説明

地下埋設用二重殻タンクのプロテクター支持部材、プロテクター支持構造、およびこれを備えた地下埋設用二重殻タンク

【課題】 地下埋設用二重殻タンク上に設置されるプロテクターにかかる応力により、あるいはプロテクター自体の重荷により地下埋設用二重殻タンクの外殻が破損することを防止するためのプロテクター支持部材、プロテクター支持構造、およびこれを備えた地下埋設用二重殻タンクを提供する。
【解決手段】 下端部が地下埋設用二重殻タンクの外殻1に固定され、かつ地下埋設用二重殻タンク1上に設置されるプロテクター4を支持するプロテクター支持部材3であって、その一部または全部が弾性体31により形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地下埋設用二重殻タンク上に設置されるプロテクターを支持するためのプロテクター支持部材、プロテクター支持構造、およびこれを備えた地下埋設用二重殻タンクに関し、より詳細には、地下埋設用二重殻タンク上に設置されるプロテクターにかかる地中応力により、あるいはプロテクター自体の重荷により地下埋設用二重殻タンクの外殻が破損することを防止するためのプロテクター支持部材、プロテクター支持構造、およびこれを備えた地下埋設用二重殻タンクに関する。
【背景技術】
【0002】
ガソリンスタンド等におけるガソリンや軽油等の液体危険物は、二重殻タンクに貯留され、地下に埋設されている。この二重殻タンクは外殻と内殻とを有しており、例えば特開平8−282782号公報に開示されている、外殻がFRP(Fiberglass Reinforced Plastics)製であるとともに内殻が鋼製である、いわゆるSF二重殻タンク(特許文献1)や、例えば特開平10−59476号公報に開示されている、外殻と内殻とがFRP製である、いわゆるFF二重殻タンク(特許文献2)等が用いられている。
【0003】
二重殻タンクの液相部においては、気相部とは異なり、外殻と内殻との間に密閉された間隙が形成されている。タンク内の液体危険物が漏洩した場合や、地下水等が浸入した場合には、これらがこの間隙に浸透することから、浸透した液体危険物や地下水等を検知するため、タンク内を垂直方向にタンク外部から間隙下部まで貫通した漏洩検知管が形成されて、この漏洩検知管のタンク外部における開口位置には漏洩検知器が、間隙における開口位置には漏洩検知センサーが、各々配設されている。
【0004】
また、二重殻タンクには、注油管や吸油管、通気管、液面計取付ノズル等の各種ノズルが、垂直方向に二重殻を貫通して備えられており、これらを取り扱うための外部作業スペースとしてプロテクターがタンク上に設置されている。従来、このプロテクターの設置に際しては、タンク上面とプロテクター底板との接面部から雨水等が浸入するのを防止するため、タンク上面にプロテクターを設置した後にタンク上面からプロテクター側面にかけて、FRPでコーティングされている。
【0005】
【特許文献1】特開平8−282782号公報
【特許文献2】特開平10−59476号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、地下に埋設されたプロテクターには応力がかかるうえ、マンホールを備えるプロテクター自体の重荷がタンク上面とプロテクター底板との接面部にかかるため、FRPによってコーティングされたこの接面部に剥離が生じ、この剥離によりFRP製である外殻に剥離が生じて、液相部における外殻と内殻との間隙にこの剥離が達してしまい、その結果、間隙の密閉状態が解かれて雨水等の浸入が起こり、漏洩検知センサーが反応してしまうという問題がある。
【0007】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであって、地下埋設用二重殻タンク上に設置されるプロテクターにかかる応力により、あるいはプロテクター自体の重荷により地下埋設用二重殻タンクの外殻が破損することを防止するためのプロテクター支持部材、プロテクター支持構造、およびこれを備えた地下埋設用二重殻タンクを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るプロテクター支持部材は、下端部が地下埋設用二重殻タンクの外殻に固定され、かつ地下埋設用二重殻タンク上に設置されるプロテクターを支持するプロテクター支持部材であって、その一部または全部が弾性体により形成されている。この弾性体は、環状に形成され、かつ三次元方向に自由度を有する態様であってもよい。
