説明

地域熱供給プラント管理装置

【課題】 DHCプラントの各弱電設備からの情報を中央監視室において簡便な操作により利用すること、各弱電設備を連携させて動作させること。
【解決手段】 3つのDHCプラント11〜31の管理を一括して行うためのDHCプラント管理装置10であって、DHCプラント11〜31のいずれにも、DHCプラントのインターホン設備12〜32、ITV設備13〜33、構内電話設備14〜34、構内放送設備15〜35又は電気錠設備16〜36のうちの一又は二以上の設備との間でLANを構築して設備の管理を行うPHS制御用パソコン18a及び管理用パソコン18b、PHS制御用パソコン28a及び管理用パソコン28b、又は、PHS制御用パソコン38a及び管理用パソコン38bパソコンを備えるDHCプラント管理装置11a〜31aと、DHCプラント管理装置11a〜31aを光ケーブル40により接続して構成される広域のLANとを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地域熱供給プラントの管理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
新エネルギー供給システム、とりわけ新しいアーバンエネルギー供給システムの一つとして、地域熱供給(district heat and cooling;以下、「DHC」と略記する)が、既に大都市のオフィス街や商業地域等において実用化されている。DHCは、例えば特定の地域内に存在するビル等の地下や専用建物等に設けられたDHCプラントから、エネルギー源として都市ガス、石油、LPG、石炭等の燃焼熱、ゴミ焼却熱さらには変電所や地下送電線の排熱等を用い、蒸気、温水さらには冷水等を、この地域内に存在するビルや住宅等の需要家に集中的に供給するシステムである。
【0003】
図2は、このDHCプラント1の従来の管理システムの代表例を模式的に示す説明図である。
同図に示すように、このDHCプラント1には、弱電設備として、
(i)DHCプラント1への入場や退場を管理するために出入口における来場者が使用するインターホン子機2aと、DHCプラント1の中央監視室内の設備管理員が使用するインターホン親機2bとを専用線2cにより接続して、来場者と中央監視室内の設備管理員との通話を可能とするインターホン設備2、
(ii)DHCプラント1内の主要箇所に配置された複数の監視カメラ3a、3b(図示例は二つ)をそれぞれ同軸線3c、3cにより同軸通信ユニット3dに接続し、システムコントローラ3e及びフレームスイッチャー3fを用いて、監視カメラ3a、3bの画像を中央監視室内のモニタ3gに映して、DHCプラント1の各種機器の運転状態の確認や不審者の有無を確認するためのITV設備3、
(iii)DHCプラント1内の設備管理員が携帯するPHS端末4aが発信する電波をPHSアンテナ4bにより受信し、電話線4c及び電話交換機4dを介して、DHCプラント1内の他の設備管理員が携帯するPHS端末(図示しない)に送信して、DHCプラント1内の設備管理員同士が相互に直接連絡するための構内電話設備4、
(iv)DHCプラント1の各所に配置された複数のスピーカ5a、5b(図示例は二つ)をスピーカ配線5cにより中央監視室に配置された放送アンプ5dに接続して、放送アンプ5dのスタンドマイク5eを用いて中央監視室内の設備管理員が、DHCプラント1内で作業中の設備管理員の呼び出しや、中央監視室から機器を遠隔起動する際にDHCプラント1内作業者に当該機器から退避するための放送を、DHCプラント1内に一斉に行うための構内放送設備5、さらには
(v)DHCプラント1の出入口扉の電気錠の施錠及び解錠を行う電気錠操作盤6aを、中央監視室に配置することにより、電気錠の施錠及び解錠を中央監視室の設備管理員により可能として入退出者の管理を行う電気錠設備6(ただしこのDHCプラント1の設備管理員は専用線6bを介して電気錠操作盤6aに接続された出入口扉近傍に配置されたテンキー6cに暗証番号を入力することにより施錠及び解錠可能)等が設けられている。
【0004】
そして、DHCプラント1のこれらの弱電設備2〜6は、図2に示すように、互いに関わり合うことなく、専用幹線によりそれぞれの情報が単独で中央監視室に伝送され、中央監視室の設備管理員によって利用されてきた。例えばITV設備3の映像データと、例えばインターホン設備2の音声データとは、単独のネットワーク内で動作していた。
【0005】
