地下水流動測定装置
【目的】低流速域に対応させる、例えば長い浮きセンサで形成した測定体であって、前記低流速域での反応を敏感に取得できる地下水流動装置であっても、その測定体で同時に流れの速い、すなわち高流速の地下水流速も計測できる測定可能流速の範囲を大幅に改善させた地下水流動装置を提供することを目的とする。
【構成】地下水内での被撮像物の揺動状態を撮像手段で撮影し、被撮像物の撮影像から地下水の流速と流向を連続かつ長時間測定可能な地下水流動測定装置であり、装置本体内には、上部側に収納された撮像手段と、下側に設けられ地下水が通過する測定部とを有し、測定部底面からは揺動可能な測定体が鉛直方向に延出して立設され、測定体の頂部には地下水の遅い流速が計測可能な標点が形成されると共に、測定体の基部から頂部に亘っては、地下水の速い流速が計測可能な標点が間隔をあけて形成され、複数の標点が被撮像物とされた、ことを特徴とする。
【構成】地下水内での被撮像物の揺動状態を撮像手段で撮影し、被撮像物の撮影像から地下水の流速と流向を連続かつ長時間測定可能な地下水流動測定装置であり、装置本体内には、上部側に収納された撮像手段と、下側に設けられ地下水が通過する測定部とを有し、測定部底面からは揺動可能な測定体が鉛直方向に延出して立設され、測定体の頂部には地下水の遅い流速が計測可能な標点が形成されると共に、測定体の基部から頂部に亘っては、地下水の速い流速が計測可能な標点が間隔をあけて形成され、複数の標点が被撮像物とされた、ことを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、建設工事に関わる各種調査・例えば亀裂の発達した岩盤内の地下水流動、ダム提体や止水壁の漏水調査・山留め壁による流動阻害調査・地盤環境事前調査・海岸近傍の潮位の影響を受ける地下水流動や塩水くさびの流動測定調査等において、地下水流動(流向・流速)を測定する地下水流動測定装置に係り、特に、地下水の速い流速のみならず、地下水・土壌汚染や地下水流動阻害などにおける各種流体の比較的遅い流速域における流向流速測定をも一つの装置で可能にした地下水流動測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、建設工事に伴う地下水流動阻害や井戸枯れの問題のほか、止水壁・止水シートからの漏水や産業廃棄物などによる地下水・土壌汚染が深刻な社会問題となっている。
これら地盤環境保全問題に対しても、精度の高い影響予測や効果的な対策工事を実施するためには地盤の透水係数だけでなく地下水の流向や流速を精度よく得ることがきわめて重要とされている。
【0003】
ここで、地下水の流向や流速を測定する測定装置としては、例えば12本の電極を円周上に配置したボーリング孔内測定部の中央部に、地下水と比抵抗の異なる蒸留水をトレーサとして置換し、電極間の抵抗値の変化から地下水の流向流速を測定する装置(特許第1395123号特許公報)などが知られている。
また、ボーリング孔内に、おもり、糸、フロート、電極を利用した検出部から構成される測定器を挿入し、フロートの移動を電気的に測定して地下水の流向流速を測定する装置、測定方法も一般に知られている(実開昭60−70067号公報)。
【0004】
さらに、地下水中の測定ケース内に空気層を形成し、地下水中に浮く絶縁体フロートの移動を2組の電極による電気抵抗の変化として測定する測定装置及び測定方法も知られている(特開2000-56036号公報)。
また、下端部ヒンジ構造を有する画像処理技術を用いた連続式流向流速計測装置も一般に知られている(特開2005−345180)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第1395123号特許公報
【特許文献2】実開昭60-70067号公報
【特許文献3】特開2000-56036号公報
【特許文献4】特開2005-345180号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかるに、例えば前記特開2005−345180号公報に示される従来技術では、速い流速域における地下水流速の計測と、遅い流速域での地下水流速の計測とを同じ地下水流動測定装置で行うことは比較的困難で、特に低流速や高流速に合わせて装置内に設置した測定体などを交換しなければならないものであった。
すなわち、地下水流動装置で低流速域での反応を敏感に取得できる測定体を使用した場合、流速が遅い、すなわち低流速での計測は良好に行えるが、わずかな流速変化によって、例えば浮きセンサなど測定体頭部の標点(マーク)がテレビカメラなど撮像カメラの撮影範囲から出てしまうため、速い流速、すなわち高流速での地下水の流速測定ができないとの課題があった。
かくして、本発明は、低流速域に対応させる、例えば長い浮きセンサで形成した測定体であって、前記低流速域での反応を敏感に取得できる地下水流動装置であっても、その測定体で同時に流れの速い、すなわち高流速の地下水流速も計測できる測定可能流速の範囲を大幅に改善させた地下水流動装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による地下水流動装置およびその装置を使用した地下水流動測定方法は、
地下水内での被撮像物の揺動状態を撮像手段で撮影し、被撮像物の撮影像から地下水の流速と流向を連続かつ長時間測定可能な地下水流動測定装置であり、
該地下水流動測定装置には、内部に空間部を有して構成された装置本体を備え、
該装置本体内には、装置本体部内上部側に収納された撮像手段と、
該撮像手段の下側に設けられ地下水が通過する測定部と、を有し、
前記測定部底面からは揺動可能な測定体が鉛直方向に延出して立設され、
該測定体の頂部には地下水の遅い流速が計測可能な標点が形成されると共に、測定体の基部から頂部に亘っては、地下水の速い流速が計測可能な標点が間隔をあけて形成され、前記複数の標点が被撮像物とされた、
ことを特徴とし、
または、
地下水内での被撮像物の揺動状態を撮像手段で撮影し、被撮像物の撮影像から地下水の流速と流向を連続かつ長時間測定可能な地下水流動測定装置であり、
該地下水流動測定装置には、内部に空間部を有して構成された装置本体を備え、
該装置本体内には、装置本体部内上部側に収納された撮像手段と、
該撮像手段の下側に設けられ地下水が通過する測定部と、を有し、
前記測定部底面からは揺動可能なひも状の測定体が鉛直方向に延出して立設され、
該測定体の頂部には地下水の遅い流速が計測可能な標点が形成されると共に、測定体の基部から頂部に亘っては、地下水の速い流速が計測可能な標点が間隔をあけて形成され、前記複数の標点が被撮像物とされた、
ことを特徴とし、
または、
地下水内での被撮像物の揺動状態を撮像手段で撮影し、被撮像物の撮影像から地下水の流速と流向を連続かつ長時間測定可能な地下水流動測定装置であり、
該地下水流動測定装置には、内部に空間部を有して構成された装置本体を備え、
該装置本体内には、装置本体部内上部側に収納された撮像手段と、
該撮像手段の下側に設けられ地下水が通過する測定部と、を有し、
前記測定部底面からは揺動可能な円筒状の測定体が鉛直方向に延出して立設され、
該測定体の頂部には地下水の遅い流速が計測可能な標点が形成されると共に、測定体の基部から頂部に亘って所定の間隔をあけ、地下水の速い流速が計測可能な標点が前記円筒状測定体の側面を囲むように形成され、前記複数の標点が被撮像物とされた、
ことを特徴とし、
または、
前記標点は、発光体物質により、あるいは受光することで撮像可能な輝度を有する物質により形成された、
ことを特徴とし、
または、
前記地下水流動測定装置を使用して、地下水の流速と流向を連続かつ長時間測定する地下水流動測定方法であり、
前記算出した複数の標点移動量からおのおの流速を算出し、算出された複数の流速値の平均値を地下水の流速値とする、
ことを特徴とし、
または、
前記地下水流動測定装置を使用して、地下水の流速と流向を連続かつ長時間測定する地下水流動測定方法であり、
前記算出した複数の標点移動量のうち、前記移動量が最大のものに対応する流速を算出し、算出された流速値を地下水の流速値とする、
ことを特徴とするものである。
すなわち、例えば、CCDカメラあるいはシーモスカメラなどのテレビカメラで撮影する装置内部に設置された測定体において、標点の配置を頂部部分だけはではなく、測定体の側面などに形成し、これら標点に蛍光塗料を塗布するなど認識アップのための特徴的な形成を施すことで、たとえ、測定体が測定すべき地下水の速い流速により大きく傾斜し、もって測定体の頂部が撮影範囲外になったとしても、前記述べた他の標点類は撮影範囲内に留まって明確に認識可能となっており、もって該標点類を用いて速い流速をも測定できるものとなる。
【発明の効果】
【0008】
