説明

地下掘削孔の埋め戻し工法

【課題】不透水層の埋め戻し部分の盤ぶくれによる破壊を防止して、被圧帯水層に達する掘削孔を埋め戻すことができる地下掘削孔の埋め戻し工法を提供する。
【解決手段】地表近くの帯水層2と、被圧された被圧水が流れる被圧帯水層4とに挟まれた不透水層3を埋め戻すため、粒状ベントナイトB等の吸水膨張性を有する遮水性粒状物を乾燥した状態で掘削孔Hに充填する。不透水層3を粒状ベントナイトBで埋め戻して形成した遮水層23の下には、川砂S等を充填することにより被圧透水層24を形成し、遮水層23の上は川砂S等の透水用材料を堆積させて透水層22を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地下を掘削して生じた掘削孔を埋め戻す方法に関し、特に上下が帯水層によって挟まれた不透水層を埋め戻す方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、有害物質で汚染された土壌や汚染土壌を流れる地下水を浄化する目的等で、地下を穿孔する地下工事が行なわれている。掘削により生じた孔は、周辺土壌の性状を考慮して適宜、選択された材料を用いて埋め戻される。例えば、地下水が流れる帯水層を貫く掘削孔を埋め戻す際は、砂等を掘削孔に充填することで埋め戻した部分が透水性の層となるようにする。一方、帯水層の下にある不透水層(「難透水層」とも称する)に穿たれた孔を埋め戻す場合は、粘土のような遮水性材料を用いることで埋め戻した部分を遮水性とする(例えば特許文献1)。
【0003】
上述の地下掘削工事においては、表層土で覆われた地表近くの飽和層の下の帯水層、帯水層の下の不透水層を貫通し、さらに不透水層の下にあって被圧されている帯水層(被圧帯水層)にまで達する掘削が行なわれる場合がある。例えば、有害物質による汚染が被圧帯水層の地下水にまで及んでいる場合、被圧帯水層に達する大深度掘削を行い、掘削孔に浄化機能を有する浄化材を投入して浄化壁を設ける工事が行なわれる。
【特許文献1】特許第3071308号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、被圧帯水層に達するような大深度掘削を行なう場合、被圧帯水層を流れる地下水にかかる圧力が、土重量により不透水層にかかる力を上回ることによって不透水層が押し上げられる「盤ぶくれ」と呼ばれる現象が生じることがある。「盤ぶくれ」現象は、大深度掘削により生じた掘削孔を砂等で埋め戻し、被圧帯水層の上の不透水層を遮水性材料で埋め戻す場合にも生じる。特に、不透水層を埋め戻す材料としてセメントミルクのように速やかに固化する材料を用いる場合、瞬時に遮水層を形成できる一方で、固化材が完全に固化する前に不透水層下部の被圧水による揚力が遮水層に加わることにより、遮水層が破壊されるおそれがある。
【0005】
このように、遮水性材料で掘削孔を埋め戻して形成された遮水層が被圧水により押し上げられて遮水層が破損すると、遮水層の上にある帯水層と遮水層の下の被圧帯水層との間で地下水が流動する。このため、被圧帯水層に至る掘削を伴う地下工事においては、盤ぶくれ現象を防止することが求められている。また、有害物質で汚染された被圧帯水層の地下水を原位置で浄化する場合、不透水層の上下の帯水層と被圧帯水層との間での地下水の流動を防止することが求められる。
【0006】
本発明は上記課題に鑑みてなされ、被圧帯水層に達する掘削孔を埋め戻す際に、不透水層の掘削孔を遮水性材料で埋め戻して形成された遮水層が、被圧水の押し上げ力により破壊されることを回避できる地下掘削孔の埋め戻し工法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明では、不透水層の上下にある帯水層の掘削孔を砂等で埋め戻すとともに、乾燥した吸水膨張性の粒状物で不透水層の孔を埋め戻すことで、被圧帯水層からの揚圧力と不透水層の埋め戻した部分を押さえつける力とを徐々にバランスさせる。より具体的には、本発明は以下を提供する。
【0008】