また、振動計測設備(図示せず)や赤外線サーモグラフ装置(図示せず)を単独に設置し、機器の振動データや機器および配管の表面温度データをフロッピディスク等の記憶媒体に保存し、中央監視室内のパソコンに記憶媒体を挿入または接続し、振動データや温度分布画像データをパソコンの画面で管理員が確認していた。
【0006】
さらに、計装設備(図示せず)および防犯設備(図示せず)は、それぞれ単独に各設備の端末装置と中央監視室内の各盤(中央制御盤、中央監視盤等)を、それぞれ専用線により接続し、DHCプラント1内の状況を中央監視室の設備管理員が監視していた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、DHCプラント1に設けられたこれらの弱電設備に対する従来の管理システムには、以下に列記する課題(a)〜(c)があった。
(a)各弱電設備の情報は、中央監視室に送られるものの、互いに関わり合うことなく専用幹線により単独で伝送されたり、着脱可能な記憶媒体を介して移送されていたため、各弱電設備を連携させて動作することはできず、中央監視室内の設備管理員が各弱電設備それぞれの専用コントローラ(インターホン親機2b、システムコントローラ3e及びフレームスイッチャー3f、放送アンプ5d及び電気錠操作盤6a)、パソコンを個別に操作する必要があった。このため、例えば、DHCプラント1の部外の保守作業者がプラント1の出入口扉のインターホン子器2aにより保守作業のための入場を求めてきた場合に、監視カメラ3aによりこの保守作業者を映像により確認してから出入口扉の電気錠の解錠を行い、その後に保守作業者が到着した旨の構内放送を行うには、中央監視室内の設備管理員が、インターホン親機2b、システムコントローラ3e及びフレームスイッチャー3f、電気錠操作盤6a及び放送アンプ5dをこの順で操作せねばならず、その操作の内容は多岐にわたることから極めて煩雑であった。
【0008】
操作内容を具体的に例示して説明すると、監視カメラ3aのパン、チルト及びズームを行う際には、この監視カメラ3aの専用モニタ3gの映像を見ながらカメラ制御専用のシステムコントローラ3eを操作する必要があり、所望の映像を得られるまでには相応の時間がかかっていた。また、電気錠は電気錠操作盤6aにおける対象とする扉の解錠ボタンを押すことにより解錠されるとともに、構内放送はスタンドマイク5eにより放送アンプ5dに入力された音声をスピーカ5a、5bから放送することにより行われるものの、当然のことながら、あるDHCプラントの中央監視室からこれとは別のDHCプラントの電気錠を解錠したり、構内放送を行うことは不可能であった。
【0009】
このような操作の煩雑さが存在するため、中央監視室内の設備管理員には相応の習熟が要求されるが、今後DHCがさらに普及する場合を想定すると、習熟度が不足した一般的な設備管理員を中央監視室に人員配置せざるを得ない場合も予想される。このような場合に、中央監視室内の設備管理員に要求する作業は、できるだけ簡便なものにしておくことが重要である。
【0010】
(b)各弱電設備からの情報を中央監視室に互いに関わり合うことなく単独で伝送するための専用幹線をなす専用ケーブルを、各弱電設備と中央監視室との間にそれぞれ敷設する必要がある。このため、各弱電設備と中央監視室との距離が大きい場合や弱電設備の数が多い場合には、専用ケーブルの敷設の工事費が膨大なものとなり、DHCプラント1のイニシャルコストが嵩んでしまう。
【0011】
(c)通常、DHCプラントは、同一のDHC事業者により複数の箇所で運営及び管理されるが、複数のDHCプラントのいずれにも、上述した管理システムを個別に導入する必要があり、各DHCプラントを一括して管理することはできなかった。このため、管理費の上昇は避けられなかった。
【0012】
これらの課題(a)〜(c)は、いずれも、新しいアーバンエネルギー供給システムの一つとして一部の地域において既に実用化されているDHCを、他の地域にもさらに拡大していくためには、必ず解決しなければならない極めて重要な技術課題である。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、地域熱供給プラントに設けられてその管理に用いられる弱電設備との間でLANを構築して該設備の管理を行うパソコンを備えることを特徴とする地域熱供給プラント管理装置である。
【0014】