【0009】
本発明に係るプロテクター支持構造は、地下埋設用二重殻タンク上に設置されるプロテクターを支持するプロテクター支持構造であって、下端部が地下埋設用二重殻タンクの外殻に固定されているとともにその一部または全部が弾性体により形成された支持体と、支持体上に配設されて外殻と支持体との固定面を押さえる枠体とを備えている。
【0010】
本発明において、枠体の内側であって地下埋設用二重殻タンクの上面に設けられた固定台に固定されるとともに枠体を押さえる押さえ部材を備える態様であってもよく、あるいは、支持体の上端部がプロテクター底板に固定される態様であってもよい。
【0011】
また、本発明において、前記押さえ部材を備える場合は、支持体の上端部がプロテクター底板に固定され、かつプロテクター底板を支持しつつ押さえ部材に固定された底板支持部材を備える態様であってもよい。
【0012】
さらに、本発明において、弾性体が環状に形成され、かつ三次元方向に自由度を有する態様であってもよい。
【0013】
次に、本発明に係る地下埋設用二重殻タンクは、本発明に係るプロテクター支持構造を備えている。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、地下埋設用二重殻タンク上に設置されるプロテクターにかかる応力により、あるいはプロテクター自体の重荷により地下埋設用二重殻タンクの外殻が破損することを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明に係るプロテクター支持部材は、その下端部が地下埋設用二重殻タンクの外殻に固定されている。本発明に係るプロテクター支持部材が用いられるプロテクターは、地下埋設用二重殻タンク上に設置されるものであれば特に限定されず、適宜選択することができる。また、本発明において「固定」とは、例えば、接着や固着、掛止、止着、粘着等のように、定まった位置に動かないようにする態様のすべてを含む趣旨である。
【0016】
また、本発明に係るプロテクター支持部材は、その一部または全部が弾性体により形成されている。
【0017】
本発明における弾性体としては、例えば、天然ゴムや合成ゴム等を選択することができる。合成ゴムとしては、例えば、アクリルゴムやアクリロニトリルブタジエンゴム、イソプレンゴム、ウレタンゴム、エチレンプロピレンゴム、エピクロルヒドリンゴム、クロロプレンゴム、シリコーンゴム、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴム、フッ素ゴム、ポリイソブチレン等を挙げることができる。
【0018】
また、本発明に係るプロテクター支持部材の一部が弾性体により形成されている例としては、弾性体の上端および下端の少なくともいずれか一方が他の材質の一端と連接されてプロテクター支持部材が形成される場合や、弾性体の上端および下端の少なくともいずれか一方が他の材質の一端と連接されるとともに他の材質の他端がさらに弾性体と連接されてプロテクター支持部材が形成される場合等を挙げることができる。この場合の「他の材質」は適宜選択することができるが、例えば、鉄やアルミニウム等の金属、鋼等の合金、ポリマーアロイ等の樹脂等を挙げることができる。
【0019】
また、本発明における弾性体は、環状に形成され、かつ三次元方向に自由度を有するものを選択することができる。
【0020】
ここで、本発明において「環状」とは、環であればその外周形状や内周形状、縦断面形状は特に限定されず、例えば、外周形状や内周形状が略矩形や略円形、略楕円形等である場合や、縦断面の形状が波形や略S字形状、略己字形状、略I字形状、略J字形状、U字形状、略楕円形状等である場合を挙げることができる。
【0021】
また、本発明において、「三次元方向に自由度を有する」とは、弾性によってxyz軸三次元全方向に対して可動という趣旨であり、例えば、弾性によってxyz軸三次元全方向に対して伸縮、傾斜、変形等する場合が挙げられる。
【0022】
