説明

地下水位低下装置

【課題】揚水ポンプに混入する微粒子と空気を少なくすることができる。
【解決手段】真空ポンプ10を駆動させ揚水ポンプ槽6内の空気を排出させると、揚水ポンプ7内の空気も圧力バランス口7bから排出されて、地下水Wが流れ込み満水状態となる。次に、揚水ポンプ7を駆動させて、井戸ストレーナー管4の外側の地下水Wを通水孔4aから井戸パイプ3内に流入させる。井戸パイプ3内の地下水Wは、サイクロン5の案内板26に沿ってサイクロン5内に流入し、筒部24内を内周に沿って下降し、地下水W内の砂などの微粒子Sは遠心分離されて筒部24内面に沿って砂溜槽11に下降して除去される。地下水Wの水分は筒部24の中心から渦を巻きながら上昇し揚水ポンプ槽6へ流入する。そして、揚水ポンプ槽6に流入した地下水Wは、揚水ポンプ受皿8の上端部8aから揚水ポンプ受皿8へ流入し、揚水ポンプ7によって地上に排出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地下水を地上に排出し、地下水位を低下させる地下水位低下装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、井戸工事において、揚水ポンプは井戸ストレーナー管の上方に取り付けられている。そして、揚水ポンプは井戸ストレーナー管からできるだけ離して据えつけられることが望ましい。揚水ポンプが井戸ストレーナー管と合致していると、井戸ポンプは井戸外壁の砂を吸い込むので、揚水ポンプの磨耗やかじり付きの原因となり、井戸の崩壊を招いていた。
ところで、地下工事おける地下水対策として、地下水位を低下させるために地下水を排出する、ディープウェル工法やウェルポイント工法が行われている。
地下工事における地下水対策では、地下水位を低下させることが目的であるため、最小限の井戸深度が要求されている。したがって、揚水ポンプの据付位置は井戸ストレーナー管の下端になるため、揚水ポンプへの砂や空気の流入を防ぐことができなかった。
そのため、かじり付きを少なくしたディープウェル用ポンプ(オープン羽仕様)が開発され、使用されている。
【0003】
また、井戸の上部を密閉して、真空ポンプの使用により井戸内に負圧をかけて、地下水を強制的に流入排水させるバキュームディープウェル工法では、地下水位の低下によって井戸ストレーナー管まで水位が低下してくると、井戸内に空気が流入して真空度が低下し、高真空を維持できなくなる。
そこで、ストレーナーからの空気の流入を防ぐ構造で、ストレーナーとケーシングが一体化し、地中に埋設されるバキューム用ストレーナーパイプを用いたスーパーウェルポイント工法が行われている。スーパーウェルポイント工法では、ストレーナーを通過した地下水は、一体化したケーシング下端部より排水されるので、井戸内を高真空に保ちながら排水を行うことができる。
【0004】
しかし、スーパーウェルポイント工法に使用するバキューム用ストレーナーパイプは、従来のストレーナーのみのパイプに比べ高価で、地中に埋設して埋め殺しのパイプとなり、コストがかかる。また、このバキューム用ストレーナーパイプは従来の井戸ストレーナーパイプと比較すると、接続工程が煩雑で設置に時間がかかるという問題がある。そこで、特許文献1では、これらの問題を改善するためにバキュームディープウェル工法における地下水位低下装置が提案されている。
【0005】
図6に示すように、特許文献1による地下水位低下装置61は、井戸ストレーナーパイプ62と井戸ケーシングパイプ63とからなる井戸パイプ64と、井戸ケーシングパイプ63内に挿入されて井戸ケーシングパイプ63の内壁面に固定された支持リング65に支持される支持板66と、井戸ストレーナーパイプ62の内側に配設されて、支持板66に上端部が密閉状態で固定されて、下端部が井戸ストレーナーパイプ62の下方に位置する吸水ケーシング67と、吸水ケーシング67内に配設されて吸水ケーシング67内の地下水を地上へ排出し、支持板66を貫通する排水管を備える水中ポンプ68と、吸水ケーシング67内のエアーを支持板66に貫通するエアーホースを介して地上へ排出するエアー排出装置69とから構成されている。