この本発明にかかる地域熱供給プラント管理装置では、弱電設備が、インターホン設備、ITV設備、構内電話設備、構内放送設備、電気錠設備、振動計測設備、赤外線サーモグラフ装置、計装設備または、防犯設備のうちの一または二以上の設備であることが例示される。
【0015】
この本発明に係るDHCプラント管理装置のパソコンは、マイクロホンまたは電話端末のうちの一または両方に接続されることが望ましい。
構内放送設備が、構内放送を行うスピーカの出力を調整するスピーカアンプを備え、前記LANのケーブルとの間にはD/A変換器が設けられ、前記LANのケーブルより受信するデジタル信号をアナログ信号に変換してスピーカアンプに送信する音声配信装置であることが望ましい。
【0016】
さらに、構内放送設備が、パソコンに接続されたマイクロホンまたは電話端末からの信号のみでなく、前記構内電話設備の端末である電話機からの信号もスピーカに伝送できることが望ましい。
【0017】
また、電気錠設備が、DHCプラントの出入口に設置されて出入者が操作するテンキーからの信号を入力されるとともに、電気錠に開閉信号を出力する電気錠操作盤を備え、前記LANのケーブルを介し、前記電気錠操作盤と前記パソコンとの間でデジタル信号の授受を行う電気錠設備であることが望ましい。
【0018】
また、振動計測設備が、DHCプラント内の回転機器に取付けられた振動ピックアップの出力信号を増幅及びA/D変換して出力する振動計測盤を備え、前記LANのケーブルを介し、前記振動計測盤と前記パソコンとの間でデジタル信号の授受を行い、該回転機器の振動データを送信するとともに、前記パソコンからの振動計測盤操作命令を受信する振動計測設備であることが望ましい。
【0019】
また、赤外線サーモグラフ装置が、遠赤外線カメラにより撮影された機器や配管の表面温度分布情報をデータ処理して温度分布画像データを出力し、前記LANのケーブルを介し、前記パソコンとの間でデジタル信号の授受を行い、該温度分布画像データを送信するとともに、前記パソコンからの操作命令を受信する赤外線サーモグラフ装置であることが望ましい。
【0020】
また、計装設備が、DHCプラント内の各機器の自動制御及び各部の計測データの収集を行う複数の端末制御盤を備え、前記LANのケーブルを介し、前記端末制御盤と前記パソコンとの間でデジタル信号の授受を行う計装設備であることが望ましい。
【0021】
また、防犯設備が、DHCプラント内の防犯用端末盤からのデジタル信号を、前記LANのケーブルを介し、前記パソコンに送信する防犯設備でることが望ましい。
別の観点からは、本発明は、複数のDHCプラントの管理を一括して行うためのDHCプラント管理装置であって、各DHCプラントのいずれにも設けられた上述した本発明に係るDHCプラント管理装置と、複数のDHCプラント管理装置を通信ケーブルにより接続して構成されるLANとを備えることを特徴とするDHCプラント管理装置である。
【発明の効果】
【0022】
本発明にかかるDHCプラント管理装置によれば、DHCプラントの各弱電設備からの情報を中央監視室において簡便な操作により利用することができ、廉価な工事費で導入することができ、使用する機器の数を低減することができ、さらには、各弱電設備を連携させて動作させることができる。
【0023】
また、本発明に係るDHCプラント管理装置によれば、複数のDHCプラントを一括して一元的に管理することができる。このため、複数のDHCプラントのうちの一の中央監視室の設備管理員により全てのDHCプラントの管理を行うこともできる。
【0024】
このため、本発明により、新しいアーバンエネルギー供給システムの一つとして一部の地域において既に実用化されているDHCを、他の地域にもさらに拡大して適用することの可能性をさらに高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明に係るDHCプラント管理装置を実施するための好適な形態を、添付図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本実施の形態のDHCプラント管理装置10の構成例を模式的に示す説明図である。
【0026】
