駆動信号を入力して駆動信号の駆動周波数を変更させる駆動周波数変更手段120と、駆動周波数変更手段120の動作を制御する制御手段130と、二次電池9から供給される電源電圧を検出する電圧検出手段としての電圧検出回路140とを備えている。また、図4中、CR発信回路150は、駆動周波数変更手段120および制御手段130に電子時計1の基本時計駆動信号(CLK)を出力するもので、前記発信回路4と同一のものである。
【0038】
駆動周波数変更手段120は、第1および第2の波形整形回路121,122と、位相差検出手段としての位相差DC変換回路123と、比較手段としての位相差比較回路124と、アップダウンカウンタ126と、DA変換回路127と、可変周波数発振回路128とを備えている。すなわち、駆動周波数変更手段120は、ドライバ110から振動体12に出力される駆動信号と、この駆動信号を振動体12の駆動電極に印加した結果、振動体12の振動により振動検出電極から出力される検出信号とを検出し、これらの駆動信号と検出信号との位相差を検出するとともに、検出した位相差と最適駆動周波数f0に基づいて設定した目標位相差とを比較し、比較結果に基づいて駆動信号の駆動周波数を変更し、この変更された駆動周波数信号をドライバ110に出力するものである。ドライバ110は、振動体12の駆動電極と電気的に接続され、可変周波数発振回路128から出力される出力信号を増幅し、駆動信号を振動体12の駆動電極に印加する回路である。
【0039】
第1および第2の波形整形回路121,122は、それぞれドライバ110および振動体12の振動検出電極と電気的に接続され、ドライバ110から出力される駆動信号、および振動検出電極から出力される検出信号を入力し、これらの駆動信号および検出信号の波形を整形し、整形した駆動信号および検出信号を位相差DC変換回路123に出力する回路である。
位相差DC変換回路123は、波形整形回路121,122にて整形された駆動信号および検出信号の位相差に応じた信号を出力する回路である。この位相差DC変換回路123は、図示しない位相差検出部と、平均電圧変換部とを備えている。位相差検出部は、駆動信号および検出信号の位相差に相当するパルス幅の位相差信号を生成し、この位相差信号を平均電圧変換部に出力する。平均電圧変換部は、位相差検出部から出力される位相差信号を平均化し、駆動信号および検出信号の位相差に比例したレベルの位相差信号を位相差比較回路124に出力する。
【0040】
位相差比較回路124は、位相差DC変換回路123から出力される位相差信号の電圧値と、最適駆動周波数f0に基づいて設定された目標位相差125に相当する比較電圧値とを比較して、比較結果である比較情報をアップダウンカウンタ126に出力する。この位相差比較回路124は、例えば、コンパレータ等から構成され、位相差信号の電圧値が比較電圧値以下である場合に、比較情報としてのハイレベルの信号(H)をアップダウンカウンタ126に出力する。また、位相差信号の電圧値が比較電圧値よりも大きい場合に比較情報としてのローレベルの信号(L)をアップダウンカウンタ126に出力する。これにより、ドライバ110から出力される駆動信号の駆動周波数を設計上の最適な駆動周波数f0近傍にロックする駆動制御を実施する。
【0041】
アップダウンカウンタ126は、位相差比較回路124から出力される比較情報(HまたはLの信号)に基づいて、可変周波数発振回路128に駆動信号の駆動周波数を変更させる回路であり、図示しない2つのANDゲートを備えている。このANDゲートは、位相差比較回路124から出力される比較情報の信号(HまたはL)と、CR発信回路150から発信されるCLK信号とを入力し、このCLK信号の入力タイミングに応じて、比較情報がハイレベルの信号(H)であればアップカウント入力を実施し、比較情報がローレベルの信号(L)であればダウンカウント入力を実施する。アップダウンカウンタ126は、例えば、12ビットのカウンタ等から構成されており、ANDゲートからのアップカウント入力またはダウンカウント入力により、カウンタ値をアップあるいはダウンし、12ビットのカウンタ値をD/A変換回路127に出力する。
【0042】
D/A変換回路127は、内部にアップダウンカウンタ126のカウンタ値に応じた周波数制御電圧値が設定されている。そして、このD/A変換回路127は、アップダウンカウンタ126から出力されるカウンタ値を入力すると、このカウンタ値に応じた周波数制御電圧値に相当する周波数制御電圧信号を可変周波数発振回路128に出力する。
可変周波数発振回路128は、D/A変換回路127から出力される周波数制御電圧信号に応じた周波数で発振し、その信号をドライバ110に出力する。そして、ドライバ110は、可変周波数発振回路128から出力される出力信号に応じた駆動周波数の駆動信号を振動体12の駆動電極に印加する。
【0043】
制御手段130は、電圧検出回路140で検出した電源電圧に基づいて、駆動周波数変更手段120による駆動信号の駆動周波数変更処理を制御する。すなわち、制御手段130は、後述する圧電アクチュエータAの起動工程におけるスイープ制御と、圧電アクチュエータAの間欠駆動制御の二種類の制御を実施する。