本発明による地下水流動測定装置および該装置を使用した地下水流動測定方法によれば、低流速域に対応させる、例えば長い浮きセンサなどで形成した測定体であって、前記低流速域での反応を敏感に取得できる地下水流動装置であっても、その測定体で同時に流れの速い、すなわち高流速の地下水流速も計測できるものとし、もって測定可能流速の範囲を大幅に改善させたとの優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明による地下水流動測定装置の概略構成を説明する概略構成説明図(その1)である。
【図2】本発明による地下水流動測定装置の概略構成を説明する概略構成説明図(その2)である。
【図3】予め地下水の流速データを測定するためのシステムを説明ずる概略説明図(その1)である。
【図4】予め地下水の流速データを測定するためのシステムを説明ずる概略説明図(その2)である。
【図5】予め地下水の流速データを測定するためのシステムを説明ずる概略説明図(その3)である。
【図6】予め地下水の流速データを測定するためのシステムを説明ずる概略説明図(その4)である。
【図7】予め地下水の流速データを測定するためのシステムを説明ずる概略説明図(その5)である。
【図8】予め地下水の流速データを測定するためのシステムを説明ずる概略説明図(その6)である。
【図9】標点の移動量から対応する地下水の流速値を曲線で示した説明図である。
【図10】撮像カメラで標点を上部から撮影した状態を説明する説明図で、(a)は地下水が静止した状態を、(b)は地下水が流動している状態を示している。
【図11】ボーリング孔内およびその近傍における地下水の流向を説明する説明図である。
【図12】本発明の使用状態を説明ずる説明図(その1)である。
【図13】本発明の使用状態を説明ずる説明図(その2)である。
【図14】本発明の使用状態を説明ずる説明図(その3)である。
【図15】本発明の使用状態を説明ずる説明図(その4)である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0010】
図1に本発明の第1実施例を示す。
本実施例による地下水流動測定装置1は、内部に略円筒状の空間部2を有して構成された装置本体3を備えている。
【0011】
そして、この装置本体3内には、装置本体3の上部側に収納された撮像手段であるCCDカメラなどで構成された撮像カメラ6と、該撮像カメラ6の下側に設けられ地下水4が通過する測定部8と、を有して構成されている。
また、前記測定部8の底面9からは揺動軸10を基点として揺動可能に構成された測定体5が鉛直方向に延出して立設されている。
【0012】
なお、図1に示すように測定体5は、ひも状をなして構成されており、該ひも状の測定体5については、それが地下水4の中で撓まないように頂部に浮き11が取り付けられている。
さらに、該測定体5の頂部、例えば前記浮き11の上面には地下水4の遅い流速が計測できるように標点7−1が形成されている。
すなわち、ひも状の測定体5の長さが長いほど、換言すれば揺動軸10から標点7−1までの測定体5の長さが長いほど、地下水4の遅い水流に対しても敏感に反応させて、測定体5を傾斜させることができ、たとえ水流が遅くとも正確に測定することができるからである。
【0013】
ここで、該標点7−1の形状については、何ら限定されるものではないが、球状に膨出させて撮像カメラ6に、より撮像しやすいように構成するものとするのが好ましい。また、この標点7−1には発光体を使用したり、あるいは外周に蛍光塗料を塗布するなどして周囲より輝度などをアップさせて撮像カメラ6での撮影に際し、それが認識しやすく撮像しやすいように構成するのが好ましいものである。
【0014】
次に、測定体5の基部(揺動軸10)から頂部に亘っては、後述するように地下水4の速い流速をも計測可能にすべく複数の標点7−2、7−3、7−4、7−5が、測定体5の長手方向に向かい一定の間隔をあけて形成されている。本実施例では4つ形成したが、その数に限定はない。
これら複数の標点7−2、7−3、7−4、7−5は地下水4の速い流速に対応させるべく設けられたものである。すなわち、測定すべき地下水4の流速が比較的速い場合、測定体5は図1から理解されるように前記揺動軸10を基点として、大きく地下水4の流速によって傾斜し、測定体5の頂部に形成された標点7−1が撮像カメラ6の撮像範囲12から外れてしまうことになる。
【0015】
そのようなときに、測定体5の基部(揺動軸10)から頂部に亘って、複数の標点7−2、7−3、7−4、7−5を、一定の間隔をあけて形成しておけば、このいずれかの標点7−2、7−3、7−4、7−5、あるいはそれらの複数個が、撮像カメラ6の撮像範囲12内に留まり、この標点7−2、7−3、7−4、7−5を基に地下水4の速い流速を測定することができるからである。
【0016】
しかして、この複数の標点7−2、7−3、7−4、7−5の形状についても、何ら限定されるものではないが、例えば前記頂部に設けられた標点7−1の如く球状などに膨出させて撮像カメラ6により撮像しやすい形状に構成するものとするのが好ましい。また、これら標点7−2、7−3、7−4、7−5についても発光体により構成したり、外周に蛍光塗料を塗布するなどして周囲より輝度をアップさせて撮像しやすいように構成することが好ましい。
【0017】
しかして、本実施例では、地下水4内での被撮像物、すなわち測定体5の揺動状態をCCDカメラなどで構成された撮像カメラ6で撮影し、測定体5に形成された標点7―1、7−2、7−3、7−4、7−5の撮影像から地下水4の流速と流向を連続かつ長時間測定することを可能としたものである。
【0018】
次に、本実施例の一連の使用状態につき説明する。
図10(a)、図10(b)は,静水中および流水中の測定体5、特に浮き11の頂部に設けられた標点7−1を撮像カメラ6により撮影した各画像例を示す。
当該図に示すように,静水中では測定体5は略鉛直に立っており,測定体5の浮き11頂部に設けられた標点7−1は取得画像の中心に位置している。
【0019】
一方,流水中においては,測定体5は地下水流の下流側に傾斜し,測定体5の浮き11頂部に設けられた標点7−1が画像中心から移動することになる(図10(b)参照)。
しかして、この測定体5の浮き11頂部に設けられた標点7−1の移動量(例えば、画像上の移動ピクセル数)を基に,地下水流速が算定できるのである。
また,地下水流向は,地下水流によって傾斜した測定体5の傾斜方向を内蔵方位計を基準にし,方位角として地下水流向を算定できる様に構成されている。
【0020】
ところで、図11に示すように、ボーリング孔13内空隙時の地下水の流線は,きわめて複雑な挙動を示すが、本実施例による地下水流動測定装置1の測定体5は,ボーリング孔13内の中心に位置することとなるから,前記複雑な挙動に影響されず、周辺地盤の地下水流と同じ流向を示すことになる。したがって,そのように中心位置で測定した地下水流向については角度補正の必要がないのである。
【0021】
次に、本実施例による地下水流動測定装置1を用いた場合の地下水流向と流速の算定手順を以下に示す。
まず、予め地下水4の流速とそれにより測定体5がどの程度傾斜するかの関係を予め把握し、基準となるデータを作成しておく必要がある。
そのために例えば、予め室内実験装置を用意し、それにより基準データを作成しておく。
【0022】
この室内実験装置の構成については、何ら限定されるものではないが、当該水槽内において実際の地下水の流速と同様に、一定の速度で移動する水流が作れ、その水流の速度制御ができる装置を用いるものとする。なお、一般には、前記の水槽内で装置を動かし、地下水の水流と同様に水流の速度が制御できる構成が採用されるものとなる。
そして、測定体5の材料や径や長さを変えたりし,各測定体5の頂部に設けられた標点7−1の移動量と地下水流速の関係を予め正確に把握し,それらの関係式、関係図を求めておくのである(図3、図4,図5参照)。
【0023】
特に図5から理解されるように、地下水の流速によっておのおのの標点が移動する移動量との関係が曲線(p1,p2,p3,p4)として求められる。
このデータを予め求めておき、現場での複数標点の移動量と比較するのである。
しかして、測定現場において、地下水流動測定装置1を設置する(図1参照)。
【0024】
まず、地下水流向流速を測定するための開孔率の大きなスクリーンを組み込んだケーシングパイプをボーリング孔13内に設置した上で,本実施例による地下水流動測定装置1を挿入して所定深度にパッカー14などを用いて固定し,地下水流の乱れがなくなるのを確認し、前記地下水流動測定装置1を作動させて地下水流動の測定を行う。
そして、連続的に撮影し、撮像画像を取得していく。該画像は測定体5を上方から撮影して取得した画像である。
【0025】
次に、前記取得した画像を基に,地下水流によって測定体5が傾斜することにより,測定体5の頂部に設けた標点7−1が、画像の中心位置から移動する。
