説明

地下水位観測システム、地下水位観測方法

【課題】多くの観測用井戸を設けることなく、簡便に地下水位の分布を広く効率的に測定することが可能な地下水位観測システム等を提供する。
【解決手段】調査範囲内に1または少数の観測用井戸13を設け、観測用井戸13の地下水位を基準水位37とする。地表面11上の各計測点15で地下レーダー探査機21により地下レーダー探査を行い、探査結果として地中画像を表示する。地下レーダー探査機21に表示された地中画像を基準水位37を参照しながら読み取り、各計測点15の地下水位35を求める。求めた各計測点15の地下水位35はPC23に入力される。PC23のCPU41は、各計測点15の地下水位35から平面的な地下水位35の分布を求め、地下水位面39として3次元的に表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地下水位観測システム、地下水位観測方法に関する。より詳しくは、地下レーダー探査機を用いた地下水位観測システム、地下水位観測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、地下水位の分布を観測しようとする場合、ボーリング工事により観測用井戸を設け、水位計により地下水位を測定する。しかしながら、調査範囲を拡げ地下水位の分布状態を調査する場合等、多くの地点での水位の観測が必要になるとボーリング工事の回数も増え、観測用井戸設置のための費用が増大する。
【0003】
特許文献1では、従来のボーリング工事を行うことなく、複数の湧水地点の水面高を測定し、複数の湧水地点の位置を示す地形図上で水面高が等しい位置を求め、それらの位置を結ぶ地下水位等高線を描くことにより地下水位等高線図を作成する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−91295号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように、ボーリング工事により観測用井戸を設け、水位計により地下水位を測定する方法では、多くの地点で水位の観測を行う場合に、必要なボーリング工事の回数が増え、観測用井戸設置のための費用が増大するという問題がある。また、特許文献1に示す方法では、湧水地点の調査を行う必要があり、また、湧水地点のない調査範囲について適用できないという課題がある。
【0006】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、観測用井戸を多く設けることなく、簡便に地下水位の分布を広く効率的に測定することが可能な地下水位観測システム等を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述した目的を達成するための第1の発明は、地表面上の複数の計測点のそれぞれで、電磁波を地下へ放射し、前記電磁波の反射波を計測する地下レーダー探査手段と、前記反射波の計測結果により求められる前記計測点の平面位置での地下水位に基づいて、平面的な地下水位の分布を求める地下水位分布取得手段と、を具備することを特徴とする地下水位観測システムである。
【0008】
第1の発明の地下水位観測システムは、前記計測点の平面位置での地下水位を求める際の基準となる地下水位である基準水位を取得する基準水位取得手段を更に具備する。また、前記基準水位は、掘削した観測用井戸の地下水位とすることができる。
【0009】
また、第1の発明の地下水位観測システムは、前記平面的な地下水位の分布を表示する地下水位分布表示手段を更に具備する。さらに、前記計測点は、メッシュ状に設けることができる。
【0010】
前述した目的を達成するための第2の発明は、地表面上の複数の計測点のそれぞれで、地下レーダー探査機により電磁波を地下へ放射し、前記電磁波の反射波を計測する工程と、前記反射波の計測結果により求められる前記計測点の平面位置での地下水位に基づいて、平面的な地下水位の分布を求める工程と、を具備することを特徴とする地下水位観測方法である。
【0011】
第2の発明の地下水位観測方法は、前記計測点の平面位置での地下水位を求める際の基準となる地下水位である基準水位を取得する工程を更に具備する。また、前記基準水位は、掘削した観測用井戸の地下水位とすることができる。
【0012】
上記構成により、地下レーダー探索機により例えばメッシュ状に設けられた多点で地下レーダー探査を行い、地下水面を電磁波の反射面として検知することにより、多数の観測用井戸を設けることなく、簡便に地下水位の分布を広く効率的に測定することができる。また、少数の観測用井戸を設けるなどして地下水位を観測し基準水位として取得することにより、地下レーダー探査による測定結果より地下水位を求める際に参照でき、地中の空洞、配管等を識別してより正確な地下水位を得ることができる。また、平面的な地下水位の分布を表示することにより、地下水位の分布を視覚的に把握することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、観測用井戸を多く設けることなく、簡便に地下水位の分布を広く効率的に測定することが可能な地下水位観測システム等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態に係る地下水位観測システム1の概要を示す図