この制御手段130は、制御回路131と、タイマ132とを備えている。タイマ132は、CR発信回路150から発信されるCLK信号とを入力し、このCLK信号に応じて時間情報を制御回路131に出力する。制御回路131は、スイープ制御中や間欠駆動制御中に、時間情報をリセットする指令をタイマ132に出力する。また、制御回路131には、電圧検出回路140からの電源電圧信号が入力し、この電源電圧信号によって制御回路131は、二次電池9の電源電圧値を検知する。
【0044】
そして、制御回路131は、電圧検出回路140からの電源電圧信号およびタイマ132からの時間情報に基づいて、アップダウンカウンタ126またはドライバ110に制御信号を出力する。すなわち、圧電アクチュエータAのスイープ制御を実施する際には、制御回路131は、アップダウンカウンタ126に初期化信号を出力し、カウンタ値を0にして駆動信号の駆動周波数を初期周波数fmaxに初期化する。また、圧電アクチュエータAの間欠駆動制御を実施する際には、制御回路131は、ドライバ110に停止信号または再開信号を出力し、ドライバ110から圧電アクチュエータAへの駆動信号の出力を停止または再開させる。
このような制御回路131による制御は、電源電圧に基づいて実施されるもので、具体的には、圧電アクチュエータAの起動時、または電源電圧の低下速度が基準低下速度よりも早い場合には、スイープ制御が実施される。そして、圧電アクチュエータAの起動後で、電源電圧の低下速度が基準低下速度よりも遅い場合には、間欠駆動制御が実施される。
【0045】
また、制御回路131は、スイッチ8からの駆動開始信号をトリガーとして作動し、CR発信回路150から発信されるCLK信に基づいて、圧電アクチュエータAを起動させる。また、制御回路131には、前記日付表示機構10の回転検出手段である板バネ34および接触子35からの回転検出信号が入力し、この信号に基づいて制御回路131は、ドライバ110に停止信号を送り、圧電アクチュエータAの駆動を完了させるようになっている。
すなわち、日付表示機構10の板バネ34と接触子35との接触回数から、日回し中間車30の回転数が検出され、検出した回転数が回転検出信号として制御回路131に入力する。これにより、圧電アクチュエータAの所定の駆動量、つまり日車50の1日分の回転量が検出できる。なお、日車50の回転量は、板バネ34や接触子35を用いたものに限らず、ロータ20や日回し中間車30の回転状態を検出して所定のパルス信号を出力するものなどが利用でき、具体的には、公知のフォトリフレクタ、フォトインタラプタ、MRセンサ等の各種の回転エンコーダ等が利用できる。
【0046】
なお、駆動周波数変更手段120は、アップダウンカウンタ126に替えて図示しない積分回路を備えていてもよく、この積分回路の出力値に基づいて駆動信号の駆動周波数を変更させるように構成されてもよい。積分回路は、コンデンサを有して構成され、このコンデンサに蓄積された電荷の量を出力値としてD/A変換回路127に出力することで、駆動信号の駆動周波数が変更される。そして、駆動信号の駆動周波数を初期化する場合には、制御回路131からの指令によりコンデンサの電荷を放電して、電荷が0の状態に対して設定した初期周波数fmaxに初期化するようにすればよい。
【0047】
[1−3.圧電アクチュエータAの駆動制御方法]
図5は、圧電アクチュエータAの駆動制御方法を説明するためのフローチャートである。図6は、駆動制御方法の一部を説明するためのフローチャートである。図7は、駆動制御装置100の動作を示すタイミングチャートである。
以下に、図5〜7を参照して、上述した駆動制御装置100による圧電アクチュエータAの駆動方法を説明する。
スイッチ8からの駆動開始信号を受けた制御回路131は、駆動開始信号をドライバ110に出力し、圧電アクチュエータAの駆動を開始させる(ステップS1)。
【0048】
次に、図6に示すステップS2の起動工程において、制御回路131は、電圧検出回路140に指令し、電源電圧の測定を開始させる(ステップS21、電圧検出工程)。
そして、制御回路131は、アップダウンカウンタ126に初期化信号を出力し、カウンタ値を0にして駆動信号の駆動周波数を初期周波数(所定駆動周波数)fmaxにセットする(ステップS22)。
【0049】
続くステップS23において、制御回路131は、タイマ132からの時間信号と、電圧検出回路140からの電源電圧信号とに基づいて、電源電圧の低下速度が基準低下速度よりも速いか否かを判断する。ここで、基準低下速度は、図7に示すように、駆動開始電圧V1から駆動停止電圧V2まで電源電圧が低下するのに要する時間が基準時間t0の場合の低下速度である。ここで、基準時間t0は、圧電アクチュエータAの起動時間に基づいて設定されており、例えば、起動時間が1msec程度の圧電アクチュエータAの場合に、基準時間t0は2msec程度に設定されている。すなわち、電源電圧が駆動停止電圧V2まで低下する時間tが、基準時間t0よりも短い場合に電源電圧の低下速度が基準低下速度よりも速いと判断され、基準時間t0よりも長い場合に電源電圧の低下速度が基準低下速度よりも速いと判断される。
【0050】