【0006】
そして、エアー排出装置69によりエアーを強制的に外部に排出することにより、地下水が井戸ストレーナーパイプ62を通過し吸水ケーシング67の下端部67aの開口部から吸水ケーシング67内に流入し、この吸水ケーシング67内の地下水を水中ポンプ68で地上へ排出する。
特許文献1による地下水位低下装置61では、吸水ケーシング67内のエアーはエアー排出装置69によって外部へ排出され、吸水ケーシング67内の地下水は井戸ストレーナーパイプ62を通過し吸水ケーシング67の下端部67aの開口部から吸水ケーシング67内に流入することで砂が除去されているので、水中ポンプ68へ空気や砂の流入を少なくすることができ、水中ポンプ68の故障を防ぐことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3776831号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来の地下水位低下装置では以下のような問題があった。
ディープウェル用ポンプ(オープン羽仕様)においては、ポンプのかじり付きは少なくなるが、砂などの微粒子や空気が揚水ポンプ吸込み側に流入するため、揚水ポンプの磨耗損傷やノッキング、および地上部の排水管などが詰まるなどのトラブルが発生している。
また、地下水を強制的に流入排出させるバキュームディープウェル工法では、過剰な揚水により、ディープウェル工法に比べて、より多くの砂などの微粒子や空気が揚水ポンプに吸い込まれている。このため、揚水ポンプに負担がかかり、揚水ポンプの磨耗損傷や、ノッキングの発生がディープウェル工法に比べてより顕著になっている。
【0009】
また、特許文献1による地下水位低下装置61では、スーパーウェルポイント工法で用いられているストレーナーからの空気の流入を防ぐ構造で、ストレーナーとケーシングが一体化したバキューム用ストレーナーパイプを分割し、井戸ストレーナーパイプ62の内側に吸水ケーシング67を設置したものであり、地下水位の低下によって井戸ストレーナーパイプ62まで水位が低下してきても吸水ケーシング67の下端部67aより排水を行うので、井戸内を高真空に保ちながら排水を行うことができる。
【0010】
しかし、特許文献1による地下水位低下装置61では、水中ポンプ68で排出される吸水ケーシング内の地下水は、井戸ストレーナーパイプ62を通過し、吸水ケーシング67の下端部67aの開口部から吸水ケーシング67内に流入することで、地下水中の微粒子が吸水ケーシング67の下端部67aから吸水ケーシング67内に巻き込まれて、水中ポンプ68へ流入してしまい、揚水ポンプの磨耗損傷の原因となっている。
そして、揚水ポンプの磨耗損傷により、揚水ポンプの能力が低下し、真空度に負けてノッキングの発生がより顕著になり、なかなか排水ができなくなるという問題があった。
【0011】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、ディープウェル工法およびバキュームディープウェル工法において、地下水内の砂などの微粒子や空気を意図的に分離することで、砂などの微粒子や空気が揚水ポンプに混入することを抑制し、揚水ポンプの磨耗損傷を防ぐことができる地下水位低下装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、本発明に係る地下水位低下装置は、上端部を地上に露出させて地盤に埋設され、井戸ケーシング管と井戸ストレーナー管とが接続された井戸パイプを備え、井戸ストレーナー管から井戸パイプ内部に流入した地下水を井戸パイプ内の揚水ポンプ槽に配設された揚水ポンプにより地上に排出し地下水位を低下させる地下水位低下装置であって、揚水ポンプ槽の上流側に設けられて、井戸ストレーナー管から内部に流入した地下水中の微粒子を分離する微粒子分離手段を備えることを特徴とする。