(1)帯水層、および該帯水層の下に位置する不透水層を貫通し、該不透水層の下に位置し被圧水が流れる被圧帯水層に達する地下掘削孔の埋め戻し工法であって、 前記掘削孔の前記被圧帯水層に位置する部分に、実質的に吸水膨張性のない透水用粒状物を充填して被圧透水層を形成する被圧帯水層埋め戻し工程と、 前記掘削孔の前記不透水層に位置する部分に、乾燥した吸水膨張性の遮水性粒状物を充填して遮水層を形成する不透水層埋め戻し工程と、 前記掘削孔の前記帯水層に位置する部分に、透水用粒状物を充填して透水層を形成する帯水層埋め戻し工程と、を含む地下掘削孔の埋め戻し工法。
(2)前記被圧透水層を形成した後、該被圧透水層の上面を転圧して平坦にする第1転圧工程をさらに含む(1)に記載の地下掘削孔の埋め戻し工法。
(3)前記遮水層を形成した後、該遮水層の上面を転圧して平坦にする第2転圧工程をさらに含む(1)または(2)に記載の地下掘削孔の埋め戻し工法。
(4)前記吸水膨張性の粒状物は、粒径5〜30mmのベントナイトである(1)から(3)のいずれかに記載の地下掘削孔の埋め戻し工法。
(5)前記透水用粒状物は、粒径0.01〜50mmの砂礫である(1)から(4)のいずれかに記載の地下掘削孔の埋め戻し工法
【0009】
「透水用粒状物」としては、実質的に吸水膨張性がなく、掘削孔に充填した場合に水の流動性を阻害しない層(透水層)を形成する任意の粒状物を使用できる。「実質的に吸水膨張性がない」とは、例えば、最大限まで吸水させた場合の吸水膨張率が10%未満、特に5%未満であればよく、より具体的には地盤工学会基準JGS番号2121−1998による吸水膨張性試験で測定した場合の吸水膨張率が10%未満、特に5%未満であればよい。
【0010】
透水用粒状物の具体例としては、砂礫(以下、特に粒径が0.4mm以上2mm未満のものを「砂」、粒径が2mm以上のものを砂利または礫、粒径が10mmを超えるものを豆砂利と称して区別する場合がある)、水砕スラグ、およびガラス粒等が挙げられる。透水用粒状物は、透水係数が10−2〜10−3cm/sオーダーであることが好ましい。透水用粒状物は、粒径0.01〜50mmのものを好適に使用でき、特に砂礫を好適に使用できる。なお、砂(砂利)には川砂(川砂利)、山砂(山砂利)、海砂(海砂利)、陸砂(陸砂利)、および砕砂(砕石)が含まれるものとする。
【0011】
「吸水膨張性の遮水性粒状物」の吸水膨張性としては、例えば、最大限まで吸水させた場合の吸水膨張率、特にJGS番号2121−1998による吸水膨張性試験で測定した場合の吸水膨張率が20%以上、特に30%以上であることが好ましい。また、遮水性としては透水係数が10−6〜10−8cm/sオーダーであることが好ましい。
【0012】
遮水性粒状物は、粒径が5〜30mm、特に15〜25mmであることが好ましい。粒径が小さすぎると被圧水の押上げ力がゆるやかに抜け難い一方、粒径が大きすぎると遮水性が確保できないおそれが生じる。遮水性粒状物の具体例としては、モンモリロナイト、バイデライト、サポナイト、ヘクトライト、およびソーコナイト等のスメクタイト系膨潤性粘土鉱物を含む粒状物が挙げられる。特に、モンモリロナイトを主成分とするベントナイトは吸水膨張性が高く、好適に使用できる。粒状の粘土鉱物としては、採掘物を破砕して乾燥させた天然系のもの(実質的に未加工のもの)を用いてもよく、膨張制御剤添加や成形等の加工を施したものを用いてもよい。
【0013】
遮水性粒状物は、乾燥した状態で掘削孔に投入する。具体的には、粒状のベントナイトのような粘土質の粒状物であれば、含水比15%以下、特に5〜10%程度であることが好ましい。含水比が高いと掘削孔に投入した直後から高い遮水性を奏する遮水層が形成されてしまい、粒径が小さすぎる場合と同様に遮水層が破壊されるおそれが生じる。
【0014】
掘削孔に透水用粒状物または遮水性粒状物を充填した後、透水用粒状物または遮水性粒状物を充填してなる層は、それぞれ、平坦な面を有する重量物で圧して締め固めることがよい。かかる転圧を行なうことにより、掘削孔の埋め戻し部分を早期に安定化させることができ、また、埋め戻し工事後に埋め戻し部分が想定外に沈下することを防止できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明では、上下2層の帯水層に挟まれた不透水層を、乾燥した粒状の遮水性材料で埋め戻すことにより、スラリー状の遮水性材料を用いる場合のように埋め戻された不透水層が瞬時に遮水性となることを回避する。そして、不透水層が次第に遮水性を増し被圧水により不透水層が破壊される前に、遮水層の上に埋め戻し材料を充填することにより、被圧帯水層の被圧水が不透水層に形成された遮水層を押し上げる力よりも、遮水層の上に充填した埋め戻し材料が遮水層を下向きに押さえ付ける力のほうが大きくなるようにさせることができる。この結果、盤ぶくれによる遮水層の破壊を防いで、漸次的に遮水性が向上して地下水の垂直方向での移動を阻止するに足る遮水性を奏する遮水層を形成できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明について詳細に説明する。以下において、同一部材には同一符号を付し、説明を省略または簡略化する。