図1に示すDHCプラント11、21及び31は、大都市の同一地区内に互いに離れて存在する3つのビルの地下部分にそれぞれ設置されており、いずれも、各DHCプラント管理装置11a、21a及び31aも含めて同一の構成を有しており、各DHCプラント管理装置11a、21a及び31aは、光ファイバーケーブルを用いて、広域ネットワークとしてのイ−サネット(登録商標)を構築している。このため、以降の説明はDHCプラント11に設けられたDHCプラント管理装置11aを例にとって行い、DHCプラント21のDHCプラント管理装置21a、及びDHCプラント31のDHCプラント管理装置31aについては、同一の機器には一桁の値が同じである図中符号を付することによって重複する説明を適宜省略する。
【0027】
DHCプラント11は、図1を参照しながら上述した従来のDHCプラント1と同様に、弱電設備として、インターホン設備12、ITV設備13、構内電話設備14、構内放送設備15及び電気錠設備16を有するので、初めにこれらの弱電設備12〜16について簡単に説明する。
【0028】
インターホン設備12は、DHCプラント11への入場や退場を管理するために出入口における来場者が使用するハンドセット12aに接続されたPHSリンクアダプタ12bから送信された電波をPHSアンテナ12cにより受信し、後述するLANのケーブル17にデジタル信号として出力して、中央監視室18に配置されたPHSアンテナ18gからPHSリンクアダプタ18cに接続されたハンドセット18dと管理用パソコン18bに接続されたPCカード型PHS端末18eに同時送信する。このインターホン設備12のハンドセット18d及びハンドセット12aを用いることにより、中央監視室18の設備管理員と来場者との通話が可能である。このように、インターホン同士もしくはPHS同士で通話する場合、PHS制御パソコン18aが電話交換機の役目を果たしている。
【0029】
ITV設備13は、DHCプラント11内の主要箇所(例えば出入口付近やエネルギー発生機器周辺等)に配置された複数のネットワークカメラ13a、13b(図示例は二つ)が撮影した映像をデジタル信号で、ケーブル17にデジタル信号として出力し、中央監視室18に設けられた管理用パソコン18bに送信する。このITV設備13により、中央監視室18の設備管理員が、DHCプラント11の各種機器の運転状態や来訪者を確認することができる。
【0030】
本実施の形態では、ある出入口のハンドセット12aにより来訪者からの呼び出しがあった場合には、この出入口付近に配置されているネットワークカメラ13aが自動的に動作してこの呼出者を撮影し、中央監視室18に設けられた管理用パソコン18bに映像を映すように、インターホン設備12とITV設備13とを連携させている。すなわち、ネットワークカメラ13aは管理用パソコン18b上で制御されているため、このような連携動作を行うには、ハンドセット12aからの呼出信号を管理用パソコン18bに取り込み、この呼出信号によりネットワークカメラ13aを動作する信号を出力する必要があるが、PHS制御パソコン18aからはどのハンドセットから呼び出しがあったかを管理用パソコン18bに出力することは不可能である。このため、本実施の形態では、PCカード型PHS端末18eを管理用パソコン18bのUSB端子に接続し、PHSの一斉呼出機能を利用してPCカード型PHS端末18eとハンドセット18dを同時に呼び出すようにする。これにより、管理用パソコン18bはどのハンドセットから呼び出しがあったかをPCカード型PHS端末18eから認識することができるため、動作させるべきネットワークカメラ13aに信号を出力してプリセット位置に動作させることができる。
【0031】
構内電話設備14は、DHCプラント11内の設備管理員が携帯するPHS端末14aが発信する電波をPHSアンテナ14cにより受信し、LANのケーブル17を介して、PHS制御パソコン18aの管理のもとにPHSアンテナ14cまたは他のPHSアンテナ14c’(図示せず)より、DHCプラント11内の他の設備管理員が携帯するPHS端末14bに送信する。この構内電話設備14により、DHCプラント11内の設備管理員同士が相互に直接連絡することができる。
【0032】
構内放送設備15は、DHCプラント11の各所に配置された複数のスピーカ15a、15b(図示例は二つ)をスピーカ配線15cによりスピーカアンプ15dに接続する。LANのケーブル17からの出力信号はデジタル信号であり、このままではスピーカアンプ15dに送信することはできないので、D/A変換を行う音声配信装置15eによりD/A変換して、スピーカアンプ15dにアナログ信号として出力する。
【0033】
構内放送を行う際にこの音声配信装置15eにより信号変換を行う手順は、以下に示すとおりである。
