説明

地下タンク固定用のバンドユニット及び地下タンクの固定構造

【課題】液体燃料などを貯蔵する横置き円筒形の地下タンクの固定構造に関し、タンクを載置する受台を軽量化すること及び高い引張り強度を有する固定バンドと金具の取付構造を得ることにより、地下タンクを固定する際の作業負担を軽減する。
【解決手段】受台は、タンク胴部の底面と接触する円弧部及びその両端の脚部をFRP製の帯板で形成し、床版への締結箇所を鉄板で補強した構造を備える。受台上へのタンクの固定に用いるバンドユニットは、バンド本体とその端部の両面にエポキシ系接着剤で接着された鉄板製又は多層の繊維強化層を備えたFRP製の接着板と、両面の接着板の外側からボルトによって締め付ける剛性の締結板と、接着板に接続された又は一体の金具を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、液体燃料などを貯蔵するのに用いられる横置き円筒形の地下タンクの固定構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の地下タンクは、胴部の下面を複数箇所で支持する受台と、胴部の上面に逆U字状に掛け渡した複数本のバンドとで地下に設置した床版上に固定されている。受台は、コンクリート又は帯状の鋼板で製作されている。下記特許文献1には、タンク胴部の曲率に合せて円弧状に成形した帯状の鉄板からなる受板の両端に斜め下方に延びる脚部を設け、この脚部をアンカーボルトで床版に固定する構造の受台が示されている。
【0003】
タンク胴部の上方に掛け回したバンドは、FRP(繊維強化プラスチック)製で、その両端に取り付けた金具を介して床版に設けたアンカーボルトに固定されている。バンドは、タンクの頂部に位置する部分に、その両側の部分を接続する接続部を備えている。この接続部においても、FRP製のバンドに金具を取り付け、この金具相互をボルトで連結する構造となっている。
【0004】
このバンドは、地下タンクを受台上に定置すると共に、地下水の水圧によって地下タンクが浮上するのを防止する作用をしている。バンドの張力は、タンク頂部の接続部のボルトによって調整することができる。このバンドは、地下タンクの浮上を防止する作用をしていることから、大型の地下タンクにおいては、その大きな浮力に耐える十分な引張り強度を備えていることが要求される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−215396号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
地下タンクを固定するFRP製のバンドは、その端部をアンカーボルトや張力調整用のボルトに連結する必要があることから、FRP製のバンドの端部に鉄製の金具を取り付けている。このバンドと金具の固定には、エポキシ系の接着剤を用いているが、この接着部の強度がバンド自体の強度の約1/2以下と低いことから、接着部の強度を必要な引張力に耐える強度とするために、バンドや金具の寸法をそれらが必要とする寸法より大きくしなければならず、コストが高くなると共に、重量の増大等によって地下タンクを床版に固定する際の作業負担が増大するという問題があった。
【0007】
また、特許文献1で提案されている帯鉄板製の受台は、重量が重いために作業者が1人で床版に取り付けることができず、地下タンクを床版に固定する作業に2人の作業者を必要とするという問題があった。
【0008】
この発明は、地下タンクを固定するのに用いる両端に金具を取付けたバンド(以下、「バンドユニット」と言う。)において、高い引張り強度を有するバンド本体と金具の取付構造を得ることにより、バンドユニットのコスト低減と軽量化を図り、それによってバンドユニットのコストを低減すると共に、地下タンクを固定する際の作業負担を軽減することを課題としている。また、この発明は、コンクリート製の受台に比べて軽量化及び作業性が改善されている帯鉄板製の受台を更に軽量化することにより、地下タンク固定時の作業性を更に向上させることを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明の地下タンクの固定に用いるバンドユニット2は、バンド本体21と、当該バンド本体の端部21aの両面にエポキシ系接着剤で接着された鉄板製又は多層の繊維強化層を備えたFRP製の接着板43、51と、更にその両面の接着板43、51をその外側からボルト45によって締め付ける剛性の締結板44と、前記接着板に接続された又は一体の金具4(4a、4b)を備えているというものである。