【0017】
図1は、本発明の一実施形態に係る埋め戻し工法により埋め戻される掘削孔Hが形成された地層断面図である。この例では、地表面11から地下約2mの深さまでは表層土で構成される飽和層1が存在し、飽和層1より下層に地下水が流れる第1帯水層2、第1帯水層2の下に粘土等が堆積した第1不透水層3、第1不透水層3の下に第2の帯水層(被圧帯水層)4が存在する。
【0018】
被圧帯水層4の下には第2の不透水層5が存在し、さらに第2の不透水層5の下に第3の帯水層(被圧帯水層)、第3の不透水層等が存在する場合もある。以下においては、被圧帯水層4下部に達する地下掘削を行なう場合を例とし、第1帯水層2と被圧された帯水層である第2の帯水層4とに挟まれた第1不透水層3の盤ぶくれを回避して埋め戻し工事を行なう場合について説明する。しかし、本発明はこれに限られず、被圧された帯水層の上方にある任意の不透水層、例えば第2不透水層5の埋め戻し工事にも適用できる。
【0019】
第1帯水層2は厚さ約8m、第1不透水層3の厚さは約2m、被圧帯水層4の厚さは約6mで、掘削孔Hは地下を深さ約18mまで掘削することにより形成され、最深部は被圧帯水層4の下部界面とほぼ同一の深さにある。この地層において、第1帯水層2を流れる地下水の水位(第1水位)12は地下約2mの深さにある。被圧帯水層4を流れる地下水(被圧水)の水位(第2水位)14は、本来は図1にあるように被圧帯水層4の上部界面と同じ高さ、すなわち地下約12mにある。ただしこの例では、被圧帯水層4は上層の土重量等によって58.8kN/mの圧力で被圧されており、この被圧による揚力を考慮すると第2水位14は地下約4mとなる。そして、掘削孔H内の地下水位HWは、地下約5mにある。
【0020】
図2〜図5は、本発明の一実施形態に係る埋め戻し工法の実施手順説明図であり、図2は被圧帯水層埋め戻し工程を実施した状態を示す。本実施形態では、まず被圧帯水層埋め戻し工程として、図2に示すように透水用粒状物としての川砂Sを掘削孔Hに充填する。これにより、被圧帯水層4が掘削された部分(被圧帯水層孔)に透水性の埋め戻し層(被圧透水層)24を形成する。
【0021】
この実施形態では、透水用粒状物として粒径が0.4〜2mm程度で吸水膨張率が0.5%未満の川砂Sを用いている。この川砂Sを充填して形成した被圧透水層24は、一般的な帯水層と同等の透水性、すなわち10−2〜10−3cm/sオーダー程度の透水係数を有する。
【0022】
川砂Sの充填量は、被圧透水層24の高さが、被圧帯水層4の上部界面とほぼ同じ高さとなるように、すなわち被圧透水層24の厚さが約6mとなる量とする。かかる量の川砂Sを掘削孔Hに投入する被圧帯水層埋め戻し工程を実施した後、被圧透水層24の上部表面を平坦化する転圧工程(第1転圧工程)を実施することが好ましい。
【0023】
転圧工程では、先端に平らな面を有する重量物をクレーンや杭打ち機に取り付け、重量物を掘削孔Hに落下させて被圧透水層24の表面を転圧すればよい。図3は、第1転圧工程の実施手順を示す模式図である。図3に示すように、本実施形態では円錐の頂部を切り欠くことにより先端面を円板状の平らな面とした重量物Gを杭打ち機Cに取り付け、重量物Gを掘削孔H内部に打ち下ろすことで被圧透水層24の表面を締め固めて平坦にする。
【0024】
第1転圧工程を実施した結果、被圧透水層24の上面位置が被圧帯水層4の上面より深くなった場合は、川砂Sを追加充填してもよい。転圧工程を実施する際、重量物Gの先端に巻尺を取り付けると、被圧透水層24上面の地下深度を測定できる。この場合、被圧透水層24の上面を被圧帯水層4の上面と面一にすることが容易となる。なお、第1転圧工程は、被圧透水層24を形成するために必要な川砂Sの全量を掘削孔Hに投入した後に実施してもよく、川砂Sの掘削孔Hへの投入回数を複数とし、各回の投入後に転圧処理を行なってもよい。
