説明

地中探査装置

【課題】 電磁波を用いて地上から地中を探査したときに、探査対象物の埋没状態を詳しく検知することができる地中探査装置を提供することを課題とする。
【解決手段】 地上から地中G2を探査するための地中探査装置1であって、電磁波を地面G1に対して斜めに送信するとともに、地中G2で反射した電磁波を受信するアンテナ部11を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地上から地中を探査するための地中探査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
建築物の解体撤去作業において、建築物の基礎杭を引き抜くときに、基礎杭の上端部が地上に露出していない基礎杭があり、このような基礎杭が引き抜かれずに放置されてしまう場合がある。そして、地中に埋没されている基礎杭が放置されていると、跡地に建築物を建築する場合に支障が生じるため、地中に埋没されている基礎杭を検知して撤去する必要がある。
【0003】
そこで、地上から地中を探査する地中探査装置としては、図4(a)に示すように、地盤Gの地面G1に対して平行な送受信面11aから、電磁波を地面G1に対して垂直に送信するとともに、地中G2で反射した電磁波(以下、「反射波」という場合がある。)を送受信面11aによって受信するアンテナ部11を有する探査レーダ10′を備えている地中探査装置1′がある(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
前記従来の地中探査装置1′の送受信面11aから地面G1に対して送信された電磁波は、地面G1から地中G2に進入し、地中G2で誘電率や導電率が異なる領域に達した場合には、その境界で電磁波が反射することになる。前記従来の地中探査装置1′では、地中G2からの反射波を送受信面11aで受信し、その反射波の領域や強度等に基づいて、図示しない画像処理装置が地中G2の構造を表示することにより、地上から地中G2を探査することができる。
【0005】
そして、前記従来の地中探査装置1′では、送受信面11aから地面G1に対して電磁波を送信して地中G2に進入させ、地中G2の基礎杭Kで反射した反射波を送受信面11aで受信することにより、地中G2の基礎杭Kを地上から検知することができる。
【特許文献1】実公平4−025673号公報(第2頁右欄第7行目〜第3頁左欄第1行目、第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記従来の地中探査装置1′では、送受信面11aから地面G1に対して垂直に電磁波を送信しているため、電磁波は、基礎杭Kの上端面で反射することになる。すなわち、反射波の領域は、基礎杭Kの上端面の領域を示していることになる。図4(b)は、前記従来の地中探査装置1′によって検知した基礎杭Kを表示した図であり、平面領域内における基礎杭Kの位置および上端部の深度を検知することはできるが、基礎杭Kの下端部の深度や基礎杭Kの傾きを検知することができない。そのため、基礎杭Kを撤去するときには、基礎杭Kの周囲を掘削することで埋没状態を詳しく把握することになり、あらかじめ予想した埋没状態と異なる場合には、作業手順を変更しなければならず、撤去作業が煩雑になってしまうという問題がある。
【0007】
そこで、本発明では、前記した問題を解決し、電磁波を用いて地上から地中を探査したときに、探査対象物の埋没状態を詳しく検知することができる地中探査装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため、本発明は、地上から地中を探査するための地中探査装置であって、電磁波を地面に対して斜めに送信するとともに、地中で反射した電磁波を受信するアンテナ部を備えている。
ここで、探査対象物とは、基礎杭等の埋没物や、空洞や亀裂等の地下構造であり、周囲の土砂とは異なる誘電率や導電率を有するものである。
【0009】
このように、本発明の地中探査装置では、電磁波を地面に対して斜めに送信するとともに、地中で反射した電磁波を受信するアンテナ部を備えており、アンテナ部から送信された電磁波は、地中を斜めに進んで、探査対象物の側面で反射することになる。これにより、反射波の領域は、探査対象物の側面形状を示していることになるため、探査対象物の上下端部の深度および探査対象物の傾きを検知することができる。また、反射波の強度や反射時間に基づいて、探査対象物までの距離を求めることにより、平面領域における探査対象物の位置を検知することができる。
なお、アンテナ部は、電磁波を送信する送信部と、電磁波を受信する受信部とが一体となっている構成や、送受信部が分割されている構成など限定されるものではない。