【0010】
鉄板製の接着板43は、バンドユニット2の端部に取り付けられる金具4と一体のものとすることができ、例えばL形に折り曲げた2枚の鉄板からなる金具の一片43をそれぞれの接着板とし、他片42にボルト孔を設けてアンカーボルト6や張力調整ボルト7を挿通する構造とすることができる。
【0011】
接着板51をFRP板製とする構造においては、U字状に屈曲したFRP板の両片を接着板51とし、そのU字に屈曲した部分に金属棒ないし金属パイプ49を挿通して、当該金属棒ないしパイプを金具4と一体化するか又は金具にヒンジ構造で接続する構造とする。
【0012】
本願発明者らが行った試験によれば、FRP製の接着板51は、ガラス繊維の織布ないし不織布を補強材とするマット層と、張力が作用する方向に引き揃えたガラス繊維を補強材とするロービング層とを7ないし9層重ね合せた構造のFRP板とするのがよく、更にその容積の1〜10%の炭素繊維を含んだ補強層を備えたFRP板とするのが、高い引張り強度を得る上で好ましい。
【0013】
この発明の地下タンクの固定構造においては、上記構造を備えたバンドユニット2と共に、タンク胴部の底面と接触する円弧部及びその両端の脚部をFRP製の帯板で形成し、床版への締結箇所を鉄板32で補強した構造の受台3を用いるのがよい。バンドユニット2及び受台3を上記構造とすることにより、地下の床版11上への地下タンク1の固定作業における作業負担を大幅に低減でき、従来2人の作業者が行っていた固定作業を1人の作業者で行うことも可能になる。
【発明の効果】
【0014】
バンド本体と金具との接続部における引張り強度を大きくするために最初に考えられることは、接着面積を大きくすることである。接着面積を大きくするためにバンド本体の幅を広くすると、バンド本体及び金具を小さくしたいという課題に反することとなるので、接着面積を大きくするためには、バンド本体の長手方向の寸法Lを長くして接着面積を広げる必要がある。しかし、このようにして接着面積を広くして試験を行ったところ、接着部の引張り強度がある長さで最大となり、それ以上長くするとかえって強度が低下する傾向が見られた。幅65mmのバンドを用いた試験では、接着長さ200mmで引張強度100〜115KN(キロニュートン)程度が最大値であった。なお、バンド本体の引張強度は200KNである。
【0015】
バンド本体の端部の両面に鉄板製又はFRP製の接着板43、51を接着し、その接合面と同じ形状の鉄板からなる締結板を上記接着板の外側面に添設し、両側の締結板をバンド本体を貫通するボルトで締め付けて接着板をバンド本体に圧着した構造についても試験を行ったが、所望の強度を得ることはできなかった。3個の試料の引張強度はそれぞれ151KN、152KN、147KNで、平均値は150KNであった。
【0016】
本願発明は、上記の種々の試行錯誤を経て完成されたもので、バンド本体の端部両面に鉄板製又はFRP製の接着板43、51を接着し、更にその外側に添設した締結板44を、バンド本体の幅方向外側に突出した部分において、ボルト45、45で締結してバンド本体21の両面に接着した接着板43、51をバンド本体21に圧着する構造によれば、バンド本体21と接着板43、51の接合部にバンド本体21の引張り強度と遜色のない引張り強度を付与することができ、地下タンクの固定におけるバンドユニットの大幅なコスト低減と作業性の改善を図ることができる。
【0017】
また、上記構造のバンドユニットと共に、タンク本体1と接触する円弧部及びその両端の支持部をFRP製とし、床版との締結部を補強鉄板32で補強した構造の受台3を使用することにより、床版への地下タンク固定時の作業性を大幅に改善することができ、地下タンク固定作業の際に必要な作業者数を低減できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】バンド本体と金具との接合部の第1例を示す正面図
【図2】図1の接合部の側面図
【図3】バンド本体と金具との接合部の第2例を示す正面図
【図4】図3の接合部の側面図