【0025】
被圧透水層24の上面を転圧して平坦化した後は、図4に示すように掘削孔Hに吸水膨張性の粒状物として、ベントナイトの鉱石を砕いて乾燥させた天然系の粒状ベントナイトBを充填して遮水層23を形成する不透水層埋め戻し工程を行なう。本実施形態の粒状ベントナイトBは、粒径が15〜25mm(平均粒径約20mm)、含水比5%、吸水膨張率が約30%である。
【0026】
不透水層埋め戻し工程では、このような粒状ベントナイトBが被圧透水層24を構成する平坦化された川砂S層の上に堆積するように、粒状ベントナイトBを掘削孔Hに投入する。粒状ベントナイトBの充填量は、遮水層23の高さが、第1不透水層3の上部界面とほぼ同じ高さとなるように、すなわち遮水層23の厚さが約2mとなる量とする。かかる量の粒状ベントナイトBを掘削孔Hに投入した後、あるいは投入する過程では、粒状ベントナイトBを堆積させた層の表面を平坦化する転圧工程(第2転圧工程)を実施することが好ましい。
【0027】
第2転圧工程は、上述した被圧帯水層埋め戻し工程に伴って実施する第1転圧工程と同様の手順で実施することができる。また、第2転圧工程を実施した結果、遮水層23の上面位置が沈下した場合は、粒状ベントナイトBを追加充填してもよい。遮水層23を形成し、必要に応じて転圧して上部表面を平坦化した後は、図5に示すように掘削孔Hに透水用粒状物としての川砂Sを充填して透水層22を形成する帯水層埋め戻し工程を行なう。
【0028】
本実施形態では透水層22を形成する川砂Sとして、被圧透水層24を形成するために用いた川砂Sと同一のものを用いている。しかし、透水層22の厚さや被圧帯水層4を流れる地下水にかかる圧力によっては、透水層22を構成する透水用粒状物は、被圧透水層24を構成する透水用粒状物と異なる物を用いてもよい。例えば、透水層22が薄い場合や被圧水の圧力が高い場合等は、透水層22を構成する透水用粒状物として、被圧透水層24を構成する透水用粒状物より真比重が0.1〜0.5程度、大きい物を用いてもよい。このようにすることにより、より速く被圧水による力に比べて、透水層22の重みにより遮水層23にかかる力が大きくなるようにして、遮水層23の破壊をより効果的に回避できる。
【0029】
帯水層埋め戻し工程では、掘削孔Hに川砂Sを投入し、粒状ベントナイトBで構成された遮水層23の上に川砂Sを堆積させる。川砂Sの投入量は、透水層22の高さが帯水層2の上部界面とほぼ同じ高さとなるように、すなわち透水層22の厚さが約8mとなる量とする。川砂Sを堆積させて構成した透水層22の上部表面は、上述した重量物G等により転圧して平坦化することが好ましい。透水層22を転圧する場合の転圧工程は、前述した第1および第2の転圧工程と同様にすればよい。
【0030】
透水層22の上部は、土等を被せる等して飽和層1と同様の性状の地表層を構成すればよく、工事目的によっては地表層を構成する代わりに引き続いて川砂Sを充填して透水層22上部界面を地表に露出させてもよい。
【0031】
上述した本発明の一実施形態に係る埋め戻し工法では、粒状ベントナイトBは、掘削孔Hに投入される際は乾燥し、遮水層23は多くの間隙を有する状態であるため周辺の第1不透水層3に比べて透水性が高くなる。例えば、第2転圧工程を実施しない場合、遮水層23の透水係数は例えば10−2〜10−3cm/sオーダーとなることもあり、第2転圧工程を実施した場合でも遮水層23の透水係数は10−3〜10−5cm/sオーダー程度となる。
【0032】
このため、遮水層23を形成してから1〜5時間程度の間は、遮水層23の間を地下水が流動できる。すなわち、埋め戻し工法を施行する間、あるいは施行した直後は、被圧帯水層4の被圧水は遮水層23を通り抜けて透水層22へと移動することで、被圧透水層24から遮水層23に対して上向きにかかる被圧水による揚圧が開放される。
【0033】
一方で、遮水層23を構成する粒状物は吸水膨張性であるため、埋め戻し工法を実施した後、漸次、地下水を吸収することにより膨潤し、粒状物同士の間隙が小さくなる。このため、埋め戻し工法実施後1週間程度で、遮水層23の透水性は低下し、周辺の第1不透水層3と同等の透水係数、例えば10−6〜10−8cm/sオーダー程度となる。