【0010】
前記した地中探査装置において、アンテナ部は、地面に対して斜めに配置された送受信面によって電磁波を送受信するように構成されており、送受信面と地面との間には、誘電体が介設されていることが望ましい。
ここで、誘電体とは、電磁波が通過可能な部材であり、セラミックスや粘土など、その材料は限定されるものではないが、誘電体の誘電率および導電率は、地盤の土砂の誘電率および導電率と同じまたは近似する値であることが望ましい。
【0011】
このように、地面に対して斜めに配置された送受信面によって電磁波を送受信するように構成し、送受信面と地面との間に誘電体を介設することにより、送受信面と地面との間における電磁波の反射を抑制することができるため、送受信面と地面とが大きく離れている場合であっても、探査対象物の埋没状態を検知することができる。
また、送受信面と地面との間に、傾斜部が形成された誘電体を介設することにより、送受信面を地面に対して斜めに配置する場合には、送受信面が地面に対して平行に配置される既存のアンテナ部を利用することができるため、製造コストを下げることができる。
【0012】
前記した地中探査装置において、誘電体には、走行手段が取り付けられており、地中探査装置は、走行手段によって、地面上を移動可能であることが望ましい。
ここで、走行手段の構成としては、フレーム等の部材を介して誘電体に取り付けられた車輪や、誘電体に連結した自走可能な車両など、その構成は限定されるものではない。
【0013】
このように、誘電体に取り付けられた走行手段によって、地中探査装置が地面上を移動可能であるため、広範囲を効率良く探査することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の地中探査装置によれば、アンテナ部から送信された電磁波は、地中を斜めに進んで、探査対象物の側面で反射することになる。すなわち、反射波の領域は、探査対象物の側面形状を示しているため、探査対象物の上下端部の深度および傾きを検知することができる。また、反射波の強度や反射時間に基づいて、探査対象物までの距離を求めることにより、平面領域における探査対象物の位置を検知することができる。このように、本発明の地中探査装置では、探査対象物の埋没状態を地上から詳しく検知することができる。
特に、地中に埋没されている基礎杭を撤去するために、地中を探査する場合には、基礎杭の上下端部の深度および傾きを検知することができ、基礎杭の埋没状態を詳しく検知することができるため、作業計画を的確に作成することができ、作業効率を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
次に、本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本実施形態の地中探査装置を上方から見た斜視図である。図2は、本実施形態の地中探査装置を示した側面図である。図3は、本実施形態の地中探査装置を用いた地中探査方法を示した図で、(a)は、地中を探査している態様を示した側面図、(b)は検知した基礎杭の埋没状態を表示した図である。
本実施形態では、地中に埋没されている基礎杭を撤去するために、地中を探査する場合に用いられる地中探査装置を例として説明する。
なお、以下の説明において、前後方向とは、図1および図2に示した前後方向に対応している。
【0016】
[地中探査装置の構成]
地中探査装置1は、図1に示すように、電磁波を送受信するアンテナ部11(図2参照)が収容されている探査レーダ10と、探査レーダ10が取り付けられている台車20とから構成されている。
【0017】
台車20は、図1に示すように、中空体のフレーム21と、このフレーム21の内部に嵌め込まれている誘電体22とから構成されている。
【0018】
フレーム21は、図2に示すように、平面視で矩形状の底板23と、底板23の左右側端部に垂設された側面視で略三角形状の側板24,24と、底板23の前端部から後方に向かって斜め上方に傾斜している矩形状の前板25と、前板25の頂部(後端部)から後方に向かって斜め下方に傾斜している矩形状の後板26とから構成された中空体であり、底板23と後板26は、電磁波の通過に影響を与えないプラスチック等の材料によって形成されている。
フレーム21の後板26は、地面G1に対して45°の角度で傾斜しており、その外周形状は、後記する探査レーダ10の底板14の外周形状と一致している。
【0019】
また、フレーム21の下部の四隅には、走行手段である車輪21a・・・が回転自在に取り付けられており、この車輪21a・・・によって台車20は地面G1上を移動可能となっている。