次に、本発明に係るプロテクター支持構造は、下端部が地下埋設用二重殻タンクの外殻に固定されているとともにその一部または全部が弾性体により形成された支持体を備えている。すなわち、本発明における支持体としては、本発明に係るプロテクター支持部材が用いられる。そのため、本発明に係るプロテクター支持部材における弾性体は、本発明に係るプロテクター支持構造における弾性体と同様である。
【0023】
また、本発明に係るプロテクター支持構造は、支持体上に配設されて外殻と支持体との固定面を押さえる枠体を備えている。
【0024】
本発明における枠体は、支持体上に配設されて外殻と支持体との固定面を押さえることができれば、その形状や材質等は特に限定されず、適宜選択することができるが、形状は本発明における支持体の外周形状や内周形状に応じたものであることが好ましい態様であり、例えば、外周形状や内周形状が略矩形や略円形、略楕円形等である場合を挙げることができる。また、材質としては、例えば、鉄やアルミニウム等の金属、鋼等の合金、ポリマーアロイ等の樹脂等を挙げることができる。
【0025】
また、本発明に係るプロテクター支持構造は、枠体の内側であって地下埋設用二重殻タンクの上面に設けられた固定台に固定されるとともに枠体を押さえる押さえ部材を適宜備えてもよい。
【0026】
ここで、本発明における固定台は、地下埋設用二重殻タンクの上面に設けられて押さえ部材を固定することができるものであれば特に限定されないが、例えば、金属製や合金製、樹脂製等のブロックを用いて形成したものやクランプ等を挙げることができる。なお、本発明における「台」には、例えばブロックのように相当の高さを有するもののみならず、例えば平板のようにほとんど高さを有さないものも含む趣旨である。
【0027】
また、本発明における押さえ部材は、固定台に固定されるとともに枠体を押さえるものであれば、その形状や材質等は限定されず、適宜選択することができるが、形状は、タンクの形状に応じたものであることが好ましい態様であり、例えば、棒状でかつタンク上面の弧に応じて一または複数の折曲を有するような形状を挙げることができ、また、材質としては、例えば、鉄やアルミニウム等の金属、鋼等の合金、ポリマーアロイ等の樹脂等を挙げることができる。また、枠体と押さえ部材とは、別体として構成してもよいし、一体的に構成してもよい。
【0028】
さらに、本発明に係るプロテクター支持構造は、支持体の上端部がプロテクター底板に固定された態様であってもよく、その固定方法は特に限定されないが、例えば、接着剤を用いて支持体上端部とプロテクター底板を接着することにより固定する方法や、プロテクター底板に固定台を形成して支持体上端部を固定台に固定する方法、プロテクター底板上にクランプを配設して支持体上端部をクランプに固定する方法等を挙げることができる。
【0029】
なお、本発明におけるプロテクター支持構造が押さえ部材を備える態様の場合、支持体の上端部がプロテクター底板に固定され、かつプロテクター底板を支持しつつ押さえ部材に固定された底板支持部材を適宜備えてもよい。
【0030】
ここで、本発明における底板支持部材は、プロテクター底板を支持しつつ押さえ部材に固定されるものであれば特に限定されないが、例えば、ボルトやナット、座金、アンカー、フック、ジャックル、バックル、プレート、ひねり金物、平金物、金折金物、短冊金物等を適宜選択しまたは組み合わせて底板支持部材を構成することができる。
【0031】
本発明において、支持体の上端部がプロテクター底板に固定される態様やプロテクター底板を支持する態様は、底板支持部材が押さえ部材に固定されていれば特に限定されないが、例えば、支持体上端部とプロテクター底板との固定部と押さえ部材とが、底板支持部材により連接されてプロテクター底板が支持される態様や、支持体上端部が固定されたプロテクター底板に直接底板支持部材の一方の端部が固定されるとともに他方の端部が押さえ部材に固定されることにより、プロテクター底板と押さえ部材とが連接されてプロテクター底板が支持される態様等を挙げることができる。
【0032】
次に、本発明に係る地下埋設用二重殻タンクは、本発明に係るプロテクター支持構造を備えている。本発明において地下埋設用二重殻タンクは、外殻がFRP製であれば特に限定されず、例えば公知のSF二重殻タンクやFF二重殻タンク等を適宜選択することができる。
【0033】