この移動量を画像解析によりピクセル数として定量的に算出する。
そして、上記予め算出してある標点7−1の移動量(ピクセル数)を基にして,事前に求めておいた関係式、関係図を用い,原位置のボーリング孔13内の地下水流速を算定するのである。
例えば,測定体5の頂部に設けられた標点7−1の移動量が125ピクセルとすると,関係曲線との交点を下にのばした点がボーリング孔内の地下の地下水流速(v=3.3×10-3m/s)として算定されるが如くである(図9参照)。
【0026】
次に、取得した画像を用いて,地下水流によって傾斜した測定 体5の方向を内蔵方位計を基にして,方位角に変換して地下水流向を算定する。
なお、撮像カメラ6で取得したデジタル画像を用いて標点7− 1の中心位置の移動量(ピクセル数)を画像解析により算定する場合、写真座標の読み取り誤差が測定精度に影響を及ぼすことがある。
このことから,測定体5を構成する浮き11頂部の中心位置に設けた標点7−1の写真座標を精度良く読み取るために,該標点7−1を例えば、φ0.5mm程度の小さな丸点として構成し,該標点7−1の明度(黒:0〜白:255の256階調)による重み付き重心の値を写真座標として取得するものとした。
【0027】
また,標点7−1の明度が撮影条件によって異なる場合もあるため,例えば標点7−1のしきい値を順次修正し重み付き重心の値を正確に求められるようにすることが好ましい。
ところで、地下水の流速が時間により、あるいは季節などにより大幅に変化することがある。この様な場合、従来はその変化した流速に対応する測定体5に切り替えたり、場合によっては測定装置自体を交換しなければならなかった。なぜなら、地下水の流速が速くなった場合など撮像カメラ6の撮像範囲12から、標点7−1が外れてしまい、測定することが出来なくなってしまうからである。
【0028】
しかして、本実施例ではそのような場合にスムーズに対応するものであり、測定体5の長手方向に間隔をあけて複数の標点7―2,7−3,7−4,7−5を設け、この複数の標点7―2,7−3,7−4,7−5のいずれか、あるいはそれらの複数が撮像範囲12内に残っていれば地下水の流速が測定できるものとしたのである。
【0029】
すなわち、図5に示すように、地下水の遅い流速から速い流速にまで対応する複数の標点の移動量が予め算出されており、もってこの算出データを基に、たとえ測定体5の頂部に設けられた標点7−1が撮像範囲外となったとしても、他の標点7―2,7−3,7−4,7−5のいずれか、あるいはそれらの複数が撮像範囲内に残っていれば地下水の流速が迅速、正確に測定できるのである。
【0030】
なお、単一の標点についてのみの移動量の測定では、測定の誤差、あるいは測定の際などに生じたアクシデントなどにより正確に地下水の流速が算出できない場合がある。
よって、本実施例では複数の標点について移動量の測定を行い、それらの移動量に対応する流速を算出し、その流速にばらつきがあった場合にはその平均値を求め、かかる平均値の値を地下水の流速とすることにより、より正確な測定値が求められるように構成されている。
【0031】
また、複数の標点7のうち、最大の移動量を示す標点7、換言すれば撮像範囲12内において測定体5の頂部近くに設置された標点7の中で、撮像されている標点7が一番最大の移動量がみられるわけであるから、該標点7に対応する流速を算定し、この流速を地下水の流速としても構わないものである。かかる標点7での計測が最も誤差が少ないと考えられるからである。
【実施例2】
【0032】
次に、図2に本発明の第2実施例を示す。
本実施例による地下水流動測定装置1は、内部に略円筒状の空間部2を有して構成された装置本体3を備えていること図1に示す実施例1と同様である。
【0033】
そして、この装置本体3内には、装置本体3の上部側に収納された撮像手段であるCCDカメラなどで構成された撮像カメラ6と、該撮像カメラ6の下側に設けられ地下水4が通過する測定部8と、を有して構成されている。
また、前記測定部8の底面9からは揺動軸10を基点として揺動可能に構成された測定体5が鉛直方向に延出して立設されている。
【0034】
なお、本実施例において、測定体5は、円柱状をなして構成されており、該円柱状の測定体5については、それが静水状の地下水4の中で鉛直方向に立設するよう内部に浮きとなる空気充填部などを設けておくとよい。
さらに、該測定体5の頂部上面には地下水4の遅い流速が計測できるように標点7−1が形成されている。
すなわち、測定体5の長さが長いほど、換言すれば揺動軸10から標点7−1までの測定体5の長さが長いほど、地下水4の遅い水流に対しても敏感に反応させることができ、たとえ水流が遅くとも正確に測定することができるからである。
【0035】
ここで、該標点7−1の形状については、何ら限定されるものではないが、球状に膨出させて撮像カメラ6により撮像しやすいように構成するものとするのが好ましい。また、この標点7−1には発光体を使用したり、あるいは外周に蛍光塗料を塗布するなどして周囲より輝度をアップさせて撮像カメラ6での撮影に際し、それが認識しやすく撮像しやすいように構成するのが好ましいものである。
【0036】
次に、測定体5の基部(揺動軸10)から頂部に亘っては、後述するように地下水4の速い流速が計測可能にすべく複数の標点7−2、7−3、7−4、7−5が、測定体5の長手方向に向かい一定の間隔をあけて形成されている。
これら複数の標点7−2、7−3、7−4、7−5は地下水4の速い流速に対応させるべく設けられたものである。すなわち、測定すべき地下水4の流速が比較的速い場合、測定体5は図1から理解されるように前記揺動軸10を基点として、大きく地下水4の流速によって傾斜し、測定体5の頂部に形成された標点7−1が撮像カメラ6の撮像範囲12から外れてしまうことになる。
【0037】
そのようなときに、測定体5の基部(揺動軸10)から頂部に亘って、複数の標点7−2、7−3、7−4、7−5を、一定の間隔をあけて形成しておけば、このいずれかの標点7−2、7−3、7−4、7−5は、撮像カメラ6の撮像範囲12内に留まり、この標点7−2、7−3、7−4、7−5を基に地下水4の速い流速を測定することができるからである。
【0038】
しかして、この複数の標点7−2、7−3、7−4、7−5の形状についても、何ら限定されるものではないが、例えば前記頂部に設けられた標点7−1とは異なり、測定体5の側面をリング状に囲む線などにして撮像カメラ6により撮像しやすい形状に構成するものとするのが好ましい。また、これら測定体5の側面をリング状に囲んで形成した標点7−2、7−3、7−4、7−5についても発光体により構成したり、外周に蛍光塗料を塗布するなどして周囲より輝度をアップさせて撮像しやすいように構成することが好ましい。
【0039】
しかして、本実施例では、地下水4内での被撮像物、すなわち測定体5の揺動状態をCCDカメラなどで構成された撮像カメラ6で撮影し、測定体5に形成された標点7―1、7−2、7−3、7−4、7−5の撮影像から地下水4の流速と流向を連続かつ長時間測定することが可能となっている。
なお、本実施例では揺動軸10の構成については、図2から理解されるように、測定体5の基端部に球状をなす膨出部を形成し、該膨出部を底面に設けた凹部にはめ込み、いわゆるヒンジ構造にして揺動軸10の構成としたものである。
【0040】
次に、当該実施例についての使用状態につき説明する。
図10(a)、図10(b)は,静水中および流水中の測定体5、特に浮き11の頂部に設けられた標点7−1を撮像カメラ6により撮影した各画像例を示す。
当該図に示すように,静水中では測定体5は略鉛直に立っており,測定体5の頂部に設けられた標点7−1は取得画像の中心に位置している。
【0041】
一方,流水中においては,測定体5は地下水流の下流側に傾斜し,測定体5の頂部に設けられた標点7−1が画像中心から移動することになる(図10(b)参照)。
しかして、この測定体5の頂部に設けられた標点7−1の移動量(画像上の移動ピクセル数)を基に,地下水流速が算定できるのである。
また,地下水流向は,地下水流によって傾斜した測定体5の傾斜方向を内蔵方位計を基準にし,方位角として地下水流向を算定できる様に構成されている。
【0042】
ところで、図11に示すように、ボーリング孔13内空隙時の地下水の流線は,きわめて複雑な挙動を示すが、本実施例による地下水流動測定装置1の測定体5は,ボーリング孔13内の中心に位置することとなるから,前記複雑な挙動に影響されず、周辺地盤の地下水流と同じ流向を示すことになる。したがって,そのように中心位置で測定した地下水流向については角度補正の必要がないのである。
【0043】
次に、本実施例による地下水流動測定装置1を用いた場合の地下水流向と流速の算定手順を以下に示す。