ステップS23(制御工程)において、電源電圧の低下速度が基準低下速度よりも速い(「Yes」)、つまり図7において、実線で示すように電圧が早期に低下し、基準時間t0よりも短い時間t1で駆動停止電圧V2まで低下してしまった場合には、再度ステップS22に戻り、駆動周波数を初期周波数fmaxから再度スイープさせる。すなわち、電源電圧がすぐに低下してしまう(駆動効率が悪い)ことから、圧電アクチュエータAの起動に失敗したと判断し、再起動させることになる。この再起動させる場合には、所定の時間だけ圧電アクチュエータAを停止させておき、電源電圧が駆動開始電圧V1に回復するまで待機する。ここで、圧電アクチュエータAの起動に失敗したと判断される場合としては、ドライバ110から駆動信号を印加しているにも関わらず圧電アクチュエータAが駆動開始できない場合や、スイープの途中で検出信号がばらついたことで、駆動周波数が最適駆動周波数f0を飛び越えてしまい最適駆動周波数f0よりも低い周波数の駆動信号になってしまう場合などが考えられる。このような場合には、駆動効率が悪くなってしまうため、電源電圧が急激に低下することになる。ここで、圧電アクチュエータAが駆動開始できない、あるいは検出信号がばらつく原因としては、静電気によるノイズや、衝撃、振動などで圧電アクチュエータAの振動状態が一時的に変化することなどが挙げられる。
また、ステップS23において、電源電圧の低下速度が基準低下速度よりも遅い(「No」)、つまり図7において、一点鎖線で示すように電圧が基準時間t0よりも長い時間t2で駆動停止電圧V2まで低下する場合には、圧電アクチュエータAの起動に成功したと判断し、次のステップS24に移行する。
【0051】
ステップS24において、駆動周波数が逐次減少される駆動信号と検出信号との位相差を目標位相差と比較し、位相差が目標位相差に達するまでの間、すなわちステップS24で「No」と判定した場合には、ステップS25の駆動周波数手段において、アップダウンカウンタ126のカウンタ値が増加し、カウンタ値に対応して駆動周波数が逐次減少させる周波数のスイープを行い(駆動周波数変更工程)、ステップS23に戻って再度電源電圧の低下速度を判断する。
一方、ステップS24において、位相差が目標位相差に達した場合(「Yes」)、つまり位相差比較回路124にて位相差が目標位相差を上回ったと判断した場合には、次のステップS26に移行する。
ステップS26において、目標位相差に達した時点の周波数(最適駆動周波数f0)に駆動信号の駆動周波数をロックして、図5のステップS3に移行して圧電アクチュエータAの駆動を継続させる。
以上のステップS21〜S26によって圧電アクチュエータAのスイープ制御が実行される。
【0052】
以上のようにして起動に成功し、最適駆動周波数f0近傍で駆動されている圧電アクチュエータAは、後述するステップS3において、日回し中間車30の回転数が所定の回転数を上回った場合に完了される。
また、所定の回転数に達するまでの間、つまりステップS3で「No」と判定した場合には、ステップS4において、電源電圧Vと最低動作電圧V2とを比較し、電源電圧Vが最低動作電圧V2を上回っている間、圧電アクチュエータAの駆動を継続する。つまりステップS4において、「Yes」と判定した場合に、日回し中間車30の回転数が所定の回転数を上回るまでの間、ドライバ110は、駆動信号を印加し続け、圧電アクチュエータAが作動し続ける。そして、圧電アクチュエータAが作動し続けることで、図7に示すように、電池電圧Vは、徐々に低下することになる。
制御回路131は、ステップS4において、「No」と判定した場合、すなわち、電源電圧Vが最低動作電圧V2を下回った場合には、駆動停止を指令する駆動停止信号をドライバ110に出力し、圧電アクチュエータAの駆動を停止させる(ステップS5)。そして、圧電アクチュエータAの駆動を停止させることで、図7に示すように、電池電圧Vは、徐々に回復することになる。
【0053】
これに続いてステップS6において、電源電圧Vが駆動開始電圧V1を下回っている間、つまりステップS6において、「No」と判定した場合には、制御回路131は、圧電アクチュエータAの駆動を停止させた状態を維持し、電源電圧Vが駆動開始電圧V1に回復するまで待機することになる。
そして、電源電圧Vが駆動開始電圧V1を上回った場合、つまりステップS6において、「Yes」と判定した場合に、制御回路131は、駆動再開を指令する駆動再開信号をドライバ110に出力し、圧電アクチュエータAの駆動を再開させる(ステップS7)。このように圧電アクチュエータAの駆動を再開した後にステップS3に戻り、日回し中間車30の回転数が所定の回転数を上回るまでの間、圧電アクチュエータAが間欠駆動される。
以上のように、ステップS4〜S7で圧電アクチュエータAの駆動停止および再開を繰り返すことで、間欠駆動制御が実行される。また間欠駆動中においては、駆動周波数変更手段120の位相差比較回路124で検出信号と駆動信号との位相差が比較されるとともに、アップダウンカウンタ126のカウント値が変更され、これに基づいて駆動信号の駆動周波数が最適駆動周波数f0から外れないように調整されるフィードバック制御が実行されている。
【0054】
