説明

在庫数の適正化方法

【課題】材料の搬入量の調整を行っていない場合に、保管倉庫に保管する複数の材料の在庫数を的確に調整して、材料を後工程の設備にスムースに供給することのできる在庫数の適正化方法を提供する。
【解決手段】保管倉庫10に保管される各材料P〜Sについて、上記材料を消費する後工程の設備の台数nと、上記設備の材料消費能力kと、各材料の現有在庫数Nとしたときに、M(%)=N÷(k・n)×100で表わされるような、当該材料の在庫充足率MP〜MSを算出し、保管倉庫10が満載になった場合には、上記在庫充足率Mが大きい材料Pと材料Sとを一時保管場所12に払い出して空きスペースを作っておき、在庫充足率Mが小さな材料Qと材料Rが保管倉庫10に送られてきたときに、上記材料Q,Rを上記空きスペースに直ちに保管することができるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保管倉庫に保管される複数の設備から搬入された複数種の材料の在庫数を適正化する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
前工程の各設備が多品種の材料を生産し、後工程の各設備がそれらの材料を元に生産を行う製造工程においては、一般に、上記前工程で生産した各種材料を保管倉庫に保管しておき、この保管倉庫から後工程の各設備に払い出すようにしている。
このような保管倉庫に保管される複数種の材料の在庫数を適正化する方法としては、保管倉庫内の各材料の在庫数と、上記材料が後工程で消費される総量とに基づいて、前工程で生産する生産量を調整したり、上記保管倉庫に搬入する材料の搬入量を調整する方法が一般的である(例えば、特許文献1参照)。
一方、前工程から搬入される材料の搬入量が一定しておらず、搬入量の調整が困難な場合や、搬入量の調整が行われていない場合には、単に、後工程に払い出された材料の分の空きスペースに前後工程で生産した材料を順次保管する方法が一般的であった。
【特許文献1】特開2001−151314号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記のように、材料の搬入量の調整を行っていない場合には、前工程から送られてきた材料の種類の如何にかかわらず、空きスペースがあった場合には、送られてきた材料が上記空きスペースに保管されるため、保管倉庫が満載となったときに、供給に余裕のある材料の在庫数は十分であるのに、すぐにでも後工程に供給する必要のある材料が保管されていないといった不具合点が生じる場合がある。この場合には、前工程で生産した材料を保管倉庫に送ろうとしても、空きスペースができるまでは保管倉庫に上記材料を搬入することができないので、上記材料を後工程に供給することができず、そのため、生産効率が低下してしまうといった問題点があった。
【0004】
本発明は、従来の問題点に鑑みてなされたもので、材料の搬入量の調整を行っていない場合に、保管倉庫に保管する複数の材料の在庫数を的確に調整して、材料を後工程の設備にスムースに供給することのできる在庫数の適正化方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、鋭意検討の結果、保管倉庫に保管されている各材料のうち、在庫数に余裕のある材料を割り出して、この材料の一部を一時他の場所に払い出して空きスペースを作っておくようにすれば、在庫数の少ない材料が送られてきたときには、これを直ちに保管倉庫に搬入することができるので、後工程の設備への材料の供給をスムースに行うことができることを見出し本発明に到ったものである。
すなわち、本願の請求項1に記載の発明は、前工程の複数の設備で生産され、後工程の複数の設備に払い出される複数種の材料を保管する保管倉庫の在庫数を適正化する方法であって、各材料を消費する設備の台数と、上記設備の材料消費能力と、各材料の現有在庫数とに基づいて、各材料の在庫充足率を算出し、在庫スペースの占有率が所定の値よりも大きくなった場合には、上記算出された在庫充足率の高い材料から順に当該材料の一部を別途設けられた一時保管場所に払い出し、上記保管倉庫の空きスペースを確保するようにしたことを特徴とするものである。
【0006】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の在庫数の適正化方法において、当該材料の現有在庫数をN、上記材料を消費する設備の台数をn、上記設備の単位時間当たりの材料消費量をkとしたとき、当該材料の在庫充足率Mを下記の式(1)を用いて算出することを特徴とする。
式(1)‥‥M(%)=N÷(k・n)×100
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の在庫数の適正化方法において、当該材料を消費する設備が非稼動状態にある場合には、上記設備の台数nと材料消費能力kとの積である総消費能力(k・n)を1より小さい値に設定して当該材料の在庫充足率Mを算出するようにしたものである。
請求項4に記載の発明は、請求項2または請求項3に記載の在庫数の適正化方法において、当該材料の在庫充足率が所定の値以上になったときに、上記材料を一時保管場所に払い出すようにしたものである。