【0034】
本発明によれば、遮水層23の透水性が緩やかに低下する間に、遮水層23を挟む被圧透水層24および透水層22の安定性が高まる。すなわち、被圧帯水層4と帯水層3との間での地下水が流動性は漸減するため、遮水層23に対して上向きにかかる力より遮水層23を押さえ付ける力が大きいという状態を保ったまま、遮水層23の遮水性が次第に高くなる。この結果、盤ぶくれによる遮水層23の破壊を回避しつつ、遮水層23の遮水性を漸増させ、埋め戻し工事終了から所定期間(例えば3〜7日後)には周囲の第1不透水層3と同程度の遮水性を持たせることができる。
【0035】
上記実施形態は適宜、変更することができる。すなわち、地下工事に伴い生じた掘削孔を単純に埋め戻す場合に適用できるだけでなく、汚染地下水を浄化する浄化壁を地中に埋設する場合にも用いることができる。具体的には、川砂Sに例えば鉄粉を混合することにより、被圧透水層24および/または透水層22を、有機塩素化合物等を吸着、分解する機能を有する透過性反応壁とすることができる。かかる透過性反応壁を地中に埋設することにより、有機塩素化合物や重金属等により汚染された地下水を原位置で浄化できる。
【0036】
このように、本発明によれば2層以上の帯水層に渡る地下掘削を行い、生じた掘削孔に浄化壁を形成する際、あるいは掘削孔を単純に埋め戻す際、盤ぶくれによる遮水層の破壊を回避して連続的にそれぞれの帯水層に透水層を形成できる。このため、特に2層以上の帯水層のそれぞれに透過性反応壁を埋設する場合は、1本の地下孔を掘削するだけで垂直方向に2以上の透過性反応壁を容易に設置できる。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は、地下掘削工時に伴い生じた掘削孔の埋め戻し工事や、汚染地下水を浄化するための浄化壁の設置工事に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の一実施形態に係る埋め戻し工法により埋め戻される掘削孔が形成された地層断面図である。
【図2】前記埋め戻し工法の被圧帯水層埋め戻し工程の実施手順説明図である。
【図3】前記埋め戻し工法の転圧工程の実施手順説明図である。
【図4】前記埋め戻し工法の不透水層埋め戻し工程の実施手順説明図である。
【図5】前記埋め戻し工法の帯水層埋め戻し工程の実施手順説明図である。
【符号の説明】
【0039】
1 飽和層
2 第1帯水層
3 第1不透水層
4 被圧帯水層
5 第2不透水層
22 透水層
23 遮水層
24 被圧透水層
S 川砂(透水用粒状物)
B 粒状ベントナイト(遮水性粒状物)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯水層、および該帯水層の下に位置する不透水層を貫通し、該不透水層の下に位置し被圧水が流れる被圧帯水層に達する地下掘削孔の埋め戻し工法であって、
前記掘削孔の前記被圧帯水層に位置する部分に、実質的に吸水膨張性のない透水用粒状物を充填して被圧透水層を形成する被圧帯水層埋め戻し工程と、
前記掘削孔の前記不透水層に位置する部分に、乾燥した吸水膨張性の遮水性粒状物を充填して遮水層を形成する不透水層埋め戻し工程と、
前記掘削孔の前記帯水層に位置する部分に、透水用粒状物を充填して透水層を形成する帯水層埋め戻し工程と、を含む地下掘削孔の埋め戻し工法。
【請求項2】
前記被圧透水層を形成した後、該被圧透水層の上面を転圧して平坦にする第1転圧工程をさらに含む請求項1に記載の地下掘削孔の埋め戻し工法。
【請求項3】
前記遮水層を形成した後、該遮水層の上面を転圧して平坦にする第2転圧工程をさらに含む請求項1または2に記載の地下掘削孔の埋め戻し工法。
【請求項4】
前記吸水膨張性の粒状物は、粒径5〜30mmのベントナイトである請求項1から3のいずれかに記載の地下掘削孔の埋め戻し工法。
【請求項5】
前記透水用粒状物は、粒径0.01〜50mmの砂礫である請求項1から4のいずれかに記載の地下掘削孔の埋め戻し工法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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