そして、制御回路131は、ステップS3において、回転検出手段から入力した回転検出信号に基づき、日回し中間車30の回転数が所定の回転数を上回ったかどうか、つまり日車50が1日分だけ回転したかどうかを判断する。日車50の回転数が不足している場合、つまりステップS10において、「No」と判定した場合には、圧電アクチュエータAの駆動を継続し、日車50が所定量だけ回転してステップS3で「Yes」と判定した場合には、駆動停止信号をドライバ110に出力して圧電アクチュエータAの駆動を停止させ、駆動制御を完了する。
なお、以上の駆動制御において、日車50の回転量が所定量に達するまでに、電池電圧Vが最低動作電圧V2を下回ることがなければ、圧電アクチュエータAは、その駆動開始から駆動完了まで停止されることなく駆動されることになる。
【0055】
また、前述のステップS21〜S26までのスイープ制御は、圧電アクチュエータAの起動時のみに実行されるものに限らず、間欠駆動中に実行するようにしてもよい。
すなわち、起動時にスイープ制御により駆動信号の駆動周波数を最適駆動周波数f0に合致させたとしても、駆動中に何らかの理由で駆動周波数が最適駆動周波数f0からずれてしまう場合がある。ここで、圧電アクチュエータAの駆動周波数が最適駆動周波数f0からずれてしまう原因としては、静電気によるノイズや、衝撃、振動などで圧電アクチュエータAの振動状態が一時的に変化することなどが挙げられる。また、駆動周波数が最適駆動周波数f0からずれるのではなく、温度や駆動トルクの変動などにより、最適駆動周波数f0自体の周波数が変動してしまう場合がある。このような場合には、駆動信号の駆動周波数をフィードバック制御により調整したとしても、駆動効率が悪化するために消費電力が大きくなってしまい、電源電圧が低下しやすくなる。このため、間欠駆動中においても、制御回路131は、タイマ132からの時間信号と、電圧検出回路140からの電源電圧信号とに基づいて電源電圧の低下速度を監視し、低下速度が基準低下速度よりも速くなった場合には、ステップS21〜S26までのスイープ制御を再度実行する。このようにすることで、圧電アクチュエータAの駆動効率を常時安定させることができる。
【0056】
[1−4.第1実施形態の効果]
上述した実施形態では、以下のような効果がある。
(1)すなわち、圧電アクチュエータAの起動に失敗した場合などの駆動効率が悪化した場合に、電源電圧の低下速度に基づいて駆動効率の悪化を即座に判断することで、すぐに再起動(再スイープ)させることができ、この判断に要する時間が従来よりも短縮化されるので、異常の検知から駆動信号の最適化までの処理を迅速に実行することができるとともに、電力消費量を低減して省電力化が実現できる。
【0057】
(2)また、圧電アクチュエータAの駆動中に何らかの要因により駆動信号の駆動周波数が最適駆動周波数f0からずれてしまった場合でも、最適駆動周波数f0からずれたことにより駆動効率が大きく低下すれば、電源電圧の低下速度が大きくなるため、この低下速度に基づいて再スイープすることで、圧電アクチュエータAの駆動信号を最適な駆動周波数に合致させることができる。
【0058】
(3)さらに、圧電アクチュエータAの起動時間に基づいて基準低下速度(基準時間t0)を設定することで、圧電アクチュエータAの起動の成否がより高精度に判断でき、起動に失敗した場合の再スイープまでに要する時間をさらに短縮化することができる。
【0059】
(4)また、位相差の比較に基づいてフィードバック制御するようにしたので、位相差DC変換回路123で検出した検出信号および駆動電圧信号の位相差と、目標位相差との大小から、位相差比較回路124において、駆動周波数を増加させるか減少させるかが即座に決定でき、駆動制御を迅速化することができる。
【0060】
(5)また、スイープ制御において、初期周波数fmaxから低い周波数に向かって減少させる、すなわち消費電力が小さい高い周波数側からスイープさせることで、共振周波数を通過しないために電力消費を抑制しつつ、最適駆動周波数f0に合致させることができる。
【0061】
(6)また、タイマ132で計測した駆動停止電圧V2を下回るまでの時間と、電圧検出回路140で検出した電源電圧との関係から、電源電圧の低下速度を即座に算出することができ、圧電アクチュエータAを再起動させるか否かを迅速に判断することができる。
【0062】
(7)アップダウンカウンタ126のカウンタ値(または、積分回路の出力値)に基づいて駆動信号の駆動周波数をスイープさせるとともに、カウンタ値を初期化(リセット)することで、駆動周波数を初期周波数fmaxに戻して圧電アクチュエータAを再起動させることができ、スイープ制御を容易に実施できるとともに、駆動制御装置100の回路を簡単な構造にすることができる。
【0063】
(8)また、圧電アクチュエータAにより日付表示機構10を駆動することで、小型薄型の構成でありながら、高効率の駆動を実現でき、電子時計1の小型化が実現できる。さらに、圧電アクチュエータAで駆動する日付表示機構10は、常時駆動され続けるものではなく、1日のうちで限られた時間だけ駆動され、かつ所定の駆動量(回転量)だけ駆動されればよいため、駆動開始時に適切に圧電アクチュエータAを起動させることのできるスイープ制御が適している。
