説明

地中埋設浄化槽用のPCコンクリート製基礎プレート

【課題】本発明は浄化槽埋設工事の工期と工費を大幅に低減すると共に、同埋設作業の省力化と均質化を達成する地中埋設浄化槽用のPCコンクリート製基礎プレートを提供する。
【解決手段】上記基礎プレート12は上面で開口する吊り穴13と、該吊り穴13内に配設した基礎プレート吊り上げ用の吊り手14を有し、更に上記基礎プレート12の一側面又は対向する二側面において露出する基礎プレート12と一体の締結板17を有すると共に、更に基礎プレート12の一端上縁部又は対向する両端上縁部に上記締結板17と対応し開口するボルト導入穴19を有し、上記締結板17を隣接する基礎プレート12の締結板17と対接し、上記ボルト導入穴19を通じ上記締結板17のボルト締結孔18にボルト22を挿入締結して隣接する基礎プレート12間を連結する構成とした地中埋設浄化槽用のPCコンクリート製基礎プレート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は地中に埋設される浄化槽の底面を載置するPCコンクリート製基礎プレートに関する。
【背景技術】
【0002】
図1Bに示すように、トイレ、台所、風呂等の排水を処理する浄化槽1は、地中に埋設し、該浄化槽底面を地中に埋設した基礎コンクリート上に載置し、該浄化槽1の天壁に設けたマンホールの蓋2を上部スラブコンクリート3の上面に配する施工が行われている。
【0003】
詳述すると図1Aに示すように、重機を用いて浄化槽埋設穴4を掘削し、該浄化槽埋設穴4の内周面に沿い矢板5を打ち込み、該矢板5を腹起こし梁6で突っ張り支持することにより土留めを図る工事を行い、更に図1Bに示すように、浄化槽埋設穴4の内底面に割り栗石7を敷いて突き固め、該割り栗石7の上面に捨てコンクリート8を現場打ちし、該捨てコンクリート8の養生硬化期間を経た後、該捨てコンクリート8の上面に鉄筋9を配筋して型枠を組み、該型枠内に底版コンクリート10を現場打ちし、該底版コンクリート10の上面を水平に均し仕上げし、該底版コンクリート10の養生硬化期間を経た後、上記矢板5と腹起こし梁6を取り外し、上記底版コンクリート10上に浄化槽1を支持して埋め戻しを行い、上記スラブコンクリート3を打設する工事を行っている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
然るに従来の浄化槽埋設工事には背景技術において説明したように、配筋作業、基礎コンクリートの現場打ち作業、即ち捨てコンクリート8と底版コンクリート10の現場打ち作業と、底版コンクリート10上面を均一に平面仕上げする作業が不可欠であり、更には両コンクリート8,10の養生硬化期間を必要とし、全体として工期が長くかかり、その施工に熟練した技術が要求される。
【0005】
従って浄化槽埋設工事の工費も高く付く問題を有している。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記問題を有効に解決する地中埋設浄化槽用のPCコンクリート製基礎プレートを提供するものである。
【0007】
この地中埋設浄化槽用のPCコンクリート製基礎プレートは、上面で開口する吊り穴と該吊り穴内に配設した基礎プレートと一体の吊り手を有する。
【0008】
更に上記基礎プレートの一側面又は対向する二側面に基礎プレートと一体のボルト締結板を設けると共に、該ボルト締結板にボルト締結孔を設け、更に基礎プレートの一端上縁部又は対向する両端上縁部に上記ボルト締結板の背面に接し開口するボルト導入穴を有する。
【0009】
上記ボルト締結板を隣接する基礎プレートのボルト締結板と対向させ、上記ボルト導入穴を通じ上記ボルト締結孔にボルトを挿入し締結して隣接する基礎プレート間を連結し一枚の基礎プレート連結体を構成し、上記浄化槽を両基礎プレートに跨るように載置する構造とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、浄化槽埋設工事において最も工期と技術を要していた現場配筋と基礎コンクリートの現場打設と均し作業、養生期間の経過等の要因を取り除き、浄化槽の埋設工事における工期の短縮と工費の大幅な削減を達成することができると共に、浄化槽埋設作業の省力化、合理化を達成できる。
【0011】
又浄化槽埋設工事における最も重要な基礎コンクリートの均質化を図り、従来発生していた基礎コンクリートの沈下、ひび割れ、これに伴う浄化槽の傾きや亀裂の発生を可及的に防止する効果を奏ずる。
【0012】