まず、予め地下水4の流速とそれにより測定体5がどの程度傾斜するかの関係を予め把握し、基準となるデータを作成しておく必要がある。
そのために例えば、予め室内実験装置を用意し、それにより基準データを作成しておく。
【0044】
この室内実験装置の構成については、何ら限定されるものではないが、当該水槽内において実際の地下水の流速と同様に、一定の速度で移動する水流が作れ、その水流の速度制御ができる装置を用いるものとする。なお、一般には、前記の水槽内で装置を動かし、地下水の水流と同様に水流の速度が制御できる構成が採用されるものとなる。
そして、測定体5の材料や径や長さを変えたりし,各測定体5の頂部に設けられた標点7−1の移動量と地下水流速の関係を予め正確に把握し,それらの関係式、関係図を求めておくのである(図6、図7,図8参照)。
【0045】
特に図8から理解されるように、地下水の流速によっておのおのの標点が移動する移動量との関係が曲線(例えば、L1,L2,L3,L4)として求められる。
このデータを予め求めておき、現場での複数標点の移動量と比較するのである。
しかして、測定現場において、地下水流動測定装置1を設置する(図2参照)。
【0046】
まず、地下水流向流速を測定するための開孔率の大きなスクリーンを組み込んだケーシングパイプをボーリング孔13内に設置した上で,本実施例による地下水流動測定装置1を挿入して所定深度にパッカー14などを用いて固定し,地下水流の乱れがなくなるのを確認し、前記地下水流動測定装置1を作動させて地下水流動の測定を行う。そして、連続的に撮影し、撮像画像を取得していく。該画像は測定体5を上方から撮影して取得した画像となる。
【0047】
次に、前記取得した画像を基に,地下水流によって測定体5が傾斜することにより,測定体5の頂部に設けた標点7−1が、画像の中心位置から移動する。
この移動量を画像解析によりピクセル数として定量的に算出する。
そして、上記で算出した標点7−1の移動量(ピクセル数)を基にして,事前に求めておいた関係式、関係図を用い,原位置のボーリング孔13内の地下水流速を算定するのである。
【0048】
例えば,測定体5の頂部に設けられた標点7−1の移動量が125ピクセルとすると,関係曲線との交点を下にのばした点がボーリング孔内の地下の地下水流速(v=3.3×10-3m/s)として算定されるが如くである(図9参照)。
【0049】
次に、取得した画像を用いて,地下水流によって傾斜した測定 体5の方向を内蔵方位計を基にして,方位角に変換して地下水流向を算定する。
なお、撮像カメラ6で取得したデジタル画像を用いて標点7− 1の中心位置の移動量(ピクセル数)を画像解析により算定する場合、写真座標の読み取り誤差が測定精度に影響を及ぼすことがある。
このことから,測定体5を構成する浮き11頂部の中心位置に設けた標点7−1の写真座標を精度良く読み取るために,該標点7−1を例えば、φ0.5mm程度の小さな丸点として構成し,該標点7−1の明度(黒:0〜白:255の256階調)による重み付き重心の値を写真座標として取得するものとした。
【0050】
また,標点7−1の明度が撮影条件によって異なる場合もあるため,例えば標点7−1のしきい値を順次修正し重み付き重心の値を正確に求められるようにすることが好ましい。
ところで、第1実施例でも説明したが、地下水の流速が時間により、あるいは季節などにより大幅に変化することがある。この様な場合、従来はその変化した流速に対応する測定体5に切り替えなければならなかった。なぜなら、地下水の流速が速くなった場合など撮像カメラ6の撮像範囲から、標点7−1が外れてしまうからである。
【0051】
しかして、本実施例ではそのような場合、測定体5の長手方向に間隔をあけて設けた複数の標点7―2,7−3,7−4,7−5のいずれか、あるいはそれらの複数が撮像範囲内に残っていれば地下水の流速が測定できるのである。
すなわち、図5に示すように、地下水の遅い流速から速い流速にまで対応する複数の標点の移動量が予め算出されており、もってこの算出データを基に、たとえ測定体5の頂部に設けられた標点7−1が撮像範囲外となったとしても、他の標点7―2,7−3,7−4,7−5のいずれか、あるいはそれらの複数が撮像範囲内に残っていれば地下水の流速が迅速、正確に測定できるのである。
【0052】
なお、前の実施例でも説明したが、単一の標点についてのみの移動量の測定では、測定の誤差、あるいは測定の際などに生じたアクシデントなどにより正確に地下水の流速が算出できない場合がある。
よって、本実施例では複数の標点について移動量の測定を行い、それらの移動量に対応する流速を算出し、その流速にばらつきがあった場合にはその平均値を求め、かかる平均値の値を地下水の流速とすることにより、より正確な測定値が求められるように構成されている。
【0053】
また、複数の標点7のうち、最大の移動量を示す標点7、換言すれば撮像範囲12内において測定体5の頂部近くに設置された標点7の中で、撮像されている標点7が一番最大の移動量がみられるわけであるから、該標点7に対応する流速を算定し、この流速を地下水の流速としても構わないものである。かかる標点7での計測が最も誤差が少ないと考えられるからである。
【0054】
しかして、図12乃至図15に示すように、河川や海の近傍位置で掘削工事をする場合、あるいは堤防近傍位置での掘削工事をする場合に、地下水の流動を観測する必要があり、本発明によって地下水の流動を精度よく測定することができ、その精密な測定結果により、地盤環境の保全・修復の観点からの安心、安全な精度の高い影響予測や効果的な対策工の実施が行えるものとなるのである。
【符号の説明】
【0055】
1 地下水流動測定装置
2 空間部
3 装置本体
4 地下水
5 測定体
6 撮像カメラ
7、7−1,7−2,7−3,7−4,7−5
標点
8 測定部
9 測定部の底面
10 揺動軸
11 係止片
12 撮像範囲
13 ボーリング孔
14 パッカー
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、建設工事に関わる各種調査・例えば亀裂の発達した岩盤内の地下水流動、ダム提体や止水壁の漏水調査・山留め壁による流動阻害調査・地盤環境事前調査・海岸近傍の潮位の影響を受ける地下水流動や塩水くさびの流動測定調査等において、地下水流動(流向・流速)を測定する地下水流動測定装置に係り、特に、地下水の速い流速のみならず、地下水・土壌汚染や地下水流動阻害などにおける各種流体の比較的遅い流速域における流向流速測定をも一つの装置で可能にした地下水流動測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、建設工事に伴う地下水流動阻害や井戸枯れの問題のほか、止水壁・止水シートからの漏水や産業廃棄物などによる地下水・土壌汚染が深刻な社会問題となっている。
これら地盤環境保全問題に対しても、精度の高い影響予測や効果的な対策工事を実施するためには地盤の透水係数だけでなく地下水の流向や流速を精度よく得ることがきわめて重要とされている。
【0003】
ここで、地下水の流向や流速を測定する測定装置としては、例えば12本の電極を円周上に配置したボーリング孔内測定部の中央部に、地下水と比抵抗の異なる蒸留水をトレーサとして置換し、電極間の抵抗値の変化から地下水の流向流速を測定する装置(特許第1395123号特許公報)などが知られている。
また、ボーリング孔内に、おもり、糸、フロート、電極を利用した検出部から構成される測定器を挿入し、フロートの移動を電気的に測定して地下水の流向流速を測定する装置、測定方法も一般に知られている(実開昭60−70067号公報)。
【0004】
さらに、地下水中の測定ケース内に空気層を形成し、地下水中に浮く絶縁体フロートの移動を2組の電極による電気抵抗の変化として測定する測定装置及び測定方法も知られている(特開2000-56036号公報)。
また、下端部ヒンジ構造を有する画像処理技術を用いた連続式流向流速計測装置も一般に知られている(特開2005−345180)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第1395123号特許公報
【特許文献2】実開昭60-70067号公報
【特許文献3】特開2000-56036号公報
【特許文献4】特開2005-345180号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかるに、例えば前記特開2005−345180号公報に示される従来技術では、速い流速域における地下水流速の計測と、遅い流速域での地下水流速の計測とを同じ地下水流動測定装置で行うことは比較的困難で、特に低流速や高流速に合わせて装置内に設置した測定体などを交換しなければならないものであった。