【0064】
(9)さらに、腕時計である電子時計1では、電源である二次電池9の大きさ(容量)が限られているため、電力消費を抑制できることの効果は大きい。特に、二次電池9の放電末期などでは、電源電圧が低下しやすくなっているため、電圧の低下速度に基づいて再起動させることで、圧電アクチュエータAの駆動を確実に実施することができる。
【0065】
[2.第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態を図8、図9に基づいて説明する。
本実施形態における電子機器としての電子時計1の構成は、前記第1実施形態と略同様であり、その詳細説明を省略する。そして、本実施形態の電子時計1は、電源9と時刻表示部および日付表示機構10との関係、および時刻表示部(指針2)の駆動タイミングと日付表示機構10の駆動タイミングとの関係に特徴がある。この特徴部分について、以下に詳しく説明する。
【0066】
[2−1.電源および圧電アクチュエータAの駆動制御装置の構成]
図8は、本実施形態における電子機器としての電子時計1の概略構成を示す図である。
図8において、電子時計1の電源である大容量コンデンサ(二次電池)9は、昇圧回路9B、補助コンデンサ9C、および定電圧回路9Dを介して時刻表示部の駆動部である発振回路4、分周回路5、駆動回路6、およびステッピングモータ3に接続されている。一方、大容量コンデンサ9は、前記第1実施形態における図4に示したものと同様の制御手段130および電圧検出回路(電圧検出手段)140を介して日付表示機構10の駆動制御回路100Aに接続されている。そして、発信回路4からの基本時計駆動信号が制御手段130のタイマ132に入力するようになっている。以上のように、大容量コンデンサ9に充電された電源電圧を昇圧回路9Bで昇圧し、かつ補助コンデンサ9Cに一旦充電してから時刻表示部の駆動部に印加することで、ステッピングモータ3に安定した駆動電圧を供給することができ、指針2の運針を安定化させることができる。
【0067】
[2−2.圧電アクチュエータAの駆動制御方法]
本実施形態における圧電アクチュエータAの駆動制御方法は、電子時計1における圧電アクチュエータA以外の負荷に応じて、負荷が重ならないような動作タイミングで圧電アクチュエータAの駆動を制御するものである。
ここで、電子時計1における圧電アクチュエータA以外の負荷としては、時刻表示部のステッピングモータ3の駆動パルスや、アラームやブザー等の駆動パルス、振動モータの駆動パルス、指針2等の移動部材の位置検出用光学位置検出装置における発光ダイオードの駆動パルス等、電源電圧への負荷が大きい(重負荷な)ものが例示される。そして、以下では、重負荷なものの代表としてステッピングモータ3(秒モータ)を駆動する駆動パルスのタイミングに基づいて、圧電アクチュエータAの駆動および圧電アクチュエータAの駆動制御における電圧検出のタイミングを制御する制御方法について説明する。
【0068】
図9は、電子時計1における動作を示すタイミングチャートである。
図9において、ステッピングモータ3(秒モータ)は、分周回路5からの1Hzの基準信号に基づいた駆動パルスD1で駆動されているため、1秒間隔のタイミングで電圧降下が起きている。このような電圧降下が起きたタイミングで圧電アクチュエータAを起動させようとすると、実際の電源電圧は低下していないにもかかわらず、電源電圧が低下したものと判定され、前記駆動周波数変更手段120による駆動周波数変更が頻繁に実行されてしまう。このため、本実施形態の駆動制御方法では、発信回路4からの基本時計駆動信号に基づいて、電圧検出回路140による電圧低下の検出タイミングD3が、ステッピングモータ3(秒モータ)の駆動パルスD1のタイミングからずれるように設定されている。つまり、1Hzの基準信号の間隔(略1秒間)の間に電圧検出回路140による電圧の検出が実行され、ステッピングモータ3の駆動パルスが出力される直前から直後までの間には、電圧の検出が実行されないようになっている。そして、圧電アクチュエータAの駆動タイミングD2も検出タイミングD3と同様に、ステッピングモータ3の駆動パルスD1のタイミングからずれるように設定されている。
【0069】
以上のような本実施形態によれば、電圧低下の検出タイミングD3が、電源電圧への負荷が大きい駆動が実行されるタイミング(駆動パルスD1のタイミング)からずらされていることで、このような重負荷による影響を回避でき、電源電圧が低下しておらず正常動作しているにもかかわらず、不必要に圧電アクチュエータAの駆動周波数の変更が実行されることを防止できる。従って、電子時計1において、指針2の運針を安定化させることができるとともに、無駄な電力消費を防止してさらなる省電力化が実現できる。
【0070】
[3.第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態を図10、11に基づいて説明する。
本実施形態は駆動制御装置100(駆動制御回路100A)を携帯型の電子機器に適用した点で第1、第2実施形態と相違するものであるが、圧電アクチュエータの駆動装置の構成は前記実施形態のいずれかと同じである。ここで、第3実施形態の説明中、前記実施形態と同一の構成要素は同一符号を付して説明を省略もしくは簡略にする。
