説明

地下タンク装置

【課題】地下に埋設されるタンク本体内での結露を抑制し、水抜き作業頻度の低減とタンク有効容積の拡大を図る。
【解決手段】所定の容積を有するタンク本体1内に吸液管3と水抜管4とが水密的に挿入され、吸液管3の一端がタンク本体1内にて水抜管4の一端よりも高い位置に設定される地下タンク装置である。タンク本体1は、少なくともその上部がスペーサ12を介して部分的に結合される外壁材11Aと内壁材11Bとの2重壁構造とされ、その外壁材11Aと内壁材11Bとの間に密閉空間11Cが形成される。密閉空間11Cにタンク本体1の外部から吸気管5が連通され、密閉空間11Cが吸気管5を通じて真空引きされた真空断熱層とされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガソリンや軽油といった液体燃料などを貯蔵する地下タンク装置に係わり、特に地下に埋設されるタンク本体内での結露を防止できるようにした地下タンク装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ガソリンスタンドなどにおいて、ガソリンや軽油といった販売用の液体燃料は地下に埋設されるタンクに貯蔵している(例えば、特許文献1、特許文献2)。
【0003】
その種のタンクは、耐食性を有する金属板などから形成される密閉型であり、その内部には地上から注入管や吸液管が挿入される。そして、タンク内の液体燃料の残量が減少する都度、タンクローリー車などにより輸送されてくる液体燃料が注入管を通じてタンク内に補給され、その貯蔵燃料が消費者の要求に応じ吸液管を通じて所要量ずつ取り出せるようにしてある。
【0004】
尚、注入管や吸液管などはタンク内に雨水などが浸入せぬよう、タンク内に水密的に挿入されるが、防水構造のタンクでもその底部には注入管などを通じて流入する空気中の水分の結露や液体燃料中の水分蒸発の結露により水が溜まる。
【0005】
このため、タンク内には注入管や吸液管のほか水抜管が水密的に挿入され、その水抜管を通じてタンク底部に溜まった水を定期的に排出するようにしている。
【0006】
【特許文献1】実開平3−120494号公報
【0007】
【特許文献2】実開平4−118400号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、タンク内からの水抜き作業は煩わしく時間がかかり、しかも抜き取られた水には多くの燃料が含まれるので、水の抜き取り後も油水の分離や廃棄処理を行わなければならず、その処理に大きな費用を必要としている。
【0009】
特に、特許文献1、2に開示されるような燃料貯蔵用の従来地下タンクは、その周壁が金属板などによる単層構造とされているので壁面温度の変動が著しく、その壁面温度が外部から供給される燃料や空気の温度に比べて大きく低下することにより、タンク内には結露による水溜まりが発生し易い。このため、上記のような水抜き作業を頻繁に行わなければならないという大きな問題があった。
【0010】
又、結露による水溜まりが発生し易いタンクでは、販売燃料中に水が混入することを避けるべく、タンクの有効容積を犠牲にして吸液管による燃料吸引位置を必要以上に高く設定せざるを得ないという問題があった。
【0011】
本発明は以上のような事情に鑑みて成されたものであり、その目的はタンク内での結露を抑制し、水抜き作業頻度の低減とタンク有効容積の拡大を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は上記目的を達成するため、
所定の容積を有するタンク本体内に吸液管と水抜管とが水密的に挿入され、前記吸液管の一端が前記タンク本体内にて前記水抜管の一端よりも高い位置に設定される地下タンク装置において、
前記タンク本体は、少なくともその上部が外壁材と内壁材との2重壁構造とされ、その外壁材と内壁材との間に密閉空間が形成されていることを特徴とする。
【0013】
加えて、前記密閉空間に前記タンク本体の外部から吸気管が連通され、前記密閉空間が前記吸気管を通じて真空引きされた真空断熱層とされていることを特徴とする。
【0014】
又、前記外壁材と内壁材がスペーサにより部分的に結合され、しかも前記スペーサは、少なくとも内壁材に接触する部分が断熱部材から成ることを特徴とする。更に、前記密閉空間に繊維質の断熱材が充填されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る地下タンク装置によれば、タンク本体の少なくとも上部が外壁材と内壁材との2重壁構造とされ、その外壁材と内壁材との間に密閉空間が形成されていることから、外壁材から内壁材への熱(冷熱)伝達が抑制され、タンク本体の内壁面の温度変動が小さくなるために、タンク本体の内壁面には流入空気や注入液(燃料)との温度差による結露を生じ難く、結露に起因する水溜まりも発生し難い。
【0016】