(a)管理用パソコン18bの画面上で放送を行うDHCプラント11〜31のいずれかを、マウスをクリックすることにより選択する。このマウスクリックにより音声配信装置15b〜35bのいずれかとの回線が開通する。
【0034】

(b)管理用パソコン18bに接続されたスタンドマイク18fに向かって設備管理員が発声することにより音声を入力する。
【0035】

(c)管理用パソコン18bに入力される。管理用パソコン18bによりスタンドマイク18fから入力されたアナログ音声信号がデジタル音声信号に変換される。
【0036】

(d)音声配信装置15eに送信される。LAN上のデジタル音声信号がアナログ音声信号に変換される。
【0037】

(e)スピーカアンプ15dに入力され、アナログ音声信号が増幅される。

(f)スピーカ15a、15bから構内放送が行われる。
【0038】
この構内放送設備15により、この管理用パソコン18bに設けられたスタンドマイク18fを用いて中央監視室18の設備管理員が、DHCプラント11内で作業中の設備管理員の呼び出しや、中央監視室18からDHCプラント11内の各種機器を遠隔起動する際にDHCプラント11内の作業者に当該機器から退避するための放送を、DHCプラント11内に一斉に行うことができる。
【0039】
さらに、構内電話設備14のPHS端末14aまたは14bから構内放送を行う場合には、PHS端末の構内放送用ボタンを押して音声を発することにより、LANを介して音声配信装置15eに送信され、管理用パソコン18bからの音声信号と同様に、スピーカ15a、15bから構内放送が行われる。
【0040】
電気錠設備16は、DHCプラント11の出入口扉に設けられた電気錠の施錠及び解錠を行う電気錠操作盤16aからの信号を、ケーブル17にデジタル信号として出力して、中央監視室18に設けられた管理用パソコン18bに送信する。
【0041】
電気錠の解錠を行う際の手順は以下のとおりである。
(a)中央監視室18の設備管理員が解錠対象扉を選択して管理用パソコン18bの画面上で解錠ボタンを押す。
【0042】

(b)管理用パソコン18bから入出力装置16bに解錠信号が伝送され、デジタル接点を出力(解錠信号)し、入出力装置16bより解錠信号を出力する。
【0043】

(c)電気錠操作盤16aに解錠信号が入力されて解錠される。
なお、上述したように、このDHCプラント11の設備管理員は専用線16cを介して電気錠操作盤16aに接続された出入口扉近傍に配置されたテンキー16dに暗証番号を入力することにより施錠及び解錠を行うことができる。
【0044】
このように弱電設備としてインターホン設備12、ITV設備13、構内電話設備14、構内放送設備15及び電気錠設備16を有するDHCプラント11に設けられたDHCプラント管理装置11aは、これらの弱電設備12〜16のうちの一又は二以上の設備との間で構築されるLANのケーブル17と、このケーブル17に接続されたPHS制御用パソコン18a及び管理用パソコン18bとを有するので、これらについて説明する。
【0045】
[ケーブル17]
本実施の形態で用いるケーブル17には、映像、音声さらには接点信号等の様々な信号が共存して流れる。このため、これらの相互干渉による影響を避けるため、ケーブル17にはバーチャルLAN(VLAN)用のものを用い、使用帯域を完全に分ける。
【0046】
このケーブル17としては市販のカテゴリー5をDHCプラント11内に敷設した。
[パソコン18a、18b]
パソコン18a、18bは、ケーブル17を介して入力される各弱電設備12〜16からのデジタル信号を処理するためのものであり、本例では、インターホン設備12又は構内電話設備14からの情報を処理するPHS制御パソコン18aと、ITV設備13、構内放送設備15又は電気錠設備16からの情報を処理する管理用パソコン18bとに分けたが、1基のパソコンにより全ての情報を処理するように構成してもよい。パソコン18bは、入力8点、出力8点まで入出力端子を装備するものであるが、もちろん入出力装置の増設により増強することができる。増強すればさらに多数の弱電装置の管理を行うことができる。
【0047】
管理用パソコン18bは、中央監視室18内に配置されて、設備管理員により操作される。
さらに、本実施の形態では、各DHCプラント11〜31の監視や操作といった管理を相互に行うとともに一のDHCプラントにより一括して行うために、各DHCプラント11〜31のいずれにも、上述した本実施の形態のDHCプラント管理装置11a〜31aと、DHCプラント11〜31を光ケーブル40、40、40を介して接続して構成される広域のLAN(広域ネットワーク)とを備え、この広域ネットワークにイーサネット(登録商標)を用いている。