以下、本発明に係る地下埋設用二重殻タンク用のプロテクター支持部材、プロテクター支持構造、およびこれを備えた地下埋設用二重殻タンクの実施形態について図面を用いて説明する。図1は、本発明に係るプロテクター支持構造の第一実施形態を示すタンク長手方向に垂直な断面拡大図であり、図2は、本発明に係るプロテクター支持構造の実施形態を示すタンク上面図、図3は、第一実施形態に係るプロテクター支持構造であって異なる態様のプロテクター支持体である場合を示すタンク長手方向に垂直な断面拡大図、図4は、本発明に係るプロテクター支持構造の第二実施形態を示すタンク長手方向に垂直な断面図、図5は、本発明に係るプロテクター支持構造の第三実施形態を示すタンク長手方向に垂直な断面図、図6は、本発明に係るプロテクター支持構造の第三実施形態を示すタンク長手方向断面図、図7は、本発明に係るプロテクター支持構造の第四実施形態を示すタンク長手方向に垂直な断面拡大図、図8は、本発明に係るプロテクター支持構造の第五実施形態を示すタンク長手方向に垂直な断面拡大図、図9は、本実施形態に係るプロテクター支持構造を備えた地下埋設用二重殻タンクのプロテクター設置後のタンク上部拡大図である。
【0034】
第一実施形態に係るプロテクター支持構造2aは、図1に示すように、主に、本発明に係るプロテクター支持部材である支持体3と、地下埋設用二重殻タンク1の外殻12と支持体3との固定面を押さえる枠体21と、枠体21を押さえる押さえ部材22と、プロテクター底板26と、押さえ部材22に固定されるとともにプロテクター底板26を支持する底板支持部材25とを備え、押さえ部材22の端部と支持体3とが対向する支持体3の波形部分には、押圧付加保護板28が配設されている。以下、各構成について詳細に説明する。
【0035】
本実施形態における支持体3は本実施形態におけるプロテクター支持部材である。その全体が一体となった弾性体であるクロロプレンゴム{デュポンエラストマー社;ネオプレン(登録商標)}で形成され、図1および図2に示すように、外周形状と内周形状とが矩形であって縦断面形状が波形であるとともに平面形状が環状である、通称エキスパンションゴムと呼ばれるものが用いられている。また、支持体3の下端部は、地下埋設用二重殻タンク1の気相部13の外殻12と接着剤によって接着されて固定されており、支持体3の上端部は、鋼製のプロテクター底板26に配設された底板クランプ27によって固定されている。ここで、図3に示すように、第一実施形態に係るプロテクター支持構造2aにおいて、支持体3の縦断面形状が略S字形状であるものが用いられてもよい。なお、支持体3の下端部が接着剤により固定されているが、仮止めであってもよい。
【0036】
次に、本実施形態における枠体21は、図1に示すように、外周形状と内周形状とが矩形であるとともに平面形状が枠状である平鋼製の枠体である。また、図2または図9に示すように、地下埋設用二重殻タンク1の稜線が枠体21の長手方向中心線とほぼ重なるように、かつ支持体3の下端部と外殻12との固定面を押さえるように配設されている。この枠体21によって支持体3の固定面が外殻12に押圧されるため、条件によっては前記固定面の接着を仮止め程度にしたり、接着剤を使用しなくてもよい場合もある。
【0037】
また、本実施形態における押さえ部材22は、図1および図2に示すように、全体形状が棒状であるとともに、その腕部には地下埋設用二重殻タンク1の上面の弧に沿わせるための折曲が形成されている鋼製の部材であり、その寸法は枠体21の両長辺枠部分を押さえることが可能な全長となるように、すなわち枠体21の短辺の長さとほぼ同じ全長となるように形成される。押さえ部材22の中央部は、地下埋設用二重殻タンク1の内殻11のほぼ稜線付近に鋼製ブロックを溶接させることにより形成された固定台23に、固定ボルト24を螺着させることによって固定されている。また、固定台23の側面から内殻11と固定台23との溶接部分を経た外殻12にかけては、外殻12の材質と同じFRPがライニングされている。さらに、押さえ部材22の両端部が枠体21の長辺枠部分を押さえた状態で、押さえ部材22が固定台23に固定されている。
【0038】
