説明

地上デジタルテレビジョン放送における緊急速報を送信する送信装置、及び伝送システム

【課題】受信機側にAC信号とTMCC信号とを含む地上デジタルテレビジョン放送波を送信する送信装置、及び伝送システムを提供する。
【解決手段】伝送システムにおける送信装置は、受信機側にAC信号とTMCC信号とを含む地上デジタルテレビジョン放送波を送信し、AC信号を用いて、緊急速報と該緊急速報の有無を識別するフラグを含む電文情報を伝送する手段を有し、受信機がTMCC信号を搬送するTMCCキャリアとAC信号を搬送するACキャリアを抽出し、TMCCキャリアとACキャリアに対してアナログ加算を行ない、アナログ加算による出力信号の差動復調の基準及び同期信号に基づいてフレーム同期を行ない、フレーム同期によるフレームのタイミングに従いフラグの値を監視して緊急速報の有無を判別し、フラグが緊急速報である旨を表すフラグ値を検出した場合、電文情報を復号する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地上デジタルテレビジョン放送において緊急速報を送受信する技術に関し、特に、緊急速報の起動信号を低消費電力で待ち受け、緊急速報が発せられると、迅速に、前記速報を受信可能にさせる地上デジタルテレビジョン放送における緊急速報を送信する送信装置、及び伝送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
気象庁は、平成19年10月1日から緊急地震速報(例えば、非特許文献1参照)の一般への提供を開始した。これに伴い、テレビジョン並びにラジオの各放送局も前記速報が発表される際には、チャイム音とともにテレビジョン画面に表示または音声で伝えるなどの放送を実施している。尚、緊急地震速報のラジオ放送の一部は、平成20年4月1日から開始している。
【0003】
地上デジタルテレビジョン放送、特に部分受信のいわゆるワンセグサービス(以下、単にワンセグと称する)の場合は、無線周波数(RF)信号の復調、誤り訂正、映像等のコーデックなどの信号処理に要する遅延のため、緊急地震速報がテレビジョン画面に表示されるまでに何秒かの遅延が発生する。また、受信機の電源が入っていなければ、緊急地震速報を受信することもできない。
【0004】
緊急警報放送の場合に、待機消費電力を抑えて動作し、受信機の電源が入っていない受信機を起動して受信機に知らせるしくみが知られている。例えば、ISDB−T(Integrated Services Digital Broadcasting−Terrestrial、ARIB規格STD‐B31)方式の地上デジタルテレビジョン受信機は、受信機の電源が入っていない場合に、TMCC(Transmission and Multiplexing Configuration Control:伝送制御)キャリアに格納される緊急警報放送用起動フラグを検出する伝送制御信号受信回路を備えることにより、緊急警報放送用起動フラグが1(緊急警報放送あり)のとき、受信機の電源を投入し、受信機に緊急警報放送の視聴を促すことができる(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
このとき、該受信機において、伝送制御信号受信回路は、TMCC信号のフレーム同期信号に基づく同期保持回路を備え、前記同期保持回路によるカウント値の示すタイミングで、フレーム内及びフレーム単位(フレーム外)の間欠動作を行い、消費電力を節約できる。フレーム内の電源投入タイミングは、例えば、同期信号から緊急警報放送用起動フラグまでの約30msecである。
【0006】
また、伝送制御信号受信回路の回路構成を簡略化することにより、より低消費電力化を図った受信機も知られている(例えば、特許文献2参照)。該受信機において、さらに、ダイバーシティ合成を部分受信セグメント内の4本全てのTMCC信号に適用している。
【0007】
また、緊急地震速報を含む災害、防災情報等の地上デジタルテレビジョン放送における伝送のため、TMCC信号による起動フラグの受信に加え、AC(Auxiliary Channel)キャリアを利用する技術も知られている(例えば、特許文献3参照)。該技術において、TMCCキャリアの緊急警報放送用起動フラグと、例えば部分受信セグメント内の特定のACキャリアに置かれた信号種別ビットとの組合せにより、緊急放送の種別及び開始または終了を提示する。その他ARIB規格STD‐B10の緊急情報記述子及び緊急放送の映像・音声を、ACキャリアを用いて伝送する。この緊急情報記述子は、信号種別ビットを含み部分受信セグメントのAC信号に、前記映像・音声は他のセグメントのAC信号に格納して伝送される。
【0008】
さらに、受信機の電源が入っていない場合、あるいは他のチャンネルを受信している場合に備え、電源投入あるいはチャンネル切り替えを促すことが開示されており、この制御のため部分受信セグメント内のTMCC信号及びAC信号を受信し、電源投入後あるいはチャンネル切り替え後に、その他の災害・防災情報並びに映像・音声の再生を行う技術が提示されている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2006−319771号公報
【特許文献2】特開2007−104221号公報
【特許文献3】特開2007−243936号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】“緊急地震速報の概要や処理手法に関する技術的参考資料”、気象庁地震火山部、[平成20年1月31日検索]、インターネット〈URL:http://www.seisvol.kishou.go.jp/eq/EEW/kaisetsu/Whats_EEW/reference.pdf〉
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
前述の技術はいずれも、地上デジタルテレビジョン放送の受信機に関し、前記放送を視聴していない受信者の受信機を迅速に立ち上げることを目的とする点で同一の技術である。
【0012】
しかしながら、緊急地震速報などの緊急速報は、受信者が番組を視聴していない環境、つまり、鞄やポケットなどに収納された状態や、受信状態が不明な場所で、起動フラグ信号を待ち受けるなど、地上デジタルテレビジョン放送波の受信状況が悪い場所でも、受信できることが求められる。
【0013】
起動フラグ信号の監視には、フレーム同期などの同期が確立していることが不可欠となるが、例えば現在運用されている緊急警報放送で言えば、フレーム同期のための同期信号も、起動フラグ信号も、同じTMCC信号に格納されている。
【0014】
つまり、同じ時間でサンプリングすれば、同程度の受信性能となる。
【0015】
このため、受信環境が悪くなれば、より多くのフレームにわたって同期信号を観測し、その値を積分することにより感度を向上してフレーム同期を行うことになる。よって、フレーム同期の確立のため、一定の時間が必要となる。
【0016】
TMCC信号やAC信号を用いた緊急速報の伝送を目的とした場合、フレーム同期信号の送信方法や受信方法には、改善の余地がある。
【0017】