なお、台車20の底板23と地面G1との間には、僅かに隙間が形成されているが、電磁波の通過に影響を与えない間隔(例えば、5cm程度)となっている。
【0020】
誘電体22は、電磁波が通過可能な部材であり、フレーム21の内部に嵌め込まれている。この誘電体22の誘電率および導電率は、探査対象である地盤Gの土砂の誘電率および導電率と同じまたは近似する値となっており、電磁波の通過に影響を与えない構成となっている。なお、誘電体22の材料は限定されるものではなく、例えば、セラミックスや粘土を用いることができる。
【0021】
探査レーダ10は、図2に示すように、電磁波を地盤Gの地面G1に対して送信するとともに、その電磁波が地中G2で反射した反射波を受信するアンテナ部11と、アンテナ部11が受信した反射波を外部の画像処理装置(図示せず)に送信する通信装置12とが直方体のケース13の内部に収容された構成となっている。
【0022】
アンテナ部11は、平坦な送受信面11aを備えており、この送受信面11aから電磁波を送信するとともに、送受信面11aで反射波を受信するように構成されている。送受信面11aでは、その平面に対して垂直となる方向に向かって電磁波を送信するように構成されている。
このアンテナ部11は、ケース13の底板14の上面に取り付けられており、送受信面11aが底板14の上面に重ね合わされている。なお、ケース13の底板14は、電磁波の通過に影響を与えないプラスチック等の材料によって形成されているため、アンテナ部11による電磁波の送受信に影響を与えることがない。
【0023】
さらに、ケース13の底板14は、台車20の後板26の上面26aに重ね合わされて取り付けられている。このように、探査レーダ10は、台車20に取り付けられることにより所定の高さに配置されている。
台車20の後板26は、後方に向かって斜め下方に45°の角度で傾斜しているため、この後板26に取り付けられたケース13の底板14も後方に向かって斜め下方に45°の角度で傾斜することになる。これにより、アンテナ部11の送受信面11aは、地面G1に対して45°の角度で向き合うことになり、図3(a)に示すように、送受信面11aから送信される電磁波は、地面G1に対して斜めに45°の角度で送信される。
【0024】
ここで、アンテナ部11の送受信面11aから地面G1に対して斜めに送信された電磁波は、地中G2を斜めに進んで、誘電率や導電率が異なる基礎杭Kの側面に達すると、その境界で反射する。この反射波のうち地面G1に対して斜めに45°の角度で反射した成分が、アンテナ部11の送受信面11aで受信され、通信装置12から外部の画像処理装置(図示せず)に送信される。画像処理装置では、反射波の領域に基づいて、基礎杭Kの側面形状を表示するとともに、反射波の強度や反射時間に基づいて、平面領域における基礎杭Kの位置を表示する。
なお、画像処理装置は、電磁波の領域または強度や反射時間に基づいて、地下構造を表示する既存の装置を用いており、本実施形態のように、地中探査装置1の外部に設けられている構成や、地中探査装置1に取り付けられている構成など限定されるものではない。
【0025】
また、ケース13の上面13aの中央部の左右両端には、パイプ部材をコの字状に曲げて形成した取っ手部15の各基端部が各々取り付けられている。この取っ手部15は、ケース13の上面13aから後方に向かって斜め上方に延長された後に、後方に向かって水平に延長されており、後端部は左右方向に延長された把持部15aとなっている。この把持部15aは、作業員が把持し易い高さに設定されており、取っ手部15を作業員が押し引きすることにより、台車20の車輪21a・・・によって、地中探査装置1を地面G1上で移動させることができる(図3(a)参照)。
【0026】
このように、本実施形態の地中探査装置1では、探査レーダ10のケース13と地面G1との間に、傾斜部が形成された台車20を介設することにより、送受信面11aが地面G1に対して斜めに配置された探査レーダ10を構成しており、送受信面11aが地面G1に対して平行に配置される既存の探査レーダ10′(図4(a)参照)を利用することができるため、地中探査装置1の製造コストを下げることができる。
【0027】
[地中探査方法]
次に、本実施形態の地中探査装置1を用いて、地中G2に埋没している基礎杭Kを探査する方法について説明する。
【0028】
まず、図3(a)に示すように、作業員は、地中探査装置1の取っ手部15を押し引きすることにより、探査対象となる領域に地中探査装置1を移動させ、アンテナ部11の送受信面11aから、電磁波を地面G1に対して斜めに送信する。
【0029】