すなわち、地下水流動装置で低流速域での反応を敏感に取得できる測定体を使用した場合、流速が遅い、すなわち低流速での計測は良好に行えるが、わずかな流速変化によって、例えば浮きセンサなど測定体頭部の標点(マーク)がテレビカメラなど撮像カメラの撮影範囲から出てしまうため、速い流速、すなわち高流速での地下水の流速測定ができないとの課題があった。
かくして、本発明は、低流速域に対応させる、例えば長い浮きセンサで形成した測定体であって、前記低流速域での反応を敏感に取得できる地下水流動装置であっても、その測定体で同時に流れの速い、すなわち高流速の地下水流速も計測できる測定可能流速の範囲を大幅に改善させた地下水流動装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による地下水流動装置およびその装置を使用した地下水流動測定方法は、
地下水内での被撮像物の揺動状態を撮像手段で撮影し、被撮像物の撮影像から地下水の流速と流向を連続かつ長時間測定可能な地下水流動測定装置であり、
該地下水流動測定装置には、内部に空間部を有して構成された装置本体を備え、
該装置本体内には、装置本体部内上部側に収納された撮像手段と、
該撮像手段の下側に設けられ地下水が通過する測定部と、を有し、
前記測定部底面からは揺動可能な測定体が鉛直方向に延出して立設され、
該測定体の頂部には地下水の遅い流速が計測可能な標点が形成されると共に、測定体の基部から頂部に亘っては、地下水の速い流速が計測可能な標点が間隔をあけて形成され、前記複数の標点が被撮像物とされた、
ことを特徴とし、
または、
地下水内での被撮像物の揺動状態を撮像手段で撮影し、被撮像物の撮影像から地下水の流速と流向を連続かつ長時間測定可能な地下水流動測定装置であり、
該地下水流動測定装置には、内部に空間部を有して構成された装置本体を備え、
該装置本体内には、装置本体部内上部側に収納された撮像手段と、
該撮像手段の下側に設けられ地下水が通過する測定部と、を有し、
前記測定部底面からは揺動可能なひも状の測定体が鉛直方向に延出して立設され、
該測定体の頂部には地下水の遅い流速が計測可能な標点が形成されると共に、測定体の基部から頂部に亘っては、地下水の速い流速が計測可能な標点が間隔をあけて形成され、前記複数の標点が被撮像物とされた、
ことを特徴とし、
または、
地下水内での被撮像物の揺動状態を撮像手段で撮影し、被撮像物の撮影像から地下水の流速と流向を連続かつ長時間測定可能な地下水流動測定装置であり、
該地下水流動測定装置には、内部に空間部を有して構成された装置本体を備え、
該装置本体内には、装置本体部内上部側に収納された撮像手段と、
該撮像手段の下側に設けられ地下水が通過する測定部と、を有し、
前記測定部底面からは揺動可能な円筒状の測定体が鉛直方向に延出して立設され、
該測定体の頂部には地下水の遅い流速が計測可能な標点が形成されると共に、測定体の基部から頂部に亘って所定の間隔をあけ、地下水の速い流速が計測可能な標点が前記円筒状測定体の側面を囲むように形成され、前記複数の標点が被撮像物とされた、
ことを特徴とし、
または、
前記標点は、発光体物質により、あるいは受光することで撮像可能な輝度を有する物質により形成された、
ことを特徴とし、
または、
前記地下水流動測定装置を使用して、地下水の流速と流向を連続かつ長時間測定する地下水流動測定方法であり、
前記算出した複数の標点移動量からおのおの流速を算出し、算出された複数の流速値の平均値を地下水の流速値とする、
ことを特徴とし、
または、
前記地下水流動測定装置を使用して、地下水の流速と流向を連続かつ長時間測定する地下水流動測定方法であり、
前記算出した複数の標点移動量のうち、前記移動量が最大のものに対応する流速を算出し、算出された流速値を地下水の流速値とする、
ことを特徴とするものである。
すなわち、例えば、CCDカメラあるいはシーモスカメラなどのテレビカメラで撮影する装置内部に設置された測定体において、標点の配置を頂部部分だけはではなく、測定体の側面などに形成し、これら標点に蛍光塗料を塗布するなど認識アップのための特徴的な形成を施すことで、たとえ、測定体が測定すべき地下水の速い流速により大きく傾斜し、もって測定体の頂部が撮影範囲外になったとしても、前記述べた他の標点類は撮影範囲内に留まって明確に認識可能となっており、もって該標点類を用いて速い流速をも測定できるものとなる。
【発明の効果】
【0008】
本発明による地下水流動測定装置および該装置を使用した地下水流動測定方法によれば、低流速域に対応させる、例えば長い浮きセンサなどで形成した測定体であって、前記低流速域での反応を敏感に取得できる地下水流動装置であっても、その測定体で同時に流れの速い、すなわち高流速の地下水流速も計測できるものとし、もって測定可能流速の範囲を大幅に改善させたとの優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明による地下水流動測定装置の概略構成を説明する概略構成説明図(その1)である。
【図2】本発明による地下水流動測定装置の概略構成を説明する概略構成説明図(その2)である。
【図3】予め地下水の流速データを測定するためのシステムを説明ずる概略説明図(その1)である。
【図4】予め地下水の流速データを測定するためのシステムを説明ずる概略説明図(その2)である。
【図5】予め地下水の流速データを測定するためのシステムを説明ずる概略説明図(その3)である。
【図6】予め地下水の流速データを測定するためのシステムを説明ずる概略説明図(その4)である。
【図7】予め地下水の流速データを測定するためのシステムを説明ずる概略説明図(その5)である。
【図8】予め地下水の流速データを測定するためのシステムを説明ずる概略説明図(その6)である。
【図9】標点の移動量から対応する地下水の流速値を曲線で示した説明図である。
【図10】撮像カメラで標点を上部から撮影した状態を説明する説明図で、(a)は地下水が静止した状態を、(b)は地下水が流動している状態を示している。
【図11】ボーリング孔内およびその近傍における地下水の流向を説明する説明図である。
【図12】本発明の使用状態を説明ずる説明図(その1)である。
【図13】本発明の使用状態を説明ずる説明図(その2)である。
【図14】本発明の使用状態を説明ずる説明図(その3)である。
【図15】本発明の使用状態を説明ずる説明図(その4)である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0010】
図1に本発明の第1実施例を示す。
本実施例による地下水流動測定装置1は、内部に略円筒状の空間部2を有して構成された装置本体3を備えている。
【0011】
そして、この装置本体3内には、装置本体3の上部側に収納された撮像手段であるCCDカメラなどで構成された撮像カメラ6と、該撮像カメラ6の下側に設けられ地下水4が通過する測定部8と、を有して構成されている。
また、前記測定部8の底面9からは揺動軸10を基点として揺動可能に構成された測定体5が鉛直方向に延出して立設されている。
【0012】
なお、図1に示すように測定体5は、ひも状をなして構成されており、該ひも状の測定体5については、それが地下水4の中で撓まないように頂部に浮き11が取り付けられている。
さらに、該測定体5の頂部、例えば前記浮き11の上面には地下水4の遅い流速が計測できるように標点7−1が形成されている。
すなわち、ひも状の測定体5の長さが長いほど、換言すれば揺動軸10から標点7−1までの測定体5の長さが長いほど、地下水4の遅い水流に対しても敏感に反応させて、測定体5を傾斜させることができ、たとえ水流が遅くとも正確に測定することができるからである。
【0013】
ここで、該標点7−1の形状については、何ら限定されるものではないが、球状に膨出させて撮像カメラ6に、より撮像しやすいように構成するものとするのが好ましい。また、この標点7−1には発光体を使用したり、あるいは外周に蛍光塗料を塗布するなどして周囲より輝度などをアップさせて撮像カメラ6での撮影に際し、それが認識しやすく撮像しやすいように構成するのが好ましいものである。
【0014】
次に、測定体5の基部(揺動軸10)から頂部に亘っては、後述するように地下水4の速い流速をも計測可能にすべく複数の標点7−2、7−3、7−4、7−5が、測定体5の長手方向に向かい一定の間隔をあけて形成されている。本実施例では4つ形成したが、その数に限定はない。
これら複数の標点7−2、7−3、7−4、7−5は地下水4の速い流速に対応させるべく設けられたものである。すなわち、測定すべき地下水4の流速が比較的速い場合、測定体5は図1から理解されるように前記揺動軸10を基点として、大きく地下水4の流速によって傾斜し、測定体5の頂部に形成された標点7−1が撮像カメラ6の撮像範囲12から外れてしまうことになる。
【0015】
