説明

地熱利用型のヒートポンプシステム

【課題】建物周囲のスペースをより確保することができるヒートポンプシステムの提供。
【解決手段】建物1Aの室内R1を空調するためのヒートポンプの熱交換器8Dを有するヒートポンプユニットHPと、地中に埋設された採熱杭2と、熱交換器8Dと採熱杭2とを経由するように設けられた不凍液管3と、不凍液管3に満たされた不凍液と、不凍液管3に不凍液を循環させるためのポンプP1を備え、循環により地盤と室内空気の熱との熱交換をする地熱利用型のヒートポンプシステム10において、ヒートポンプユニットHPを建物1Aの床下空間R0に設置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地熱と室内空気の熱とを熱交換する地熱利用型のヒートポンプシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建物に設置され、地熱を利用するヒートポンプシステムが知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−35433号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、日本人口は減少しつつあるが、人口が都市に密集する傾向にあるため都市近郊の住宅事情は悪化し、建物周囲のスペースが十分に得られず、極力スペースを確保することが望まれている。
【0005】
本発明は上記課題に鑑み、建物周囲のスペースをより確保することができるヒートポンプシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る地熱利用型のヒートポンプシステムは、地中に埋設された採熱杭と、建物内を空調するためのヒートポンプの熱交換器を有したヒートポンプユニットと、前記熱交換器と前記採熱杭とを経由するように設けられた熱搬送流体の循環流路と、該循環流路に満たされた熱搬送流体と、該熱搬送流体を循環させるためのポンプと、を備え、前記循環により地盤と前記建物の室内空気との熱交換をする地熱利用型のヒートポンプシステムにおいて、前記ヒートポンプユニットは前記建物の床下空間に設置されていることを特徴とする。
【0007】
また、前記採熱杭は前記建物の構造杭でもあってもよく、前記採熱杭が埋設されている位置の地表面が断熱材で覆われていてもよい。
【0008】
ここで、「断熱材」とは、一般的な断熱材のみならず、断熱性を高める部材が含まれる。例えば、構造杭と採熱杭が兼用される場合に建物の基礎コンクリートも断熱材に含まれる。
【0009】
さらに、前記ヒートポンプシステムが寒冷地域に設けられる場合には、前記循環流路が地中の水道管まわりに設置されていてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ヒートポンプユニットが前記建物の床下空間に設置されているので、建物周囲のスペースをより確保することができる。また、前記採熱杭が前記建物の構造杭であれば、採熱杭の埋設が不要となる上に地中の埋設物が減る。
【0011】
また、前記採熱杭が埋設されている位置の地表面が断熱材で覆われていれば、断熱材により外気と地中との断熱性が高まるため、採熱杭は外気温の影響を受けにくくなる。このため、エネルギーロスが少なく地熱利用効率が高まる。
【0012】
さらに、前記ヒートポンプシステムが寒冷地域に設けられるものであって、前記循環流路が地中の水道管まわりに設置されていれば、水道管の凍結防止につながる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】第1実施形態のヒートポンプシステムを有する建物の構成を説明する図である。
【図2】第2実施形態のヒートポンプシステムを有する建物の構成を説明する図である。
【図3】第3実施形態のヒートポンプシステムを有する建物の構成を説明する図である。
【図4】地熱利用型のヒートポンプシステムを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図1〜図4を参照して説明する。
【0015】
本発明は、従来では庭などの建物の周囲に配置していたヒートポンプユニット(エアコンの室外機等)を建物の床下空間に配置することで、建物の外周スペースを有効活用することができる。また、ヒートポンプの熱交換の一部を、冷媒との温度差が外気よりある大地との間で行うことで、冷暖房の費用を軽減することができ、外気との熱交換用ファンも不要となる。
【0016】
[第1実施形態]
第1実施形態の地熱利用型のヒートポンプシステム10は、図1および図4に示すように、建物1Aの床下空間R0に設置されたヒートポンプユニットHPと、建物1Aの構造杭として地中に埋設された採熱杭2と、ヒートポンプユニットHPと採熱杭2とを循環するように配管された循環流路としての不凍液管3と、不凍液管3に満たされた熱搬送流体としての不凍液と、不凍液を循環させるポンプP1と、ヒートポンプユニットHPからの冷媒と室内R1の空気とを熱交換する床下熱交換器HT等とを有している。
【0017】