請求項5に記載の発明は、請求項1〜請求項4のいずれかに記載の在庫数の適正化方法において、一時保管場所に保管された材料の総数が所定数以上になったときには、上記材料を上記保管施設に再搬入するようにしたものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、材料の保管倉庫において保管する各材料の在庫数を適正化するため、後工程の設備の台数数nと、上記設備の材料消費能力kと、各材料の現有在庫数Nとに基づいて、例えば、M(%)=N÷(k・n)×100で表わされるような、当該材料の在庫充足率Mを算出し、在庫スペースの占有率が所定の値(例えば、100%)よりも大きくなった場合には、上記算出された在庫充足率Mの高い材料から順に当該材料の一部を別途設けられた一時保管場所に払い出して空きスペースを作るようにしたので、在庫数の少ない材料が送られてきたときには、これを直ちに保管倉庫に搬入することができ、後工程の各設備に所望の材料をスムースに供給することができる。なお、上記一時保管場所に保管された材料の総数が所定数以上になったときには、これらの材料を保管倉庫に再搬入するようにすれば、一時保管場所のスペースが狭い場合でも、在庫充足率Mの高い材料をスムースに一時保管場所に払い出しすることができる。
また、当該材料を消費する設備が非稼動状態にある場合には、上記設備の台数nと材料消費能力kとの積(k・n)を1より小さい値に設定して当該材料の在庫充足率Mを算出するようにすれば、空きスペースを更に広げることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の最良の形態について、図面に基づき説明する。
図1は、本最良の形態に係る材料供給フローの概要を示す図で、10は図示しない前工程の各設備で生産され、保管用搬送ライン11を介して搬入される複数種の材料P〜Sを保管する保管倉庫で、これらの材料P〜Sは、払い出しラインLA〜LDを介して、各設備A〜Dに払い出される。なお、本例では、前工程から搬入される材料P〜Sの数量、搬入時期はランダムであるとし、上記保管倉庫10には、現在、材料Pがp個、材料Qがq個、材料Rがr個、材料Sがs個保管されているものとする。
また、設備Aは材料Pを消費する設備であり、その台数はnA台で消費能力はa個/時間である。また、材料Qを消費する設備Bの台数はnB台で消費能力はb個/時間、材料Rを消費する設備Cの台数はnC台で消費能力はc個/時間、材料Sを消費する設備Dの台数はnD台でその消費能力はd個/時間である。なお、本例では、上記設備A〜Dのうち、設備A〜Cが現在稼働中であり、設備Dは停止中の設備とする。
本例では、各材料の在庫数N(p,q,r,s)と、各設備A〜Dの材料消費能力k(図では使用量:a,b,c,d)と各設備A〜Dの台数n(nA,nB,nC,nD)とを用い、以下の式(1)により各材料P〜Sの在庫充足率Mを算出し、この在庫充足率Mに基づいて各材料P〜Sの在庫数が適性であるかどうかを判断するようにしている。
M(%)=N÷(k・n)×100‥‥(1)
なお、停止中の設備Dについては、設備の台数nDと材料消費能力dとの積である総消費能力(nD・d)を、実際の台数nDと材料消費能力dの値にかかわらず、1より小さい値(例えば、0.5)に設定して上記材料Sの在庫充足率Mを算出する。
そして、上記算出された在庫充足率Mが大きい材料については、在庫数が過剰である判断し、当該材料の一部を一時保管場所12に払い出して空きスペースを作る。これにより、上記算出された在庫充足率Mが小さな材料が搬入された場合には、直ちにこの材料を保管倉庫10に保管することができるので、従来のような、前工程で生産した材料を保管倉庫10に搬入できないといった問題点を解消することができる。
【0009】
ここで、上記在庫充足率Mについて具体的な数値を用いて詳細に説明する。
現在、保管倉庫10の在庫状況として、材料Pが5個、材料Qが1個、材料Rが2個、材料Sが1個保管されているとする。また、材料Pを消費する設備Aは2台あり、その消費能力を1個/時間、材料Qを消費する設備Bは3台あり、その消費能力は2個/時間、材料Rを消費する設備Cは4台あり、その消費能力は1個/時間とする。なお、設備Dは停止中なので、材料Sについては、nD・k=0.5として在庫充足率MSを計算する。
上記の数値を用いて計算すると、各材料の在庫充足率Mは以下のようになる。
材料P‥‥MP=5÷(1×2)×100=250%、
材料Q‥‥MQ=2÷(2×3)×100=33%、
材料R‥‥MR=1÷(1×4)×100=25%、
材料S‥‥MS=1÷0.5×100=200%、
この場合、材料Qと材料Rとは在庫数が適性値(例えば、在庫充足率Mが100%となる数量:N=k・n)より少ないが、材料Pと材料Sとは在庫数が適性値を大幅に越えている。そこで、保管倉庫10が満載になった場合には、上記材料Pと材料Sとを一時保管場所12に払い出して空きスペースを作っておけば、上記材料Q,Rが保管倉庫10に送られてきたときに、上記材料Q,Rを上記空きスペースに直ちに保管することができる。これにより、空きスペースができるまでは上記材料Q,Rを保管倉庫10に搬入することができないといった問題点を解消することができるとともに、在庫数が適性値より少ない材料Q,Rについてはその在庫数を増やすことができ、在庫数が適性値より多い材料P,Sについてはその在庫数を減らすことができるので、保管倉庫10の在庫数を適性値に近づけることがる。