本発明の目的は、地上デジタルテレビジョン放送の受信者へ確実に緊急速報を伝えることができるように、受信電界強度が低い環境においても、フレーム同期性能を向上して該緊急速報の起動フラグを待ち受けすることを可能にさせる地上デジタルテレビジョン放送における緊急速報を送信する送信装置、及び伝送システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の送信装置は、受信機側にAC信号とTMCC信号とを含む地上デジタルテレビジョン放送波を送信する送信装置であって、
TMCC信号及びAC信号の双方を用いて、同一の基準に基づく差動復調の基準及び同期信号を伝送する手段を備え、該手段は、前記AC信号を用いて、緊急速報と該緊急速報の有無を識別するフラグを含む電文情報を伝送する手段を有し、
前記受信機が、前記TMCC信号を搬送するTMCCキャリアを抽出し、前記AC信号を搬送するACキャリアを抽出し、前記TMCCキャリアと前記ACキャリアに対してアナログ加算を行ない、前記アナログ加算による出力信号の差動復調の基準及び同期信号に基づいてフレーム同期を行ない、前記フレーム同期によるフレームのタイミングに従い、前記フラグの値を監視して、緊急速報の有無を判別し、前記フラグが緊急速報である旨を表すフラグ値を検出した場合に、前記電文情報を復号し、前記AC信号の抽出と前記アナログ加算との間の処理に、前記ACキャリアの中から同期信号に基づくフレームパルスの存在を検証し、該同期信号が検出された場合に、前記ACキャリアを前記アナログ加算の処理及び前記フラグの監視の処理へ受渡すことができるようにしたことを特徴とする。
【0019】
本発明の伝送システムは、受信機側にAC信号を含む地上デジタルテレビジョン放送波を送信する送信装置を備える、地上デジタルテレビジョン放送の伝送システムであって、
前記送信装置は、
TMCC信号及びAC信号の双方を用いて、同一の基準に基づく差動復調の基準及び同期信号を伝送する手段を備え、該手段は、前記AC信号を用いて、緊急速報と該緊急速報の有無を識別するフラグを含む電文情報を伝送する手段を有し、
前記受信機は、
前記TMCC信号を搬送するTMCCキャリアを抽出するTMCC抽出手段と、
前記AC信号を搬送するACキャリアを抽出するAC抽出手段と、
前記TMCCキャリアと前記ACキャリアに対してアナログ加算を行うダイバーシティ合成手段と、
前記ダイバーシティ合成手段による出力信号の差動復調の基準及び同期信号に基づいてフレーム同期を行うフレーム同期手段と、
前記フレーム同期手段が取得したフレームのタイミングに従い、前記フラグの値を監視して、緊急速報の有無を判別するフラグ監視手段と、
前記フラグ監視手段によって前記フラグが緊急速報である旨を表すフラグ値を検出した場合に、前記電文情報を復号する復号手段と、
前記AC抽出手段と前記ダイバーシティ合成手段との間に、同期信号事前検証手段とを備え、
前記同期信号事前検証手段は、前記ACキャリアの中から同期信号に基づくフレームパルスの存在を検証する手段と、
該同期信号が検出された場合に、前記ACキャリアを前記ダイバーシティ合成手段及び前記フラグ監視手段へ受渡す手段とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、地上デジタルテレビジョン放送の受信者へ確実に緊急速報を伝えることができるように、受信電界強度が低い環境においても、フレーム同期性能を向上して該緊急速報の起動フラグを待ち受けすることを可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明による実施例1の伝送システムにおける電文情報のフォーマットとフレーム内間欠受信モードにおける受信機の電源制御の動作事例を示す図である。
【図2】本発明による実施例1の伝送システムにおける受信機のブロック図である。
【図3】本発明による実施例2の伝送システムにおける受信機のブロック図である。
【図4】地上デジタルテレビジョン放送波におけるAC信号とTMCC信号の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
まず、本発明による実施例1の伝送システムにおける電文情報フォーマットを図1と図4を使って説明する。
【実施例1】
【0023】
ISDB−T方式の地上デジタルテレビジョン放送(モード3)は、それぞれ204個のシンボルで構成されたキャリアを432個備えたOFDM方式の伝送方法が用いられる。この方式によれば、図4に示されるように、8個のAC信号と4個のTMCC信号を有することが規定されている。TMCC信号は伝送パラメータなどの情報を格納することが規定されている。一方、AC信号は付加情報のための信号とされ、フリーフォーマットである。ISDB−T方式の地上デジタルテレビジョン放送に係る送信装置のハードウェア構成は既知であり、図示しない。しかしながら、伝送制御情報(TMCC又はAC)を用いて電文情報を伝送する送信装置、及びこの電文情報を受信して特有の動作を行う受信機、並びにこれらの送信装置及び受信機から構成される伝送システムは、以下に説明するように、特有の機能を発揮する。
【0024】
本実施例では、このAC信号に緊急速報の情報を格納すると共に、TMCC信号とダイバーシティ合成(受信波のアナログ加算)を行い、フレーム同期のための同期信号の受信利得を向上させる。
【0025】
図1は本実施例のAC信号を概念的に図示したものである。フレーム長は、TMCC信号と同一であり、OFDM信号の204シンボルで構成され、シンボル毎に1ビットが送信される。
【0026】
「差動復調の基準」は、TMCC信号と同様に、キャリア番号kのSP信号に割り当てられるBPSK信号の値Wと同じ生成多項式(x11+x+1)に基づく値であり、例えば、ISDB−T方式の地上デジタルテレビジョン放送波の部分受信セグメント(セグメント番号#0)におけるACキャリア(モード3の同期変調部)の場合、キャリア番号#7,#89,#206,#209,#226,#244,#377及び#407の8箇所に対し割り当てられる値である。この8箇所のACキャリアが運ぶAC情報に記述の差動復調の基準として格納されるWは、各々0,0,0,0,0,1,1及び0である。
【0027】
「同期信号」は、16ビットの同期信号であり、その値は「0011010111101110」(奇数フレーム)及びその反転(偶数フレーム)という、奇数フレームと偶数フレームで異なる値をとる。そのDBPSK変調波は、Wが0の場合、奇数フレームが「1,1,−1,1,1,−1,−1,1,−1,1,−1,−1,1,−1,1,1」であり、偶数フレームが「−1,1,1,1,−1,−1,1,1,1,1,1,−1,−1,−1,−1,1」である。そして、Wが1の場合、これらの反転となる。
【0028】
よって、キャリア番号kにより異なるWの値に依存して、TMCCキャリアに加え、ACキャリアにおいても、同じフォーマットの「差動復調の基準」並びに「同期信号」が送信される。
【0029】