更に単位基礎プレートを二枚又は三枚連結し浄化槽を載置する実質一枚の基礎プレートを組み立てる構成により、単位基礎プレートの大幅な軽量化、作業性の向上と、取り扱いの容易性を確保し、上記ボルト締結によって堅牢な一枚の基礎プレート連結体を容易に形成できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下本発明を実施するための最良の形態を図2乃至図13に基づいて詳述する。
【0014】
12は地中埋設浄化槽用の方形のPCコンクリート製基礎プレート(プレキャストコンクリート製基礎プレート)であり、図2乃至図5に示すように、該基礎プレート12は上面で開口する複数の吊り穴13と該吊り穴13内に配設した基礎プレート12と一体の吊り手14を有する。
【0015】
上記基礎プレート12は内部に鉄筋15を配筋した事前に工場で成形された鉄筋コンクリート製であり、上記吊り穴13及び吊り手14は該基礎プレート12の成形時に同プレート12の四隅に配設する。
【0016】
上記吊り手14は吊り穴13内に充分な遊びを存し、基礎プレート12上面より突出しないように配し、該遊びにより吊り穴13内に吊り具16を挿入しつつ上記吊り手14に掛止し、基礎プレート12の吊り上げ又は設置作業を行う。
【0017】
上記吊り手14としては種々の構造の吊掛け金具の適用が可能であるが、本実施例ではスタッドピンを用い、該スタッドピンの下端を基礎プレート12の成形時に吊り穴13の底部コンクリートに一体に埋め込んで吊り穴13内に立ち上げる。
【0018】
更に図2A,Bと図4に示すように、上記基礎プレート12の一側面において露出する基礎プレート12と一体の複数のボルト締結板17を設ける。該ボルト締結板17は基礎プレート12の一側面に幅方向において間隔を存し配置する。
【0019】
他例として図3A,Bと図5に示すように、上記基礎プレート12の対向する二側面において露出する基礎プレート12と一体の複数のボルト締結板17を設ける。該ボルト締結板17は基礎プレート12の一側面と他側面に幅方向において間隔を存し配置する。
【0020】
上記ボルト締結板17にボルト締結孔18を設け、更に基礎プレート12の一端上縁部又は対向する両端上縁部に上記ボルト締結板17の背面に接し開口する複数のボルト導入穴19を設ける。
【0021】
又上記ボルト締結孔18は好ましくは雌ねじ孔とし、該雌ねじ孔18にボルト22を螺合しつつ後記する単位基礎プレート12間を連結する構造にする。
【0022】
上記ボルト締結板17は基礎プレート12の側面と同一平面となるように配置し、該ボルト締結板17の両端から脚板20を延設し、該脚板20にアンカー鉄筋21を溶接して後方へ延出し、脚板20とアンカー鉄筋21を基礎プレート12の成形時にコンクリート内に埋設してボルト締結板17を基礎プレート12と一体に強固に支持する。同様にボルト導入穴19は基礎プレート12のコンクリート成形時に一体に成形する。
【0023】
上記吊り穴13と吊り手14とボルト締結板17とボルト締結孔18とボルト導入穴19は図2A,図3Aに示すように、方形の基礎プレート12の側面と並行な二直線上に中心を有するように並設する。よって吊り穴13と吊り手14はアンカー鉄筋21間に配置する。
【0024】
図6,図7,図10,図11に示すように、図2,図4の構造を有する二枚の単位基礎プレート12の一側面を互いに対接すると共に、上記ボルト締結板17を互いに対接し、上記ボルト導入穴19を通じ上記ボルト締結孔18にボルト22を挿入しナット締めすることにより締結板17,17を重合し締結して隣接する基礎プレート12間を連結し一枚の基礎プレート連結体11を構成し、図13Aに示すように、上記浄化槽1の左半部を一方の単位基礎プレート12上に載置し、同右半部を他方の単位基礎プレート12上に載置する構造とする。
【0025】
他例として図8,図9,図10,図11に示すように、図3,図5の構造を有する中央単位基礎プレート12と図2、図4の構造を有する左右単位基礎プレート12を用い、中央単位基礎プレート12の対向する二側面に左右単位基礎プレート12の一側面を互いに対接すると共に、上記ボルト締結板17を互いに対接し、上記ボルト導入穴19を通じ上記ボルト締結孔18にボルトを挿入しナット締めすることにより締結板17,17を重合し締結して三枚の隣接する基礎プレート12間を連結し一枚の基礎プレート連結体11を構成し、図13Bに示すように、上記浄化槽1の中央部を中央単位基礎プレート12上に載置し、同左右端を左右単位基礎プレート12上に載置する構造とする。
【0026】
次に浄化槽1の埋設工事について説明すると、図12Aに示すように、浄化槽埋設穴4を掘削し、図12Bに示すように、その底面に割り栗石7を平坦に敷き詰め突き固め、該割り栗石7層の上面に上記基礎プレート12を前記吊り手14を用いて吊り上げ搭載する。