本発明では、地下水は微粒子分離手段によって地下水中の砂などの微粒子が分離されるので、揚水ポンプに砂などの微粒子が混入することによる揚水ポンプの磨耗損傷を抑えることができる。
【0013】
本発明に係る地下水位低下装置は、揚水ポンプは、揚水ポンプ槽内に設けられて上端部が前記揚水ポンプの吸水位置よりも高い揚水ポンプ受皿の内部に配設されていることを特徴とする。
本発明では、地下水が揚水ポンプ受皿の上端部から揚水ポンプ受皿に流入することによって、地下水内の空気を分離するので、揚水ポンプに空気が混入せず、揚水ポンプの磨耗損傷やノッキングを抑えることができる。
【0014】
本発明に係る地下水位低下装置は、揚水ポンプは吐出管に空気抜き穴を備えていることを特徴とする。
本発明では、揚水ポンプは吐出管に空気抜き用の穴を備えているので、揚水ポンプの吸い込み側と吐出側の圧力を均衡させることができる。そして、揚水ポンプの吸い込み側と吐出側の圧力とを均衡させることで、揚水ポンプの圧力のバランスが整い、揚水ポンプ内に流入した空気を排出させることができて、ノッキングを抑えることができる。
【0015】
また、本発明に係る地下水位低下装置では、微粒子分離手段は地下水から微粒子を遠心分離するサイクロンとすることが好ましい。
本発明では、微粒子分離手段をサイクロンとすることにより、地下水中の多くの微粒子を分離することができる。
【0016】
また、本発明に係る地下水位低下装置では、揚水ポンプ槽は地上につながる排気管を備えていることを特徴とする。
本発明では、揚水ポンプ槽は排気管を備えていることにより、揚水ポンプ槽内の空気を排出することができて、揚水ポンプに空気が混入することを抑えることができる。
また、排気管に真空ポンプを接続すれば、揚水ポンプ槽内の強制排気を行うこともできる。
このことから、通常、揚水ポンプ槽内の強制排気を行わず、揚水ポンプ槽に設けられた排気管から揚水ポンプ槽内の空気を排出するディープウェル工法の井戸においても、通常、揚水ポンプ槽内の強制排気を行うバキュームディープウェル工法の井戸においても本発明を適用させることができる。そして、ディープウェル工法の井戸に本発明による地下水位低下装置を入れ替えて、排気管に真空ポンプを接続すればバキュームディープウェル工法の井戸とすることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、地下水位低下装置は、地下水中の微粒子を分離する微粒子分離手段を備えて、地下水内の微粒子が揚水ポンプに混入しないので、揚水ポンプの磨耗損傷を抑制し、揚水ポンプのライフサイクルを長くすることができ、揚水ポンプの再利用も可能である。
また、地下水位低下装置は、地下水が揚水ポンプ受皿の上端部から揚水ポンプ受皿に流入することで地下水内の空気を分離すると共に、揚水ポンプ槽内の空気を排気管から地上に排出することで、揚水ポンプに空気が混入しないので、揚水ポンプの磨耗損傷やノッキングを抑制することができる。さらに、地下水位低下装置は、揚水ポンプの吸い込み側と吐出側の圧力を均等にして、揚水ポンプ内の空気を排出する空気抜き穴を備えることで、揚水ポンプのノッキングを格段に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第一の実施の形態による地下水位低下装置の一例を示す概略図である。
【図2】図1のA−A線断面図である。
【図3】本発明の第二の実施の形態による地下水位低下装置の一例を示す概略図である。