つまり、前述と同様にISDB−T方式の地上デジタルテレビジョン放送波のモード3の同期変調部の部分受信セグメント(セグメント番号#0)を用いて記述すると、キャリア番号#101,#131,#286及び#349の4箇所にあるTMCCキャリアと、キャリア番号#7,#89,#206,#209,#226,#244,#377及び#407の8箇所にあるACキャリアの合計12本のキャリアにより、同じ内容の「同期信号」が送信されることになる(送信ダイバーシティ)。
【0030】
この12本のTMCC信号及びAC信号をすべて受信し、DBPSK波を復調して合成するか、SP(Scattered Pilot)信号とWの値に基づく最大比合成を行えば、4本のTMCC信号のみで行うフレーム同期に比し、4.7dB(対ガウス雑音)の感度改善が期待できる。
【0031】
「起動フラグ信号」は、緊急速報の有無を識別する1ビットの情報である。ここでは、「同期信号」につづいて伝送される。「起動フラグ信号」の値は、緊急速報がある場合には、‘0’のビットを表す値として「同期信号」の最後のシンボルの位相を継続し、緊急速報ない場合には、‘1’のビットを表す値としてその位相を反転する。ただし、「起動フラグ信号」は、2ビットで構成することもでき、この場合、‘00’が「緊急速報あり」を示し、‘11’が「緊急速報なし」を示す。従って、起動フラグ信号は、緊急速報(例えば、地震動警報情報)の伝送の開始/終了を示すフラグ(開始/終了フラグ)として機能する。
【0032】
8本のACキャリアで伝送する場合、「起動フラグ信号」も各キャリアに同じ情報を載せて伝送すると、「同期信号」の場合と同様に、ダイバーシティ合成(受信波のアナログ加算)が可能である。
【0033】
なお、ここでの説明は、本発明の理解を容易とするために、ISDB−T方式の地上デジタルテレビジョン放送におけるモード3の部分受信セグメント(セグメント番号#0)内のACキャリアが運ぶAC情報の全てを用いる場合について行うが、他のモードにおいても適用可能であることに留意する。
【0034】
「緊急速報識別信号」は、緊急速報の種別を示す信号である。緊急速報が緊急地震速報(地震動警報)を表すのか、緊急警報放送を表すのかといった情報を提供する。例えば、3ビットとし、「000」を緊急地震速報、「001」を緊急警報放送、「010」を緊急地震速報のテスト信号、「011」を緊急警報放送のテスト信号とする。なお、「起動フラグ信号」と同様に、各3ビットの値はDBPSK変調された値として伝送される。
【0035】
「起動フラグ信号」が‘0’の値(緊急速報あり)を示した時に、「緊急速報識別信号」の値を読み、緊急速報の種別、つまり、緊急速報が何であるのかを識別する。
【0036】
「各種識別信号」は、「速報ID」(12ビット)や「情報番号」(4ビット)、「電文種別」(2ビット)といった緊急速報に付随する情報信号や、放送事業者識別などの信号が該当する。
【0037】
「速報ID」は、緊急速報の識別番号(ID番号)として挿入する。例えば、気象庁が発表する緊急地震速報には、“ND”で始まり、(西暦)年、月、日、時、分、秒を並べて作成される地震識別番号が付されている。この番号の下位12ビットを割り当てて利用する。緊急警報放送など他の場合にも、同様な考えで識別番号を割り当てる。
【0038】
この「速報ID」により、同一の緊急速報に、続報やキャンセル報が発生しても、当該速報と他の速報を区別することができるようになる。
【0039】
「情報番号」は、続報が出た場合に、その速報が発表される度に1ずつ加算される番号である。先に出た緊急速報と一連の情報である旨を受信機が認識するために付与される。0〜15の範囲で繰り返して用いる。
【0040】
「電文種別」は、緊急速報が発報される通常の伝送か、先に出された緊急速報が取り消し(キャンセル報)となるかを示すために用いる。緊急速報の誤報が発生した場合に取り消しが可能なように格納する。2ビットを用いて、例えば「00」ならば、緊急警報放送あるいは一般向け緊急地震速報(地震動警報)である旨を示し、「01」であればキャンセル報であることを示す。緊急速報のない場合には「11」を送信し、「起動フラグ信号」の判定に対する保険とすることもできる。
【0041】
放送事業者識別は、ARIB規格STD−B14に準拠した識別信号が利用できる。この場合には、「放送地域識別」(6ビット)、「県複フラグ」(1ビット)、「地域事業者識別」(4ビット)が格納される。
【0042】
「各識別信号」も同様に、DBPSK変調される。
【0043】
「緊急速報情報」は、例えば、緊急地震速報のように放送とは別に伝達すべき情報があるものについて必要な情報を格納する部分である。
【0044】
緊急速報の対象が緊急地震速報と緊急警報放送である場合を事例に具体例を示すと、緊急地震速報のときにのみ情報が格納され、緊急警報放送のときには固定ビット(例えばすべて‘1’)が置かれる。
【0045】
緊急地震速報の情報のうち、放送とは別に伝達すべき情報としては、緊急地震速報が発せられたときに、受信者にとり最小限必要な情報であり、的確に、且つ、迅速、確実に伝送されるべき情報である。すなわち、受信者がいる地域において、どれぐらいの規模/震度の地震がどれぐらいの時間の後に起こるか、を受信者に認知させることができる情報である。
【0046】
具体的には、2つの方法事例を示す。
【0047】
一般向けの緊急地震速報は、強い揺れ(震度5弱以上)が推定される場合に、その規模及び震度4以上が推定される地域に関する情報を発信することが所望される。
【0048】
1つ目の方法事例は、強い揺れが予想される地域を直接的に伝えるものである。
【0049】
つまり、全国放送であれば「震度4以上の強震地域(都道府県単位)」(56ビット)であり、県域或いは広域の放送であれば「震度4以上の強震地域(地域単位)」(38ビット)を格納する。一般向け緊急地震速報で用いる“強い揺れが推定される地域”であり、この各地域に1ビットを割り当て、対象となるか否かを0又は1で示す。「震度4以上の強震地域(都道府県単位)」の地域は、都道府県を単位とし、北海道を4分割するなど全国で現在56地域である。「震度4以上の強震地域(地域単位)」は、気象庁が地域コードを割り当てている最小の地域単位である。広域放送のエリアに分割した場合、最大は北海道で38地域である。
【0050】
例えば、東京、神奈川、伊豆諸島が震度4以上を予測された場合、この3つの地域に割り当てるビットを0とし、その他は1とする。よって、送信側では、この値に基づくデータが送信され、受信側ではこの値をもとに「緊急地震速報(気象庁):地震発生。次の地域で強い揺れに警戒: 東京都、神奈川県、伊豆諸島」というメッセージを提示する。
【0051】
なお、全国放送と県域或いは広域の放送を区別するため、全国県域識別フラグ信号を2ビット伝送し、全国放送時には「01」、県域放送或いは広域放送時には「00」、不使用時には「11」を伝送するものとする。
【0052】
この他、必要により、「最大予測震度」(4ビット)が格納される。
【0053】
「最大予測震度」は、震度4以上の4、5弱、5強、6弱、6強、7が相当する。「強」、「弱」を各々1、0と数値で区別する。よって、「0100」、「0101」、「1101」、「0110」、「1110」、「0111」で区別して表記できる。ただし、この最大予測震度は、特定の地域ごとではなく、全国放送ならば、当該地震による日本全国のいずれかの地域で観測が予測される最大予測震度であり、広域或いは県域放送であれば、当該地域内で観測が予測される最大予測震度である。日本全国のいずれかの地域で観測が予測される最大予測震度の値が震度5弱以上のとき、緊急地震速報が出される。