【0071】
[3−1.電子機器の構成]
本実施形態において、電子機器(携帯機器)は、決済機能を有する非接触型ICカード200であり、このICカード200に圧電アクチュエータAおよび駆動装置210が設けられている。
図10は、非接触型ICカード200の外観斜視図である。
図10において、非接触型ICカード200の表面側には、残金表示を行う残金表示カウンタ201が設けられている。
残金表示カウンタ201は、4桁の残金を表示するものであり、図11に示される通り、上位2桁を表示する上位桁表示部202と、下位2桁を表示する下位桁表示部203とを備えている。
【0072】
上位桁表示部202は、ロータ20Aを介して圧電アクチュエータAに連結されており、ロータ20Aの駆動力によって駆動される。上位桁表示部202の主要部は、送り爪を有し、ロータ20Aが1/n回転すると1回転する駆動ギア202Aと、駆動ギア202Aの1回転で1目盛分回転する第1上位桁表示車202Bと、第1上位桁表示車202Bの1回転で1目盛分回転する第2上位桁表示車202Cと、第1上位桁表示車202Bの非回転時に第1上位桁表示車202Bを固定する固定部材202Dとを備えている。なお、第2上位桁表示車202Bについても、第2上位桁表示車202Cを固定する図示しない固定部材が設けられている。
駆動ギア202Aは、ロータ20Aが1/n回転すると1回転する。そして、駆動ギア202Aの送り爪は、第1上位桁表示車202Bの送りギア部に噛合しており、第1上位桁表示車202Bは1目盛分回転することとなる。さらに、第1上位桁表示車202Bが回転し、1回転すると、第1上位桁表示車202Bに設けられている送りピンが送りギアを回転させ、第2上位桁表示車202Cの送りギアを回転させ、第2上位桁表示車202Cを1目盛分回転させることとなる。
【0073】
下位桁表示部203は、ロータ20Bを介して圧電アクチュエータAに連結されており、ロータ20Bの駆動力によって駆動される。下位桁表示部203の主要部は、送り爪を有しロータ20Bが1/n回転すると1回転する駆動ギア203Aと、駆動ギア203Aの1回転で1目盛分回転する第1下位桁表示車203Bと、第1下位桁表示車203Bの1回転で1目盛分回転する第2下位桁表示車203Cとを備えている。
第1下位桁表示車203Bは、駆動ギア203Aの送り爪に噛合する送りギア部を有しており、駆動ギア203Aの1回転で1目盛分回転する。そして、第1下位桁表示車203Bには、送りピンが設けられており、第1下位桁表示車203Bが1回転する毎に、送りギアを回転させ、第2下位桁表示車203Cを1目盛分回転させる。この場合において、第1下位桁表示車203Bおよび第2下位桁表示車203Cの固定部材(不図示)は、非回転時にそれぞれの送りギア部に噛合して第1下位桁表示車203Bおよび第2下位桁表示車203Cを固定する。
【0074】
以上の非接触型ICカード200において、アクチュエータAは、駆動装置210により同期して駆動されるように設定されており、駆動装置210は、図示しないICカードチップにより決済金額に相当する駆動制御信号が入力されることにより駆動されている。この駆動装置210の具体的な構造は前記各実施形態における駆動制御装置100と同じであるため、説明を省略する。
以上のような構成により、非接触ICカードのような薄型の携帯機器においても、機械的に残金額表示を行うことができ、駆動時以外は、電源を必要とせずに、表示を行えるので、低商品電力で表示を行えると共に、電源が無くなった場合においても、それまでの表示を保持することができる。
【0075】
[4.実施形態の変形]
なお、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、以下に示すような変形をも含むものである。
例えば、前記各実施形態では、腕時計である電子時計1および非接触型ICカード200について説明したが、電子時計としては腕時計に限定されず、置時計や柱時計等でもよい。また、電子機器としては、電子時計やICカードに限らず、各種の電子機器に本発明が適用可能であり、特に小型化が要求される携帯用の電子機器に好適である。ここで、各種の電子機器としては、時計機能を備えた電話、携帯電話、パソコン、携帯情報端末(PDA)、カメラ等が例示できる。また、時計機能を備えないカメラ、ディジタルカメラ、ビデオカメラ、カメラ機能付き携帯電話等の電子機器にも適用可能である。これらカメラ機能を備えた電子機器に適用する場合には、レンズの合焦機構や、ズーム機構、絞り調整機構等の駆動に本発明の駆動手段を用いることができる。さらに、計測機器のメータ指針の駆動機構や、可動玩具の駆動機構等に本発明の駆動手段を用いてもよい。
また、前記実施形態では、電子時計1の日付表示機構の駆動に駆動手段である圧電アクチュエータAを用いたが、これに限らず、電子時計1の時刻表示針(指針)を本発明の駆動手段で駆動してもよい。このようにすれば、指針を駆動するステッピングモータ3を圧電アクチュエータAに置き換えることで、電子時計の一層の薄型化が実現できるとともに、圧電アクチュエータAがステッピングモータよりも磁性の影響を受けにくいことから、電子時計の高耐磁化をも図ることができる。