【図4】本発明の第三の実施の形態による地下水位低下装置の一例を示す概略図である。
【図5】本発明の第四の実施の形態による地下水位低下装置の一例を示す概略図である。
【図6】従来の地下水位低下装置の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の第一の実施の形態による地下水位低下装置について、図1および図2に基づいて説明する。
図1に示すように、第一の実施の形態による地下水位低下装置1aは、側面に通水部4cが形成された井戸ストレーナー管4の上下に井戸ケーシング管2が接続されていて、上端部3aを地上に露出させて地盤Gに鉛直に埋設されている井戸パイプ3と、井戸ストレーナー管4を通過した地下水Wが流入するサイクロン5(微粒子分離手段)と、サイクロン5の上方に配設されて、サイクロン5から排出された地下水Wが流入する揚水ポンプ槽6と、地下水Wを地上に排出する揚水ポンプ7と、内方に揚水ポンプ7が収容される揚水ポンプ受皿8と、揚水ポンプ槽6内の空気を地上に排出する排気管9と、地上に配設されて排気管9とつながる真空ポンプ10と、井戸パイプ3下部側の内部に設けられて、サイクロン5から排出された地下水W内の砂などの微粒子Sが堆積する砂溜槽11と、から概略構成される。図中の矢印は地下水Wの移動を示す。
【0020】
井戸パイプ3は、上端部3aが蓋体21で覆われて、蓋体21には複数の開口部21aが形成され、揚水ポンプ槽6内部から地上への配管および配線が可能であり、下端部3bは底蓋22で閉塞されている。なお、井戸パイプ3の上端部3aは蓋体21で覆わずに開放されていてもよい。
また、井戸パイプ3の周囲の地盤Gには所定の厚みのフィルターグラベル23が配設されている。
井戸ストレーナー管4は、上端部4aが揚水ポンプ槽6の上端部6aより上方の高さに位置し、下端部4bがサイクロン5よりも上方の高さに位置している。井戸ストレーナー管4を通過して井戸パイプ3内に流入した地下水Wは、すべてサイクロン5へ流入する構成である。なお、井戸ストレーナー管4は、上端部4aが揚水ポンプ槽6の上端部6aより下方の高さに位置していてもよいし、揚水ポンプ槽6の上端部6aと同じ高さに位置していてもよい。
井戸ストレーナー管4の上下に井戸ケーシング管2、2が接続されて、砂溜槽11は井戸ストレーナー管4の下方に接続された井戸ケーシング管2内に設置される。井戸ケーシング管2は、側面に地下水Wが通過する通水部を備えていない。
【0021】
図1および図2に示すように、サイクロン5は、中心軸を鉛直方向とし上側が下側よりも径が大きいテーパー形状で、めくら管の筒部24を備えている。サイクロン5は、筒部24の円周方向から地下水Wが流入し、地下水Wの流速により筒部24内を内周に沿って下方に流れて、地下水Wの水分は筒部24の中心部から上方に排出され、地下水W内の砂などの微粒子Sは遠心分離されて、筒部24内面に沿って砂溜槽11に落下する構成である。
サイクロン5は、筒部24と、筒部24の上部に設けられて地下水Wの流入口25aを供える流入部25と、地下水Wを流入口25aへ円周方向から流入させるための案内板26と、流入部25の上部側に設けられた地下水流出部27と、筒部24の下方に設けられた微粒子排出部28とから構成される。
なお、サイクロン5の筒部24はめくら管とせずに上下方向に伸びるスリットを設けて、遠心分離された微粒子Sを落下させると共に、このスリットから筒部24の外側に放出させてもよい。
サイクロン5の外部で、筒部24と流入部25との境の位置には、サイクロン5の流入部25と、砂溜槽11が設けられた井戸ケーシング管2とを仕切る仕切り板29が配設されている。仕切り板29は、井戸ケーシング管2と仕切り板29との隙間には隙間を塞ぐ密閉部材30が配設されている。
【0022】