【0054】
2つめの方法事例は、発生時刻、震源の緯度、経度、深さ、マグニチュードなど地震の詳細情報を伝送し、情報を受信した受信機において予測震度や予測到達時間などを計算する間接的な手法である。受信者の希望に基づく地域ごとのより詳細な警告が可能となる。
【0055】
非特許文献1によると、取得した地震源の位置情報(緯度経度、深さ)と地震の規模(マグニチュード)並びに地盤増幅度から、予測震度及び強震動(主要動)の予測到達時刻を算出できる。
【0056】
まず、予測震度は、計測震度IINSTRとして次式の計算式により算出される。
IINSTR=2.68+1.72 log(PGV)±0.21 ・・・(1)
ここで、PGVは地表面での各地点の最大速度[cm/s]であり、最大速度減衰式で計算される基準基盤(硬質基盤、S波速度600m/s)での最大速度PGV600と国土数値情報にある各対象となる地点での地盤増幅度ARViとの乗算で求められる値である。
PGV=1.31 PGV600×ARVi ・・・(2)
【0057】
なお、最大速度減衰式は、(3)式で表され、PGV600[cm/s]の算出に必要となる情報は、マグニチュードM、震源の深さD[km]と断層最短距離x[km]のみである。
log(PGV600)=0.58 (M−0.171)+0.0038 D−1.29
−log(x+0.028×100.50(M−0.171))−0.002x ・・・(3)
【0058】
受信機がその位置情報を取得する位置検出部(後述する)を有し、現在受信機が存在する地点が分かっているとすると、震源の位置情報と受信機の位置情報によりxを容易に算出することができる。
【0059】
また、ARViは地点に依存する値であるので、予め受信機に記憶されていることで、位置情報に基づき選択利用することができる。
【0060】
よって、計測震度IINSTRは、受信機において未知数である震源の位置情報とマグニチュードを送信側から取得することにより、当該受信機において容易に算出できる。
【0061】
尚、計測震度IINSTRは小数点を含む数値として計算されるので、震度階級における最大予測震度は、その値をもとに次表に示す両者の関係に基づいて判定される。
【0062】
【表1】

【0063】
一方、受信機のいる地点への地震の発生時刻からの予測到達時刻(到達所要時刻)は、震央距離Δ[km]と震源の深さD[km]をもとに気象庁が示す走時表(例えばJMA2001)を用いて算出することができる。震央距離Δは震源の位置情報(緯度経度)と当該受信機の位置情報から算出することができる値である。
【0064】
よって、この場合「緊急速報情報」には、上記の計算に必要となる「地震発生時刻」(17ビット)、「震源の緯度」(11ビット)、「震源の経度」(12ビット)、「震源の深さ」(10ビット)、並びに「マグニチュード」(7ビット)が格納される。
【0065】
「地震発生時刻」は、P波の観測後推定され、一般向けの緊急地震速報により放送局向けに伝えられた、地震が発生した時刻である。
【0066】
「地震発生時刻」の時刻は24時間の範囲での表示とし、時の表示は5ビット、分及び秒の表示は6ビットの数値として、例えば、13時25分37秒は「01101|011001|100101」(合計17ビット)と、各々時、分、秒の単位で2進数表示する。尚、「|」は時、分、秒の区別を見やすくするために、ここでの表記のみとして挿入しており、実際の伝送には挿入されない。
【0067】
「震源の緯度」及び「震源の経度」は、震源の地表面上の位置を表し、例えば、北緯36.3度、東経136.5度といったように、1/10度精度で表記した緯度及び経度である。これらを、北緯及び東経を正の値、南緯及び西経を負の値とし、且つ、小数点を除いた10倍の数値で表記する。
【0068】
つまり、「震源の緯度」及び「震源の経度」はそれぞれ363と1365となり、各々11ビットと12ビットを割り当てて「00101101011」と「010101010101」のように2進数で表す。尚、南緯または西経の負の値は、1の補数とし、例えば、南緯36.3度は、「11010010100」と表記する。
【0069】
「震源の深さ」は、震源の地表面からの深さであり、単位を[km]とした数値で表す。例えば、30kmの場合、30であり、10ビットの2進数「0000011110」で表記する。
【0070】
「マグニチュード」は、地震の規模を表すマグニチュードの値であり、小数点以下1桁の数値、例えば、3.5といった値である。これを10倍の数値で表記する。つまり、35であり、7ビットの2進数「0010011」とする。
【0071】
以上の2つの方法に基づく情報の他、「緊急速報情報」には、「ページ番号」(2ビット)などの情報を付加して伝送する。「ページ番号」は、上記2つの手法による「緊急速報情報」を2フレームにわたって伝送し、受信者の利便性を向上する場合に両手法に基づく情報を区別するために用いる。
【0072】
なお、ISDB−T方式の地上デジタルテレビジョン放送波の部分受信セグメント(セグメント番号#0)におけるACキャリア、例えば、モード3の同期変調部の場合、204シンボル、つまり、1フレーム伝送するのに必要な時間は、0.231秒である。上記2つの手法による「緊急速報情報」を2フレームにわたって伝送する場合、1フレーム情報を見るために要する時間が増えるが、警報そのものはいずれのフレームを検知した時点でも出すことが可能である。
【0073】
「緊急速報情報」も同様に、DBPSK変調される。
【0074】
「パリティビット」は、誤り訂正に用いるパリティビットである。「差動復調の基準」及び「同期信号」の合わせて17ビットを除く18ビット目から「パリティビット」の直前の122ビット目までの105ビットを対象に、誤り訂正を可能とするパリティビットが82ビット格納される。例えば、ISDB−T方式のTMCC信号と同様に、差集合巡回符号(273、191)の短縮符号(187、105)を用いて誤り訂正符号化する。8ビット程度の誤り訂正が可能となるので、情報の信頼度を高め、より確実な伝送を可能とすることができる。
【0075】
「パリティビット」も、DBPSK変調される。
【0076】
「リザーブビット」は、将来の拡張に向けた予備のビットである。通常‘1’を格納しておく。「緊急速報情報」が手法1の情報を全国の都道府県に向けて伝送し、「最大予測震度」、「ページ番号」を送信すると、「リザーブビット」には10ビット残る。手法2では同様に13ビットとなる。
【0077】
ここでは、リザーブビットをまとめて置いたが、必要な情報の単位で付加する構成とする方が運用の途中での変更に対応しやすい場合がある。
【0078】
「リザーブビット」も、DBPSK変調される。
【0079】