また、本実施形態における押圧付加保護板28は、図1に示すように、支持体3の波形部分に嵌合するよう、平鋼板を湾曲させて形成されている。この押圧付加保護板28は、押さえ部材22の端部が接する支持体3の波形部分に配設されることにより、押さえ部材22の端部が押圧付加保護板28を支持体3の波形部分に押さえつけるため、前記嵌合が保たれる。なお、必要に応じて、支持体3の波形部分と押圧付加保護板28とを、接着剤を用いて接着させる等としてもよい。
【0039】
また、本実施形態におけるプロテクター底板26は平鋼板で形成されており、図1および図2に示すように、支持体3の外周に合わせて内周が矩形に切り取られて内側へ折り曲げられた、平面形状が枠状のものである。またプロテクター底板26の上面には底板クランプ27が配設され、支持体3の上端部が固定されている。
【0040】
さらに、本実施形態における底板支持部材25は、図1に示すように、平金物とボルトとナットとから構成され、L字状に形成されている。すなわち、プロテクター底板26上に配設された底板クランプ27の押さえ部分を、固定台23方向へ延伸させるように平金物を連接させ、この平金物の端部にボルトを上下方向に螺挿させ、枠体21の長辺の枠部分を押さえている押さえ部材22の端部に螺着させる。これにより、押さえ部材22の端部と底板クランプ27とを連接させ、プロテクター底板26を支持している。
【0041】
第二実施形態に係るプロテクター支持構造2bは、図4に示すように、主に、支持体3と、枠体21と、押さえ部材22と、プロテクター底板26と、押圧付加保護板28とを備えている。これら支持体3と、枠体21と、押さえ部材22と、プロテクター底板26と、押圧付加保護板28とは、第一実施形態におけるものと同様である。すなわち、本実施形態におけるプロテクター支持構造2bは、底板支持部材を備えない態様である。
【0042】
第三実施形態に係るプロテクター支持構造2cは、図5および図6に示すように、主に、支持体3と、枠体21と、プロテクター底板26とを備えている。これら支持体3と、枠体21と、プロテクター底板26とは、第一実施形態におけるものと同様である。すなわち、本実施形態におけるプロテクター支持構造2cは、押さえ部材と底板支持部材とを備えない態様である。
【0043】
第四実施形態に係るプロテクター支持構造2dは、図7に示すように、主に、本発明に係るプロテクター支持部材であって第一実施形態とは異なる態様の支持体3と、枠体21と、押さえ部材22と、プロテクター底板26と、底板支持部材25とを備えている。枠体21と、押さえ部材22と、プロテクター底板26と、底板支持部材25とは、第一実施形態におけるものと同様である。
【0044】
本第四実施形態における支持体3について説明する。本実施形態における支持体3は、本実施形態におけるプロテクター支持部材である。図7に示すように、支持体3は弾性体31の下端部に固定用のL字平鋼板32を備えている。つまり、弾性体31の下端とL字平鋼板32とが接着剤で接着されることで、支持体3が一体的に形成されている。また、支持体3の全体の外周形状と内周形状とは矩形であって、縦断面形状が略S字形状であるとともに平面形状が環状となっている。但し、弾性体31は、クロロプレンゴム{デュポンエラストマー社;ネオプレン(登録商標)}を用いて縦断面形状が外側に湾曲されて略L字形状に形成された、通称エキスパンションゴムと呼ばれるものが用いられている。支持体3の下端部は、地下埋設用二重殻タンク1の気相部13の外殻12と接着剤によって接着されて固定されており、支持体3の上端部は、鋼製のプロテクター底板26に配設された底板クランプ27によって固定されている。
【0045】
第五実施形態に係るプロテクター支持構造2eは、図8に示すように、主に、本発明に係るプロテクター支持部材であって第一実施形態および第四実施形態とは異なる態様の支持体3と、枠体21と、押さえ部材22と、プロテクター底板26と、底板支持部材25とを備えている。枠体21と、押さえ部材22と、プロテクター底板26と、底板支持部材25とは、第一実施形態におけるものと同様である。
【0046】