そのようなときに、測定体5の基部(揺動軸10)から頂部に亘って、複数の標点7−2、7−3、7−4、7−5を、一定の間隔をあけて形成しておけば、このいずれかの標点7−2、7−3、7−4、7−5、あるいはそれらの複数個が、撮像カメラ6の撮像範囲12内に留まり、この標点7−2、7−3、7−4、7−5を基に地下水4の速い流速を測定することができるからである。
【0016】
しかして、この複数の標点7−2、7−3、7−4、7−5の形状についても、何ら限定されるものではないが、例えば前記頂部に設けられた標点7−1の如く球状などに膨出させて撮像カメラ6により撮像しやすい形状に構成するものとするのが好ましい。また、これら標点7−2、7−3、7−4、7−5についても発光体により構成したり、外周に蛍光塗料を塗布するなどして周囲より輝度をアップさせて撮像しやすいように構成することが好ましい。
【0017】
しかして、本実施例では、地下水4内での被撮像物、すなわち測定体5の揺動状態をCCDカメラなどで構成された撮像カメラ6で撮影し、測定体5に形成された標点7―1、7−2、7−3、7−4、7−5の撮影像から地下水4の流速と流向を連続かつ長時間測定することを可能としたものである。
【0018】
次に、本実施例の一連の使用状態につき説明する。
図10(a)、図10(b)は,静水中および流水中の測定体5、特に浮き11の頂部に設けられた標点7−1を撮像カメラ6により撮影した各画像例を示す。
当該図に示すように,静水中では測定体5は略鉛直に立っており,測定体5の浮き11頂部に設けられた標点7−1は取得画像の中心に位置している。
【0019】
一方,流水中においては,測定体5は地下水流の下流側に傾斜し,測定体5の浮き11頂部に設けられた標点7−1が画像中心から移動することになる(図10(b)参照)。
しかして、この測定体5の浮き11頂部に設けられた標点7−1の移動量(例えば、画像上の移動ピクセル数)を基に,地下水流速が算定できるのである。
また,地下水流向は,地下水流によって傾斜した測定体5の傾斜方向を内蔵方位計を基準にし,方位角として地下水流向を算定できる様に構成されている。
【0020】
ところで、図11に示すように、ボーリング孔13内空隙時の地下水の流線は,きわめて複雑な挙動を示すが、本実施例による地下水流動測定装置1の測定体5は,ボーリング孔13内の中心に位置することとなるから,前記複雑な挙動に影響されず、周辺地盤の地下水流と同じ流向を示すことになる。したがって,そのように中心位置で測定した地下水流向については角度補正の必要がないのである。
【0021】
次に、本実施例による地下水流動測定装置1を用いた場合の地下水流向と流速の算定手順を以下に示す。
まず、予め地下水4の流速とそれにより測定体5がどの程度傾斜するかの関係を予め把握し、基準となるデータを作成しておく必要がある。
そのために例えば、予め室内実験装置を用意し、それにより基準データを作成しておく。
【0022】
この室内実験装置の構成については、何ら限定されるものではないが、当該水槽内において実際の地下水の流速と同様に、一定の速度で移動する水流が作れ、その水流の速度制御ができる装置を用いるものとする。なお、一般には、前記の水槽内で装置を動かし、地下水の水流と同様に水流の速度が制御できる構成が採用されるものとなる。
そして、測定体5の材料や径や長さを変えたりし,各測定体5の頂部に設けられた標点7−1の移動量と地下水流速の関係を予め正確に把握し,それらの関係式、関係図を求めておくのである(図3、図4,図5参照)。
【0023】
特に図5から理解されるように、地下水の流速によっておのおのの標点が移動する移動量との関係が曲線(p1,p2,p3,p4)として求められる。
このデータを予め求めておき、現場での複数標点の移動量と比較するのである。
しかして、測定現場において、地下水流動測定装置1を設置する(図1参照)。
【0024】
まず、地下水流向流速を測定するための開孔率の大きなスクリーンを組み込んだケーシングパイプをボーリング孔13内に設置した上で,本実施例による地下水流動測定装置1を挿入して所定深度にパッカー14などを用いて固定し,地下水流の乱れがなくなるのを確認し、前記地下水流動測定装置1を作動させて地下水流動の測定を行う。
そして、連続的に撮影し、撮像画像を取得していく。該画像は測定体5を上方から撮影して取得した画像である。
【0025】
次に、前記取得した画像を基に,地下水流によって測定体5が傾斜することにより,測定体5の頂部に設けた標点7−1が、画像の中心位置から移動する。
この移動量を画像解析によりピクセル数として定量的に算出する。
そして、上記予め算出してある標点7−1の移動量(ピクセル数)を基にして,事前に求めておいた関係式、関係図を用い,原位置のボーリング孔13内の地下水流速を算定するのである。
例えば,測定体5の頂部に設けられた標点7−1の移動量が125ピクセルとすると,関係曲線との交点を下にのばした点がボーリング孔内の地下の地下水流速(v=3.3×10-3m/s)として算定されるが如くである(図9参照)。
【0026】
次に、取得した画像を用いて,地下水流によって傾斜した測定 体5の方向を内蔵方位計を基にして,方位角に変換して地下水流向を算定する。
なお、撮像カメラ6で取得したデジタル画像を用いて標点7− 1の中心位置の移動量(ピクセル数)を画像解析により算定する場合、写真座標の読み取り誤差が測定精度に影響を及ぼすことがある。
このことから,測定体5を構成する浮き11頂部の中心位置に設けた標点7−1の写真座標を精度良く読み取るために,該標点7−1を例えば、φ0.5mm程度の小さな丸点として構成し,該標点7−1の明度(黒:0〜白:255の256階調)による重み付き重心の値を写真座標として取得するものとした。
【0027】
また,標点7−1の明度が撮影条件によって異なる場合もあるため,例えば標点7−1のしきい値を順次修正し重み付き重心の値を正確に求められるようにすることが好ましい。
ところで、地下水の流速が時間により、あるいは季節などにより大幅に変化することがある。この様な場合、従来はその変化した流速に対応する測定体5に切り替えたり、場合によっては測定装置自体を交換しなければならなかった。なぜなら、地下水の流速が速くなった場合など撮像カメラ6の撮像範囲12から、標点7−1が外れてしまい、測定することが出来なくなってしまうからである。
【0028】
しかして、本実施例ではそのような場合にスムーズに対応するものであり、測定体5の長手方向に間隔をあけて複数の標点7―2,7−3,7−4,7−5を設け、この複数の標点7―2,7−3,7−4,7−5のいずれか、あるいはそれらの複数が撮像範囲12内に残っていれば地下水の流速が測定できるものとしたのである。
【0029】
すなわち、図5に示すように、地下水の遅い流速から速い流速にまで対応する複数の標点の移動量が予め算出されており、もってこの算出データを基に、たとえ測定体5の頂部に設けられた標点7−1が撮像範囲外となったとしても、他の標点7―2,7−3,7−4,7−5のいずれか、あるいはそれらの複数が撮像範囲内に残っていれば地下水の流速が迅速、正確に測定できるのである。
【0030】
なお、単一の標点についてのみの移動量の測定では、測定の誤差、あるいは測定の際などに生じたアクシデントなどにより正確に地下水の流速が算出できない場合がある。
よって、本実施例では複数の標点について移動量の測定を行い、それらの移動量に対応する流速を算出し、その流速にばらつきがあった場合にはその平均値を求め、かかる平均値の値を地下水の流速とすることにより、より正確な測定値が求められるように構成されている。
【0031】
また、複数の標点7のうち、最大の移動量を示す標点7、換言すれば撮像範囲12内において測定体5の頂部近くに設置された標点7の中で、撮像されている標点7が一番最大の移動量がみられるわけであるから、該標点7に対応する流速を算定し、この流速を地下水の流速としても構わないものである。かかる標点7での計測が最も誤差が少ないと考えられるからである。
【実施例2】
【0032】
次に、図2に本発明の第2実施例を示す。
本実施例による地下水流動測定装置1は、内部に略円筒状の空間部2を有して構成された装置本体3を備えていること図1に示す実施例1と同様である。
【0033】
そして、この装置本体3内には、装置本体3の上部側に収納された撮像手段であるCCDカメラなどで構成された撮像カメラ6と、該撮像カメラ6の下側に設けられ地下水4が通過する測定部8と、を有して構成されている。
また、前記測定部8の底面9からは揺動軸10を基点として揺動可能に構成された測定体5が鉛直方向に延出して立設されている。
【0034】
なお、本実施例において、測定体5は、円柱状をなして構成されており、該円柱状の測定体5については、それが静水状の地下水4の中で鉛直方向に立設するよう内部に浮きとなる空気充填部などを設けておくとよい。
さらに、該測定体5の頂部上面には地下水4の遅い流速が計測できるように標点7−1が形成されている。