【0027】
この時割り栗石7層の上面に打設する従来の捨てコンクリート8を省約することができる。基礎プレート12の上面と下面は工場成形時に平面仕上げされており、割り栗石7層の上面を平面に仕上げれば捨てコンクリート8無しで、割り栗石7層の上面に直接上記基礎プレート12を載設できる。
【0028】
然しながら本発明は割り栗石7層の上面に捨てコンクリートを打ち、深さ調整を行う場合を排除するものではない。
【0029】
上記基礎プレート12は図6,図8に示すように、地上において互いに連結して基礎プレート連結体11を構成し、然る後、上記埋設穴4内へ設置することができる。又は単位基礎プレート12を一枚ずつ埋設穴4内へ入れ込み、各単位基礎プレート12を吊り上げながら位置合わせし、埋設穴4内において各単位基礎プレート12間を連結する作業を行うことができる。
【0030】
上記基礎プレート連結体11の設置後、直ちに該基礎プレート連結体11上に浄化槽1を載置し、図12Cに示すように、埋設穴4の埋め戻しを行い、スラブコンクリート3を打設し、該スラブコンクリート3の上面において浄化槽1のマンホールの蓋2を露出せしめる。
【0031】
図13に示すように、上記基礎プレート連結体11は浄化槽1の左右前後において張り出し、一端側と他端側の吊り穴13及び吊り手14が該張り出し端に存在するように配置し、後日必要に応じ吊り上げできるようにする。
【0032】
同様にボルト22による締結部が上記張り出し端、少なくとも浄化槽1の底辺付近に存在するように配置する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】Aは浄化槽埋設工事における埋設穴の掘削状態を説明する断面図、Bは従来の上記埋設穴内に埋設した浄化槽の基礎構造を説明する断面図。
【図2】Aは本発明に係る地中埋設浄化槽用のPCコンクリート製基礎プレートの一例を示す平面図、Bは同側面図。
【図3】Aは本発明に係る地中埋設浄化槽用のPCコンクリート製基礎プレートの他例を示す平面図、Bは同側面図。
【図4】図2におけるA−A線断面図。
【図5】図3におけるB−B線断面図。
【図6】上記図2に示す基礎プレートを用いて形成した基礎プレート連結体の平面図。
【図7】上記基礎プレートの側面図。
【図8】上記図3に示す基礎プレートを用いて形成した基礎プレート連結体の平面図。
【図9】上記基礎プレートの側面図。
【図10】上記図6,図8に示す基礎プレート連結体の連結部の拡大平面図。
【図11】上記図6,図8に示す基礎プレート連結体の連結部の拡大断面図。
【図12】A,B,Cは上記基礎プレート連結体を用いた浄化槽埋設工事を説明する断面図。
【図13】Aは図6に示す上記基礎プレート連結体上への浄化槽の支持状態を説明する平面図、Bは図8に示す上記基礎プレート連結体上への浄化槽の支持状態を説明する平面図。
【符号の説明】
【0034】
1…浄化槽、2…マンホールの蓋、3…スラブコンクリート、4…浄化槽埋設穴、7…割り栗石、11…基礎プレート連結体、12…基礎プレート、13…吊り穴、14…吊り手、15…鉄筋、16…吊り具、17…ボルト締結板、18…ボルト締結孔、19…ボルト導入穴、20…脚板、21…アンカー鉄筋、22…ボルト。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地中に埋設される浄化槽の底面を載置するPCコンクリート製基礎プレートであって、該基礎プレートは上面で開口する吊り穴を有すると共に、該吊り穴内に配設した基礎プレートと一体の基礎プレート吊り上げ用の吊り手を有し、更に上記基礎プレートの一側面又は対向する二側面に基礎プレートと一体のボルト締結板を有すると共に、該ボルト締結板にボルト締結孔を設け、更に基礎プレートの一端上縁部又は対向する両端上縁部に上記ボルト締結板の背面に接し開口するボルト導入穴を有し、上記ボルト締結板を隣接する基礎プレートのボルト締結板と対接し、上記ボルト導入穴を通じ上記ボルト締結孔にボルトを挿入締結して隣接する基礎プレート間を連結する構成としたことを特徴とする地中埋設浄化槽用のPCコンクリート製基礎プレート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2007−169975(P2007−169975A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−366838(P2005−366838)
【出願日】平成17年12月20日(2005.12.20)
【出願人】(395015722)株式会社カンケン (7)
【Fターム(参考)】