本実施形態における支持体3について説明する。本実施形態における支持体3は、本実施形態におけるプロテクター支持部材である。図8に示すように、支持体3は、弾性体31の上下両端部に固定用の金属部材をそれぞれ備えている。具体的には、弾性体31の上端には、平鋼板33が平鋼板クランプ34で固定されているとともに、弾性体31の下端には、L字平鋼板32がL字平鋼板クランプ35で固定されている。そして、前記L字平鋼板32が固定弾性体36を介して外殻12に接着剤で接着されることで、平鋼板33と弾性体31とL字平鋼板32と固定弾性体36とが連接されて支持体3として一体的に形成されている。
【0047】
また、支持体3の全体の外周形状と内周形状とは矩形であって、縦断面形状が略S字形状であるとともに平面形状が環状となっている。平鋼板33とL字平鋼板32との間に連接された弾性体31は、クロロプレンゴム{デュポンエラストマー社;ネオプレン(登録商標)}を用いて縦断面形状が内側と外側にそれぞれ湾曲部分を備えるように形成された、通称エキスパンションゴムと呼ばれるものが用いられている。また、支持体3の下端部である固定弾性体36は、クロロプレンゴム{デュポンエラストマー社;ネオプレン(登録商標)}を用いて矩形枠板状に形成されたものであり、地下埋設用二重殻タンク1の気相部13の外殻12と接着剤によって接着されて固定されている。また、支持体3の上端部である平鋼板33は鋼製のプロテクター底板26に溶接されて固定されている。
【0048】
次に、本実施形態に係るプロテクター支持構造2aを備えた地下埋設用二重殻タンク1について説明する。本実施形態に係るプロテクター支持構造2aを備えた地下埋設用二重殻タンク1は、図9に示すように、支持体3の全体が弾性体であって縦断面形状が略S字形状であるものが用いられているが、これに限られず、例えば、略己字形状、略I字形状、略J字形状、U字形状、略楕円形状等であってもよく、また、例えば、第四実施形態や第五実施形態における支持体3のように、支持部材の一部が弾性体により形成されているものが用いられてもよい。
【0049】
以下、本実施形態に係るプロテクター支持部材、プロテクター支持構造2a,2b,2c,2d,2e、および地下埋設用二重殻タンクの作用について、図面を用いて詳細に説明する。
【0050】
図1および図2に示すように、地下埋設用二重殻タンク1の稜線付近に備えられた注油管や吸油管、通気管、液面計取付ノズル等の各種ノズルのフランジ14が収まるようにプロテクター4が配設される。図2に示すように、矩形枠状のプロテクター底板26の内周縁に沿う大きさを備える環状の支持体3を地下埋設用二重殻タンク1に固定する。図1に示すように、支持体3の下端部を接着剤を用いて外殻12に密着させ固定する。
【0051】
次に、図1および図2に示すように、枠体21を支持体3の下縁部に沿って重ねる。枠体21は相当の重量を有しているため、支持体3の下端部と外殻12との固定面を押さえることができ、当該枠体21を配設することによって支持体3の固定度が増す。また、支持体3は一体的な環状構造を有しているため、外部からプロテクター4内への雨水や地下水等の浸入を効果的に防止することができる。
【0052】
本実施形態においては、支持体3の下端部と地下埋設用二重殻タンク1の気相部13の外殻12とが接着剤で接着されて固定された後に枠体21が配設されているが、外殻12と支持体3との固定度をより増したいという場合、例えば、内殻11にクランプ(図示しない)を溶接した後、このクランプの側面から内殻11と前記クランプとの溶接部分を経た外殻12にかけてFRPをライニングして、支持体3の下端部を前記クランプに固定した後に枠体21を配設してもよい。また、支持体3の下端が鋼板で形成されている場合は、内殻11に直接支持体3の下端部を溶接し、支持体3の下端部から内殻11と支持体3の下端部との溶接部分を経た外殻12にかけてFRPをライニングして、支持体3の下端部を前記クランプに固定した後に枠体21を配設する方法等を適宜選択することができる。
【0053】
また、所望により、押さえ部材22を配設することができる。押さえ部材22は、固定台23を形成してこれに固定することによって配設する。固定台23は、図1および図2に示すように、地下埋設用二重殻タンク1の内殻11のほぼ稜線付近に沿って各種ノズルのフランジ14の邪魔にならない位置に、複数の鋼製ブロックを溶接することによって設ける。そして、この固定台23の側面から内殻11と固定台23との溶接部分を経た外殻12にかけて、FRPをライニングする。
【0054】
