説明

地中熱交換用パイプ

【課題】土中への埋設作業等の際に発生するおそれがある傷付きによって使用中に破裂のおそれがなく、かつ埋設の際に行われる他の建設作業完了まで屋外で露出状態とされた場合に紫外線による劣化を抑えることができる地中熱交換用パイプの提供を目的とする。
【解決手段】地中熱ヒートポンプシステムにおいて、地中に埋設される地中熱交換用パイプ10を、樹脂製の本管11と本管11の外周面を被覆する樹脂製被覆層21とで構成し、被覆層2は紫外線に対する劣化防止用に耐候剤を含むと共に、ヒートポンプやU字継手と接続される端部で被覆層21を剥離可能なように、被覆層21を本管に11に対して非接着とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地中に埋設される地中熱交換用パイプに関する。
【背景技術】
【0002】
深さ10m以下の地中の温度は一年中ほぼ一定で、夏には屋外の気温より低く、冬には、屋外の気温より高くなっており、その地中熱を利用して冷暖房や融雪などを行うのが地中熱ヒートポンプシステムである。地中熱ヒートポンプシステムでは、地面に深さ50〜100m程度の穴を掘り、その穴に地中熱交換用パイプ(採熱管)を埋設し、地上に設置したヒートポンプと地中熱交換用パイプを接続して地中熱交換用パイプに流した熱媒と地中熱を熱交換して利用する。
【0003】
従来、地中熱交換用パイプとして、単層の樹脂管が採用されている。樹脂管は、金属管のような腐食のおそれがないため高寿命であり、また、可撓性を有することにより、地中への埋設等の際の作業が容易である。
地中熱交換用パイプを地中に埋設する施工方法の主なものとして、ボアホール方式と基礎杭方式がある。ボアホール方式では、地面に直径120〜150mmの穴を深さ数十〜150mで堀り、その穴に地中熱交換用パイプを地上より挿入し、その後に砂などを穴に充填している。一方、基礎杭方式では、建築物の基礎工事の際に、基礎杭の外周に地中熱交換用パイプを固定し、または基礎杭の中空部に地中熱交換用パイプを挿入して地中に埋設している。
【0004】
しかし、いずれの方式であっても、最終的に砂もしくはセメントなどを穴に充填するため、その充填時に地中熱交換用パイプの表面に傷が発生するおそれがある。地中熱交換用パイプの表面に傷が発生すると、長期間の使用中に異常圧力負荷が地中熱交換用パイプに加わった場合に、傷の部分を起点として地中熱交換用パイプが破裂する可能性がある。特に、地中熱交換用パイプは、使用期間が数十年間である事や、地中熱交換用パイプに不具合を生じた場合に地面の掘削が、費用や建物の関係で容易ではないため、傷の発生は重要な問題である。
【0005】
さらに、基礎杭方式では、基礎杭の工事時に地中に埋設された地中熱交換用パイプは、他の建設作業が終了するまで、屋外で露出した状態とされる。そのため、基礎杭の工事が終了するまで、太陽光線が地中熱交換用パイプに当たらないように地中熱交換用パイプを覆って、紫外線による管の劣化を防ぐ必要がある。しかし、大規模建築物等の場合には地中熱交換用パイプの本数が多くなり、太陽光が地中熱交換用パイプに当たらないようにする作業が大変である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−200848号公報
【特許文献2】特開2010−14359号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は前記の点に鑑みなされたものであって、傷付きによる破裂のおそれがなく、かつ埋設工事等の際に屋外で露出状態とされた場合に紫外線による劣化を抑えることができる地中熱交換用パイプの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、樹脂製本管と、前記樹脂製本管の外周面を被覆する樹脂製被覆層とからなり、前記樹脂製被覆層は耐候剤が含まれると共に前記樹脂製本管に接着されてなく、前記樹脂製本管の傷つきを防止することを特徴とする地中熱交換用パイプに係る。
【発明の効果】
【0009】
本発明の地中熱交換用パイプによれば、本管の外周面が被覆層で覆われているため、地中への埋設工事等の際に被覆層が傷付くことがあっても被覆層で覆われている本管まで傷付くことが防止され、長期間の使用中に本管が傷付きによって破裂するおそれがない。また、本発明の地中熱交換用パイプは、埋設工事の際に、屋外で所定期間露出した状態とされても、被覆層に耐候剤が含まれているため、被覆層が紫外線で劣化するのを抑えることができ、被覆層で覆われている本管の紫外線劣化をより確実に防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態に係る地中熱交換用パイプの断面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る地中熱交換用パイプの先端の被覆層を剥がす前と剥がした後を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1に示す地中熱交換用パイプ10は、地中熱ヒートポンプシステムに用いられ、地中に埋設されて地上の部分でヒートポンプに接続されるものである。前記地中熱交換用パイプ10は、本管11と前記本管11の外周面を被覆する被覆層21とよりなる。