【図2】PC23のハードウエア構成の一例を示す図
【図3】地下レーダー探査機21による地下レーダー探査の一例を示す図
【図4】地下レーダー探査機21により地下レーダー探査を行う計測点15の一例を示す図
【図5】地下水位観測システム1による地下水位観測方法の処理の流れを示すフローチャート
【図6】地下水位観測方法により得られる平面的な地下水位35の分布の一例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面に基づいて本発明に係る地下水位観測システムの実施形態を詳細に説明する。最初に、図1、2、3、4を参照しながら、本発明の実施形態に係る地下水位観測システム1について説明する。図1は、本発明の実施形態に係る地下水位観測システム1の概要を示す図、図2は、PC(Personal Computer)23のハードウエア構成の一例を示す図、図3は、地下レーダー探査機21による地下レーダー探査の一例を示す図、図4は、地下レーダー探査機21により地下レーダー探査を行う計測点15の一例を示す図である。
【0016】
図1に示すように、地下水位観測システム1は、地下レーダー探査機21(地下レーダー探査手段)とPC23(地下水位分布取得手段、地下水位分布表示手段)から構成される。
【0017】
地下レーダー探査機21は、制御部、操作部、測定部、バッテリー等の電源、電磁波の送受信を行うアンテナ、アンテナからの信号を測定部本体に送るコントロールケーブル、測定結果を画像により表示するための表示部や、その他通信部等を有する。地下レーダー探査機21としては、電磁波の送受信を行う既知のものを使用することができる。
【0018】
PC23は、例えばデスクトップPC、ノート型PC等の汎用的なPCで、地下レーダー探査機21による測定結果に基づき、地下水位分布を求めこれを表示する。
【0019】
図2に示すように、PC23は、CPU(Central Processing Unit)41、ROM(Read Only Memory)42、RAM(Random Access Memory)43、記憶装置44、メディア入出力部45、入力部46、印刷部47、表示部48、通信部49がバス50を介して接続される。
【0020】
CPU41は、ROM42、記憶装置44、記録媒体等に格納されるプログラムをRAM43上のワークメモリ領域に呼び出して実行し、バス50を介して接続された各装置を駆動制御し、PC23が行う処理を実現する。
ROM42は、不揮発性メモリであり、コンピュータのブートプログラムやBIOS(Basic Input/Output System)等のプログラム、データ等を恒久的に保持している。
RAM43は、揮発性メモリであり、ROM42、記憶装置44、記録媒体等からロードしたプログラム、データ等を一時的に保持するとともに、CPU41が各種処理を行う為に使用するワークエリアを備える。
記憶装置44は、HDD(ハードディスクドライブ)であり、CPU41が実行するプログラム、プログラム実行に必要なデータ、OS(Operating System)等が格納される。これらの各プログラムコードは、CPU41により必要に応じて読み出されてRAM43に移され、後述する処理等に係る各種の手段として実行される。
【0021】
メディア入出力部45(ドライブ装置)は、記録媒体のデータの入出力を行い、例えば、フロッピー(登録商標)ディスクドライブ、CDドライブ(−ROM、−R、−RW等)、DVDドライブ(−ROM、−R、−RW等)、MOドライブ等のメディア入出力装置を有する。
入力部46は、データの入力を行い、例えば、キーボード、マウス等のポインティングデバイス、テンキー等の入力装置を有する。
印刷部47は例えばプリンタで、ユーザからの要求により必要な情報等の印刷を行う。
表示部48は、CRT(Cathode Ray Tube)モニタ、液晶パネル等のディスプレイ装置、ディスプレイ装置と連携してビデオ機能を実現するための論理回路等(ビデオアダプタ等)を有し、後述の処理等に係る画面を表示する。
【0022】
通信部49は、通信制御装置、通信ポート等を有し、地下レーダー探査機21等との通信制御を行う。
バス50は、各装置間の制御信号、データ信号等の授受を媒介する経路である。
尚、図2のハードウエア構成は一例であり、用途、目的に応じて様々な構成を採ることが可能である。
【0023】
図3に示すように、地下レーダー探査機21は、地表面11上の地下水位の計測点15に配置され、地中に向けて所定の範囲に電磁波31を放射する。
【0024】