押さえ部材22は、図1および図2に示すように、複数の固定台23のそれぞれにその中央部を固定ボルト24で螺着する。これにより、押さえ部材22の両端部が枠体21の長辺部分を押さえるように配設される。押さえ部材22の両端部に押さえられた枠体21は、外殻12と支持体3との固定面を押さえているため、押さえ部材22が配設されることによって外殻12と支持体3との固定度が大幅に増す。
【0055】
なお、枠体21の配設によって、外殻12と支持体3との固定度が十分であると判断される場合には、固定台を形成して押さえ部材を配設する必要はなく、適宜選択することができる。さらに、押さえ部材22を配設した後であっても、その後に外殻12と支持体3との固定度が十分であると判断される場合には、固定台23と押さえ部材22とを撤去することができる。
【0056】
また、押さえ部材22が配設される場合は、所望により押圧付加保護板28を配設してもよい。図1および図4に示すように、第一実施形態や第二実施形態における支持体3は波形部分を有していることから、押さえ部材22の端部が当接する支持体3の波形部分に押圧付加保護板28を嵌合させることができる。嵌合された押圧付加保護板28は押さえ部材22の端部に押圧され、その押圧による力が支持体3に伝わって外殻12を押さえる力が働くこととなり、支持体3と外殻12との接する境界線をさらに押しつけ、支持体3と外殻12との固定度がさらに増す。一方、支持体3の当接部分は押さえ部材22の端部からの力を受けるため、摩耗や損傷等を生じやすいが、押圧付加保護板28が当該当接部分を保護することができる。
【0057】
さらに、押さえ部材22が配設される場合、所望により底板支持部材25を配設することができる。第一実施形態や第四実施形態における底板支持部材25は、図1、図2および図7に示すように、プロテクター底板26の上面に配設された底板クランプ27と押さえ部材22の端部とを連接させることによってプロテクター底板26を支持している。これにより、三次元方向に自由度を有する支持体3の可動と連動してプロテクター底板26が可動するのを抑制する。また、第五実施形態における底板支持部材25は、図8に示すように、プロテクター底板26の上面と押さえ部材22の端部とを連接させることによってプロテクター底板26を支持し、三次元方向に自由度を有する支持体3の可動と連動してプロテクター底板26が可動するのを抑制する。このような底板支持部材25は、特に運搬時には効果的であり、振動などによってプロテクター底板26が揺動して損傷してしまうのを抑制することができる。
【0058】
なお、底板支持部材25は適宜配設され、例えば、本実施形態に係るプロテクター支持構造2aを備えた地下埋設用二重殻タンク1が地中に埋設されてプロテクター4とマンホールとが備えられた場合、プロテクター底板26と支持体3とが安定することから、図2および図4に示すように、配設された底板支持部材25を撤去することができる。また、地下埋設用二重殻タンク1に備えられたプロテクター支持構造2aが底板支持部材25を備えなくとも安定する場合、当該底板支持部材25を備えない態様が選択される。
【0059】
本実施形態に係るプロテクター支持構造2aを備えた地下埋設用二重殻タンク1は、所望の搭載台とともに地下に埋設されるとともに、図9に示すように、プロテクター4が配設される。プロテクター4の上部周囲はコンクリートで固められるとともに、マンホールで蓋がされる。埋設された地下埋設用二重殻タンク1のプロテクター4には地中応力がかかり、プロテクター4と地下埋設用二重殻タンク1とを連接するプロテクター支持構造2aにはプロテクター4自体の重荷とともに多方向からの力がかかるが、プロテクター支持構造2aは三次元方向に自由度を有する弾性体を用いて形成されていることから作用力に対して可動し、外殻12に負担をかけず、外殻12が破損するのを防止することができる。
【0060】
また、本実施形態における支持体(支持部材)3は継ぎ目を有さない環状に形成されているため、地中に染み込んだ雨水や地下水の内部への浸入を防止することができ、注油管や吸油管、通気管、液面計取付ノズル等の各種ノズルのフランジ14を保護することができる。
【0061】
なお、本発明に係る地下埋設用二重殻タンクのプロテクター支持部材、プロテクター支持構造、およびこれを備えた地下埋設用二重殻タンクは、前述した実施例に限定されるものではなく、適宜変更することができる。