揚水ポンプ槽6は、上端部6aが揚水ポンプ槽6内部と地上との配管が可能な複数の開口部が形成された蓋体で閉鎖されて、下端部6bがサイクロン5の地下水流出部27の管が貫通する底蓋で閉塞されている円柱形状の槽である。
揚水ポンプ受皿8は、サイクロン5の地下水流出部27の上端部27aの上方に所定の間隔をあけて配設されて、内部に揚水ポンプ7が収容されている。揚水ポンプ受皿8は上部が開放され下部が閉塞された円柱形状で、上端部8aは揚水ポンプ7の吸水部よりも上方に位置している。
揚水ポンプ槽6の上端部6aに形成された開口部には、地下水Wを地上に搬送する揚水ポンプ7の吐出管7aと、揚水ポンプ槽6から地上へつながり揚水ポンプ槽6内の空気が排出される排気管9と、揚水ポンプ7の電源の配線とが挿通されている。そして、これらの管および配線は、井戸ケーシング管2の蓋体21に形成された開口部21aに挿通されて地上につながっている。これらの管および配線によって揚水ポンプ槽6の上端部6aおよび蓋体21に形成された各開口部は閉鎖されていて、管および配線と各開口部の内周との間には隙間がない状態となっている。
【0023】
揚水ポンプ7は、揚水ポンプ7の吐出管7aの揚水ポンプ槽6内に位置する部分に、圧力バランス口7bを備えている。圧力バランス口7bは、吐出管7aに設けられた穴で、揚水ポンプ7の吸い込み側と吐出側の圧力を均衡させることで、揚水ポンプ7内の空気を排出することができる。
【0024】
次に第一の実施の形態による地下水位低下装置1aの使用方法について図面を用いて説明する。
真空ポンプ10を駆動させて揚水ポンプ槽6内の空気を排出すると共に、揚水ポンプ7を駆動させることにより、井戸パイプ3の外側の地下水Wが井戸ストレーナー管4の通水部4cから井戸パイプ3内に流入して、サイクロン5の案内板26の位置へ下降する。そして、サイクロン5の案内板26に到達した地下水Wは、案内板26沿ってサイクロン5内に流入し、筒部24内を内周に沿って下方に流れて、地下水W内の砂などの微粒子Sは遠心分離され、筒部24内面に沿って下降して砂溜槽11に堆積し、地下水Wの水分は中心部を上昇して揚水ポンプ槽6へ流入する。このように、地下水Wがサイクロン5に流入することよって地下水W中の微粒子Sを分離することができる。
【0025】
そして、揚水ポンプ槽6に流入した地下水Wは、揚水ポンプ槽6と揚水ポンプ受皿8との間を通過して上昇し、揚水ポンプ受皿8の上端部8aから揚水ポンプ受皿8の内部へ流入する。このとき、地下水Wは揚水ポンプ受皿8の上端部8aから内部へ流入するので、地下水W中の気泡を揚水ポンプ槽6内に分離させることができる。
そして、微粒子Sおよび空気が分離された地下水Wは揚水ポンプ受皿8内の揚水ポンプ7によって地上に排出される。このとき、揚水ポンプ7は、吐出管7aに圧力バランス口7bを備えているので、揚水ポンプ7内の空気を揚水ポンプ槽6内に排出することができる。そして、揚水ポンプ槽6内の空気は、真空ポンプ10によって排気管9から地上へ排出される。
【0026】
次に、上述した地下水位低下装置1aの効果について図面を用いて説明する。
第一の実施の形態による地下水位低下装置1aでは、地下水W内の砂などの微粒子Sを分離し砂溜槽11に堆積させて、地下水W内の空気を地上へ排出させることができるので、揚水ポンプ7へ微粒子Sや空気が混入せず、揚水ポンプ7の磨耗損傷やノッキングを抑えられて、揚水ポンプ7のライフサイクルを長くできる効果を奏する。また、揚水ポンプ7の再利用も可能である。
【0027】
次に、他の実施の形態について、添付図面に基づいて説明するが、上述の第一の実施の形態と同一又は同様な部材、部分には同一の符号を用いて説明を省略し、第一の実施の形態と異なる構成について説明する。
図3に示すように、第二の実施の形態による地下水位低下装置1bは、図1に示す第一の実施の形態による地下水位低下装置1aに備えるサイクロン5に代わって、ストレーナー42を備えるストレーナー槽41(微粒子分離手段)を設けて、地下水W内の微粒子Sを除去している。