地下レーダー探査機は空洞や配管等の地下構造の調査に使用されることが多い。即ち、地下レーダー探査機が地中に向けて電磁波を放射すると、地中の様々な対象物による電磁誘導率の変化に応じて電磁波が反射される。反射波は地下レーダー探査機のアンテナで受信される。従って、反射波の強度や、電磁波の放射後に反射波を受信するまでの時間等に基づき、電磁波の反射面を空洞等の対象物の存在位置として、地中の状態を表すことが可能である。地下レーダー探査機の制御部は、受信した反射波の信号処理や、操作部を介したユーザ操作等に応じた画像解析を行い、対象物(電磁波の反射面)の存在など、所定の範囲の地中の状態を深さ方向の断面にて表したカラーまたは白黒の濃淡による地中画像を表示部に表示する。
【0025】
地下水面12の位置でも電磁誘導率は変化するため、本実施形態の地下レーダー探査機21が放射した電磁波31は、地下水面12で反射する。一般的な地下レーダー探査では、地下水面12による反射のために地下水位以下の地下構造を調べることが難しいが、本実施形態の地下水位観測システム1は、この特性を積極的に利用し地下レーダー探査の結果より平面的な地下水位35の分布を求める。
【0026】
即ち、地下レーダー探査機21は、地中に向けて電磁波31を放射する。電磁波31は地下水面12で反射される。反射波33は地下レーダー探査機21のアンテナで受信される。地下レーダー探査機21の制御部は、受信した反射波33に対し上記の信号処理、画像解析を行い、地中の状態として地下水位(電磁波31の反射面)が明瞭に示された地中画像を表示部に表示する。
【0027】
観測者は、この地中画像を読み取ることにより、計測点15の平面位置における地下水位35を求める。求めた地下水位35は、入力部46等を介してPC23に入力され、計測点15の平面位置情報と紐付けてRAM43や記憶装置44に記憶することができる。
【0028】
ここで、上記したように電磁波31は地中の空洞や配管等によっても反射する。一般的に地中の空洞や配管は局所的に存在し、地下水面は広くなだらかに存在するという違いがあるので、この点に注意しながら地下水位35を読み取ることもできるが、本実施形態の地下水位観測システム1では、地下レーダー探査機21が放射した電磁波31の地下水面12による反射面を、地中の空洞や配管等によるものと識別しより正確な位置を特定するため、図3に示すように、調査範囲内に1または少数の観測用井戸13を設置する。観測用井戸13には地下水位を観測するための水位計等(基準水位取得手段)が設けられる。
【0029】
この観測用井戸13において水位計等により地下水位を測定して基準水位37とし、上記の地中画像を読み取る際に参照する。例えば、地下レーダー探査機21による探査の結果表示される地中画像より読み取られる電磁波31の反射面の位置が観測用井戸13の基準水位37と大きく異なる場合、地下水面12ではなく空洞や配管等があると判断する。この場合、例えば基準水位37に近い別の地下水位(電磁波の反射面)を読み取るか、あるいは地下水位を読み取らないようにする。また、それ以外の場合でも、基準水位37に応じて、反射面を読み取る位置の微調整を行うことができ、より正確な地下水面12の位置を求めることができる。
【0030】
なお、基準水位37を得るための手段は、上記のように観測用井戸13に設けた水位計に限ることはない。また、調査範囲の近辺に河川等がある場合は地下水位が高くなり、空洞や配管等が地下水位より上にある可能性が低くなる。このような場合では、観測用井戸13を必ずしも設ける必要はない。
【0031】
また、地中レーダー探査機21による探査を行う計測点15は、例えば、図4に示すように、調査範囲内の地表面11上で2m程度以上の間隔でメッシュ状に平面上分布するように複数設ける。
【0032】
次に、図5、6を参照しながら、本発明に係る地下水位観測システム1による地下水位観測方法について説明する。
【0033】
図5は、地下水位観測システム1による地下水位観測方法の処理の流れを示すフローチャート、図6は、地下水位観測方法により得られる平面的な地下水位の分布である地下水位面39の一例を示す図である。
【0034】
本実施形態の地下水位観測方法では、図5に示すように、まず、地下水位を求める際の基準となる水位を得るため、1または少数の観測用井戸13を設け(ステップS101)、水位計等により観測用井戸13の地下水位を観測し、基準水位37として取得する。ただし、上記したように、地下水位の調査範囲の近辺に河川等がある場合など、必ずしも観測用井戸13の設置を必要としない場合もある。
【0035】
次に、図4に示すような地下水位の調査範囲内の地表面11上の各計測点15で、上記したように、地下レーダー探査機21による地下レーダー探査を行い(ステップS102)、探査結果として地中画像を表示する。
【0036】
観測者は、探査結果として表示された地中画像を読み取り、各計測点15の地下水位35を求める(ステップS103)。ただし、求めた地下水位35が観測用井戸13における基準水位37と大きく異なる場合、配管、空洞等の存在によるものである可能性が高いため、地中画像から基準水位37に近い別の地下水位を読み取り地下水位35とするか、あるいはこれを読み取らないでおく。
【0037】