【0048】
このように、本実施の形態のDHCプラント管理装置10は、DHCプラント11の弱電設備12〜16と、DHCプラント21の弱電設備22〜26と、DHCプラント31の弱電設備32〜36とをLANを介して統合するイーサネット(登録商標)とし、LAN上を流れる各弱電設備12〜16、22〜26、32〜36からの情報やこれらに対する制御信号を、一のパソコン(18a、18b)、(28a、28b)又は(28a、28b)により一元的に一括管理するものである。
【0049】
このため、このDHCプラント管理装置10によれば、DHCプラント11〜31のいずれかのITV設備を構成するネットワークカメラが撮影した映像を、そのネットワークカメラを所望の位置に動作させながら、どのDHCプラント11〜31においても閲覧することができる。また、あるDHCプラントの中央監視室の設備管理者が、他のDHCプラントへの来訪者とインターホン設備を用いて通話することができ、他のDHCプラントに構内放送を行うことができ、さらには、他のDHCプラントの出入口扉の電気錠の解錠を行うことができる。
【0050】
次に、このように構成された本実施の形態のDHCプラント管理装置10、11a〜11cの特徴を以下に列記する。
(I)本実施の形態では、PHS制御用パソコン18a〜38a及び管理用パソコン18b〜38bと、各弱電設備12〜16、22〜26、32〜36からの信号をPHS制御用パソコン18a〜38a及び管理用パソコン18b〜38bに接続するためのケーブル17〜37とからなるDHCプラント管理装置11a〜31aをケーブル40を介して広域ネットワーク(イーサネット(登録商標))を構築し、DHCプラント11〜31の一元管理及び相互管理を行う。
【0051】
このため、各弱電設備12〜16、22〜26、32〜36に対する全ての操作を、管理用パソコン18b〜38bの画面上でマウスクリックにより行うことができ、操作性を大幅に向上できる。
【0052】
例えば、ネットワークカメラ(13a、13b)、(23a、23b)又は(33a、33b)にパン、チルト又はズーム等の動作を行わせる際には、管理用パソコン18b〜38bのいずれかの画面を参照しながらマウスクリックにより動作内容を入力するだけでよいとともに、一台のネットワークカメラ13a、13b、23a、23b、33a又は33bの映像を、一又は二以上の管理用パソコン18b〜38bのモニタに表示することができる。また、構内放送設備15〜35を用いて構内放送を行う場合には、管理用パソコン18b〜38bのいずれかの画面により構内放送を行うDHCプラント11〜31をマウスクリックにより選択し、スタンドマイク18f〜38fのいずれかにより音声を入力すればよく、一のDHCプラントから放送対象であるDHCプラントを切り換えて放送することが可能である。さらに、電気錠を操作する場合には、管理用パソコン18b〜38bのいずれかの画面において解錠対象である扉をマウスクリックして解錠すればよく、全ての電気錠の操作を管理用パソコン18b〜38bのいずれかにより管理するため、一のDHCプラントから解錠対象の扉を有するDHCプラントを切り換えて解錠することが可能である。
【0053】
また、中央監視室18〜38のいずれかに設置された管理用パソコン18b、管理用パソコン28b、又は、管理用パソコン38bにより、他のDHCプラント11〜31の弱電設備12〜16、22〜26、32〜36を全て監視及び操作することができる。これにより、弱電設備機器12〜16、22〜26、32〜36に要する配線工事を、LANケーブル及び電源ケーブルだけを設けるだけで済ませることができ、工事費を大幅に削減することができるとともに、管理用パソコン18b、管理用パソコン28b、又は、PHS制御用パソコン38a及び管理用パソコン38bの画面上で、弱電設備機器12〜16、22〜26、32〜36に対して必要な全ての操作を全て行うことができるため、操作性を大幅に向上することができる。
【0054】
また、DHCプラント11〜31の弱電設備機器12〜16、22〜26、32〜36をネットワーク上に共存させることにより各弱電設備機器12〜16、22〜26、32〜36を連携して動作させることができる。例えばDHCプラント11の中央監視室18に設けられた管理用パソコン18bからDHCプラント21、31の弱電設備機器22〜26、32〜36の遠隔操作を行うことができるため、DHCプラント21、31の中央監視室28、38の設備管理者の省人化を図ることもできる。