すなわち、測定体5の長さが長いほど、換言すれば揺動軸10から標点7−1までの測定体5の長さが長いほど、地下水4の遅い水流に対しても敏感に反応させることができ、たとえ水流が遅くとも正確に測定することができるからである。
【0035】
ここで、該標点7−1の形状については、何ら限定されるものではないが、球状に膨出させて撮像カメラ6により撮像しやすいように構成するものとするのが好ましい。また、この標点7−1には発光体を使用したり、あるいは外周に蛍光塗料を塗布するなどして周囲より輝度をアップさせて撮像カメラ6での撮影に際し、それが認識しやすく撮像しやすいように構成するのが好ましいものである。
【0036】
次に、測定体5の基部(揺動軸10)から頂部に亘っては、後述するように地下水4の速い流速が計測可能にすべく複数の標点7−2、7−3、7−4、7−5が、測定体5の長手方向に向かい一定の間隔をあけて形成されている。
これら複数の標点7−2、7−3、7−4、7−5は地下水4の速い流速に対応させるべく設けられたものである。すなわち、測定すべき地下水4の流速が比較的速い場合、測定体5は図1から理解されるように前記揺動軸10を基点として、大きく地下水4の流速によって傾斜し、測定体5の頂部に形成された標点7−1が撮像カメラ6の撮像範囲12から外れてしまうことになる。
【0037】
そのようなときに、測定体5の基部(揺動軸10)から頂部に亘って、複数の標点7−2、7−3、7−4、7−5を、一定の間隔をあけて形成しておけば、このいずれかの標点7−2、7−3、7−4、7−5は、撮像カメラ6の撮像範囲12内に留まり、この標点7−2、7−3、7−4、7−5を基に地下水4の速い流速を測定することができるからである。
【0038】
しかして、この複数の標点7−2、7−3、7−4、7−5の形状についても、何ら限定されるものではないが、例えば前記頂部に設けられた標点7−1とは異なり、測定体5の側面をリング状に囲む線などにして撮像カメラ6により撮像しやすい形状に構成するものとするのが好ましい。また、これら測定体5の側面をリング状に囲んで形成した標点7−2、7−3、7−4、7−5についても発光体により構成したり、外周に蛍光塗料を塗布するなどして周囲より輝度をアップさせて撮像しやすいように構成することが好ましい。
【0039】
しかして、本実施例では、地下水4内での被撮像物、すなわち測定体5の揺動状態をCCDカメラなどで構成された撮像カメラ6で撮影し、測定体5に形成された標点7―1、7−2、7−3、7−4、7−5の撮影像から地下水4の流速と流向を連続かつ長時間測定することが可能となっている。
なお、本実施例では揺動軸10の構成については、図2から理解されるように、測定体5の基端部に球状をなす膨出部を形成し、該膨出部を底面に設けた凹部にはめ込み、いわゆるヒンジ構造にして揺動軸10の構成としたものである。
【0040】
次に、当該実施例についての使用状態につき説明する。
図10(a)、図10(b)は,静水中および流水中の測定体5、特に浮き11の頂部に設けられた標点7−1を撮像カメラ6により撮影した各画像例を示す。
当該図に示すように,静水中では測定体5は略鉛直に立っており,測定体5の頂部に設けられた標点7−1は取得画像の中心に位置している。
【0041】
一方,流水中においては,測定体5は地下水流の下流側に傾斜し,測定体5の頂部に設けられた標点7−1が画像中心から移動することになる(図10(b)参照)。
しかして、この測定体5の頂部に設けられた標点7−1の移動量(画像上の移動ピクセル数)を基に,地下水流速が算定できるのである。
また,地下水流向は,地下水流によって傾斜した測定体5の傾斜方向を内蔵方位計を基準にし,方位角として地下水流向を算定できる様に構成されている。
【0042】
ところで、図11に示すように、ボーリング孔13内空隙時の地下水の流線は,きわめて複雑な挙動を示すが、本実施例による地下水流動測定装置1の測定体5は,ボーリング孔13内の中心に位置することとなるから,前記複雑な挙動に影響されず、周辺地盤の地下水流と同じ流向を示すことになる。したがって,そのように中心位置で測定した地下水流向については角度補正の必要がないのである。
【0043】
次に、本実施例による地下水流動測定装置1を用いた場合の地下水流向と流速の算定手順を以下に示す。
まず、予め地下水4の流速とそれにより測定体5がどの程度傾斜するかの関係を予め把握し、基準となるデータを作成しておく必要がある。
そのために例えば、予め室内実験装置を用意し、それにより基準データを作成しておく。
【0044】
この室内実験装置の構成については、何ら限定されるものではないが、当該水槽内において実際の地下水の流速と同様に、一定の速度で移動する水流が作れ、その水流の速度制御ができる装置を用いるものとする。なお、一般には、前記の水槽内で装置を動かし、地下水の水流と同様に水流の速度が制御できる構成が採用されるものとなる。
そして、測定体5の材料や径や長さを変えたりし,各測定体5の頂部に設けられた標点7−1の移動量と地下水流速の関係を予め正確に把握し,それらの関係式、関係図を求めておくのである(図6、図7,図8参照)。
【0045】
特に図8から理解されるように、地下水の流速によっておのおのの標点が移動する移動量との関係が曲線(例えば、L1,L2,L3,L4)として求められる。
このデータを予め求めておき、現場での複数標点の移動量と比較するのである。
しかして、測定現場において、地下水流動測定装置1を設置する(図2参照)。
【0046】
まず、地下水流向流速を測定するための開孔率の大きなスクリーンを組み込んだケーシングパイプをボーリング孔13内に設置した上で,本実施例による地下水流動測定装置1を挿入して所定深度にパッカー14などを用いて固定し,地下水流の乱れがなくなるのを確認し、前記地下水流動測定装置1を作動させて地下水流動の測定を行う。そして、連続的に撮影し、撮像画像を取得していく。該画像は測定体5を上方から撮影して取得した画像となる。
【0047】
次に、前記取得した画像を基に,地下水流によって測定体5が傾斜することにより,測定体5の頂部に設けた標点7−1が、画像の中心位置から移動する。
この移動量を画像解析によりピクセル数として定量的に算出する。
そして、上記で算出した標点7−1の移動量(ピクセル数)を基にして,事前に求めておいた関係式、関係図を用い,原位置のボーリング孔13内の地下水流速を算定するのである。
【0048】
例えば,測定体5の頂部に設けられた標点7−1の移動量が125ピクセルとすると,関係曲線との交点を下にのばした点がボーリング孔内の地下の地下水流速(v=3.3×10-3m/s)として算定されるが如くである(図9参照)。
【0049】
次に、取得した画像を用いて,地下水流によって傾斜した測定 体5の方向を内蔵方位計を基にして,方位角に変換して地下水流向を算定する。
なお、撮像カメラ6で取得したデジタル画像を用いて標点7− 1の中心位置の移動量(ピクセル数)を画像解析により算定する場合、写真座標の読み取り誤差が測定精度に影響を及ぼすことがある。
このことから,測定体5を構成する浮き11頂部の中心位置に設けた標点7−1の写真座標を精度良く読み取るために,該標点7−1を例えば、φ0.5mm程度の小さな丸点として構成し,該標点7−1の明度(黒:0〜白:255の256階調)による重み付き重心の値を写真座標として取得するものとした。
【0050】
また,標点7−1の明度が撮影条件によって異なる場合もあるため,例えば標点7−1のしきい値を順次修正し重み付き重心の値を正確に求められるようにすることが好ましい。
ところで、第1実施例でも説明したが、地下水の流速が時間により、あるいは季節などにより大幅に変化することがある。この様な場合、従来はその変化した流速に対応する測定体5に切り替えなければならなかった。なぜなら、地下水の流速が速くなった場合など撮像カメラ6の撮像範囲から、標点7−1が外れてしまうからである。
【0051】
しかして、本実施例ではそのような場合、測定体5の長手方向に間隔をあけて設けた複数の標点7―2,7−3,7−4,7−5のいずれか、あるいはそれらの複数が撮像範囲内に残っていれば地下水の流速が測定できるのである。
すなわち、図5に示すように、地下水の遅い流速から速い流速にまで対応する複数の標点の移動量が予め算出されており、もってこの算出データを基に、たとえ測定体5の頂部に設けられた標点7−1が撮像範囲外となったとしても、他の標点7―2,7−3,7−4,7−5のいずれか、あるいはそれらの複数が撮像範囲内に残っていれば地下水の流速が迅速、正確に測定できるのである。
【0052】
なお、前の実施例でも説明したが、単一の標点についてのみの移動量の測定では、測定の誤差、あるいは測定の際などに生じたアクシデントなどにより正確に地下水の流速が算出できない場合がある。