次に、求めた各計測点15の地下水位35を、各計測点15の平面位置情報とともにPC23に入力する(ステップS104)。各計測点15の平面位置情報は予め入力しておき、ステップS104での入力を省略してもよい。入力された各計測点15の地下水位35は、各計測点15の平面位置と紐付けて記憶装置44またはRAM43に保持される。
【0038】
PC23の制御部41は、各計測点15の地下水位35の高さと、各計測点15の平面位置をもとに、平面的な地下水位35の分布である地下水位面39を算出して求め、取得する(ステップS105)。そして、図6に示すように、求めた地下水位面39を表示部48上に3次元的に表示する(ステップS106)。この際、計測点15間の地下水位面39を、既知の補間方法により補間することができる。
【0039】
なお、ステップS105で算出し、ステップS106で表示する平面的な地下水位35の分布はこれに限らず、例えば等高線図として表すようなものでもよく、計測点15の平面位置に対応する地下水位35の高さを数値で表した図のようなものでもよい。また、地下水位35の分布を求め取得するために例えばこのような図を人手にて作図することも考えられる。
【0040】
以上説明したように、本発明に係る地下水位測定システム等では、地下レーダー探査機により地下レーダー探査を行い、地下水面を電磁波の反射面として検知することにより、多数の観測用井戸を設けることなく、簡便に地下水位の分布を広く効率的に測定することができる。
【0041】
また、1または少数の観測用井戸を設ける等して地下水位を観測し基準水位として取得し、地下レーダー探査結果から地下水位を読みとる際に参照することにより、地中の空洞、配管等を識別してより正確な地下水位を得ることができる。
【0042】
また、平面的な地下水位の分布を例えば地下水位面として表示することにより、地下水位の分布を視覚的に把握することができる。
【0043】
以上、添付図面を参照しながら、本発明に係る地下水位測定システム等の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されない。当業者であれば、本願で開示した技術的思想の範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
例えば、計測点15は、3次元の地下水位面39を得るため地表面11上で様々な平面配置とすることができ、メッシュ状の配置に限られることはない。
【符号の説明】
【0044】
1………地下水位測定システム
11………地表面
12………地下水面
13………観測用井戸
15………計測点
21………地下レーダー探査機
23………PC
31………電磁波
33………反射波
35………地下水位
37………基準水位
39………地下水位面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地表面上の複数の計測点のそれぞれで、電磁波を地下へ放射し、前記電磁波の反射波を計測する地下レーダー探査手段と、
前記反射波の計測結果により求められる前記計測点の平面位置での地下水位に基づいて、平面的な地下水位の分布を求める地下水位分布取得手段と、
を具備することを特徴とする地下水位観測システム。
【請求項2】
前記計測点の平面位置での地下水位を求める際の基準となる地下水位である基準水位を取得する基準水位取得手段を更に具備することを特徴とする請求項1に記載の地下水位観測システム。
【請求項3】
前記基準水位は、掘削した観測用井戸の地下水位とすることを特徴とする請求項2に記載の地下水位観測システム。
【請求項4】
前記平面的な地下水位の分布を表示する地下水位分布表示手段を更に具備することを特徴とする請求項1に記載の地下水位観測システム。
【請求項5】
前記計測点をメッシュ状に設けることを特徴とする請求項1に記載の地下水位観測システム。
【請求項6】
地表面上の複数の計測点のそれぞれで、地下レーダー探査機により電磁波を地下へ放射し、前記電磁波の反射波を計測する工程と、
前記反射波の計測結果により求められる前記計測点の平面位置での地下水位に基づいて、平面的な地下水位の分布を求める工程と、
を具備することを特徴とする地下水位観測方法。
【請求項7】
前記計測点の平面位置での地下水位を求める際の基準となる地下水位である基準水位を取得する工程を更に具備することを特徴とする請求項6に記載の地下水位観測方法。
【請求項8】
前記基準水位は、掘削した観測用井戸の地下水位とすることを特徴とする請求項7に記載の地下水位観測方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−247678(P2011−247678A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−119284(P2010−119284)
【出願日】平成22年5月25日(2010.5.25)
【出願人】(000173784)公益財団法人鉄道総合技術研究所 (1,666)
【出願人】(000210908)中央開発株式会社 (25)
【Fターム(参考)】