【0076】
さらに、本発明では、駆動制御装置100内の各手段等を各種論理回路素子等のハードウェアで構成したが、これに限らず、CPU(中央処理装置)、メモリ(記憶装置)等を備えたコンピュータを電子機器内に設け、このコンピュータに所定のプログラムやデータ(各記憶部に記憶されたデータ)を組み込んで各手段を実現させるように構成したものでもよい。
ここで、前記プログラムやデータは、電子機器内に組み込まれたRAMやROM等のメモリに予め記憶しておけばよい。また、例えば、電子機器内のメモリに所定の制御プログラムやデータをインターネット等の通信手段や、CD−ROM、メモリカード等の記録媒体を介してインストールしてもよい。そして、メモリに記憶されたプログラムでCPU等を動作させて、各手段を実現させればよい。なお、時計や携帯機器に所定のプログラム等をインストールするには、その時計や携帯機器にメモリカードやCD−ROM等を直接差し込んで行ってもよいし、これらの記憶媒体を読み取る機器を外付けで時計や携帯機器に接続してもよい。さらには、LANケーブル、電話線等を時計や携帯機器に接続して通信によってプログラム等を供給しインストールしてもよいし、無線によってプログラムを供給してインストールしてもよい。
【0077】
また、前記実施形態では、振動体12の振動状態を表すものとして検出信号と駆動電圧信号との位相差を検出し、この位相差と目標位相差との比較に基づいて駆動信号の駆動周波数を変更するようにしたが、これに限定されない。すなわち、振動体12の振動状態を表すものとしては、検出信号の電圧値や電流値を用いてもよく、これら検出信号の電圧値や電流値と、駆動信号の電圧値や電流値とを比較するようにしてもよい。
さらに、目標位相差は予め設定された一定値に限らず、振動体12の振動状態に応じて、適宜変更可能に構成されていてもよい。
【0078】
また、前記実施形態では、スイープ制御の際に、初期周波数fmaxである高い周波数から駆動周波数を減少させたが、これに限らず、低い周波数を初期値として、この初期値から周波数を増加させてもよい。さらに、前回(前日)駆動時の最適周波数f0を記憶させておき、この前回値を初期値として用いてもよい。
さらに、前記実施形態では、タイマ132を用いて電源電圧の低下速度を算出するようにしたが、これに限らず、カウンタ等を用いてスイープ制御中の周波数変更処理回数をカウントし、このカウント値に基づいて電源電圧の低下速度を算出するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明は、圧電アクチュエータ駆動装置、電子機器、電子機器の駆動方法、電子機器の駆動制御プログラム、このプログラムを記録した記録媒体として利用できる。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】

【図11】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電素子に所定の駆動周波数を有する駆動信号が与えられることにより振動する振動体を有した圧電アクチュエータを駆動する圧電アクチュエータの駆動装置であって、
前記駆動信号を前記振動体の圧電素子に供給する駆動手段と、
前記振動体の振動を検出するとともに、検出した検出信号を出力する振動検出手段と、
前記検出信号から検知される振動体の振動状態が目標振動状態に近づくように前記駆動信号の駆動周波数を変更させる駆動周波数変更手段と、
電源電圧および前記圧電アクチュエータの駆動電圧のうちの少なくとも一方を検出する電圧検出手段と、
前記駆動信号の駆動周波数を所定駆動周波数から増加または減少させる駆動周波数変更処理を前記駆動周波数変更手段に実行させるとともに、前記電圧検出手段で検出した電圧の低下速度に基づき、この低下速度が予め設定した基準低下速度よりも速い場合には、駆動周波数を前記所定駆動周波数に戻してから前記駆動周波数変更処理を再実行させる制御手段と
を備えたことを特徴とする圧電アクチュエータの駆動装置。
【請求項2】
請求項1に記載の圧電アクチュエータの駆動装置において、
前記基準低下速度は、前記圧電アクチュエータの所要の起動時間に基づいて設定されており、
前記制御手段は、前記圧電アクチュエータの駆動開始時において、前記電源電圧および前記圧電アクチュエータの駆動電圧のうちの少なくとも一方の低下速度に基づく前記駆動周波数変更処理を前記駆動周波数変更手段に実行させることを特徴とする圧電アクチュエータの駆動装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の圧電アクチュエータの駆動装置において、
前記駆動周波数変更手段は、前記駆動信号と前記検出信号との位相差を検出する位相差検出手段と、前記位相差と予め設定された目標位相差とを比較する比較手段とを有し、この比較結果に基づいて前記位相差が前記目標位相差に近づくように前記駆動信号の駆動周波数を変更させることを特徴とする圧電アクチュエータの駆動装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の圧電アクチュエータの駆動装置において、