図1に示すように、採熱杭2、ヒートポンプユニットHPおよび床下熱交換器HTは、互いに近接配置されている。
<床下熱交換器>
床下熱交換器HTは、一般のエアコンでは室内機に相当し、ヒートポンプユニットHPと同様に建物1Aの床下空間R0に設けられている。床下熱交換器HTは、図4に示すように、筐体と、筐体中に回転可能に設けられたファン9と、第1熱交換器8E等とを有している。筐体にはヒートポンプユニットHPからの冷媒管4が入出し、筐体内の冷媒管4部分には第1熱交換器8Eが設けられている。
【0018】
この筐体には室内R1からのエアーの取込口と排出口が設けられており、それぞれに接続された吸気ダクト5および給気ダクト6を介して室内R1と筐体内がエアー環流するように連通している。
【0019】
ファン9の回転により室内R1の空気が吸気ダクト5を介して筐体内へ取り込まれて、第1熱交換器8Eで熱交換された後、給気ダクト6を通じて室内R0に吹き出るようになっている。
<ヒートポンプユニット>
ヒートポンプユニットHPは、一般のエアコンでは室外機に相当し、建物1Aの床下空間R0に設けられている。ヒートポンプユニットHPは、エアコンでの熱交換サイクル(ヒートポンプ)の他の要素である、膨張弁8C、コンプレッサ8B、熱交換器としての第2熱交換器8D、切替スイッチ8Aを有し、これらは冷媒管4で接続されている(図4参照)。
【0020】
ヒートポンプユニットHPには採熱杭2からの不凍液管3が入出し、不凍液管3はヒートポンプユニットHP内で第2熱交換器8Dを経由するように配管され、不凍液が冷媒管4内の冷媒と熱交換可能となっている。
【0021】
その一方で、ヒートポンプユニットHPから引き出された不凍液管3は、建物1Aの床下空間R0の床版内を通過し、建物1Aの構造杭(採熱杭2)内を巡るように配管されている。また、不凍液管3には不凍液を圧送するポンプP1(図4参照)が接続されている。
<熱の流れ>
図4に示すように、ヒートポンプユニットHPの切替スイッチ8Aにより熱交換サイクルの冷媒の循環方向(切り替えスイッチ〜コンプレッサ8B間以外)が逆となり、暖房と冷房の切り替えが行われる。そのため、第2熱交換器8Dでの冷媒と不凍液との熱交換(放熱・吸熱)も切り替えられる。
【0022】
図1の矢印に示すように、ヒートポンプユニットHPと不凍液のポンプP1を稼動させて冷媒と不凍液の熱交換サイクルをさせると、夏季の冷房と冬季の暖房の場合のそれぞれで、以下のように熱交換される。
【0023】
夏季の冷房の場合、室内R1の空気の熱が第1熱交換器8Eで冷媒管4の冷媒に吸熱され、この冷媒がコンプレッサ8Bで圧縮された後、第2熱交換器8Dで不凍液へ放熱する。吸熱した不凍液がポンプP1の圧送により採熱杭2まで搬送され、採熱杭2内で地盤へ放熱して第2熱交換器8Dに戻ってくる。
【0024】
冬季の暖房の場合、地熱が採熱杭2内で不凍液に吸熱され、吸熱した不凍液がポンプP1の圧送により第2熱交換器8Dまで搬送されてくる。第2熱交換器8Dでは、搬送された不凍液から膨張弁8Cを通過した低温・低圧の冷媒へ放熱し、冷媒が加温される。この冷媒はコンプレッサ8Bで圧縮され、冷媒圧縮により生じる熱とともに不凍液由来の熱は第1熱交換器8Eにて室内R1の空気へ放熱される。
以下、ヒートポンプシステム10により奏される効果を説明する。
【0025】
ヒートポンプユニットHPが建物1Aの床下空間R0に収納されることで、建物1Aの周囲にヒートポンプユニットHPを置く必要がなく、建物1Aの周囲を広く有効に使うことができる。また、ヒートポンプユニットHPを床下空間R0に設置するので建物1Aの外に置くよりエネルギーロスが少ない。また、窓を介した室外機のファン9の音がなくなり騒音も減る。
【0026】
採熱杭2、ヒートポンプユニットHPおよび床下熱交換器HTが互いに近接配置されているので、ヒートポンプシステム10の設置等の際の施工性が高まる。
【0027】
建物1Aの構造杭と採熱杭が兼用されているので、別に採熱杭を設ける必要がなく、この点でも施工性が高まり、その設置費用と手間も省略できる。
【0028】
不凍液は搬送中に不凍液管の壁を介して配管周りの土や建築物等と意図しない熱交換をするためエネルギーロスが生じるが、上述のように採熱杭2、ヒートポンプユニットHPおよび床下熱交換器HTが互いに近接配置されていることから、不凍液の搬送距離が短くて済み、エネルギーロスが少なくなる。
【0029】
また、採熱杭2が構造杭として建物1Aの直下に埋設されていることから、採熱杭2を建物1Aの外郭に埋設するよりも不凍液の搬送距離が短くて済み、その分エネルギーロスが少なくなる。
【0030】
不凍液管3が建物1Aの床下空間R0の床版中を通過するように設けられているので、建物1Aの内外の断熱効果が高まる。また、床版が断熱材としても機能する。
【0031】
第1実施形態は、本発明から逸脱しない限り例えば以下のように変更することができる。
【0032】
床下熱交換器HTで床暖房の熱媒体(水等)を加熱・冷却するように構成してもよい。これにより、冬の床暖房の効率化だけでなく夏季にも床冷却をおこなうことができる。
【0033】