本実施例において、放送事業者は、例えば気象庁から緊急地震速報を受信した場合、送信装置によって、図1に記載の電文情報のフォーマット例に基づいて、例えば、ISDB−T方式の地上デジタルテレビジョン放送波の部分受信セグメント(セグメント番号#0)におけるACキャリア(モード3の同期変調部)の場合を考えると、8本のACキャリアがあるが、この全てに同じ情報を各キャリアの「差動復調の基準」に基づくDBPSK変調波として格納して送信する。
【0080】
なお、ARIB規格STD−B31の記載に準拠してDBPSK変調波を送信する事例で説明してきたが、受信段でダイバーシティ利得を向上できるように、「差動復調の基準」に基づき‘1’を設定する、BPSK変調波として伝送するようなことも考えられる。
【0081】
次に、本発明による実施例1の伝送システムにおける送信装置及び受信機について説明する。
【0082】
送信側では、緊急速報を含む電文情報(図1に示す電文情報のフォーマット)として、例えば地上デジタルテレビジョン放送の部分受信セグメント内の8本のACキャリアに、同期信号と緊急速報を識別する起動フラグ信号を連続して伝送するとともに、緊急速報識別信号、各種識別信号、緊急速報情報、リザーブビット及び誤り訂正符号のパリティビットを伝送する。
【0083】
本発明による実施例1の受信機は、図1に示す電文情報のフォーマットを受信する。ここで、受信機は、携帯電話、携帯情報端末(PDA)、腕時計、置時計、パーソナルコンピュータ又は家電製品など、あらゆる機器に具備させることができるものである。
なお、本実施例1を含み本発明の各実施例の説明において、緊急速報の情報はISDB−T方式の地上デジタルテレビジョン放送波の部分受信セグメント(セグメント番号#0)内のAC信号により送出されるとしている。携帯電話など移動・携帯端末の多くでは、この部分受信セグメント(セグメント番号#0)を受信して番組を視聴する(ワンセグサービス)。よって、携帯電話などに具備される本発明の各実施例の受信機1は、緊急速報の情報を伝送するAC信号を受信できる。
一方、他のセグメントを受信する固定受信向けのデジタルテレビなどに具備される本発明の各実施例の受信機1においても、AC信号については部分受信セグメント内のものを受信することにより、緊急速報の情報を受信できる。
【0084】
図2は、実施例1の受信機のブロック図を示す。実施例1の受信機は、アンテナ1と、AC受信・同期確立部2と、AC情報解析部3と、同期保持・電源制御部4と、警告発生部5と、電源6と、AC受信・同期確立部2への電源供給の切り替えを行う第1の電源スイッチ7と、AC情報解析部3への電源供給の切り替えを行う第2の電源スイッチと8を備える。
【0085】
また、AC受信・同期確立部2は、周波数変換部9と、AD変換部10と、FFT11と、TMCC抽出部26と、AC抽出部27と、ダイバーシティ合成部27と、フレーム同期検出部14と、起動フラグ復調部13とを備える。
【0086】
更に、AC情報解析部3は、AC復調部15と、誤り訂正部16と、AC復号部17と、情報処理部18とを備える。情報処理部18は、位置検出部及び現在時刻検出部を備える(図示せず)。
【0087】
そして、同期保持・電源制御部4は、フレーム同期保持部19と、タイミング制御部20と、起動フラグ監視部21と、電源制御部22とを備える。
【0088】
以下、図2に示す受信機の各構成要素の機能を説明する。
【0089】
周波数変換部9は、アンテナ1から入力された地上デジタル放送波の受信信号のうち、所定のフィルタにより不要な周波数成分を除去した後、指定されたチャンネルを選択し、中間周波信号に周波数変換するとともに適宜増幅して出力する。このチャネル選択は、受信機にて予め定めておくこともできる。
【0090】
AD変換部10は、周波数変換部9から出力される受信信号の中間周波信号をデジタルに変換し、デジタルベースバンド信号を送出する。
【0091】
FFT11は、OFDMシンボルの有効シンボル期間についてFFT(Fast Fourier Transform)演算を行い、受信信号のデジタルベースバンド信号をOFDM形式のストリームに復調する。尚、有効シンボル期間は、ガードインターバル相関などによりシンボル同期を行って規定することができ、予め定めた伝送モードに従ったFFTサンプル周波数でFFT演算を行う。
【0092】
TMCC抽出部26は、受信信号のOFDM形式のストリームから部分受信セグメント(セグメント番号#0)内の4箇所のTMCCキャリアのみを抽出する。ここで抽出された4本のTMCCキャリアは、ダイバーシティ合成部27に供給される。
【0093】
AC抽出部12は、受信信号のOFDM形式のストリームから部分受信セグメント(セグメント番号#0)内の8箇所のACキャリアのみを抽出する。ここで抽出された4本のACキャリアは、ダイバーシティ合成部27及び起動フラグ復調部13に供給される。
【0094】
ダイバーシティ合成部27は、TMCC抽出部26及びAC抽出部12が抽出した4本のTMCCキャリア及び8本のACキャリアをダイバーシティ合成(受信電波のアナログ加算)して、フレーム同期検出部14に向けて出力する。
【0095】
ここで、ダイバーシティ合成とは、各キャリアにおいて遅延検波を行ってDBPSK変調波を復調した後、単純に振幅合成を行ったり、図示しない別の手段によりSP信号と差動復調の基準Wの値に基づく最大比合成を行ったりすることである。TMCCキャリア及びACキャリアにて伝送される「同期信号」の受信感度を高めることができる。すなわち、フレーム同期が可能となる最小の受信電力を小さく抑えることが可能となる。
【0096】
よって、本発明による実施例1の受信機は、ダイバーシティ合成部27により、12本のキャリアを合成して、高い受信感度にてフレーム同期を行うことができる。
【0097】
フレーム同期検出部14は、ダイバーシティ合成部27によりダイバーシティ合成されたTMCCキャリア並びにACキャリアと、「同期信号」として格納されて送信される、予め定めた、例えばモード3の、パターンとの一致検出を行って、両者が一致したときAC信号の先頭のタイミングでフレーム同期信号(リセットパルス)を発生する。また、フレーム同期信号に基づいて緊急速報のフレーム同期確立の有無を示す緊急速報同期確立情報を生成する。
【0098】
起動フラグ復調部13は、AC抽出部12で抽出された受信信号の8箇所のACキャリアのストリームから各フレームの同期信号の最終シンボル(第16シンボルであり、フレームの先頭シンボルを第0シンボルとして、フレームの先頭から17シンボル目に相当する)と起動フラグ信号(第17シンボルであり、フレームの先頭から18シンボル目)を抜き出し、遅延検波などにより起動フラグ信号を復調して、送信された起動フラグ信号の値を推定する。
【0099】
なお、遅延検波は、例えば第16シンボルの受信信号の位相共役と第17シンボルの受信信号との乗算により実現できる。
【0100】
8箇所(8本)のACキャリアに基づくダイバーシティ合成は、上記2シンボル分の受信信号間の位相共役積を8本のキャリアについて行い、積算する。
【0101】
ここまで、TMCCキャリア並びにACキャリアの復調、つまり、遅延検波などの処理、TMCCキャリアの4本の合成並びにACキャリアの8本の合成は、ダイバーシティ合成部27及び起動フラグ復調部13にて行うものとして説明したが、TMCC抽出部26並びにAC抽出部12にて合成を行った後、ダイバーシティ合成部27及び起動フラグ復調部13に入力することで例えば回路規模を小さくできる。