【0062】
例えば、プロテクターの平面形状が円形や楕円形の場合は、支持体(支持部材)や枠体の平面形状も合わせて円形や楕円形に形成してもよく、また、押さえ部材はプロテクターの中心付近に形成された固定台を中心に交差させた構成とする等してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明に係るプロテクター支持構造の第一実施形態を示すタンク長手方向に垂直な断面拡大図である。
【図2】本発明に係るプロテクター支持構造の実施形態を示すタンク上面図である。
【図3】第一実施形態に係るプロテクター支持構造であって異なる態様のプロテクター支持体である場合を示すタンク長手方向に垂直な断面拡大図である。
【図4】本発明に係るプロテクター支持構造の第二実施形態を示すタンク長手方向に垂直な断面図である。
【図5】本発明に係るプロテクター支持構造の第三実施形態を示すタンク長手方向に垂直な断面図である。
【図6】本発明に係るプロテクター支持構造の第三実施形態を示すタンク長手方向断面図である。
【図7】本発明に係るプロテクター支持構造の第四実施形態を示すタンク長手方向に垂直な断面拡大図である。
【図8】本発明に係るプロテクター支持構造の第五実施形態を示すタンク長手方向に垂直な断面拡大図である。
【図9】本実施形態に係るプロテクター支持構造を備えた地下埋設用二重殻タンクのプロテクター設置後のタンク上部拡大図である。
【符号の説明】
【0064】
1 地下埋設用二重殻タンク
2a,2b,2c,2d,2e プロテクター支持構造
3 支持体(プロテクター支持部材)
4 プロテクター
11 内殻
12 外殻
13 気相部
14 フランジ
21 枠体
22 押さえ部材
23 固定台
24 固定ボルト
25 底板支持部材
26 プロテクター底板
27 底板クランプ
28 押圧付加保護板
31 弾性体
32 L字平鋼板
33 平鋼板
34 平鋼板クランプ
35 L字平鋼板クランプ
36 固定弾性体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下端部が地下埋設用二重殻タンクの外殻に固定され、かつ前記地下埋設用二重殻タンク上に設置されるプロテクターを支持するプロテクター支持部材であって、その一部または全部が弾性体により形成されるプロテクター支持部材。
【請求項2】
請求項1において、前記弾性体が環状に形成され、かつ三次元方向に自由度を有するプロテクター支持部材。
【請求項3】
地下埋設用二重殻タンク上に設置されるプロテクターを支持するプロテクター支持構造であって、下端部が前記地下埋設用二重殻タンクの外殻に固定されているとともにその一部または全部が弾性体により形成された支持体と、前記支持体上に配設されて前記外殻と前記支持体との固定面を押さえる枠体とを備えるプロテクター支持構造。
【請求項4】
請求項3において、前記枠体の内側であって地下埋設用二重殻タンクの上面に設けられた固定台に固定されるとともに前記枠体を押さえる押さえ部材を備えるプロテクター支持構造。
【請求項5】
請求項3または請求項4において、前記支持体の上端部がプロテクター底板に固定されるプロテクター支持構造。
【請求項6】
請求項4において、前記支持体の上端部がプロテクター底板に固定され、かつ前記プロテクター底板を支持しつつ前記押さえ部材に固定された底板支持部材を備えるプロテクター支持構造。
【請求項7】
請求項3から請求項6のいずれかにおいて、前記弾性体が環状に形成され、かつ三次元方向に自由度を有するプロテクター支持構造。
【請求項8】
請求項3から請求項7のいずれかに記載のプロテクター支持構造を備える地下埋設用二重殻タンク。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−298442(P2009−298442A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−154515(P2008−154515)
【出願日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【出願人】(508176980)カワテックス株式会社 (2)
【Fターム(参考)】