ストレーナー槽41は、揚水ポンプ槽6の下側に設けられた揚水ポンプ槽6と同径の槽で、揚水ポンプ槽6との間には仕切り板43が配設されている。ストレーナー槽41と井戸パイプ3との間には所定の間隔があけられて、ストレーナー槽41の下端部41bは開放されている。
ストレーナー42は、ストレーナー槽41の上部側に設置されている。ストレーナー42の上部にはストレーナー42を通過した地下水Wが揚水ポンプ槽6に移動するための流出管44が設けられていて、流出管44は仕切り板43を貫通し、揚水ポンプ槽6につながっている。ストレーナー42の底部には底蓋45が備えられていて、地下水Wはストレーナー42の側面からストレーナー42に流入する。
【0028】
第二の実施の形態による地下水位低下装置1bでは、井戸ストレーナー管4を通過し、井戸パイプ3内に流入した地下水Wは、ストレーナー槽41の下端部41bまで下降し、この下端部41bからストレーナー槽41に流入する。そして、ストレーナー槽41に流入した地下水Wは上昇してストレーナー42を通過し、揚水ポンプ槽6へ流入して第一の実施の形態と同様に地上へ排出される。
このとき、ストレーナー42によって地下水W内の微粒子Sを分離することができる。また、ストレーナー42には底蓋45が備えられているので、ストレーナー42で除去された微粒子Sが再度ストレーナー槽41内の地下水Wに混入することがない。また、地下水Wはストレーナー槽41に下端部41bから流入するので、地下水W内の微粒子Sはそのまま下降し砂溜槽11へ堆積し、微粒子Sの混入が少ない状態の地下水Wがストレーナー42を通過することができる。
上述した第二の実施の形態による地下水位低下装置1bでは、ストレーナー42によって地下水W内の微粒子Sを分離することができるので、第一の実施の形態による地下水位低下装置1aと同様の効果を奏する。
【0029】
図4に示すように、第三の実施の形態による地下水位低下装置1cは、図2に示す第二の実施の形態による地下水位低下装置1bに備えるストレーナー槽41に代わって、揚水ポンプ槽6の下側に吸水槽51が設けられている。
吸水槽51は、揚水ポンプ槽6の下側に設けられて、上部側が揚水ポンプ槽6と同径の筒状の槽である。吸水槽51は、下部側に下側から上側に向かって徐々に径が大きくなる漏斗形状の砂落とし部51cを備えており、下端部51bが開放されている。吸水槽51と揚水ポンプ槽6との間には仕切り板52が配設されている。地下水Wは吸水槽51の下端部51bから吸水槽51へ流入する。
砂落とし部51cは、漏斗形状をしているので、砂落とし部51c内の地下水Wは、水圧が下側から上側に向かって径が大きくなるにしたがって下がり、水圧が下がった地下水W中の微粒子Sは分離され、下方の砂溜槽11へ沈殿する構成である。
吸水槽51の上部には吸水槽51を通過した地下水Wが揚水ポンプ槽6に移動するための流出管53が設けられていて、流出管53は仕切り板52を貫通し、揚水ポンプ槽6につながっている。
【0030】
第三の実施の形態による地下水位低下装置1cでは、井戸ストレーナー管4を通過し下降した地下水Wは、吸水槽51の下端部51bから吸水槽51に流入し、吸水槽51に流入した地下水Wは上昇して揚水ポンプ槽6へ流入し、上述の各実施の形態と同様に地上へ排出される。
このとき、地下水Wは吸水槽51の下端部51bの位置まで下降して、下端部51bから吸水槽51に流入するので、吸水槽51へ流入する地下水Wの微粒子Sは除去される。更に、吸水槽51には砂落とし部51cが備えられているので吸水槽51へ流入した地下水W中の微粒子Sを分離することができる。そして、吸水槽51内の地下水W内には微粒子Sが少なく、この地下水Wが揚水ポンプ槽6へ流入するので、第一の実施の形態による地下水位低下装置1aと同様の効果を奏する。