【図5】この発明の固定構造における受台の要部を示す正面図
【図6】受台の固定部の平面図
【図7】図5の平面図
【図8】地下タンクの固定構造の全体を示す正面図
【図9】図8の側面図
【発明を実施するための形態】
【0019】
地中に設置した床版11への横置き円筒形の地下タンク1の固定構造を示す図8、9において、3は床版11に設けたアンカーボルト6に両端を固定された受台、2は地下タンク1の胴に逆U字状に掛け渡されたバンドユニットである。受台3は、地下タンク1の胴の円周と等しい曲率で屈曲された円弧部3aと、その両端の脚部3bと、当該脚部の下端から外側に水平に延びる固定部3cとを備えている。固定部3cには、図6、7に示すように、外側からV形の切り込み31が設けられており、この切り込み31の部分にアンカーボルト6が挿入されている。
【0020】
バンドユニット2は、正面から見て左右にそれぞれ一本が配置されている。それぞれのバンドユニット2、2は、下端と上端とに金具4、4が取り付けられている。下端の金具4は、アンカーボルト6を挿通するボルト孔を備え、アンカーボルト6で床版11に固定される。上端の金具4は、張力調整ボルト7を挿通するボルト孔を備え、当該孔に挿通した張力調整ボルト7により、左右のバンドユニット2、2が連結されている。
【0021】
図1及び2は、バンドユニット2のバンド本体21と金具4(4a)との接続部の第1例を示した図である。この第1例の金具4aは、2枚のL形に屈曲した鉄板41、41からなり、折り曲げた一方の片42、42は、重ね合わせて接着されてボルト挿通孔が設けられたボルト固定部となっている。屈折された他方の片43、43は、バンド本体の端部21aを挟むように当該端部の両面にエポキシ系の接着剤で接着され、更にその外側には、バンド本体21及びこれに接着された鉄板片43、43の幅の外側に突出する寸法を備えた締結板44、44が添設され、当該幅の外側に突出した部分に設けたボルト孔に挿通したボルト45により、バンド本体の端部21a及び接着板と成っている金具の鉄板片43、43を重ね合わせた状態で締結している。
【0022】
65mm幅のバンド本体に上記構造で金具4aを取付けた接合部の引張強度は、接着長さL=200mmの3個の試料について、171KN(キロニュートン)、168KN、171KNで、平均値は168KNであり、接着長さL=300mmの3個の試料について、188KN、190KN、176KNで、平均値は185KNであった。なお、図の例ではバンドの長手方向2箇所を締結板44で締結しているが、1箇所のみを締結した構造の引張強度がより優れている傾向が認められた。
【0023】
所定長さのバンド本体21の両端に図1、2で示す構造で金具4aを接続して図8、9に示す左右のバンドユニット2、2を形成し、その金具4aの一方をアンカーボルト6により床版11に固定し、他方を張力調整ボルト7で連結して、地下タンク1を受台3との間で固定する。地下水の水圧によって地下タンク1に浮力が作用したとき、バンドユニット2、2に作用する張力が当該浮力に抵抗して地下タンクの浮上を防止する。
【0024】
図3及び4は、バンドユニット2のバンド本体21と金具4(4b)との接続部の第2例を示した図である。この第2例の金具4bは、側面視で上向きコの字形に屈曲した鉄板の底面47にボルト挿通孔が設けられ、その上向き(図3、4上で左向き)に屈曲した2つの屈曲片48、48の間に鉄の丸棒49が掛け渡された構造である。バンド本体の端部21aと金具4bとは、U字の両片51、51がバンド本体の端部21aの両面にエポキシ系樹脂で接着され、そのU字に曲がった部分に金具の丸棒49が挿通されたFRP製接続部材50を介して接続されている。
【0025】
すなわち、接着板となるFRP製接続部材50のU字の両片51、51は、バンド本体の端部21aの両面にエポキシ系の接着剤で接着され、更にその外側には、バンド本体21及びこれに接着されたFRP製接続部材の両片51、51の幅の外側に突出する寸法を備えた締結板44、44が添設され、当該幅の外側に突出した部分に設けたボルト孔に挿通したボルト45により、バンド本体の端部21aと接着板となっているFRP製接続部材の両片51、51とを重ね合わせた状態で締結している。そして、FRP製接続部材50のU字に曲がった部分に金具の丸棒49が挿通されて、FRP製接続部材50と金具4bとが連結されている。