よって、本実施例では複数の標点について移動量の測定を行い、それらの移動量に対応する流速を算出し、その流速にばらつきがあった場合にはその平均値を求め、かかる平均値の値を地下水の流速とすることにより、より正確な測定値が求められるように構成されている。
【0053】
また、複数の標点7のうち、最大の移動量を示す標点7、換言すれば撮像範囲12内において測定体5の頂部近くに設置された標点7の中で、撮像されている標点7が一番最大の移動量がみられるわけであるから、該標点7に対応する流速を算定し、この流速を地下水の流速としても構わないものである。かかる標点7での計測が最も誤差が少ないと考えられるからである。
【0054】
しかして、図12乃至図15に示すように、河川や海の近傍位置で掘削工事をする場合、あるいは堤防近傍位置での掘削工事をする場合に、地下水の流動を観測する必要があり、本発明によって地下水の流動を精度よく測定することができ、その精密な測定結果により、地盤環境の保全・修復の観点からの安心、安全な精度の高い影響予測や効果的な対策工の実施が行えるものとなるのである。
【符号の説明】
【0055】
1 地下水流動測定装置
2 空間部
3 装置本体
4 地下水
5 測定体
6 撮像カメラ
7、7−1,7−2,7−3,7−4,7−5
標点
8 測定部
9 測定部の底面
10 揺動軸
11 係止片
12 撮像範囲
13 ボーリング孔
14 パッカー
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地下水内での被撮像物の揺動状態を撮像手段で撮影し、被撮像物の撮影像から地下水の流速と流向を連続かつ長時間測定可能な地下水流動測定装置であり、
該地下水流動測定装置には、内部に空間部を有して構成された装置本体を備え、
該装置本体内には、装置本体部内上部側に収納された撮像手段と、
該撮像手段の下側に設けられ地下水が通過する測定部と、を有し、
前記測定部底面からは揺動可能な測定体が鉛直方向に延出して立設され、
該測定体の頂部には地下水の遅い流速が計測可能な標点が形成されると共に、測定体の基部から頂部に亘っては、地下水の速い流速が計測可能な標点が間隔をあけて形成され、前記複数の標点が被撮像物とされた、
ことを特徴とする地下水流動測定装置。
【請求項2】
地下水内での被撮像物の揺動状態を撮像手段で撮影し、被撮像物の撮影像から地下水の流速と流向を連続かつ長時間測定可能な地下水流動測定装置であり、
該地下水流動測定装置には、内部に空間部を有して構成された装置本体を備え、
該装置本体内には、装置本体部内上部側に収納された撮像手段と、
該撮像手段の下側に設けられ地下水が通過する測定部と、を有し、
前記測定部底面からは揺動可能なひも状の測定体が鉛直方向に延出して立設され、
該測定体の頂部には地下水の遅い流速が計測可能な標点が形成されると共に、測定体の基部から頂部に亘っては、地下水の速い流速が計測可能な標点が間隔をあけて形成され、前記複数の標点が被撮像物とされた、
ことを特徴とする地下水流動測定装置。
【請求項3】
地下水内での被撮像物の揺動状態を撮像手段で撮影し、被撮像物の撮影像から地下水の流速と流向を連続かつ長時間測定可能な地下水流動測定装置であり、
該地下水流動測定装置には、内部に空間部を有して構成された装置本体を備え、
該装置本体内には、装置本体部内上部側に収納された撮像手段と、
該撮像手段の下側に設けられ地下水が通過する測定部と、を有し、
前記測定部底面からは揺動可能な円筒状の測定体が鉛直方向に延出して立設され、
該測定体の頂部には地下水の遅い流速が計測可能な標点が形成されると共に、測定体の基部から頂部に亘って所定の間隔をあけ、地下水の速い流速が計測可能な標点が前記円筒状測定体の側面を囲むように形成され、前記複数の標点が被撮像物とされた、
ことを特徴とする地下水流動測定装置。
【請求項4】
前記標点は、発光体物質により、あるいは受光することで撮像可能な輝度を有する物質により形成された、
ことを特徴とする請求項1、請求項2または請求項3記載の地下水流動測定装置。
【請求項5】
前記請求項1、請求項2、請求項3または請求項4記載の地下水流動測定装置を使用して、地下水の流速と流向を連続かつ長時間測定する地下水流動測定方法であり、
前記算出した複数の標点移動量からおのおの流速を算出し、算出された複数の流速値の平均値を地下水の流速値とする、
ことを特徴とする地下水流動測定方法。
【請求項6】
前記請求項1、請求項2、請求項3または請求項4記載の地下水流動測定装置を使用して、地下水の流速と流向を連続かつ長時間測定する地下水流動測定方法であり、
前記算出した複数の標点移動量のうち、前記移動量が最大のものに対応する流速を算出し、算出された流速値を地下水の流速値とする、
ことを特徴とする地下水流動測定方法。
【請求項1】
地下水内での被撮像物の揺動状態を撮像手段で撮影し、被撮像物の撮影像から地下水の流速と流向を連続かつ長時間測定可能な地下水流動測定装置であり、
該地下水流動測定装置には、内部に空間部を有して構成された装置本体を備え、
該装置本体内には、装置本体部内上部側に収納された撮像手段と、
該撮像手段の下側に設けられ地下水が通過する測定部と、を有し、
前記測定部底面からは揺動可能な測定体が鉛直方向に延出して立設され、
該測定体の頂部には地下水の遅い流速が計測可能な標点が形成されると共に、測定体の基部から頂部に亘っては、地下水の速い流速が計測可能な標点が間隔をあけて形成され、前記複数の標点が被撮像物とされた、
ことを特徴とする地下水流動測定装置。
【請求項2】
地下水内での被撮像物の揺動状態を撮像手段で撮影し、被撮像物の撮影像から地下水の流速と流向を連続かつ長時間測定可能な地下水流動測定装置であり、
該地下水流動測定装置には、内部に空間部を有して構成された装置本体を備え、
該装置本体内には、装置本体部内上部側に収納された撮像手段と、
該撮像手段の下側に設けられ地下水が通過する測定部と、を有し、
前記測定部底面からは揺動可能なひも状の測定体が鉛直方向に延出して立設され、
該測定体の頂部には地下水の遅い流速が計測可能な標点が形成されると共に、測定体の基部から頂部に亘っては、地下水の速い流速が計測可能な標点が間隔をあけて形成され、前記複数の標点が被撮像物とされた、
ことを特徴とする地下水流動測定装置。
【請求項3】
地下水内での被撮像物の揺動状態を撮像手段で撮影し、被撮像物の撮影像から地下水の流速と流向を連続かつ長時間測定可能な地下水流動測定装置であり、
該地下水流動測定装置には、内部に空間部を有して構成された装置本体を備え、
該装置本体内には、装置本体部内上部側に収納された撮像手段と、
該撮像手段の下側に設けられ地下水が通過する測定部と、を有し、
前記測定部底面からは揺動可能な円筒状の測定体が鉛直方向に延出して立設され、
該測定体の頂部には地下水の遅い流速が計測可能な標点が形成されると共に、測定体の基部から頂部に亘って所定の間隔をあけ、地下水の速い流速が計測可能な標点が前記円筒状測定体の側面を囲むように形成され、前記複数の標点が被撮像物とされた、
ことを特徴とする地下水流動測定装置。
【請求項4】
前記標点は、発光体物質により、あるいは受光することで撮像可能な輝度を有する物質により形成された、
ことを特徴とする請求項1、請求項2または請求項3記載の地下水流動測定装置。
【請求項5】
前記請求項1、請求項2、請求項3または請求項4記載の地下水流動測定装置を使用して、地下水の流速と流向を連続かつ長時間測定する地下水流動測定方法であり、
前記算出した複数の標点移動量からおのおの流速を算出し、算出された複数の流速値の平均値を地下水の流速値とする、
ことを特徴とする地下水流動測定方法。
【請求項6】
前記請求項1、請求項2、請求項3または請求項4記載の地下水流動測定装置を使用して、地下水の流速と流向を連続かつ長時間測定する地下水流動測定方法であり、
前記算出した複数の標点移動量のうち、前記移動量が最大のものに対応する流速を算出し、算出された流速値を地下水の流速値とする、
ことを特徴とする地下水流動測定方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2010−175462(P2010−175462A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−20217(P2009−20217)
【出願日】平成21年1月30日(2009.1.30)
【出願人】(000235543)飛島建設株式会社 (132)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年1月30日(2009.1.30)
【出願人】(000235543)飛島建設株式会社 (132)
【Fターム(参考)】
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