前記制御手段は、目標振動状態を実現させるための周波数よりも高い周波数を開始周波数として前記駆動周波数変更処理を前記駆動周波数変更手段に開始させることを特徴とする圧電アクチュエータの駆動装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載の圧電アクチュエータの駆動装置において、
前記制御手段は、前記電源電圧および前記圧電アクチュエータの駆動電圧のうちの少なくとも一方が予め設定した駆動停止電圧を下回るまでの時間を計測するタイマを有し、このタイマで計測した時間が予め設定した基準時間よりも短ければ、前記低下速度が前記基準低下速度よりも速いと判断することを特徴とする圧電アクチュエータの駆動装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれかに記載の圧電アクチュエータの駆動装置において、
前記駆動周波数変更手段は、アップダウンカウンタを有し、このアップダウンカウンタのカウンタ値に基づいて前記駆動信号の駆動周波数を変更させ、
前記制御手段は、前記電源電圧および前記圧電アクチュエータの駆動電圧のうちの少なくとも一方の低下速度が前記基準低下速度よりも速いと判断した場合には、前記アップダウンカウンタのカウンタ値を初期化して前記駆動周波数変更処理を再実行させることを特徴とする圧電アクチュエータの駆動装置。
【請求項7】
請求項1から請求項5のいずれかに記載の圧電アクチュエータの駆動装置において、
前記駆動周波数変更手段は、積分回路を有し、この積分回路の出力値に基づいて前記駆動信号の駆動周波数を変更させ、
前記制御手段は、前記電源電圧および前記圧電アクチュエータの駆動電圧のうちの少なくとも一方の低下速度が前記基準低下速度よりも速いと判断した場合には、前記積分回路の出力値を初期化して前記駆動周波数変更処理を再実行させることを特徴とする圧電アクチュエータの駆動装置。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれかに記載の圧電アクチュエータの駆動装置と、これにより駆動される圧電アクチュエータと、電源とを備えたことを特徴とする電子機器。
【請求項9】
請求項8に記載の電子機器において、
前記圧電アクチュエータによって駆動される日付表示機構を備えた電子時計であることを特徴とする電子機器。
【請求項10】
圧電素子に所定の駆動周波数を有する駆動信号が与えられることにより振動する振動体を有した圧電アクチュエータと、前記振動体の圧電素子に電力を供給する電源とを備えた電子機器を駆動する電子機器の駆動方法であって、
前記振動体の振動を検出するとともに、検出した検出信号を出力する振動検出工程と、
電源電圧および前記圧電アクチュエータの駆動電圧のうちの少なくとも一方を検出する電圧検出工程と、
前記検出信号から検知される振動体の振動状態が目標振動状態に近づくように前記駆動信号の駆動周波数を所定駆動周波数から増加または減少させる駆動周波数変更工程と、
前記電圧検出工程で検出した電圧の低下速度に基づき、この低下速度が予め設定した基準低下速度よりも速い場合には、駆動周波数を前記所定駆動周波数に戻してから前記駆動周波数変更工程を再実行させる制御工程と
を備えたことを特徴とする電子機器の駆動方法。
【請求項11】
圧電素子に所定の駆動周波数を有する駆動信号が与えられることにより振動する振動体を有した圧電アクチュエータと、前記振動体の圧電素子に電力を供給する電源とを備えた電子機器を駆動制御する電子機器の駆動制御プログラムであって、
コンピュータを、
前記駆動信号を前記振動体の圧電素子に供給する駆動手段と、
前記振動体の振動を検出するとともに、検出した検出信号を出力する振動検出手段と、
前記検出信号から検知される振動体の振動状態が目標振動状態に近づくように前記駆動信号の駆動周波数を変更させる駆動周波数変更手段と、
電源電圧および前記圧電アクチュエータの駆動電圧のうちの少なくとも一方を検出する電圧検出手段と、
前記駆動信号の駆動周波数を所定駆動周波数から増加または減少させる駆動周波数変更処理を前記駆動周波数変更手段に実行させるとともに、前記電圧検出手段で検出した電圧の低下速度に基づき、この低下速度が予め設定した基準低下速度よりも速い場合には、駆動周波数を前記所定駆動周波数に戻してから前記駆動周波数変更処理を再実行させる制御手段と
のうちの少なくとも制御手段として機能させることを特徴とする電子機器の駆動制御プログラム。
【請求項12】
請求項11に記載の電子機器の駆動制御プログラムがコンピュータにて読み取り可能に記録されたことを特徴とする記録媒体。

【国際公開番号】WO2005/088823
【国際公開日】平成17年9月22日(2005.9.22)
【発行日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−518821(P2005−518821)
【国際出願番号】PCT/JP2005/004768
【国際出願日】平成17年3月17日(2005.3.17)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】