このため、水抜き作業を頻繁に行う必要がなくなり、しかも吸液管による吸引位置をタンク本体内底部まで達する水抜管の一端近くまで下げてタンク本体の有効容積を拡大しながら、吸液管による結露水の混合吸引を防止することが可能になる。
【0017】
特に、外壁材と内壁材との間に形成される密閉空間が真空断熱層とされることから、タンク本体の断熱性能が格段に高まり、タンク本体内における結露の抑制効果が上がる。
【0018】
更に、外壁材と内壁材がスペーサにより部分的に結合されることから、両壁材を所定の間隔に保ちながらそれらの強度を上げることができ、しかも内壁材に接触する部分は断熱部材とされるので、その内外壁材の結合部分にも結露を生じ難くすることができる。
【0019】
又、密閉空間に繊維質の断熱材が充填される構成でも、タンク本体の断熱性能が格段に高まり、タンク本体内における結露の抑制効果が上がる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の適用例を図面に基づいて詳細に説明する。先ず、図1により本発明に係る地下タンク装置の全体的構成を概説すれば、1は所定の容積を有する密閉型のタンク本体であり、その内部には貯蔵液Lとしてガソリンや軽油といった液体燃料が収容される。本例において、係るタンク本体1はステンレスをはじめとする金属板などから形成されるもので、その形態は円筒形とされる。
【0021】
特に、本例において、タンク本体1はその上部(全高の1/2〜2/3の上部領域)が断熱壁11として外壁材11Aと内壁材11Bとの2重壁構造とされている。外壁材11Aおよび内壁材11Bは、ステンレス鋼板や構造用圧延鋼板から成り、その両者は小片状のスペーサ12により部分的に結合され、外壁材11Aと内壁材11Bとの間は10〜20mm程度の間隔を有する密閉空間11Cとされている。又、内張材11Bは、外壁材11Aよりも薄い金属板を用いて形成される略半円筒状で、その端部は外壁材11Aとの間に密閉空間11Cを形成するべく外壁材11Aに溶接されている。
【0022】
そして、上記のようなタンク本体1は地下に埋設され、その内部に必要に応じて地上から液体燃料を補給できるようになっている。
【0023】
2はタンク本体1内に液体燃料を補給するための注入管であり、この注入管2はタンク本体1内にその上部から水密的に挿入され、その上流端は給油口21として地上に開口されている。給油口21は図示せぬバルブにより開閉可能とされ、タンク本体1内への液体燃料の補給時には給油口21と給油源22(タンクローリー車)とが配管接続される。
【0024】
尚、タンク本体1内には図示せぬ液面センサが設けられ、これによるタンク本体1内の液面検出により、タンク本体1内における液体燃料の貯蔵量を地上で把握することができる。
【0025】
一方、3はタンク本体1内に貯蔵された液体燃料を取り出す吸液管であり、この吸液管3もタンク本体1内にその上部から水密的に挿入されている。特に、吸液管3の一端(下端)は、タンク本体1の底部に溜まった水Wを吸い出してしまうことがないよう、タンク本体1の底部より稍高い位置に開口され、その他端(上端)は地上まで延長されて計量機31に接続されている。計量機31は吸液管3に連続するポンプ31Aや絞り弁31Bならびに流量計31Cを内蔵する公知のユニットで、これにはホース32を介して吐出ノズル33が接続される。そして、係る計量機31によれば、ポンプ31Aの起動により吸液管3を通じてタンク本体1内の液体燃料を吸い上げ、これを吐出ノズル33から吐出せしめることができる。
【0026】
又、4はタンク本体1の上部からその内部に水密的に挿入される水抜管であり、その一端(下端)は吸液管3の一端よりも低い位置に設定されてタンク本体1の底部まで達し、その他端(上端)は地上まで延長されてポンプ41に接続されている。そして、そのポンプ41を起動することにより、水抜管4を通じてタンク本体1の底部に溜まった水を外部に抜き取り得るようになっている。
【0027】
尚、図1において、5はタンク本体1に接続する吸気管であり、その一端は地上まで延長されて真空ポンプ51に接続され、その吸気管5には地上において圧力計52が取り付けられる。
【0028】
図2は、タンク本体1に対する吸気管5の接続部分を示す。この図で明らかなように、吸気管5はタンク本体1の外壁材11Aを貫通して密閉空間11Cに連通されている。従って、吸気管5の一端が接続する真空ポンプ51を起動することにより、密閉空間11C内の空気を排出して密閉空間11Cを真空状態とすることができる。尚、本例において、密閉空間11Cは真空ポンプ51による真空引きにより、内圧が30〜50kPaに減圧された真空状態の真空断熱層とされる。
【0029】
又、図2において、13はタンク本体1の最外層を成す被覆層である。本例において、被覆層13は外壁材11Aの表面全体に施される厚さ2〜5mmの繊維強化プラスチック(FRP)であり、これにより外壁材11Aの腐食が防止され、タンク本体1の強度向上が図られている。
【0030】