【0102】
具体的には、ダイバーシティ合成部27は、TMCCキャリアの4本の合成された信号とACキャリアの8本の合成された信号を合成する。一方、起動フラグ復調部13は、図示していないが、フレーム同期保持部14からのタイミング制御により起動フラグ信号を抽出して出力する。
【0103】
なお、TMCCキャリアの4本の合成並びにACキャリアの8本の合成をTMCC抽出部26並びにAC抽出部12にて行う場合には、各々のキャリア本数に基づく平均化処理は行わないものとする。
【0104】
同期保持・電源制御部4は、フレーム同期保持部19とタイミング制御部20、起動フラグ監視部21と電源制御部22からなるが、これらは常時電源部6から給電されている。
【0105】
フレーム同期保持部19は、例えばクロック発生器とカウンタで構成され、フレーム同期検出部14が出力するフレーム同期信号に基づき制御される、クロック発生器で発生したクロックをカウンタでカウントし、カウント値が所定値となる毎にフレームパルスを発生すると共にカウント値をフレーム同期信号(リセットパルス)に従ってリセットし、このフレームパルスをタイミング制御部20に供給する。これにより、フレーム同期保持部は自己保持したフレームパルスを発生することができる。
【0106】
タイミング制御部20は、フレーム同期保持部19からのフレームパルスと、フレーム同期検出部14からの緊急速報同期確立情報から、後述するフレーム間間欠受信モードか、又はフレーム内間欠受信モード、或いはこれらの組み合わせの間欠受信モードを決定し、各間欠受信モードのタイミングでオン/オフ(0又は1の値)の制御信号を送出する。
【0107】
起動フラグ監視部21は、起動フラグ復調部13が出力する起動フラグ信号の値を取得して、その値をサンプル&ホールドするとともに、電源制御部22にその値を出力する。
【0108】
なお、図示していないが、起動フラグ監視部21が起動フラグ信号を検出するタイミングもフレーム同期保持部19が出力するフレームパルスを基準に制御されている。
【0109】
電源制御部22は、起動フラグ監視部21の出力値が起動フラグ信号の‘1’(緊急速報が無い通常の状態であること)を検出している場合には、AC受信・同期確立部2の電源供給を制御するように第1の電源スイッチ7を制御する。一方で、起動フラグ監視部21が、起動フラグ信号の‘0’(緊急速報が発報された状態であること)を出力した場合には、AC受信・同期確立部2への電源供給を継続して行うように第1の電源スイッチ7の切り替えを行うとともに、AC情報解析部3への電源供給を開始するように第2の電源スイッチ8の切り替えを行う。
【0110】
それとは逆に、電源制御部22は、緊急速報がある旨を示す起動フラグ信号値‘0’から、平常時の‘1’の状態に変更されるのを判別した場合には、タイミング制御部20からの制御信号のタイミングで、起動フラグ信号の値のみを常時監視するように、AC受信・同期確立部2への電源供給を第1の電源スイッチ7によって制御するとともに、AC情報解析部3への電源供給を遮断するように第2の電源スイッチ8の切り替えを行う。
【0111】
これにより、極めて消費電力を節約しながら、緊急速報の情報を確実に、且つ即時に取得できるようにする。
【0112】
AC情報解析部3への電源供給が為された場合には、AC復調部15、誤り訂正部16、並びにAC復号部17が順次起動する。フレーム同期検出部14によって生成されたフレーム同期信号に同期して、まずAC復調部15は、受信信号のOFDM形式のストリームから抽出された部分受信セグメント(セグメント番号#0)内の8箇所全てのACキャリア上のDBPSK変調波を起動フラグ復調部13と同様な動作で検波、並びにダイバーシティ合成した後、0又は1のレベル判定を行い、AC信号のビットストリームを得る。
【0113】
続いて誤り訂正部16は、受信したAC信号のビットストリームをパリティビットの値に基づき例えば差集合巡回符号方式を用いて誤り訂正する。
【0114】
そして、AC復号部17は、送信側の符号化方式に対応する復号形式で各信号の内容、即ち「起動フラグ信号」、「緊急速報識別信号」、「各種識別信号」並びに「緊急速報情報」の内容を復号する。
【0115】
尚、電源制御部22は、緊急速報の全ての情報のみを取得するように、フレーム内間欠受信動作又はフレーム間間欠受信動作で、AC情報解析部3に電源供給するように制御することもできる。特に、フレーム間間欠受信動作で動作する場合に、起動フラグ復調部13及びAC復調部15にて、複数のフレーム間で多数決判定した結果を送出するように動作させることもできる。
【0116】
本発明に係る受信機においては、AC情報の誤りを検出又は訂正し、復号する様々な態様が考えられ、「復号部」として総括して説明する。
【0117】
情報処理部18は、AC復号部17が出力する各信号の内容を受信し、「起動フラグ信号」が確かに「緊急速報」のあることを示すのを確認するとともに、「緊急速報識別信号」により緊急速報が緊急地震速報であるのか緊急警報放送であるのかを分類する。
【0118】
続いて情報処理部18は、緊急速報が緊急警報放送である場合には、地上デジタルテレビジョン放送の全受信機が機能するように、ワンセグ受信機は部分受信セグメント内の全信号、固定向けの受信機は全セグメントの信号を受信する動作を開始させる制御信号を出力する。一方、情報処理部18は、緊急速報が緊急地震速報である場合には、AC復号部17により復号される全情報を読み出し、読み出した情報に基づき、警告発生部5に必要な警告を発するための制御信号を出力する。
【0119】
情報処理部18は、復号した「緊急速報情報」から、例えば、「震度4以上の強震地域」を読み出し、位置検出部によって検出した位置情報と当該「震度4以上の強震地域」が一致する場合、警告発生部5に向けてその旨の制御信号を出力する。
【0120】
情報処理部18は、復号した「緊急速報情報」から、例えば、「地震発生時刻」、「震源の緯度」、「震源の経度」、「震源の深さ」、並びに「マグニチュード」を読み出し、位置検出部によって検出した位置情報を参照して、(1)式に基づく演算を実施して計測震度の予測値を算出する。また、位置検出部によって検出した位置情報と、現在時刻検出部によって検出した現在時刻情報とを参照して、例えばJMA2001などの走時表を用いて主要動の予測到達時間を算出する。
【0121】
位置検出部は、当該受信機の地域的な位置を表す位置情報を検出する。好適に、位置検出部は、電文情報に記載の「各種識別信号」内の放送事業者識別により県域或いは広域の地域を把握する。より詳細には、固定受信においては設置時の受信機による入力或いはGPS(Global Positioning System)による位置検出、移動又は携帯受信においては、GPSによる位置検出或いは携帯電話の場合基地局情報、無線LANの場合ホットスポット情報(場所を認識可能な場合、場所の手入力も含む)などにより自身の位置を検出することができる。
【0122】