【0012】
前記本管11は、樹脂製からなる。前記本管11を構成する樹脂としては、可撓性のあるものとされ、ポリオレフィン系樹脂が好ましく、特にはポリエチレン樹脂、架橋ポリエチレン樹脂が好ましい。なお、前記本管11は、金属で補強された金属複合化樹脂管であってもよい。また、前記本管11の外径及び肉厚は、適宜決定されるが、例として、外径27mm、管厚3mmを挙げる。
【0013】
前記被覆層21は、前記本管11の傷付き防止及び紫外線からの保護のために本管11の外周面に設けられるものであり、前記本管11と同様に可撓性のある樹脂製からなる。前記被覆層21を構成する樹脂としては、土壌汚染の心配が無いオレフィン系樹脂あるいは熱可塑性エラストマーが好適である。また、被覆層21を構成する樹脂には紫外線に対する劣化防止のために、耐候剤が含まれている。耐候剤としては、カーボンブラック、ヒンダードアミン系化合物、トリアジン系化合物等が挙げられる。耐候剤の量は、前記被覆層21の樹脂全体(耐候剤を含む)において2〜3重量%が一般的である。前記被覆層21の厚みは、前記本管11の傷付き防止及び紫外線による影響を抑えることができる厚みであればよく、0.5〜1.5mmが好ましい。さらに、前記被覆層21は、前記本管11に対して接着されてなく、前記地中熱交換用パイプ10の少なくとも端部で剥離可能に形成されている。
【0014】
なお、前記地中熱交換用パイプ10は、地中のU字管継手と接続される端部及び地上のヒートポンプと接続される端部(図2の(2−A)に示す10a)において、図2のように被覆層21が剥がされ、前記本管11の端部11aが露出した状態とされる。前記地中熱交換用パイプ10の端部10aで被覆層21を剥がす際、前記本管11に被覆層21が接着していないため、図2の(2−A)に示すように、前記被覆層21の切断予定位置に例えば専用工具やカッター等で切れ込み22を入れる等によって、前記被覆層21を前記切れ込み22から前記地中熱交換用パイプ10の先端10bまで、図2の(2−B)のように容易に除去することができる。なお、地中のU字管継手は公知のものが使用でき、具体的には特開2005−003135号に開示のものが使用できる。
【実施例】
【0015】
前記地中熱交換用パイプ10の製造実施例について示す。まず、押出成形により、外径27mm、管厚3mmのポリエチレン製の前記本管11を押出し、同じ成形機内で、前記本管11の外周面に厚1mmの前記被覆層21をさらに押出し成形した。前記被覆層21を構成する樹脂材料は、ポリエチレン樹脂98重量部にカーボンブラックを2重量部混合したものである。
【0016】
このようにして得られた実施例の地中熱交換用パイプ10に対して、傷付き防止効果と紫外線による劣化防止効果を確認した。
傷付き防止効果については、砂利の上に地中熱交換用パイプ10を載置して砂利の上で地中熱交換用パイプ10を5m引きずった後、前記被覆層21を剥がして本管11の表面状態を目視で確認した。その結果、前記本管11の表面には傷が見付からなかった。
一方、紫外線による劣化防止効果については、2本の試験体を用意し、一方の試験体については、前記被覆層21を剥がして本管11からダンベル形状の試験片を打ち抜き、試験片Aとした。この試験片Aを、引張り試験機にて以下の式で示す破断点伸び率を測定した。次いで、試験片Bとして、被覆層21を剥がすことなくその外面からサンシャインウェザーメーター(槽内ブラックパネル温度63℃、JIS−B7753)で紫外線等を、3000時間、照射した後、前記被覆層21を剥がして本管11からダンベル状の試験片Bを打抜き、破断点伸び率を測定した。
結果は、試験片A、Bいずれの破断点伸び率も、変化がなく、本管11による劣化が認められなかった。
【0017】
【数1】

【符号の説明】
【0018】
10 地中熱交換用パイプ
11 本管
21 被覆層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂製本管と、前記樹脂製本管の外周面を被覆する樹脂製被覆層とからなり、前記樹脂製被覆層は耐候剤が含まれると共に前記樹脂製本管に接着されてなく、前記樹脂製本管の傷つきを防止することを特徴とする地中熱交換用パイプ。


【図1】
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【図2】
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