【0055】
(II)本実施の形態では、同一地区内の全てのネットワーカメラ13a、13b、23a、23b、33a、33bの映像が一のネットワーク上に配信されているため、DHCプラント11〜31内に配置したネットワークカメラ13a、13b、23a、23b、33a、33bを、各プラント11〜31の管理用パソコン18b、28b、38bにより閲覧及び操作することができ、他のDHCプラントの映像閲覧を容易に行うことができる。
【0056】
(III)本実施の形態では、LAN接続型の構内電話設備14、24、34を同一ネットワーク上に組込み、DHCプラント11〜31内での移動電話として用いるため、特定の場所にインターホンを設置する場合に比較すると、DHCプラント11〜31内の全エリアを通話範囲とすることができ、DHCプラント11〜13内における作業性を向上することができる。
【0057】
(IV)本実施の形態では、一般電話回線をPHS回線に置き換える装置であるPHSリンクアダプタ12bを用い、出入口扉に設置した一般電話機12aを構内PHSの端末として機能させるようにインターホン設備12を構築したため、特定の出入口扉〜中央監視室18〜38間のインターホンとしてだけではなく、地区内の全中央監視室18〜38並びにPHS端末との通話が可能である。これにより、呼び出し対象の中央監視室18〜38が無人化された場合でも有人の中央監視室18〜38に呼び出し設定を変更するだけで呼出を行うことができる。
【0058】
(V)本実施の形態では、管理用パソコン18b〜38bにPCカード型PHS端末18e〜38eを接続し、中央監視室18内のインターホン設備12であるPHSリンクアダプタ12bと同時に呼び出すことにより、来訪者からの呼び出し信号として管理用パソコン18b〜38bに入力してネットワークカメラ13a、13b、23a、23b、33a、33bを動作させるため、インターホン設備12からの呼び出しに対応して、ITV設備13のネットワークカメラ13a、13bを予めプリセットしてあるポジションに動作させる。これにより、ネットワークカメラ13a、13b、23a、23b、33a、33bが呼び出し時に出入口扉周辺以外の映像を撮影していた時に呼び出しがあった場合でも、強制的にネットワークカメラ13a、13b、23a、23b、33a、33bを動作させて入場者を撮影することができる。
【0059】
(VI)本実施の形態では、ネットワークからの音声信号をD/A変換する音声配信装置15e〜35e(音声配信装置)を介して汎用のスピーカアンプ15d〜35dと接続し、スタンドマイク18f〜38fを管理用パソコン18b〜38bのマイク入力端子に接続して構内放送を行う。このため、管理用パソコン18b〜38bの画面上で構内放送を行うことができ、音声信号がネットワーク上に配信されるために他のDHCプラント11〜31に対しても同じ構内放送を行うことができる。
【0060】
(VII)本実施の形態では、電気錠操作盤16a、26a、36aと管理用パソコン18b、28b、38bとの間で解錠信号等の信号の取り合いを行うべく、ネットワークに接続可能な入出力装置(PLC)16b〜36bを設置するため、電気錠の専用の遠隔制御パソコン及びソフトウェアを必要とせず同等の機能を実現することができる。また、他のプラント11〜31の電気錠の解錠も可能になる。
【0061】
(VIII)本実施の形態では、ネットワーク上に映像、音声さらには接点信号等の様々な信号が共存するため、バーチャルLAN(VLAN)により帯域を完全に分けて相互干渉による影響を回避した。これにより、映像信号の不具合が原因で音声信号に影響を与えるおそれを完全に解消しながら、カメラを用いた撮影機能と映像配信サーバ機能とを一体化させて映像のライブ配信を行うことができる。またデジタル伝送であるため、伝送路での情報の劣化は皆無である。なお、既設ネットワークがある場合にはそのまま流用することができ、新たな配線工事は不要である。さらに、無線LANを導入すれば、ケーブルの無線化が可能である。
【0062】
(IX)ネットワーク上で映像を伝送するため、多数のDHCプラントの一括管理を行う場合に特に有効である。また、監視する各弱電設備の間の距離には関係なく、確実に管理できる。
【0063】