なお、上記一時保管場所12は、一般には、保管倉庫10よりも狭い場所であるので、一時保管できる材料数には限りがある。したがって、上記一時保管場所12に保管された材料の総数が所定数以上、例えば、一時保管できる材料数の上限値の80%になったときには、これらの材料を保管用搬送ライン11に送り、保管倉庫10に再搬入するようにすれば、一時保管場所のスペースが狭い場合でも、在庫充足率Mの高い材料をスムースに一時保管場所12に払い出しすることができる。
【0010】
このように、本最良の形態によれば、保管倉庫10に保管される各材料P〜Sについて、上記材料を消費する後工程の設備の台数nと、上記設備の材料消費能力kと、各材料の現有在庫数Nとしたときに、M(%)=N÷(k・n)×100で表わされるような、当該材料の在庫充足率MP〜MSを算出し、保管倉庫10が満載になった場合には、上記在庫充足率Mが大きい材料Pと材料Sとを一時保管場所12に払い出して空きスペースを作っておけば、在庫充足率Mが小さな材料Qと材料Rが保管倉庫10に送られてきたときには、上記材料Q,Rを直ちに上記空きスペースに保管することができるので、従来のような、前工程で生産した材料を保管倉庫10に搬入できないといった不具合を解消することができるとともに、保管倉庫10のに保管される各材料P〜Sの在庫数を適性値に近づけることができる。
【0011】
なお、上記最良の形態では、保管倉庫10が満載になった場合に、在庫充足率Mの高い材料である材料Pと材料Sとを一時保管場所12に払い出したが、満載になる前、例えば、在庫スペースの占有率90%以上になるなど、在庫スペースの占有率が所定の値よりも大きくなった場合に在庫充足率Mの高い材料を一時保管場所12に払い出すようにすれば、空きスペースを確実に作ることができる。
また、上記例では、材料Pの在庫充足率MPが250%、材料Sの在庫充足率MSが200%と、同程度であったので、材料Pと材料Sとをともに一時保管場所12に払い出したが、例えば、材料Sの在庫充足率MSが130%と、材料Pの在庫充足率MPとの間に有意差がある場合には、はじめに、在庫充足率MPの高い材料Pを払い出し、その後、2番目に材料Sを払い出すようにすれば、保管倉庫10の在庫数を適性値に近づけることができる。
また、上記例では、保管倉庫10の在庫数の適性値を、在庫充足率Mが100%となる数量(N=k・n)としたが、在庫数の適性値はこれに限るものではなく、前工程から搬入される材料P〜Sの数量、搬入時期によって適宜決定されるものである。
【産業上の利用可能性】
【0012】
このように、本発明によれば、在庫数の少ない材料が送られてきたときに、これを直ちに保管倉庫に搬入することができるように、保管倉庫の在庫数を適正化したので、後工程の各設備に所望の材料をスムースに供給することができ、生産効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の最良の形態に係る材料供給フローの概要を示す模式図である。
【符号の説明】
【0014】
10 保管倉庫、11 保管用搬送ライン、12 一時保管場所。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前工程の複数の設備で生産され、後工程の複数の設備に払い出される複数種の材料を保管する保管倉庫の在庫数を適正化する方法であって、各材料を消費する設備の台数と、上記設備の材料消費能力と、各材料の現有在庫数とに基づいて、各材料の在庫充足率を算出し、在庫スペースの占有率が所定の値よりも大きくなった場合には、上記算出された在庫充足率の高い材料から順に当該材料の一部を別途設けられた一時保管場所に払い出し、上記保管倉庫の空きスペースを確保するようにしたことを特徴とする在庫数の適正化方法。
【請求項2】
当該材料の現有在庫数をN、上記材料を消費する設備の台数をn、上記設備の単位時間当たりの材料消費量をkとしたとき、当該材料の在庫充足率Mを下記の式(1)を用いて算出することを特徴とする請求項1に記載の在庫数の適正化方法。
式(1)‥‥M(%)=N÷(k・n)×100
【請求項3】
当該材料を消費する設備が非稼動状態にある場合には、上記設備の台数nと材料消費能力kとの積である総消費能力(k・n)を1より小さい値に設定して、当該材料の在庫充足率Mを算出するようにしたことを特徴とする請求項2に記載の在庫数の適正化方法。
【請求項4】
当該材料の在庫充足率が所定の値以上になったときに、上記材料を一時保管場所に払い出すようにしたことを特徴とする請求項2または請求項3に記載の在庫数の適正化方法。
【請求項5】
一時保管場所に保管された材料の総数が所定数以上になったときには、上記材料を上記保管施設に再搬入するようにしたことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載の在庫数の適正化方法。


【図1】
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