次に、図3はタンク本体1の部分拡大断面を示す。この図で明らかなように、外壁材11Aと内壁材11Bとの間に介在されるスペーサ12は、金属製のベース12Aとゴム板などから成る断熱部材12Bから構成されている。尚、ベース12Aは外壁材11Aに溶接され、断熱部材12Bはベース12Aと内壁材11Bとの間に接着剤などにて接着されている。
【0031】
ここで、以上のように構成される地下タンク装置の作用を説明すれば、タンク本体1内には注入管2を通じて供給される液体燃料が貯蔵され、これが消費者の要求に応じて所要量ずつ吸液管3を通じて取り出される。タンク本体1内の液体燃料が取り出されると、これに相当する空気が図示せぬ通気管を通じて地上からタンク本体1内に流入し、タンク本体1内の液面上に空気で満たされた空間が形成される。ここに、液面上の空気温度に対してタンク本体1の内壁面が低温であれば、空気中の水分が結露し、これがタンク本体1の底部に溜まる事になるが、本発明に係るタンク本体1によれば真空断熱層を成す密閉空間11Cにより外壁材11Aから内壁材11Bへの冷熱の伝わりが抑制されるために、タンク本体1内における空気と内壁材11Bとの間に大きな温度差が生じず、タンク本体1内での結露が抑制される。尚、タンク本体1内の液面が密閉空間11Cを有する断熱壁11の位置より低下すると結露を発生し易くなるが、断熱壁11より下方が結露面として液面上に露出される期間は短いし、その面積も少ないので、タンク本体1内に短期間で多量の結露水Wが溜まることはない。
【0032】
尚、タンク本体1内の底部に溜まった結露水Wは、水抜管4を通じて定期的に排出されるが、上記のようにタンク本体1は結露水Wが溜まり難い構造であるから、吸液管3の一端を水抜管4の一端近くまで下げながら、吸液管3による結露水Wの吸引を防止できるので、タンク本体1の有効容積を拡大する(従来において94〜96%であった有効容積を99%以上とする)ことができる。又、水抜回数と排水量も従来の1/10〜1/5とすることができる。
【0033】
以上、本発明の好適な一例を図面に基づき説明したが、タンク本体1内に貯蔵すべき液体は、ガソリンや軽油に拘わらず、灯油やアルコール、あるいはアルコール混合燃料でもよいし、燃料以外のものでもよい。
【0034】
更に、スペーサ12の全体を断熱部材(例えばプラスチックピース)とし、これを図4のように内壁材11Bにネジ止めするようにしてもよい。又、図5のように、密閉空間11Cにグラスウールやロックウールといった繊維質の断熱材14を充填するようにしてもよい。尚、断熱材14を充填する場合には、密閉空間11Cを真空断熱層とすることを要件とせず、しかも断熱材14が間隔調整材として機能するのでスペーサ12を省略することができる。
【0035】
又、上記例では、タンク本体1の上部のみを断熱壁11(外壁材11Aと内壁材11Bとの間に密閉空間11Cを形成した壁)としたが、その下部を含む全体を断熱壁11としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明に係る地下タンク装置を示す全体構造図
【図2】タンク本体に対する吸気管の接続部分を示す断面図
【図3】タンク本体の部分拡大断面図
【図4】スペーサの変更例を示す説明図
【図5】密閉空間に断熱材を充填した例を示す部分拡大断面図
【符号の説明】
【0037】
1 タンク本体
11 断熱壁
11A 外壁材
11B 内壁材
11C 密閉空間
12 スペーサ
12A ベース
12B 断熱部材
13 被覆層
14 繊維質の断熱材
2 注入管
3 吸液管
4 水抜管
5 吸気管
51 真空ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の容積を有するタンク本体内に吸液管と水抜管とが水密的に挿入され、前記吸液管の一端が前記タンク本体内にて前記水抜管の一端よりも高い位置に設定される地下タンク装置において、
前記タンク本体は、少なくともその上部が外壁材と内壁材との2重壁構造とされ、その外壁材と内壁材との間に密閉空間が形成されていることを特徴とする地下タンク装置。
【請求項2】
前記密閉空間に前記タンク本体の外部から吸気管が連通され、前記密閉空間が前記吸気管を通じて真空引きされた真空断熱層とされていることを特徴とする請求項1記載の地下タンク装置。
【請求項3】
前記外壁材と内壁材がスペーサにより部分的に結合されていることを特徴とする請求項1、又は2記載の地下タンク装置。
【請求項4】
前記スペーサは、少なくとも内壁材に接触する部分が断熱部材から成ることを特徴とする請求項3記載の地下タンク装置。
【請求項5】
前記密閉空間に繊維質の断熱材が充填されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の地下タンク装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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