上述した本実施の形態の説明は、DHCプラントの弱電設備が、インターホン設備、ITV設備、構内電話設備、構内放送設備及び電気錠設備の少なくとも一以上である場合を例にとって行った。しかし、本発明にかかるDHCプラント管理装置は、これらの弱電設備に限定されるものではなく、これら以外の弱電設備についても同様に適用可能である。このような弱電設備として、振動計測設備、赤外線サーモグラフ装置、計装設備さらには防犯設備を例示することができる。
【0064】
また、本発明は、DHCプラントの弱電設備の管理を行うものであるが、全く同様の構成を採用することによって、受変電設備の変圧器やコンデンサ、さらには自家用発電機等といったDHCプラントの強電設備の管理を行うことも可能である。本発明にかかるDHCプラント管理装置によれば、DHCプラントの強電設備の管理においても、同様の作用効果が奏される。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】実施の形態のDHCプラント管理装置の構成例を模式的に示す説明図である。
【図2】DHCプラントの管理システムの代表例を模式的に示す説明図である。
【符号の説明】
【0066】
10 DHCプラント管理装置
11〜31 DHCプラント
11a〜31a DHCプラント管理装置
12〜32 インターホン設備
13〜33 ITV設備
14〜34 構内電話設備
15〜35 構内放送設備
16〜36 電気錠設備
18a〜38a PHS制御用パソコン
18b〜38b 管理用パソコン
40 光ケーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地域熱供給プラントに設けられてその管理に用いられる弱電設備との間でLANを構築して該設備の管理を行うパソコンを備えることを特徴とする地域熱供給プラント管理装置。
【請求項2】
前記弱電設備は、インターホン設備、ITV設備、構内電話設備、構内放送設備、電気錠設備、振動計測設備、赤外線サーモグラフ装置、計装設備または、防犯設備のうちの一または二以上の設備であることを特徴とする請求項1に記載された地域熱供給プラント管理装置。
【請求項3】
前記パソコンは、マイクロホン又は電話端末のうちの一又は両方に接続されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載された地域熱供給プラント管理装置。
【請求項4】
前記構内放送設備は、構内放送を行うスピーカの出力を調整するスピーカアンプを備え、前記LANのケーブルとの間にはD/A変換器が設けられ、前記LANのケーブルより受信するデジタル信号をアナログ信号に変換してスピーカアンプに送信する音声配信装置である請求項2または請求項3に記載された地域熱供給プラント管理装置。
【請求項5】
前記構内放送設備は、前記パソコンに接続されたマイクロホンまたは電話端末の一以上の信号と前記構内電話設備の電話機からの放送用信号を、前記LANケーブルを介して前記D/A変換器に伝送することを特徴とする請求項4に記載された地域熱供給プラント管理装置。
【請求項6】
前記電気錠設備は、該地域熱供給プラントの出入口に設置されて出入者が操作するテンキーからの信号を入力されるとともに、電気錠に開閉信号を出力する電気錠操作盤を備え、前記LANのケーブルを介し、前記電気錠操作盤と前記パソコンとの間でデジタル信号の授受を行うことを特徴とする請求項2から請求項5までのいずれか1項に記載された地域熱供給プラント管理装置。
【請求項7】
複数の地域熱供給プラントの管理を一括して行うための地域熱供給プラント管理装置であって、各地域熱供給プラントのいずれにも設けられた請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載された地域熱供給プラント管理装置と、複数の該地域熱供給プラント管理装置を通信ケーブルにより接続して構成されるLANとを備えることを特徴とする地域熱供給プラント管理装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−301928(P2006−301928A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−122402(P2005−122402)
【出願日】平成17年4月20日(2005.4.20)
【出願人】(000191319)新菱冷熱工業株式会社 (78)
【Fターム(参考)】