現在時刻検出部は、当該受信機の現在時刻を表す現在時刻情報を検出する。好適に、現在時刻検出部は、受信機の入力による時刻設定、標準電波(電波時計、JJY)、GPS、或いは受信している地上デジタル放送波の受信信号に含まれるTDT(Time Date Table)或いはTOT(Time Offset Table)などから現在時刻情報を検出することができる。或いは、現在時刻検出部は、受信機が携帯電話に具備される場合、基地局からの信号により現在の時刻を検出することができる。
【0123】
警告発生部5は、当該受信機が備える表示器に文字で表示するか、当該受信機が備えるスピーカーから音で発生させるか、当該受信機が備えるバイブレータによる振動警告を発するか、又は通常動作時とは異なる動作で知覚的に警告を発生する。或いは又、当該受信機が携帯電話、携帯情報端末(PDA)、腕時計、置時計、パーソナルコンピュータ等の何らかの機器に具備される場合には、これらの機器の機能を用いて、スピーカーから音で発生させるか、バイブレータによる振動警告を発するか、又は通常動作時とは異なる動作で知覚的に警告を発生するようにすることもできる。
【0124】
ここで、フレーム間間欠受信モードとフレーム内間欠受信モードについて説明する。
【0125】
本発明によるAC信号を用いる受信機では、フレーム内間欠受信モードとフレーム間間欠受信モードとを好適に用いることができる。受信信号の信頼性を高める場合はフレーム間間欠受信モードがより好適に機能し、AC信号の同期確立の信頼性を高める場合にはフレーム内間欠受信モードがより好適に機能する。また、フレーム間間欠受信モードとフレーム内間欠受信モードを併用することも可能である。これらの間欠受信モードを利用することにより、本発明の受信機は消費電力を大幅に低減することができる。
【0126】
フレーム間間欠受信モードは、例えば、AC信号の同期が未確立を示す緊急速報同期確立情報を供給されている場合に決定される。この場合、第1の電源スイッチ7又は第2の電源スイッチ8のオン継続時間は、最低1フレーム以上とする。例えば、1フレームのみを用いる場合には、受信機の消費電力を大幅に低減することができる。更に、例えば2フレームを用いる場合には、偶数パリティを利用して、受信信号の信頼性を高めることができる。或いは又、例えば3フレームを用いる場合には、多数決判定して、受信信号の信頼性を高めることができる。
【0127】
尚、地上デジタルテレビジョン放送の送信モードがモード3でガードインターバル比(GI比)1/8の場合、1フレームは231.336msecである。また、フレーム間間欠受信モードではAC受信・同期確立部2の電源投入タイミングの制約はなく、例えばオン/オフ間隔は所定値(例えば10秒間隔)とする。
【0128】
このように、AC信号の同期未確立時のAC受信・同期確立部2への電源供給時間を1フレーム以上とすることで、AC信号の取りこぼしを防止することができ、更には、AC情報解析部3における受信信号の信頼性を高めることができる。また、オン/オフ間隔を長くすることで待機消費電力を低減することができる。
【0129】
また、フレーム内間欠受信モードは、例えば、AC信号の同期が確立していることを示す緊急速報同期確立情報を供給されている場合に決定される。この場合、第1の電源スイッチ7又は第2の電源スイッチ8のオン継続時間は、図1の電文情報フォーマットと合わせて示すように、例えば20.412msec=(18/204)フレームとし、AC信号の前のフレームの最後のシンボルから電源を投入し、所要のビット、例えば起動フラグ信号の受信が終了した時点で電源を遮断する。あるいは、フレーム同期保持部19がある程度高い精度を保てる状態であるならば、「同期信号」の一致を検出する周期を伸ばして、大半は、3.402msec=(3/204)フレームとし、「同期信号」の最後のビット、「起動フラグ信号」のみの期間電源を投入し、それ以外は電源を遮断することもできる。
【0130】
このように、AC信号の同期確立時のAC受信・同期確立部3への電源供給時間を18シンボルあるいは3シンボルとすることで、待機消費電力を低減することができる。
【0131】
なお、図2には記載しないAGC(自動利得制御)回路などの立ち上がり動作を考慮する必要のある場合には、該当する時間分早く電源を投入する。また、FFT11及び起動フラグ復調部13の動作において、一定シンボル分メモリ等に保持する必要がある場合、周波数変換部9やAD変換部10とそれ以降の処理部との間で電源投入、電源遮断のタイミングをずらすことにより、消費電力の大きい前段の処理部の動作を節約することができる。
【0132】
このように、本発明によれば、緊急速報が出て、放送局が電波に載せる時間並びに送信と受信のタイミングのずれを考慮しても、1〜2秒程度の短時間で、受信機の消費電力を節約しながら、より高感度で受信可能となり、速やかな緊急速報の伝送が可能となる。
【0133】
本発明の実施例2の伝送システムにおける受信機について説明する。
【実施例2】
【0134】
本発明の実施例2の受信機は、ACキャリアを緊急速報の伝送とは異なる用途で使用する場合との併用に対応する事例である。
【0135】
ACキャリアは、ARIB規格STD−B31によると、「変調波の伝送制御に関する付加情報の伝送路」とあり、これまで放送局の独自の目的により利用がなされ、一般の受信機はこれを見ないしくみとなっていた。
【0136】
この伝送を一方で許容すると、緊急速報の伝送との間での識別が必要となる。当該事例は、従来の伝送においては「同期信号」を送信しないものと規定でき、「同期信号」を含む場合に緊急速報の伝送を行うものと規定した場合の受信機の事例である。
【0137】
よって、フレーム同期を検出する際に、ACキャリア分の「同期信号」を予め確認するしくみを設けている。
【0138】
本発明の実施例1と異なる部分について、以下記述する。
【0139】
送信側では、一方で、緊急速報を含む電文情報(図1に示す電文情報のフォーマット)として、例えば地上デジタルテレビジョン放送の部分受信セグメント内の8本のACキャリアに、同期信号と緊急速報を識別する起動フラグ信号を連続して伝送するとともに、緊急速報識別信号、各種識別信号、緊急速報情報、リザーブビット及び誤り訂正符号のパリティビットを伝送する。また、他方で、送信側では、放送局の事情により、緊急速報を含む電文情報フォーマットとは異なる信号を送信する、あるいは、送信しない。
【0140】
本発明による実施例2の受信機は、基本的には、本発明の実施例1と同様の電文情報フォーマット(図1に示す電文情報のフォーマット)を受信する。ここで、受信機は、携帯電話、携帯情報端末(PDA)、腕時計、置時計、パーソナルコンピュータ又は家電製品など、あらゆる機器に具備させることができるものである。
【0141】
そして、ACキャリアに「同期信号」を検出しない場合には、ACキャリアの受信を禁止する。
【0142】
図3は、実施例2の受信機のブロック図を示す。実施例2の受信機は、アンテナ1と、AC受信・同期確立部2と、AC情報解析部3と、同期保持・電源制御部4と、警告発生部5と、電源6と、AC受信・同期確立部2への電源供給の切り替えを行う第1の電源スイッチ7と、AC情報解析部3への電源供給の切り替えを行う第2の電源スイッチ8とを備え、この大まかな構成は、実施例1の受信機と同様の構成となっている。