【0031】
図5に示すように、第四の実施の形態による地下水位低下装置1dは、図1に示す第一の実施の形態による地下水位低下装置1aに備える真空ポンプ10を設けずに排気管9に逃し弁55を設けた構成である。
第四の実施の形態による地下水位低下装置1dでは、真空ポンプを使用しないディープウェル工法においても揚水ポンプ槽6内の空気を排出できるので、第一の実施の形態による地下水位低下装置1aと同様の効果を奏する。
【0032】
以上、本発明による地下水位低下装置の実施の形態について説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、上述した第一の実施の形態では、サイクロン5はテーパー形状であるが、円柱形状のサイクロンを採用してもよい。
例えば、上述した実施の形態では、井戸パイプ3は井戸ストレーナー管4の上下に井戸ケーシング管2を接続しているが、上部が井戸ストレーナー管4で、下部が井戸ケーシング管2の井戸パイプ3としてもよい。
また、上述した実施の形態では、揚水ポンプ7は、吐出管7aに圧力バランス口7bを備えているが、吐出管7aに圧力バランス口7bを備えていなくてもよい。
また、上述した第一の実施の形態では、井戸パイプ3と仕切り板29との隙間には隙間を塞ぐ密閉部材30が配設されているが、井戸パイプ3と仕切り板29との間に隙間が生じなければ密閉部材30を設けなくてもよい。
また、上述した第四の実施の形態では、第一の実施の形態に備える真空ポンプ10を設けない構成であるが、第二および第三の実施の形態においても真空ポンプ10を設けない構成としてもよい。
要は、本発明において所期の機能が得られればよいのである。
【符号の説明】
【0033】
1a、1b、1c、1d 地下水位低下装置
2 井戸ケーシング管
3 井戸パイプ
4 井戸ストレーナー管
5 サイクロン(微粒子分離手段)
6 揚水ポンプ槽
7 揚水ポンプ
7a 吐出管
7b 圧力バランス口(空気抜き穴)
8 揚水ポンプ受皿
8a 上端部
9 排気管
10 真空ポンプ
41 ストレーナー槽(微粒子分離手段)
51 吸水槽(微粒子分離手段)
W 地下水
S 微粒子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上端部を地上に露出させて地盤に埋設され、井戸ケーシング管と井戸ストレーナー管とが接続された井戸パイプを備え、前記井戸ストレーナー管から前記井戸パイプ内部に流入した地下水を前記井戸パイプ内の揚水ポンプ槽に配設された揚水ポンプにより地上に排出し地下水位を低下させる地下水位低下装置であって、
前記揚水ポンプ槽の上流側に設けられて、前記井戸ストレーナー管から内部に流入した地下水中の微粒子を分離する微粒子分離手段を備えることを特徴とする地下水位低下装置。
【請求項2】
前記揚水ポンプは、前記揚水ポンプ槽内に設けられて上端部が前記揚水ポンプの吸水位置よりも高い揚水ポンプ受皿の内部に配設されていることを特徴とする請求項1に記載の地下水位低下装置。
【請求項3】
前記揚水ポンプは吐出管に空気抜き穴を備えていることを特徴とする請求項1または2に記載の地下水位低下装置。
【請求項4】
前記微粒子分離手段は地下水から微粒子を遠心分離するサイクロンであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の地下水位低下装置。
【請求項5】
前記揚水ポンプ槽は地上につながる排気管を備えていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の地下水位低下装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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