このとき、送受信面11aと地面G1との間には、地盤Gの土砂の誘電率および導電率と同じまたは近似する値の誘電率および導電率である誘電体22が嵌め込まれた台車20が介設されており、さらに、アンテナ部11が収容されている探査レーダ10のケース13、台車20のフレーム21、台車20と地面G1との間隔は、電磁波の通過に対して影響を与えないように構成されているため、電磁波は、送受信面11aから地面G1の間において反射が抑制され、送受信面11aから地面G1の間で反射を大きく生じることなく、地面G1から地中G2に進入する。
【0030】
地中G2に進入した電磁波は、地中G2を斜めに進んで、基礎杭Kの側面に達すると、その境界で反射し、その反射波のうち地面G1に対して斜めに45°の角度で反射した成分が、アンテナ部11の送受信面11aで受信される。
ここで、反射波は、基礎杭Kの側面で反射しているため、その領域は基礎杭Kの側面形状を示していることになる。
【0031】
探査レーダ10は、アンテナ部11の送受信面11aで受信した反射波を、通信装置12によって外部の画像処理装置(図示せず)に送信し、画像処理装置では、反射波の領域に基づいて、基礎杭Kの側面形状を表示するとともに、反射波の強度や反射時間に基づいて、探査レーダ10から基礎杭Kまでの距離を表示することにより、図3(b)に示すように、基礎杭Kの埋没状態を示す。
【0032】
このように、地中探査装置1では、反射波の領域が基礎杭Kの側面形状を示しており、基礎杭Kの上下端部が示されるため、基礎杭Kの上下端部の深度、および基礎杭Kの傾きを検知することができる。
また、反射波の強度や反射時間に基づいて、基礎杭Kまでの距離を求めることにより、平面領域における基礎杭Kの位置を検知することができる。
なお、送受信面11aと地面G1との間には、地盤Gの土砂の誘電率および導電率と同じまたは近似する値の誘電率および導電率である誘電体22が嵌め込まれた台車20が介設されているため、送受信面11aと地面G1とが大きく離れている場合であっても、基礎杭Kの埋没状態を検知することができる。
したがって、本発明の地中探査装置1では、基礎杭Kの埋没状態を地上から詳しく検知することができ、基礎杭Kを撤去するときの作業計画を的確に作成することができるため、作業効率を向上させることができる。
【0033】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態には限定されない。例えば、本実施形態の地中探査装置1では、図3(a)に示すように、台車20の下部に取り付けられた車輪21a・・・によって、地中探査装置1を地面G1上で移動させることにより、広範囲を探査可能となっているが、地中探査装置1の走行手段は、車輪21a・・・に限定されるものではなく、台車20の下部に履帯を取り付けた構成や、台車20を自走可能な車両に連結した構成を用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本実施形態の地中探査装置を上方から見た斜視図である。
【図2】本実施形態の地中探査装置を示した側面図である。
【図3】本実施形態の地中探査装置を用いた地中探査方法を示した図で、(a)は、地中を探査している態様を示した側面図、(b)は検知した基礎杭の埋没状態を表示した図である。
【図4】従来の地中探査装置を用いた地中探査方法を示した図で、(a)は、地中を探査している態様を示した側面図、(b)は検知した基礎杭の埋没状態を表示した図である。
【符号の説明】
【0035】
1 地中探査装置
10 探査レーダ
11 アンテナ部
11a 送受信面
14 底板
20 台車
22 誘電体
23 底板
G 地盤
G1 地面
G2 地中
K 基礎杭

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地上から地中を探査するための地中探査装置であって、
電磁波を地面に対して斜めに送信するとともに、前記地中で反射した前記電磁波を受信するアンテナ部を備えていることを特徴とする地中探査装置。
【請求項2】
前記アンテナ部は、前記地面に対して斜めに配置された送受信面によって前記電磁波を送受信するように構成されており、
前記送受信面と前記地面との間には、誘電体が介設されていることを特徴とする請求項1に記載の地中探査装置。
【請求項3】
前記誘電体には、走行手段が取り付けられており、前記地中探査装置は、前記走行手段によって、前記地面上を移動可能であることを特徴とする請求項2に記載の地中探査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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