【0143】
図3と異なる部分は、AC受信・同期確立部2内にあり、AC抽出部12の後段に同期信号事前検証部28が設けられていることである。
【0144】
同期信号事前検証部28は、AC抽出部12が抽出し出力する8本のACキャリアの合成信号と「同期信号」のパターンとの一致検出を行い、「同期信号」に基づくフレームパルスを検出できるかどうかを確認する。
【0145】
「同期信号」が検出できた場合には、ACキャリアの合成信号をダイバーシティ合成部27と起動フラグ復調部13へ出力する。一方、「同期信号」を検出できなかった場合には、「緊急速報」以外である旨の制御信号をダイバーシティ合成部27と起動フラグ復調部13に送信し、ACキャリアの合成信号の送出を防止する。
【0146】
これにより、起動フラグ復調部13並びに起動フラグ監視部21は、ACキャリアに「同期信号」が含まれる場合にのみ起動フラグ信号を検出できるので、送信側から緊急速報が送信されない地上デジタルテレビジョン放送波を受信した場合には、従来の受信機と同様に、ACキャリアの情報を受信しない。
【0147】
一方、送信側から緊急速報が送信された場合には、即座に起動フラグ信号を監視できるため、必要なタイミングで緊急速報の電文情報を受信し、警告発生部5にて受信者に提示することができる。
【0148】
なお、以上の説明においては、ACキャリアを用いて行う、緊急速報の情報を含めた伝送事例を紹介したが、ACキャリアには「差動復調の基準」と「同期信号」のみを格納し、警報のみを主眼においてTMCC信号のリザーブビットなどに適用することも可能である。
【0149】
上述の実施例については特定の符号化方式を代表的な例として説明したが、本発明の趣旨及び範囲内で、多くの変形及び置換をすることができることは当業者に明らかである。例えば、上述した実施例では、本発明の理解を容易にするために、本発明に係る受信機を、例えば携帯電話に具備させることが可能であるとして説明したが、当該携帯電話が予め有する復調及び復号機能に本発明に係る受信機の機能を統合させることもできる。例えば、当該携帯電話が待機モードである場合には、上述の実施例と同様に動作させることができ、或いは又、当該携帯電話が通常動作モードである場合には、電文情報におけるフラグの値の判定に応じて、電源供給制御を行うことなく、緊急速報を復号し、当該携帯電話の位置する地域の震度及び到達時間の予測情報を計算し、警告を発するようにしてもよい。従って、本発明は、上述の実施例によって制限するものと解するべきではなく、特許請求の範囲によってのみ制限される。
【産業上の利用可能性】
【0150】
本発明による受信機及び送信装置は、受信電界強度が低い環境においても、フレーム同期性能を向上して該緊急速報を伝送できるので、所定の伝送制御信号を用いる伝送方式の用途に有用である。
【符号の説明】
【0151】
1 アンテナ
2 AC受信・同期確立部
3 AC情報解析部
4 同期保持・電源制御部
5 警報発生部
6 電源
7 第1のスイッチ
8 第2のスイッチ
9 周波数変換部
10 AD変換部
11 FFT
12 AC抽出部
13 起動フラグ復調部
14 フレーム同期検出部
15 AC復調部
16 誤り訂正部
17 AC復号部
18 情報処理部
19 フレーム同期保持部
20 タイミング制御部
21 起動フラグ監視部
22 電源制御部
26 TMCC抽出部
27 ダイバーシティ合成部
28 同期信号事前検証部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
受信機側にAC信号とTMCC信号とを含む地上デジタルテレビジョン放送波を送信する送信装置であって、
TMCC信号及びAC信号の双方を用いて、同一の基準に基づく差動復調の基準及び同期信号を伝送する手段を備え、該手段は、前記AC信号を用いて、緊急速報と該緊急速報の有無を識別するフラグを含む電文情報を伝送する手段を有し、
前記受信機が、前記TMCC信号を搬送するTMCCキャリアを抽出し、前記AC信号を搬送するACキャリアを抽出し、前記TMCCキャリアと前記ACキャリアに対してアナログ加算を行ない、前記アナログ加算による出力信号の差動復調の基準及び同期信号に基づいてフレーム同期を行ない、前記フレーム同期によるフレームのタイミングに従い、前記フラグの値を監視して、緊急速報の有無を判別し、前記フラグが緊急速報である旨を表すフラグ値を検出した場合に、前記電文情報を復号し、前記AC信号の抽出と前記アナログ加算との間の処理に、前記ACキャリアの中から同期信号に基づくフレームパルスの存在を検証し、該同期信号が検出された場合に、前記ACキャリアを前記アナログ加算の処理及び前記フラグの監視の処理へ受渡すことができるようにしたことを特徴とする、送信装置。
【請求項2】
受信機側にAC信号を含む地上デジタルテレビジョン放送波を送信する送信装置を備える、地上デジタルテレビジョン放送の伝送システムであって、
前記送信装置は、
TMCC信号及びAC信号の双方を用いて、同一の基準に基づく差動復調の基準及び同期信号を伝送する手段を備え、該手段は、前記AC信号を用いて、緊急速報と該緊急速報の有無を識別するフラグを含む電文情報を伝送する手段を有し、
前記受信機は、
前記TMCC信号を搬送するTMCCキャリアを抽出するTMCC抽出手段と、
前記AC信号を搬送するACキャリアを抽出するAC抽出手段と、
前記TMCCキャリアと前記ACキャリアに対してアナログ加算を行うダイバーシティ合成手段と、
前記ダイバーシティ合成手段による出力信号の差動復調の基準及び同期信号に基づいてフレーム同期を行うフレーム同期手段と、
前記フレーム同期手段が取得したフレームのタイミングに従い、前記フラグの値を監視して、緊急速報の有無を判別するフラグ監視手段と、
前記フラグ監視手段によって前記フラグが緊急速報である旨を表すフラグ値を検出した場合に、前記電文情報を復号する復号手段と、
前記AC抽出手段と前記ダイバーシティ合成手段との間に、同期信号事前検証手段とを備え、
前記同期信号事前検証手段は、前記ACキャリアの中から同期信号に基づくフレームパルスの存在を検証する手段と、
該同期信号が検出された場合に、前記ACキャリアを前記ダイバーシティ合成手段及び前記フラグ監視手段へ受渡す手段とを有することを特徴とする、伝送システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−283845(P2010−283845A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−153358(P2010−153358)
【出願日】平成22年7月5日(2010.7.5)
【分割の表示】特願2009−249453(P2009−249453)の分割
【原出願日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【出願人】(000004352)日本放送協会 (2,206)
【出願人】(591053926)財団法人エヌエイチケイエンジニアリングサービス (169)
【Fターム(参考)】