【0026】
65mm幅のバンド本体21とFRP製接着板51、51との上記構造での接合部の引張強度は、接着長さL=200mmの3個の試料について、182KN(キロニュートン)、185KN、208KNで、平均値は192KNであり、接着長さL=300mmの3個の試料について、175KN、193KN、190KNで、平均値は186KNであった。なお、接着長さL=200mmの3個の試料の内の最初の1個とL=300mmの3個の試料は、バンドの長手方向2箇所を締結板44で締結した構造てあるが、L=200mmの3個の試料の内の後の2個は、1箇所のみを締結板44で締結した構造である。
【0027】
所定長さのバンド本体21の両端に図3、4で示す構造で金具4bを接続して図8、9に示す左右のバンドユニット2、2を形成し、その金具4bの一方をアンカーボルト6により床版11に固定し、他方を張力調整ボルト7で連結して、受台3との間で地下タンク1を固定する。
【0028】
図5は、上記構造のバンドユニット2、2と共に用いるのに好適な受台の要部を示した正面図で、当該受台の正面は図8に、側面は図9に示されている。受台3は、固定する地下タンク1の円筒部の底面を支持する円弧部3aと、その両側から斜め外側下方に延びる脚部3bと、当該脚部の下端から水平に外側へ延びる固定部3cとの一体構造である。円弧部3aは、固定する地下タンク1の胴部の円周に等しい曲率の円弧形状に成形されている。円弧部3a及び脚部3bは、FRPのみの帯状部材である。
【0029】
固定部3cには、図6に示すように、その外側からV形の切り込み31が設けられ、この切り込み部分にアンカーボルト6を挿通して床版11上に固定される。固定部3cの切り込み31を設けた部分には、補強鉄板32が埋設されている。
受台3を上記構造とすることにより、受台として必要な強度を損なうことなく、大幅に重量を低減することができ、床版11上への受台3の固定作業を1人の作業者で行うことが可能になる。
【符号の説明】
【0030】
1 地下タンク
2 バンドユニット
3 受台
3a 円弧部
3b 脚部
4(4a、4b) 金具
6 アンカーボルト
7 張力調整ボルト
11 床版
21 バンド本体
32 補強鉄板
43 接着板
44 締結板
45 締結ボルト
50 FRP製接続部材
51 接着板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バンド本体(21)と、当該バンド本体の端部(21a)に取付けられた金具(4)とを備えた地下タンク固定用のバンドユニットにおいて、バンド本体(21)の端部(21a)の両面にエポキシ系接着剤で接着された鉄板製又は多層の繊維強化層を備えたFRP板製の接着板(43,51)と、当該両面の接着板をその幅方向外側に位置するボルト(45)によって締め付ける剛性の締結板(44)と、前記接着板に接続された又は一体の金具(4)とを備えている、地下タンク固定用のバンドユニット。
【請求項2】
鉄板製の前記接着板(43)と、L形に折り曲げた2枚の鉄板(41)からなる前記金具(4a)とを備え、当該金具は、前記折曲げた一片をそれぞれ前記接着板とされ、2枚重ねて接着した他片(42)にアンカーボルト(6)ないし張力調整ボルト(7)を挿通するボルト孔が設けられている、請求項1記載の地下タンク固定用のバンドユニット。
【請求項3】
請求項1又は2記載のバンドユニット(2)と、地下タンク胴部の底面と接触する円弧部(3a)を有しかつ床版との固定部(3c)に補強鉄板を埋設したFRP製の受台(3)とを備え、前記固定部をアンカーボルト(6)で地下に設けた床版(11)に固定した前記受台(3)に載せた地下タンク(1)を、一方の金具を前記アンカーボルトで前記床版に固定しかつ他方の金具相互を張力調整ボルト(7)で接続した2本の前記バンドユニットで締結した、地下タンクの固定構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−143930(P2011−143930A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−4099(P2010−4099)
【出願日】平成22年1月12日(2010.1.12)
【出願人】(593140956)玉田工業株式会社 (11)
【Fターム(参考)】