また、床下熱交換器HTに接続した吸気ダクト5や給気ダクト6を取り除いて、床下空間R0の空気を加熱又は冷却してもよい。これにより、床暖房や床冷却に近い効果を得ることができる。また、冬季の加熱では床下空間R0の結露等が防止され、カビ発生防止効果が得られ、調湿剤の使用量も少なくてすむ。
【0034】
図1に示す、建物1Aの床下空間R0の床版中を通過する不凍液管3のうち、建物1Aのより外側の不凍液管3をヒートポンプユニットHPから採熱杭2へと向かう往路、内側の不凍液管3を採熱杭2からの復路としてもよい。
【0035】
これにより、床下空間R0と不凍液管(復路)3との間で起こる熱交換、つまり本来であればヒートロスとなる熱交換をも床下空間R0の冷却や加熱に用いることが出来る。この場合、不凍液管3の往路と復路との間に断熱材を設けることが好ましい。
【0036】
また、採熱杭2を地下水汲み上げ用の採水管として、汲み上げた地下水を熱搬送流体として冷媒と熱交換し、熱交換後の地下水を地下水脈に還水してもよい。
[第2実施形態]
図2に、第2実施形態のヒートポンプシステム20を示す。
【0037】
ヒートポンプシステム20は、ヒートポンプユニットHP、採熱杭2A、床下熱交換器HTおよび不凍液管3等を有し、採熱杭2Aは建物1Bの外郭に埋設されている。
【0038】
ヒートポンプシステム20によれば、既に建築済みのような場合に、採熱杭2Aを建物1Bの外郭に埋設することで、建物1Bにヒートポンプシステム20を設けることができる。
【0039】
また、第1実施形態の効果(採熱杭2と構造杭が兼用されていることによる効果を除く)と同様の効果が得られる。
【0040】
第2実施形態は、本発明から逸脱しない限り例えば以下のように変更することができる。
【0041】
建物1Bが所在する地域が寒冷地の場合に、採熱杭2Aや不凍液管3を水道管周りに設置することで、その凍結防止を図ることが出来る。
[第3実施形態]
図3に、第3実施形態のヒートポンプシステム30を示す。
【0042】
ヒートポンプシステム30は、ヒートポンプユニットHP、採熱杭2A、床下熱交換器HTおよび不凍液管3等を有し、床下空間R0の壁面は断熱材7で覆われている。また、採熱杭2Aは建物1Bの外郭に埋設され、この採熱杭2Aと不凍液管3が埋設されている位置の地表面Sの部分が断熱材7で覆われている。
【0043】
ヒートポンプシステム30によれば、以下の効果が得られる。
【0044】
上記した地表面Sの部分が断熱材7で覆われていることにより、外気と地中との断熱性が高まり、採熱杭2Aや不凍液管3は外気温の影響を受けにくくなる。このため、エネルギーロスが少なく、地熱利用効率が高まる。
【0045】
ヒートポンプユニットHPと床下熱交換器HTが設置された床下空間R0の壁面が断熱材7で覆われていることにより、床下空間R0における上記エネルギーロスが少なくなる。また、不凍液との熱交換により温度変化した床下空間R0状態(温度等)が維持されやすくなる。
【0046】
以上、本発明に係るヒートポンプシステム10,20,30について実施の形態に基づいて説明してきたが、第1〜3実施形態に限定されず、本発明に逸脱しない限り変更することができる。
【符号の説明】
【0047】
10,20,30・・・ヒートポンプシステム
1A,1B・・・建物
2,2A・・・採熱杭
3・・・不凍液管(循環流路)
4・・・冷媒管
5・・・吸気ダクト
6・・・給気ダクト
7・・・断熱材
8A・・・切替スイッチ
8D・・・第2熱交換器(熱交換器)
8B・・・コンプレッサ
8C・・・膨張弁
8E・・・第1熱交換器
9・・・ファン
HT・・・床下熱交換器
HP・・・ヒートポンプユニット
R0・・・床下空間
R1・・・室内
S・・・地表面
P1・・・ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地中に埋設された採熱杭と、建物内を空調するためのヒートポンプの熱交換器を有したヒートポンプユニットと、前記熱交換器と前記採熱杭とを経由するように設けられた熱搬送流体の循環流路と、該循環流路に満たされた熱搬送流体と、該熱搬送流体を循環させるためのポンプと、を備え、前記循環により地盤と前記建物の室内空気との熱交換をする地熱利用型のヒートポンプシステムにおいて、
前記ヒートポンプユニットは前記建物の床下空間に設置されていることを特徴とする地熱利用型のヒートポンプシステム。
【請求項2】
前記採熱杭が前記建物の構造杭としての機能を兼ね備えていることを特徴とする請求項1に記載の地熱利用型のヒートポンプシステム。
【請求項3】
前記採熱杭が埋設されている位置の地表面部分が断熱材で覆われていることを特徴とする請求項1又は2に記載の地熱利用型のヒートポンプシステム。
【請求項4】
前記循環流路が地中の水道管まわりに設置されることを特徴とする請求項1〜3いずれか1項に記載の地熱利用型のヒートポンプシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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